説明

非結晶性熱可塑性樹脂発泡体からの減容積物製造方法

【課題】非結晶性熱可塑性樹脂発泡体破砕物を短時間で減容し、発泡倍率の低い低発泡体製造を目的とした技術提供。
【解決の手段】非結晶性熱可塑性樹脂発泡体破砕物を高温高圧処理できる装置(オートクレーブ等)内で加熱水或いは加熱蒸気により発泡体表面被膜をゴム状化し、内部の発泡ガスを排除することにより減容発泡体を製造することを手段とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中温中圧水或いはその蒸気(120℃〜150℃)の雰囲気内で非結晶性熱可塑性樹脂発泡体(以下、発泡体という)を加熱し、発泡体をゴム状化領域まで温度を上昇せしめることにより発泡体皮膜をゴム状化して内部の発泡ガス物質を放出せしめた後、発泡体を冷却してガラス転移領域以下に冷却固化して目的とする減容範囲に止めた減容物製造に関する。
【技術の背景】
【0002】
減容前の発泡体は、ポリスチレン系、塩化ビニール系のような非結晶性プラスチックス原料に発泡剤を混練し、成型金型内で加熱発泡させて成型される。それらの中で最も代表的なものは、発泡スチロール(以下EPSという)であることはよく知られている。これらの発泡体は、用途によって発泡倍率が異なり、5〜100倍の広範囲のものが各種使用されている。その例としては、包装資材、建築用断熱・遮音材、土木用軽量化材・遮水材などが上げられる。これら発泡体の使用済みのものが主として本発明の原料となる。
これら各種用途における使用済み発泡体、或いは製造時に生じる不良品の処理については多くの方法が検討されてきた。具体的には、使用済み発泡体リサイクルを目的とした代表的な方法として、比重0.8以上に熔融固形化(以下、インゴット化という)する方法がある。この方法は、使用済み発泡体を一次破砕してから熱によりインゴット化する方法である。しかし、本法は、灯油、電気、重油などの燃料消費が大きく、大量の熱源消費による環境破壊ガス(炭酸ガス)発生などの問題も抱えており、且つ、低比重リサイクル製品である低発泡体(比重0.1〜0.6)を製造するには設備上問題があった。
そのために低発泡体(比重0.1〜0.6)を製造する方法として高温蒸気直接照射、遠赤外線照射による方法及び125〜140℃の熱媒液を通す製造方法などが開発されたが、全て常圧による開放型設備であるために生産性が非効率的であってエネルギー消費型設備であり、しかも減容後の減容物二次破砕を大掛かりにする必要があり、エネルギー消費量の減少、量産、作業上の効率化が求められていた。
これらのことから従前製品は、コストも高く、用途拡大には限界があった。本発明者は、これらの状況を勘案してプラスチックス再資源化に貢献できる製造方法を提供するものである。
【特許文献1】「特願平4−80545」
【特許文献2】「特願平8−344843」
【特許文献3】「特願平11−302037」
【特許文献4】「特願2000−195494」
【特許文献5】「特願平2000−312114」
【特許文献6】「特願平2001−380802」
【非特許文献1】「日刊工業新聞 プラスチックス物性入門 1996.1.31」
【非特許文献2】「工業調査会−プラスチックス・データブック 1999.12.1」
【非特許文献3】「(株)東京化学同人 化学大辞典 1998」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、[技術の背景]に述べたような問題点を勘案し、使用済み発泡体を効率的に減容し、安価な低発泡物を提供することであって、その製造に係わる技術提供を課題としている。
一次破砕した発泡体を網かご状容器に充填し、中温中圧加熱水或いは水蒸気を飽和しうる加熱装置(以下オートクレーブという)内にその容器ごと配置し、求める減容率に合わせてオートクレーブ内温を一定温度に上昇せしめ、一定時間保つことにより減容し、常温に戻して取り出し二次破砕を行うことによって低〜中発泡体を製造することである。オートクレーブを使用することによって初めて効率的生産が可能となった。
