説明

非DNA塩基含有ポリヌクレオチド組成物、および免疫応答の調節のためのそれらの使用

本発明は、医薬として許容し得るビヒクル、特に1以上のアジュバントビヒクルおよび1以上の抗原との組み合わせで、1以上の非DNAを含む長さ3〜30塩基の合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供し、塩基は、ネブラリン、ヒポキサンチン、またはウラシル、またはネブラリン、ヒポキサンチン、およびウラシル塩基の組み合わせである。本発明は、インビトロまたはインビボでの免疫応答を誘導または調節するための、特に抗原提示細胞を活性化させるための方法におけるこれらの組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド、医薬として許容し得るビヒクル、お
よび任意に1以上の抗原を含む組成物、ならびに免疫応答を調節するための該組成物の使
用に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物の危険および細胞ストレスの適切な認識は、局所的な防御機序の活性化ならびに分化した免疫細胞の動員および活性化をもたらすため、宿主の生存に重要である。したがって、抗原提示細胞(APC)、および自然免疫系の他の細胞は、いわゆる「パターン認識
受容体」(PRR)を用いて、そうするための種々の手段を進化させてきた。PRRは、広く微生物によって共有されるが、宿主において見出されるものとは異なる病原体(細菌、マイコバクテリア、ウイルス)の細胞壁構成要素または核酸など、プロセシングされていない抗原における分子パターン(病原体関連分子パターンまたはPAMP)を認識する。APCは、CD14、マンノース受容体、DEC205、およびトール様受容体(TLR)のファミリーをはじめとするPRRを発現し得る。APCは、骨髄様および形質細胞様の樹状細胞、単球、マクロファージ、ランゲルハンス島の細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、クッパー細胞、小膠細胞、シュワン細胞、および内皮細胞などだが、必ずしもこれらに限定されないプロフェッショナルAPC、ならびに上皮細胞、線維芽細胞、メラニン形成細胞、神経系細胞、平滑筋細胞、筋細
胞、肝細胞、星状細胞、およびケラチノサイトなどだが、これらに限定されない非プロフェッショナルAPCを含む。従来技術において、典型的に微生物起源の物質またはその修飾
物は、しばしば非特異的な様式で免疫応答を刺激するために用いられてきた。例えば、フロイントアジュバントにおけるマイコバクテリア、LPS、モノホスホリルリピドA(より毒性の低いLPS誘導体)とトレハロースジミコラート(マイコバクテリア由来のミコール酸
種)の組み合わせ、ウイルス二本鎖RNAの合成類似体であるポリ(I:C)、ならびにCpGジヌクレオチドモチーフを含むパリンドロームDNA配列が含まれる。いくつかの近年の刊行物
は、メチル化されていないCpGモチーフ(CpG)を含む合成免疫刺激性ポリヌクレオチドの使用を開示する。2つの合成イミダゾキノリン化合物(レシキモドおよびイミキモド)も
免疫刺激活性を有する。トール様受容体(TLR)は、免疫アジュバントとして機能するこ
とのできるいくつかの天然および合成分子と相互作用することが公知である。これらの分子の例は、ポリ(I:C)ポリヌクレオチド、リポ多糖、およびCpG含有ポリヌクレオチドで
ある。先に説明されるように、所与の化合物によって用いられる特異的TLRが同定された
(すなわち、TLR9は、CpGを認識する)。
【0003】
合成ポリヌクレオチドは、多価陰イオン性配列である。合成ポリヌクレオチドは、核酸に、特異的細胞タンパク質に、特異的核タンパク質に、または特異的細胞表面受容体に選択的に結合することが報告されている。少なくとも1つのメチル化されていないCpGジヌクレオチドを含む8〜100の塩基の合成ホスホロチオアートポリヌクレオチドは、免疫系を刺激することが示されている(米国特許第6,239,116号)。特に、CpGモチーフ(5'プリン-
プリン-シトシン-グアニン-ピリミジン-ピリミジン3')を含む合成ホスホロチオアートポリヌクレオチドは、IL-6、IL-12、IFN-ガンマ、TNF-アルファ、およびGM-CSFなどのサイ
トカインの合成、ナチュラルキラー細胞の溶解活性、ならびにBリンパ球の増殖を刺激す
ることが発見されている(Krieg, Annual Rev. Immunol. 2002, 20:709-760)。CpGモチ
ーフを含む合成ホスホロチオアートポリヌクレオチド(塩基の数は、14よりも大きい)は、樹状細胞の成熟および活性化、細胞の大きさおよび粒状度の増大、IL-12の合成、エン
ドサイトーシスの亢進、ならびに細胞表面分子MHC II、CD40、CD80、CD83、およびCD86のアップレギュレーションを惹起することが報告されている(Sparwasser et al. Eur. J.
Immunol. 1998, 28:2045-205、Hartman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96:9305-9310、Askew et al. J. Immunol. 2000, 165:6889-6895)。CpGモチーフを含む合
成ホスホジエステルポリヌクレオチド(塩基の数は30である)は、IFNの合成を刺激し、DC前駆細胞におけるCD80およびCD86の発現をアップレギュレートすることが報告されてい
る(Kadowaski et al. J. Immunol. 2001 166:2291-2295)。
【0004】
本発明者らは、(GxTy)n、(TyGx)n、a(GxTy)n、a(TyGx)n、(GxTy)nb、(TyGx)nb、a(GxTy)nb、およびa(TyGx)nb(ここで、xおよびyは1〜7の整数であり、nは1〜12の整数であり、かつbは1以上のA、C、G、またはTである)からなる群から選択される2〜20の塩基の3′-OH, 5′-OH合成ポリヌクレオチド(ここで、該ポリヌクレオチドは、2〜20塩基である)を含む組成物をすでに説明した。これらの組成物は、細胞周期停止の誘導、増殖の阻害、カスパーゼ活性化の誘導、アポトーシスの誘導、ならびに単球および末梢血単核細胞によるサイトカイン合成の刺激からなる群から選択される応答を誘導する(PCT公開第WO 01/44465号参照)。
【0005】
したがって、不適切なサイトカイン誘導の不在下で、より効率的な免疫原性応答のためのAPCの成熟を誘導する化合物および関連方法が必要である。このような化合物は、特に
、1つの抗原または複数の抗原が不足する状況下、ならびにワクチンの効力に有効性と保
護性との両方が必要とされる状況下で、抗原に対する効率的かつ適切な免疫応答を誘発することができるべきである。
【0006】
特に必要とされるものは、新たな非DNA塩基含有ポリヌクレオチド組成物、および該組
成物を用いて、有効な免疫アジュバント応答が達成されるよう、APCを含む免疫細胞の機
能を調節するための方法である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、1以上の非DNA塩基および医薬として許容し得るビヒクル、例えばアジュバントを含む、長さ3〜30塩基の合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物を提供することによって、前記必要性を満たす。このようなポリヌクレオチドは、本明細書で非DNA
塩基含有ポリヌクレオチドと呼ばれる。一実施態様において、本発明は、1以上の非DNA塩基を含む、長さ3〜20塩基の合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを提供する。別の実施態様において、本発明は、1以上の非DNA塩基を含む、長さ3〜9塩基の合成非DNA塩基含有ポ
リヌクレオチドを提供する。さらに、本発明は、1以上のネブラリン塩基、1以上のヒポキサンチン塩基、もしくは1以上のウラシル塩基、またはネブラリン、ヒポキサンチン、お
よびウラシル塩基の組み合わせを含む、長さ3〜30、3〜20、または3〜9塩基の合成非DNA
塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。これらのポリヌクレオチドは任意に、1以上のグアニン塩基、もしくは1以上のチミン塩基、もしくは1以上のアデニン塩基、
もしくは1以上のシトシン塩基、またはこれらの組み合わせをさらに含む。
【0008】
本発明は、1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクル、例えばアジュバントを、1以上の抗原と任意に組み合わされて含む新規の組成物を提
供する。これらの組成物は、免疫応答をインビトロまたはインビボで調節するのに有用である。このような調節は、免疫応答の亢進または低下であり得る。本発明の組成物のいくつかは、医薬として許容し得るビヒクル、例えば1以上のアジュバントと1以上の非DNA塩
基含有ポリヌクレオチドとの組み合わせとしてのワクチン製剤において、より低用量の抗原を用いることができるようにし、1以上の抗原はより低用量の抗原に対する効果的な免
疫応答を生じる。
【0009】
本発明は、免疫応答を誘導するために、インビトロまたはインビボで組成物を投与することによってこれらの組成物を使用するための方法も提供する。さらに、本発明の組成物
は、1以上の治療薬とともに投与されてもよい。本発明の組成物のこのような投与は、医
学または獣医学の分野の当業者に公知の1以上の治療薬の投与の前、途中、または後に生
じ得る。医学または獣医学の分野の当業者に公知でありかつ疾患を治療するために採用される任意の治療薬を、これらの組成物との組み合わせで用いてもよい。
【0010】
