説明

非磁性体加工物のクランプ工具

【課題】非磁性材料で構成される加工物を、磁気チャックのチャック面に固定する際に用いられるクランプ工具で、取扱い容易なクランプ工具を提供する。
【解決手段】磁性体材料で設けられる吸着用の下端部7に平坦な底面6を有するベース部2と、同じく磁性体材料で設けられる吸引用の下端部9に平坦な下面8を有し、ベース部2に連結される変位部4と、変位部4の先端位置で変位部4の上面より高い位置に突出するとともに取り外し可能に設けられた当接片5と、変位部4に弾性変形可能に設けられる弾性変形部3とを備え、変位部4は、磁気チャック面10と下面8との間に隙間を有するように設けられ、弾性変形部3は、磁気チャック面10からの磁気的吸引力を受けて変形するように変位部4に設けられ、磁気チャック面10での磁力発生時に、ベース部2の底面6が磁気チャック面10に磁気的に圧着されることにより磁気チャック面10に対する摩擦力を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性体材料の加工物を磁気チャック装置の磁気チャック面に固定するためのクランプ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電磁式チャックのチャック面に非磁性材料の加工物を固定するクランプ工具を開示している。そのクランプ工具は、磁性体材料の単一の板部材で構成され、平面部と傾斜部とこれらの間に連続される薄肉部とを有する。より詳しくは、傾斜部の底面は、先端側に進むにつれて平面部の底面位置よりも高くなるように傾斜されており、また傾斜部の先端には、底面側に対して上面側が先端側に突出して当接面を構成する。そして機械加工に先立ち、電磁式チャックのチャック面に載置された加工物の両側に、対となるクランプ工具を配置し、それら傾斜部の各当接面が加工物の側面に当接するように、各クランプ工具が配置される。この状態では、傾斜部の底面と電磁チャックのクランプ面との間にテーパ状の隙間が設けられているが、磁気チャック面側から磁気力(磁力とも呼び、以下磁力とする。)が発生され磁気的吸引力が働くと、各傾斜部は薄肉部を起点としてして磁気チャック面に当接するように変位し、上記突出される当接面が加工物の側面をさらに押圧する。これにより、加工物は、対となるクランプ工具によって両側から挟み込まれるように保持されて、磁気チャック面上に固定される。
【0003】
特許文献1の技術によると、加工物の高さ寸法がクランプ工具の肉厚程度であれば問題ないが、高さ寸法が大きい加工物に対し、低い位置での把持では、充分な把持力が得られないという問題がある。すなわち、加工物に対して切削や研磨等の加工をする際に、切削点(力点)に対して加工物を把持する作用点の位置が低い位置にある場合、電磁チャック面を支点とするレバー比の関係から切削力を受け止める作用点により大きな力が必要である。そこで、作用点の位置が高い(肉厚の大きい)より大型化したクランプ工具を用いることも考えられるが、大型化する分重量が増え、加工物を脱着する現場作業者には扱いにくい。
【特許文献1】実開昭63−197051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、非磁性材料で構成される加工物を、磁気チャックのチャック面に固定する際に用いられるクランプ工具で、取扱い容易なクランプ工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもとに、本発明は、磁性体材料で設けられる吸着用の下端部(7)に平坦な底面(6)を有するベース部(2)と、同じく磁性体材料で設けられる吸引用の下端部(9)に平坦な下面(8)を有し、ベース部(2)に連結される変位部(4)と、変位部(4)の先端位置で変位部(4)の上面(1c)より高い位置に突出するとともに、変位部(4)に対して取り外し可能に設けられるか、またはベース部(2)と一体に変位する変位部(4)に一体的に設けられた部材に対して取り外し可能に設けられる当接片(5)と、変位部(4)に弾性変形可能に設けられる弾性変形部(3)と、を備える。さらに、ベース部(2)の下端部(7)を介して磁気チャック面(10)上に設置された状態で、前記変位部(4)は、磁気チャック面(10)と下面(8)との間に隙間を有するように設けられており、磁気チャック面(10)からの磁力発生時には、ベース部(2)の底面(6)が磁気チャック面(10)に磁気的に圧着されるとともに、弾性変形部(3)は、変位部(4)の下端部(9)に作用する磁気的吸引力を受けて弾性変形されるように変位部(4)に設けられる(請求項1)。上記の構成は、後述する実施例1、実施例1の変形例、実施例2、実施例2の変形例に対応している。なお、説明の都合上、ベース部(2)、および変位部(4)あるいはこれらを構成する板部材について、当接片5が取付けられる側を先端側とし、これの反対側を基端側として呼ぶことにする。
【0006】
前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、変位部(4)の下面(8)は、非磁力発生状態の磁気チャック面(10)にベース部(2)の下端部(7)を介して設置された状態で、ベース部(2)の底面(6)に対して平行かまたは変位部(4)の先端側に向けて高さ方向に低くなる傾斜態様のいずれかにより平面状に形成されるとともに、変位部(4)の下面(8)の先端部の高さ方向の位置は、ベース部(2)の底面(6)の位置よりも高くなるように設けられることにより前記隙間が設けられており、変位部(4)には、前記ベース部(2)と当接片(5)が取付けられる取付部との間の少なくとも領域の一部に、磁力発生状態における磁気チャック面(10)からの磁気的な吸引力を受けて弾性変形可能な肉厚の弾性変形部(3)が設けられる(請求項2)。また、ベース部(2)と変位部(4)は、単一の板部材(1a)で構成されるとともに、弾性変形部(3)は、前記領域の少なくとも一部でベース部(2)の肉厚よりも薄く設けられる(請求項3)。上記の構成は、後述する実施例1、実施例1の変形例に対応している。
【0007】
前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、前記弾性変形部(3)には、変位部(4)の先端側の肉厚よりも薄肉の薄肉部(12)を変位部(4)の前記領域の一部に形成している(請求項4)。上記の構成は、後述する実施例1に対応している。
【0008】
前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、弾性変形部(3)は、弾性変形可能な材料で、変位部(4)の先端近傍の下面(8)より突出するように板部材(1e)に設けられており、非磁力発生状態の磁気チャック面(10)に、ベース部(2)の下端部(7)と突出される弾性変形部(3)とを介して設置された状態で、変位部(4)の下面(8)と磁気チャック面(10)との間に隙間を形成している(請求項5)。また、ベース部(2)と変位部(4)は、単一の板部材(1a)で構成される(請求項6)。上記の構成は、後述する実施例2に対応している。
【0009】
前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、弾性変形部(3)が設けられる変位部(4)の下端部(9)には、埋め込み用の溝(14)が形成されるとともに、弾性変形部(3)は、溝(14)の上底部に接した状態に収容されており、かつ弾性変形部(3)は、非磁力発生状態の磁気チャック面(10)にベース部(2)の下端部(7)を介して設置された状態で、変位部(4)の下面(8)より下方に突出するように設けられる(請求項7)。上記の構成は、後述する実施例2の変形例に対応している。