又、従来の方法による減容方法では、低〜中発泡体を製造する際に粒子相互が融着ブロック状になりやすく、低温、低速製造を余儀なくされており、再破砕のための強い二次破砕工程を必要とした。この二次破砕は、本発明のように微弱な融着であるほど作業が容易であり、当該方法はその難点を解決することも課題としている。即ち、オートクレーブ内で粒子表面には、加熱水あるいは水蒸気により水被膜形成されるために、粒子表面の熔融ゴム上化による粒子接着を妨害する離型剤効果が発揮され、微弱な融着に止めることが出来る。従って、二次破砕を容易に行うことが出来る。
従来から行われている遠赤外線による減容方法は、粒子表面に水分が付着していると水分蒸発により温度が上がらず、燃費がかかり量産することが極めて困難であり、一次破砕の粒子は乾燥していることが原料としての条件であった。又、設備価格も高価であることから生産コストが高い欠点を持っていた。又、これとは別な方法として、一次破砕粒子に中温中圧蒸気を常圧で噴射し減容する方法もあるが、均一に中温中圧蒸気を当てることが難しく、且つ、エネルギーのロスも大きかった。当該方法は、これらの方法の欠点を改善し、且つ、安価に減容物を量産することを課題としている。
【発明が解決するための手段】
【0004】
課題を解決する手段は、非結晶性熱可塑性樹脂発泡体(発泡体)、例えば、使用済み発泡スチロール製魚箱を破砕機により減容後の求める粒度に合わせて一次破砕し、この破砕物を各面が金属性ネット状などの通気可能な容器に充填し、オートクレーブ内にその充填済み容器を配置する。その後、オートクレーブ内温を減容物条件に合わせて上昇せしめることにより、発泡体粒子表面をゴム化せしめて、発泡を形成する内部のガス体を容易に放出せしめる状況下で目的とする減容物を製造することを手段とした。オートクレーブ内での減容であり、密閉状態により熱の飛散消失が防げること、即ち、エネルギーロスを最小限に抑えることが可能となり、且つ、均一に加熱できることに着目し、解決の手段とした。
【発明の効果】
【0005】
本発明の効果は、以下の通りである。
(1)使用済み発泡体は、減容前に一次破砕することが好ましい。その理由は、使用済み発泡体を破砕しないブロック状の場合は、発泡体が熱伝導係数の低い単独気泡集合体ブロックでるために高度の断熱効果があり、オートクレーブ内での過熱減容では発泡体表面のゴム化が先行しておきて内部は熱が伝わりにくいためである。即ち、一次破砕により粒体とすることにより表面積を極度に大きくし、内部まで熱伝導が行われる配慮によって効果を上げうる。粒状物製造においては、一次破砕の粒体径は、100mm以下が好ましいことを知見した。遠赤外線法及び常圧高温蒸気噴射方式はベルトコンベアー等による平面での照射作業でなければならない。そのために、生産性が悪い欠点があり量産、コストに係わる最大の問題点であった。本方法は大きなネット製ケースに充填して行うことで大容積での製造が可能である。即ち、バッチ式大量生産方式である。ネット製ケースの大きさは、1m以下が取り扱い上、作業上好ましい。横型オートクレーブでは、奥行き25m以上のものがあり、1m以下ネット製ケースに一次破砕発泡粒体を充填し、オートクレーブに1バッチ(例えば、25個のケース)として挿入、減容出来ることも可能なことから量産化を可能とした。
(2)(1)項の一次破砕した粒状発泡体は、水あるいは蒸気などが自由通過出来るネット状ケースに入れることが好ましく、その容器を形成するネットは、金属性或いは耐熱性有機繊維製のものなど熱に強いものが好ましい。その網目の大きさは、一次破砕粒体の径より小さいものが適している。その減容後に形成した縮径物のネット通過物は受け皿使用により外部への飛散は容易に防止できる。
(3)オートクレーブ内で使用する中温水・蒸気は、外部ボイラーで発生せしめてオートクレーブ内に圧入するのが好ましく、急速に一次破砕の発泡体表面を濡らすか、湿潤状態にする効果がある。この効果は、破砕発泡体の表面に水被膜を形成し離型効果をもたらせる。即ち、破砕発泡体表面がオートクレーブ内温上昇とともにゴム化した際に減容に伴う粒体相互融着によるブロック化を防止する効果がある。前述での遠赤外線法での減容粒体のブロック化は、水を排除してから遠赤外線を照射することで、減容粒体間での離型効果が発揮できないことに起因し、その結果、二次破砕を困難にして破砕物粒度を幅広く分布させる弊害がある。本方法発明者は、この減容中の粒体相互融着問題点を解決し、従来の方法で問題となっていた二次破砕工程を容易なものとした。
