説明

非酸化電解質エレクトロケミカルシステム

本発明の電気化学システムは、少なくとも1つの基板、少なくとも1つの導電層、イオン、特にH、Li、Na、Agのタイプの陽イオン、またはOH陰イオンを可逆的に挿入するための少なくとも1つの電気化学活性層、および少なくとも1つの電解質機能層を備える。電解質は、非酸化形態において埋め込まれ、イオン伝導性が、特に窒化され、随意選択で水素化またはフッ素化された窒素化合物を組み込むことによって生成または増幅される少なくとも1つの実質的に無機の層を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆的かつ同時にイオンおよび電子を挿入することができる少なくとも1つの電気化学活性層を備える電気化学デバイスの分野に関し、特に、電気化学デバイスの分野に関する。これらの電気化学デバイスは、特に、光および/またはエネルギーの透過、あるいは光および/またはエネルギーの反射を電流によって変調することができるグレージングアセンブリの製造に使用される。また、電池などのエネルギー貯蔵要素または気体センサを製造するためにも使用されることが可能である。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミックシステムの具体的な例を考慮すると、これらは、知られている方式で、陽イオンおよび電子を可逆的かつ同時に挿入することができる材料の少なくとも1つの層を備え、挿入状態および抽出状態に対応するその酸化状態は、異なる色を有し、状態の1つは一般に透明であることが思い出されるであろう。
【0003】
多くのエレクトロクロミックシステムは、以下の「5層」モデル:TC1/EC1/EL/EC2/TC2にて構築される。TC1およびTC2は、電子伝導性材料であり、EC1およびEC2は、陽イオンおよび電子を可逆的かつ同時に挿入することができるエレクトロクロミック材料であり、ELは、電子絶縁体およびイオン導体の両方である電解質材料である。電子導体は外部電源に接続され、2つの電子導体間に適切な電位差を加えることによって、システムの色を変化させることができる。電位差の影響下において、イオンは、1つのエレクトロクロミック材料から抽出されて、他のエレクトロクロミック材料に挿入され、電解質材料を通過する。電子は、1つのエレクトロクロミック材料から抽出され、電荷を相殺して材料の電気的中性を保証するために、電子導体および外部電力回路を介して他のエレクトロクロミック材料に入る。エレクトロクロミックシステムは、一般に支持体の上に付着され、支持体は、透明であるまたはないことが可能であり、有機または無機質の性質であり、したがって基板と呼ばれる。ある場合では、2つの基板が使用されることが可能であり、それぞれがエレクトロクロミックシステムの一部を有し、システム全体は2つの基板を共に接合することよって得られ、または、1つの基板がエレクトロクロミックシステム全体を有し、他方がシステムを保護するように設計される。
【0004】
エレクトロクロミックシステムが、透過にて作用することを意図する場合、導電性材料は、一般に、透過性酸化物であり、その電子伝導は、材料In:Sn、In:Sb、ZnO:Al、またはSnO:Fなどをドーピングすることによって増大された。錫ドーピング酸化インジウム(In:SnまたはITO)が、その高い電子伝導性特性およびその低い光吸収のためにしばしば選択される。システムが反射について作用することを意図する場合、導電性材料の1つは、金属タイプとすることが可能である。
【0005】
最も使用され、かつ最も研究されているエレクトロクロミック材料の1つは、タングステン酸化物であり、これは、その挿入状態に応じて青色から透明に切り替わる。これは、カソード着色エレクトロクロミック材料である。すなわち、その着色状態は、挿入(還元)状態に対応し、その無色状態は、抽出(または酸化)状態に対応する。5層エレクトロクロミックシステムの構築中、5層エレクトロクロミックシステムと、着色機構が相補的であるニッケル酸化物またはイリジウム酸化物などのアノード着色エレクトロクロミック材料とを組み合わせることが一般的に実施される。これにより、システムの光コントラストが向上する。また、たとえばセリウム酸化物など、当該の酸化状態において光学的に中性である材料を使用することも提案された。すべての上記の材料は無機タイプであるが、電子導電性ポリマー(ポリアニリンなど)またはプルシアンブルーなどの有機材料を無機エレクトロクロミック材料と組み合わせることも可能であり、あるいはさらに有機エレクトロクロミック材料のみを使用することも可能である。陽イオンは、一般に、HおよびLiなどの小さい1価イオンであるが、AgまたはKイオンを使用することも可能である。
【0006】
電解質材料の機能は、1つのエレクトロクロミック材料から他へイオンが可逆的に流れることを可能にし、一方、電子が流れるのを防止するものである。電解質が高イオン伝導性を有し、かつイオンが流れている最中に受動的に振舞うことが一般に予測される。この性質は、エレクトロクロミック切替えに使用されるイオンのタイプに適合される。電解質は、陽子伝導性ポリマーまたはリチウムイオン伝導性ポリマーなど、ポリマーまたはゲルの形態をとることが可能である。電解質は、特にタンタル酸化物に基づくものなど、無機層とすることも可能である。
【0007】
材料の選択は、光学的特性によって左右されるが、システムのコスト、利用可能性、処理可能性、および耐久性の考慮事項によっても左右される。「耐久性のある」および「耐久性」という用語は、本明細書では、使用期間全体にわたってシステムの光特性を保持する意味で使用される。
【0008】
エレクトロクロミックシステムを作成する全要素が無機の性質であるとき、これらは、特許EP−0867752において記載されているものなど、「全固体」システムと呼ばれる。材料のいくつかが無機の性質であり材料のいくつかが有機の性質であるとき、システムは、電解質が陽子伝導性ポリマーである欧州特許EP−0253713およびEP−0670346において記載されているものなど、または電解質がリチウムイオン伝導性ポリマーである特許EP−0382623、EP−0518754、またはEP−0532408において記載されているものなど、ハイブリッドシステムと呼ばれる。
【0009】
