説明

非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセスおよび装置

非鉄金属またはそれらの合金の溶湯または残渣を処理するプロセス及び装置であって、以下のステップ、処理するスクラップまたはドロスを投入するステップと;溶湯(29)を加熱し且つ金属を溶融するステップと;加熱した溶湯(29)を回転させ、溶融金属を出して炉のキャビティ(28)を空にするステップと;を含み、溶湯(29)または残渣(23)の溶融温度より高い温度への加熱は、外部ガスのプロセスへの供給とは独立して、且つ塩を使用することなく、自由燃焼対流アークによって実行される。プロセス適用のための装置は、以下の特性を有する:回転軸を有する密閉容器(1)を備え、この密閉容器は、その回転軸の回りを回転または単に振動運動し;容器(1)の回転軸は水平位置に載置され或いはその平面の上および下に傾けられることができ;密閉容器は、自由燃焼対流アークによって加熱され、このアークは、直流放電によって自己安定され且つ発生され、容器(1)の回転軸の傾斜角度および中に供給される材料の量の調節の関数として、炉(1)に導入される単一の電極(3)とその中に供給された溶湯(29)または導電材料(15)製の容器(1)の底部壁との間に確立され得る;前記電極は、カソードとして作用し、好ましくは、炉(1)の回転軸の上に位置する偏心または傾斜軸に従って容器のドア(2)を介して導入され、アーク長調節のためにその軸に沿って移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属学の分野に含まれ、対応するスクラップ並びにそれらの溶融を含む工業プロセスによって生成されるドロスに存在する非鉄金属およびその合金の回収に関する。
【背景技術】
【0002】
回転炉は、空の飲料缶、不使用器具、積層プロファイル、鋳造物、工業チップ、切削等の製造業で生じる廃棄物のようなスクラップに含まれる純粋な金属または合金の溶融と回収のためのおよび前記金属の溶融を含む工業プロセスによって発生するドロス中に含まれる金属を回収するための非鉄金属リサイクル業に広く使用されている。
【0003】
典型的には、非鉄金属をリサイクルするために稼働する回転炉は、長手方向軸に対して回転対称であるチャンバ状金属シェルを有し、この金属シェルは、金属の融点より高い温度での稼働に適する一層以上の耐火物で内部が裏打ちされている。前記チャンバは、中に投入された処理されるべき材料を転がしたり回転したりするために、その長手軸(回転軸)回りに回転運動させられる。炉の回転軸は、水平面に対して傾斜されても傾斜されなくてもよい。材料を加熱し溶融するために必要なエネルギーを供給する方法がどのようなものであろうと、このプロセスは、以下のステップを基本的に含む処理サイクルに従って、バッチで実行される。
【0004】
1.炉の中に処理されるべきスクラップやドロスを投入するステップ。オイルバーナやガスバーナで加熱される炉の場合、このステップの前に、保護塩成分が、投入され溶融され、スクラップが処理されるか、或いはドロス処理の場合、塩成分がドロスと同時に混合され加熱される時に、処理されるべき材料が浸漬される浴を形成する。
【0005】
2.溶湯を加熱し且つ回収されるべき金属を溶融するステップ。この動作ステップ中に、炉は回転運動され、完全な回転または振動をしてその中の溶湯を回転することで、エネルギー源と、炉壁と溶湯との間の良好な熱伝達を促進する。
【0006】
3.炉を回転運動するステップであって、余分のエネルギーの追加があってもなくてもよく、完全な回転または単なる振動で炉を回転運動することで、分散した溶融金属の断片の凝集を促進し、その後、このプロセスに沿って、非金属固体残渣層の下に沈降し液状金属浴を形成する。
【0007】
4.金属と非金属固体部分との間の分離ステージが終了すると、溶融金属が、炉の外に、通常、インゴットモールド内に出されるステップ。
【0008】
5.非金属固体残渣を除去することによって炉のキャビティを空にするステップ。
【0009】
オイルバーナやガスバーナによって加熱される炉を使用することによる、非鉄金属、主に、アルミニウムのリサイクルは、回収可能自由金属の酸化を抑止して、プロセスの金属収率を改良するために、溶湯への溶融塩の添加を必要とするという主なデメリットがある。この場合に使用される塩の量は、実際には、元来溶湯に含まれる酸化物の量に対し質量において同じ規模である。一般的に、NaClとKClの等モル混合物が使用される(共晶組成)。この組成は、667℃の融点を示し、これは、アルミニウムの処理温度と対応し、塩の湿潤性を改良するために添加されるフッ化塩を含んでもよい。一旦溶融されると、これらの塩は、金属酸化を最小限にする金属被覆層の形成を促進する。
【0010】
金属回収率を改善するために塩を添加する必要性は、オイルバーナやガスバーナを使用するプロセスにとって不利である。塩の加熱と溶融は、汚染物質であり人の健康に対する有害物であることに加えて、腐食性が高いヒュームを生成し、プロセスで使用される炉および他の工業装置および設備を劣化させる。前記プロセスの他のデメリットは、芒硝(salt cake)としても知られる、金属が回収された後に発生する非金属残渣中にこれらの塩が存在することから引き起こされる。工業上の利用なく、これらの残渣は、工業用埋立地に送られる。費用がかかるのみならず、これを行なうことは、環境的リスクをもたらし、それは、このような残渣に含まれる塩は、容易にしみ出るため、土壌、地表水、河川および湖を汚染するためである。
【0011】
カナダのAlcan International Limited社のカナダ特許第1255914号および米国特許第4959100号は、高温ガスフレームによって加熱される回転炉を使用することによって、非鉄金属ドロス、特に、アルミニウムを処理するための方法と装置を提案している。これらの特許は、溶融塩を使用せず内部アークタイプ(contained−arc type)の二つの電極を有するプラズマトーチ(プラズマガスヒータ)を使用するプロセスの特許を請求している。このようなプラズマトーチには、一旦加熱され、炉に導入されて炉の中に供給される溶湯に含有される金属の溶融を促進するガス流が供給される。また、同じくカナダのAlcan International Limited社の欧州特許第0400925号は、カナダ特許第1255914号および米国特許第4959100号によって開示されたのと同じ装置を実質的に使用するプロセスを提案しているが、有機材料で汚染されたスクラップを溶融するように構成されている。このプロセスは、金属の溶融を促進するために、金属の融点より低い温度でプラズマトーチを使用して溶湯を事前に加熱し、溶湯がより高く金属が溶融する温度まで加熱される前に有機物質を気化することによって前記汚染物を除去することを特徴とする。
【0012】
