説明

非結合管腔を接合するための組成物および方法

血管腔を含む、患者体内の非結合管腔を接合する組成物、方法、およびキットを開示する。より詳細には、各種態様において、本発明は、通常は顕微鏡下技術を要する微細な管腔を含むこうした非結合管腔を接合する組成物、方法、およびキットを提供する。本発明は、管状組織の終端部分の形状の安定化がこうした非結合組織の接合を容易にするという発見に関する。一態様においては、こうした安定化が、接続すべき管状組織の少なくとも一方の管腔の終端部分に配置することが可能な生体適合性固体物質の使用によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年6月21日に出願された米国仮特許出願第60/805,425号、2006年6月29日に出願された同第60/806,242号および2007年4月27日に出願された同第60/914,635号(これらの全ては、それらの全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は概して、血管腔を含む、患者体内の非結合管腔を接合する組成物、方法、およびキットに関する。より詳細には、各種態様において、本発明は、通常は顕微鏡下手技を要する微細な管腔を含むこうした非結合管腔を接合する組成物、方法、およびキットを提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
非結合管腔は、非結合管腔が意図的に創出される外科的状況、または裂傷または刺創に起因するものなど、様々な状況で発生する。意図的に創出される非結合管腔は、例えば、バイパス処置や合成グラフトの取り付けによる管腔における閉塞の治療といった外科的修復、または美容外科的状況における遊離組織移植の最中に発生するものを含む。管腔の開放端部を外科的に再接続するために吻合が実施される。吻合処置の例は、脈管構造、輸精管、卵管、尿路、涙管、腸、乳腺、消化管、膵管、胆管等に対する吻合処置を含む。いずれの場合も、吻合処置は、体液が流れる通路を創出する。
【0004】
吻合は、例えば、末端−末端吻合、末端−側面吻合、および側々吻合であってもよい。これらの名称から明らかなように、吻合には様々な形態があり得る。例えば、1つの管状組織を2つの管状組織に側端接合して3つの通路を有する管状組織構成を創出してもよい。
【0005】
外科的な意味では、末端−末端吻合は、その名称から明らかなように、連続管腔が創出されるように1つの管状組織構造の端部または遠位部分を別の管状組織構造の端部または遠位部分に接続する外科的処置である(本明細書において使用した場合、「端部」または「遠位部分」は、管状組織の開放端部を指す)。
【0006】
末端−側面吻合においては、穴または開口部を有する管状組織構造がその開口部を介して管状組織の開放または遠位端と接続されて分岐形態を有する連続管腔が形成される。同様に、側々吻合においては、接合すべき管腔それぞれの穴または開口だが、2つの非結合管腔が結合されて連続管腔となる。
【0007】
吻合を成功させるには、内部構造が閉塞されず、内部の体液流−血液、精液または食物もしくは胃腸液など−を回復または向上させるように管腔を滑らかに接続することが通常は必要である。整合/結紮という外科的処置が迅速かつ正確であって、患者が危険にさらされている状態−血流が止められているなど−に置かれる時間を最小限にすることが理想的である。
【0008】
様々な「管状組織」が存在し、第1の管状組織の管腔が第2の管状組織の管腔とは直径が同じではないかもしれない。従って、この繊細な外科手術は2つ(またはそれより多く)の同一ではない管状組織の整合および結紮を伴うことがあるため、様々な結紮手技が用いられ、成功率も様々であった。これには、縫合、組織接着剤、粘着テープ、ならびにステープル、クリップおよび他の器具が含まれる。これらの用具は全て、正確で耐久性があり、生体内での潜在的な有害反応を引き起しかねない条件を有しない吻合術に対する施術者の技術をある程度必要とする。
【0009】
労働集約的な針と糸は、今日においても最もよく使用されている技術であり続けている。複雑さおよび縫合時に必要な判断のため、自動化された技法は一般には受け入れられていない。石灰化し、病変した脈管は、機械的困難を伴う。縫合は、場合によっては長期にわたる狭窄または繊維症を引き起こす反応を生じることがある。
【0010】
他の吻合手法は、結紮用のシーラントおよび生体糊の使用を含む。これらは個別に使用しても縫合または他の機械的結紮手技または器具と併用してもよい。例えば、市販のシーラントの一種である、コシール(登録商標)(アンギオテック・ファーマシューティカルズ、カナダブリティッシュコロンビア州バンクーバー)が、心臓血管手術における縫合を補完してもよい。
【0011】
クリップ等の機械的吻合器具も利用可能である。市販の器具の一種である、U−クリップ(商標)(メドトロニック、米国ミネソタ州55432ミネアポリス)は、本質的に吻合を完了させる結節用の鋭利なニチノールのフックを提供する。ニチノールは可逆変形を可能にする。C−Port(登録商標)(Cardica,Inc.、米国カリフォルニア州94063レッドウッドシティー)および関連製品が市販されており、バイパスグラフトを冠状動脈に固着させるための小型のステンレス鋼ステープルを使用している。
【0012】
しかし、末端−末端(例えば)結紮の前には、施術者は、脈管(例として血管を用いる)の辺縁付近で管腔を整合させなければならない。これが、施術者にとっては面倒なことが多い。管状組織−例えば、クランプで挟まれ血液の抜けた血管−の端部は完全な円形ではなく、むしろ血管は圧力がかかっておらず、しぼんだように見える状態にあり、辺縁の断面は、円形、楕円形または不整形にもなり得る状態であって、当然ながら内側からの構造的支持がなく、どんな形であっても不安定(周辺組織が構造的な強度を有していない限り)なためである。更に、接続すべき脈管のサイズも異なっているかもしれない。血管(例えば)または他の管状組織は幾分か弾力性(変形可能であって、原形に戻る)または可塑性(変形し、完全には原形に戻らない)があるが、結紮と同時に(例えば血管に関して言えば)漏れがない、または最小になるように管腔の辺縁を接続するには、熟練した施術者が必要である。
【0013】
微小血管に関して言えば、吻合は、例えば、切断された身体部分を再接合する、または、臓器もしくは組織を移植する過程において、血管の端部同士に対して実行される。微小血管吻合は、顕微鏡下で手作業で実行されることが多く、単調で骨の折れる作業である。接続される血管の直径が異なることも多く、両方とも非常に細くて約1から約5ミリメートル(「mm」)程度である。血管は通例、少なくとも幾分かは弾力性があるが、施術者は、形が異なりサイズが異なる2つの辺縁の(例えば)端と端を整合させ、(例えば)縫い合わせなければならない。その結果、切断された身体部分を再接続する、あるいは臓器を移植するために必要な微小血管吻合だけに何時間も要することがある。
【0014】
こうした微小血管吻合を実行する機構を提供する1つの試みが、バイオバスキュラー(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から入手可能なマイクロバスキュラー・アナストモティック・カプラーシステムである。この機構において、接続すべき各脈管の端部は、原則的に鉗子または類似の用具を用いて外側にめくられ(「外転され」)てリングにかぶせられる。各リングは脈管を外転させてかぶせる多数のピンを含む。次に、リングは各リングのピンが他方のリングの凹部に入るように互いに押しつけられて接続され、脈管の端部がつなぎ合わされる。しかし、このシステムは実質的に直径が等しい2本の血管への使用に限られる。加えて、1ミリメートル程度の直径を有する血管を手作業で外転させることは、特に、リングの辺縁に沿って実質的に均等に外転すべき場合には困難であり、骨が折れる。加えて、リングは、2つの脈管の非伸展的吻合を実現する。従って、辺縁を固定することは微小血管の末端−末端吻合のために脈管整合させる施術者の能力を支援するが、本器具は、本質的に微小血管手技に熟練した施術者を必要とする。
【0015】
患者および施術者にとって、おそらく最も厳しい吻合は、心臓血管再生に伴うものである。血液を心筋に運ぶ動脈(冠状動脈)は、プラーク(脂肪、コレステロールおよび他の物質が蓄積したもの)によって詰まることがある。すると、心臓の血管を流れる血流が遅くなったり止まったりすることがあり、胸痛または心臓発作の原因となる。心筋への血流を増加させると、胸痛を緩和し、心臓発作のリスクを減らすことができる。患者は、閉塞した冠状動脈の数によっては1、2、3カ所またはそれを越えるバイパス移植術を受けるかもしれない。
【0016】
冠状動脈バイパス術(「CABG」、施術者は「キャベッジ」と発音することもある)は、詰まった動脈を迂回、あるいは「バイパス」させて血液を流し、心臓への血流および酸素提供を改善する。CABG吻合を実行する際には、身体の別の部分から取り出した健康な血管の分節を用いて冠状動脈の閉塞した部分を迂回させる。この健康な血管は、例えば、胸腔内に存在する動脈、または患者の脚の長い静脈の一部でもよい。状況によっては、人工管状組織または動物の管状組織などの自己由来ではないグラフトを用いてもよい。健康な血管の出所に関係なく、一端は患者の心臓(大動脈)から出る太い動脈に接続され、他端は閉塞した領域の下方の冠状動脈に接合される、あるいは「移植」される。この脈管構造を「配線し直す」方法によって、心筋への実質的に遮られない血流が再開される。
【0017】
従来、冠状動脈バイパス移植手術には酸素提供器(人工心肺)が用いられている。薬を用いて患者の心臓を停止させ、これによって施術者は心臓の鼓動がない状態で手術を行うことが可能になる。人工心肺は、患者の身体全体に酸素を多く含む血液の流れを保ち続ける。この従来の心臓バイパス移植手術には、施術者のチーム(外科医、心臓麻酔医および外科看護師、ならびにかん流技師(血流の専門家))が必要である。少数の施術者および処置を伴う外科的処置に比べて、多数の施術者を要し、複雑さが増し、実際問題として、多額の医療費が必要である。
【0018】
更に、人工心肺が繰り返し患者の血液を体循環を通じて圧送するにつれ、血液の質が低下するかもしれない。血液は、末端を循環中に血栓を生じたり凝固したり、あるいは末梢の脈管構造に移動して発作を起こす血塊を形成するかもしれない。
【0019】
心拍動下心臓バイパス移植術とも呼ばれる非体外循環下冠状動脈バイパス術は、心臓を鼓動させたまま行われるが、施術者が移植を実行できるように周辺の脈管構造安定させる目的で機械器具を使用することがある。非体外循環下冠状動脈バイパス術は、以下のリスクを軽減させ得る。多くの場合、移植は鼓動する心臓に直接影響を受ける位置にある動脈に対して実行しなければならないため、安定化機構は、必ずしも十分に効果的ではなく、施術者は、グラフトが心臓の鼓動と共に動いている時に少なくともある程度までグラフトを縫合しなければならない。従って、移植の質が落ちるかもしれない。
【0020】
バイパス手術において、時間は最も重要であるが、施術者は十分かつ正確にグラフト(単数または複数)を吻合せずに急いで終わらせることはできない。従来の冠状動脈バイパス術における、バイパス術の結果に影響を与える3つの主要な決定因子は、
(1)患者が心肺バイパスされている時間
(2)患者が大動脈をクランプされた状態にある時間、および
(3)吻合の質
である。
【0021】
一時間後には、おそらくは体循環を通して血液を循環させている間に血液の質を低下させる人工心肺のために患者合併症発現頻度のリスクが増加すると考えられている。しかし、バイパス術は、3時間以上かかることが多い。更に、大動脈がクランプされ、よって血液が通過しない場合には、止められた血液が別の問題を生じると考えられている。
【0022】
吻合は時間がかかる。一カ所を吻合するのに要する平均時間は、約15から60分である。平均的なCABG処置は、約5カ所の吻合を伴うと考えられている。従って、グラフト縫合に要する平均時間は、患者合併症発現頻度が増加する60分の閾値を超えてしまう。従来の冠状動脈手術で治療され心肺バイパスを設置される患者は、各吻合を実行するために費やす時間を減らすことによる恩恵を受けるだろう。
【0023】
心臓が鼓動し続ける非体外循環下処置においては、動く心臓の表面上で吻合グラフトを縫合するという困難さゆえ、患者に実施されたこうした移植の質が低下するかもしれない。吻合は、血管グラフトの断面辺縁における位置に基づいて各縫合の向きが異なるという点で、直線的な縫合とは異なっている。当然ながら、導管または血管グラフトの上部から容易になされる縫合もあれば、導管の下になるため、実施することが難しいものもある。更に当然のことながら、こうした複雑な縫合処置を鼓動する心臓などの動いているプラットホーム上で実行することは、こうした縫合処置に伴う困難さを更に増すものである。血管グラフトを患者に不適切に接続することは、相当な術後の合併症を生じ、および/または不適切に接続されたグラフトを修正するために費やす手術室時間を増加させるかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、外科的吻合に関しては、施術者および患者の両方が、患者が処置時間を最小限にすることを可能にするより迅速な処置、および複雑さを軽減して使いやすく、合併症が少なく質が高い吻合を可能にするより単純な方法から恩恵を受けることになる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
要旨
本発明は、管状組織の終端部分の形状の安定化がこうした非結合組織の接合を容易にするという発見に関する。一態様においては、こうした安定化が、接続すべき管状組織の少なくとも一方の管腔の終端部分に配置することが可能な生体適合性固体物質の使用によって達成される。
【0026】
従って、一態様において、本発明は、患者における少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)管腔の少なくとも1つの少なくとも遠位部分に生体適合性固体錬剤を提供すること;
b)管腔を整列させること;
c)整列させた管腔を接合して導管を形成すること;および
d)固体錬剤を除去することによって導管を通る流れを確立すること
を含む方法に関する。
【0027】
一実施形態においては、固体錬剤が接合すべき管腔それぞれの遠位部分(開口)に配置される。別の実施形態においては、固体錬剤が第1の管腔の遠位部分に固体錬剤が遠位部分から突出するように配置され、この突出部が雌嵌合機能部(functionality)として作用する第2の管腔の遠位部分に対する雄嵌合機能部として使用され得る。
【0028】
本明細書において説明した方法で採用される生体適合性固体錬剤は、管腔の遠位部分に十分な構造的完全性を付与する物であれば特に重要ではない。適当な固体錬剤の例は、ゾルゲル溶液、蝋、チキソトロープ剤などを含む。
【0029】
固体錬剤の除去は、融解、相変化、粘度の変化、体液への溶解および/またはこれらの特性の組合せなどの錬剤の持つ多数の物理的特性のいずれかを用いて達成することができる。
【0030】
従って、本発明の方法態様の別の態様においては、遠位側(開放)端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
前記導管内の相可逆性ゾルゲルにゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;および
前記導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法が提供される。
【0031】
本発明の方法態様の更に別の態様においては、遠位側(開放)端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与し、遠位端から突出するように相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
第2の管腔の遠位端を第1の管腔からの前記突出部に嵌合することによって第1および第2の管腔を整列させるステップ;
導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
前記導管内の相可逆性ゾルゲルに前記ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
前記導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法が提供される。
【0032】
本発明の方法態様の別の態様においては、遠位側(開放)端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;および
前記導管を通る流れが確立されるように蝋を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法が提供される。
【0033】
本発明の方法態様の更に別の態様においては、遠位側(開放)端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与し、前記遠位端から突出するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
第2の管腔の遠位端を第1の管腔からの前記突出部に嵌合することによって第1および第2の管腔を整列させるステップ;
導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;および
前記導管を通る流れが確立されるように蝋を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法が提供される。
【0034】
本発明の方法態様の別の態様においては、遠位側(開放)端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように固体のチキソトロープ剤を提供するステップ;
第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;および
前記導管を通る流れが確立されるように前記チキソトロープ剤を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法が提供される。
【0035】
本発明の方法態様の更に別の態様においては、遠位側(開放)端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与し、前記遠位端から突出するように固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