【0010】
前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、当接片(5)は、磁力発生時の磁気的吸引力によって変位部(4)が変位する際に、変位部(4)の上面(1c)に対応する高さ位置から加工物(15)への当接点までの領域の一部が弾性変形可能に設けられる(請求項8)。上記の構成は、後述する実施例1、実施例2に対応している。
【0011】
前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、当接片(5)は、単一の板部材で構成されており、変位部(4)の上面(1c)よりも高い位置において、加工物(15)に対する板部材の当接面(16)は、磁気チャック面(10)に対する垂直線(u)に対し加工物(15)側にわずかに傾斜するように変位部(4)に取付けられる(請求項9)。上記の構成は、後述する実施例1、実施例2に対応している。
【発明の効果】
【0012】
請求項1によると、次の作用効果が得られる。非磁性体加工物のクランプ工具(1)は、ベース部(2)に連結された変位部(4)の先端位置に、変位部(4)の上面(1c)より高い位置に突出するように当接片(5)が取付けられることで、側面方向より見て全体的に略L字状に設けられ、変位部(4)の上面(1c)よりも高い位置に加工物への当接部を構成する。これにより、特許文献1のような肉厚を大きくしたクランプ工具に比べて軽量化できるため、加工物(15)の着脱作業を受け持つ現場作業者の負担を軽減でき、取り扱いが容易に行える。そして機械加工に先立ち、まず磁気チャックのチャック面(10)に加工物(15)を載置し、加工物の両側に、対となるクランプ工具(1)の当接片(5)の一部(当接部)が、加工物(15)の側面あるいは上面に当接するように配置される。この状態では、ベース部(2)の下端部(7)の底面(6)は、磁気チャック面(10)に接した状態にあり、また変位部(4)の下端部(9)の下面(8)と磁気チャック面(10)との間に、隙間が設けられている。
【0013】
そして、磁気チャック装置の磁気チャック面(10)から磁力を発生させると、ベース部(2)の下端部(7)の底面(6)は、磁気チャック面(10)への吸着にともなって発生される摩擦力によって、ベース部(2)は、後述される変位部(4)や当接片(5)の変位に備えた必要な保持力で、磁気チャック面(10)に移動不能に固定される。一方で、磁気チャック面(10)からの磁力は、変位部(4)にも働く。磁力発生前には、変位部(4)は、磁気チャック面(10)と下面(8)との間で隙間を有しているが、磁力の発生により、磁気的な吸引力が変位部(4)の下端部(9)に働くため、ベース部(2)との連結点付近(具体的には、先端位置2b)を支点として、変位部(4)の下端部(9)の先端側が磁気チャック面(10)に吸い寄せられるように変位され、弾性変形部(3)は、弾性変形する。
【0014】
他方、変位部(4)と一体の当接片(5)は、変位部(4)の上面(1c)よりも上方に突出する位置で、加工物の側面または上面に対して当接するように配置されているため、当接片(5)は、加工物(15)に当接したまま全体的に歪みを増すように(撓むように)弾性変形する。このようにクランプ工具(1)は、磁気チャック面(10)からの磁気的な吸着力によって、ベース部(2)の底面(6)が磁気チャック面(10)に強固に圧接され、変位部(4)に働く吸引力によって変位部(4)、およびこれと一体の当接片(5)を円弧状の軌跡に変位させ、当接片(5)の歪みにともなう反力を加工物の側面あるいは上面への押圧力として作用させることができる。このようにして、磁気的吸引力によって吸着できない非磁性体材料の加工物(15)を、クランプ工具(1)を介して、磁気チャック面(10)上に強固に固定することができる。
【0015】
その上、当接片(5)は、変位部(4)の先端に位置するとともに、変位部(4)の上面(1c)より高い位置に突出して設けられていて、加工物(15)を従来に比べて高い位置で、言い換えれば切削点などの加工位置に近い位置で、押圧(挟持)することができるから、非磁性材料の加工物(15)をより安定的に確実に保持できる。また当接片(5)は、変位部(4)に対して直接または間接的に取り外し可能に設けられるから、加工物(15)の大きさ(高さ寸法、幅寸法)、硬度、などに応じて弾性の異なるものを取り替えて用いることができ、加工物(15)に対応する当接片(5)を必要な把持力に応じて複数用意すれば良く、管理もし易くなる。
【0016】
請求項2によると、請求項1の発明をより具体的に構成することができ、しかも次の作用効果が得られる。磁気チャック面(10)に載置された加工物(15)の両側に、対となるクランプ工具(1)の当接片(5)が、加工物の側面あるいは上面に当接するように配置した状態では、ベース部の下端部(7)の底面(6)は磁気チャック面(10)に接した状態にある。そして、磁気チャック面(10)から磁力が発生されると、ベース部(2)の底面(6)は、磁気チャック面(10)に吸着され生じる摩擦力によって、磁気チャック面(10)に移動不能に固定される。変位部(4)の下面(8)は、非磁力発生状態の磁気チャック面(10)にベース部(2)の下端部(7)を介して設置された状態で、ベース部(2)の底面(6)に対して平行または変位部(4)の先端側に向けて高さ方向に低くなる傾斜態様のいずれかにより平面状に形成されるとともに、変位部(4)の下面(8)の先端部の高さ方向の位置は、ベース部(2)の底面(6)の位置よりも高くなるように設けられている。このため、上記配置された状態では、下面(8)と底面(6)との高さの違いによって、磁気チャック面(10)と下面(8)との間に、変位部(4)の変位に必要な隙間が設けられ、前記ベース部(2)と当接片(5)が取付けられる取付部との間の少なくとも一部の領域に、磁力発生状態における磁気チャック面(10)からの吸引力を受けて弾性変形可能な肉厚の弾性変形部(3)が設けられる。
【0017】
好ましくは、請求項3のように、ベース部(2)と変位部(4)と弾性変形部(3)は、単一の板部材(1a)で構成し、弾性変形部(3)は、前記領域の少なくとも一部でベース部(2)の肉厚よりも薄く設けられる。これによって、単純化された構造で、製造コストをより削減することが可能になるとともに、例えば、適切な肉厚の領域を長く設けることで弾性変形可能な領域を長く設けることができ、これによって変位部(4)と単一に設けられる弾性変形部(3)を、磁気的吸引力が働いたときに全体的に変形させることができるため、いわゆる局所的な応力集中を分散できる分、長命になる。
【0018】
さらに、請求項3によると、前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、前記弾性変形部(3)は、変位部(4)の先端側の肉厚よりも薄い薄肉部(12)を変位部(4)の前記領域内に形成しているから、薄肉部(12)の肉厚によって弾性変形部(3)の弾性変形の度合いが適切に設定できる。また、薄肉部(12)を有しない、例えば変位部(4)が、先端側の肉厚と同じ肉厚に設けられることで実質的に弾性変形部(3)の機能を有するクランプ工具に比べ、必要な弾性変形の特性が容易に得られる。例えば、変位部(4)がより小さな力で確実に大きく変位し、この結果当接片(5)の歪みにともなう反力が大きくなる分、加工物(15)に対してより大きな押圧力が得られる。請求項4によると、ベース部(2)と変位部(4)とが単一の板部材に設けられるクランプ工具(1)では、このような薄肉部(12)を、ベース部(2)と変位部(4)の先端との間である前記領域内に、変位部(4)の底面(8)あるいは上面(1c)のうち1以上に溝(18)として形成することができる。
