説明

非鉄金属溶湯用ヒーターおよびその製造方法

【課題】筒部材に発熱体を簡便に収めることが可能な非鉄金属溶湯用ヒーターを提供する。
【解決手段】発熱体2とリード線3とセラミックスを主成分とする保護部材4と備え、保護部材4は、発熱体2を収める発熱体収容部11と、リード線3を収める支持部13と、発熱体収容部11と支持部13とを互いに交わる角度にて繋ぐとともに、発熱体収容部材11からの延長上の部分に、発熱体2を出し入れ可能に設けられた第一の開口部17と該第一の開口部17を閉栓する蓋部材14とが設けられた屈曲部12と、を有する非鉄金属溶湯用ヒーター1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属溶湯用ヒーターおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非鉄金属溶湯を用いる際には、非鉄金属を溶解し、さらに、この溶解した状態を溶湯保持炉内で保持させなければならない。そこで、溶湯保持炉内に電気式の浸漬ヒーターを設置することにより、非鉄金属の溶解や溶解状態の保持を行うことがある。電気式の浸漬ヒーターとしては、発熱体をL字型の筒部材に収めて作られた非鉄金属溶湯用ヒーターが提案されている(例えば、特許文献1,2)。この提案されている非鉄金属溶湯用ヒーターによれば、非鉄金属溶湯用ヒーターを溶湯保持炉から簡単に出し入れすることが可能になる。加えて、提案されている非鉄金属溶湯用ヒーターによれば、溶湯を汲み上げて溶湯の液面が下がった場合であっても、溶湯中に発熱体全体を沈めておくことができる。そのため、溶湯への伝熱効率を維持することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−79398号公報
【特許文献2】特開平8−14760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、提案されている非鉄金属溶湯用ヒーターでは、筒部材の内部に発熱体を収める際に手間取ってしまう。さらに、提案されている非鉄金属溶湯用ヒーターでは、L字型の筒部材に収められた発熱体を取り替えることが困難である。
【0005】
上記の問題に鑑みて、本発明は、筒部材に発熱体を簡便に収めることが可能な非鉄金属溶湯用ヒーターおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す非鉄金属溶湯用ヒーターおよびその製造方法である。
【0007】
[1] 発熱体と、前記発熱体に接続して前記発熱体を通電させるリード線と、前記発熱体および前記リード線を内部に収めるとともにセラミックスを主成分とする保護部材と、を備え、前記保護部材は、前記発熱体を収める発熱体収容部と、前記発熱体から引き出された前記リード線を収める支持部と、前記発熱体収容部と前記支持部とを互いに交わる角度にて繋ぐとともに、前記発熱体収容部からの延長上の部分に、前記発熱体を出し入れ可能に設けられた第一の開口部と該第一の開口部を閉栓する蓋部材とが設けられた屈曲部と、を有する非鉄金属溶湯用ヒーター。
【0008】
[2] 前記屈曲部の肉厚が前記発熱体収容部の肉厚よりも大きい前記[1]に記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【0009】
[3] 前記蓋部材は、前記第一の開口部に着脱可能に設けられているとともに、前記第一の開口部から前記発熱体を交換可能な前記[1]または[2]に記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【0010】
[4] 前記保護部材においては、前記発熱体収容部と前記支持部とが互いに垂直な角度で交わる前記[1]〜[3]のいずれかに記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【0011】
[5] 前記保護部材の材質は、窒化ケイ素、サイアロンからなる群から選ばれる1種を主成分とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【0012】
[6] 前記保護部材は、複数の部材を連結して形成されている前記[1]〜[5]のいずれかに記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【0013】
[7] 前記複数の部材は接合材を介して連結され、前記接合材は、(a)窒化珪素、(b)珪素を主成分としてアルミニウム、酸素、窒素を含有するサイアロン、(c)サイアロン系ガラス、(d)酸窒化珪素ガラス、(e)SiO、B、NaO、Alを含有する耐熱ガラス、(f)SiOを主成分とする不定形耐火物、(g)アルミナセメント、(h)燃焼合成により作製されたAlを主成分とする無機材料のうちのいずれか1種あるいは前記(a)〜前記(h)のうちの2種以上の組み合わせからなる前記[6]に記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【0014】