第2の管腔の遠位端を第1の管腔からの前記突出部に嵌合することによって第1および第2の管腔を整列させるステップ;
導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;および
前記導管を通る流れが確立されるように前記チキソトロープ剤を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法が提供される。
【0036】
本発明の方法態様の更に別の態様においては、生きている哺乳動物内の管路を接続する方法であって、
第1の中空管路内に、第1の管路を開状態に保つように相可逆性ゲルを提供するステップ;
第2の中空管路内に、第2の管路を開状態に保つように相可逆性ゲルを提供するステップ;
第1の管路の端部と第2の管路の端部との間に接着剤を塗布し、接着剤に第1および第2の管路の間の結合を形成させるステップ;
第1の管路内部および第2の管腔管路の相可逆性ゲルに相変化を誘発させるステップ;
第1の管路を通って第2の管路へ向かう流れを可能にするステップ
を含む方法が提供される。
【0037】
一部の実施形態においては、接着剤は更に、両管路を接合するために両管路の外表面にも配置される。
【0038】
本発明は更に、上記の方法に有用である新規な組成物に関する。例えば、一実施形態においては、本発明は、
a)生体適合性重合体;および
b)水;
を含む熱可逆性ゾルゲルであって、約35℃から42℃のゾルゲル転移温度および少なくとも約100から約500,000パスカルの弾性率を有する熱可逆性ソーゲル
に関する。
【0039】
一実施形態においては、重合体がポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体またはそうしたブロック共重合体の混合物である。別の実施形態においては、組成物が滅菌されている。
【0040】
別の態様においては、ゲル状態におけるゾルゲル弾性率の構造的完全性だが、熱可逆性ゾルゲルが組成物の相転移温度を上昇させる生体適合性タンパク質を更に含む。
【0041】
更に別の実施形態においては、第1および第2の管腔の整列を容易にするため、固体錬剤が生体適合性染料を含有してもよい。
【0042】
本発明は更に、上記の方法に有用である新規なキットに関する。一実施形態においては、キットは、送達デバイス;およびゾルゲル、蝋および揺変性物質から選択される組成物を備える。別の実施形態においては、キットは、非結合管腔の少なくとも1つを閉鎖する少なくとも1つのクランプを更に含む。更に別の実施形態においては、キットは、管腔を封鎖する生体適合性接着剤を更に含む。
【0043】
本発明は更に、本明細書において更に説明するように、特に生きている患者内の管腔を接合する薬剤の製造のための本明細書において説明する物質または方法のうち任意のものの使用法を含む。当然ながら、生体適合性固体錬剤、例えば、相可逆性固体ゲル、蝋、チキソトロープ剤等は、使用の過程で消費され、再利用することはできない。
【0044】
本発明の方法態様の更に別の態様においては、患者における少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性固体錬剤であって、
a)管腔の少なくとも1つの少なくとも遠位部分に生体適合性固体錬剤を配置すること;
b)管腔を整列させること;
c)整列させた管腔を閉鎖して導管を形成すること;および
d)固体錬剤を除去することによって導管を通る流れを確立すること
を含む方法に用いる生体適合性固体錬剤が提供される。
【0045】
他の選択された実施形態においては、固体錬剤は本明細書において説明する方法に用いられる。
【0046】
別の態様においては、本発明は患者内の少なくとも2つの非結合管腔を接合する薬剤の製造における生体適合性固体錬剤の使用法であって、
a)管腔の少なくとも1つの少なくとも遠位部分に生体適合性固体錬剤を配置すること;
b)管腔を整列させること;
c)整列させた管腔を閉鎖して導管を形成すること;および
d)固体錬剤を除去することによって導管を通る流れを確立すること
を含む方法における使用法を提供する。
【0047】
他の選択された実施形態においては、調製された薬剤は本明細書において説明する方法に用いられる。
【0048】
本方法、組成物およびキットは、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物ならびに他の動物に使用してもよい。
【0049】
本発明は、以下の詳細な説明を付属の図面と共に読めば最もよく理解される。強調すべきは、慣行によれば、図面の各種特徴物は、原寸に比例していないという点である。それどころか、様々な特徴物の寸法は、明確化のために任意に拡大または縮小されている。含まれる図面は、図面の簡単な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】部分閉塞を有する管状組織の概略断面図である。
【図2】部分閉塞を有する領域が除去されてクランプされ遮断された管状組織の両端部を有する2つの非結合管腔が形成された、図1の管状組織の概略断面図である。
【図3】一方の端部に熱可逆性ゾルゲル(固体またはゲル相)が充填され、他方の端部に注射器によってゾルゲル(液相)を充填している状態の、図1の管状組織の概略断面図である。
【図4】端部が封鎖され、ゲル(固体相)が同じ場所にあり、クランプがまだ存在する状態の、図1の管状組織の概略断面図である。
【図5】端部が封鎖され、ゾルゲル(液相に戻った)が同じ場所にあり、クランプが除去された状態の、図1の管状組織の概略断面図である。
【図6】閉塞領域が除去された状態で、ゾルゲルが溶解し流れが再回した図1の管状組織の断面図である。
【図7】タンパク質を添加しない三ブロック重合体および3種類の異なる濃度のタンパク質を添加した三ブロック重合体対温度のグラフである。
【図8】直接送達されたヘパリンと比較したポロキサマーを用いて送達されたヘパリンの効果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
発明の詳細な説明
本組成物、医療用システム、キット、および方法の説明に先立ち、言うまでもなく、記載した特定の実施形態は当然ながら変更し得るため、実施形態はそうした実施形態に限られるものではない。同様に、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ制限されるものであるため、本明細書で用いた用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、制限を意図したものではないことは言うまでもない。
【0052】
注意すべきは、本明細書および添付の請求項において使用されている場合、単数形は、文脈が明確に別様に表していない限り複数の指示対象を含むという点である。従って、例えば、「熱可逆性のゲル」という場合は複数のこうしたゲルを含み、「接着剤」という場合は当業者には周知の1以上の接着剤およびその均等物を含む。
【0053】
I.定義
別様に定義されない限り、本明細書において使用された技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術を有する者が理解するものと同じ意味を有する。本明細書において使用された場合、以下の用語は以下の意味を有する。定義されていない場合は、用語はその技術分野で広く認められている意味を有する。
【0054】
「管腔」という用語は、血管、輸精管、卵管、尿路、涙管、腸、乳腺、消化管、膵管、胆管等の中空管および中空管を規定する周囲組織を指す。「管腔」という用語は、「管路」という用語と相互交換可能に使用される。
【0055】
「生体適合性」という用語は、「生体適合性の重合体」、「生体適合性の化合物」等のように他の語と共に使用されたときには、ヒト患者などの対象者に内用された場合に、採用された量では、非毒性かつ実質的に非免疫原性である物質を指す。
【0056】
「生体適合性固体錬剤」という用語は、第1および第2の管腔の遠位側開口を接合する間、充填された管腔の形を保つのに十分な構造的剛性を有する(すなわち、構造的完全性を付与する)生体適合性錬剤であって、その後流れを可能にするために接合された管腔から除去することができる固体錬剤を指す。生体適合性固体錬剤の例は、ゾルゲル組成物、蝋、チキソトロープ剤等を含む。好ましい実施形態においては、固体錬剤は、約100から500,000パスカルの弾性率、または揺変性固体錬剤の場合は約100から500,000パスカルの降伏応力を有する。より好ましくは、固体錬剤は、約100から10,000パスカル、更に好ましくは、約150から1500パスカルの弾性率または降伏応力を有する。
【0057】
管腔の「遠位端」および「開口」という用語は、本明細書においては相互交換可能に使用され、管腔の開口、例えば、管腔が外科的に2つの部分に分割された場合に創出される2つの端部を指す。更に、「遠位端」または「開口」は、端側または側々吻合の場合のように、管腔が完全に分割されていない場合でも、管腔の壁の一部に開けられた穴を指す。
【0058】
「管腔の遠位部分」という用語は、管腔における開口に隣接した管腔の部分を指す。従って、例えば、管腔が外科的に切断された場合、得られる2つの開口が、ここで言う第1および第2の管腔の遠位部を規定する。更に、管腔の遠位部は、端側または側々吻合処置で用いられる管腔の穴に隣接する部分を指す。非結合管腔のそれぞれに対してクランプが採用される外科的処置においては、遠位部分はクランプから開放管腔の端部までの部分である。
【0059】
「接合」という用語は、例としては縫合、生体適合性糊の使用等を含む、第1および第2の管腔が構造的に接合される任意の方法を指す。好ましい実施形態においては、管腔の接合は、接合された管腔の接合点からほとんどまたは全く漏れがない条件下で実施される。
【0060】
「固体錬剤を除去」という用語は、接合された管腔によって形成された導管から固体錬剤を除去するための多数の生理学的または化学的手段またはその組合せのうちの任意のものを指す。例えば、固体錬剤は、体温と同じまたは体温よりわずかに高い融点を有する蝋の場合のように、融解させて除去してもよい。あるいは、固体錬剤は、接合された管腔内の流れが回復した際に体液に溶解するものでもよい。更には、融解と溶解の組合せを使用することもできる。チキソトロープ剤は、せん断力の存在下では粘度が著しく低下し、流体となる性質がある。それ故、この場合、チキソトロープ剤の固体錬剤を除去するには、流れを回復させることによって発生するせん断などの内部から加えられるせん断、または外部から加えられるせん断が必要である。ゾルゲル組成物は、温度、pHまたは他のイオン濃度、光等の一定の相間移動誘因の下で、固体から液体への相間移動を起こす。このような場合は、固体から液体への相間移動を生じさせるための従来の誘因が採用される。こうした液体は体液に吸収され、身体によって排出されるまでその流体の全身的な流れの一部となる。
【0061】
「ゾルゲル」という用語は、通常はポリマー組成物であって、一定の誘因によって粘度が2000パスカル秒未満の流動性を有する組成物(「液体」)から10,000パスカル秒より高い粘度を有するゲルまたは相対的に固体状(「ゲル」または「固体」)へ相転移する組成物を指す。なお、この転移は、好ましくは可逆的であるが、必ずしも可逆的でなくてもよい。可逆的な場合は、この組成物は「相可逆性ゾルゲル」という。固体から液体への相逆進は、好ましくは5分未満、より好ましくは2分未満、更に好ましくは1分未満で起こる。
【0062】
「誘因」または「刺激」をいう用語は、ゾルからゲルまたはその逆の相転移を誘発する環境条件を指す。本発明の一実施形態は、生理学的条件においては粘度が低いが、生理学的条件のわずかに外側の条件(例えば、±2%から±10%)においては急速にゲル化する水ベースの溶液または化合物を含む。刺激としての温度の場合、液体状態からゲル化した状態への転移は、生理学的温度のわずかに外側の温度(例えば、±2%から±10%)で起こってもよい。こうした温度は、正常な生理学的体温に「近い」と言う。流動性を有する液体溶液は、1または多数のその場の環境刺激に反応してゲルになるもであり、可逆性であってもよい。組成物は、宿主組織に対する生体適合性を有していなければならない。本発明は、好ましくは生体適合性物質のみ、より好ましくは、監督機関に承認された物質のみを含む組成物を用いて実施する。
【0063】
本明細書における実実施例(working example)は、相転移を開始させるために温度を用いる熱可逆性ゾルゲル組成物であるが、他のゾルゲル組成物系を同様に使用しても、特定の吻合術での使用に関して選択してもよい。例えば、相変化はpH、イオン濃度(例えば、カルシウムイオン濃度の変化)または光などの刺激によるものでもよい。ゾルゲル組成物は、実質的に固体状態で導入しても実質的に液体状態で導入してもよい。「実質的に固体」および「実質的に液体」という用語は互いに対して相対的であるが、実用性が、ひとつには管状組織末端の形状に対する構造的支持という点にある吻合術に関して言えば、本明細書においては「実質的に固体」は、ゾルゲルがこうした構造的支持を与えるのに十分であることを意味するのに用い、本明細書においては「実質的に液体」はこうした構造的支持を与えるのに十分なほど固体化していないことを意味するのに用いる。
【0064】
例えば、管状組織が非常に細い場合、本明細書において更に詳細に提示するように、施術者は注射によってゾルゲルを導入するしたいと思うかもしれない。
【0065】
「接着剤」、「外科的接着剤」、「糊」、「生体適合性糊」等の用語は、本明細書においては相互交換可能に使用される。これらの用語は、1つの組織を別の組織に接着する、または接着できる化合物を記述するのに用いられる。糊は、共有結合を形成することによって作用し、組織を互いに接触させて自然治癒または融合させるものでもよい。接着剤は、シアノアクリレートベースの接着剤、フィブリンベースの接着剤、ポリウレタンベースの接着剤、ポリイソシアネートベースの接着剤でもよい。ポリウレタンベースの接着剤は、組織の内方成長の促進を目的に、硬化と同時にその場で開放気泡形状を形成するために添加される発泡剤を含んでもよい。接着剤物質は当業者には周知の出版物に記載されており、また、2006年5月16日交付の米国特許第7,044,982号、2005年9月6日交付の米国特許第6,939,364号を参照する。これらは両方とも、これらの開示が本開示と矛盾しない範囲内において外科的接着剤を開示し説明するためにこれらにおいて引用された出版物とともに参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0066】
II.実施形態の詳細な説明
第1の態様において、本発明は、患者における少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)管腔の少なくとも1つの少なくとも遠位部分に生体適合性固体錬剤を提供すること;
b)管腔を整列させること;
c)整列させた管腔を閉鎖して導管を形成すること;および
d)固体錬剤を除去することによって導管を通る流れを確立すること
を含む方法を提供する。
【0067】
一部の実施形態においては、固体錬剤が接合すべき管腔それぞれの遠位部分に配置される。一部の実施形態においては、固体錬剤が第1の管腔の遠位部分に固体錬剤が遠位部分から突出するように配置され、この突出部が雌嵌合機能部として作用する第2の管腔の遠位部分に対する雄嵌合機能部として使用され得る。
【0068】
一部の実施形態においては、固体錬剤が滅菌されている。
【0069】
一部の実施形態においては、固体錬剤がゾルゲル組成物を含む。一部の実施形態においては、ゾルゲルが相可逆性ゾルゲルである。一部の実施形態においては、固体錬剤が蝋を含む。更に一部の実施形態においては、固体錬剤がチキソトロープ剤を含む。
【0070】
一部の実施形態においては、相可逆性ゾルゲルおよび蝋などの固体錬剤が、ゲル相にあるときには少なくとも約100から約500,000パスカルの弾性係数(G’)を有する。一部の実施形態においては、弾性係数(G’)が約100から約20,000パスカルである。他の実施形態においては、固体錬剤が約100から約500,000パスカル、または約100から約10,000パスカル、または約150から約1,500パスカルの降伏応力を有するチキソトロープ剤である。
【0071】
一部の実施形態においては、固体錬剤が生物活性剤を更に含む。一部の実施形態においては、生物活性剤が、抗血栓薬成分、抗狭心症薬成分、抗凝固薬、抗感染薬、鎮痛薬、抗炎症薬成分、抗不整脈薬成分、抗高血圧薬成分、心不全剤、創傷治癒剤、抗喘息剤、抗利尿剤、抗腫瘍剤、解熱剤、および鎮痙剤、および抗コリン作用剤、免疫抑制剤、交感神経様作用剤、中枢神経系刺激薬;副交感神経遮断剤、ホルモン、筋弛緩薬、脂質低下剤;抗潰瘍剤、食欲抑制薬、関節炎治療薬、抗痙攣薬;抗うつ薬;鎮静薬;ならびに精神安定剤の1以上の中から選択される。一部の実施形態においては、生物活性剤が抗凝固薬である。一部の実施形態においては、抗凝固薬がヘパリンである。一部の実施形態においては、生物活性剤が抗生物質である。一部の実施形態においては、生物活性剤が成長ホルモンである。
【0072】
一部の実施形態においては、固体錬剤が生体適合性染料を更に含む。一部の実施形態においては、固体錬剤が生体適合性造影剤を更に含む。
【0073】
一部の実施形態においては、固体錬剤が、融解、相変化、粘度の変化、体液への溶解およびこれらの組合せから選択される方法によって除去される。
【0074】
一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
c)第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
e)前記導管内の相可逆性ゾルゲルに前記ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
f)前記導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法を提供する。
【0075】
一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
c)第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
e)前記導管内の相可逆性ゾルゲルに前記ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
f)前記導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法を提供する。
【0076】
一部の実施形態においては、ステップa)またはステップb)の少なくとも一方が、