【0019】
請求項5によると、請求項1の発明をより具体的に構成することができ、しかも次の作用効果が得られる。前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、弾性変形部(3)は、弾性変形可能な材料で、変位部(4)の先端近傍の位置の下面(8)より突出するように前記板部材(1e)に設けられていて、非磁力発生状態の磁気チャック面(10)に、ベース部(2)の下端部(7)と突出される弾性変形部(3)とを介して載置された状態では、変位部(4)の下面と磁気チャック面(10)との間に隙間を形成する一方、板部材(1e)の基端側の一部の下面が磁気チャック面(10)に受けられている。そして、磁気チャック面(10)から磁力が発生されると、磁性体材料で設けられる板部材全体に磁気的な吸引力が働き、弾性変形部(3)は歪みながら、板部材(1e)が全体として磁気チャック面(10)に吸い寄せられる。その中で、磁気的吸引力は、特に磁気チャック面に当接する領域や隙間の小さいこれらの近傍領域に大きな吸着力を生じせしめ、板部材(1e)が撓むように弾性変形して磁気チャック面(10)に密着される。このように密着される領域の摩擦力によって、クランプ工具(1)は、移動不能に固定されるとともに、吸い寄せられた板部材(1e)は、上記密着された領域を支点に、弾性変形部(3)が歪み変形しつつ、下面とチャック面(10)との間の隙間が小さくなるようにさらに接近し、吸い寄せられる。
【0020】
つまり、クランプ工具(1)を構成する板部材のうち、磁気チャック面(10)からの磁力発生時に、下面が磁気チャック面(10)に密着される領域が、実質的にベース部(2)として機能するとともに、板部材のこれより先端側の領域が、基端側の下面の当接位置を中心として円弧を描くように変位する変位部(4)として機能される。このようにして、磁力発生状態では、単一の板部材(1e)の変位部(4)全体にわたり磁気チャック面(10)に吸い寄せられて、ベース部(2)に近い領域で圧接状態となり、板部材の変位量、ひいては当接片(5)の変位量も大きくなるため、加工物(15)に対して適切な押圧力が得られ、確実に保持できる。
【0021】
請求項6に示したように、ベース部(2)と変位部(4)は、連続する単一の板部材(1e)で構成されることにより、単純化された構造で、製造コストをより削減することができる。しかも、適切な肉厚の領域を長く設けることができ、弾性変形部(3)を磁気的吸引力が働いたときに全体的に変形させることができるため、いわゆる局所的な応力集中を分散できる分、長命になる。
【0022】
請求項7によると、前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、変位部(4)の下面(8)の弾性変形部(3)が設けられる位置には、埋め込み用の溝(14)が形成されるとともに、非磁力発生状態には、弾性変形部(3)は、前記溝(14)の上底部に接した状態で変位部(4)の下面(8)より下方に突出するように設けられるから、いわゆる埋め込み用の溝無し構成のように、変位部(4)の下面に直接取付けるときに比べ、弾性変形部(3)の高さ寸法の制約が緩和されるとともに、圧縮方向の力を、埋め込まれた材料全体で受けることができる。この例によれば、弾性変形部(3)は大きく弾性変形し、弾性変形部(3)の弾力、すなわち採用可能な材料の選択の自由度が増える分、クランプ工具の製造コストをより抑えることが可能になるとともに、弾性変形部(3)がより長命になる。
【0023】
請求項8によると、前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、当接片(5)は磁力発生時の磁気的吸引力によって変位部(4)が変位する際に、加工物(15)に対する当接状態を維持しつつ変位部(4)の上面(1c)に対応する高さ位置から加工物(15)への当接点までの領域の一部に弾性変形可能に設けられるから、磁力発生にともなう当接片(5)の弾性変形によって、変位部(4)の下端部(9)が磁気チャック面(10)に確実に接近する。一方、変位部(4)が磁気チャック面(10)に確実に接近するほど、変位部(4)の磁気的吸引力が著しく増大し、変位部(4)の作用点から当接片(5)に大きな力が加わることになるが、当接片(5)の弾力によって、変位部(4)に働く磁気的吸引力よりも抑えられた適切な力で押圧できる。よって過剰な力で押圧把持することによって加工物(15)を変形させたり、傷つけるような不都合も発生しない。
【0024】
請求項9によると、前記非磁性体加工物のクランプ工具(1)において、当接片(5)は単一の板部材で構成されており、変位部(4)の上面(1c)よりも高い位置において、加工物(15)に対する板部材の当接面(16)は、磁気チャック面(10)に対する垂直線(u)に対し加工物(15)側にわずかに傾斜するように変位部(4)の先端に取付けられるため、取り扱いが容易であるとともに、簡略化された構成でありながら、変位部(4)の変位にともなう力をより効率的に当接片(5)に伝えることができ、クランプ工具(1)のセット作業、すなわち当接片(5)を加工物(15)に当接するように配置する作業が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔実施例1(図1ないし図3)〕
図1ないし図3は、本発明に係る実施例1の非磁性体加工物のクランプ工具1を示している。図1ないし図3において、非磁性体加工物のクランプ工具1は、大まかに言えば、肉厚t0の板部材1aと、肉厚t5の板状の当接片5とからなり、磁性体材料で設けられる板部材1aは、長手方向の一半部にベース部2と、他半部に変位部4とを備えている。
【0026】
板部材1aの基端側であるベース部2は、平坦な底面6を有する吸着用の下端部7を有しており、下端部7を介して磁気チャック装置の磁気チャック面10に設置可能に設けられている。また、ベース部2に連続して設けられる変位部4には、平坦な下面8を有する吸引用の下端部9を有している。ベース部2および変位部4が設けられる板部材1aは、ほぼ同じ高さの上面1bおよび上面1cをそれぞれ有するとともに、変位部4の下面8がベース部2の底面6の位置よりも高くなるように設けられていて、ベース部2の下端部7を介して磁気チャック面10に設置された状態で、磁気チャック面10と下面8との間に、後述される磁気的吸引の際に必要な隙間δを形成している。なお、板部材1aの上面1bには、磁気クランプ装置から取り外しの際に用いる取っ手17が取付けられている。
【0027】
変位部4の下面8は、例えば、板部材1aの底面を切削することにより平面状に設けられる。ここで言う「平面」には、完全な平面のほか、実質的に平面と見なすことが可能なものとして、曲率の大きい凹面あるいは凸面、段差面などで設けられるものを含む。
【0028】
そして、この実施例では、変位部4の上面1cにおいて、幅方向に連続される溝18を、下面8が上記高く設けられる領域の一部に形成している。溝18の底面18aと下面8との間の距離すなわち肉厚t1は、後述される磁気的吸引力を受けたときにこれより先端側の変位部4が容易に変位するように、また磁気的吸引力が解消されたときには変位部4が元の位置に復元されるように、適切な肉厚に設けられており、溝18が設けられる領域に、実質的な弾性変形部3を構成する。