カナダ特許第1255914号および米国特許第4959100号によって説明されたように、特許請求の範囲の発明を具体化するために使用され得るプラズマトーチは、米国の、Plasma Energy Corporation社によって製造されているものと同様である。S.Lavoie氏とJ.Lachance氏によって書かれた、Alcan International Limited社による、一次ドロスからのアルミニウム回収に関する論文(Five years of industrial experience with the plasma dross treatment process、1995年11月12〜15日、米国、アラバマ州、the Third International Symposium of Recycling of Metals and Engineered Materialsにて発表)において、米国Westinghouse社製のプラズマトーチ、タイプMark IIHの使用が述べられている。どの製造会社でも、当該タイプのプラズマトーチは、以下の特性を示す装置として記載されている。:この装置は、中に導入される大量のガスを加熱するために使用され、その使用によって、炉壁と溶湯自体を加熱するプロセスに適用される;この装置は、ガスと溶湯との間の効果的な熱伝達を達成するために、当該構造のプラズマトーチは、空気および純窒素のような2原子ガスの使用に依存する装置である;この装置は、中にアークを維持するために安定化機構を必要とする;この装置は、それが意図するプロセスに適合する電極の耐用年数を得るための手段に依存し、この手段は、通常、渦のようなガスを供給することによっておよび/または外部磁界のようなトーチ自体に対する外部手段を使用することによって達成される;そしてこの装置は、電極の激しい冷却を必要とし、それは、水漏れが炉に生じる場合に爆発のリスクを呈することに加えて、加熱されたガスに含まれるような熱エネルギーへの電気エネルギーの変換効率のロスとなる。
【0013】
熱源としてのプラズマの使用によって、プロセスで使用されるべきガスの組成の広範囲な選択が可能となるが、上述のように、本質的に大量のガスを加熱することを意図する二つの内部電極を有するプラズマトーチの使用によるプラズマ発生の場合、カナダ特許第1255914号および米国特許第4959100号に含まれる例により示されるように、回転炉を使用しての金属の回収に適用した工業的利用において、経済的理由のために、大気(圧縮空気)または純窒素が使用される。このプロセスで空気または窒素を選択する他の理由は、不活性ガスの使用と比較して、それらが2元素ガスであり、非常に高い熱容量を有するからである。これは、プラズマトーチを通過中に加熱されるガスと炉の溶湯との間の効率的なエネルギー伝達を促進するために、この場合、重要な特性である。
【0014】
プラズマガス、ひいては炉雰囲気形成ガスとしての空気の使用は、特に、アルミニウムの場合、カナダ特許第1255914号および米国特許第4959100号の目的であるプロセスの主な技術的制限となっている。アルミニウムは酸素と反応し、また、それより穏やかに空気中の窒素とも反応し、夫々、酸化アルミニウムおよび窒化アルミニウムを形成する。両方の反応は、発熱性であり、二つの反応を比較すると、アルミニウムと酸素との間の反応が、最も多くのエネルギーを発散する。上記論文で、Lavoie氏およびLachance氏によって認められたように、アルミニウムの酸化によって発散されるエネルギーは、溶湯を加熱するのに寄与するが、回収されたアルミニウムに付加された経済価値は、燃焼や酸化から得られたエネルギーによる電気エネルギーの代替を納得するものではない。上記論文において、Lavoie氏およびLachance氏は、炉を圧縮空気で運転する場合、遊離アルミニウムの酸化は、処理されたドロス1トン当たり約125kWhを発生するという情報を提示している。その論文で提示されているように、当該エネルギーの量は、そのプロセスに必要とされる全エネルギーの40〜50%を示唆する。米国の、Plasma Energy Corporation社所有の米国特許第4877448号にて提示される例で、同様の状況が生じる。その例では、圧縮空気が供給されるプラズマトーチの使用は、回収可能なアルミニウムの4.6%が酸化し、プラズマトーチでの空気加熱によって供給される電気エネルギーの約40%の追加エネルギーを発生する。上記特許で提案される加熱方法は、溶融塩の使用を回避しているが、デメリットの一つは、経済的工業利用のためには高い熱容量を有する低コストガスの使用に依存するが、遊離回収可能アルミニウムの一部との反応が不可避であるという事実に起因し、その結果、プロセス金属収率を減少する。カナダ特許第1255914号および米国特許第4959100号によっても提案されているように、溶融サイクルの異なるステージでの異なるガスの使用は、この加熱形態での炉の運転をより一層複雑にする。また、環境に関するデメリットは、カナダ特許第1255914号および米国特許第4959100号によっても認められるように、空気に存在する或いは純粋なガスとしての酸素との組合せで窒素が提供されるプラズマトーチの使用に起因する。先に述べたように、窒素が液体アルミニウムと反応して窒化アルミニウムを形成する。回収可能金属のロスを引き起こすことに加えて、窒化アルミニウムが、プロセスの固体残渣に残り、当該残渣を処理または破棄する場合に(空気中の水分や風化からの)水とゆっくり反応してアンモニアを発生し、これは、環境的に望ましくない。
【0015】
また、カナダ特許第1255914号および米国特許第4959100号は、夫々のプロセスにおける移行型アークタイプのプラズマトーチの使用を提案している。しかしながら、これらの特許は、実際に当該移行がいかにして起こるかおよび当該実施の形態のための技術的条件を説明しておらず、且つそれらは、これらのプラズマトーチ使用による利点を示していない。
【0016】
カナダのHydro−Quebec社名義のカナダ特許第2030727号および米国特許第5245627号は、キャビティの各端部にあり炉の水平回転軸に一列となっている二つの対向する電極の間で確立された放射移行アークプラズマによる回転炉内の材料の加熱に基づいて、回収を留意して金属を含むドロスを処理するプロセスを主張しており、特に、一次アルミニウムドロスに含まれる金属の回収について述べている。
【0017】
カナダ特許第2030727号および米国特許第5245627号によって説明されるように、グラファイトで作られることが好ましい、両電極は、炉の回転軸上を移動し、両者は、電気アークの長さを調節し、かつアーク動作中に被る電極腐食を相殺する。アークをキャビティの中心でかつ炉の回転軸に沿って安定化するために、当該電極の少なくとも一方を通過する低流速に保ったガスの供給が提案される。また、これらの特許で説明されているように、二つの対向する電極間の配置と、電気アークを発生する方法とにおける主要な特徴は、電極が、アークから出される輻射によって本質的に炉壁と溶湯の加熱を促進することであり、炉をアーク回りに運動させてすぐに、完全に不活性であるかまたはアルミニウムに対するのものではないが、放射アークを安定化することを主目的として最小限のガス流を導入する。更に、カナダ特許第2030727号および米国特許第5245627号によって説明されるように、このプロセスは、両電極がこれと一列であり、炉が動作中水平のままである回転軸を有するように使用される放射アーク炉を特徴とする。