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の非鉄金属溶湯用ヒーターを製造するための非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法であって、前記発熱体を前記発熱体収容部に収める工程と、前記リード線を前記支持部に収める工程と、前記屈曲部内または前記第一の開口部外で前記発熱体と前記リード線とを接続し、次いで前記発熱体および前記リード線を前記発熱体収容部内に収めた状態で前記第一の開口部を前記蓋部材で閉栓する工程と、を有する非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法。
【0015】
[9] 前記[6]または[7]に記載の非鉄金属溶湯用ヒーターを製造するための非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法であって、前記保護部材が、第二の開口部を有して前記発熱体収容部を構成する発熱体収容部材と、第三の開口部を有して前記支持部を構成する支持部材と、前記第一の開口部、第四の開口部および第五の開口部を有して前記屈曲部を構成する屈曲部材とを備えるとともに、前記発熱体を前記発熱体収容部材に収める工程と、前記発熱体を収めた前記発熱体収容部材の前記第二の開口部を前記屈曲部材の第四の開口部とを連結し、さらに、前記支持部材の前記第三の開口部と前記屈曲部材の第五の開口部とを連結して前記保護部材を組み上げる工程と、前記発熱体を前記屈曲部材の前記第一の開口部まで引き出し、さらに前記支持部材の中に前記リード線を収めて前記リード線を前記屈曲部材の前記第一の開口部まで引き出して、前記発熱体と前記リード線とを接続し、次いで前記発熱体を前記発熱体収容部材の内部に送り込んだ後に前記屈曲部材の前記第一の開口部を前記蓋部材で閉栓する工程と、を有する非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法。
【0016】
[10] 前記[6]または[7]に記載の非鉄金属溶湯用ヒーターを製造するための非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法であって、前記保護部材が、第二の開口部を有して前記発熱体収容部を構成する発熱体収容部材と、第三の開口部を有して前記支持部を構成する支持部材と、前記第一の開口部、第四の開口部および第五の開口部を有して前記屈曲部を構成する屈曲部材とを備えるとともに、前記発熱体収容部材の前記第二の開口部と前記屈曲部材の前記第四の開口部とを連結し、さらに前記支持部材の前記第三の開口部と前記屈曲部材の前記第五の開口部とを連結して前記保護部材を組み上げる工程と、前記支持部材の中に前記リード線を収めて前記リード線を前記屈曲部材の前記第一の開口部から引き出す工程と、前記リード線と前記発熱体とを接続し、次いで前記発熱体を前記第一の開口部から前記保護部材の中に入れて前記発熱体収容部材の内部に送り込み、前記第一の開口部を前記蓋部材で閉栓する工程と、を有する非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の非鉄金属溶湯用ヒーターによれば、筒部材に発熱体を簡便に収めることが可能となる。本発明の非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法によれば、筒部材に発熱体を簡便に収めることが可能な非鉄金属溶湯用ヒーターを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーターの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーターの模式図(断面図)である。本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1は、発熱体2と、発熱体2に接続して発熱体2を通電させるリード線3と、発熱体2およびリード線3を内部に収めるとともにセラミックスを主成分とする保護部材4と、備える。本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1によれば、こうして発熱体2とリード線3が保護部材4の内部に収められているので、溶湯中に浸漬しても、発熱体2やリード線3が溶湯に接触してしまうことを防止できる。
【0021】
また、本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、保護部材4が、セラミックスを主成分とするので、金属溶湯に対する耐久性に優れている。本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1において、保護部材4の主成分として選択し得るセラミックスとしては、窒化珪素、サイアロンなどを挙げることができる。
【0022】
さらに、本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、保護部材4は、発熱体2を収める袋管形状の発熱体収容部材11と、発熱体2から引き出されたリード線3を収める筒形状の支持部材13と、発熱体収容部材11と支持部材13とを互いに交わる角度(方向Xと方向Yとが180度以外の角度で交わる)にて繋ぐ屈曲部材12とを有する。