【0029】
また、この例での溝18は、角形溝に限らず、断面弧状の溝(丸溝)、皿状の溝として、あるいは変位部4の上面1cに限らず、下面8側に形成することもできる。またこのような溝18によって弾性変形部3を設けるに代え、後述する図5のように、変位部4の肉厚t2を全体的にわたって弾性変形可能な肉厚に設けることにより、変形部4と重複する弾性変形部3を設けてもよい。
【0030】
また、当接片5は、変位部4の先端位置に、変位部4の上面より高い位置に突出して、加工物15の側部に対して当接可能な長さに延在しかつ弾性変形可能な肉厚t5を有する板材で構成される。そのような当接片5は、変位部4の端面4aに対し幅方向に間隔をおいて配置される複数の取付ボルト19によって取付けられる。磁力発生時に、変位部4が磁気チャック面10の磁気的吸引力によって変位する際に、当接片5は、変位部4の上面1cに対応する高さ位置から加工物15への当接点Dまでの高さ方向の領域F1にわたって弾性変形可能に設けられる(図2参照)。この例で当接片5は、例えば金属板などで構成される単一の板部材で構成されており、変位部4の上面1cよりも高い位置において、加工物15の側面に対向される当接面16を介して当接する。
【0031】
当接片5の当接面16は、変位部4の上面1cよりも高い位置において、磁気チャック面10に対する垂直線uに対し加工物15側にわずかに傾斜するように変位部4の先端に取付られており、このような傾斜は、当接片5の取付面5a、あるいは変位部4の先端面4aのうちいずれかが傾斜面として形成されることにより実現可能である(図3参照)。
【0032】
当接片5と板部材1aとの弾性(変形度合い)について、板部材1a側に剛性を持たせ、当接片5の方が板部材1aよりも変形しやすいように設けるほうがより好適である。これは、磁気チャック面10での磁力発生時には、変位部4よりも当接片5に歪みを生じさせることによって加工物15への押圧力を大きくすることができ、しかも押圧力を加工物15に近い位置で発生させることで確実にクランプさせるためである。当接片5の材料について、磁性体材料、非磁性体材料のいずれかを問わず、金属板などの板材で構成することができる。例えば、当接片5と板部材1aとが同じ磁性体材料である場合には、板部材1aの肉厚t0よりも当接片5の肉厚t5を薄くすることで、板部材1a側(言い換えれば変位部4側)の相対的な剛性を高めることで、当接片5が加工物15に当接した状態を維持しつつ弾性変形しやすいようにする。
【0033】
当接片5には、必要に応じて、上端から高さ方向下方に向けて連続されるスリット20が、幅方向に間隔をおいて複数形成される。図3のbには、当接片5を当接面16側より見た図を示すが、これらのスリット20は、当接片5を積極的に弾性変形し易くするとともに、加工物15への片当たりを無くし、幅方向全体にわたって均一に把持できるようにするためである。このスリット20は、以下のすべての実施例においても必要に応じて設けられる。なお、当接片5について、1枚の板部材に複数のスリット20を設ける代わりに、細幅の板部材を、幅方向に間隔をおいて複数並び設けるようにしてもよい。
【0034】
上記したクランプ工具1は、次のようにして用いられる。まず、磁気チャック面10の所定の位置に非磁性材料の加工物15が載置される。ここで、クランプ工具1の当接片5が加工物15に当接するように、クランプ工具1を磁気チャック面10の上に載置する。クランプ工具1は、図1のように、同じものを左右一対として準備し、加工物15を左右から挟み込むように載置される。
【0035】
上記したクランプ工具1の作用について、以下図4を用いて具体的に説明する。図4は、クランプ工具1の要部拡大図であり、磁力発生の前後の状態を、一点鎖線および実線とでそれぞれ示す。クランプ工具1は、加工物15の側面に当接するように載置された状態では、一点鎖線で示すように、変位部4の下面8と磁気チャック面10との間に隙間δを有している。
【0036】
そして、磁気チャック面10側より磁力を発生させると、ベース部2の下端部7が磁気チャック面10に対して押圧力Gが働いて圧着され、ベース部2の底面6と磁気チャック面10との間に摩擦力が生じるため、ベース部2は、その摩擦力によって磁気チャック面10に移動不能な状態として固定される。
【0037】
一方、磁気的な吸引力は、隙間δを隔てた変位部4の下端部9全体にも働く。この結果、作用力Hが働いて、変位部4およびこれと一体の当接片5は、溝18が設けられる領域(弾性変形部3)の薄肉部12に歪みを生じさせながら、ベース部2の先端側を中心に、変位部4の先端Yが磁気チャック面10に当接する位置Y’まで(図示反時計方向に)変位する。この結果、薄肉部12を構成する領域の溝18の底面18aおよび下面8は、先端側に向けて全体的に上に凸の湾曲変形した状態にされ、弾性変形状態にある。したがって、変位部4には、ベース部2と当接片5が取付けられる取付部との間の領域に、磁力発生状態における磁気チャック面10からの吸引力を受けて弾性変形可能な肉厚の弾性変形部3が設けられる。このため変位部4は、その一部により弾性変形部3を兼用していることになる。
【0038】
上記ベース部2の先端位置2bを中心とする変位部4の円弧状軌跡の変位により、これと一体の当接片5も同様に円弧状の軌跡を描きながら変位する。当接片5の当接点Dでは、図4に示すように、矢印H’の方向に押圧力を作用させ、この結果当接片の側面15aに対して直交する方向に働く分力B(すなわちクランプ力)を作用させる。しかし、実際には、当接片5は、加工物15の側面に既に当接しているため、当接片5は、上面1cよりも上方に突出する領域で歪みを生じさせながら、当接点Dにおける加工物15に対する押圧力を徐々に増大させる。つまり、当接片5の側面には、変位部4の円弧状軌跡の変位によって当接片5の歪みによる反力がクランプ力として働く。当接片5が弾性変形可能であるから、変位部4の変位過程で、当接片5は、弾性変形しながら加工物15の側面への当接位置を位置Dから位置D’に移動させながら変位部4の変位を許容するとともに、当接片5の歪みを増しながら(言い換えれば加工物15へのクランプ力を高めながら)、変位部4の先端側の下面8は、磁気チャック面10に当接する。最終的に加工物15の側面15aに働く押圧力は、当接片5の歪み量に対応する反力c’となる。
【0039】
変位部4の先端側の下面8と磁気チャック面10との隙間が狭くなるにつれて、変位部4に働く磁気的な吸引力は著しく増大するが、当接片5の弾性変形によって、加工物15への当接点に働く力は、適切に抑えられるため、加工物15を傷つけるようなこともない。
【0040】
このように、当接片5が弾性変形可能(撓み変形可能)であるため、磁力発生時に変位部4の下面8が磁気チャック面10に確実に接近する。一方、変位部4が磁気チャック面10に近づくほど、変位部4に磁気的吸引力が著しく増大し、この結果当接片5にも大きな力が加わることになるが、当接片5が弾性変形するため、加工物15への押圧力は、変位部4に働く磁気的吸引力よりも抑えられ、適切な大きさの力で押圧できる。よって、過剰な力で押圧把持することもなく、加工物15を変形させたり傷つけるような不都合が発生しない。
【0041】
当接片5は、変位部4の上面1cより突出するように設けられるため、加工物15を高い位置で、言い換えれば切削点などの加工位置に近い位置で、押圧(挟持)することができるから、非磁性材料の加工物15を確実に保持できる。