【0018】
カナダ特許第2030727号および米国特許第5245627号に開示されるように、炉の長手方向または回転軸に一列となり、処理される材料上に位置決めされる二つの電極間で移行される放射電気アークの使用は、カナダ特許第1255914号および米国特許第4959100号によって提案されるように、不活性ガスが供給されるプラズマトーチの経済的条件下での工業使用に関連するデメリットをなくすことができる。実際、放射電気アークの使用は、不活性ガスの実質的により低い流量の使用を可能とし、その目的は、炉の軸内でアークを安定化することである。しかしながら、この方法は、以下のデメリットがある:電極の破壊するリスクであって、炉の水平軸に沿って配置すると、アルミニウムドロス中に一般に見られる大きな塊の材料による衝撃を受け易い;提案された二つの電極の使用では、動作中の炉は長手方向軸で傾斜ができず、それは所与の量のキャビティに対して送られる材料の量を増加できるが、電極の一方と処理された材料との接触のリスクを増加させ、従って、より容易に電極が破壊され得る事となる。
【0019】
処理中の材料内でのホットスポットの形成を回避するための手段を創作することは、プラズマトーチと放射電気アークの両方を使用するプロセスにおいてよくみられる条件である。この事実は、Alcan International Limited社によって出願された特許:カナダ特許第1255914号および米国特許第4959100号に具体的に記述されている。従って、先に見直されたプロセスの各々において以下の動作手順がみられる:内部アークタイププラズマトーチの二つの電極を使用する装置は、高温火炎が溶湯から離れるように炉の側壁に向けられなければならない;放射電気アークを使用する装置において、このアークは、炉の長手方向回転軸に一列になる二つの電極同士間に確立され、動作中水平方向へ位置決めされることで、電極とアーク自体との接触を回避するために処理中の溶湯からの離間が維持される。
【0020】
本発明は、対応するスクラップ(溶融物を含む)中に存在し、および金属の溶融を含む工業的処理によって発生するドロス中に存在する非鉄金属、特にアルミニウムおよびその合金を回収するための新規なプロセスおよび装置を提供することを目的とし、それにより上記の不利益を取り除くことができるものである。
【0021】
以下は、本発明の特に有利な点である:溶融塩を使用しないプロセスを提供することである;このプロセスは、現在公知のプロセスよりも熱的により効率的であり、処理されるべき溶湯へ熱を伝達するためのより効率的な方法の使用と、プロセスに必要な最小エネルギーにより近い電気エネルギー量の使用、即ち、処理温度まで材料を加熱するための、炉壁を通したもののような内在的なエネルギーロスを補償するのに必要な余分なエネルギーが追加されたに過ぎないエネルギーの供給に限定した使用との両方を考慮している;および炉の内部容量の良好な使用を提供して、所与の容量の炉のキャビティに対する最大投入量を増加する。
【0022】
金属スクラップ、並びに金属や合金が工業化に含まれる種々の動作中に液状に維持されているときに発生し、回収する金属や合金を含有するドロスを処理するために適した技術は、以下のプロセス動作ステップによって実現される。
【0023】
1.回収する金属または金属合金を含有する材料によって構成される溶湯を回転炉に導入する;
2.材料を、回収する金属または金属合金の融点より高い温度まで加熱する;
3.加熱ステップ中およびその後に、炉の回転または単純な振動運動よって、炉内で材料を動かすことによって溶融金属を非金属固体残渣から分離する;
4.非金属固体残渣から分離された溶融金属を取り除く;および
5.残留非金属固体材料を除去する。
【0024】
本発明は、溶融塩を使用しないため、溶湯が、回収する金属や非鉄合金の融点より高い温度まで加熱されるという新規性を提供する(ステップ2)。加熱ステップは、実質的に対流の熱交換によって達成され、このステップは、必要ならば、炉の内部雰囲気の単独制御以外の効果のためにプロセスへ外部ガスを供給することとは独立している。
【0025】
従って、使用される炉は、以下の特性を有する:炉は、回転軸を有し、この回転軸回りにその炉が回転される或いは単純に振動移動を行なう密閉容器によって構成される;炉の構造は、回転軸が水平面より上にあるか或いはその水平面より上および下に傾斜される可能性を提供する;容器は、自由燃焼対流アークによって加熱されることが好ましく、このアークは、直流電流の電気放電によって自己安定化され且つ発生され、容器の傾斜角度(α)および中に供給される材料の量の調節によって、炉に導入される単独の電極と中に供給される溶湯または導電性材料製の容器の底壁との間に確立されることができる;電極が直流電気回路のカソードとして働き、炉のドアを介して導入されることが好ましく、炉の回転軸に関して偏心または傾斜軸に従って、それより上に配置されることが好ましく、且つ電極は、アークの長さを調節するためにそれ自体の軸と平行に変位される。
【0026】
電極の極性とその位置決めに関して、他の可能な配置は、以下のことを含むことができる:電極が直流電気回路においてアノードとして動作すること;電極が低電力、低流量パイロット火炎に重畳された交流電流で動作すること;電極を炉の長手方向回転軸の上または下に位置決めすること。
【0027】
炉の内部雰囲気を決定するガスのみを使用して、強力なガス循環が、直流電流下で供給される自己安定化自由燃焼アークに適した機構によって引き起こされる。本発明によると、このようなアークは、炉に導入された移動電極の形態のカソードと導電性材料製であって炉の鋼製構造を介して固定外部電極と永久接触されている容器の底部との接触が維持される溶湯自体によって形成されるのが好ましいアノードとの間に確立される。
【0028】
換言すれば、使用される加熱プロセスは、外部ガスの供給を必要とせず、便利なように、そのようなものとして、または所与の処理雰囲気を提供することの唯一の目的だけのために炉のキャビティ内に導入される最小流量のガスによって働く。供給される材料の量と炉の長手方向軸の傾斜に依存して、導電性底部裏打ちは、アークに曝されてもよく、この状況下で、アノードとして働く。
【0029】