一実施態様において、本発明は、長さ3〜30、3〜20、または3〜9塩基の合成5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。さらなる実施態様において
、これらの非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、ホスホジエステルまたは他の好適な修飾
物であるリン酸骨格を含む。本出願を通じて、用語非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、5'-OHまたは3'-OHポリヌクレオチドを意味すると理解される。
【0011】
さらなる実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの5'-OHまたは3'-OH末端
の修飾は、細胞内または細胞外分解などからの保護を与えるようになされ得る。一例において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの5'-OHまたは3'-OH末端には、トリエチレングリ
コール(TEG)-コレステリルが含まれ得るが、これに限定されない。片方のまたは両方の末端に付加され得るアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、またはチミン(T)を含むがこれらに限定されないこのような塩基を含む追加的なヌクレオチドの使用は、該分子の本質的な活性、すなわちその免疫アジュバント活性が、実質的に影響を受けないようになされ得る。片方のまたは両方の末端に付加されることのできるネブラリン(Neb)
、ヒポキサンチン(I)、およびウラシル(U)から選択される追加的な非DNA塩基を含む
追加的なヌクレオチドの使用は、該分子の本質的な活性、すなわちその免疫アジュバント活性が実質的に影響を受けないようになされ得る。
【0012】
一実施態様において、ポリヌクレオチドのリン酸骨格は、ホスホジエステル骨格である。別の実施態様において、ポリヌクレオチドのリン酸骨格は、修飾されたホスホロチオアート骨格である。他の実施態様において、ポリヌクレオチドのリン酸骨格は、アミノ骨格であるかまたは、リボースもしくは2'-デオキシリボース部分に対する修飾を含む。好ま
しくは、5'-OH、3'-OHポリヌクレオチドは、合成でありかつ、ネブラリン(Neb)、ヒポ
キサンチン(I)、またはウラシル(U)などだが、これらに限定されない非DNA塩基を含
む。ヒポキサンチン塩基が、ヌクレオチド(例えば、イノシン一リン酸(IMP))に存在
する場合、イノシンと呼ばれることは当該技術分野で周知であり、(I)として本明細書
で定義される。一実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、NebGGTGNeb(
配列番号1)、UUGTUU(配列番号2)、IIGTII(配列番号3)、GNebG(配列番号4)、GGGTGGNebNebNeb(配列番号5)、GIG(配列番号6)、GGGTGGIII(配列番号7)、GUG(配列番号8)、およびGGGTGGUUU(配列番号9)からなる群から選択される。非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、インビトロで、またはヒトもしくは動物にインビボで投与される場合、免疫応答を生じる。免疫応答は、全身的または局所的であり得る。一実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドが投与されるヒトまたは動物におい
て、APCを刺激する。また、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、APCの刺激のためにイン
ビトロで直接APCに投与されてもよい。刺激されたAPCは次に、APCが由来したヒトまたは
動物に投与され、該ヒトまたは動物における免疫応答を活性化させてもよい。
【0013】
APCに投与される場合、本発明の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、例えば、APCによ
るIL-1β、IL-6、IL-12、MCP-1、ランテス、ならびに他のサイトカインおよび/またはケモカインおよび/または造血性増殖因子の産生の増加からなる群から選択される応答を誘導することによって、APCを刺激し得る。
【0014】
本発明はさらに、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒク
ルを含む組成物を、動物またはヒトに、該動物またはヒトにおける免疫応答の刺激、より好ましくは、動物またはヒトにおける1以上のAPCの刺激を誘導するのに有効な量で投与す
る方法を提供する。一実施態様において、好ましいAPCは、樹状細胞などのプロフェッシ
ョナルAPCである。別の実施態様において、1以上の抗原は、非DNA塩基含有ポリヌクレオ
チドおよび医薬として許容し得るビヒクルを含む組成物に加えて、動物またはヒトに投与され、結果的に、動物またはヒトにおける抗原特異的免疫応答を生じる。好ましい抗原は、肝炎表面抗原、不活化型もしくは弱毒化型ビリオンの形態のH1N1抗原、未処置のマイコバクテリアの形態のウシ型結核菌カルメットゲラン桿菌株(BCG)抗原、または1以上の抗原性決定因子、寄生虫抗原、植物抗原、もしくは自己抗原を含むサブユニット抗原などだが、これらに限定されない、腫瘍抗原、細菌抗原、真菌抗原、ウイルス抗原、または自己抗原である。いくつかの実施態様において、1以上のAPCの刺激は、動物またはヒトにおける全身性免疫応答を結果として生じる。他の実施態様において、免疫応答は局所的である。本発明には、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび、免疫調節剤であり得る医薬とし
て許容し得るビヒクルを含む組成物またはモダリティを動物またはヒトにおける免疫応答の刺激を誘導するのに有効な量で投与する方法も含まれる。本発明には、医薬として許容し得るビヒクルに、1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび量を低下させた1以上
の抗原を、任意に1以上のアジュバントとともに含まれる組成物を投与し、それによって
有効な免疫応答が得られるようにすることにより、抗原が供給不足であり、調製するのが困難かつ高価であり得る場合の抗原節約戦略を最適化する方法も含まれる。
【0015】
本発明は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルを含
む組成物を、先に引用されるように1以上の抗原を含むAPCに、より好ましくはDCにインビトロで投与することを含む方法も提供し、このような投与は、APCの刺激を結果的に生じ
る。該方法にはさらに、刺激されたAPCを、APCの由来する動物またはヒトに、該動物またはヒトにおける免疫応答の刺激のために導入することを含み得る。非DNA塩基含有ポリヌ
クレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルを含み1以上の抗原を任意に含むこれら
の組成物が、免疫応答を刺激する予期せぬかつ驚くべき能力は、動物およびヒトにとって重要な利点を提供する。
【0016】
本明細書に説明される方法は、癌などの疾患だが、これに限定されない疾患を治療するために、アレルギーを治療するために、種々の病原体に対して動物またはヒトにワクチン接種するために、自己免疫疾患を治療するために、および移植拒絶を予防するために用いられ得る。したがって、本発明は、感染性疾患、癌、自己免疫疾患を含むが、これらに限定されない種々の疾患の予防および治療、ならびに炭疽ウイルス、ボツリヌス中毒、ペスト、野兎病、痘瘡、およびウイルス性出血熱を含むが、これらに限定されないウイルス、細菌、および毒素などの生物体の計画的な伝播による生物テロリズム行為の予防および治療に有用である。いくつかの実施態様において、本発明は、IL-12合成を亢進することに
よって、自己免疫疾患の治療および移植拒絶の予防を達成する。IL-12の合成は、自己免
疫疾患、移植拒絶、および移植片対宿主疾患(GVHD)、およびアレルギーを阻害することができる(例えば、Bagenstose et al., J. Immunol. 1998;160:1612 (Downregulation of autoantibody production in autoimmunity by IL-12)、Vogel et al., Eur. J. Immunol., 1996;26:219 (Inhibition of B1 lymphocyte, a B lymphocyte subset implicated in the development of autoimmunity, by IL-12)、Dey et al., Blood, 1998;91:3315 (Inhibition of graft-versus-host disease (GVHD) by IL-12)、Smits et al., Int. Arch Allergy Immunol., 2001;126-102 (Modification of the pathogenic Th2 immune profile toward a Th1 profile by IL-12 in the treatment of allergies)参照)。他の実施態様において、本発明は、ワクチン接種を通じて自己免疫疾患の治療および移植拒絶の予防を達成する(例えば、Zhang et al., J. Mol. Med. 1996;74:653 (Vaccination against autoreactive B or T lymphocytes responsible for autoreactive diseases)、Vignes