【0042】
非磁性体材料の加工物15の両側面に当接するように、対となるクランプ工具1を両側に配置し、磁気チャック面10からの磁力の発生によって、磁性体材料で設けられる変位部4の変位を、当接片5の歪みにともなう反力に変換し、加工物15の両側よりクランプ力を作用させることができる。このようなクランプ動作は、磁力が発生されると、クランプ工具は直ちに変位し、加工物15のクランプ把持が瞬時に完了されることは言うまでもない。
【0043】
従って、従来のような重量の大きい厚肉のクランプ工具1を使わずに済むため、作業者の負担が軽減される。当接片5は、ベース部2またはベース部2と一体の部材に設けられる部材に対して取り外し可能とすることによって、加工物15の大きさ(高さ寸法、幅寸法)、硬度などに応じて弾性の異なるものを取り替えて用いることができる。加工物15に対応する当接片5を複数用意すれば良く、管理もし易い。
【0044】
ちなみに、非磁性体加工物のクランプ工具1の具体的な構成(材料、 肉厚、 長さ、 隙間)などは、下記の通りである。まず、ベース部2、変位部4を構成する板部材の材料は、外部からの磁力によって、強い磁気的吸引力の働く磁性材料であって、残留磁気が小さく、自らが永久磁化されない磁性体材料であればよく、例えば、JIS記号SS400など、純度の高い鉄、炭素含有量が低い軟鉄のほか、変圧器の鉄芯の材料であるケイ素鋼板などの金属材料とする。なお、S55Cのような炭素鋼は、残留磁気が大きく、仮に磁気チャック面10側を非磁力発生状態にしたとしても、板部材の磁化(残留磁気)によって磁気的な吸引力が依然として働いたままであるため、クランプ工具の着脱に支障をきたしたり、変形しにくい材料であることから、好適な材料ではない。
【0045】
より具体的には、板部材1aの厚みt0は、10mm以上の弾性変形可能な肉厚を有すればよく、例えば15mmとし、溝18と下面8とで画定される薄肉部12の厚みt1は、磁気作用時に塑性変形にならない肉厚であればよく、例えば10mmとする。あるクランプ工具1の構成例としては、板部材(ベース部2、弾性変形部3および変位部4)の幅・長さは、それぞれ150mm・90mmとする。このときベース部2の長さは80mmで、変位部4の長さは70mmである。
【0046】
つぎに、当接片5は、磁性材料、非磁性材料を問わず、適度な弾性を有し、構造的に強い材料であればいずれも採用可能だが、例えば、JIS記号S55Cなどの機械構造用炭素鋼鋼材により構成する。その厚みは、5mm以上の変形可能な肉厚を有すればよく、例えば6mmとし、幅・長さは、それぞれ60mm・90mmとする。ベース部2、弾性変形部3および変位部4の具体的な寸法は、いずれも加工物15の大きさや、材料の堅さ(弾性係数)を考慮して決定する。また、当接片5にその頭部が埋め込まれる取付ボルト19は、極低頭の穴付ボルトを採用すればよい。
【0047】
変位部4の下面8と磁気チャック面10との隙間δは、加工物15の大きさにもよるが、好適な範囲としては、10分の数mm程度とする。また、当接片5(当接面16)と磁気チャック面10とのなす角度は、好適な範囲として90°近傍の鈍角100°〜90°程度とし(言い換えれば、図3のaの角度αは、10°〜0°とし)、その角度を設けるための具体的な手法は問わない。具体的な手法としては、図1〜図3の例のように、当接片5または変位部4の端面のいずれか一方をテーパ状に形成するか、または当接片5を取付ける際にシムを挟むようにしてもよい。
【0048】
この実施例1では、加工物15の左右両側に本発明のクランプ工具1を配置する例であるが、いずれか一方を従来のブロックに置き換えてもよい。例えば、そのようなブロックは、クランプ工具1の材料と同じ、磁性体材料として構成し、磁力の発生によって、磁気チャック面に吸着されるもので構成してもよい。あるいは、例えば非磁性体材料を材料とし、磁気チャック面上にねじ部材を介して移動不能に固定されたブロックとすることもできる。
【0049】
[実施例1の変形例1(図5)]
上記した実施例は、変位部4が設けられる領域の一部に、幅方向に連続される角形の溝18を設ける例であるが、板部材1aの弾性を適切に設定することで、溝18を省略することができる。図5に示す実施例1の変形例1は、溝18が省略されたクランプ工具の例であり、板部材1aが磁性体材料で設けられる点、変位部4の下端部9との間に隙間δが設けられる点等、上記実施例と同じである。この実施例では、変位部4の肉厚t2が、弾性変形可能な肉厚に設けられている。磁気チャック面10からの磁力発生前後のクランプ工具の状態を、図5において一点鎖線および実線により示している。この実施例では、磁力発生にともなう変位部4の下端部の変位によって、板部材1aが先端位置を含む一部の領域で磁気チャック面10に当接して図示当接領域を構成するとともに、それより基端側の領域が、上面1cおよび下面9が下に凸の湾曲変形した状態で静止されている。すなわち、このような湾曲される領域が実質的に弾性変形部3として機能しており、変位部4に対して重複され、しかも上記した実施例1に対してより長い区間にわたって弾性変形部3が設けられる例でもある。
【0050】
〔実施例1の変形例2(図6および図7)〕
図6および図7は、実施例1の変形例による非磁性体加工物のクランプ工具1を示している。
【0051】
まず、図6の変形例は、クランプ工具1を複数の部材で構成する際の具体的な例である。うち、図6のaからcは、上記した実施例の板部材1aを、複数の部材を連結して一体に設ける例であり、後述する図6のdは、当接片5および変位部4の部分を単一部材で構成した例である。図6のaは、ベース部2を有するベース部材42と、変位部4を有しベース部材42に比べて薄い肉厚に設けられる変位部材44とを設けるとともに、両者の間に連結部材46を介在させ連結させる例であり、より詳しくは、連結部材46は、変位部4ならびにベース部2よりも薄肉の連結部材21を有するとともに、前記連結部材21の両端部に設けられた取付部22、23で、取付ボルト24、25によりベース部材42、変位部材44の各端部を固着して一体に設ける例である。
【0052】
この例によると、連結部材46に設けた薄肉の連結部材21が、実質的に弾性変形部3として機能し、またベース部材42とほぼ同じ肉厚に設けられた取付部22とベース部材42とは、上記固着によって、実質的にベース部2として機能する。また連結部材46および変位部材44の下面と、磁気チャック面10との間には、隙間δが設けられていて、変位部材44の下端部9が、磁気的な吸引力によって変位可能にされている。なお、連結部材21は、変位部4と同じ材料またはその弾性特性に近い材料により構成することもできるし、これよりも弾性変形しやすい材料(非磁力発生状態において変位部4をもとの位置に復帰させる復元力が得られる材料)であればよい。また、この実施例における連結部材21は、非磁性体材料で構成することも可能である。仮に弾性変形部3の疲労により破損したとしても、連結部材21のみを交換すればよく、メンテナンス性の面で有利である。
【0053】
図6のbは、図6のaにおける変位部材44と連結部材46とを、単一の板部材50で設ける例である。より詳しくは、側面から見て凹型のベース部材48と、弾性変形部3、変位部4、および取付部22を有する部材50で構成するとともに、部材50の取付部22が、凹型のベース部2の内側から挿入される取付ボルト26により、ベース部材48に一体に取付けた例である。この例でも、必要に応じて変形を促すための溝18が形成され、画定される薄肉部12がベース部2寄りに設けられている。なお、部材48および部材50はいずれも磁性体材料で設けられる。