アーク内でのガス循環によって引き起こされる、主に対流の熱伝達による過熱は、アークと本炉の概念において溶湯によって構成されるのが好ましいアノードとの間の接触領域でより激しく起こる。この状況は、溶湯の平均バルク温度より高い温度に加熱され且つ前記文献ではホットスポットと呼ばれる複数の溶湯領域を形成する。本発明の装置目的の構造と動作特性に従って、これらの領域における加熱材料が炉の回転運動の動作によって連続的に変位され、容器を完全に回転する或いは単に振動し、それによる溶湯の大半における伝導および対流熱伝達によって温度の均一化を提供する状況が生み出される。
【0030】
他の製造材料が使用されてもよいが、本発明に従って、電極は、グラファイト製であることが好ましい。この材料を使用することの利点が、以下に指摘される:高温下でのグラファイトの高強度;強力な冷却手段を使用の不要、実際に、全くいかなる種類の冷却も行なわなくても良い;長時間耐用年数;グラファイト電極は、構造的に単純であり容易に交換される。
【0031】
アノードのアークアタッチメント領域へ集中するエネルギーの散逸を改良するために、炉に導入される電極の好適なアセンブリは、炉の回転軸より上に位置される偏心軸に追従する。炉の回転軸と一列となる電極のアセンブリと比較すると、この構成は、アークブローによって直接到達される領域に関して溶湯の相対移動を生み出す利点を有する。
【0032】
容器の底部がアノードとして働く場合、先に述べたように、この状況は、回転軸の傾斜角度と炉に導入される溶湯の量に依存し、容器の連続運動と組み合わされる、回転軸上の電極の偏心アセンブリは、特に有利となる。理由は、このアセンブリは、完全回転の場合、アークブローと直接接触する導電性耐火裏打ちの領域に容器の回転軸上に中心がある円形軌道を描くか、或いは単純な振動の場合、その領域に単純に弧状軌道を描くからである。この場合、アークを介して循環するホットガスからの対流熱伝達によって強力に加熱される底部耐火物の領域は、その領域が各サイクルで溶湯と接触する時、周期的に冷却され得る。加熱サイクルの初めに、この接触が、主に固体材料との間に生じ、後の加熱サイクルでは、容器の底部に沈殿する液体金属との間に生じる。他方、溶湯は、アークアタッチメントを通過するより熱い底部領域との接触によって連続的に加熱される。
【0033】
いずれの状況においても、アノード機能が溶湯によって演じられるか或いは導電性底部裏打ちによって行なわれるかによって、溶湯のバルク温度は、電気アークで消費される電力の制御により、指定された処理温度を越えないように制御される。容器の回転移動によって向上する溶湯のバルクでの対流熱伝達と、金属の高熱伝導特性との両方は、アークと直接接触する領域に伝達される高エネルギーの速い散逸に対して同時に発生する。
【0034】
自己安定化自由燃焼アークの形成の物理的原理は、“High−Power, Graphite−Cathode DC Arc Plasma−Properties and Practical Applications for Steelmaking and Ferroalloys Processing in Plasma Technology in Metallurgical Processing, Iron and Steel Society, Inc., 1987, Chapter 8B,pages 103 to 109”においてS.E.Stenkvist氏とB.Bowman氏によって概説されている。
【0035】
特に、本発明は、電極の先端が鋭利にされている時、例えば、それが円錐形状に構成されている時、十分に展開されたアークとカソード材料との間のインターフェースに生じるアークコントラクションによって引き起こされる電磁ポンピング効果を利用する。
【0036】
スクラップの処理に関して、プロセス動作ステップの特に好適なシーケンスは、一つ以上の溶湯が生じる溶融金属を傾けたままにすることを含む。従って、処理される材料の見かけ密度と他の特性により、溶融金属タッピングサイクルで供給される溶湯の量が所定の値に達するまで、ステップ(1)がステップ(3)の後に一回または複数回繰り返される。同様に、タッピングサイクルで非鉄金属固体残渣から分離される全液状金属の一部は、処理される材料の新たな溶湯に含まれる金属の加熱と溶融をより容易に促進するために炉内に維持される。
【0037】
実質的に有機物を含まないクリーンで事前に準備されたスクラップが処理されることが好ましいが、特に、汚染スクラップを扱う時、上で説明された動作ステップの繰り返しは、過熱液状金属に対して行なわれることが好ましい。溶湯を回転するために容器を動かし、且つ新たに導入される溶湯を加熱している間電気アークを確立しないことによって、有機物を気化することによって溶湯のクリーン化を促進する。フュームの発生が終わると、アークが確立され、次に、溶湯温度が、回収される金属または合金の融点より高い特定の値まで上げられる。
【0038】
任意の投入状況において、供給される材料の量、これは、前回の炉に供給された材料の量の場合もある、を把握し、アークの電圧と電流を記録することによってアークで消費された電力をモニタし、回転容器に設けられた熱電対によって、好ましくは、マイクロコンピュータに接続されたデータ収集システムを使用して温度をモニタすることによって制御される。
【0039】
回収する金属に関して実質的に不活性な処理雰囲気を提供する目的で、特に、非金属固体残渣からの金属の溶融と分離のステップ中、金属と反応しないガス、好ましくは、アルゴンガスは、電極の中心線にまたは当該チャンバの他の位置に形成された軸孔を介して炉チャンバ内に導入されることができる。同様に、処理材料、処理ステップ、および望ましい処理効果によって、窒素、水素、メタン、一酸化木炭素、二酸化木炭素、酸素、空気、またはこれらの混合ガスのような他のガスを炉チャンバ内に導入することができる。
【0040】
溶湯または炉の底部壁へのアークによって飛ばされるガスの高温にも拘らず、アルミニウムスクラップとドロスの場合、700℃と1000℃との間にある処理の平均温度は、処理温度の関数としてアークの電流と電圧を調節することによって独立して制御され、炉の側壁で連続して測定されることが好ましい、アークで消費される電力をモニタすることによって制御される。
【0041】
プロセス雰囲気を制御する手段−例えば、容器ドアを適切に密閉して大気が処理チャンバに入ること阻止すること、或いはアルゴンのような不活性ガスを炉チャンバへ送ることによって僅かな正圧を生成すること、が提供されると、−この雰囲気は、アルミニウムの場合における窒素および酸素のような金属と反応できるガス、或いは溶湯を加熱する間に発生する揮発性物質を実質的に含まず−、溶湯との間にアークを確立することは、他のプロセスの記述で強調されるような重要事項ではない。反対に、本発明によると、このリソースは、効率的な機構を構成し、電源によってアークに課される電流の強度を単に制御することによって、この機構を介して、大量の熱が迅速且つ効率的に溶湯へ直接伝導される。先に説明したように、スクラップのような高い自由金属含有量を有する溶湯およびドロスのような大量の酸素を含有する溶湯の場合の両方において、アークアタッチメント領域に一時的に配された材料が得るエネルギーの散逸は、連続的に容器を回転または振動することによって行われる。