(4)本発明は、オートクレーブ内での中温化によるものである。水の沸点は常圧で100℃とすればそれ以上に温度上昇をせしめるためには、中温中圧蒸気を使う必要がある。本方法は、ボイラーにより中温中圧蒸気を発生せしめ、オートクレーブ内に圧入することによりオートクレーブ内温を迅速に上昇させることが出来、その結果、大量生産できることを知見した。
(5)オートクレーブでの生産では温度管理が重要であり、中温中圧水蒸気によることから、オートクレーブ内を短時間で一定温度に管理できることも知見した。発泡体のベース樹脂の種類によってガラス化及びゴム化温度が異なる。そのベース樹脂の種類によってオートクレーブ内維持温度と時間、及び容器取り出し温度を設定する必要がある。その例として(表1)にベース樹脂がポリスチレン樹脂発泡物での実例を記載した。その結果、オートクレーブ使用における中圧領域(120〜140℃の領域)内で効果を上げうることを知見した。
(6)本発明者は、減容での発泡物内のガス体除去原理が、独立気泡のガス体を取り巻く樹脂被膜が温度上昇と共にゴム化し、内部のガスが放出しやすい状態となり、冷却と共にガラス化による固化が進行することを知見し、この原理を本発明の基本技術としている。即ち、ガス体は、加温状態で体積膨張してゴム化した被膜表面に微細孔を穿孔し、外部吐出される。減圧と共にオートクレーブ内温低下が進行し、樹脂収縮と共に孔の掩塞が進行して孔の掩塞が進み、最終的にガラス化して再度独立気泡化し、ガス放出分だけの減容に収斂する。従って、オートクレーブ内温の調節により、ガス体の膨張容積が異なるので低温ほどガス体吐量は少なくなり、減容率を下げることが出来ることを知見した。
(7)本方法に関し、本発明者は、オートクレーブ内温150℃以上の条件によって、固化物(インゴット)生産も容易に可能であることも知見した。これらインゴットは、比重0,7以上の固化物であり、二次破砕により軽量粒体となることも同時に知見し、且つ、一次破砕しないものを熔融インゴッ化できることも知見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を実施するための最良の形態は、[図1][図2][表1]を以って説明する。
[図1]は、1次破砕した熱可塑性樹脂発泡体(3)、(16)を金属性金網製ケース(2)に充填し、オートクレーブ(1)内に配置した図である。オートクレーブ内部構造は、縦型或いは横型等の形式があるが、本発明で使用するオートクレーブは、加熱加温できる装置であればよい。本説明では縦型オートクレーブを以って説明する。オートクレーブ内には、破砕物を充填したケース(2)を載せる架台(7)があり、天蓋(8)をあけて挿入配置したケース(2)はその上に載せられる。架台(7)の下に水を入れて加熱により発生する蒸気或いは外部で製造した中圧中温蒸気などによってオートクレーブ内部温度を上げて破砕物の減容を行う。この際、水がケース(2)の底部より上部に達していても問題はなく、蒸気のみで昇温することも可能である。取り出しに際しては、ガス抜きを行いゲージが常圧近辺(110℃以下)に戻ったことを確認し、天蓋(8)を開放してケース(2)を取り出す。本加熱方法において、熱可塑性樹脂発泡体(発泡体)を充填したケースが単純に大きい場合には、熱循環が充分でないことがあり、内部の温度を目的の温度まで昇温出来ないことがある。このような場合には、ケース構造を小分けタイプとして熱交換を容易にする方法を採用すればよい。又、加熱方法は、複数の方法を組み合わせて行うことも可能であり、オートクレーブ内部に熱源を配置することも効率的方法として採用出来る。
【0007】