電解質とエレクトロクロミック材料の少なくとも1つとの間に追加の材料を挿入して、境界面の性質を変更する、および/またはシステムの耐久性を向上させることが可能である。追加された材料は、電解質について通常予期されるすべての条件(たとえば、低電気抵抗を有する、またはエレクトロクロミック材料である)を満たす必要はなく、初期電解質の存在は、そのように創出された多層または複数材料のシステムがイオンの流れに好都合であり、一方、電子の流れを防止することを保証する。そのような例が、全固体エレクトロクロミックシステムに関する特許EP−0867752から利用可能であり、この場合、タングステン酸化物層が、イリジウム酸化物(エレクトロクロミック材料)とタンタル酸化物(電解質)との間に挿入された。同じ手法が、K.S.Ahnら、Appl.Phys.Lett.81(2002)、3930による文献において記載されているハイブリッドシステムの場合において使用されることが可能である。エレクトロクロミック材料は、ニッケル水酸化物およびタンスグテン酸化物であり、電解質は、陽子伝導性固体ポリマーである。追加のタンタル酸化物層が、各エレクトロクロミック材料と電解質ポリマーとの間に挿入されているが、その理由は、直接接触がエレクトロクロミック材料を低質化させるからである。
【0010】
敷衍すれば、そのように創出された多層または複数材料のシステムは電解質と呼ばれるが、その理由は、これは、イオン挿入および抽出機構に寄与しないからである。
【0011】
そのようなシステムは、たとえば欧州特許EP−0338876、EP−0408427、EP−0575207、およびEP−0628849に記載されている。現在、これらのシステムは、システムが使用する電解質のタイプに応じて、2つのカテゴリに分類することができる。
電解質は、欧州特許EP−0253713およびEP−0670346に記載されているような陽子伝導性ポリマー、または特許EP−0382623、EP−0518754、およびEP−0532408に記載されているようなリチウムイオン伝導性ポリマーなど、ポリマーまたはゲルの形態にある。
あるいは、電解質は、イオン導体であるが電子絶縁体である特にタンタル酸化物および/またはタングステン酸化物に基づくものなど、無機層であり、したがって、システムは、「全固体」エレクトロクロミックシステムと呼ばれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、より特に、全固体システムのカテゴリの範囲内にある電気化学システムに対して行われる改良に関するが、ハイブリッドシステム、またはさらに全構成要素が有機の性質であるシステムをも意図する。
【0013】
文献US5552242は、全固体電池タイプの電気化学システムを開示し、その電解質は、水素化シリコン窒化物からなる。
【0014】
さらに、文献EP0831360は、1つまたは複数の層からなる電解質の使用を開示し、その少なくとも1つの電気化学活性層は、イオン、特にH、Li、Na、またはAgタイプの陽イオンを可逆的に挿入することができ、酸化物タイプまたはOH陰イオンの本質的に無機の材料に基づく。
【0015】
すべてのこれらの電気化学デバイスでは、イオン挿入/抽出現象、したがってエレクトロクロミックシステムの特有の場合の着色/無色現象は、十分に可逆的である。
【0016】
しかし、使用時、1つの状態から他(エレクトロクロミックシステムの特定の場合における着色/無色)の切替えは、切替え速度を増大させる目的で依然としてさらに改良することができる動作パラメータの1つであることがわかる。
【0017】
したがって、本発明の目的は、切替え速度を向上させる電気化学システムの電解質を提供することによって、この欠点を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的で、本発明の主題は、少なくとも1つの基板、少なくとも1つの電子伝導層、特にH、Li、Na、K、Agのタイプの陽イオン、またはOHの陰イオンであるイオンを可逆的に挿入することができる少なくとも1つの電気化学活性層、および電解質機能を有する少なくとも1つの層を備える電気化学システムであり、電解質は、可視光において透明であり、非酸化形態において本質的に無機の材料で作成された少なくとも1つの層を備え、そのイオン伝導は、1つまたは複数の窒素化合物、特に随意選択で水素化窒化物またはフッ素化窒化物、あるいは1つまたは複数のフッ化物を組み込むことによって生成される、または向上されることを特徴とする。
【0019】
そのような電解質を使用することによって、電気化学システムは、従来の技術から知られている電気化学システムに対して特定的に改善される転移速度(着色/無色状態間およびその反対間における切替え速度)を有する。
【0020】
さらに、本発明による電解質は、従来のスパッタリング技法によって基板の上に容易かつ迅速に付着させることができることに留意されたい。さらに、非酸化形態の電解質を使用することにより、電気化学システムの耐久性を特定的に向上させる利点が提供される。
【0021】
本発明の文脈内において、上述された「電解質」という用語は、システムの1つまたは複数の電気化学活性層によって可逆的に挿入されたイオンを伝達する材料または材料の組合せである。
【0022】
本発明の他の好ましい実施形態では、以下の構成の1つまたは複数が、随意選択で使用されることも可能である:
−電解質機能を有する層は、電子絶縁性である;
−電解質機能を有する層は、100nmの膜について、20%未満、好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満である吸収を可視光において有する;
−電解質機能を有する層は、1と500nm、好ましくは50と300nm、さらにより好ましくは100と200nmとの間の厚さを有する;
−電解質機能を有する層は、単独または混合物としての、および随意選択でドーピングされているシリコン窒化物、ホウ素窒化物、アルミニウム窒化物、またはジルコニウム窒化物に基づく;
−電解質機能を有する層は、1つまたは複数の窒素化合物を含む層とは別に、本質的に無機の材料で作成された少なくとも1つの他の層を備える多層である;
