説明

非鉄金属に対する接着性に優れた被覆材料

【課題】非鉄金属に対する接着性に優れたバリア接着剤および塗料を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物からなる被覆材料であって、該樹脂組成物が硬化してなる硬化物からなる皮膜層が優れた酸素バリア性を有する非鉄金属用被覆材料を接着剤もしくは塗料として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非鉄金属に対する接着性に優れたバリア接着剤および塗料等の被覆材料に関するものであり、特にニッケルに対する接着性に優れたバリア接着剤および塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気デバイスの導電性基材として、ニッケルなどの非鉄金属が使用されているが、これら非鉄金属は酸化により電気デバイスの品質劣化を起こしやすいといった難点があった。また電気デバイスは高温度になるため、耐熱性を有するエポキシ樹脂が主に適用されている。特許文献1では酸素バリア性エポキシ樹脂を使用することによって、かかる問題を解決している。しかしながら、通常のエポキシ樹脂では基材に対する接着性が低かった。
【特許文献1】特開2006−121049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は上記問題点を解決し、非鉄金属、特にニッケルに対する接着性に優れたバリア接着剤および塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、非鉄金属に対する接着性・付着性を改善した、バリア性エポキシ樹脂接着剤および塗料を開発し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明はエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物からなる被覆材料であって、該樹脂組成物が硬化してなる硬化物からなる皮膜層の23℃、相対湿度60%における酸素透過係数が2ml・mm/(m2・day・MPa)以下であることを特徴とする非鉄金属用被覆材料に関するものである。
該被覆材料は、非鉄金属に対する接着剤および塗料として使用することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、非鉄金属、特にニッケルに対する接着性が良く、かつ高酸素バリア性エポキシ樹脂接着剤および塗料の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、非鉄金属はアルミニウム、亜鉛、錫、鉛、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、マグネシウムなどが例示でき、これら非鉄金属からなる基材には必要により公知の方法(例えば、ショットブラスト処理、グリッドブラスト処理、サンドブラスト処理等の物理的手段、または酸洗、アルカリ脱脂等の化学的手段、あるいはそれらの組み合わせ)で表面処理や下地処理を行うことができる。
【0008】
本発明の被覆材料は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物からなり、該樹脂組成物が硬化してなる硬化物からなる皮膜層が優れたガスバリア性と非鉄金属に対する接着性を有するため、非鉄金属に対する防錆・防食塗料として使用できる。また、該皮膜層は他の材料に対する接着性にも優れているため、本発明の被覆材料を非鉄金属からなる基材と他の材料を接着するための接着剤としても使用できる。
【0009】
本発明における皮膜層はエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物により形成され、その23℃、相対湿度60%における酸素透過係数が2ml・mm/(m2・day・MPa)以下、好ましくは1ml・mm/(m2・day・MPa)であることを特徴としている。ここで酸素透過係数とは1MPaの酸素分圧差下で1mm厚のサンプル1平方メートルを24時間かけて透過する酸素の量を示す値である。
【0010】
また、前記皮膜層は、(1)式に示される骨格構造を20重量%以上含有することが好ましい。該骨格構造を20重量%以上にすることにより、皮膜層に良好なガスバリア性が発現する。
【化2】