【0054】
上記の変形例では、溝18は、既述の通り、上面側に設ける代わりに、下面側に設けてもよく、さらには双方に設けることもできる。特に、下面に溝18を設ける場合、変位部4の先端が当接する前に、支点に遠い方の溝18の側部と下面との角部が、磁気チャック面10に先に当たることが考えられ、これにより変位部4の先端側が接近する力が減殺され、当接片5の変位量が抑えられることがある。好ましくは、角部が先に磁気チャック面10に当たらない方がよいから、具体的には先端側下面の高さ位置が先端側に向けて低くなるように(言い換えれば、先端側に向けて開口されるテーパ状の)隙間を設ける。また、幅方向に延びる溝18の代わりに、肉厚方向に貫通される貫通孔(丸穴)を幅方向に間隔をおいて複数設けたり、あるいは幅方向に貫通される貫通孔(丸穴)を板部材の延在方向に間隔をおいて複数設け、弾性変形しやすくすることも考えられる。これらの事項は、図1〜図6の実施例に限らず、すべての実施例においても言えることである。
【0055】
図6のcは、図6のaに対し、ベース部材42と連結部材46とを、単一の板部材52に設ける例である。より詳しくは、ベース部2を有する部材52の一端側に、先端側に向けて側面から見てL型に延びる連結部材21を部材52と単一に形成する。さらに、変位部4を、連結部材21の先端側に設けられた取付部23の内側より取付ボルト25により固着し、一体に取付けた例である。ここでは、ベース部2に比べて薄肉に設けられる連結部材21およびその両側の取付部とで、角溝のような空間が形成され、実質的な弾性変形部3を構成している。
【0056】
図6のdは、図6のaに対し、弾性変形部3を有しベース部材42に対する取付部を有する部材46と、変位部材44と、さらに変位部4の先端側に位置する当接片5とを、単一部材58によって設ける例である。当接片5は、変位部4に対しては着脱自在でないが、ベース部材42に対し、弾性変形部3、変位部4および弾性変形部3が同時に着脱自在となる。この例によると、図6のaに比べて部品数が少なくなる点で有利となる。
【0057】
さらに、図7は、クランプ工具1には、加工物15に対する当接片5を、板部材1dの延在方向の両側に設けることで、1つのクランプ工具と、複数の固定用ブロックとで、2個の加工物15を同時に保持する例である。クランプ工具1について、より詳しくは、弓なり形状の板部材1dの凸部を下にして、中央部にベース部2を設けるとともに、その両側に変位部4を設け、両方の変位部4の先端側に当接片5を、変位部の上面1cよりも上方に突出するようにそれぞれ取付ける。ここで、板部材1dの両側にある、下端部9と磁気チャック面10との間に隙間を有する部分が、変位部4、および磁気的な吸引力によって弾性変形可能な弾性変形部3として機能する。
【0058】
図7の例では、磁性体材料に設けられる位置決め用のブロック27が2個用いられる。より詳しくは、2個の加工物15は、クランプ工具1の両側の対応する当接片5に、加工物15の側面が当接するように磁気チャック面10にそれぞれ配置される一方、各ブロック27は、加工物15の上記当接する側面とは反対側の側面に、対応するブロック27の側面が当接するように、磁気チャック面10にそれぞれ配置される。このようにして、所定位置に配置された2個の加工物15は、両側でクランプ工具1の当接面16と対応するブロック27の側面とに当接した状態にある。
【0059】
磁気チャック面10に磁力が発生すると、浮き上がり状態にある両側の変位部4は、磁気チャック面10に磁気的に吸着され、磁気チャック面10に当接するように弾性変形する。この結果、双方の当接片5も図示しない支点を中心に円弧状の軌跡を描いて変位する結果、外側下方に向けて変位し、当接片5は歪みを増して両側の加工物15を押圧する。一方で、ブロック27は、磁気チャック面10上に図示しないねじ部材を介して移動不能に固定されるか、あるいは磁性体材料で製作されることにより磁気チャック面10に吸着して相対的移動不能にされるため、上記当接片5の歪みによって生じる反力を、加工物15に当接する側面にそのまま作用させる。このように、押圧力を両側から作用させて、2個の加工物15を保持することができる。なお1個の加工物15のみを加工する場合、このクランプ工具1の片方にのみ加工物15を配置すればよい。例えば、そのようなブロック27は、クランプ工具1の材料と同じ、磁性体材料として構成し、磁力の発生によって、磁気チャック面10に吸着されるもので構成してもよい。あるいは、例えば非磁性体材料を材料とし、磁気チャック面10上にねじ部材を介して移動不能に固定されたブロックとすることもできる。
【0060】
〔実施例2(図8)〕
図8は、本発明に係る実施例2の非磁性体加工物のクランプ工具1を示している。この例において、クランプ工具1は、大まかに言えば、磁性体材料で設けられる肉厚t0の板部材1eと、肉厚t5の板状の当接片5、により構成されており、弾性変形部3は、弾性変形可能な材料、例えば肉厚0.5mm程度の板ゴムにより構成され、弾性変形部3としての板ゴムは、板部材1eの先端側近傍位置の下面8に下向きに突出するように貼付されている。当接片5の一端部は、板部材1eの先端に、板部材1eの先端に設けられたL形の仕口(例えば、包み打ち突付け)ならびに挿入される取付ボルト19等を介し、固着されていて、当接片5は、板部材1eの上面1cよりも突出するように設けられる。
【0061】
クランプ工具1が非磁力発生状態の磁気チャック面10に設置された状態では、基端側の図示位置vで磁気チャック面10に線接触して当接しており、先端側に位置する弾性変形部3としての板ゴムは、板部材1eの下面8と磁気チャック面10との間に隙間δを形成する。
【0062】
実施例1と同様に、クランプ工具1は、加工物15の側面に当接片5を当てながら磁気チャック面10に載置する。この載置状態のときに、クランプ工具1は、基端側では、板部材1e図示位置vで磁気チャック面10に線接触(当接)しており、また先端側では、弾性変形部3としての板ゴムが磁気チャック面10に当接している。
【0063】
そして、磁気チャック面10側から磁力を発生させると、図9に示すように、板部材1eには、下端部全体に吸引力が働き、板ゴムで構成される弾性変形部3は圧縮変形し、板部材1eは、当接位置vを支点に磁気チャック面10側に吸い寄せられる。板部材1eは、隙間が小さい領域ほどより大きな吸引力を受ける。また、板部材1eは、いくらか弾性を有しているため自らも歪みを生じ、磁気チャック面10に当接する箇所が、図示するように図示位置vから図示位置wまでの領域に、よりも広がることになり、磁気チャック面10への圧着にともなう摩擦力によって、クランプ工具1は、磁気チャック面10に対して相対的移動不能にされる。一方で、また図示位置wより先端側の領域全体では、磁気チャック面10側により接近して吸い寄せられる。つまりこの実施例では、板部材1eについて、磁力発生時における、磁気チャック面10に圧着される図示位置vから図示位置wまでの領域が本願発明でいうベース部2として機能し、またこれよりも先端側の領域が実質的に変位部4として機能するのであり、言い換えれば、ベース部2および変位部4は、連続される単一の板部材1eにより構成されている。
【0064】