−他の層の1つは、モリブデン酸化物(WO)、タンタル酸化物(Ta)、アンチモン酸化物(Sb)、ニッケル酸化物(NiO)、錫酸化物(SnO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、アルミニウム酸化物(A1)、シリコン酸化物(SiO)、ニオブ酸化物(Nb)、クロム酸化物(Cr)、コバルト酸化物(Co)、チタン酸化物(TiO)、随意選択でアルミニウムと合金化された亜鉛酸化物(ZnO)、錫亜鉛酸化物(SnZnO)、バナジウム酸化物(V)から選択され、これらの酸化物の少なくとも1つは、随意選択で水素化または窒化される;
−電解質機能を有する層は、1つまたは複数の窒素化合物を含む層とは別に、ポリマー材料で作成された少なくとも1つの他の層を備える多層である;
−電解質機能を有する層は、1つまたは複数の窒素化合物を含む層とは別に、溶融塩に基づく少なくとも1つの他の層を備える多層である;
−他の層の1つは、特にH、L、Ag、K、およびNaであるイオン伝導特性を有するポリマーから選択される;
−ポリマータイプの他の層は、特にポリオキシエチレンであるポリオキシアルキレンから、またはポリエチレンイミンの族から選択される;
−ポリマータイプの他の層は、無水物または水溶液の形態にあり、あるいは1つまたは複数のゲル、あるいは1つまたは複数のポリマーに基づき、特に層タイプの電解質は、POE:HPOタイプの1つまたは複数の水素包含および/もしくは窒素包含化合物を備え、あるいは、層は、1つまたは複数の水素包含および/もしくは窒素包含化合物/PEI:HPO、またはさらに積層可能ポリマーを備える;
−電気化学活性層は、以下の化合物:タンスグテン(W)酸化物、ニオブ(Nb)酸化物、錫(Sr)酸化物、ビスマス(Bi)酸化物、バナジウム(V)酸化物、ニッケル(Ni)酸化物、イリジウム(Ir)酸化物、アンチモン(Sb)酸化物、タンタル(Ta)酸化物の少なくとも1つを単独または混合物として備え、随意選択でチタン、タンタル、またはレニウムなどの追加の金属を含む。
【0023】
電解質において本発明による少なくとも1つの層を組み込む電気化学デバイスは、電解質が実際には多層であるように設計されることが可能である。
【0024】
変形形態として、少なくとも窒化物層を組み込む多層は、例えば欧州特許EP−0253713およびEP−0670346に記載されているような陽子伝導性ポリマー、または特許EP−0382623、EP−0518754、EP−0532408に記載されているようなリチウムイオン伝導性ポリマーなど、ポリマーまたはゲルの形態にあるポリマータイプの他の層を含む。また、出願FR−A−2840078に記載されているように相互浸透網状ポリマーとすることも可能である。
【0025】
したがって、電解質は、多層電解質とすることが可能であり、固体材料の層またはポリマー形態にある層を含むことが可能である。本発明の単層または多層電解質は、せいぜい5μmの厚さを有し、特にエレクトロクロミックグレージングの応用分野では、特に1nmから1μmの大きさである。
【0026】
本発明の文脈内では、「固体材料」という用語は、固体の機械的強度を有する任意の材料、特に本質的に無機または有機の材料、あるいは任意のハイブリッド材料、すなわち、有機無機先駆物質からゾルゲル付着によって得ることができる材料など、部分的に無機質で部分的に有機であるものを意味することを理解されたい。
【0027】
したがって、製造性について明確な利点を有する「全固体」システム構成と呼ばれるものが得られる。これは、システムが、たとえば固体の機械的強度を有さないポリマーの形態の電解質を含むとき、これは、実際には、2つの「半セル」を並行して製造しなければならず、それぞれが電子伝導性第1層でコーティングされ、次いで電気化学活性第2層でコーティングされたキャリア基板からなり、次いでこれらの2つの半セルは、それらの間に挿入された電解質と共に組み立てられることを意味するからである。「全固体」構成では、製造は簡単であるが、その理由は、システムのすべての層を互いに隣接して単一キャリア基板の上に付着させることが可能であるからである。デバイスは軽量にもなるが、その理由は、2つのキャリア基板を有することはもはや必須ではないからである。本発明は、記述された電気化学デバイスのすべての応用分野、特に以下の3つの応用分野にも関する:
・第1応用分野は、エレクトロクロミックグレージングに関する。この場合、グレージングが可変光透過モードにおいて動作することを意図するとき、デバイスの基板は、ガラスまたはプラスチックで作成されるかに関係なく、透明であることが有利である。グレージングにミラー機能を与え、可変光反射モードにおいて動作するようにすることが望ましい場合、いくつかの解決法が可能である:基板の1つは、半透明で反射性であるように選択され(たとえば金属プレート)、あるいは、デバイスは、半透明で反射性の要素と組み合わされ、または、デバイスの電子伝導層の1つは、反射性であるように金属の性質で、十分厚くなるように選択される。
【0028】
特に、デバイスが1つまたは2つの透明基板を備える状態で、グレージングが可変光透過モードにおいて動作することを意図するとき、他の透明基板を有する複数グレージングユニットとして、特に2重グレージングユニットとして、および/または積層グレージングユニットとして取り付けることが可能である:
・第2応用分野は、たとえば電子手段および/または計算手段を含む任意の機器において、および独立型であるか否かに関係なく固有のエネルギー貯蔵デバイスを必要とする任意の機器において、あるいは、この窒素電解質が、単独または混合物としての、随意選択でGdと合金化されたTi、V、Cr、Mn、Fe、Gd、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、またはMgの水素化物の形成または分解が切替えに付随する材料に関連付けられるとき、曇りウィンドウを生産する材料として使用することができるエネルギー貯蔵要素、最も特に水素化物を組み込む電池に関する。
・第3応用分野は、気体センサに関する。これらの気体センサは、物理的、化学的、または物理化学的測定機器を制御または監視する手段として、特に産業用または商用もしくは家庭用の機器において使用されることが可能である。
【0029】