et al., Eur. J. Immunol., 2000;30:2460 (Vaccination against alloreactive T lymphocytes responsible for graft rejection)、Liu et al., J. Exp. Med., 2002;196:1013 (Induction of immune tolerance by delivery of dying cells to activated DC cell
s in situ)参照)。
【0017】
したがって、一実施態様において、本発明は、1以上のネブラリン塩基、1以上のヒポキサンチン塩基、もしくは1以上のウラシル塩基、またはネブラリン、ヒポキサンチン、お
よびウラシル塩基の組み合わせを、医薬として許容し得るビヒクルとの組み合わせで含む、長さ3〜30、3〜20、または3〜9塩基の合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを提供する
。これらの配列は任意にさらに、1以上のグアニン塩基もしくは1以上のチミン塩基、または1以上のアデニン塩基、または1以上のシトシン塩基、またはこれらの組み合わせを含む。好ましくは、説明された組み合わせにおけるネブラリン、ヒポキサンチン、ウラシル、グアニン、チミン、アデニン、およびシトシン塩基から構成されるポリヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格を含有する。
【0018】
別の実施態様において、本発明は、医薬として許容し得るビヒクルにおいて、1以上の
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを、任意に1以上の抗原および1以上のアジュバントとの
組み合わせで含む組成物、ならびにヒトを含む動物における疾患を治療または予防するのに有効な方法におけるそれらの使用を提供する。
【0019】
別の実施態様において、本発明は、動物またはヒトにワクチン接種するのに有効な組成物および方法を提供する。これらの組成物および方法の利点は、より少量の抗原を採用して、効果的な免疫応答を生じ、かつ保護を提供し得ることである。
【0020】
別の実施態様において、本発明は、従来のアジュバントとともに使用される場合に最適下限であると考えられる抗原用量を用いて、動物またはヒトにワクチン接種するのに有効な組成物および方法を提供する。
【0021】
なおも別の実施態様において、本発明は、動物またはヒトにおける疾患を治療または予防するのに有効な組成物および方法を提供する。
【0022】
さらに別の実施態様において、本発明は、動物またはヒトにおける免疫応答を刺激するのに有効な組成物および方法を提供する。
【0023】
別の実施態様において、本発明は、動物またはヒトにおけるAPC、好ましくは、DCの成
熟および/または活性化を誘導するのに有効な組成物および方法を提供する。
【0024】
さらに別の実施態様において、本発明は、刺激されたAPCの動物またはヒトへの自己投
与のための抗原を含有するAPCのインビトロでの刺激を誘導するのに有効な組成物および
方法を提供する。
【0025】
別の実施態様において、本発明は、IL-1β、IL-6、IL-12、MCP-1、ランテス、および他のサイトカイン、ならびに/またはケモカイン、ならびに/または造血性増殖因子の産生をAPCによって高めるのに有効な組成物および方法を提供する。
【0026】
なおも別の実施態様において、本発明は、他の治療薬または免疫調節剤の効果を増強する組成物および方法を提供する。
【0027】
別の実施態様において、本発明は、APCおよび好ましくはDCに及ぼす1以上のサイトカインの効果を増強する組成物および方法を提供する。
【0028】
本発明のこれらの実施態様は、以下の開示された実施態様の詳細な説明、および添付の特許請求の範囲の概観の後で明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一実施態様において、本発明は、1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび、1以
上のアジュバントであり得る医薬として許容し得るビヒクルを含む物質の新たな組成物を提供する。一実施態様において、本発明は、1以上の抗原と任意に組み合わされた、アジ
ュバントであり得る医薬として許容し得るビヒクルにおける1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む物質の新たな組成物を提供する。
【0030】
別の実施態様において、本発明は、1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルもしくは賦形剤を含む組成物の薬剤の調製物における使用を提供する。別の実施態様において、本発明は、1以上のアジュバントであり得る医薬として
許容し得るビヒクルにおける1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを、薬剤の調製において1以上の抗原と任意に組み合わされて含むこれらの組成物の使用を提供する。これら
の薬剤は、1以上の抗原に対する免疫応答を調節するのに有用である。このような調節は
、免疫応答の刺激、または免疫応答における低下であり得る。別の実施態様において、これらの薬剤によって、1以上の抗原のより少量の使用が該1以上の抗原に対する効果的な免疫応答を生じることができ、したがって、より少量の1以上の抗原を採用することができ
る。
【0031】
本発明は、APC刺激性アジュバントとして作用することによって、ワクチン抗原に対す
る免疫学的応答を高めるために有用である。
【0032】
本発明は、APCに作用することによって、免疫学的応答を抑制または低下させるのに有
用である。
【0033】
さらに別の実施態様において、本発明は、1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルもしくは賦形剤を、1以上の抗原と任意に組み合わされ
て含む組成物の投与を含む、インビトロまたはインビボでの免疫応答を刺激するための方法を提供する。
【0034】
用語「抗原提示細胞(APC)」は、本明細書で使用する場合、特異的抗原に応答するよ
うT細胞を刺激する原因となり、それによりT細胞が、Tヘルパー細胞または細胞傷害性T細胞などの機能を有し得る「エフェクター」細胞または「記憶」T細胞へとさらに分化する
、、身体における抗原提示細胞として定義される。APCは、種々のサイトカインおよびケ
モカインも分泌し、それらは、T細胞機能を刺激および指向し、ならびに病原体の即時の
非病原体特異的殺滅を提供するナチュラルキラー細胞などの自然免疫系細胞を含む他の免疫細胞を刺激する。APCには、単球、マクロファージ、上皮細胞、内皮細胞、B細胞、小膠細胞、顆粒球細胞、形質細胞様樹状細胞、および骨髄性または単球性樹状細胞が挙げられるが、これらに限定されない。用語「樹状細胞」および「DC」には、間質性DC、ランゲルハンス細胞由来のDC、形質細胞様DC、および上記の細胞の任意の前駆細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明は、合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物および該組成物を使用す
る方法を提供する。長さ3〜9、3〜20、または3〜30塩基のこれらの合成ポリヌクレオチドは、1以上のネブラリン塩基、1以上のヒポキサンチン塩基、もしくは1以上のウラシル塩
基を含む1以上の非DNA塩基、またはネブラリン、ヒポキサンチン、およびウラシル塩基の組み合わせを含む。好ましい実施態様において、新規の合成ポリヌクレオチドは、長さ3
〜9塩基である。これらの配列は任意に、1以上のアデニン塩基、シトシン塩基、グアニン塩基、もしくはチミン塩基、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。好ましくは、説明された組み合わせにおけるネブラリン、ヒポキサンチン、ウラシル、グアニン、
チミン、アデニン、およびシトシン塩基から構成されるポリヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格を含有する。1以上のこれらの配列は、医薬として許容し得るビヒクルなどの
許容し得るビヒクルとともに組み合わされて、組成物を形成してもよい。さらに、これらの組成物は、1以上の抗原とともに、および任意に医薬として許容し得るビヒクルであり
得る1以上のアジュバントとともに組み合わされてもよい。また、これらの組成物は、所
望の治療応答を生じる上で有用となるべく、当業者に公知の1以上の治療薬と組み合わさ
れてもよい。
【0036】
これらの組成物は、免疫応答を誘導する上で有用である。一実施態様において、非DNA
塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルを、1以上の抗原と任意
に組み合わされて含む組成物は、動物またはヒトにおける免疫応答を誘導するのに有効な量で、該動物またはヒトに投与される。一実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレ
オチドおよび医薬として許容し得るビヒクルが、1以上の抗原、および1以上のアジュバントと任意に組み合わされて含まれる組成物は、動物またはヒトにおける免疫応答を誘導するのに有効な量で、該動物またはヒトに投与される。
【0037】