【0023】
さらに、本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1の保護部材4の屈曲部材12には、発熱体収容部材11からの延長上の位置に、発熱体2を出し入れ可能に設けられた第一の開口部17と、該第一の開口部17を閉栓する蓋部材14とが設けられている。こうした第一の開口部17が設けられていると、保護部材4の発熱体収容部材11の内部に発熱体2を簡便に収めることが可能になる。
【0024】
また、本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、蓋部材14は、第一の開口部17に着脱可能に設けられていることが好ましい。このように蓋部材14が着脱可能である場合には、第一の開口部17から発熱体2を簡便に交換することが可能になる。
【0025】
本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1を、支持部材13の貫通する方向Yを鉛直方向に合わせて溶湯保持炉内に配置すると、発熱体2を溶湯保持炉の幅方向に沿う状態で設置することが可能になる。このように設置すると、溶湯保持炉内の溶湯が減少し、溶湯の液面が下がった場合であっても、発熱体2全体を溶湯中に沈めておくことが可能になり、その結果、溶湯への伝熱効率を良好に維持させることが可能になる。
【0026】
特に、本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、発熱体2全体を確実に溶湯中に沈めておくことを可能にする観点から、保護部材4においては、発熱体収容部材11と支持部材13とが互いに垂直な角度で交わることが好ましい。
【0027】
本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、非鉄金属溶湯用ヒーター1を溶湯に浸漬させて発熱体収容部材11に浮力が生じると、屈曲部材12において他の部材と比べて大きな応力が生じる(例えば、保護部材4を折り曲げようとする応力が屈曲部材12に生じる)。
【0028】
本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、屈曲部材12が発熱体収容部材11や支持部材13とは別の部材であるので、屈曲部材12を他の部材よりも構造的強度の強い形態にしておくことが容易である。屈曲部材12の構造的強度を強くすると、屈曲部材12に大きな応力が生じたとしても、屈曲部材12の破損を抑えることができる。その結果、本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1の耐久性を高めることが可能になる。
【0029】
また、本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1のように、屈曲部材12については、屈曲部材12の中で屈曲部材12を折り曲げようとする応力が作用する部分にリブ部30を設けておくことが好ましい。本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、リブ部30は、屈曲部材12のうちの、X方向に延びる管構造(第四の開口部15を有する管構造)と、Y方向に延びる管構造(第五の開口部16を有する管構造)とを、アヒルの水かきのようにつないでいる。こうしたリブ部30が設けられた場合には、発熱体収容部材11に浮力が生じる場合でも、リブ部30が筋交いのような役割を果たし、その結果として、屈曲部材12の破損を確実に抑制することが可能になる。
【0030】
特に、本発明の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、保護部材4の構造的強度を高める観点からは、屈曲部材12の肉厚が発熱体収容部材11の肉厚よりも大きいことが好ましい。
【0031】
こうして、本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1の保護部材4は、発熱体収容部材11、屈曲部材12、支持部材13という3個の筒部材を組み合わせて作られている。具体的に述べると、本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1の保護部材4は、発熱体収容部材11の第二の開口部21と屈曲部材の第四の開口部15とを連結し、さらに支持部材13の第三の開口部23と屈曲部材の第五の開口部16とを連結して組み上げられている。
【0032】
なお、保護部材4については、適当な成形法により当初から1個の筒部材として作られたものであっても、あるいは2個または4個以上の筒部材を組み合わせて作られたものであってもよい。
【0033】
本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、屈曲部材12は、発熱体収容部材11および支持部材13と接合材を介して連結されていることが好ましい。ここで、接合材は、(a)窒化珪素、(b)珪素を主成分としてアルミニウム、酸素、窒素を含有するサイアロン、(c)サイアロン系ガラス、(d)酸窒化珪素ガラス、(e)SiO、B、NaO、Alを含有する耐熱ガラス、(f)SiOを主成分とする不定形耐火物、(g)アルミナセメント、(h)燃焼合成により作製されたAlを主成分とする無機材料のうちのいずれか1種あるいは(a)〜(h)のうちの2種以上の組み合わせからなることが好ましい。