エレクトロクロミックグレージングの応用分野である第1応用分野に戻ると、これは、建物または自動車のウィンドウ、商用/大量輸送車両のウィンドウ、陸、航空、河川、または海の輸送のためのウィンドウとして、ドライビングミラーまたは他のミラーとして、あるいはカメラレンズなどの光学要素として、さらにあるいはコンピュータまたはテレビジョンなどの機器のディスプレイスクリーンの前面または前面の上もしくはその付近に配置される要素として使用されることが可能であることが有利である。
【0030】
特にエレクトロクロミックグレージングの応用分野では、透明基板(ガラス、PC、PMMA、PETなど)/機能多層/ポリマー中間層/透明基板(ガラス、PC、PMMA、PETなど)のタイプの積層構造を有することが好ましいことが実証されている。
【0031】
基板がガラスで作成される場合、基板は、クリアガラスまたはダークガラスで作成されることが可能であり、形状が平坦または湾曲であることが可能であり、化学強靭化または熱強靭化によって強化されることが可能であり、あるいは単に硬化されることが可能である。厚さは、最終使用者の期待および要件に応じて、1mmと19mmとの間において変化させることが可能である。基板は、特に美的理由で、特に周囲を不透明材料で部分的にコーティングされることが可能である。基板は、固有機能(太陽制御、反射防止、低放射率、疎水性、親水性、または他のタイプの少なくとも1つの層からなる多層に由来する)を有することも可能であり、この場合、エレクトロクロミックグレージングアセンブリは、使用者の要求を満たすように、各要素によって提供される機能を組み合わせる。
【0032】
ポリマーインサートは、本明細書では、自動車または建物の分野において広く使用される積層手続きによって2つの基板を共に接合する目的で使用され、それにより、輸送分野において使用されるセキュリティまたは快適製品:防弾または放出防止セキュリティ、および建物分野において使用される盗難防止セキュリティ(飛散防止ガラス)が最終的に得られ、またはこの積層インサートにより、音響、太陽保護、または着色の機能が提供される。積層作業は、機能多層を化学的または機械的攻撃から隔離するという意味でも好ましい。中間層は、エチレン/ビニルアセテート(EVA)またはそのコポリマーに基づくように選択されることが好ましく、ポリウレタン(PU)、ポリビニルブチラール(PVB)、または熱硬化(エポキシまたはPU)あるいはUV硬化(エポキシまたはアクリル樹脂)させることができる単一成分樹脂または複数成分樹脂で作成することも可能である。積層インサートは一般に透明であるが、使用者の要求を満たすように完全にまたは部分的に着色されることも可能である。
【0033】
多層を外部から隔離することは、一般に、基板の端面に沿って、または実際には基板の内部に部分的に配置された封止のシステムによって遂行される。
【0034】
積層インサートは、たとえばITO/金属/ITO多層を備える可塑性膜、または有機多層からなる膜によって提供される太陽保護機能など、追加の機能を含むことも可能である。
【0035】
電池として使用されるときの本発明のデバイスは、建築または車両の分野に使用されることも可能であり、あるいは、コンピュータ、テレビジョン、または電話のタイプの機器の一部を形成することが可能である。
【0036】
本発明は、本発明によるデバイスを製造するプロセスにも関し、この場合、電解質の一部を形成する本発明の電解質層は、可能であれば磁気により改良されたスパッタリングであるカソードスパッタリングタイプの真空技法によって、熱蒸着または電子ビーム蒸着によって、レーザアブレーションによって、随意選択でプラズマ改良またはマイクロ波改良されたCVDであるCVD(化学蒸着)によって、付着されることが可能である。
【0037】
電解質の一部を形成する本発明の電解質層は、大気圧技法によって、特に浸漬コーティング、噴霧コーティング、またはフローコーティングである特にゾルゲル合成による層の付着によって、または大気圧プラズマCVDによって、付着されることも可能である。
【0038】
また、粉末または液相熱分解技法、あるいはCVDタイプ気相熱分解技法であるが、大気圧において、使用することも可能である。
【0039】
実際には、この場合、真空付着技法、特にスパッタリングタイプを使用することが特に有利であるが、その理由は、電解質を構成する層の特性(付着率、密度、構造など)が、それにより非常に微細に制御されることが可能であるからである。
【0040】
したがって、窒素化合物またはその先駆物質を含む大気において反応性カソードスパッタリングによって電解質層を付着させることが可能である。本発明の文脈内において、「先駆物質」という用語は、層において所望の窒素化合物を形成するために、ある条件下において相互作用および/または分解することができる分子または化合物を意味することを理解されたい。
【0041】
窒化される本発明による電解質層を付着させるために、気体先駆物質、特にNHに基づくもの、またはより一般的には、特にアミン、イミン、ヒドラジン、またはNの形態にある窒素ベース先駆物質をスパッタリング室に導入することができる。
【0042】
本発明による電解質層は、上述されたように、熱蒸着によって付着されることが可能である。これは、電子ビーム蒸着とすることが可能であり、水素および/または窒素化合物もしくはその先駆物質が、気体の形態において層に導入され、および/または蒸着されることを意図する材料に含まれる。
【0043】
本発明による電解質層は、ゾルゲル技法によって付着されることも可能である。水素化合物および/または窒素化合物の含有量は、様々な手段によって制御される。これらの化合物またはその先駆物質、あるいは付着が行われる大気の組成を含むように、溶液の組成を適合させることが可能である。また、層の付着/硬化温度を調節することによって、この制御を洗練することも可能である。
【0044】
本発明の他の有利な特徴および詳細が、添付の図面を参照して以下において与えられる記述から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
添付の図面において、ある要素は、図の理解をより容易にするために、実際より大きくまたは小さい規模で示されている。
【0046】
図1、2、および3によって示される例は、エレクトロクロミックグレージングユニット1に関する。これは、客室の外部から内部まで連続して、たとえばそれぞれ2.1mmおよび2.1mmの厚さのクリア(であるが、可能であれば色付けもされている)ソーダ石灰シリケートガラスで作成される2つのガラスペインS1、S2を備える。