【0011】
以下に、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤について詳細に説明する。
【0012】
本発明におけるエポキシ樹脂は飽和または不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよいが、高いガスバリア性の発現による高い防錆、防食機能の発現を考慮した場合には芳香環を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましい。
【0013】
具体的にはメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基および/またはグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFやビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂などが使用できるが、中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFやビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
更に、ビスフェノールFやビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することが特に好ましい。
【0014】
さらに、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0015】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。メタキシリレンジアミンは4つのアミノ水素を有するので、モノ−、ジ−、トリ−およびテトラグリシジル化合物が生成する。グリシジル基の数はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0016】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、約80〜4000であり、約200〜1000であることが好ましく、約200〜500であることがより好ましいい。
【0017】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、ポリアミン類、フェノール類、酸無水物またはカルボン酸類などの一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は飽和または不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよく、ポリマー被覆鋼材の使用用途およびその用途における要求性能に応じて選択することが可能である。
【0018】
具体的には、ポリアミン類としてはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン;メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環式アミン;ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族アミンが挙げられる。また、これらを原料とするエポキシ樹脂、ポリアミン類とモノグリシジル化合物との変性反応物、ポリアミン類とエピクロルヒドリンとの変性反応物、ポリアミン類と炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの変性反応物、ポリアミン類と少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応により得られたアミドオリゴマー、ポリアミン類、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物、および一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応により得られたアミドオリゴマーもエポキシ樹脂硬化剤として使用できる。
【0019】
フェノール類としてはカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの多置換基モノマー、およびレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0020】
酸無水物またはカルボン酸類としてはドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(メチル)テトラヒドロ無水フタル酸、(メチル)ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、およびこれらに対応するカルボン酸などが使用できる。
【0021】
高いガスバリア性および非鉄金属との良好な接着性の発現を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物を用いることが好ましい。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン(ポリアミン)
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体が好ましい。
【0022】
また、炭素数1〜8の一価のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などが挙げられ、また、それらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物なども使用することができる。これらは上記多官能性化合物と併用してポリアミン(メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン)と反応させてもよい。
【0023】
また、(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体に存在する(A)ジアミン中のアミノ基と反応しうる反応基の合計モル数が、(A)ジアミンに存在するアミノ基のモル数に対して0.3〜0.95、好ましくは0.35〜0.85、さらに好ましくは0.4〜0.7である。
【0024】
本発明においては、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂硬化剤を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0025】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物の主成分であるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂硬化物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素数の比が0.5〜5.0、好ましくは0.7〜2.0、さらに好ましくは0.8〜1.5の範囲である。
【0026】
前記エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタン系樹脂組成物、ポリアクリル系樹脂組成物、ポリウレア系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物を混合してもよい。
【0027】
前記皮膜層を非鉄金属の表面に形成する場合には、非鉄金属の表面の湿潤を助けるために前記エポキシ樹脂組成物の中に、シリコンあるいはアクリル系化合物といった湿潤剤や表面調整剤を添加しても良い。適切な湿潤剤・表面調整剤としては、ビックケミー社から入手しうるBYK065、BYK331、BYK333、BYK340、BYK348、BYK381などがある。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の合計重量100重量部に対して0.01〜2重量部の範囲が好ましい。
【0028】
また、前記皮膜層の酸素バリア性、耐衝撃性、耐熱性などの諸性能を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機フィラーを添加しても良い。高い酸素バリア性を考慮した場合には、このような無機フィラーが平板状であることが好ましい。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の合計重量100重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜80重量部、より好ましくは0.5〜50重量部の範囲である。この範囲とすることにより、酸素バリア性、耐衝撃性、耐熱性などの諸性能が優れた皮膜層を形成することができる。
【0029】
さらに、前記皮膜層の非鉄金属に対する接着性を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の合計重量100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜4重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。この範囲とすることにより、接着性が優れた皮膜層を形成することができる。
【0030】
さらに、前記皮膜層を形成するエポキシ樹脂組成物中には必要に応じ、低温硬化性を増大させるための例えばN-エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫などの硬化促進触媒、ベンジルアルコールなどの有機溶剤、リン酸亜鉛、リン酸鉄、モリブデン酸カルシウム、酸化バナジウム、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの防錆添加剤、フタロシアニン系有機顔料、縮合多環系有機顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カーボンブラックなどの無機顔料等の各成分を必要割合量添加しても良い。
【0031】
前記皮膜層の層厚は1〜100μm程度、好ましくは3〜50μm、より好ましくは10〜40μmが実用的である。1μm未満であると十分な耐食性が発現せず、100μmを越えるとその膜厚の制御が困難になる。
【0032】