【0034】
上記(a)〜(h)のうちの1種以上からなる接合材を介して、屈曲部材12と発熱体収容部材11、屈曲部材12と支持部材13とが連結されている場合には、屈曲部材12と発熱体収容部材11との連結部分や、屈曲部材12と支持部材13との連結部分における溶湯に対する耐久性を高めることが可能になる。その結果、保護部材4に破損が生じにくくなる。
【0035】
本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1については、例えば、以下の第一の工程から第三の工程を経て得ることができる。
【0036】
まず、第一の工程では、発熱体2を発熱体収容部材11に収める。
【0037】
続いて、第二の工程では、発熱体2を収めた発熱体収容部材11の第二の開口部21と屈曲部材12の第四の開口部15とを連結し、さらに、支持部材13の第三の開口部23と屈曲部材12の第五の開口部16とを連結して保護部材4を組み上げる。
【0038】
最後に、第三の工程では、発熱体2を屈曲部材12の第一の開口部17まで引き出し、さらに支持部材13の中にリード線3を収めてリード線3を屈曲部材12の第一の開口部17まで引き出して、発熱体2とリード線3とを接続し、次いで発熱体2を発熱体収容部材11の内部に送り込んだ後に、屈曲部材12の第一の開口部17を蓋部材14で閉栓する。
【0039】
また、本実施例の非鉄金属溶湯用ヒーター1を、以下の工程Iから工程IIIを経て得ることも可能である。
【0040】
まず、工程Iでは、発熱体収容部材11の第二の開口部21と屈曲部材12の第四の開口部15とを連結し、さらに支持部材13の第三の開口部23と屈曲部材12の第五の開口部16とを連結して保護部材4を組み上げる。
【0041】
次に、工程IIでは、支持部材13の中にリード線3を収めてリード線3を屈曲部材12の第一の開口部17から引き出す。
【0042】
最後に、工程IIIでは、リード線3と発熱体2とを接続し、次いで発熱体2を第一の開口部17から保護部材4の中に入れて発熱体収容部材11の内部に送り込み、第一の開口部17を蓋部材14で閉栓する。
【0043】
以上のように、本実施形態の非鉄金属溶湯用ヒーター1については、簡便な方法で製造することが可能である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
(1)非鉄金属溶湯用ヒーター
(実施例1)
発熱体収容部材11、屈曲部材12、支持部材13、蓋部材14は、いずれもアルミナ、イットリアを焼結助剤とする緻密質な窒化珪素焼結体から作製した。発熱体収容部材11については、長さ400mm、内径20mm、肉厚5mmの直線的に延びる袋管形状に作製した。支持部材13については、長さ400mm、内径20mm、肉厚5mの両端を開口させた円管形状に作製した。また、屈曲部材12については、高さおよび幅が200mmで内径20mm、肉厚10mmの円筒の管をT字形状に分岐させた形で、さらにT字形状の3つの端部がいずれも開口させたものに作製した。また、屈曲部材12においては、第四の開口部15の開口する方向Xと第五の開口部16の開口する方向Yとが90度をなし、また、第四の開口部15の開口する方向Xと第一の開口部17の開口する方向Zとが180度をなす。蓋部材14は、第一の開口部17に対する嵌め合い構造となるように作製した。
【0046】
続いて、発熱体収容部材11の第二の開口部21と屈曲部材12の第四の開口部15とを嵌め合わせ、支持部材13の第三の開口部23と屈曲部材12の第五の開口部16とを嵌め合わせて、L字型の保護部材4を作製した。さらに、支持部材13の開口端部24からリード線3を挿入し、リード線3の先端を屈曲部材12の第一の開口部17から引き出した。さらに、リード線3と発熱体2と溶接により接合した後、発熱体2を屈曲部材12の第一の開口部17から挿入して発熱体収容部材11の内部に収めた。最後に、屈曲部材12の第一の開口部17に蓋部材14を嵌め合わせることにより、実施例1の非鉄金属溶湯用ヒーター1を得た。
【0047】
(実施例2)
屈曲部材12における第四の開口部15の接合面、第五の開口部16の接合面、第一の開口部17の接合面それぞれにサイアロンガラス組成からなるSi−Y−Al−SiO系の混合粉末スラリーを塗布して混合粉末スラリーを乾燥させた後、発熱体収容部材11、支持部材13、蓋部材14を嵌め合わせ、次いで窒素雰囲気中で加熱処理(1500〜1700℃)を施すことにより、各部材を接合した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2の非鉄金属溶湯用ヒーター1を得た。
【0048】