【0047】
ペインS1およびS2は、同じサイズであり、150mm×150mmの寸法を有する。
【0048】
図2および3に示されたペインS1は、面2の上に全固体エレクトロクロミックタイプの薄膜多層を有する。
【0049】
ペインS1は、厚さが0.8mmのポリウレタン(PU)の熱可塑性シートf1(これは、エチレン/ビニルアセテート(EVA)またはポリビニルブチラール(PVB)のシートで置き換えられることが可能である)を介してペインS2に積層化される。
【0050】
「全固体」エレクトロクロミック薄膜多層は、電流コレクタ2および4とも呼ばれる2つの電子伝導性材料の間に配置された活性多層3を備える。コレクタ2は、面2と接触することを意図する。
【0051】
コレクタ2および4ならびに活性多層3は、ほぼ同じサイズおよび形状とする、または大きく異なるサイズおよび形状とすることが可能であり、したがって、コレクタ2および4の経路は、構成にしたがって適合されることが理解されるであろう。さらに、基板、特にS1の寸法は、2、4、および3の寸法より本質的に大きいことが可能である。
【0052】
コレクタ2および4は、金属タイプ、またはITO、SnO:F、もしくはZnO:Alで作成されたTCO(透明導電性酸化物)のタイプであり、あるいは、TCO/金属/TCOタイプの多層とすることが可能であり、この金属は、特に銀、金、白金、および銅から選択される。また、NiCr/金属/NiCrタイプの多層とすることも可能であり、金属は、再び特に銀、金、白金、および銅から選択される。
【0053】
構成に応じて、コレクタ2および4は省略されることが可能であり、この場合、電流リードは、活性多層3と直接接触する。
【0054】
グレージングユニット1は、電源を介して活動システムを制御する電流リード8、9を組み込む。これらの電流リードは、加熱済みウィンドウ(すなわちシム、ワイヤなど)に使用されるタイプである。
【0055】
コレクタ2の第1の好ましい実施形態は、面2の上に、400nmの厚さのSnO:F第2層が続く50nmの厚さのSiOC第1層を付着させることによって形成されたものである(2つの層は、切断の前にフロートガラスの上にCVDによって連続して付着されることが好ましい)。
【0056】
コレクタ2の第2実施形態は、面2の上に、厚さが約100から600nmのITO第2層が続く厚さが約20nmのSiOベース第1層からなるドープ(特にアルミニウムドープまたはホウ素ドープ)あるいは非ドープの2重層を付着させることによって形成されたものである(2つの層は、酸素が存在する状態において反応性マグネトロンスパッタリングによって真空下にて連続して付着され、随意選択で高温において実施されることが好ましい)。
【0057】
コレクタ2の他の実施形態は、面2の上に、厚さが約100から600nmのITOからなる単層を付着させることによって形成されたものである(層は、酸素が存在する状態で反応性マグネトロンスパッタリングによって真空下で付着され、随意選択で高温において実施されることが好ましい)。
【0058】
コレクタ4も、活性多層の上に反応性マグネトロンスパッタリングによって付着された100から500nmのITO層である。
【0059】
図2および3に示された活性多層3は、以下のように作成される:
・可能であれば他の金属と合金化されたニッケル酸化物で作成されたアノードエレクトロクロミック材料の100から300nmの層。変形形態として(図には示されていない)、アノード材料の層は、イリジウム酸化物の40から100nmの層に基づく;
・タンスグテン酸化物の100nm層;
・水和タンタル酸化物または水和シリカ酸化物または水和ジルコニウム酸化物、あるいはこれらの酸化物の混合物の100nm層;
・200から500nm、好ましくは約370nmなどの300から400nmの厚さを有する水和タングステン酸化物に基づくカソードエレクトロクロミック材料の層。
【0060】
活性多層3は、機械手段、または可能であればパルス化レーザを使用するレーザエッチングによって作成された溝で、周囲の全体または一部にわたって刻みを入れることが可能である。これは、フランス出願FR−2781084に記載されているように、周囲の電気漏れを限定するために実施される。
【0061】
図1、2、および3に示されたグレージングユニットは、面2および3と接触する第1周囲封止をも組み込む(しかし、図には示されていない)。この第1封止は、外部化学攻撃に対する障壁を形成するために設計される。
【0062】
第2周囲封止が、障壁と車両においてグレージングを取り付ける手段とを形成し、内部と外部の間に封止を提供し、吸引特徴を形成し、かつ強化要素を組み込む手段を形成するように、S1の縁、S2の縁、および面4と接触する。
【0063】
図4(曲線1参照)は、電圧パルスによって着色/無色周期の影響を受けるとき、グレージングの中心において測定された光透過の変化を示す。
【0064】
この活性多層が電圧パルスを供給される場合、従来の技術による電解質を有するグレージングは、着色状態から無色状態に切り替わるのに約80sかかることがわかる(読者は図4を参照することが可能である)。
【0065】
この同じ活性多層に基づいて、電解質を構成する酸化物ベース層の少なくとも1つが、本発明の教示による層、すなわち単独または混合物としての、および随意選択でドーピングされたシリコン窒化物、ホウ素窒化物、アルミニウム窒化物、またはジルコニウム窒化物で作成された10nmと300nmとの間の厚さを有する層と置き換えられる場合、グレージングは、他はすべて同じとして同じ電圧パルスについて、15s未満で着色状態から無色状態に切り替わることがわかる。また、着色率はより大きいことにも留意されたい(曲線2において非常に顕著である原点における傾斜を参照されたい)。
【0066】
図5は、グレージングの中心において測定された光透過の変化を時間の関数として示す。このグレージングは、上述されたものによる活性多層構造を備え、その電解質層は、本発明の教示による単層(曲線1)、または本発明の教示による無機酸化物および電解質層に基づく2層である(曲線2)。
【0067】
本発明による層であるか否かに関係なく、活性システムの着色状態と無色状態の切替え速度に対する窒化物層の主な影響は、無機酸化物に基づく層に関連し、したがって留意されることが可能である。