以下の表記法を用いて、本発明のポリヌクレオチド配列における塩基の配列を説明する:A=アデニン、C=シトシン、G=グアニン、I=ヒポキサンチン、Neb=ネブラリン、T=チミン、およびU=ウラシル。本明細書で使用する場合、非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列は、塩基I、Neb、もしくはUのうちの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせを含み、さらに、塩基A、C、G、もしくはTのうちの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わ
せを任意に含有する合成ポリヌクレオチドを指す。非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列
は、長さ3〜30、3〜30、または3〜9塩基である。
【0038】
用語「a」または「an」は、本明細書で使用する場合、1または1より多くであるとして
定義される。用語「を含む」および/または「を有する」は、本明細書で使用する場合、を含むとして定義される(すなわち、オープンランゲージ(open language))。
【0039】
さらなる実施態様において、本発明は、3〜9、3〜20、または3〜30塩基を含む合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供し、塩基のうちの少なくとも1は、非DNA塩基である。別の実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、少なくとも2の非DNA塩基を含有する。本発明は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として
許容し得るビヒクルを含む組成物を動物またはヒトに、該動物またはヒトにおける1以上
の抗原提示細胞(APC)または好ましくは1以上のDCを刺激するのに有効な量で投与することを含む方法も提供する。好ましい実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチド
は、5'-OH、3'-OHポリヌクレオチドである。動物またはヒトにおける1以上のAPCの刺激は、全身性免疫応答または局所免疫応答を結果として生じ得る。本発明は、非DNA塩基含有
ポリヌクレオチドを含む組成物を、抗原を含有するAPCに、APCを刺激するのに有効な量でインビトロで投与することを含む方法も提供する。次に、これらのAPCを自家様式で動物
またはヒトに、医薬として許容し得るビヒクルとともに、免疫応答の刺激のために投与してもよい。好ましい実施態様において、投与された非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、5'-OH、3'-OHポリヌクレオチドである。APCの刺激を誘導する非DNA塩基含有合成ホスホジ
エステルおよびホスホロチオアートポリヌクレオチドの予期せぬかつ驚くべき能力は、動物およびヒトに重要な利点を提供する。
【0040】
本出願を通じて、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、5'-OH、3'-OHポリヌクレオチド
を意味すると理解される。本明細書で使用する場合、用語「5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有
ポリヌクレオチド」は、その5'および3'末端の両方においてヒドロキシル部分を有し、かつ1以上の非DNA塩基を含む、ポリヌクレオチドを指す。より詳しくは、本発明の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドの5'末端における糖の5'炭
素におけるヒドロキシル部分を含み、かつ該ポリヌクレオチドの3'末端における糖の3'炭素におけるヒドロキシル部分を含む。別段の記載がない限り、本明細書で説明されるポリヌクレオチド配列は、左から右へと5'末端から3'末端への向きで示される。
【0041】
しかしながら、当業者が、TEG-コレステリルなどだが、これに限定されない付加を有する5'-OHまたは3'-OH末端の1つまたは両方を修飾することができることは理解され、但し
、該末端に対する修飾が、該ポリヌクレオチドの本質的な免疫アジュバント活性に実質的に影響を及ぼさないという条件付きである。1以上の追加的なA、T、C、またはG塩基を、5'-OH末端または3'-OH末端のいずれかに付加してもよく、但し、該末端に対する修飾が、
該ポリヌクレオチドの本質的な免疫アジュバント活性に実質的に影響を及ぼさないという条件付きである。ネブラリン、ヒポキサンチン、およびウラシルから選択される1以上の
追加的な非DNA塩基を含有する1以上の追加的なヌクレオチドを片方または両方の末端に付加して、それにより該分子の本質的な活性、すなわちその免疫アジュバント活性が材料的に影響を受けないようにすることができる。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、互変可能である。本発明の一実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、
長さ3〜9ヌクレオチド塩基である。本発明の別の実施態様において、非DNA塩基含有ポリ
ヌクレオチドは、長さ3〜20ヌクレオチド塩基である。本発明のさらに別の実施態様にお
いて、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、長さ3〜30ヌクレオチド塩基である。好ましくは、5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、該ヌクレオチド塩基の少なくとも1つが、ウラシル(U)、ネブラリン(Neb)、またはヒポキサンチン(I)などだが、これ
らに限定されない非DNA塩基であるヌクレオチド塩基を含む。いくつかの実施態様におい
て、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、NebGGTGNeb(配列番号1)、UUGTUU(配列番号2
)、IIGTII(配列番号3)からなる群から選択される塩基配列を具体的に含み得るかまた
は該塩基配列からなり得る。
【0043】
別の実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドがネブラリンを含む該ポリヌ
クレオチド配列は、以下の任意の配列を含むことができる:NebTNeb(配列番号10)、GNebG(配列番号4)、NebNebGNebNebNeb(配列番号11)、NebNebNebNebNebNeb(配列番号12
)、NebNebNebTNebNeb(配列番号13)、GGGNebGG(配列番号14)、GGGTNebG(配列番号15)、GGNebNebGG(配列番号16)、GGNebTGG(配列番号17)、NebGGTGG(配列番号18)、NebGGTGNeb(配列番号1)、GGGTGGNeb(配列番号19)、およびNebGGGTGG(配列番号20)。
【0044】
別の実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドがヒポキサンチンを含む該ポ
リヌクレオチド配列は、以下の任意の配列を含むことができる:GGITGG(配列番号21)、GGGIGG(配列番号22)、IIGTII(配列番号3)、IGGGTGG(配列番号23)、GGGTGGI(配列
番号24)、IGGGTGGI(配列番号25)、GGGTGGIII(配列番号7)、およびGIG(配列番号6)。
【0045】
別の実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドはウラシルを含み、該ヌクレ
オシド配列は、次の配列のうちいずれを含んでもよい:GGUTGG(配列番号26)、GGGUGG(配列番号27)UUGTUU(配列番号2)、UGGGTGG(配列番号28)、GGGTGGU(配列番号29)、UGGGTGGU(配列番号30)、GGGTGGUUU(配列番号9)、およびGUG(配列番号8)。
【0046】
一実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、APC、DC、ヒト、または動物に、核酸ベースのベクターにおいて投与される。
【0047】
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格または他の好適な修飾を含
有してもよい。
【0048】
また、本明細書で使用する場合、用語「刺激する」および「刺激する」は、用語の使用の文脈に応じて、APCの活性化もしくは成熟を、または免疫応答の活性化もしくは亢進を
指す。
【0049】
本明細書で説明される非DNA塩基含有ポリヌクレオチドが、DCを刺激することができる
だけでなく、単球、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、クッパー細胞、小膠細胞、シュワン細胞、および内皮細胞などだが、これらに限定されないプロフェッショナルAPC、ならびに上皮細胞、線維芽細胞、メラニン形成細胞、神経系細胞
、平滑筋細胞、筋細胞、肝細胞、星状細胞、およびケラチノサイトなどだが、これらに限定されない非プロフェッショナルAPCを含む他のAPCを刺激することもできる。したがって、本発明には、APCの活性化のための組成物および方法が含まれる。
【0050】
免疫応答を指す場合、用語「刺激する」は、別段の記載がない限り、免疫系の活性化を一般的に指すかまたは免疫系の構成成分の抗原非特異的な様式における活性化を指す。個体における免疫応答の刺激は、細胞増殖、クローン増殖、新たなタンパク質の合成、エフェクター細胞への分化、記憶細胞への分化、ある種の抗体のレベルもしくは量の増加、抗体クラスの切り替え、抗体産生Bリンパ球の体細胞高頻度突然変異、ある種の免疫細胞の