a1)第1および/または第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に第1および/または第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するようゲル相の相可逆性ゾルゲルを配置するステップ
を備える。
【0077】
一部の実施形態においては、ステップa)およびステップb)の少なくとも一方が、
a2)第1および/または第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に液相の相可逆性ゾルゲルを配置するステップ;および
a3)前記第1の管腔および/または前記第2の管腔内の相可逆性ゾルゲルに、前記液相が第1および/または第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するゲル相に変化する相転移変化を誘発させるステップ
を備える。
【0078】
一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与し、遠位端から突出するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を第1の管腔からの前記突出部に嵌合することによって第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
d)前記導管内の相可逆性ゾルゲルに前記ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
e)前記導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法を提供する。
【0079】
一部の実施形態においては、相可逆性ゾルゲルが熱可逆性ゾルゲルである。一部の実施形態においては、熱可逆性ゾルゲルが約35℃から約42℃の転移温度を有する。更に一部の実施形態においては、転移温度は約37℃から約42℃である。更に一部の実施形態においては、転移温度は正常なヒト温度に近い温度である。一部の実施形態においては、熱可逆性ゾルゲルの相転移が約±1℃から約±10℃の温度変化によって発生する。
【0080】
一部の実施形態においては、熱可逆性ゾルゲルが重合体および溶媒を含む。一部の実施形態においては、溶媒が水である。一部の実施形態においては、重合体がポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)の共重合体である。一部の実施形態においては、共重合体が約8,000から16,000または約10,000から約14,000の分子量を有する。一部の実施形態においては、共重合体が約12,600の分子量を有する。
【0081】
一部の実施形態においては、熱可逆性ゾルゲルがタンパク質を更に含む。一部の実施形態においては、タンパク質がアルブミンである。一部の実施形態においては、アルブミンがウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択される。
【0082】
一部の実施形態においては、共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在する。一部の実施形態においては、共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在し、タンパク質が約0.5重量%から約2.0重量%の量で存在する。一部の実施形態においては、共重合体が約17重量%±17%のうちの20%の量で存在し、タンパク質が約1重量%±1%のうちの20%の量で存在し、水が約82重量%±82%のうちの20%の量で存在する。
【0083】
更に一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
c)第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
e)前記導管を通る流れが確立されるように蝋を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法を提供する。
【0084】
第1の態様の更に一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与し、前記遠位端から突出するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を第1の管腔からの前記突出部に嵌合することによって第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
d)前記導管を通る流れが確立されるように蝋を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法を提供する。
【0085】
一部の実施形態においては、蝋が約38℃と約45℃の間の融点を有する。一部の実施形態においては、蝋が約39℃と約45℃の間の融点を有する。
【0086】
一部の実施形態においては、蝋が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、スティードマンの蝋(Steedman’s wax)、およびこれらの組合せからなる群から選択される作用物質を含む。
【0087】
第1の態様の更に一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように固体のチキソトロープ剤を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
c)第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
e)前記導管を通る流れが確立されるように前記チキソトロープ剤を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法を提供する。
【0088】
更に一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与し、前記遠位端から突出するように固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を第1の管腔からの前記突出部に嵌合することによって第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
d)前記導管を通る流れが確立されるように前記チキソトロープ剤を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法を提供する。
【0089】
第1の態様の更に一部の実施形態においては、生きている哺乳動物内の管腔を接続するための方法であって、
第1の管腔内に、第1の管腔を開状態に保つように相可逆性ゲルを提供するステップ;
第2の管腔内に、第2の管腔を開状態に保つように相可逆性ゲルを提供するステップ;
第1の管腔の端部と第2の管腔の端部との間に接着剤を塗布し、接着剤に第1および第2の管腔の間の結合を形成させるステップ;
第1の管腔内部および第2の管腔内部の相可逆性ゲルに相変化を誘発させるステップ
第1の管腔を通って第2の管腔へ至る流れを可能にするステップ
を含む方法を提供する。
【0090】
一部の実施形態においては、管腔の少なくとも1つがヒトの循環系の脈管である。一部の実施形態においては、管腔の少なくとも1つがヒトの循環系の脈管、動静脈グラフトおよび動静脈シャントからなる群から選択される。一部の実施形態においては、管腔の少なくとも1つが同種移植片、異種移植片(例えば死体異種移植片)、および合成グラフトからなる群から選択される。一部の実施形態においては、管腔の少なくとも1つが、ヒトの卵管、精管、消化管内の管、膵管、胆管、涙管、および乳管からなる群から選択される。
【0091】
一部の実施形態においては、管腔の少なくとも1つが第1または第2の管腔の少なくとも一方が1mm未満の直径を有する。
【0092】
一部の実施形態においては、管腔の接合が生体適合性接着剤を用いて、または縫合糸によって実施される。一部の実施形態においては、生体適合性接着剤が、シアノアクリレートベースの接着剤、フィブリンベースの接着剤、ポリウレタンベースの接着剤、およびポリイソシアネートベースの接着剤の中から選択される。一部の実施形態においては、接着剤が管腔の断面に塗布される。一部の実施形態においては、接着剤が接合された管腔の外周に塗布される。一部の実施形態においては、接着剤は更に外部ステントを形成する。
【0093】
第1の態様の一部の実施形態においては、管腔は末端−末端接合される。他の実施形態においては、管腔は末端-側面接合される。更に別の実施形態においては、管腔は側面-側面接合される。
【0094】
第2の態様においては、本発明は、
a)重合体;および
b)水;
を含む熱可逆性ゾルゲルであって、
約35℃から42℃のゾルゲル転移温度および少なくとも約100から約500,000パスカルの弾性率を有する熱可逆性ゾルゲル
を提供する。
【0095】
第1の態様の一部の実施形態においては、重合体がポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体またはそうしたブロック共重合体の混合物である。
【0096】
一部の実施形態においては、共重合体が約8,000から16,000または約10,000から約14,000の分子量を有する。一部の実施形態においては、共重合体が約12,600以上の分子量を有する。
【0097】
一部の実施形態においては、熱可逆性ゾルゲルが生体適合性タンパク質を更に含む。一部の実施形態においては、生体適合性タンパク質がウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンから選択される。一部の実施形態においては、生体適合性タンパク質がヒト血清アルブミンである。
【0098】
熱可逆性ゾルゲルの一部の実施形態においては、共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在する。一部の実施形態においては、共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在し、タンパク質が約0.5重量%から約2.0重量%の量で存在する。一部の実施形態においては、共重合体が約17重量%±17%のうちの20%の量で存在し、タンパク質が約1重量%±1%のうちの20%の量で存在し、水が約82重量%±82%のうちの20%の量で存在する。
【0099】
第2の態様の更に一部の実施形態においては、熱可逆性ゾルゲルが生物活性薬を更に含む。一部の実施形態においては、生物活性薬が、抗血栓薬成分、抗狭心症薬成分、抗凝固薬、抗感染薬、鎮痛薬、抗炎症薬成分、抗不整脈薬成分、抗高血圧薬成分、心不全剤、創傷治癒剤、抗喘息剤、抗利尿剤、抗腫瘍剤、解熱剤、および鎮痙剤、および抗コリン作用剤、免疫抑制剤、交感神経様作用剤、中枢神経系刺激薬;副交感神経遮断剤、ホルモン、筋弛緩薬、脂質低下剤;抗潰瘍剤、食欲抑制薬、関節炎治療薬、抗痙攣薬;抗うつ薬;鎮静薬;ならびに精神安定剤からなる群から選択される。一部の実施形態においては、抗凝固剤がヘパリンである。
【0100】
第3の態様においては、本発明は哺乳動物の循環系の脈管であって、脈管の壁を血流が脈管を流れる場合に類似した様式の開状態に保つように、かつ保つのに十分な量で脈管内に位置決めされた固体錬剤を有する脈管を提供する。一部の実施形態においては、固体錬剤が滅菌されている。
【0101】
第3の態様の一部の実施形態においては、固体錬剤がゲル相の相可逆性ゾルゲルである。一部の実施形態においては、相可逆性ゾルゲルが熱可逆性ゾルゲルである。一部の実施形態においては、熱可逆性ゾルゲルが約35℃から約42℃の範囲の温度で相転移する。
【0102】
第3の態様の更に一部の実施形態においては、固体錬剤が蝋または揺変性組成物である。
【0103】
本発明の前方態様においては、生きている哺乳動物内の少なくとも2つの非結合管腔を接続するキットであって、
送達デバイス;および
ゾルゲル、蝋、および揺変性物質から選択される組成物
を含む、キットが提供される。
【0104】
前方態様の一部の実施形態においては、送達デバイスが注射器である。一部の実施形態においては、組成物が注射器に充填されている。一部の実施形態においては、キットは、非結合管腔の少なくとも1つを閉鎖する少なくとも1つのクランプを更に含む。一部の実施形態においては、キットは、管腔を封鎖する生体適合性接着剤を更に含む。更に一部の実施形態においては、キットが熱源を更に含む。
【0105】
本発明の第5の態様においては、患者における少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性固体錬剤であって、
a)管腔の少なくとも1つの少なくとも遠位部分に生体適合性固体錬剤を配置すること;
b)管腔を整列させること;
c)整列させた管腔を閉鎖して導管を形成すること;および
d)固体錬剤を除去することによって導管を通る流れを確立すること
を含む方法に用いる生体適合性固体錬剤が提供される。
【0106】
第5の態様の一部の実施形態においては、固体錬剤が接合すべき管腔それぞれの遠位部分に配置される。一部の実施形態においては、固体錬剤が第1の管腔の遠位部分に固体錬剤が遠位部分から突出するように配置され、この突出部が雌嵌合機能部として作用する第2の管腔の遠位部分に対する雄嵌合機能部として使用され得る、請求項87に記載の生体適合性固体錬剤。
【0107】
一部の実施形態においては、生体適合性固体錬剤が滅菌されている。
【0108】
一部の実施形態においては、生体適合性固体錬剤がゾルゲル組成物を含む。一部の実施形態においては、ゾルゲル組成物が熱可逆性ゾルゲルである。一部の実施形態においては、生体適合性固体錬剤が蝋を含む。更に一部の実施形態においては、生体適合性固体錬剤がチキソトロープ剤を含む
第5の態様の一部の実施形態においては、生体適合性固体錬剤が生物活性剤を更に含む。一部の実施形態においては、生物活性剤が、抗血栓薬成分、抗狭心症薬成分、抗凝固薬、抗感染薬、鎮痛薬、抗炎症薬成分、抗不整脈薬成分、抗高血圧薬成分、心不全剤、創傷治癒剤、抗喘息剤、抗利尿剤、抗腫瘍剤、解熱剤、および鎮痙剤、および抗コリン作用剤、免疫抑制剤、交感神経様作用剤、中枢神経系刺激薬;副交感神経遮断剤、ホルモン、筋弛緩薬、脂質低下剤;抗潰瘍剤、食欲抑制薬、関節炎治療薬、抗痙攣薬;抗うつ薬;鎮静薬;ならびに精神安定剤の1以上の中から選択される。一部の実施形態においては、生物活性剤が抗凝固薬である。一部の実施形態においては、抗凝固薬がヘパリンである。
【0109】
一部の実施形態においては、生体適合性固体錬剤が生体適合性染料および/または生体適合性造影剤を更に含む。
【0110】
一部の実施形態においては、生体適合性固体錬剤が、融解、相変化、粘度の変化、体液への溶解およびこれらの組合せから選択される方法によって除去される。
【0111】
第5の態様の生体適合性固体錬剤の一部の実施形態においては、管腔の少なくとも1つがヒトの循環系の脈管である。生体適合性固体錬剤の一部の実施形態においては、管腔の少なくとも1つが、ヒトの循環系の脈管、動静脈グラフト、動静脈シャント、同種移植片、異種移植片および合成グラフトからなる群から選択される。生体適合性固体錬剤の一部の実施形態においては、管腔の少なくとも1つが、ヒトの卵管、精管、消化管内の管、膵管、胆管、涙管、乳管からなる群から選択される。
【0112】
生体適合性固体錬剤の一部の実施形態においては、第1または第2の管腔の少なくとも一方が1mm未満の直径を有する。
【0113】
第5の態様の一部の実施形態においては、第および第2の管腔の接合が生体適合性接着剤を用いて、または縫合糸によって実施される。一部の実施形態においては、生体適合性接着剤が、シアノアクリレートベースの接着剤、フィブリンベースの接着剤、ポリウレタンベースの接着剤、およびポリイソシアネートベースの接着剤の中から選択される。一部の実施形態においては、接着剤が管腔の断面に塗布される。一部の実施形態においては、接着剤が接合された管腔の外周に塗布される。一部の実施形態においては、接着剤は更に外部ステントを形成する。
【0114】
第5の態様の一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる相可逆性ゾルゲルであって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように前記相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
c)第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
e)前記導管内の相可逆性ゾルゲルに前記ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
f)前記導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法に用いる相可逆性ゾルゲルを提供する。
【0115】
第5の態様の更に一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる相可逆性ゾルゲルであって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するようにゲル相の前記相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
c)第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
e)前記導管内の相可逆性ゾルゲルに前記ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
f)前記導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法に用いる相可逆性ゾルゲルを提供する。
【0116】
更に一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる相可逆性ゾルゲルであって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与し、遠位端から突出するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を第1の管腔からの前記突出部に嵌合することによって第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