【0042】
本発明は、金属のリサイクルのために、化石燃料を燃焼することによって解放されたエネルギーを使用するプロセスおよび炉と溶湯を加熱する方法としてプラズマガスヒータや放射電気アークとを使用するプロセスの両方で確認されている問題を取り除くことを可能とする。
【0043】
回転炉がガスバーナやオイルバーナによって加熱されるプロセスに関して、本発明は、材料を回収しリサイクルする、より少ない汚染でのプロセスを提供する。理由は、提案された加熱源は、プロセス雰囲気の厳格な制御を可能とし、従って、溶融塩を使用しないで行うことを可能とするからである。
【0044】
プラズマガスヒータを適用するプロセスに関して、本発明は、以下の利点を提供する回転炉を使用する非鉄金属を回収およびリサイクルするための処理を提供する:(a)プロセスで使用されるガスの量の顕著な減少;(b)少ない量のガスの使用は、大気に排出される前に処理されなければならないガス状の流出物の直接的減少となる;(c)アルゴンのような不活性ガスの効率的使用、或いはガスを全く供給しないことによって提供される雰囲気のより良好な制御は、窒素をプラズマガスとして使用する時にアルミニウムと窒素との間の窒化アルミニウムを形成する反応のような望ましくない反応によって及び同様に大気を使用する時の酸化による金属ロス率の低下をもたらす。
【0045】
得ることのできるより高い金属収率に関して、加熱方法としてのプラズマガスヒータの使用と比較して、本発明において提案される対流アークを使用する利点は、明らかである。対流アークによる溶湯の加熱は、プラズマガスヒータが空気で動作される時に生じるような、回収可能な金属の一部を燃焼することによって発散されるエネルギーを使用することなく、電気エネルギーを使用することによってのみ迅速且つ効率的に実行され得る。
【0046】
再溶融炉が、炉の回転軸回りに配された二つの電極の間に確立される放射アークで加熱されるプロセスに関して、本発明は、以下の利点を提供する:(a)本発明は、より効率的な熱伝達機構に基づく回転炉を使用して金属を回収およびリサイクルするプロセスを提供する。使用される対流アーク原理は、アークから溶湯へ直接熱を伝達することを可能とするからである;(b)処理される材料の上方に位置される唯一の電極を使用しての対流電気アークの形成は、傾斜された回転軸を有し且つ水平線より上に位置される投入用ドアを有する炉を動作することを可能とし、そうで無い場合に電極と処理された材料との偶然の接触で引き起こされ得る電極の破壊のリスクを減少する;(c)所与の容量のキャビティに対して、動作中の炉の回転軸の傾斜および処理された材料より十分に上に電極を位置決めすることは、投入の最大容量の増加を可能とし、従って、より大きくよって高価な装置を必要とすることなく、生産速度を向上することを可能とする。
【0047】
化石燃料バーナまたはプラズマガスヒータでの回転炉の加熱は、主に対流熱交換に基づいており、効率的に実行されるために、高温ガスの炉内での最小滞留時間に依存する。実際、これは、炉の容量の大部分が空洞に保たれるため、キャビティ内の投入容量が制限される。主要な熱交換機構がアーク放射であるカナダ特許第2030727号および米国特許第5245627号によって導入されたプロセスの場合におけるような炉の軸であって溶湯よりも上に配置される二つの電極間で転移する電気アークを使用する場合、動作上の理由のため、溶湯を加熱し且つそれを炉の中で回転しながら、炉は、その長手方向軸が水平方向に固定されていなければならないので、炉のキャビティの容量の更に少ない部分が材料を投入するのに利用可能であるに過ぎない。
【0048】
本発明の装置目的の場合、熱伝達は、主に対流に起因しており、実際、ガスを炉に導入することなく実行できるので、最小の滞留時間が可能とする自由キャビティ容量或いは回転軸の傾斜を回避して電極の破壊を防止することのいずれかをを考慮しても、制限が無い。従って、本発明は、先行するプロセスよりも実質的に高い投入容量が得られる。主に自由金属高含有の材料に関して、大部分のスクラップが事前に準備された場合のように、炉のチャンバのより良好な占有は、炉のチャンバの同じ容量に対して、他の利用可能な加熱方法よりも高い生産速度を可能とする。
【0049】
水平軸よりも上方にある炉の長手方向軸の更なる傾斜に起因する溶湯の回転の効果による部分的ロスにも拘らず、以下の観察事項は、今までに提案されている回転炉加熱技術に関して本発明のより良好で差別化された性能に寄与する:溶湯中に存在する自由金属の含有量が増加すると、回転の効果の重要度が減少すること;炉の長手軸の傾きが増加すると、熱の伝達が溶湯に直接に生じる事実;アーク電流の強度を調節することによって制御される熱伝達率がより高くなることは、全体としての金属浴の固化と、液相伝導と対流によって溶湯バルク内でのより迅速でより効率的な熱伝達を促進する大量の液状金属の迅速な形成に寄与する。
【発明の開示】
【0050】
金属を回収するために、金属スクラップ並びにアルミニウムのような金属を含有するドロスを処理する本発明に適したプロセスは、以下のプロセス動作ステップによって実現される:回収する金属または金属合金を含有する材料によって構成される溶湯の回転炉への導入;この材料を回収する金属または金属合金の融点よりも高い温度まで加熱すること;加熱ステップ中およびその後、炉の回転または単純な振動によって、炉内の材料の運動を引き起こし、溶融金属を非金属固体残渣から分離すること;非金属固体残渣から分離された液状金属を除去すること;および残留非金属固体物質を除去すること。
【0051】
本発明は、溶融塩を使用しないため、実質的に対流の熱交換によって溶湯が回収する金属や非鉄合金の融点より高い温度まで加熱されるという新規性を提供し(ステップ2)、これは、必要ならば、炉の内部雰囲気の単独制御以外の効果を上げるためのプロセスへ外部ガスを供給することとは独立している。
【0052】
本発明によって、このプロセスは、使用される炉が、回転軸を有し、この回転軸回りにその炉が回転される或いは単純に振動運動を行なう密閉容器を備え;炉の構造は、回転軸が水平面より上にあるか或いはその水平面より上および下に傾斜される可能性を提供する;容器は、自由燃焼対流アークによって過熱されることが好ましく、このアークは、直流電流の電気放電によって自己安定化され且つ発生され、容器の傾斜角度(α)および中に供給される材料の量の調節によって、炉に導入される単独の電極と中に供給される溶湯または導電性材料製の容器の底壁との間に確立されることができる;電極が直流電気回路におけるカソードとして働き、炉の回転軸に関して上方に配置された偏心または傾斜軸に従って、炉のドアを介して導入されることが好ましく、且つ電極は、アークの長さを調節するためにそれ自体の軸に平行に変位される。
【0053】