レベルもしくは量の増加、特定の位置における免疫細胞の動員(移動および遊走)、個体におけるサイトカインのレベルもしくは量の増加、個体におけるケモカインのレベルもしくは量の増加、増大した抗原提示、増大したエンドサイト―シス、同時刺激分子(アクセサリー分子)の増加もしくは収集、接着分子の増加もしくは収集、サイトカイン受容体の増加もしくは収集、ケモカイン受容体の増加もしくは収集、増大した細胞媒介細胞傷害性、形態学的変化、免疫細胞記憶の確立、活性酸素中間体のレベルもしくは量の増加、一酸化窒素のレベルもしくは量の増加、神経内分泌分子のレベルもしくは量の増加(例えば、ホルモン、神経伝達物質、等)、および免疫耐性もしくは抑制の破壊によって証明され得るが、これらに限定されない。免疫細胞には、B細胞、CD4+およびCD8+細胞を含むT細胞、ならびにNK細胞などのリンパ球、単核食細胞、好中球、好酸球、および好塩基球などの顆粒球、本明細書で説明されるような樹状細胞、ならびに上記の細胞の任意の前駆細胞が挙げられるが、これらに限定されない。抗体の種類には、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、およ
びIgYが含まれる。IgG抗体はさらに、異なるイソ型へと分類することができる。ヒトにおいて、これらは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。マウスにおいて、これらはIgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3である。抗ウイルス免疫応答は、特異的IgG抗体イソ型応答
と関連していることが公知である。マウスにおいて、これらは、IgG2aおよびIgG2bイソ型であることが当業者に公知である。ウイルスワクチンによるこのクラスの抗体の誘導は、当業者によって、ウイルスワクチンの効能および潜在能力の尺度であると考えられている。
【0051】
一実施態様において、免疫応答は、全身性免疫応答である。用語「全身性免疫応答」は、本明細書において、身体の特定の領域に制限されない免疫応答を指す。全身性免疫応答の一例は、抗原および免疫刺激性分子の個体への投与後の個体における循環器系またはリンパ系において循環する抗体のレベルの上昇である。別の例は、免疫刺激性分子の個体への投与後の個体における循環器系またはリンパ系におけるサイトカインおよび/またはケモカインのレベルの上昇である。別の例は、血液もしくはリンパの循環における、または脾臓、リンパ節、もしくは肝臓などの免疫系臓器における感受性を増加させる抗原による攻撃に応答することのできるT細胞、B細胞、または血漿細胞などの増感した免疫エフェクター細胞の存在である。他の実施態様において、免疫応答は、局所免疫応答である。用語「局所免疫応答」は、主として、身体の特定の領域に制限されるが、必ずしも全体的にではない免疫応答を指す。局所免疫応答は、局所化した膨潤もしくは発赤、および/または免疫細胞の身体の特定領域への動員(移動および遊走)によって証明され得る。例えば、
粘膜免疫応答は、本明細書に説明される抗原および/または5'-OH 3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列などの免疫刺激性分子の粘膜投与後に生じ得る。粘膜応答には、ある種の抗体のレベルもしくは量の増加、IgA抗体のレベルもしくは量の増加、ガンマ/デル
タ陽性Tリンパ球の活性化、局所免疫耐性の誘導、および全身性免疫耐性の誘導が挙げら
れ得るが、これらに限定されない。
【0052】
本発明のいくつかの実施態様において、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物
は、疾患の治療または予防のために個体(すなわち、動物またはヒト)に投与される。本明細書で使用する場合、用語「疾患」は、身体の健康が損なわれる容態を指し、癌、ウイルス、細菌、もしくは寄生虫を含む病原体による感染、アレルギー、自己免疫疾患、および移植された臓器に対する自己免疫応答を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、該疾患は、セザリー症候群(患者は、循環しているDCにおいて顕著な欠陥を有する)(Wysocka et al., Blood 2002, 100:3287)、ダウン症候群(患者は、樹状系萎縮を有する)(Takashima et al., J. Intellect. Disabil. Res. 1994, 38:265)、DCの不適切な活性化を包含する自己免疫疾患(例えば、DCによる自己抗原の長期の提示)(Erikson et al., J. Exp. Med. 2003, 197:323およびLudewig et al., Curr. Opin. Immunol. 2001, 13:657)、脊髄損傷(患者は、樹状系萎縮を有する)(Iversen et al., Blood 2000, 96:2081)、および、グレーブズ病(甲状腺樹状細胞は、該疾患に関係する)(Quadbeck et al., Scand. J. Immunol. 2002, 55:612)を含むがこれらに限定されないDC機能不全と関連する。用語「治療」は、疾患症状の緩和または低下を指し、該疾患の治癒を必要としない。また、本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、免疫応答を誘導するのに有効な非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの量を指す。非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの治療効果の有効性は、塩基、糖、若しくはリン酸骨格を化学的に修飾して、生物学的環境における安定性を増大させること、オリゴヌクレオチドを化学的に補充して、免疫系細胞との相互作用を高めること、または適切な配列を含有する細菌プラスミドを用いて配列を生物工学的に増幅させ、配列のインビボでの利用可能性を増大させること、該配列を生物学的もしくは化学的担体と複合体形成すること、または細胞種指定のリガンドもしくは抗体に該配列を共役させることを含むがこれらに限定されない方法によって増大し得る。用語「有効量」は、本明細書で使用する場合、二次的免疫不全を治療する分野で公知のような考慮によって決定される量を意味し、改良された生存率、より迅速な快復、症状の改良または除去、感染後合併症の減少、ならびに適宜、抗体力価または感染薬に対する増大した力価、腫瘍質量の減少、および当業者に公知の他の測定項目を含むがこれらに限定されない改良を呈するなど、治療される個体における測定可能な緩和を提供することが有効でなければならない。
【0053】
用語「抗原」は、本明細書で使用する場合、抗体、T細胞受容体、またはパターン認識
受容体(PRR)によって特異的に結合され、それにより免疫応答を誘導することのできる
任意の材料として定義される。抗原の種類には、ウイルス、細菌、腫瘍、および自己抗原が含まれるが、これらに限定されない。したがって、本発明に従って調製された樹状細胞は、感染性疾患、癌、自己免疫疾患、ならびに炭疽、ボツリヌス中毒、ペスト、野兎病、痘瘡、およびウイルス性出血熱を含むが、これらに限定されないウイルス、細菌、および毒素などの生物体の計画的な伝播によるものを含む種々の疾患の予防および治療に有用である。
【0054】
1以上の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチド、医薬として許容し得るビヒクル、および任意に1以上の抗原を含む組成物が、疾患の治療的処置などだが、これらに限定
されない用途で抗体産生を刺激してモノクローナルおよびポリクローナル抗体を産生するため、または診断目的で撮像もしくは当業者に公知のその他の用途のために、投与され得ることは理解されるべきである。
【0055】
1以上の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチド、医薬として許容し得るビヒクル、および任意に1以上の抗原を含む組成物が、アレルゲンに対する抗体応答を低下させる
手段として、アレルゲンに対する脱感作の手段として、または橋本病、全身性エリテマトーデス、および反応性関節炎などだが、これらに限定されない疾患における自己抗体応答を低下させる手段として投与されてもよいことは理解されるべきである。
【0056】
1以上の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物が、医薬として許容し得るビヒクルにおいて、インビトロでAPCに単独で、または他の免疫調節剤、1以上の抗原、もしくは腫瘍抗原をはじめとする抗原を含有するAPCに影響を及ぼす1以上のアジュバントとの組み合わせで、免疫応答の刺激のために、動物またはヒトに自家様式で再注入されるよう設計されたAPCの刺激を誘導するのに有効な量で投与されてもよいことは理解さ
れるべきである。免疫調節剤には、以下が含まれるが、これらに限定されない:水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、ポリマー、ブロックコポリマーを含むポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのコポリマー、ポリマーP1005、フロイント完全アジュバント(動物用)、フロイント不完全アジュバント、ソルビタンモノオレアート、スクアレン、CRL-8300アジュバント、QS21、サポニン、ISCOM、ム
ラミルジペプチド、グルコサミニルムラミルジペプチド、トレハロース、マイコバクテリア抽出物を含む細菌抽出物、マイコバクテリア全細胞を含む細菌全細胞、マイコバクテリア細胞壁-DNA複合体、マイコバクテリア細胞壁骨格、解毒した内毒素、膜脂質、原核生物から単離されたDNA、CpG合成ポリヌクレオチド、修飾されたCpG合成ポリヌクレオチドも