d)前記導管内の相可逆性ゾルゲルに前記ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
e)前記導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法に用いる相可逆性ゾルゲルを提供する。
【0117】
一部の実施形態においては、相可逆性ゾルゲルが、ゲル相にあるときには少なくとも約100から約500,000パスカルの弾性係数(G’)を有する。
【0118】
一部の実施形態においては、弾性係数(G’)が約100から約20,000パスカルである。
【0119】
一部の実施形態においては、相可逆性ゾルゲルが熱可逆性ゾルゲルである。
【0120】
一部の実施形態においては、熱可逆性ゾルゲルが約35℃から約42℃の転移温度を有する。一部の実施形態においては、転移温度は約37℃から約42℃である。一部の実施形態においては、熱可逆性ゾルゲルの相転移が±1℃から±10℃の温度変化によって発生する。
【0121】
第5の態様の一部の実施形態においては、熱可逆性ゾルゲルが重合体および水を含む。一部の実施形態においては、重合体がポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)の共重合体である。
【0122】
一部の実施形態においては、共重合体が約8,000から約16,000の分子量を有する。一部の実施形態においては、共重合体が約10,000から約14,000の分子量を有する。一部の実施形態においては、共重合体が約12,600以上の分子量を有する。
【0123】
第5の態様の一部の実施形態においては、相可逆性ゾルゲルがタンパク質を更に含む。一部の実施形態においては、前記タンパク質がアルブミンである。一部の実施形態においては、アルブミンがウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択される。
【0124】
一部の実施形態においては、共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在する。一部の実施形態においては、共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在し、タンパク質が約0.5重量%から約2.0重量%の量で存在する。更に一部の実施形態においては、共重合体が約17重量%±17%のうちの20%の量で存在し、タンパク質が約1重量%±1%のうちの20%の量で存在し、水が約82重量%±82%のうちの20%の量で存在する。
【0125】
第5の態様の更に一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性蝋であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように前記固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
c)第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
e)前記導管を通る流れが確立されるように蝋を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法に用いる生体適合性蝋を提供する。
【0126】
第5の態様の更に一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性蝋であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与し、前記遠位端から突出するように前記固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を第1の管腔からの前記突出部に嵌合することによって第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
d)前記導管を通る流れが確立されるように蝋を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法に用いる生体適合性蝋を提供する。
【0127】
第5の態様の更に一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性チキソトロープ剤であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように前記固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第2の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
c)第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
e)前記導管を通る流れが確立されるように前記チキソトロープ剤を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法に用いる生体適合性チキソトロープ剤を提供する。
【0128】
第5の態様の更に一部の実施形態においては、本発明は、遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性チキソトロープ剤であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、第1の管腔の前記一部分に構造的完全性を付与し、遠位端から突出するように前記固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を第1の管腔からの前記突出部に嵌合することによって第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように前記管腔を接合するステップ;
d)前記導管を通る流れが確立されるように前記チキソトロープ剤を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法に用いる生体適合性チキソトロープ剤を提供する。
【0129】
第5の態様の更に一部の実施形態においては、本発明は、生きている哺乳動物内の管腔を接続するのに用いる相可逆性ゲルであって、
第1の管腔内に、第1の管腔を開状態に保つように相可逆性ゲルを提供するステップ;
第2の管腔内に、第2の管腔を開状態に保つように相可逆性ゲルを提供するステップ;
第1の管腔の端部と第2の管腔の端部との間に接着剤を塗布し、接着剤に第1および第2の管腔の間の結合を形成させるステップ;
第1の管腔内部および第2の管腔内部の相可逆性ゲルに相変化を誘発させるステップ
第1の管腔を通って第2の管腔へ至る流れを可能にするステップ
を含む方法に用いる相可逆性ゲルを提供する。
【0130】
第6の態様においては、本発明は患者内の少なくとも2つの非結合管腔を接合する薬剤の製造における生体適合性固体錬剤の使用法であって、
a)管腔の少なくとも1つの少なくとも遠位部分に生体適合性固体錬剤を配置すること;
b)管腔を整列させること;
c)整列させた管腔を閉鎖して導管を形成すること;および
d)固体錬剤を除去することによって導管を通る流れを確立すること
を含む方法における使用法を提供する。
【0131】
他の選択された実施形態においては、本発明は、本明細書において説明する組成物、例えばゾルゲル、蝋およびチキソトロープ剤の、本明細書において説明する方法で用いる薬剤製造のための使用法を提供する。
【0132】
III.固体錬剤組成物
ゾルゲル組成物成分
様々なゾルゲル組成物が当技術分野では知られており、それぞれ異なる相転移特性を有する。当然のことながら、それぞれの特性は任意のゾルゲルの構成要素または構成比を変えることによって変化させてもよい。本ゾルゲルが液化または固化する程度、相転移を開始させるものまたは刺激の性質または範囲、持続および機械的特性を含む持続特性および機械的特性を変化させてもよい。本明細書において更に説明するように、ゾルゲルは、例えば持続性を向上させる粒子材料を含んでもよい。
【0133】
「熱可逆性ゾルゲル」とは、温度が転移温度以上になると液体の流動性物質から固体またはゲル状物質へと相転移し、温度が転移温度以下になると固体またはゲル状物質から液体の流動性物質へと相転移する組成物のことである。こうした相転移は可逆的である。
【0134】
以下に示す参考文献は、本技術に有用なプロセスまたは化合物を開示している:米国特許第5,525,334号;米国特許第5,702,361号;米国特許第5,695,480号;米国特許第5,858,746号;米国特許第5,589,568号。Dumortier他,「A Review of Polexamer 407」,Pharmaceutical Research,Vol.23,No.12(2006年12月)。T.G.Park and A.S.Hoffman,「Synthesis,Characterization, and Application of pH/Temperature−sensitive Hydrogels」,Proceed.Intern.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.,17(1990),pp.112 113。G.Chen and A.S.Hoffman,「Graft Copolymers That Exhibit Temperature−induced Phase Transitions Over a Wide Range of pH」,Vol.3,Nature,1995,pp.49 52。S.Beltran,J.P.Baker,H.H.Hooper,H.W.Blanch and J.M.Prausnitz,「Swelling Equilibria for Weakly Ionizable, Temperature−Sensitive Hydrogels」,Proc.Amer.Chem.Soc.,1991。J.Zhang and N.A.Peppas,「Synthesis and Characterization of pH−and Temperature−Sensitive ポリ(Methacrylic acid)/poly(N isopropylacrylamide)Interpenetrating Polymeric Networks,Macromolecules,2000(現在はワールドワイドウェブにて入手可能)。T.G.Park,「Temperature Modulated Protein Release From pH/Temperature Sensitive Hydrogels;Biomaterials20(1999),pp.517−521。
【0135】
ゾルゲル組成物の例は、通常ブロック共重合体として調製され、別名プルロニクス(登録商標)、プルロニックF127(登録商標)などの商品名;ポリエチレン−ポリプロピレングリコール;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体;ポリ(エチレンオキシド−コ−ポリプロピレンオキシド)であるブロック;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体およびその他の名称で知られる生体適合性のエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体である。こうした重合体は多数の販売元から市販されており、従来の合成方法によって生成することができる。生体適合性ゾルゲル組成物の他の例は、米国特許第7,018,645号、6,004,573号および5,702,717号に記載のポリエチレングリコールとポリエステル、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)およびポリ(エチレンカーボネート)から選択される重合体とのブロック共重合体;米国特許第5,525,334号に記載のポリN−置換(メタ)アクリルアミド類;米国特許第6,018,033号に記載の改質多糖類;および米国特許第7,160,931号に記載の共重合体を含むが、これに限られない。
【0136】
ゾルゲル組成物における重合体の分子量は、約8,000から16,000、より好ましくは10,000から16,000、より好ましくは10,000から14,000の範囲、最も好ましくは約12,600である。この文脈で用いた「約」という用語は、本明細書において記載したような単量体または重合体の市販調製物は商業的製造過程に起因する種々の分子量の混合物を含有している可能性があることを反映している。
【0137】
本明細書においてさらに十分に説明するように、熱誘発相転移は、ポリペプチドまたはタンパク質を添加することによって変化させてもよい。それ故、生物活性を得るためにタンパク質(治療効果を有するタンパク質など)が添加される場合は、施術者は基材である重合体の相転移特性が変化するかもしれないという点に留意すべきである。あるいは、他の点では必要な弾性率を有する組成物の転移温度を変化させるためにタンパク質を添加してもよい。このようなタンパク質は治療効果がないものであって、好ましくは免疫原生がないものである。一実施形態においては、タンパク質がBSA(bovine serum albumin:ウシ血清アルブミン)またはHSA(human serum albumi:ヒト血清アルブミン)などのアルブミンである。商業生産上の理由、すなわち、動物由来の病原体を含まないという保証から、こうしたタンパク質(または本明細書において記載したいずれかタンパク質)の組み換えバージョンが好ましい場合もある。
【0138】
本発明における固体錬剤として有用な他の組成物は、水溶性単量体を架橋することによって形成される不水溶性三次元網目構造である様々なヒドロゲルを含む。合成重合体、天然重合体のどちらを用いてもよい。有用な合成物質は、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、およびそれらの共重合体であるポリ(酪酸グリコール酸)共重合体(PLGA)である。このような組成物は、当技術分野では周知である。
【0139】
剛性を高くするためにその場での架橋(および/または重合)を用いることができる。従って、個体の吻合の場合、架橋は生理的条件下で起こすことができる。特にヒトに使用する場合、生理的条件は、約37℃の温度、および約7.4のpHを含む。適切な架橋条件は、重合すべき単量体の化学構造、重合後のヒドロゲルの望ましい機械的および持続特性、および当技術分野では周知の他の考慮すべき事項に基づいて選択される。
【0140】
一実施形態においては、ゾルゲル組成物は管腔の遠位端の少なくとも一部へと固体状態で送達される。状況によっては、送達された組成物が管腔から突出し、2つの管腔の遠位端が比較的容易に整列させられるように他方の管腔の遠位端のための嵌合機構となることが好ましい。
【0141】

本発明において有用な他の固体錬剤物質は、生体適合性蝋を含む。
【0142】
本明細書において使用された場合、「蝋」という用語は、比較的融解温度が低く、高分子量であって、油脂に類似しているがグリセリドを含まない有機混合物または化合物を意味する。Dorland’s Medical Dictionary(2004,W.G.Saunders、「蝋」の一覧に基づく各種定義のため、参照することによって本明細書に組み込まれる)参照。
【0143】
Dorlandの文献に記載されているように、蝋は、天然源(すなわち、昆虫または植物)由来でも合成物でもよく、ほとんどが炭化水素を多少含む脂肪酸エステルおよびアルコールである。他の成分は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸および治療される患者にとっては内因性である他の生体適合性の脂肪酸ならびにこれらの混合物を含んでもよい。
【0144】
これらの物質は全てを包括するものではなく、本明細書における主たる有用な特性は、蝋の熱によって「融解する」または実質的に液化する能力、あるいは流れが復活した後に、特にその場で生きている組織(生きている患者に外科的処置に従って使用した場合)に有害とならない温度で体液に溶解する能力である。蝋の融点は、2種以上の蝋を混合することによる従来の融点降下によって調節できる。例えば、ラウリン酸の融点は44.2℃であり、別の適当な脂肪酸と混合することによってこの融点をわずかに降下させ、40から42℃にまで下げることができる。融解温度が約37℃(ヒトの体温)である「スティードマンの蝋」などの低温ポリエステル蝋を状況によっては用いてもよい。Steedman,H.F.,Nature179:1345(1957年6月29日)参照。
【0145】
一実施形態においては、蝋は所定の直径を有する「スティック」形態にあらかじめ形成することができる。すると、臨床医は、蝋の一部分を第1の管腔に挿入し、2つの管腔の遠位端の整列が比較的容易になるように、残りの部分を他方の管腔の遠位端用の嵌合機構とすることができる。
【0146】
ヒトまたは他の哺乳類の血管に関係する顕微鏡下手技には、おそらく0.5から1.5mmの直径が適している。腸吻合または太い静脈の手術などの他の目的の場合、直径は数センチメートル(「cm」)かもしれない(「直径」という用語を使用しているが、生体適合性のスティックが円筒状ではない場合、末端の表面の面積が管状組織の遠位側末端に適合するものの判定に必要な測定値である)。
【0147】
チキソトロープ剤
本発明において有用な更に別の固体錬剤物質は、揺変性または他の非ニュートン性の流体性剤を含む。これらの物質は、固体から流体(またはその逆)への連続的な変化に沿った相変化には変形またはせん断応力を使用する。
【0148】
一般に、非ニュートン力学が成り立つ流体は、加えられた応力または加えられたせん断速度に応じて粘度が変化する。揺変性または他の非ニュートン性流体は、加えられた動きに応じて粘性が高く、または低くなる。例えば、チキソトロープ剤の中には、臨界レベルを超える応力を受けると粘性が低くなるものがある。これらせん断減粘性の流体を、本明細書に記載するように遠位端を安定させるために、固定した管状組織に挿入してもよい。接合し次第、封鎖した組織に動きを加えてチキソトロープ剤を液化させてもよい。こうした応力は、外から加えてもよく、循環系内の蠕動から自然に生じるものでもよい。チキソトロープ剤は、各種生体吸収性または分解性クレー、コーンスターチまたは他の炭水化物ベースの物質を含む物質、ならびに当業者が利用可能な他のコロイド状物質および他の物質を含む。本発明における使用に適したチキソトロープ剤は、約100から約500,000パスカル、好ましくは約100から約10,000パスカル、さらにより好ましくは約150から約1,500パスカルの降伏応力を有すると考えられる。