以下、実施例1と同様に、変位部4の変位にともない、当接片5が歪み変形して加工物15を押圧する結果、クランプ工具1は、当接片5の当接面16を加工物15の側面にさらに押し当てる。また実施例1と同様に、加工物15の反対側にもクランプ工具1が同様に配置されており、いずれのクランプ工具も、磁力の発生によって、同時に変位される結果、加工物15を両側より同時に押圧し把持することができる。なお、板部材1eは、殆ど変形しない剛体であってもよいが、適度に弾性変形可能な材料であってもよい。
【0065】
〔実施例2の変形例(図10)〕
図10は、実施例2による非磁性体加工物のクランプ工具1で、特に弾性変形部3の変形例を示している。この例で、板部材1eの下面8の弾性変形部3が設けられる先端側位置には、埋め込み用の溝14が幅方向に間隔をおいて複数設けられるとともに、複数の溝14には、弾性変形部3として弾性体が、それぞれ溝14の上底部に接した状態で下面8より下方に突出するように設けられる。弾性変形部3として弾性体は、ゴム板に限らず、例えば、弾性ウレタン、板ばね等のばねなど公知の部材で構成できる。
【0066】
この変形例によると、磁気チャック面10での磁力発生時には、下面8から突出しないように、弾性変形部3が圧縮変形することができるため、板部材1eの下面が全体的に磁気チャック面10に圧着状態になる。このため、板部材1eの先端側に位置される変位部4の変位量、言い換えれば、当接片5の歪み量が大きくなり、加工物15に対しより大きな押圧力が得られる。
【0067】
〔実施例1および実施例2の変形例(図11ないし図14)〕
図11ないし図13は、実施例1および実施例2の変形例による非磁性体加工物のクランプ工具1を示している。
【0068】
まず、図11は、実施例1(図1〜図4)における板部材に対し、取っ手17および当接片5が取付けられる部分(基体)と、磁力による吸引力が必要な部分(下端部7、9)とを別体構成する例である。より詳しくは、底面6あるいは下面8を有する下端部7、9を磁性体材料板で製作した部材2a、4aで構成する。これに対し、それらが取付けられる基体1fは、磁性体材料、あるいは非磁性体材料のいずれかを問わず、適度な弾性を有している材料で構成する。基体1fの先端側端部には、当接片5が複数の取付ボルト19によって一体に取付けられる。また、板部材2a、4aは、それぞれ取付ボルト28、29により基体1fの下面に取付けられる。この例によると、基体1fを、軽い材料で構成できるから、クランプ工具1の全体の重量が軽量化できる。
【0069】
図12は、板部材に対する当接片5の取付け態様の変形例であり、いずれの例も、当接片5を、板部材1g側の先端側の端面ではなく、上面あるいは下面に取付ける例であり、また、加工物15に対して、側面ではなく上面側より、磁気チャック面10側に向けて押圧するように当接面16を設ける例である。本実施例の当接片5は、上方に延在される延在部5aの両端より、上記方向に向きを変えて延びる係合部33および取付部11を有し、側面方向(図示紙面側)より見て略クランク状に設けられている。そして、図12のaのように、取付部材11を変位部4の下面に取付ボルト30によってねじ止めにより取り外し可能とするか、または図12のbのように、取付部材11を変位部4の上面に取付ボルト30によってねじ止めにより取り外し可能な状態として固定される。このように、当接片5の取付け位置は、変位部4の先端面に限らず、変位部4の上面または下面でもよい。なお、この例において、ベース部2、弾性変形部3および変位部4の構成は、実施例1(図1ないし図3)のものと同様である。
【0070】
図13は、当接片5を取付け位置で補強しながら変位部4に取り外し可能取付ける変形例である。図13のaにおいて、当接片5は、当接片5の撓み変形量を減らし、剛性を強くして、加工物15に対する押圧力を高め、必要な把持力を確保するために、補助の当接片5とともに重ね板ばね状として変位部4の先端面に取付ボルト19により取付けられている。なお、この例で、ベース部2、弾性変形部3および変位部4の構成は、実施例1(図1ないし図3)のものと同様である。
【0071】
また、図13のbにおいて、当接片5は、変位部4の上面にねじ32により取付けられているL形アングル材の補強材31によって補強されている。補強材31は、当接片5の背面部分に当接し、加工物15を押圧するときに、当接片5の変形量を減らし、押圧力を強化している。なお、この例でも、ベース部2、弾性変形部3および変位部4の構成は、実施例1(図1ないし図3)のものと同様である。
【0072】
図13のaでは、当接片5の重ね枚数を変更するか、厚みの異なる当接片5を重ねることにより、また図13のbでは、補強材31の厚みを異ならせるか、または当接片5に対する補強材31の当たり加減または高さを調節することにより、当接片5の変形による反力(押圧力)を調節可能とすることもできる。
【0073】
本発明をより発展させたものとして、以下の変形例が考えられる。例えば図7に示す、クランプ工具1の両側に当接片を設けるものについて、当接片5を、外側に変位させる代わりに、内側に変位させるように構成してもよい。次に図14は、反り方向を逆方向つまり上に凸とする板部材1hの両側に、当接片5をそれぞれ設け、磁力による板部材1hの弾性変形時に、左右の当接片5を内側に変位させる例である。この例では、板部材の左右の端部が、ベース部2および変位部4を兼用しており、板部材の中央部(凸部)が、弾性変形部3に相当する。加工物15は、板部材の上に載置される。磁気チャック面10に磁力を発生させると、弓なり状の板部材の中央部が磁気チャック面10に吸着されて圧接するように変形するため、左右一対の当接片5は、内側に向けて変位し、その結果、1個の加工物15を両側から挟み込むように把持することになる。
【0074】
以上の例において、当接片5は、当接面16により加工物15の側面に当接し、その側面を押圧しているが、その当接(押圧)位置は、加工物15の側面に限らず、図12のaや図12bに例示するように、当接片5の先端に適当な形状の係合部33を設ければ、加工物15の上面とすることもできる。この点については、実施例2およびその変形例にも適用可能である。この場合、クランプ動作時に、係合部33は、加工物15の上面を下方に向けて押圧することになる。この係合部33は、必要に応じてすべての実施例について適用できる。なお、係合部33の形状は、加工物15のクランプ位置の形状に応じてL形や鉤形として、当接片5と同じ部材により構成するか、または当接片5と別の部材により構成し、当接片5の先端に取付けられる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のクランプ工具1は、工作機械の加工テーブルや割り出し円テーブルなどに取付けられる磁気チャック装置で非磁性体材料の加工物15をクランプするときに利用できる。
【0076】
なお、本発明の前提となる磁気チャック面10は、電磁式チャック、永磁式チャックまたは永電磁式チャックのチャック面とすることができる。
【0077】
上記電磁式チャックは、埋め込まれた電磁石への通電によりチャック面から磁力を発生して、加工物15をクランプするものであり、非通電にすることで加工物15をアンクランプ状態とするが、クランプ状態では、常時通電する必要があり、省エネルギーの面で難点がある。
【0078】
上記永磁式チャックは、内部で永久磁石をチャック面に近づくように移動させることで、チャック面から磁力を発生させ、加工物15をクランプするものであり、永久磁石をチャック面から遠ざけるように移動させることで加工物15をアンクランプ状態とする。
【0079】