【0068】
本発明の他の実施形態によれば、電解質層は、2つの無機酸化物ベース電解質層の間に本発明の教示により挿入される。したがって、たとえば、Ta/本発明による層/Taを有することが可能である。
【0069】
他の変形形態によれば、「全固体」活性多層3は、ポリマータイプのエレクトロクロミック材料の他の族で置き換えられることが可能である。
【0070】
したがって、たとえば、厚さが10から10000nm、好ましくは50から500nmのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(変形形態として、このポリマーの派生物の1つとすることが可能である)で作成された、活性層とも呼ばれるエレクトロクロミック材料の層から形成された第1部分が、知られている液体付着技法(噴霧コーティング、浸漬コーティング、スピンコーティング、またはフローコーティング)、あるいは電気付着によって、電流コレクタでコーティングされた基板の上に付着される。この電流コレクタは、可能であれば、ワイヤなどを随意選択で備える電極(アノードまたはカソード)を形成する下方導電層または上方導電層である。この活性層を構成するポリマーが何であっても、このポリマーは、特にUV下において特に安定であり、リチウムイオン(Li)または代替としてHイオンを挿入/抽出することによって作用する。
【0071】
電解質として作用し、50nmと2000μm、好ましくは50nmと1000μとの間の厚さを有する層から形成された第2部分が、第1部分と第1部分の上の第3部分との間において、知られている液体蒸着技法(噴霧コーティング、浸漬コーティング、スピンコーティング、またはフローコーティング)によって、または注入によって付着される。第2部分は、ポリオキシアルキレン、特にポリオキシエチレンに基づく。変形形態として、たとえば水和されたタンタル酸化物、ジルコニウム酸化物、またはシリコン酸化物に基づく無機タイプ電解質とすることが可能である。
【0072】
ガラスまたは同様の基板によって自体は支持される活性エレクトロクロミック材料の上に付着されたこの第2電解質部分は、次いで、第3部分でコーティングされる。第3部分の構成は第1部分と同様である。すなわち、この第3部分は、電流コレクタ(導電性ワイヤ、導電性ワイヤ+導電層、導電層のみ)でコーティングされた基板で作成され、この電流コレクタ自体は、活性層で覆われる。
【0073】
この全ポリマーエレクトロクロミック多層に基づいて、電解質形成層の1つを、同様の機能を有するが、本発明の教示による少なくとも1つの層で置き換えることが提案される。本発明の教示による層が、活性層の1つと電解質形成層の1つとの間、または電解質形成層の中間に挿入される。
【0074】
他の実施形態によれば、ハイブリッド(固体/ポリマー)多層の電解質形成酸化物層の1つを、本発明による非酸化層で置き換えること、または本発明による非酸化層を1つまたは複数の無機活性材料と電解質として作用するポリマーとの間に挿入することが提案される。以前の例においてと同様に、この挿入は、以下の構成の1つによることが可能である:
−活性層の1つと電解質形成層の1つとの間の本発明の教示による層、または
−電解質形成層の中間において。
【0075】
この例は、陽子伝達によって動作するグレージングに対応する。これは、厚さが4mmのソーダ石灰シリケートガラスで作成された第1ガラス基板1からなり、以下が連続して続く:
・300nm電子伝導第1SnO:F層;
・水和ニッケル酸化物NiOで作成されたエレクトロクロミック材料の185nmアノード第1層(これは、水和イリジウム酸化物の55nm層で置き換えることができる);
・水和タンタル酸化物の70nm第1層、POE/HPOポリオキシエチレン/リン酸固溶体の100ミクロン第2層、または代替としてPEI/HPOポリエチレンイミン/リン酸固溶体で作成された電解質;
・タングステン酸化物に基づくカソードエレクトロクロミック材料の350nm第2層。
・第1と同一の第2ガラス基板が続く300nm第2SnO:F層。
【0076】
したがって、この例では、このタイプのグレージングにおいて通常使用されるポリマーに基づく2重層電解質が存在し、これは、ポリマーを介した陽子伝達を損なわないように十分に導電し、かつアノードエレクトロクロミック材料で作成された背面電極が、固有酸度が有害であるアノードエレクトロにクロミック材料に直接接触するのを保護するタンタル水酸化物の層で「裏打ち」される。
【0077】
水和Ta層の代わりに、水和SbまたはTaWOタイプの層が使用されることが可能である。
【0078】
また、2つの水酸化物層を有する3層電解質を提供することも可能であり、2つうちの1つはポリマー層の各面上にあり、または2つの層は、アノードエレクトロクロミック材料の層に面する面上において一方が他方の上に重ね合わされる。
【0079】
この例に基づいて、タンタル酸化物、アンチモン酸化物、またはタングステン酸化物に基づく電解質機能を有する層の少なくとも1つは、本発明による非酸化電解質の少なくとも1つの層で置き換えられる。本発明による非酸化電解質の層は、カソードエレクトロクロミック材料の層とPOE/HPOまたはPEI/HPO固溶体との間に挿入されることも可能である。
【0080】
他の変形形態によれば、本発明による層はPOE/HPOまたはPEI/HPO固溶体に挿入される。
【0081】
本発明の他の実施形態によれば、電解質は、光透過または光反射において切り替えることができる水素化物材料に基づく多層と組み合わされ、その切替えは、水素化物の形成または分解によって遂行される。
【0082】
これは、上述された全固体グレージングと同様の方式で形成される。すなわち、これは、2つの電流コレクタ2と4の間に配置された活性多層3からなり、Hイオンの挿入/抽出によって動作する。
【0083】
活性多層3は、以下のように作成される:
−他の遷移金属、特にニッケル、コバルト、またはマンガンが合金化されることが可能である遷移金属、特にマグネシウムで作成された20から100nmの層;
−本発明による層、すなわち、単独または混合物として、および随意選択でドーピングされたシリコン窒化物、ホウ素窒化物、アルミニウム窒化物、またはジルコニウム窒化物の10nmと300nmの間の厚さを有する層;