【0149】
従って、本明細書においては、チキソトロープ剤は管状組織における遠位側末端を支持する際にその相対的に固体の形態を利用するので、最初は粘性が低い状態で導入し、「そのままの状態に保つ」またはせん断によって減粘させる動きを与えないようにしてもよい。組織が十分に接合された後、せん断減粘性応力を局所的に加えてもよい。
【0150】
追加成分
本発明の方法において用いる固体錬剤組成物は、1以上の追加成分を含んでもよい。例えば、固体担体に追加機能を与えるために、生物学的機能剤、染料および/または造影剤を固体錬剤に添加してもよい。
【0151】
生物活性成分または生物活性剤は、
凝固剤(例えば、ヘパリン)、抗血小板薬および血栓溶解剤などの抗血栓剤;
ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬および硝酸塩などの抗狭心症薬;
抗生物質、抗ウイルス薬および抗真菌剤などの抗感染薬;
鎮痛薬および鎮痛合剤;
抗炎症剤;
抗不整脈薬;
抗高血圧薬;
心不全剤;
創傷治癒剤;
抗喘息剤;
抗利尿剤;
抗腫瘍薬;
解熱剤;
鎮痙薬;
抗コリン作用薬;
免疫抑制薬;
交感神経様作用薬;
中枢神経系刺激薬;
副交感神経遮断薬;
成長ホルモン、エストラジオールおよびコルチコステロイドを含む他のステロイドなどのホルモン;
筋弛緩薬;
脂質低下剤;
抗潰瘍H2受容体拮抗薬、
抗潰瘍薬;
食欲抑制薬;
関節炎治療薬;
鎮静薬;および
精神安定剤
を含んでもよいが、これに限らない。
【0152】
生物活性成分は、処方された場合と同様の治療効果を必要に応じて有してもよく、対象固体錬剤が治療効果のある量の生物活性成分を必要に応じて含有してもよい。
【0153】
治療活性のある成分は、生物活性成分となる。治療効果とは、疾病の原因もしくは症状、または身体疾患の治療を目指すものである。明細書において使用した場合、「治療する」または「治療」と言う用語は、(i)疾病または病状の素地があるかもしれないがまだそれがあるとは診断されていない対象者に疾病または疾患が発生するのを防ぐこと;(ii)疾病または疾患を抑制、すなわちその発現を阻止すること;および/または(iii)疾病または疾患を改善または緩和すること、すなわち、疾病を退行させることを指す。本治療効果のある量とは、関連する臨床基準によって規定されるような治療効果の原因作用を確立するのに十分なものである。治療効果のある量は、組み込まれる個別の薬剤、治療されている対象者および疾病状態、対象者の体重および年齢、疾病状態の重篤さ、従うべき投与計画、投与のタイミング、投与方式などに応じて変化するものであり、これらは全て当業者は容易に決定することができる。
【0154】
生物活性成分は、吻合によって接合された管状管組織に塗布される結紮(接合)組成物に組み込んでもよい。本明細書に記載するように、結紮は、多種多様な方法で達成することができ、本吻合物質を使用する場合は、縫合糸または接着剤が最も実用的かもしれない。
【0155】
固体錬剤および/または処置を追跡し監視するために、例えば、放射線写真術によって監視可能な生体適合性のX線不透過物質などの造影剤を固体錬剤に添加してもよい。造影剤は水溶性でも不水溶性でもよく、好ましくは採用した元素で自然に発生する天然または内因性の量を超える放射能を含有しない。
【0156】
水溶性造影剤の例は、メトリザミド、イオパミドール、ヨータラム酸ナトリウム、ヨードミドナトリウム、およびメグルミンを含む。不水溶性造影剤の例は、タンタル、酸化タンタル、および硫酸バリウムを含み、これらはそれぞれ好ましい約10ミクロン以下の粒径を含む、生体内での使用に適した形態で市販されている。他の不水溶性造影剤は、金、タングステンおよび白金の粉末を含む。
【0157】
固体錬剤組成物は、特に管腔の壁が厚い場合には可視化のための適当な生体適合性染料を更に含んでもよい。こうした染料は、当技術分野では周知である。
【0158】
IV.吻合方法
本発明は、中空組織構造(管腔)を別の中空組織構造(管腔)に、各中空組織構造内の空間を接続して導管(管腔内導管)を形成するように接続するいかなる吻合処置にも適用可能であると考えられる。切断された身体部位の再接合および/または臓器移植の過程で血管の端部同士に実行される微小血管に関して用いることができる。例えば閉塞または部分閉塞を除去する目的で本来は正常な管腔が切断された外科的処置に起因する非結合管腔を接続するのに用いることができる。適応する管腔は、例としては脈管構造、輸精管、卵管、尿路、涙管、腸、乳腺、消化管、膵管、胆管等が含まれる(個別の解剖学的管腔は、本明細書において使用されているように管、管路または脈管などの従来からの解剖学的用語で呼んでもよい)。
【0159】
単に例示目的で用いた一実施形態においては、吻合は、2本の血管または1本の血管を1本の合成グラフトに接続する冠状動脈バイパスグラフト(CABG)処置または末梢バイパス処置中に実行される。接続される血管は直径が異なってもよい。更に、一方または両方の脈管が非常に細くてもよく、約1から5ミリメートル(「mm」)程度でもよい。本発明を用いた微小血管吻合処置は、顕微鏡下で実行されてもよい。
【0160】
図を参照し、一般概念が伝わるよう、本発明を概略的かつ単純化した形で説明する。この概念を念頭におけば、当業者は本請求項に包含されるよう意図された本発明の詳細な具体的実施形態に思い至るであろう。図1は、通過する流れ2を有する脈管1でもよい管腔の概略断面図を示す。点3および点4で示される脈管の部分では、閉塞5および6の形成によって流れが制限されている。閉塞は流れが完全に遮断されるほど重篤になるかもしれない。当業者には当然であるが、各種様々な治療が流れの回復に利用できる。
【0161】
流れを回復させる手術に先立ち、流体(すなわち、血液)流を停止させるために脈管を閉塞させる必要がある。こうした閉塞は、血管が関係する吻合にとっては血液の過剰な喪失および連続血流に起因する合併症を防止するために重要である。ただし、流体の連続流が存在しない、あるいは流体の量が処置を困難にすることがない他の種類の管腔の吻合には、クランプする必要はないかもしれない。
【0162】
従って、図2に示すように、クランプ7および8が、閉塞した区間の除去に先立ち、クランプとクランプとの間の区間の血流を停止させるために脈管に配置されている。こうしたクランプは、手術すべき脈管を外側からクランプするのに適した、クランプ、クリップおよび止血帯またはスネアなどの任意の外科用クランプでよい。クランプした後、点3と点4との間の流れが制限された脈管1の一部分が外科的に除去される。当業者には当然であるが、流れを回復させるために端部同士が接触させられるよう、点3と点4との距離は、十分に短い。
【0163】
図3を参照すると、クランプ7と端部3との間の脈管1の内部には、格子模様によって固体相であることが示された相可逆性ゾルゲル10が充填されている。クランプ8と端部4との間の領域には、液相のゾルゲル11を満たしているところである。ゾルゲルは、皮下注射針9などの適当な導入源から注入される。ゾルゲル物質が皮下注射針に内にあるときは、流動可能な液相、ゲル相のどちらでもよい。前者の場合、熱などの適当な環境刺激を加えるとすぐに組成物は固体ゲル相(10)へ相転移する。後者の場合、組成物は固体ゲル相(10)で送達され、熱などの適当な環境刺激を加え続けることによってその相に維持される。
【0164】
ゾルゲル物質は、脈管1の遠位端の少なくとも一部分を開状態に維持するのに十分な量が入れられる。何も力がない状態では、脈管を通る流れがない限り脈管1の側壁が互いに接触して脈管を閉鎖してしまう。固体ゲル相(10)は十分な構造的剛性を管腔に付与し、脈管が完全に充填された形態での吻合を可能にする。
【0165】
図4に示すように、2つの管腔は管腔の2つの端部に加えて点3および点4部分の脈管の外表面に接着剤または糊12を塗布することによって接合され、一体的に封鎖される。図4は糊の使用を示しているが、当然のことながら、本明細書に記載するように、接合または結紮は様々な方法で達成可能であり、本吻合物質を用いた場合は、縫合糸または接着剤が最も実用的かもしれない。縫合糸は、糊または接着剤と同様に当技術分野では周知である。こうした糊は、生体適合性であって、一般的にはシアノアクリレートベースの接着剤、フィブリンベースの接着剤、ポリウレタンベースの接着剤、ポリイソシアネートベースの接着剤である。縫合糸または糊は、抗菌剤(例えば、米国特許第5,762,919号)などの生物活性成分を含有してもよい。
【0166】
ゲル(固体相の)の存在のため、脈管の閉鎖を生じることなく相当量の接着剤を使用することができる。この例における相可逆性ゾルゲル10のような脈管内に存在する構造的支持がない場合、糊を塗布することになどによる脈管の外側への加圧が脈管の圧壊を引き起こしかねない。しかし、相可逆性ゾルゲル10が脈管を開状態に保持するため、一体的に封鎖すべき端部3および4に糊を多量に塗布できるだけでなく、封鎖される点付近の脈管1の表面に沿って糊12を塗布することができる。したがって、図4に示すように、端部が封鎖される点の両側でも脈管1の外側に糊が塗布されている。糊は外方に所望量広げることができる。しかし、細い脈管の場合、約1mmから約10mmの距離に糊を広げれば一般的には十分である。糊は、接続点の全周囲周りに外方に広げることができる。接着剤12を固化させ、脈管の2つの端部を接着させた後、クランプ7および8を除去することができる。一実施形態においては、糊は更にゲル表面を内方に浸透して第1の管腔の組織断面全体を第2の管腔に接着させる。別の実施形態においては、糊は閉鎖すべき管腔の外表面だけでなく断面にも塗布される。更に別の実施形態においては、ゾルゲルなどの固体錬剤は、糊と比べた場合に脈管に対して優れた濡れ特性を有し、糊が管腔の内表面にまで浸透することを防ぐ。
【0167】
クランプ7および8を除去すると(図5)、ゲルを固体状態に維持するために加えられていた熱などの刺激が取り除かれ、ゲルは液体へと相が変化する。ゲルが相変化を逆転して液体になり、液化するゲルに向かう血流がゲルを分散させると、図6に示すように脈管が再び開く。
【0168】
蝋が採用された場合には、蝋を融解させるために接合された管腔に熱を加えることができる。更に、熱を加える前にクランプを取り除いた場合は、融解と蝋の体液への溶解の両方が起こり得る。
【0169】
チキソトロープ剤が採用された場合は、接合された管腔の軽い圧搾または心臓のポンプ作用から生じる応力など、錬剤へのせん断応力の付加が錬剤粘度を著しく低下させ、体液と共に流動可能な状態にする。
【0170】
図5に示す時点では、糊12は固化または硬化している。糊12は脈管の端部を一体に封鎖しているが、糊が外周に塗布された接続点の両側の脈管の外表面にも塗布されている。従って、糊12が硬化する際には、糊12はゲルが液化した後に脈管1を開状態に保持する外部ステントとして作用する。糊で外部ステントを形成する必要はないが、これには別の利点もある。糊はかなり長期にわたってその場に留まるように作られてもよく、脈管の2つの端部が融合するにつれて時間をかけてゆっくり溶解するように作られてもよい。
【0171】
当業者には当然のことながら、必要以上に生きている組織を熱損傷させる可能性があるため、特に高い温度は患者を治療するには有用ではない。体温または37℃付近の温度でゲルが液体状態に戻るのであれば、ゲルを固体状態に維持するために42℃前後の転移温度を用いてもよい。この詳細に説明した実施形態においては、ゲルを相変化させる機構として温度が用いられている。しかし、上記のように、pH、カルシウムイオン濃度などのイオン濃度等、他の要因を用いることもできる。相転移に用いた特定のパラメータに関わらず、処方設計は手術を受けている対象者の正常温度、正常pH、正常イオン濃度などの要因を考慮すべきである。一実施形態においては、温度、pHまたはカルシウムイオン濃度などのパラメータが周辺環境のそれに等しいまたは近いときにはゲルは液相であって、正常値より幾分高い、あるいは低いが組織を損傷するほどは正常値から離れていない値になると固体またはゲル相になる。従って、高温、極端に高いまたは低いpHだけでなく非常に高いまたは低いイオン濃度も、周囲組織の損傷を生じさせるおそれがあるため使用すべきではない。
【0172】
哺乳動物を用いた実験において、本発明の方法および組成物を用いた吻合処置を実行することによって血管を接続するのに要する時間が従来の手縫い吻合処置の場合の平均29分15秒(20から49分の幅がある)から平均3分11秒(55秒から6分の幅がある)へと著しく短縮されることが実証されてきた。実施例1を参照のこと。これは、接続された脈管の直径および開存率、処置に起因する合併症ならびに治療を受けた対象者の死亡率に関しては、処置成績の向上につながっている。実施例1を参照のこと。さらに、本発明を用いた吻合処置後6週間時点での吻合部の流量および破裂強度は、従来の手縫いの処置を用いたものに比べて、優れてはいないものの同じ程度であることが実験によって示された。
【0173】
本発明の方法は、精管再建術、卵管結紮再疎通術、および閉塞または損傷した卵管を治療するための卵管再建手術などの他の医療処置においても有用であると考えられる。本方法は、血液透析用にAVグラフトまたはAVシャントを血管に接続するのにも用いることができる。更に、本発明の方法は、消化管吻合にも用いることができる。現在の消化管吻合処置では、相当な漏出率(約2〜5%)という結果に終わっている。漏出事故の多くは致命的であり、または相当な合併症発現頻度につながる。本発明の方法を用いた吻合は、結紮途中の消化管を本発明のゾルゲルによって内側から支持することができるとともに、糊を接続点の周囲外側に塗布して完全に封鎖することができるため、漏出率を著しく低下させ、消化管吻合に起因する死亡率および合併症発現頻度の低下につながるものと考えられる。本発明の方法および組成物は、尿路、涙管、腸、乳管、膵管、胆管等に関係する病状の治療にも用いることができる。
【0174】
V.本発明のキット
本発明の一態様は、要素を揃えたキットの形態にある。キットは、上に例示した本発明の方法論をどう実施するかに関しての具体的指示を含んでもよい。
【0175】
更に、キットは固体錬剤または固体錬剤前駆体、例えばゾルゲル組成物の溶液相を、好ましくは滅菌状態で内包する容器、および送達デバイスを含んでもよい。送達デバイスは、注射器またはピペットまたはピンセット等でもよい。あるいは、キットは上記のタイプの流動可能な形態の固体錬剤物質を、ここでも好ましくは滅菌状態で充填した送達デバイスを内包してもよい。例えば、キットは、滅菌ゾルゲル組成物を充填した注射器または滅菌ゾルゲル組成物を内包しゾルゲルを塗布するために切断して開封する先端部を有するガラスまたはプラスチック製のアンプルを内包してもよい。
【0176】
固体錬剤物質がキットに入れられて提供される場合、固体錬剤が挿入される管腔の直径に合致するように規定の直径を有する棒状にすることができる。
【0177】
また更に、キットは、管腔または治療されている脈管(または管路、管等)のタイプに関して一般に使用され得るタイプのクランプを1つ、2つまたはそれ以上含んでもよい。また更に、キットは上記のタイプの縫合糸または外科用糊を含んでもよい。また更に、キットは、起動するとゾルゲル物質の相転移を生じさせる構成部品を含んでもよい。例えば、この構成部品は、起動させると、除去するまでゾルゲルを固体またはゲル状相に維持するために用いることができる熱または冷熱を発生する構成部品でもよい。こうした構成部品は熱可逆性ゾルゲルの相の変化を起こさせるのに十分な温度の温風を送出することができる温風送風機などの加温素子でもよい。
【0178】
キットは、1以上の薬学的活性を有する薬物を更に含んでもよく、薬学的活性を有する薬物は、固体錬剤またはその液体前駆体とは別々になっていても固体錬剤またはその液体前駆体に組み込んでもよい。従って、例えば、キットに別々に入れられても固体錬剤またはその液体前駆体に組み込んでもよい薬物は、ヘパリンなどの抗凝固薬を含んでもよい。固体錬剤またはその液体前駆体は、抗生物質、または脈管の治癒を助ける創傷治癒薬剤などの他の物質を更に含んでもよい。
【0179】
商業的には、実際の使用を容易にするため、物質は、例えば、規制上の用件に従って滅菌状態であって実質的に発熱物質を含まないように調製してもよい。物質および器具は、滅菌包装物にあらかじめ包装されてもよい。
【実施例】
【0180】
実施例1〜3は、本発明の実行可能性を実証する実実施例である。実施例1は、熱可逆性組成物の場合に、ゲル化温度が追加成分の添加によって最適化され得ることを実証する。実施例2は、吻合動物モデルにおいて、本発明の実行可能性を実証し、予備段階の結果における体液流量の増加および死亡率の低下という点において、伝統的な方法に対して成績が向上することを実証する。実施例3は、生物活性分子、ここでは血液希釈剤であるヘパリンの徐放のために本方法および組成物を使用するという、更に別の態様を実証する。実施例4〜6は、ヒトへの吻合処置における実行可能性についての仮想実施例である。
【0181】
実施例1:タンパク質添加による熱可逆性ゾルゲル組成物のゾルゲル転移温度の変化
本発明の一実施形態は、熱可逆性ゾルゲル組成物のゾルゲル転移温度の活用に関し、本実実施例は、どうゲル化温度を変化させて正常体温より若干高くし得るかを実証する。従って、本実施例は、管腔の遠位部分の形状が吻合処置中は安定化されるよう、温度を一時的に転移温度より高くしたときにゾルゲル物質が管腔の遠位部分内側でゲル状態になるようにする。吻合処置後、ゾルゲル物質が液化して結合した管腔内で流動可能になるよう、温度をゾルゲル物質の転移温度よりも低い正常な体温にまで戻す。本実実施例は、タンパク質、ここではウシ血清アルブミンの濃度が適切であれば、熱可逆性ゾルゲルのゲル転移温度が正常な体温よりもわずかに高くなるように調節できることを実証する。
【0182】
本発明に関連して使用可能な熱可逆性ゾルゲルは、商品名ポロキサマー407(登録商標)の名称で販売されている。ポロキサマー407(登録商標)の各種薬学的および薬理学的特徴は、Dumortier,Pharmaceutical Research,Vol.23,No.12,2006年12月に記載されている。ポロキサマー407(登録商標)は、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)を含む水溶性ブロック共重合体である。このブロック重合体成分を水溶液にする。水(BSAを含まず)中でのポロキサマー407(登録商標)の弾性率の時間変化のグラフが四角形のデータ点の線グラフで図7に示されている。図7は、重合体の弾性率または硬直性が実質的に増加してゲルを形成する25℃から30℃でポロアクスマー407(登録商標)が相転移することを示している。
【0183】