任意の投入状況において、供給される材料の量、これは、以前に炉に供給された材料の量である場合もある、を把握し、アークの電圧と電流を記録することによってアークで消費された電力をモニタし、回転容器に設けられた熱電対によって、好ましくは、マイクロコンピュータに接続されたデータ収集システムを使用して、温度をモニタすることによって制御される。
【0054】
本発明は、金属のリサイクルを目的として、炉と溶湯を加熱する方法として化石燃料を燃焼することによって発散されたエネルギーを使用するプロセス、およびプラズマガスヒータや放射電気アークを使用するプロセスの両方で確認されている問題を取り除くことを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
本“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセスおよび装置”の装置の詳細な説明が、以下に述べる図面に基づいてなされ、これは、本発明の好適ではあるが制限をしない要素を具体化する。
【0056】
要素の以下の参照番号が図面で採用される:(1)は容器;(2)はドア;(3)は電極;(4)はフランジ付きアクスル;(5)は支持構造;(6)はベアリング;(7)は駆動ホイール;(8)はタッピングチャネル;(9)は可動台車構造;(10)は可動台車;(11)は排気ダクト;(12)はヒンジ付き構造;(13)は前部油圧アクチュエータ;(14)は後部油圧アクチュエータ;(15)は導電性耐火物;(16)はスチールリング、前部ローリングトラック;(17)はスチールリング、後部ローリングトラック;(18)は耐火物;(19)は導電性ブロック;(20)は固定電極;(21)はアイドルローラ;(22)は器;(23)は残渣;(24)はインゴッドモールド;(25)はガス排気煙道;(26)はスチールシェル;(27)はシュート;(28)は炉キャビティ;(29)は溶湯;(30)はバルブ;(31)はヒンジ付き構造体の支持ベース;(32)は正面ヒンジ;(33)は端部ヒンジ;(34)は円形開口部;および(α)は、傾斜角度である。
【0057】
本発明の装置は、容器(1)の回転軸の−60度と+60度との間で変化可能な大きな角度(α)に傾斜可能なように二つのヒンジ付きセクション(5a)と(5b)を有するスチール構造(5)によって形成される、図7に概略的に表される支持構造体上に組みつけられる、密閉ドア(2)を有する容器(1)を備え、そのために、全体のセットは、地表面から実質的に上昇する必要はない。停止時、図7(b)に示されるように、容器の回転軸が水平に配され且つ構造体のセクション(5a)と(5b)が完全に嵌りあっているこのような支持構造アセンブリは、容器の低表面が地表面に非常に近接される。図7(d)に示されるように、両油圧アクチュエータ(13)と(14)を起動することによる構造体のセクション(5a)と(5b)の同時移動によって炉を異なる角度(α)に且つ地表面より高い高さに位置決めすることが出来る。このことは金属タッピング動作中、炉からの非金属固体残渣の取り出し中に特に都合がよい。
【0058】
図2に示されるように、容器(1)は、処理される材料とプロセス温度と適合できる耐火物で内張りされた、円形セクションを有するスチール構造(26)内にある。容器(1)の底部は、導電性耐火物(15)が更に裏打ちされ、この耐火物(15)は、図6に示されるように、導電性ブロック(19)によってスチール構造(26)との接触が維持され、それにより、ローリングトラックや接点金属リング(16)によって固定外部電極(20)との接触が維持される。このようなアセンブリによって、容器の導電性底部(15)の電気接触、並びに、特に操作の安全要求を満足するために必要とされる、構造の完全な接地が可能となる。
【0059】
容器(1)の底部壁(15)の導電性耐火裏打ちは、一つまたは複数のモノリッシック構造ブロックに造られても良いし、グラファイトレンガの構成物または事前に焼かれたまたは焼かれてないタールやグラファイトの形態に耐火物と木炭素を混合することによって得られる、或いは適切な配合の耐火ラミングを適用することによってまたはこれらの材料の任意の組合せによって構成される構成物によって構築されることができる。
【0060】
容器(1)は、長手方向対称軸、即ち回転軸を有し、この軸に関して、容器のスチールシェル(26)の外側に互いから離間されて固定される二つの木炭素スチールリング(16)と(17)の中心が2対のアイドルローラ(21)上に容器(1)を支持するように働き、これらの対の一方が前部作動セットであり、他方が後部安全セットであり、これらの典型のアセンブリが、図6に示されている。図1に示されるように、容器(1)の底部端のフランジ付きアクスル(4)は、駆動ホイール(7)によって容器(1)へ回転運動を伝達し端部ベアリング(6)上に容器(1)を支持するように働く。容器(1)の回転または振動運動は、1分当り0回転と20回転との間の炉(1)の回転速度の連続調節のための設備と回転方向を逆転するまたは容器(1)を単に振動移動させる設備とを備える電気または油圧伝動システムによって駆動されるチェーンまたはギヤ伝動によって行なわれる。
【0061】
処理する材料の導入および炉からの非金属固体残渣の取り出しは、容器(1)の正面円形開口部(34)によって行なわれる。液状金属のタッピングのために、図2に示されるように、容器(1)は、耐火壁を貫通するように作られたタッピングチャネル(8)が設けられることが好ましい。図3によって示されるように、ヒンジ付き構造(12)の上に組みつけられた、この開口部の密閉ドア(2)は、断熱材料で裏打ちされ且つ頂部にガスおよび揮発性物質排気のための開口部を備える内部キャビティを有する。排気ダクト(11)は、望ましくは、必要であれば炉への少量のガス流の導入と同等の僅かな正の値で内圧の調節を可能とするバタフライタイプのバルブを備えることが好ましい。ドア(2)の正面部の好ましくは偏心孔が、電極(3)の通過を可能とする。
【0062】
小型のアイドルローラ(21)とベアリング(6)が、内部支持構造セクション(5a)に設けられ、このセクションは、油圧アクチュエータ(13)によってヒンジ点(B)回りに動かされて水平面より上に容器(1)の回転軸を上げる。油圧アクチュエータ(13)が引き戻されると、油圧アクチュエータ(14)のシャフトの前進が、ヒンジ点(A)周りの全セットの上昇を促進し、容器(1)の底部の上昇を促進し、即ち、図5に示されるように、容器(1)の内側から非金属固体残渣を取り出す位置で、水平面よりも下に容器(1)の回転軸を位置決めする。
【0063】
容器(1)の小さな傾斜角度(α)とその中に含まれるより少量の溶湯(29)の調節のために、対流電気アークは、図3に示されるように、電極(3)と導電性底部(15)との間に確立され得る。大きな傾斜角度(α)とより大量の溶湯(29)の調節のために、アークは、図4に示されるように、電極(3)と溶湯自体(29)との間に確立され得る。
【0064】