しくは非CpG含有ポリヌクレオチド(例えば、MIMP)、アプタマー、プラスミド免疫刺激
性分子、ポリ(I:C)分子、サイトカイン、ケモカイン、キトサンおよび誘導体、ヒアルロン酸および誘導体、コレラ毒素、百日咳毒素、ならびにキーホールリンペットヘモシアニン、またはこれらの組み合わせ。1以上の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチド
もしくは5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドに加え、免疫調節剤を含む組成物
は、単一の治療においてまたは複数の治療において、任意に異なる濃度で、APCの刺激に
適切な時間にわたってAPCに添加することができる。1以上の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有
ポリヌクレオチドを含む組成物は、免疫調節剤の投与の前に、同時に、または後に投与されうる。その上、1以上の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物は、抗原(複数可)の投与の前、同時に、または後に添加されうる。
【0057】
本発明には、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルお
よび抗原を含む組成物を動物またはヒトにワクチンとして直接投与する方法も含まれ、このような投与は、動物またはヒトにおける免疫応答、より好ましくは抗原特異的免疫応答を結果的に生じる。抗原は、1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルを含む組成物の投与の前、同時に、または後に動物またはヒトに投与されてもよい。好ましい実施態様において、抗原は、1以上の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルを含む組成物と同時に投与される。
【0058】
本発明には、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルお
よびAPC内に含有されない抗原を含む組成物を動物またはヒトに投与する方法も含まれ、
抗原の量は有意に低下し、このような投与は、動物またはヒトにおける有効な免疫応答を、より好ましくは、抗原特異的免疫応答を結果的に生じる。抗原は、非DNA塩基含有ポリ
ヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルを含む組成物の投与の前、同時に、または後に動物またはヒトに投与されてもよい。好ましい実施態様において、抗原は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物と同時に投与される。一実施態様において、抗
原は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルを含む組成
物と組み合わせられ、動物またはヒトに投与されてもよい。
【0059】
本明細書で説明される抗原は、任意の特定の抗原または抗原の種類に限定されない。実
際、本発明の詳細な説明および実施例を読んだ後に当業者は、詳細な説明、実施例、および特許請求の範囲において定義されるように、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明において説明されるもの以外の抗原を用いる本発明のポリヌクレオチド組成物を用いることに至り得るであろう。任意の抗原または2以上の抗原が、組成物における本発明
の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび1以上の医薬として許容し得るビヒクルと組み合わせるために当業者によって選択されてもよい。このような抗原は、特定の抗原に対して所望の免疫応答またはワクチンに特異的である。一実施態様において、抗原は、腫瘍抗原であり、腫瘍細胞可溶化液に、または分子生物学の分野の当業者に公知の技術(配列決定、クローン化、トランスフェクション、適切な原核細胞もしくは真核細胞ベースの系における増幅、ならびにその後の単離および精製などだが、これらに限定されない)に由来する腫瘍抗原などである。別の実施態様において、抗原は、病原体に由来する抗原、より好ましくは病原体の外側表面に発現した抗原である。病原体に由来する表面抗原の一例は、肝炎表面抗原である。別の実施態様において、抗原は、未処置の病原体から構成される。未処置の病原体の一例は、不活化型または弱毒化型H1N1ビリオンである。別の例は、修飾されていないかまたは、結核菌または鳥型結核菌、および副結核症などの亜種などだが、これらに限定されない他のマイコバクテリア感染に対して保護的な抗原を発現するよう適宜遺伝子的に修飾されたかのいずれかである未処置のウシ型結核菌カルメット‐ゲラン菌桿菌株(BCG)である。APC内に含有されない抗原が動物またはヒトに投与される場合、抗原は、タンパク質、ペプチド、もしくはポリペプチドとして投与されてもよく、または抗原をコードするポリペプチドが投与されてもよい。抗原をコードするポリヌクレオチドは、動物またはヒトにおいて抗原ポリペプチドの発現を可能にする他の要素を含むベクター内に含まれてもよい。一実施態様において、抗原および、5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポ
リヌクレオチドは、異なるベクター内に含有される。抗原には、H1N1抗原、インフルエンザ抗原、A型肝炎抗原、B型肝炎抗原、組み合わされたA型肝炎抗原およびB型肝炎抗原、ヒトパピローマ抗原、肺炎球菌抗原、ジフテリア抗原、髄膜炎菌性抗原、百日咳抗原、1以
上のヒト免疫不全ウイルス抗原、1以上のネコ免疫不全ウイルス抗原、ならびに1以上のサル免疫不全ウイルス抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
動物またはヒトへの、抗原を含有する非DNA塩基含有ポリヌクレオチドにより刺激されるAPCの投与、または非DNA塩基含有ポリヌクレオチド、医薬として許容し得るビヒクル、お
よび抗原もしくは複数の抗原を含む組成物の投与は、動物またはヒトにおける免疫応答の刺激を結果的に生じる。好ましい実施態様において、このような投与は、動物またはヒトにおける抗原特異的免疫応答とともに、免疫系の刺激を結果的に生じる。用語「抗原特異的免疫応答」は、抗原もしくは複数の抗原に向けて主として向かう免疫応答を指す。抗原特異的免疫応答は、抗体量(抗体力価)の増加、抗体クラスの切り替え、抗体産生性Bリ
ンパ球における体細胞高頻度突然変異、免疫細胞記憶の確立、抗原の投与されるヒトまたは動物における抗原に特異的なB細胞受容体またはT細胞受容体を保有する細胞の量の増加を含むか、またはこれらからなるが、これらに限定されない。抗体は、該抗体が十分な親和性および結合活性で抗原に結合して、抗体‐抗原複合体の産生を結果的に生じる場合、特定の抗原「に特異的」である。
【0061】
1以上の抗原と任意に組み合わされた、医薬として許容し得るビヒクルにおいて1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む本発明の組成物には、注射液、溶液、クリーム、
ゲル、インプラント、ポンプ、軟膏、エマルション、懸濁液、ミクロスフェア、粒子、微粒子、ナノ粒子、リポソーム、ペースト、パッチ、錠剤、経皮送達デバイス、スプレー、エアゾール、または当業者になじみのある他の手段などの投与の手段または方法が含まれるが、これらに限定されない。本発明の医薬製剤は、周知かつ容易に入手可能な成分を用いて、当該技術分野で公知の手順によって調製されうる。例えば、本発明の組成物は、共通の賦形剤、希釈剤、または担体を用いて製剤され、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、散剤、およびこれらの類似物へと形成されうる。医薬として許容し得るビヒクルは、当業者に公
知であり、普遍的な賦形剤、希釈剤、または担体を含む。例えば、該組成物は、共通の賦形剤、希釈剤、もしくは担体と製剤され、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、散剤、およびこれらの類似物へと形成されうる。このような製剤に好適な賦形剤、希釈剤、および担体の例には、以下が挙げられる:充填剤および増量剤(例えば、デンプン、糖類、マンニトール、および珪土質誘導体)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、およびポリビニル-ピロリドン)、加湿剤(例
えば、グリセロール)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウム)、溶解を遅延させるための薬剤(例えば、パラフィン)、吸収加速剤(例えば、第四級アンモニウム化合物)、表面活性剤(例えば、セチルアルコール、グリセロールモノステアラート)、吸収性担体(例えば、カオリンおよびベントナイト)、乳化剤、保存料、甘味料、安定剤、着色料、香料、調味料、潤滑剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸マグネシウム)、固形ポリエチルグリコール、ならびにこれらの混合物。医薬として許容し得るビヒクルには、医薬として許容し得る担体が含まれる。いくつかの担体は、当業者に公知の免疫アジュバント担体であってもよい。
【0062】
製剤は、活性成分のみを、または好ましくは特定の位置において、おそらく経時的に(すなわち、徐放性製剤)放出するように構成することができる。このような組み合わせは、放出動態を制御するためのさらなる機序をさらに提供する。被膜、包体、および保護マトリックスは、例えば、ポリマー物質又はワックスから製造されてもよい。