本発明によると、ポロキサマー407(登録商標)溶液などのゾルゲル組成物を組成物が相変化を起こす温度が高くなるように改質することは有益である。これは、水における重合体の濃度を変えることによって達成できるが、この方法を採用した場合、形成される重合体ゲルの結果として得られる弾性率を低下させる傾向がある。
【0184】
弾性率または弾性係数(G’)の低下は、本発明に関して使用するには望ましくない。本発明に有用な組成物は、吻合処置中に脈管を取り扱う際に脈管の外側に加えられる圧力に耐え、脈管を開状態に保つことができるほど弾性率が十分に高くなければならない。本発明のゲルは、約100から約500,000パスカル、好ましくは約100から約10,000パスカル、より好ましくは約150から約1500パスカルの弾性係数(G’)値を有するべきであると考えられる。
【0185】
従って、別の分子を含ませることにより形成されるゲルの結果として得られる弾性率を減少させることなく相変化が起こる温度を上昇させるという意味で相転移点をシフトさせることが可能になるかもしれないと考えれられてきた。ここでは、タンパク質などの生体適合性転移条件改質剤を含ませることにより組成物が相変化を起こす温度点をシフトさせることができることがわかっている。
【0186】
図7に示すデータは、ウシ血清アルブミン(BSA)がまず0.5%の濃度に、次に1.0%の濃度に、次に5%の濃度になるように添加されたことを示している。図7に示す結果は、組成物に約1%の量でBSAを含ませることにより、体温付近または約37.5℃で相転移が起こるように相転移点がシフトすることを示している。
【0187】
1%BSAで結果として生じる組成物は、生体適合性であって、BSAを添加しないゲルと比較して、結果として得られるゲルの弾性率を著しく変化させることなく変化させた所望の転移温度を有する相転移物質を提供する。
【0188】
好ましい処方は、ポロキサマー407(登録商標)などの重合体約17%、BSAなどの生体適合化合物約1%、および水82%を含む。当業者には当然のことながら、これら成分のそれぞれは、約±50%、±25%、±10%、±1%の量で変化させることができ、用いた個々の重合体および生体適合性化合物に応じて望ましい結果が得られる。
【0189】
一部の実施形態においては、生体適合性の重合体は、約8,000から16,000、より好ましくは約10,000から約16,000、より好ましくは約10,000から約14,000の範囲、最も好ましくは約12,600の分子量を有する(「約」という用語は、上記のように、本明細書において記載したような単量体または重合体の市販調製物は商業的製造過程に起因する種々の分子量の混合物を含有している可能性があることを反映している)。この重合体は、タンパク質であって、好ましくは免疫応答を顕在化させないタンパク質である生体適合性の化合物と組み合わされる。タンパク質は、アルブミンなどの血液タンパク質でもよく、具体的にはウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン(ここでも上記のように、商業生産上の理由、すなわち、動物由来の病原体を含まないという保証から、こうしたタンパク質(または本明細書において記載したいずれかタンパク質)の組み換えバージョンが好ましい場合もある)でもよい。
【0190】
重合体は約15重量%から約20重量%、または約16重量%から約18重量%または約17重量%の量で組成物に存在する。重合体は約0.5重量%から約2重量%または約1重量%の量の生体適合性分子と組み合わされる。組成物の残部は水である。結果として生じる組成物は、約25%以下、または約10%以下、または約5%以下の弾性率の変化と共に生体適合性化合物が存在しない場合の相転移温度よりも高い温度で相転移するという点で更に特徴づけられる。より具体的には、得られる組成物は約35℃から約40℃または約36℃から約39℃、より好ましくは約37.5℃という比較的狭い範囲で相転移を起こす。
【0191】
本開示を読み、提供されたデータを調査すれば、当業者はすぐに本発明に関連して使用することができる他の相転移物質を思いつくであろう。相転移はpHの変化など温度以外の条件を変化させることによって生じさせてもよい。当業者には当然のことながら、pHの変化は、ヒトの血液のpHに非常に近いpH、すなわち約7.2のpHで生じさせる変化である。
【0192】
ここに示したのは、1%のBSAを含む17%のポラクソマー(登録商標)407用のプロトコルである。当業者は、異なる濃度の熱可逆性物質またはタンパク質を使用してもよい。
【0193】
以下の物質を混合し、1%BSAを含む17%ポラクソマー(登録商標)407の溶液100ml(100g)を生成した:
リン酸緩衝食塩液(「PBS:Phosphate buffered saline」):92g、ギブコ#10010,pH7.4,Ca2+およびMg2+を含む;
ウシ血清アルブミン(「BSA」):1g、シグマA2153−50g;
ポラクソマー(登録商標)407:17gポロキサマー407、BASFプルロニック(登録商標)F127NFプリルポロキサマー407、物質30085239;
これに従い、17%ポラクソマー(登録商標)407および0.1%BSAまたは5%BSAを有する溶液が調製された。
【0194】
ゾルゲル転移温度(ポロキサマー407が液体からゲルに転移する温度)を判定するため、それぞれの溶液のある量が応力血流計(TAインスツルメンツG2血流計を用いた)の平行プレート間に配置された。プレートは直径が1cmであって、隙間は1mmに設定した。血流計を用い、様々な温度で、周波数1Hzおよびひずみ度0.1で弾性係数を計測した。図7は温度の関数としての弾性率を図示するグラフである。BSA濃度が1%以下ではゲル化温度は上昇した。BSA濃度が1%から5%に上昇すると、ゲル転移温度は著しく低下した。
【0195】
実施例2:熱可逆性吻合組成物を用いた動物モデルにおける有効性および安全性
本実実施例は、結果として得られる連続管腔を通る体液の流れを生じさせるために管状組織を接合するのに本吻合組成物が有効であることを実証する。
【0196】
熱可逆性ゲルを用いた吻合
吻合を正常なラットにおいて実行した。本実施例のポロキサマー溶液は、上記の実施例1で調製したのと同様な17%のポラクソマー(登録商標)407および1の%BSAを含有する熱可逆性組成物である。動物は全て、全ての関係法令および医薬品安全性試験実施基準に従って処置し扱った。
【0197】
ラットの心臓管状組織に実行された末端−末端吻合の外科的方法:
ラットはイソフルレンを用いて麻酔し、70%エタノールを用いて滅菌状態に準備した。正中開腹切開による鈍的および鋭的切除によって大動脈を露出させ分離した。大動脈を近位側および遠位側でクランプした後分割し、ヘパリン生理食塩水で洗った。場合によっては、ラットおよびポロキサマー溶液を滅菌水を用いて40℃に加温してからポロキサマー溶液を半固体状態で注入し、他の場合にはポラクサマー溶液は液体として脈管に注入してから溶液を固化させるための熱対流源を用いて40℃に加温した。大動脈の端部を押しつけて直接再近置させた後、シアノアクリレート接着剤を塗布し、60〜120秒間固化させた。次いでクランプを除去し、正中切開を5−0バイクリル(エシコン、ニュージャージー州サマセット)および4−0ナイロン(エシコン)を用いて単連続式縫合によって層状に閉鎖した。
【0198】
末端−側面吻合の外科的方法:
ラットは麻酔し、剃毛し、標準的な滅菌状態に準備した。正中開腹切開を行い、腹部臓器を4×4湿ガーゼに摘出した。腸骨分岐部を鈍的切除によって分離し、腹大動脈を近位側でクランプして腸骨を遠位側でクランプした。左腸骨を分岐部のすぐ遠位側で分割し、右腸骨に動脈切開を行った。次いでこれら脈管をヘパリン生理食塩水で洗った。ポロキサマー溶液をゲルにまで加温(約40℃)するのと同時に腹部を加温し、次いでそのゲルを注入した。摺動クランプを用いて(一方のクランプを近位大動脈に、他方のクランプを遠位側左腸骨に配置)左腸骨を右腸骨に近置させた。緊張なく両端部を対向させた後、シアノアクリレートを塗布して固まらせた(〜5分)。次いでクランプを除去し、血流を再開させた。
【0199】
従来の手縫い吻合:
ラットは麻酔し、剃毛し、標準的な滅菌状態に準備した。正中開腹切開を行い腹部臓器を摘出した。大動脈を鈍的に切除することで分離し、近位側および遠位側をクランプしてから分割した。2つの脈管端部をヘパリン生理食塩水で洗った。10−0ナイロン縫合糸を用いて単連続吻合を実行した。各縫目は、大動脈の全ての層を通る全層とした。漏出領域はいずれも単純結節縫合を用いて抑制し、クランプを除去した。
【0200】
末端−側面吻合のため、先に説明したように腸骨分岐部を分離し、近位側および遠位側でクランプした。左腸骨動脈を起点近くで分割し、クランプを用いて右腸骨動脈に再近置させた。右腸骨動脈に動脈切開を行い、両端部をヘパリン生理食塩水で洗った。次いで、標準的顕微鏡下手技を用いて10−0ナイロン縫合糸での単連続吻合を実行し、漏出領域はいずれも単純結節縫合を用いて抑制した。手縫い手技では、末端−側面吻合は成功しなかった。
【0201】
結果
熱可逆性ゲルを用いた吻合の有効性を評価するため、接続した脈管の開存性、流量および破裂強度を測定した。吻合脈管の直径は、従来のCT血管造影法を用いて測定した。開存性および流量は、視覚音波機を用いた超音波ドップラー画像化法によって判定した。
【0202】
破裂強度は以下の処置に従って判定した。
【0203】
ラットは麻酔し、手術に先立ってラットの体内にある大動脈が採取され、術後指定時点において正中開腹切開によってラット大動脈を手術した。腎動脈直下および腸骨分岐部直上にて大動脈を近位側でクランプした。どんな細かい分枝も確認して結紮した。次いで採取した大動脈を食塩水で洗って血液を除去し、結紮していない分枝を確認した。次に、大動脈の両端部を5−0絹糸を用いて22ゲージ血管カテーテルに取り付けた。血管カテーテルには破裂強度器具に直接取り付けられるアダプタが備えられていた。食塩水を調整した圧力でこの機械および大動脈に注入し、吻合部が破裂するまで徐々に増加させた。
【0204】
表1は、熱可逆性ゾルゲル組成物を用いて、または手縫いで接続した末端−末端吻合脈管の、術後6週間時点における吻合部の直径、吻合部の流量、および破裂強度を示す。この2種類の方法を用いた末端−末端または末端−側面吻合の開存性および生着率を表2および3で比較している。
【0205】
【表1】

【0206】
【表2】

【0207】
【表3】

実施例3:生物学的機能分子徐放のための可逆性ゲルゾル吻合組成物の使用
本物質を酵素結合イムノソルベント分析法に規定されているようにヘパリンの送達に用いた。ヘパリンを含有する本熱可逆性ゾルゲル組成物を媒体のみの場合と比較した。ヒト臍静脈内皮細胞をトランスウェルプレート上で5分間培養した。異なる濃度のヘパリン(10、100および1000U/mL)を直接またはポロキシマーと共に細胞に添加した。組織因子経路阻害剤(TFPI:Tissue Factor Pathway Inhibitor)、組織因子(TF:tissue factor)、トロンボモジュリン(TM:thrombomodulin)をヘプリン添加の2時間、6時間および24時間後にELISAキット(米国ミネソタ州R&Dシステムズ)を用いて測定した。図8に示すように、ヘパリンのポロキサマー媒介送達は、ヘパリンの直接投与よりも効果的である。更に、ポロキサマー媒介送達ではヘパリンの効果が直接投与よりも長く、24時間まで持続する。これは、組成物がゲルから液体へ転移するにつれ、ヘパリンが放出されて徐放効果を生むことを実証している。
【0208】
以下の実施例4〜6は、仮想のものであってまだ実施されていない。それでも、これらの実施例は、実際に実行された上記の実施例1〜3から容易に相互関連する方法を規定する。
【0209】
実施例4:吻合処置における蝋組成物使用の仮想実施例
本仮想実施例は、吻合中に管腔に対する構造的支持を提供する固体錬剤としての蝋組成物の使用を説明する。治療される哺乳動物は、イソフルレンを用いて麻酔され、70% エタノールを用いて滅菌状態に準備されると考えられる。大動脈を露出して近位側および遠位側でクランプし、その後分割してヘパリン生理食塩水で洗う。切断して食塩水で洗った後、分割した大動脈の温度は体温よりもわずかに低くなる。正常なラット体温に近い融点を有する蝋組成物、例えば、カプリン酸とラウリン酸の混合物を分割した大動脈の2つの開放端部に大動脈の構造的完全性を維持するように配置する。大動脈の端部を押しつけて直接再近置させた後、シアノアクリレート接着剤を塗布し、60〜120秒間固化させる。次いで、クランプを除去して血液が吻合点を流れるようにし、温度を蝋組成物が融解して大動脈全体を通る血流が確立させるのに十分である体温付近にまで上昇させる。
【0210】
別の例においては、体温よりわずかに高い融点を有する蝋組成物を上記の大動脈にほぼ等しい直径の「スティック」形態にあらかじめ形成する。スティックをスティックの一部分が大動脈外部に突出するような形で大動脈の一方の端部に挿入する。次に2つの端部が接触するようにスティックの突出部分を大動脈の他方の端部に挿入する。シアノアクリレート接着剤を塗布し、60〜120秒間固化させる。吻合点を蝋の融点にまで加温し、大動脈内部の蝋スティックを融解させる。次いでクランプを除去して血流を再開させる。
【0211】
実施例5:精管吻合術への熱可逆性ゾルゲル組成物使用の仮想実施例
本仮想実施例は、体液流の即座の回復は必要はないが徐々に治癒すること、従ってゾルゲル物質のその場でのでのゆっくりとした分解から恩恵を受ける管状組織を接続するのに本発明がどのように使用可能であるかを説明する。患者は精管結紮を元に戻すために精管吻合術を希望している。施術者はあらかじめ切断された輸精管の末端位置をつきとめ、管状組織管腔を開くために一部分を再切断する。ペースト状のゾルゲル組成物を輸精管の各部分の末端に配置することで、管状形状を安定化させる。安定化された末端を整合させ、必要であればメタクリレートまたは他のバイオ接着剤を塗布し、固化させる。ゾルゲル組成物は即座に液化しないが、周囲組織に吸収される構成成分へと徐々に生物分解する。ゾルゲルは必要に応じて創傷治癒成分または抗炎症性生物学的機能成分を徐放的に局所送達し、新たに再付着させた輸精管が閉塞したり瘢痕組織または過度の炎症反応のために再閉塞しないようにする。
【0212】
上記の処置は、他の外科的処置において他の管状組織の閉塞を除去するために使用してもよい。特に管腔が見えにくい厚い壁を有する管腔の場合は、非結合管腔の整列が容易になるように染料を蝋組成物に組み込むことが考えられる。
【0213】
実施例6:ゾルゲル物質および接着剤結紮使用の仮想実施例
本仮想実施例は、光活性化性の架橋開始部位および生分解のための酵素認識部位を有するよう工学的に製造されたゾルゲル組成物を用いる、光によって開始される固化および酵素によって開始される液化を用いた吻合開始の例を説明する。例えば、ゾルゲルは、適切な光の波長にさらすと固体に向かって転移し、酵素にさらすと液体に向かって転移(またはより液体になる)し、溶解して体循環に入る。施術者は実質的に液体のゾルゲルを第1の管状組織の末端に導入し、ゾルゲルを実質的に固化させるために適当な波長の光を照射する。管状組織が生体内にある場合は、光は光ファイバー手段を用いて照射してもよく、管状組織が生体外にある場合は、適当な光源を利用してもよい。ゾルゲルのポリマー骨格は、プロテアーゼ認識部位などの酵素認識部位を含むように工学的に製造されてもよい。施術者は管状組織の末端を整合させ、末端が接合される継ぎ目に接着剤を外側から塗布してシーラントを固化させることで連続した管状組織を創出する。実質的に固体したゾルゲルの位置に酵素が注入され、ゾルゲルが構成要素へと分解されてやがて周囲組織に吸収される、または全身的な老廃物の排泄に伴って除去される。
【0214】
上記は本発明の原理を説明するに過ぎない。当然ながら、当業者は本明細書には明示的に記述または提示されていないが、発明の原理を具体化し、その精神と範囲に含まれる各種配置構成を考案することができるであろう。更に、本明細書において説明した例および条件付文言の全ては、主として読者の本発明の原理および本技術を発展させるために発明者によって提供された概念の理解に役立つことを意図しており、こうした具体的に説明された例および条件に制限されることはないと解釈されるべきである。加えて、本発明の原理、態様および実施形態のみならずその具体的実施例を説明する本明細書の記述は全て、その構造的および機能的均等物を包括することを意図している。更に、こうした均等物は、現在周知の均等物および将来開発される均等物、すなわち、構造に関わらず同じ機能を果たす要素が開発された場合にはそのいかなるものをも含むことを意図している。従って、本発明の範囲は、本明細書において示し説明した例示的実施形態に限られるものではない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の請求項によって具体化されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)該管腔の少なくとも1つの少なくとも遠位部分に生体適合性固体錬剤を提供すること;
b)該管腔を整列させること;
c)該整列させた管腔を閉鎖して導管を形成すること;および
d)該固体錬剤を除去することによって該導管を通る流れを確立すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記固体錬剤が接合すべき管腔それぞれの遠位部分に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体錬剤が、第1の管腔の遠位部分に該固体錬剤が該遠位部分から突出するように配置され、この突出部が雌嵌合機能部として作用する第2の管腔の遠位部分に対する雄嵌合機能部として使用され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固体錬剤が滅菌されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記固体錬剤がゾルゲル組成物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ゾルゲルが相可逆性ゾルゲルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記固体錬剤が蝋を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固体錬剤がチキソトロープ剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記固体錬剤が生物活性剤を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記生物活性剤が、抗血栓薬成分、抗狭心症薬成分、抗凝固薬、抗感染薬、鎮痛薬、抗炎症薬成分、抗不整脈薬成分、抗高血圧薬成分、心不全剤、創傷治癒剤、抗喘息剤、抗利尿剤、抗腫瘍剤、解熱剤、および鎮痙剤、および抗コリン作用剤、免疫抑制剤、交感神経様作用剤、中枢神経系刺激薬;副交感神経遮断剤、ホルモン、筋弛緩薬、脂質低下剤;抗潰瘍剤、食欲抑制薬、関節炎治療薬、抗痙攣薬;抗うつ薬;鎮静薬;ならびに精神安定剤の1以上の中から選択される、請求項98に記載の方法。