実施例2の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、発熱体収容部材11の第二の開口部21と屈曲部材12の第四の開口部15との接合、および支持部材13の第三の開口部23と屈曲部材12の第五の開口部16との接合、および屈曲部材12の第一の開口部17と蓋部材14との接合が、Si−Y−Al−SiO系の混合粉末スラリーから作られた接合材を介してなされている。ここで用いたSi−Y−Al−SiO系の混合粉末スラリーは、30.2質量%Si、43.3質量%Y、11.7質量%Al、14.8質量%SiOの組成となるように各粉末を秤量し、プラスチック製ポットおよび窒化珪素製ボールを用いて、少量のエタノール中で湿式混合して調製されたものである。
【0049】
(実施例3)
Si−Y−Al−SiO系の混合粉末スラリーを用いる代わりに、SiO−B−NaO−Al系耐熱ガラス粉末スラリーを用いた以外は、実施例2と同様の方法で実施例3の非鉄金属溶湯用ヒーター1を得た。
【0050】
実施例3の非鉄金属溶湯用ヒーター1では、発熱体収容部材11の第二の開口部21と屈曲部材12の第四の開口部15との接合、支持部材13の第三の開口部23と屈曲部材12の第五の開口部16との接合、および屈曲部材12の第一の開口部17と蓋部材14との接合が、SiO−B−NaO−Al系耐熱ガラス粉末スラリーから作られた接合材を介してなされている。ここで用いたSiO−B−NaO−Al系耐熱ガラス粉末スラリーは、市販の耐熱ガラスであるパイレックス(登録商標)ガラスのバルクを粉砕して粉末状とし、これに少量のエタノールを加えて混合して調製されたものである。
【0051】
(実施例4)
屈曲部材12における第四の開口部15の接合面、第五の開口部16の接合面、第一の開口部17の接合面、発熱体収容部材11の第二の開口部21の接合面、支持部材13の第三の開口部23の接合面、および蓋部材14の接合面に、ネジ溝を形成し、発熱体収容部材11、屈曲部材12、支持部材13、蓋部材14を互いに螺合させ、さらに部材の継ぎ目部分を不定形耐火物またはセメントで覆った以外は、実施例1と同様の方法で実施例4の非鉄金属溶湯用ヒーター1を得た。ここで用いた不定形耐火物、セメントは、市販であるインシュラルM99(登録商標)、インシュラルJDR1150A(登録商標)、アサヒアルミナセメント1号(登録商標)である。
【0052】
(実施例5)
屈曲部材12における第四の開口部15を有する管構造と第五の開口部16を有する管構造との間に、溶湯中への浸漬時に発熱体収容部材11に生じる浮力への対策として、リブ部30を設けた(図1中のリブ部30を参照)以外は、実施例4と同様な方法で実施例5の非鉄金属溶湯用ヒーター1を得た。
【0053】
(2)浸漬試験
実施例1〜5の非鉄金属溶湯用ヒーター1を750℃のアルミ溶湯に30日間、浸漬した。実施例1〜5の非鉄金属溶湯用ヒーター1は、浸漬を開始して30日後でも、各部材間の継ぎ目部分に亀裂が確認されず、さらに、保護部材4の内部(発熱体2やリード線3が収められている空間)への溶湯の漏れが確認されなかった。よって、実施例1〜5の非鉄金属溶湯用ヒーター1については、ヒーターとして良好に使用可能であることが判明した。
【0054】
(3)接合強度試験
実施例2,3の非鉄金属溶湯用ヒーター1から、発熱体収容部材11の第二の開口部21と屈曲部材12の第四の開口部15との継ぎ目部分を中央に含むかたちで幅4mm、厚さ3mm、長さ40mmの試験片を切り出し(実施例2,3の非鉄金属溶湯用ヒーター1からそれぞれ10個の試験片を切り出した)、JIS R 1601に準じた室温での4点曲げ強度試験(結果は表1中の「室温での4点曲げ強度」の欄)、およびJIS R 1604に準じた高温での4点曲げ強度試験(結果は表1中の「800℃での4点曲げ強度」の欄)を行った。表1に示した数値は、10個の試験片から得られたデータの算術平均値である。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、非鉄金属溶湯用ヒーターおよびその製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1:非鉄金属溶湯用ヒーター、2:発熱体、3:リード線、4:保護部材、11:発熱体収容部材(発熱体収容部)、12:屈曲部材(屈曲部)、13:支持部材(支持部)、14:蓋部材、15:第四の開口部、16:第五の開口部、17:第一の開口部、21:第二の開口部、23:第三の開口部、24:(支持部材の)開口端部、30:リブ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、
前記発熱体に接続して前記発熱体を通電させるリード線と、
前記発熱体および前記リード線を内部に収めるとともにセラミックスを主成分とする保護部材と、を備え、
前記保護部材は、
前記発熱体を収める発熱体収容部と、
前記発熱体から引き出された前記リード線を収める支持部と、
前記発熱体収容部と前記支持部とを互いに交わる角度にて繋ぐとともに、前記発熱体収容部からの延長上の部分に、前記発熱体を出し入れ可能に設けられた第一の開口部と該第一の開口部を閉栓する蓋部材とが設けられた屈曲部と、を有する非鉄金属溶湯用ヒーター。
【請求項2】
前記屈曲部の肉厚が前記発熱体収容部の肉厚よりも大きい請求項1に記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【請求項3】