対流アークの形成を示す概略図(図3と図4)において、電極(3)は、平行軸に沿って且つ容器(1)の長手方向回転軸上に位置決めされる。図1に示されるように、電極(3)は、構造(9)上を案内される可動台車(10)上を電極(3)の外端を容器(1)に固定することによって、長手方向に移動されることができ、他方、この構造(9)は、ドア(12)を支持する構造に固定される。炉のキャビティ内に対流アークを確立する方法は、以下の選択肢を含む:図3および図4に夫々示されるように、電極(3)とキャビティ(15)の底部壁との間にアークを確立すること;および電極(3)と炉に導入された溶湯(29)との間にアークを確立することである。
【0065】
本発明の特に有利な実施の形態において、電極(3)の長手方向軸は、容器(1)の回転軸に対して平行に或いは傾斜して変位する。容器の軸回りでの容器の回転の結果として、アークが容器の底部壁に向けられ、次に、その底部壁がアノードとして働き、中心がアークの接点が容器の回転軸上にある円形軌道を描くアセンブリが可能となる(容器の運動が完全回転として起きない場合、円形軌道の代わりに、弧の形状である)。この動作は、底部壁の加熱された部分を溶湯に周期的に接触させ、対流アークの作用によってその加熱された部分に溶湯へ伝達される強い熱をより容易に散逸させる。
【0066】
電極(3)の長手方向軸に沿った貫通孔が炉のキャビティの内部雰囲気をパージするためにガスを導入し、それによって、実質的に非反応性雰囲気を提供する。
【0067】
炉(1)は、化石燃料の組合せまたは好ましくは木炭または処理する材料自体で作られる溶湯へ電極から伝達されるアーク自体によって加熱される。木炭または処理する材料で形成した初期荷重(溶湯)は、容器の導電性底部裏打ち(15)を保護するものである。木炭が始動荷重として使用される場合、加熱が動作温度近くの温度で完了されると、処理する材料の最初の投入が行なわれた後、その木炭は、除去されても除去されなくてもよい。
【0068】
プロセスは、処理する材料の炉のキャビティへの導入で開始する。材料の性質により、材料は、電気アークを使用しない炉壁および回転或いは単なる振動運動を維持された炉のとの単純な熱交換による加熱期間に置かれても置かれなくてもよい。この実施は、幾分の水分および/有機物の含有を示す溶湯に適用し、アークが確立される前に加熱および気化によるその除去を促進し、これによって、回収可能金属を消滅させる可能性のある望ましくない高温反応を回避する。次に、材料は、対流電気アークの直接の印加によって加熱され、アークが消滅した時、所与の量のエネルギーが付加されるまで、電源からの電圧と電流が供給され、そして容器の運動によって溶湯が回転され続け、温度の均一化と、液相と固相との間の分離とが得られる。揮発性物質を除去するための加熱ステップが適用されようと適用されまいと、電極が溶湯を検出するまでの電極の接近によってアークを確立する瞬間を除いて、炉は、1分当り0回転と20回転との間で変化できる回転速度で連続回転または単に振動する運動に常に保たれる。各材料の処理実施によって画定される期間続くこのステップが終了すると、図1に示されるように、インゴッドモールド(24)への或いは液状金属の移送のための取鍋への液状材料のタッピングが行なわれる。特に、スクラップ処理の場合、中の金属の含有に依存しておよび/または非金属固体残渣の形成が少ない場合、材料の一部は、炉の中に残されて新たな溶湯から材料を受取る。適度な量の非金属固体残渣が一回のまたは複数回の投入サイクルでキャビティに形成されると、回収された金属がタッピングされ、残渣が、炉の軸を水平線より下に傾けることによって器に注がれる。図5に示されるように、この動作のために、特殊なシュート(27)が使用され、器(22)内に残渣(23)を案内する。
【0069】
従って、低密度溶湯の場合、炉の最大投入容量に達するまでに一回のサイクル内で複数回の投入が必要とされる。この場合、新たな溶湯が追加され続けるので、炉の傾斜角度(α)を、水平線の上に徐々に増大することができる。
【0070】
本発明は、この記述で詳しく開示され且つ例示されたが、本発明の範囲から離れることなく変形および変更が得られることは当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】水平位置に配された回転軸を有する回転炉の立面図である。
【図2】本発明の実現に適する容器(1)の実施の形態の一方法の例示断面図である。
【図3】電極(3)と容器(1)の底部との間に確立されるアークを示す、水平方向より上に角度(α)で傾斜した回転軸を有する動作位置にある回転炉の立面図である。
【図4】電極(3)と溶湯(29)との間に確立されたアークを示す、水平方向より上に角度(α)で傾斜した回転軸を有する動作位置にある回転炉の立面図である。
【図5】非金属固体残渣(23)排出位置における、開放ドア(2)を有する、水平方向より下方に傾斜した回転軸を有する回転炉の立面図である。
【図6】電気接点スチールリング(17)を介して金属構造と接触している固定外部電極(20)の好ましいアセンブリを示す炉の正面図である。
【図7】その上に炉が支持される構造(5)の考えられる配置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセス”であって、処理されるべきスクラップまたはドロスを投入するステップと、溶湯を加熱し且つ金属を溶融するステップと、前記加熱された溶湯を回転するステップと、前記溶融した金属を除去し且つ炉のキャビティを空にするステップとを有し、回収する金属または非鉄合金の溶融温度よりも高い温度への溶湯または残渣の加熱は、自由燃焼対流電気アークによって行なわれる、“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセス”。
【請求項2】
不活性環境が外部ガスのプロセスへの供給から独立して維持される、請求項1に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセス”。
【請求項3】
前記プロセスは、塩を使用しなくてもよい、請求項1または2に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセス”。
【請求項4】
前記自由燃焼対流電気アークは、直流放電によって自己安定化され且つ発生され;前記アークは、炉に導入された単極と、炉に供給される溶湯または導電材料製の容器の底壁との間に形成することができる、請求項1または3に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセス”。
【請求項5】
前記電極は、カソードとして働き、且つ、前記アークの長さを調節するように前記電極の軸に沿って変位することが出来る、請求項1または3に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセス”。
【請求項6】