上記永電磁式チャックは、内部に埋め込まれた磁性体に巻き付けたコイルに通電することにより、磁性体を永久磁石に磁化させてして、チャック面から磁力を発生させ、加工物15をクランプする。徐々に減衰する交流電流をコイルに通電することで、磁性体(永久磁石)を脱磁し、加工物15をアンクランプ状態とする。永電磁式チャックでは、一度磁化すれば、通電しなくても、クランプ状態が維持されるため、省エネルギーの面で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施例1によるクランプ工具1の使用状態の正面図である。
【図2】本発明の実施例1によるクランプ工具1の使用状態の一部の拡大正面図である。
【図3】本発明の実施例1によるクランプ工具1の要部の説明図である。
【図4】本発明の実施例1によるクランプ工具1の作用説明図である。
【図5】本発明の実施例1の変形例によるクランプ工具1の作用説明図である。
【図6】本発明の実施例1の変形例によるクランプ工具1の正面図である。
【図7】本発明の実施例1の変形例によるクランプ工具1の正面図である。
【図8】本発明の実施例2によるクランプ工具1の使用状態の一部の拡大正面図である。
【図9】本発明の実施例2によるクランプ工具1の作用説明図である。
【図10】本発明の実施例2の変形例によるクランプ工具1の要部の拡大正面図である。
【図11】本発明の変形例によるクランプ工具1の正面図である。
【図12】本発明の変形例によるクランプ工具1の正面図である。
【図13】本発明の変形例によるクランプ工具1の正面図である。
【図14】本発明の変形例によるクランプ工具1の正面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 クランプ工具
1a 板部材
1b 上面
1c 上面
1d 板部材
1e 板部材
1f 基体
1g 板部材
2 ベース部
2a 磁性体材料
2b 先端位置
3 弾性変形部
4 変位部
4a 磁性体材料
5 当接片
5a 延在部
6 底面
7 下端部
8 下面
9 下端部
10 磁気チャック面
11 取付部材
12 薄肉部
14 埋め込み用の溝
15 加工物
15a 側面
16 当接面
17 取っ手
18 溝
18a 底面
19 取付ボルト
20 スリット
21 連結部材
22 取付部
23 取付部
24 取付ボルト
25 取付ボルト
26 取付ボルト
27 位置決め用のブロック
28 取付ボルト
29 取付ボルト
30 取付ボルト
31 補強材
32 ねじ
33 係合部
42 ベース部材
44 変位部材
46 連結部材
48 ベース部材
50 板部材
52 板部材
58 単一部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体材料で設けられる吸着用の下端部(7)に平坦な底面(6)を有するベース部(2)と、
同じく磁性体材料で設けられる吸引用の下端部(9)に平坦な下面(8)を有し、ベース部(2)に連結される変位部(4)と、
変位部(4)の先端位置で変位部(4)の上面(1c)より高い位置に突出するとともに、変位部(4)に対して取り外し可能に設けられるか、またはベース部(2)と一体に変位する変位部(4)に一体的に設けられた部材に対して取り外し可能に設けられる当接片(5)と、
変位部(4)に弾性変形可能に設けられる弾性変形部(3)と、を備え、
ベース部(2)の下端部(7)を介して磁気チャック面(10)上に設置された状態で、前記変位部(4)は、磁気チャック面(10)と下面(8)との間に隙間を有するように設けられており、
磁気チャック面(10)からの磁力発生時には、ベース部(2)の底面(6)が磁気チャック面(10)に磁気的に圧着されるとともに、弾性変形部(3)は、変位部(4)の下端部(9)に作用する磁気的吸引力を受けて弾性変形されるように変位部(4)に設けられることを特徴とする非磁性体加工物のクランプ工具(1)。
【請求項2】
変位部(4)の前記下面(8)は、非磁力発生状態の磁気チャック面(10)にベース部(2)の下端部(7)を介して設置された状態で、ベース部(2)の底面(6)に対して平行かまたは変位部(4)の先端側に向けて高さ方向に低くなる傾斜態様のいずれかにより平面状に形成されるとともに、変位部(4)の下面(8)の先端部の高さ方向の位置は、ベース部(2)の底面(6)の位置よりも高くなるように設けられることにより前記隙間が設けられており、
変位部(4)には、前記ベース部(2)と当接片(5)が取付けられる取付部との間の少なくとも一部の領域に、磁力発生状態における磁気チャック面(10)からの吸引力を受けて弾性変形可能な肉厚の弾性変形部(3)が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の非磁性体加工物のクランプ工具(1)。
【請求項3】
ベース部(2)と変位部(4)と弾性変形部(3)は、単一の板部材(1a)で構成されるとともに、弾性変形部(3)は、前記領域の少なくとも一部でベース部(2)の肉厚よりも薄く設けられることを特徴とする請求項2に記載の非磁性体加工物のクランプ工具(1)。
【請求項4】
前記弾性変形部(3)は、変位部(4)の先端側の肉厚よりも薄肉の薄肉部(12)を、変位部(4)の上面または下面のうち1以上に形成された溝(18)により形成する、ことを特徴とする請求項3に記載の非磁性体加工物のクランプ工具(1)。
【請求項5】
弾性変形部(3)は、弾性変形可能な材料で、変位部(4)の先端近傍の下面(8)より突出するように板部材(1e)に設けられており、
非磁力発生状態の磁気チャック面(10)に、ベース部(2)の下端部(7)と突出される弾性変形部(3)とを介して設置された状態で、変位部(4)の下面(8)と磁気チャック面(10)との間に隙間を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の非磁性体加工物のクランプ工具(1)。
【請求項6】
ベース部(2)と変位部(4)は、連続する単一の板部材(1e)で構成されることを特徴とする請求項5に記載の非磁性体加工物のクランプ工具(1)。
【請求項7】
弾性変形部(3)が設けられる変位部(4)の下端部(9)には、埋め込み用の溝(14)が形成されるとともに、弾性変形部(3)は、溝(14)の上底部に接した状態に収容されており、かつ弾性変形部(3)は、非磁力発生状態の磁気チャック面(10)にベース部(2)の下端部(7)を介して設置された状態で、変位部(4)の下面(8)より下方に突出するように設けられる、ことを特徴とする請求項5または6に記載の非磁性体加工物のクランプ工具(1)。
【請求項8】
当接片(5)は、磁力発生時の磁気的吸引力によって変位部(4)が変位する際に、変位部(4)の上面(1b)に対応する高さ位置から加工物(15)への当接点までの領域の一部が弾性変形可能に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の非磁性体加工物のクランプ工具(1)。
【請求項9】
当接片(5)は、単一の板部材で構成されており、変位部(4)の上面(1c)よりも高い位置において、加工物(15)に対する板部材の当接面(16)は、磁気チャック面(10)に対する垂直線(u)に対し加工物(15)側にわずかに傾斜するように変位部(4)に取付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の非磁性体加工物のクランプ工具(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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