【0063】
1以上の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルを含む組成物は、1以上の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒクルを会合させることを均一にかつ本質的にもたらすことによって調製される。医薬として許容し得るビヒクルは、液体ビヒクル、固形物ビヒクル、またはその両方であってもよい。液体ビヒクルは、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、またはその両方である。医薬として許容し得るビヒクルには、免疫アジュバント担体が挙げられる。医薬として許容し得るビヒクルには、水性懸濁液、油エマルション、油中水エマルション、水中油中水エマルション、部位特異的エマルション、長時間残留エマルション、高粘度エマルション、マイクロエマルション、およびナノエマルションが挙げられるが、これらに限定されない。固形物ビヒクルは、生物学的ビヒクル、化学的ビヒクル、またはその両方であり、ウイルスベクター系、粒子、微粒子、ナノ粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、ミニポンプ、細菌細胞壁抽出物、非DNA塩基含有ポリヌクレオチド組成物の徐放を可能
にする生分解性または非生分解性の天然または合成ポリマーを含むが、これらに限定されない。エマルション、ミニポンプ、およびポリマーは、送達が必要とされる近傍に植え込める(Brem et al., 1991 J. Neurosurg. 74: 441)。5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを固形物ビヒクルと複合体形成するのに用いられる方法には、固形物ビヒクルの表面への直接吸着、固形物ビヒクルの表面への直接的なまたは連結部分を介した共有カップリング、および固形物ビヒクルを作成するのに用いられるポリマーとの共有カップリングが挙げられるが、これらに限定されない。任意に、配列(複数可)は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(普通、TWEENと呼ばれる)またはヒアルロン酸もしく
はヒアルロン酸誘導体などの非イオン性またはイオン性ポリマーの添加によって安定化されうる。
【0064】
好ましい水性ビヒクルには、水、生理食塩水、および医薬として許容し得る緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい非水性ビヒクルには、ミネラルオイルまたは、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質、脂質、油、およびこれらの混合物を含むものの、これらに限定されない中性油が挙げられるが、これらに限定されず、該油は、多価不飽和および飽和脂肪酸の適切な混合物を含有する。例には、ダイズ油、キャノーラ油、ヤシ油、オリーブ油、およびマイグリオール(myglyol)が挙げられるが、これらに限
定されず、脂肪酸は、飽和または不飽和であってよい。任意に、賦形剤は、細胞に対して
非DNA塩基含有ポリヌクレオチド組成物を提示するのに用いられる医薬として許容し得る
ビヒクルにかかわらず、含まれてもよい。これらの賦形剤には、抗酸化物質、緩衝液、および静菌薬が挙げられるが、これらに限定されず、懸濁剤および増粘剤を含んでもよい。
【0065】
1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、ヒトまたは動物に単独でまたは他の免疫アジュバントビヒクルもしくは担体との組み合わせで投与されてもよく、該ビヒクルまたは担体には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、ポリマー、ブロックコポリマーを含むポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのコポリマー、ポリマーP1005、フロイント完全アジュバント(動物用)、フロイント不完全アジュバント、ソルビタンモノオレアート、スクアレン、スクアラン、CRL-8300アジュバント、QS21、サポニン、ISCOM
、ムラミルジペプチド、グルコサミニルムラミルジペプチド、トレハロース、細菌抽出物を含む親水性または親油性細菌抽出物、マイコバクテリア全細胞を含む細菌全細胞、マイコバクテリア細胞壁調製物を含む細菌細胞壁調製物、解毒した内毒素、リピドAおよびそ
の合成類似体、膜脂質、原核生物から単離されたDNA、CpG合成ポリヌクレオチド、非CpG
合成ポリヌクレオチド、アプタマー、免疫刺激性分子をコードするプラスミド、ポリ(I:C)分子、サイトカイン、ケモカイン、キトサンおよび誘導体、ヒアルロン酸および誘導体、コレラ毒素、百日咳毒素、ならびにキーホールリンペットヘモシアニン、またはこれらの組み合わせ。免疫アジュバントビヒクルまたは担体は、当業者に公知であり、ミョウバン、油ベースのアジュバント、免疫刺激複合体(ISCOMS)、ウイロソーム、モノホスホリルリピドA(MPL)、および/またはこれらの類似体が挙げられるが、限定されない。本発明の好ましい実施態様において、粒子状担体は、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムのいずれかから調製されかつワクチンアジュバントとして用いられるコロイド状抗原担体であるミョウバンである。
【0066】
医薬として許容し得るビヒクルにおける1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物は、単独で、または化学治療薬、抗菌薬、もしくは抗ウイルス薬を含むがこれらに限定されない当業者に公知の他の治療様式との組み合わせで投与されてもよい。化学治療薬には、代謝拮抗薬、DNA損傷、微小管脱安定化、微小管安定化、アクチン脱重合、増殖
阻害、トポイソメラーゼ阻害、HMG-CoA阻害、プリン阻害、ピリミジン阻害、メタロプロ
テイナーゼ阻害、CDK阻害、血管新生阻害、および分化の亢進が挙げられるが、これらに
限定されない。これらの他の治療様式の投与の薬用量および方法は、当業者に公知である。
【0067】
種々の形態に特に好適である、本発明の非DNA塩基含有ポリヌクレオチド組成物および
医薬として許容し得るビヒクル、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含有するAPCもしくはDCを含む組成物を、または本発明の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび担体などの他
の材料を含む組成物を投与する方法には、以下の種類の投与、すなわち経口(例えば、頬側または舌下)、坐剤としての肛門、直腸、局所、非経口、鼻内、エアゾール、吸入、髄腔内、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、皮内、真皮下、皮下、筋肉内、組織内(例えば、組織もしくは腺)、子宮内、膣内、体腔への、腫瘍もしくは内部損傷の位置における手術投与、腫瘍に直接的に、管腔もしくは臓器の柔組織に、骨髄に、および胃腸系、生殖系、尿路系、および泌尿生殖器系の任意の粘膜表面が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび医薬として許容し得るビヒ
クルを含む組成物は、膀胱内(浮嚢)の、眼の、口の、鼻の、直腸の、および膣の表面からなる群から選択される粘膜表面にも投与されうる。上記の種々の形態の投与において有用な技術には、局所適用、食物摂取、手術投与、注射、スプレー、経皮送達デバイス、浸透圧ポンプ、所望の部位へ直接的に電着させること、または当業者になじみのある他の手段が挙げられるが、これらに限定されない。適用部位は、表皮上などの外部、または内部、例えば、胃潰瘍、手術場、もしくはほかのいずれかの部位であり得る。
【0068】
本発明の組成物は、クリーム、ゲル、溶液、懸濁液、リポソーム、粒子、または組成物の製剤および送達の分野の当業者に公知の他の手段の形態で適用されうる。超微細粒子の大きさは、治療薬の吸入送達に用いられることができる。皮下投与に適した製剤のいくつかの例には、インプラント、デポー剤、針、カプセル、および浸透圧ポンプが挙げられるが、これらに限定されない。膣への投与に適した製剤のいくつかの例には、クリームおよびリングが挙げられるが、これらに限定されない。経口投与に適した製剤のいくつかの例には、丸剤、液剤、シロップ、および懸濁剤が挙げられるが、これらに限定されない。経皮投与に適した製剤のいくつかの例には、ゲル、クリーム、ペースト、パッチ、スプレー、およびゲルが挙げられるが、これらに限定されない。皮下投与に適した送達機構のいくつかの例には、インプラント、デポー剤、針、カプセル、および浸透圧ポンプが挙げられるが、これらに限定されない。非経口投与に好適な製剤には、意図される受け手の血液と等張の製剤にする抗酸化物質、緩衝液、静菌薬、および溶質を含み得る水性および非水性滅菌注射溶液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁剤が挙げられるが、これらに限定されない。即時注射溶液および懸濁液は、当業者によって通常使用される滅菌散剤、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0069】
本発明の組成物が、例えば1以上の医薬として許容し得るビヒクルまたは賦形剤と組み