前記アノードは、前記供給される溶湯または金属残渣、または前記導電材料製の容器の底壁によって構成される、請求項1または3に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセス”。
【請求項7】
有機物質を含有する汚染残渣または溶湯は、対流アークを形成することなく処理すると共に、前記溶湯を加熱して揮発性物質の形成と除去を同時に行なう、請求項1、3、5、および6に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセス”。
【請求項8】
炉雰囲気の初期形成または回復中に、処理された材料、動作ステップ、及び望ましい効果に応じて、希ガス、窒素、水素、メタン、一酸化木炭素、二酸化木炭素、酸素、空気、またはこれらの混合気のようなガスを炉室へ導入する、請求項1に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理プロセス”。
【請求項9】
自由燃焼対流電気アークを形成するために用いる電極を導入する密閉ドアを有する容器を備えた回転炉であって、水平面に関して回転軸を上昇または下降できるヒンジ付きベース上に組み立てられる、“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。
【請求項10】
前記容器は、処理された材料と処理温度に適合できる耐火材料が内部に裏打ちされた円形断面を有するまたは正多角形のスチールシェルを備え、当該容器の底部は、更に、導電性耐火物で裏打ちされ、導電性ブロックを介して金属シェルと接触が保たれると共にローリングまたは接触トラックを介して固定外部電極と接触が保たれ、前記容器の導電性底部の電気接触と炉の構造の完全な電気的接地の両方を保障する、請求項9に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。
【請求項11】
前記容器は、長手方向の対称軸、または、回転軸を有し、二つの金属リングの中心は、スチールシェルの外側に一列に並べられ且つ固定されると共に互いから離間され、2対のローラ間で容器を支持するように働き、一方の対は、一つの前部動作セットであり、他方の対は、一つの後部安全セットであり、容器の底部端のフランジ付きアクスルは、駆動輪によって回転移動を容器に伝達し且つ端部ベアリング上で容器を支持するために使用される、請求項9に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。
【請求項12】
容器の回転または振動運動は、1分当り0〜20回転または振動サイクルの間での炉の回転または振動速度の連続した調節のための設備と、回転方向を逆転するまたは容器を完全には回転することなく単に振動運動を提供するリソースとを備える、電気または油圧力伝達システムによって駆動されるチェーンまたはギヤ伝動によって達成される、請求項9、10、および11に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。
【請求項13】
前記容器は、材料を導入し且つ取り出すための前部円形開口部と、好ましくは、液状金属を取り除くための、耐火壁を貫通するチャネルを有する、請求項9および10に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。
【請求項14】
前記前部円形開口部を封鎖する密閉ドアは、ヒンジ構造体上に組み立てられ;断熱材で裏打ちされ、ガス圧入および/またはガスと揮発性物質排気のための開口部を備える、好ましくは、内圧を調節できるバルブを備える内部キャビティを有する、請求項9に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。
【請求項15】
前記電極は、中心が炉の回転軸に関して変位する前記ドアの孔を通して炉に導入される、請求項9に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。
【請求項16】
対流アークを形成するために使用されるアセンブリにおいて、前記電極は、長手方向の回転軸に関して平行または傾斜軸に沿って位置決めされ、且つこの電極は、その外端をドア支持構造体に取り付けられた構造上を案内される可動台車へ固定することによって長手方向へ移動されることが出来る、請求項9に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。
【請求項17】
対流アークを炉内に形成する方法は、電極とキャビティの底部壁との間にアークを形成すること、および、電極と炉に導入された充填物との間にアークを確立することの選択肢を含む、請求項9および16に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。
【請求項18】
前記容器の雰囲気は、前記密閉ドアの開口部を介してまたは穿孔を介して電極の長手方向軸に沿ってガスを導入することによって形成されることができる、請求項9および14に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。
【請求項19】
前記回転容器支持ローラとベアリングは、2つのヒンジ点回りに油圧アクチュエータによって移動される二つの構造セクションよりなるベース上に据置され、一方のヒンジ点は、投入および溶融動作のために水平面上方に容器の回転軸を上昇するために使用され、他方のヒンジ点は、取り出し位置において層の底部を上昇して回転軸を水平線より下方に位置決めするために使用される、請求項9に記載の“非鉄金属およびその合金の溶湯または残渣の処理装置”。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2008−506843(P2008−506843A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521754(P2007−521754)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/BR2005/000129
【国際公開番号】WO2006/007678
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507020657)インスティテュート・デ・ペスキサス・テクノロジカス・ドウ・エスト.ド・エセ.パウロ・エセ/アー・アイピーティー (1)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTO DE PESQUISAS TECNOLOGICAS DO EST. DE S. PAULO S/A − IPT
【出願人】(507020646)
【氏名又は名称原語表記】FUNDACAO DE AMPARO A PESQUISA DO ESTADO DE SAO PAULO
【Fターム(参考)】