【請求項11】
前記生物活性剤が抗凝固薬である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗凝固薬がヘパリンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記固体錬剤が生体適合性染料を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記固体錬剤が生体適合性造影剤を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記固体錬剤が、融解、相変化、粘度の変化、体液への溶解およびこれらの組合せから選択される方法によって除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第2の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
c)該第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
e)該導管内の該相可逆性ゾルゲルに該ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
f)該導管を通る流れを可能にするステップ
を含む、方法。
【請求項17】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第2の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
c)該第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
e)該導管内の該相可逆性ゾルゲルに該ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
f)該導管を通る流れを可能にするステップ
を含む、方法。
【請求項18】
ステップa)またはステップb)の少なくとも一方が、
a1)前記第1の管腔および/または前記第2の管腔の前記遠位端の少なくとも一部分の内部に該第1の管腔および/または該第2の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するようゲル相の前記相可逆性ゾルゲルを配置するステップ
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ステップa)およびステップb)の少なくとも一方が、
a2)前記第1の管腔および/または前記第2の管腔の前記遠位端の少なくとも一部分の内部に液相の前記相可逆性ゾルゲルを配置するステップ;および
a3)該第1の管腔および/または該第2の管腔内の該相可逆性ゾルゲルに、該液相が該第1の管腔および/または該第2の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するゲル相に変化する相転移変化を誘発させるステップ
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与し、該遠位端から突出するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を該第1の管腔からの該突出部に嵌合することによって該第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
d)該導管内の該相可逆性ゾルゲルに該ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
e)該導管を通る流れを可能にするステップ
を含む、方法。
【請求項21】
相可逆性ゾルゲルが、ゲル相にあるときには少なくとも約100から約500,000パスカルの弾性係数(G’)を有する、請求項6および16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記弾性係数(G’)が約100から約20,000パスカルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記相可逆性ゾルゲルが熱可逆性ゾルゲルである、請求項6および16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記熱可逆性ゾルゲルが約35℃から約42℃の転移温度を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記転移温度が約37℃から約42℃である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記熱可逆性ゾルゲルが正常なヒト温度に近い転移温度を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記熱可逆性ゾルゲルの相転移が±1℃から±10℃の温度変化によって発生する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記熱可逆性ゾルゲルが重合体および溶媒を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記溶媒が水である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記重合体がポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)の共重合体である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記共重合体が約8,000から約16,000の分子量を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記共重合体が約10,000から約14,000の分子量を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記共重合体が約12,600の分子量を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記熱可逆性ゾルゲルがタンパク質を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在し、前記タンパク質が約0.5重量%から約2.0重量%の量で存在する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記共重合体が約17重量%±該17%のうちの20%の量で存在し、前記タンパク質が約1重量%±該1%のうちの20%の量で存在し、水が約82重量%±前記82%のうちの20%の量で存在する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記タンパク質がアルブミンである、請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記アルブミンがウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第2の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
c)該第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
e)該導管を通る流れが確立されるように該蝋を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む、方法。
【請求項41】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与し、該遠位端から突出するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を該第1の管腔からの該突出部に嵌合することによって該第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
d)該導管を通る流れが確立されるように該蝋を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む、方法。
【請求項42】
前記蝋が約38℃と約45℃の間の融点を有する、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記蝋が約39℃と約42℃の間の融点を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記蝋が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、スティードマンの蝋、およびこれらの組合せからなる群から選択される作用物質を含む、請求項40または41に記載の方法。
【請求項45】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第2の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
c)該第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
e)該導管を通る流れが確立されるように該チキソトロープ剤を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む、方法。
【請求項46】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するための方法であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与し、該遠位端から突出するように固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を該第1の管腔からの該突出部に嵌合することによって該第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
d)該導管を通る流れが確立されるように該チキソトロープ剤を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む、方法。
【請求項47】
生きている哺乳動物内の管腔を接続するための方法であって、
第1の管腔内に、該第1の管腔を開状態に保つように相可逆性ゲルを提供するステップ;
第2の管腔内に、該第2の管腔を開状態に保つように相可逆性ゲルを提供するステップ;
該第1の管腔の端部と該第2の管腔の端部との間に接着剤を塗布し、該接着剤に該第1および第2の管腔の間の結合を形成させるステップ;
該第1の管腔内部および該第2の管腔内部の該相可逆性ゲルに相変化を誘発させるステップ;
該第1の管腔を通って該第2の管腔へ至る流れを可能にするステップ
を含む、方法。
【請求項48】
前記第1の管腔が、ヒトの循環系の脈管である、請求項1から8、16から20、40、41、および45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第2の管腔が、ヒトの循環系の脈管、動静脈グラフトおよび動静脈シャントからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記第2の管腔が、同種移植片、異種移植片および合成グラフトからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記第2の管腔が死体異種移植片である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記管腔の少なくとも1つが1mm未満の直径を有する、請求項1から8、16から20、40、41および45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記2つの管腔が、ヒト卵管、精管、消化管内の管、膵管、胆管、涙管、および乳管からなる群から選択される、請求項1から8、16から20、40、41および45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記管腔の接合が生体適合性接着剤を用いて、または縫合糸によって実施される、請求項1から8、16から20、40、41および45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記生体適合性接着剤が、シアノアクリレートベースの接着剤、フィブリンベースの接着剤、ポリウレタンベースの接着剤、およびポリイソシアネートベースの接着剤の中から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記接着剤が結紮された末端の外周に塗布され外部ステントを形成する、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記管腔が末端−末端接合される、請求項1から8、16から20、40、41および45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記管腔が末端-側面接合される、請求項1から8、16から20、40、41および45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記管腔が側面-側面接合される、請求項1から8、16から20、40、41および45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
a)重合体;および
b)水;
を含む熱可逆性ゾルゲルであって、
約35℃から42℃のゾルゲル転移温度および少なくとも約100から約500,000パスカルの弾性率を有する熱可逆性ゾルゲル。
【請求項61】
前記重合体がポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体またはそうしたブロック共重合体の混合物である、請求項60に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項62】
前記共重合体が約8,000から約16,000の分子量を有する、請求項61に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項63】
前記共重合体が約10,000から約14,000の分子量を有する、請求項62に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項64】
前記共重合体が約12,600以上の分子量を有する、請求項63に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項65】
生体適合性タンパク質を更に含む、請求項60に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項66】
前記生体適合性タンパク質がウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンから選択される、請求項65に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項67】
前記生体適合性タンパク質がヒト血清アルブミンである、請求項66に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項68】
前記共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在する、請求項60に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項69】
前記共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在し、前記タンパク質が約0.5重量%から約2.0重量%の量で存在する、請求項65から67のいずれか一項に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項70】
前記共重合体が約17重量%±該17%のうちの20%の量で存在し、前記タンパク質が約1重量%±該1%のうちの20%の量で存在し、水が約82重量%±該82%のうちの20%の量で存在する、請求項65から67のいずれか一項に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項71】
生物活性薬を更に含む、請求項60から70のいずれか一項に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項72】
前記生物活性薬が、抗血栓薬成分、抗狭心症薬成分、抗凝固薬、抗感染薬、鎮痛薬、抗炎症薬成分、抗不整脈薬成分、抗高血圧薬成分、心不全剤、創傷治癒剤、抗喘息剤、抗利尿剤、抗腫瘍剤、解熱剤、および鎮痙剤、および抗コリン作用剤、免疫抑制剤、交感神経様作用剤、中枢神経系刺激薬;副交感神経遮断剤、ホルモン、筋弛緩薬、脂質低下剤;抗潰瘍剤、食欲抑制薬、関節炎治療薬、抗痙攣薬;抗うつ薬;鎮静薬;ならびに精神安定剤からなる群から選択される、請求項71に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項73】
前記抗凝固剤がヘパリンである、請求項72に記載の熱可逆性ゾルゲル。
【請求項74】
哺乳動物の循環系の脈管であって、該脈管の壁を血流が該脈管を流れる場合に類似した様式の開状態に保つように、かつ保つのに十分な量で該脈管内に位置決めされた固体錬剤を有する脈管。
【請求項75】
前記固体錬剤が滅菌されている、請求項74に記載の脈管。
【請求項76】
前記固体錬剤がゲル相の相可逆性ゾルゲルである、請求項74に記載の脈管。
【請求項77】
前記相可逆性ゾルゲルが約35℃から約42℃の範囲の温度で相転移する熱可逆性ゾルゲルである、請求項76に記載の脈管。
【請求項78】
前記ゲルが、ゲル相にあるときに約100から約500,000パスカルの弾性係数G’を有する、請求項76に記載の脈管。
【請求項79】
前記固体錬剤が蝋組成物である、請求項74に記載の脈管。