前記蓋部材は、前記第一の開口部に着脱可能に設けられているとともに、
前記第一の開口部から前記発熱体を交換可能な請求項1または2に記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【請求項4】
前記保護部材においては、前記発熱体収容部と前記支持部とが互いに垂直な角度で交わる請求項1〜3のいずれか一項に記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【請求項5】
前記保護部材の材質は、窒化ケイ素、サイアロンからなる群から選ばれる1種を主成分とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【請求項6】
前記保護部材は、複数の部材を連結して形成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【請求項7】
前記複数の部材は接合材を介して連結され、
前記接合材は、(a)窒化珪素、(b)珪素を主成分としてアルミニウム、酸素、窒素を含有するサイアロン、(c)サイアロン系ガラス、(d)酸窒化珪素ガラス、(e)SiO、B、NaO、Alを含有する耐熱ガラス、(f)SiOを主成分とする不定形耐火物、(g)アルミナセメント、(h)燃焼合成により作製されたAlを主成分とする無機材料のうちのいずれか1種あるいは前記(a)〜前記(h)のうちの2種以上の組み合わせからなる請求項6に記載の非鉄金属溶湯用ヒーター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の非鉄金属溶湯用ヒーターを製造するための非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法であって、
前記発熱体を前記発熱体収容部に収める工程と、
前記リード線を前記支持部に収める工程と、
前記屈曲部内または前記第一の開口部外で前記発熱体と前記リード線とを接続し、次いで前記発熱体および前記リード線を前記発熱体収容部内に収めた状態で前記第一の開口部を前記蓋部材で閉栓する工程と、を有する非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法。
【請求項9】
請求項6または7に記載の非鉄金属溶湯用ヒーターを製造するための非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法であって、
前記保護部材が、第二の開口部を有して前記発熱体収容部を構成する発熱体収容部材と、第三の開口部を有して前記支持部を構成する支持部材と、前記第一の開口部、第四の開口部および第五の開口部を有して前記屈曲部を構成する屈曲部材とを備えるとともに、
前記発熱体を前記発熱体収容部材に収める工程と、
前記発熱体を収めた前記発熱体収容部材の前記第二の開口部を前記屈曲部材の第四の開口部とを連結し、さらに、前記支持部材の前記第三の開口部と前記屈曲部材の第五の開口部とを連結して前記保護部材を組み上げる工程と、
前記発熱体を前記屈曲部材の前記第一の開口部まで引き出し、さらに前記支持部材の中に前記リード線を収めて前記リード線を前記屈曲部材の前記第一の開口部まで引き出して、前記発熱体と前記リード線とを接続し、次いで前記発熱体を前記発熱体収容部材の内部に送り込んだ後に前記屈曲部材の前記第一の開口部を前記蓋部材で閉栓する工程と、を有する非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法。
【請求項10】
請求項6または7に記載の非鉄金属溶湯用ヒーターを製造するための非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法であって、
前記保護部材が、第二の開口部を有して前記発熱体収容部を構成する発熱体収容部材と、第三の開口部を有して前記支持部を構成する支持部材と、前記第一の開口部、第四の開口部および第五の開口部を有して前記屈曲部を構成する屈曲部材とを備えるとともに、
前記発熱体収容部材の前記第二の開口部と前記屈曲部材の前記第四の開口部とを連結し、さらに前記支持部材の前記第三の開口部と前記屈曲部材の前記第五の開口部とを連結して前記保護部材を組み上げる工程と、
前記支持部材の中に前記リード線を収めて前記リード線を前記屈曲部材の前記第一の開口部から引き出す工程と、
前記リード線と前記発熱体とを接続し、次いで前記発熱体を前記第一の開口部から前記保護部材の中に入れて前記発熱体収容部材の内部に送り込み、前記第一の開口部を前記蓋部材で閉栓する工程と、を有する非鉄金属溶湯用ヒーターの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−105553(P2013−105553A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247133(P2011−247133)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(510014869)株式会社ヤマト (2)
【Fターム(参考)】