−随意選択で、マグネシウムベース層と本発明による層との間に挿入された1nmと10nmの間の厚さを有するパラジウム層;
−水和タンタル酸化物または水和シリカ酸化物または水和ジルコニウム酸化物、あるいはこれらの酸化物の混合物で作成された層で作成された100nmの層;
−水和タングステン酸化物に基づくカソードエレクトロクロミック材料の370nmの層。
【0084】
変形形態として、本発明による層は、パラジウム層のどちらかの側面上に配置される。
【0085】
そのように形成された活性多層は、反射および透過について切り替わり、反射の見かけの変化は、観測者が水和層側またはタングステン酸化物層側から反射を見ているかにより同じではない。
【0086】
2つの電子伝導層2および4が外部電源システム(図示せず)の影響を受ける電位差が、陽子がタングステン酸化物層において優勢であるようなものであるとき、タングステン酸化物層は着色されており、マグネシウムベース層は、金属および反射状態にある。グレージングの光透過は、ほとんどの光を反射するマグネシウムベース層の金属状態のために1%未満である。
【0087】
マグネシウムベース層側において反射について見ると、グレージングは反射しており、わずかに着色されており、光の反射は、マグネシウムベース層の厚さに応じて40%と80%の間である。タングステン酸化物層側において反射について見るとき、グレージングは、5%と20%の間の光反射で着色されて見え、色および光反射のレベルは共に、多層を作成する層の厚さ、および印加電位差による。
【0088】
外部電源システム(図示せず)を介して電流コレクタに関連付けられる2つの電子伝導層2および4に対する電位差が、陽子がマグネシウムベース層において優勢であるようなものであるとき、マグネシウムベース層は、半導体および無色状態にあり、タングステン酸化物層は無色状態にある。グレージングの光透過は最大であり、マグネシウムベース層の厚さおよびパラジウム層の存在に応じて、20%と50%の間にある。マグネシウムベース層側において測定された光反射は、タングステン酸化物層側において測定された光反射と同様に、10%と30%との間にある。
【0089】
上記の例において述べられた可視波長領域(380nm〜780nm)の範囲内の反射および透過の特性の変化は、赤外線領域(>780nm)においても有効である。すなわち、グレージングのエネルギーの反射および透過は、光の反射および透過と同じように変化する。
【0090】
あるシステムは、吸収剤中間状態を通過する特徴も有し、この場合、マグネシウムベース層の光反射および光透過の両方とも、最小限を通過する。
【0091】
随意選択で、上述されたマグネシウムベース水素化物層は、マグネシウムなどの遷移金属と随意選択で合金化された希土類(Gd、La、Y、など)に基づく水素化物層で置き換えられることが可能である。例において述べられた電流コレクタ2および4の一方、特に、電子伝導性が十分に高い場合に水素化物層と接触しているものは、省略されることが可能である。
【0092】
本発明による層の他の応用分野によれば、これは、イオン、特にHまたはO2−を輸送する媒体として燃料電池において使用される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による面2の前面図である。
【図2】図1のAAの上における断面図である。
【図3】図1のBBの上における断面図である。
【図4】本発明による電解質を組み込む電気化学システムの切替え速度と比較した、従来の技術による電気化学システムの切替え速度を示すグラフである。
【図5】切替え速度に対する本発明による電解質の影響を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基板、少なくとも1つの電子伝導層、イオン、特にH、Li、Na、K、Agタイプの陽イオン、またはOHの陰イオンを可逆的に挿入することができる少なくとも1つの電気化学活性層、および電解質機能を有する少なくとも1つの層を備える電気化学システムであって、電解質が、可視光において透過性であり、非酸化形態において本質的に無機の材料で作成された少なくとも1つの層を備え、そのイオン伝導が、1つまたは複数の窒素化合物、特に随意選択で水素化またはフッ化された窒素を組み込むことによって生成される、または向上されることを特徴とする、電気化学システム。
【請求項2】
電解質機能を有する層が、電子絶縁性であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項3】
100nmの膜について電解質機能を有する層の可視光の吸収が、20%未満、好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の電気化学システム。
【請求項4】
電解質機能を有する層が、1と500nmの間、好ましくは50と300nmの間、さらにより好ましくは100と200nmとの間の厚さを有することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の電気化学システム。
【請求項5】
電解質機能を有する層が、単独または混合物としての、および随意選択でドーピングされたシリコン窒化物、ホウ素窒化物、アルミニウム窒化物、またはジルコニウム窒化物に基づくことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項6】
電解質機能を有する層が、1つまたは複数の窒素化合物を含む層とは別に、本質的に無機の材料で作成された少なくとも1つの他の層を備える多層であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項7】
他の層の1つが、モリブデン酸化物(WO)、タンタル酸化物(Ta)、アンチモン酸化物(Sb)、ニッケル酸化物(NiO)、錫酸化物(SnO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、アルミニウム酸化物(A1)、シリコン酸化物(SiO)、ニオブ酸化物(Nb)、クロム酸化物(Cr)、コバルト酸化物(Co)、チタン酸化物(TiO)、亜鉛酸化物(ZnO)、随意選択でアルミニウムと合金化されたバナジウム酸化物(V)、および錫亜鉛酸化物(SnZnO)から選択され、これらの酸化物の少なくとも1つが、随意選択で水素化または窒化されることを特徴とする、請求項6に記載の電気化学システム。