【請求項80】
前記固体錬剤が揺変性組成物である、請求項74に記載の脈管。
【請求項81】
生きている哺乳動物内の少なくとも2つの非結合管腔を接続するためのキットであって、
送達デバイス;および
ゾルゲル、蝋、および揺変性物質から選択される組成物
を含む、キット。
【請求項82】
前記送達デバイスが注射器である、請求項81に記載のキット。
【請求項83】
前記組成物が前記注射器に充填されている、請求項82に記載のキット。
【請求項84】
前記非結合管腔の少なくとも1つを閉鎖する少なくとも1つのクランプを更に含む、請求項81に記載のキット。
【請求項85】
前記管腔を封止するための生体適合性接着剤を更に含む、請求項81に記載のキット。
【請求項86】
熱源を更に含む、請求項81に記載のキット。
【請求項87】
患者における少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性固体錬剤であって、
a)該管腔の少なくとも1つの少なくとも遠位部分に該生体適合性固体錬剤を配置すること;
b)該管腔を整列させること;
c)該整列させた管腔を閉鎖して導管を形成すること;および
d)該固体錬剤を除去することによって該導管を通る流れを確立すること
を含む方法に用いる生体適合性固体錬剤。
【請求項88】
前記固体錬剤が接合すべき管腔それぞれの遠位部分に配置される、請求項87に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項89】
前記固体錬剤が第1の管腔の遠位部分に前記固体錬剤が該遠位部分から突出するように配置され、この突出部が雌嵌合機能部として作用する第2の管腔の遠位部分に対する雄嵌合機能部として使用され得る、請求項87に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項90】
前記固体錬剤が滅菌されている、請求項87に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項91】
前記固体錬剤がゾルゲル組成物を含む、請求項87に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項92】
前記ゾルゲル組成物が熱可逆性ゾルゲルである、請求項91に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項93】
前記生体適合性固体錬剤が蝋を含む、請求項87に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項94】
前記生体適合性固体錬剤がチキソトロープ剤を含む、請求項87に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項95】
前記生体適合性固体錬剤が生物活性剤を更に含む、請求項87から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記生物活性剤が、抗血栓薬成分、抗狭心症薬成分、抗凝固薬、抗感染薬、鎮痛薬、抗炎症薬成分、抗不整脈薬成分、抗高血圧薬成分、心不全剤、創傷治癒剤、抗喘息剤、抗利尿剤、抗腫瘍剤、解熱剤、および鎮痙剤、および抗コリン作用剤、免疫抑制剤、交感神経様作用剤、中枢神経系刺激薬;副交感神経遮断剤、ホルモン、筋弛緩薬、脂質低下剤;抗潰瘍剤、食欲抑制薬、関節炎治療薬、抗痙攣薬;抗うつ薬;鎮静薬;ならびに精神安定剤の1以上の中から選択される、請求項95に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項97】
前記生物活性剤が抗凝固薬である、請求項96に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項98】
前記抗凝固薬がヘパリンである、請求項97に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項99】
前記生体適合性固体錬剤が生体適合性染料を更に含む、請求項87から94のいずれか一項に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項100】
前記生体適合性固体錬剤が生体適合性造影剤を更に含む、請求項87から94のいずれか一項に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項101】
前記生体適合性固体錬剤が、融解、相変化、粘度の変化、体液への溶解およびこれらの組合せから選択される方法によって除去される、請求項87に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項102】
前記第1の管腔が、ヒトの循環系の脈管である、請求項87から94のいずれか一項に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項103】
前記第2の管腔が、ヒトの循環系の脈管、動静脈グラフト、動静脈シャント、同種移植片、異種移植片および合成グラフトからなる群から選択される、請求項102に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項104】
前記管腔の少なくとも1つが1mm未満の直径を有する、請求項87から94のいずれか一項に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項105】
前記管腔が、ヒト卵管、精管、消化管内の管、膵管、胆管、涙管、乳管からなる群から選択される、請求項87から94のいずれか一項に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項106】
前記第1および第2の管腔の接合が生体適合性接着剤を用いて、または縫合糸によって実施される、請求項87から94のいずれか一項に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項107】
前記生体適合性接着剤が、シアノアクリレートベースの接着剤、フィブリンベースの接着剤、ポリウレタンベースの接着剤、およびポリイソシアネートベースの接着剤の中から選択される、請求項106に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項108】
前記接着剤が前記管腔の断面に塗布される、請求項106に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項109】
前記接着剤が前記接合された管腔の外周に塗布される、請求項106に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項110】
前記接着剤が更に外部ステントを形成する、請求項109に記載の生体適合性固体錬剤。
【請求項111】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる相可逆性ゾルゲルであって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように該相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第2の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
c)該第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
e)該導管内の該相可逆性ゾルゲルに該ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
f)該導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法において用いる相可逆性ゾルゲル。
【請求項112】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる相可逆性ゾルゲルであって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するようにゲル相の該相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第2の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
c)該第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
e)該導管内の該相可逆性ゾルゲルに該ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
f)該導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法において用いる相可逆性ゾルゲル。
【請求項113】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる相可逆性ゾルゲルであって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与し、該遠位端から突出するようにゲル相の相可逆性ゾルゲルを提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を該第1の管腔からの該突出部に嵌合することによって該第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
d)該導管内の該相可逆性ゾルゲルに該ゲル相が液相に変化する相変化を誘発させるステップ;
e)該導管を通る流れを可能にするステップ
を含む方法において用いる相可逆性ゾルゲル。
【請求項114】
ゲル相にあるときには少なくとも約100から約500,000パスカルの弾性係数(G’)を有する、請求項111から113のいずれか一項に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項115】
前記弾性係数(G’)が約100から約20,000パスカルである、請求項114に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項116】
前記相可逆性ゾルゲルが熱可逆性ゾルゲルである、請求項111から113のいずれか一項に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項117】
前記熱可逆性ゾルゲルが約35℃から約42℃の転移温度を有する、請求項116に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項118】
前記転移温度が約37℃から約42℃である、請求項117に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項119】
前記熱可逆性ゾルゲルの相転移が±1℃から±10℃の温度変化によって発生する、請求項116に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項120】
前記熱可逆性ゾルゲルが重合体および水を含む、請求項116に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項121】
前記重合体がポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)の共重合体である、請求項120に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項122】
前記共重合体が約8,000から約16,000の分子量を有する、請求項121に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項123】
前記共重合体が約10,000から約14,000の分子量を有する、請求項122に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項124】
前記共重合体が約12,600以上の分子量を有する、請求項123に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項125】
前記共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在する、請求項121に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項126】
前記相可逆性ゾルゲルがタンパク質を更に含む、請求項121に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項127】
前記タンパク質がアルブミンである、請求項126に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項128】
前記アルブミンがウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択される、請求項127に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項129】
前記共重合体が約15重量%から約20重量%の量で存在し、前記タンパク質が約0.5重量%から約2.0重量%の量で存在する、請求項126に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項130】
前記共重合体が約17重量%±該17%のうちの20%の量で存在し、前記タンパク質が約1重量%±該1%のうちの20%の量で存在し、水が約82重量%±該82%のうちの20%の量で存在する、請求項126に記載の相可逆性ゾルゲル。
【請求項131】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性蝋であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように該固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第2の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
c)該第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
e)該導管を通る流れが確立されるように該蝋を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法において用いる生体適合性蝋。
【請求項132】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性蝋であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与し、該遠位端から突出するように該固体の生体適合性蝋を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を該第1の管腔からの該突出部に嵌合することによって該第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
d)該導管を通る流れが確立されるように該蝋を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法において用いる生体適合性蝋。
【請求項133】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性チキソトロープ剤であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように該固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第2の管腔の該一部分に構造的完全性を付与するように固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
c)該第1および第2の管腔の遠位部分を整列させるステップ;
d)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
e)該導管を通る流れが確立されるように該チキソトロープ剤を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法において用いる生体適合性チキソトロープ剤。
【請求項134】
遠位端を有する少なくとも2つの非結合管腔を接合するのに用いる生体適合性チキソトロープ剤であって、
a)第1の管腔の遠位端の少なくとも一部分の内部に、該第1の管腔の該一部分に構造的完全性を付与し、該遠位端から突出するように該固体の生体適合性チキソトロープ剤を提供するステップ;
b)第2の管腔の遠位端を該第1の管腔からの該突出部に嵌合することによって該第1および第2の管腔を整列させるステップ;
c)導管を提供するように該管腔を接合するステップ;
d)該導管を通る流れが確立されるように該チキソトロープ剤を固体から溶解形態および/または液体形態に変換するステップ
を含む方法において用いる生体適合性チキソトロープ剤。
【請求項135】
生きている哺乳動物内の管腔を接続するのに用いる相可逆性ゲルであって
第1の管腔内に、該第1の管腔を開状態に保つように相可逆性ゲルを提供するステップ;
第2の管腔内に、該第2の管腔を開状態に保つように相可逆性ゲルを提供するステップ;
該第1の管腔の端部と該第2の管腔の端部との間に接着剤を塗布し、該接着剤に該第1および第2の管腔の間の結合を形成させるステップ;
該第1の管腔内部および該第2の管腔内部の該相可逆性ゲルに相変化を誘発させるステップ;
該第1の管腔を通って該第2の管腔へ至る流れを可能にするステップ
を含む方法において用いる相可逆性ゲル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−540965(P2009−540965A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516734(P2009−516734)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/071824
【国際公開番号】WO2007/149999
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(504394593)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー (10)
【Fターム(参考)】