次に、オートクレーブ内においては、内温上昇と共にケース(2)内部の一時破砕発泡体温度も上昇し、ゴム状化或いはゴム流動状に到達する。同時に、発泡体内部のガス気体も同時に膨張する。この適性温度は、発泡体を構成する原料樹脂の種類、製法により異なっている。容器内には発泡体破砕物(3)、(16)があり、これらの発泡体は昇温過程での被膜ゴム化と内部ガス膨張により風船状に膨らみ、更なる昇温過程で被膜ゴム化が進み、内部ガス圧に耐え切れず、一部からガスが外部に吐出される。その際、部分的に粒子相互状融着現象[図2](18)を起こし、ブロックかする。その程度は、温度、蒸気濃度に左右されることがわかっている。又、粒子相互ブロック状融着現象の結合は、過熱水或いは加熱蒸気の存在下での水膜の離型剤効果により相互融着は強固でなくでき、破砕機による二次破砕で微細物発生防止、破砕機の簡便化などの面で良好な再粒状化が可能である。[図2]は、熱可塑性樹脂発泡体一次破砕、溶融によるブロック化、二次破砕による製品化工程を示している。[図2]二次破砕によりのブロック状物(18)は相互融着部が破壊されて(20)のように単独粒体に出来る。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例により説明するが、その主旨を超えない限り下記実施例に限定されるものでない。
本発明による製造実施例を下記のとおり記載する。
当該発明は、非結晶性熱可塑性プラスチックを原料とした発泡体を減容し、原体よりも低い比重(発泡倍率化)のものを製造することに関する。
[実施例1]では、非結晶性プラスチックの代表格である使用済み発泡スチロール製魚箱を使用した場合の減容発泡体製造について記載する。
使用済み発泡スチロール製魚箱は、約50倍発泡のものを使用した。充分に洗浄し、表面に付着しているラベル、シールなどを除去し、乾燥工程を省いて一次破砕機に投入20〜30mmの異型粒状物を製造し、1m金属網型容器(2)内に充填した。容器内には、約11.5kgの破砕物が収納された。
オートクレーブは、内温180℃まで加温可能なものであって、その内部は、[図1]に示したように1m金属網型容器を載せる架台が付設してある。一次破砕物を充填した上記1m金属網型容器を載せて天蓋をしめて密封した。オートクレーブ安全装置を3.5kg/cmセットし、外部で別に発生せしめた高圧蒸気を送給し、同時に内部過熱用配管に高温蒸気を送給し昇温を開始した。10分後に120℃に到達し図3に示すゴム状態領域に到達した。130℃まで昇温しそのまま5分放置して発泡体内部のガスを放出せしめ、オートクレーブ内圧を常圧に戻して図3の転移領域内に戻し、天蓋をあけて容器を取り出し減容した製品を取り出した。その製品減容発泡体は、真比重0.4、粒度径2mmであって、一次破砕品と比較すると真比重が20分の1であり、粒度径は10分の1となっていた。一部にゴム状態領域での軽度の粒子間融着が見られたので篩に掛け、残りの融着物を二次破砕して粒体とし、軟弱地盤固化材軽量化資材として提供した。
【0009】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発泡体減容図
【図2】減容粒体製造工程図
【図3】ポリスチレン樹脂の加熱による状態変化図
【符号の説明】
【0011】
1加圧加熱装置(オートクレーブ)
2発泡体充填用籠
3発泡体充填内部
4蜜目金属製網
5ワイヤー
6水
7穴あき底板
8オートクレーブ天蓋
9水蒸気部
10オートクレーブ天蓋開閉金具
11圧力ゲージ
12ガス抜き管
13温度ゲージ
14使用済み魚箱
15一次破砕工程
16一次破砕熱硬化性樹脂粒体
17加圧加熱装置(オートクレーブ)内工程
18取り出し直後の減容物融着部
19二次破砕工程
20二次破砕工程後の減容粒体
21加熱用パイプ
22ガラス状態
23転移領域
24ゴム状態領域
25ゴム状流動状態領域
26液状流動状態領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧加温装置(オートクレーブ等)を使用し、水、水蒸気を熱媒体として非結晶性熱可塑性プラスチック発泡体内部の包含ガスを放出減容積することにより非結晶性熱可塑性プラスチック発泡体の発泡倍率を下げる減容積発泡体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−279913(P2009−279913A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158498(P2008−158498)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(596147563)
【Fターム(参考)】