【請求項8】
電解質機能を有する層が、1つまたは複数の窒素化合物を含む層とは別に、ポリマー材料で作成された少なくとも1つの他の層または溶融塩に基づくものを備える多層であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項9】
他の層の1つが、イオン伝導特性、特にH、Li、Ag、K、およびNaを有するポリマーから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の電気化学システム。
【請求項10】
ポリマータイプの他の層が、ポリオキシアルキレン、特にポリオキシエチレンの族、またはポリエチレンイミンの族から選択されることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の電気化学システム。
【請求項11】
ポリマータイプの他の層が、無水物もしくは水溶液の形態にあり、あるいは1つもしくは複数のゲルまたは1つもしくは複数のポリマーに基づき、特に、層タイプの電解質が、POE:HPOタイプの1つまたは複数の水素包含および/または窒素包含化合物を備え、あるいは、層が、1つまたは複数の水素包含および/または窒素包含化合物/PEI:HPO、あるいはさらに積層可能ポリマーを備えることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の電気化学システム。
【請求項12】
電気化学活性層が、単独または混合物として、および随意選択でチタンまたはレニウムなどの追加の金属を含めて、以下の化合物:タングステン(W)酸化物、ニオブ(Nb)酸化物、錫(Sn)酸化物、ビスマス(Bi)酸化物、バナジウム(V)酸化物、ニッケル(Ni)酸化物、イリジウム(Ir)酸化物、アンチモン(Sb)酸化物、およびタンタル(Ta)酸化物の少なくとも1つを備えることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項13】
請求項1から12の一項に記載の電気化学システムを備え、特に可変光および/またはエネルギー透過および/または反射を有し、基板または透明もしくは部分透明基板の少なくとも一部が、ガラスまたはプラスチックで作成され、好ましくは複数および/または積層グレージング、あるいは2重グレージングとして取り付けられることを特徴とするエレクトロクロミックグレージング。
【請求項14】
前記グレージングに追加の(太陽制御、低放射率、疎水性、親水性、反射防止)の機能を提供するのに適切な少なくとも1つの他の層を備えることを特徴とする、請求項1から12の一項に記載の電気化学システムを備えるエレクトロクロミックグレージング。
【請求項15】
前記層が、単独または混合物としての、随意選択でGdと合金化されたTi、V、Cr、Mn、Fe、Gd、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、またはMgの水素化物の形成または分解が切替えに付随する材料に関連付けられることを特徴とする、請求項1から12の一項に記載の電解質機能を有する層を備えるエレクトロクロミックグレージング。
【請求項16】
請求項1から12の一項に記載の電気化学システムを備えることを特徴とする気体センサ。
【請求項17】
電解質機能を有する層が、カソードスパッタリングタイプ、可能であれば磁気により改良されたスパッタリングの真空技法によって、熱蒸着もしくは電子ビーム蒸着によって、レーザアブレーションによって、随意選択でプラズマ改良もしくはマイクロ波改良CVDであるCVDによって、または大気圧技法によって、特に浸漬コーティング、噴霧コーティング、もしくはフローコーティングのタイプであるゾルゲル合成による層付着によって、あるいは大気圧プラズマCVDによって、さらにあるいはCVDタイプであるが大気圧における粉末もしくは液相熱分解技法または気相熱分解技法によって付着されることを特徴とする請求項1から12の一項に記載の電気化学デバイスを製造するプロセス。
【請求項18】
窒素化合物を含む電解質機能を有する層が、特に気体先駆物質、特にNHまたはNに基づくものの形態にある窒素化合物または前記化合物の先駆物質、またはより一般的には窒素ベースの先駆物質を含む大気において、反応性スパッタリングによって付着されることを特徴とする、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
電気化学活性層の少なくとも1つが、真空技法を使用して、特にDC、パルス化DC、AC、またはRFモードにおいて、反応性スパッタリングまたは反応性マグネトロンスパッタリングによって付着されることを特徴とする、請求項1から12の一項に記載の電気化学システムを製造するプロセス。
【請求項20】
建物のウィンドウ、自動車のウィンドウ、商用または鉄道、海洋、または航空大量輸送車両のウィンドウとして、あるいはドライビングミラーおよび他のミラーとしての、請求項12から14の一項に記載のグレージングの使用法。
【請求項21】
電子手段および/または計算手段を含む機器、ならびに、独立型であるか否かに関係なく固有のエネルギー貯蔵デバイスを必要とする機器、特にコンピュータ、テレビジョン、または電話における、請求項15に記載のエネルギー貯蔵要素の使用法。
【請求項22】
特に産業用または商用あるいは家庭環境内において、物理、化学、物理化学測定機器の制御手段または監視手段としての、請求項16に記載の気体センサの使用法。
【請求項23】
イオン、特にHまたはO2−を輸送する手段として、燃料電池内において非酸化形態にある本質的に無機の材料に基づく電解質機能を有する層の、使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−506998(P2008−506998A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521995(P2007−521995)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050593
【国際公開番号】WO2006/018568
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】