非鉄金属からなる基材上に被膜層を形成する場合には、塗布法、浸漬法、スプレー法等任意の方法の中から非鉄金属の形態などに応じて適宜選択できる。塗布法としては、ロール塗布、しごき塗り、刷毛塗り、流し塗りなど公知の方法が採用できる。またこれらの処理後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。エポキシ樹脂組成物の塗布後、必要に応じて加熱によりエポキシ樹脂組成物の硬化反応を完結させても良い。加熱方法はドライヤー、高周波誘導加熱、遠赤外線加熱、ガス加熱など従来公知の方法の中から適宜選択して用いることができる。加熱処理は到達材温で50〜300℃、好ましくは80〜250℃の範囲で行うことが望ましい。50℃未満では長時間の加熱が必要になり生産性が劣るため好ましくない。また300℃を超えると皮膜層の劣化や周辺部材への影響があるため好ましくない。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の実施例を紹介するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0034】
エポキシ樹脂硬化剤A
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.50molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。50℃まで冷却し、エポキシ樹脂硬化剤Aを得た。
【0035】
エポキシ樹脂硬化剤B
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.67molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。50℃まで冷却し、エポキシ樹脂硬化剤Bを得た。
【0036】
エポキシ樹脂硬化剤C
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。65℃まで冷却し、メタノールを添加して固形分濃度65重量%まで希釈し、エポキシ樹脂硬化剤Cを得た。
【0037】
本発明の被覆材料により皮膜層が形成された塗装ニッケル板を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
<ガスバリア性>
以下の方法で皮膜層の酸素透過係数(ml・mm/(m2・day・MPa))を求めた。
厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製東洋紡エステルフィルム・E5100)からなる基材フィルムにエポキシ樹脂組成物を塗布した後に硬化させて厚さ10μmの皮膜が形成されたコートフィルムを得た。
酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN10/50A)を使用して、23℃、相対湿度60%の条件下でコートフィルムおよび基材フィルムの酸素透過率を測定し、皮膜層の酸素透過係数を以下の式を用いて計算した。
1/R = 1/R + D/P
なお、式中の記号は以下のものを表す。
R = コートフィルムの酸素透過率(ml/(m2・day・MPa))
= 基材フィルムの酸素透過率(ml/(m2・day・MPa))
D = 皮膜層の厚み(mm)
P = 皮膜層の酸素透過係数(ml・mm/(m2・day・MPa))
<接着性>
塗装したニッケル板について、5mm×5mmの碁盤目状にカッターで50マスの切れ込みを入れ、ガムテープ剥離試験を行い、その残存数を確認した。残存数が40以上であるものを合格とした。
【0038】
実施例1
ニッケル板はニッケル201の70×150×1mm状板を使用した。メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製; TETRAD-X)50重量部、エポキシ樹脂硬化剤A33重量部、およびアクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製;BYK348)0.02重量部を混合し、よく攪拌し、エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を、ニッケル板の表面に膜厚約25μmになるように刷毛にて塗布し、80℃で30分間硬化させ皮膜を形成させた。なお、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は54.3重量%であった。
【0039】
実施例2
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Bを45重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は55.6重量%であった。
【0040】
実施例3
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Cを120重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は57.4重量%であった。
【0041】
実施例4
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルのモル比が約2:1のメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルとの反応生成物(三菱ガス化学(株)製;ガスカミン340)を35重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は53.5重量%であった。
【0042】
実施例5
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Cを120重量部用い、無機フィラーとしてカオリンASP-NP(ENGELHARD製アルミニウム・シリケート)を63重量部添加した以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は57.4重量%、無機フィラーの含有率はエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の合計重量100重量部に対して49重量部であった。
【0043】
実施例6
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Cを120重量部用い、シランカップリング剤(チッソ(株)製サイラエースS-330)を3.8重量部添加した以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は57.4重量%、カップリング剤の含有率はエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の合計重量100重量部に対して3重量部であった。
【0044】
実施例7
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は20.5重量%であった。
【0045】
実施例8
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Cを120重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は31.5重量%であった。
【0046】
比較例1
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりに変性複素環状アミン(ジャパンエポキシレジン(株)製;エポメートB002)を50重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は0.0重量%であった。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物からなる被覆材料であって、該樹脂組成物が硬化してなる硬化物からなる皮膜層の23℃、相対湿度60%における酸素透過係数が2 ml・mm/(m2・day・MPa)以下であることを特徴とする非鉄金属用被覆材料。
【請求項2】
前記酸素透過係数が1 ml・mm/(m2・day・MPa)以下である請求項1に記載の被覆材料。
【請求項3】
前記非鉄金属が、ニッケルである請求項1または2に記載の被覆材料。
【請求項4】
前記皮膜層が、(1)式に示される骨格構造を20重量%以上含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の被覆材料。
【化1】

【請求項5】
前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つを含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の被覆材料。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂およびビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つを主成分とするものである請求項1〜5のいずれかに記載の被覆材料。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである請求項1〜6のいずれかに記載の被覆材料。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂硬化剤が、下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物である請求項1〜7のいずれかに記載の被覆材料。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
【請求項9】
前記(B)多官能性化合物がアクリル酸、メタクリル酸および/またはそれらの誘導体である請求項8に記載の被覆材料。
【請求項10】
前記(B)多官能性化合物と(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体に存在する、アミノ基と反応しうる置換基の合計モル数が、(A)ジアミンに存在するアミノ基のモル数に対して、0.3〜0.95である請求項8または9に記載の被覆材料。
【請求項11】
無機フィラーおよびカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を添加した請求項1〜10のいずれかに記載の被覆材料。

【公開番号】特開2009−167335(P2009−167335A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8957(P2008−8957)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】