合わされる実施態様は、単位剤形において簡便に提示されてもよく、従来の医薬技術によって調製されてもよい。このような技術には、活性成分および医薬ビヒクル(複数可)または賦形剤(複数可)を含有する組成物の会合をもたらす工程が含まれる。一般に、製剤は、活性成分の液体ビヒクルとの会合を均一かつ本質的にもたらすことによって調製される。好ましい単位剤形は、投与される成分の用量もしくは単位、またはその適切な画分を含むものである。特に上記の成分に加えて、本発明の組成物を含む製剤には、当業者によって通常用いられる他の薬剤が含まれてもよいことは理解されるべきである。
【0070】
投与量は、投与の経路に応じて変動する。かかる量は、動物またはヒトに投与する組成物の分野の当業者に公知である。投与の経路に応じて、1回あたりの量は、好ましくは約0.001〜100mL、より好ましくは1回あたり約0.01〜50mL、およびもっとも好ましくは1回あ
たり約0.1〜30mLである。例えば、筋肉内注射は、約0.1mL〜1.0mLの容量に及んでもよい
。単独で、または他の治療薬(複数可)とともに投与される非DNA塩基含有ポリヌクレオ
チド組成物は、単回用量治療において、または治療途中の疾患、受け手の容態、ならびに投与経路に適したスケジュールにおいておよび経時的に連続して注入される複数回用量治療において投与されうる。その上、他の治療薬は、1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物の投与の前、同時に、またはその後で、投与されうる。
【0071】
好ましくは、1回あたりに投与される5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの量は、約0.0001〜100mg/体重kgであり、より好ましくは約0.001〜10mg/体重kgであり、最も好ましくは約0.01〜5mg/体重kgである。投与される特定の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび特定の治療薬、1回あたりの量、投薬スケジュール、および投与経路は、当業
者に公知の方法を用いて実務者によって決定されるべきであり、疾患の種類、疾患の重症度、疾患の位置、ならびに大きさ、体重、および身体の容態などの他の臨床的因子に依存する。加えて、インビトロアッセイが、配列に、および配列に加え治療薬投与に、最適な範囲を同定するのに役立つよう任意に採用されてもよい。
【0072】
本発明における使用のために、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、当該技術分野で周
知のいくつかの手順のうち任意のものを用いて、新規に合成されうる。例えば、β-シア
ノエチルホスホルアミダイト法(Beaucage and Caruthers 1981 Tet. Let. 22:1859)お
よびヌクレオシドH-ホスホン酸法(Garegg et al. 1986 Tet. Let. 27:4051-4054、Froehler et al. 1986 Nucl. Acid. Res. 14:5399-5407、Garegg et al. 1986 Tet. Let. 27:4
055-4058、Gaffney et al. 1988 Tet. Let. 29;2619-26220)、およびヌクレオシドH-ホ
スホン酸法、または液相合成手順の使用(Bonora et al. 1993 Nucl. Acids Res. 21:1213-1217)を利用することができる。これらの化学作用は、市販の種々の自動化オリゴヌクレオチド合成装置によって実施されうる。あるいは、既存の核酸配列(例えば、ゲノムまたはcDNA)から、制限酵素、エキソヌクレアーゼ、および/またはエンドヌクレアーゼなど、公知の技術を用いて調製されうる。
【0073】
インビボでの使用のために、ポリヌクレオチドは好ましくは、分解に対して比較的耐性があることである(例えば、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼ)。ポリヌクレオチドの安定化の一例は、リン酸骨格修飾の使用を介するものである。一実施態様において、固定されたポリヌクレオチドは、ホスホロチオアート修飾された骨格を有する。ポリヌクレオチドのホスホロチオアート骨格修飾は結果的に、齧歯類における48時間の全身性半減期を生じ、このような薬物動態は、インビボでの適用に有用であり得るという示唆を結果として生じた(Agrawal et al. 1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7595)。ホスホロチオアートは、ホスホルアミダートまたはHホスホン酸のいずれかの化学作用を採
用する自動化した技術を用いて合成されてもよい。アリールホスホン酸およびアルキルホスホン酸が製造され得(例えば、米国特許第4,469,863号に説明される通り)、アルキル
ホスホトリエステル(米国特許第5,023,243号においておよび欧州特許第092,574号において説明されるように、帯電した酸素部分がアルキル化される)は、市販の試薬を用いた自動化固相合成によって調製されうる。他のDNA骨格修飾および置換をなすための方法は説
明された(Uhlmann, E. and Peyman, A. (1990) Chem. Rev. 90:544、Goodchild, J. (1990) Bioconjugate Chem. 1:165)。
【0074】
インビボでの投与のために、1以上の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含む組成物は、標的細胞(例えば、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞)表面に対するより高い親
和性結合および/または標的細胞による増大した細胞内取り込みを結果的に生じる分子と会合することができる。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で周知である技術を用いて、適切な分子とイオン結合または共有結合し得る。種々のカップリングまたは交差架橋剤を用いることができる(例えば、プロテインA、カルボジイミド、およびN-スクシンイミジ
ル-3-(2-ピリジイジチオ)プロピオナート(SPDP))。あるいは、ポリヌクレオチドは、
周知の技術を用いて、リポソームまたはウイロソームに封入されうる。
【0075】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するよう機能するが、同時に、しかしながら、そのいかなる制限をも構成することはない。反対に、本明細書の説明を読んだ後で、本発明の精神および範囲から逸脱せずに当業者にそれ自体を示唆し得る種々の他の実施態様、改変、およびその等価物に対して手段を有していてもよいことは明確に理解されるべきである。
【実施例】
【0076】
実施例1
5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの調製
以下の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列を、Sigma-Genosys(Oakville, ON, Canada)、またはMidland(Midland, TX, USA)によって調製した。別段の記載が
ない限り、該配列を使用直前に、オートクレーブ処理した脱イオン水、または、生理食塩水などだが、これに限定されない医薬として許容し得る緩衝液において分散させた。
【0077】
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドが、所定のまたは標準的なホスホロアミダイトオリゴ
ヌクレオチド技法を用いて調製され得ることは、当業者にとって明白である。
【0078】
以下の5'-OH、3'-OH非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列は、免疫アジュバントとして
用いられることのできる組成物の代表にすぎない。これらの分子(下記に説明されるものなどだが、これらに限定されない)に対する修飾物が、ワクチンアジュバント製剤の分野の当業者によって用いられることが可能であることは期待されるべきである。しかしながら、Neb、U、またはIを含むポリヌクレオチド配列を用いて免疫アジュバントとして作用
する一般的な原理が保存されることは明らかである。同様に、当業者に公知の適切なアジュバント製剤の選択も、Neb、U、またはIを含むポリヌクレオチド配列を用いて、免疫ア
ジュバントとして作用する一般的な原理も保存する。
【0079】
加えて、適切な骨格の修飾を、または細胞外および細胞内分解に対する亢進した耐性を与える、当業者に公知の他の化学的修飾を有するポリヌクレオチド配列を生成するための適切な合成方法の使用がなされ得る。保護(TEG-コレステリル付加に対するものだがこれに限定されないもの、またはホスホロチオアート連結の使用などだが、これに限定されない骨格保護)を与えるためにODNの5'末端または3'末端における修飾の使用もなされ得る
。本質的免疫アジュバント活性が実質的に影響されないよう、ポリヌクレオチドの1つの
または両方の末端に付加されるA、G、C、T、Neb、U、またはIなどだが、これらに限定さ
れない塩基を含む追加的な天然または非天然ヌクレオチドの使用もなされ得る。本発明の範囲および精神を損なうことなく、リボースおよび/もしくはデオキシリボースの糖または修飾物の使用がなされ得る。
【0080】
以下の配列を、標準的なホスホロアミダイトポリヌクレオチド技法を用いてホスホジエステル骨格を用いて合成した:
(配列番号1) NebGGTGNeb
(配列番号2) UUGTUU
(配列番号3) IIGTII
(配列番号4) GNebG
(配列番号5) GGGTGGNebNebNeb
(配列番号6) GIG
(配列番号7) GGGTGGIII
(配列番号8) GUG
(配列番号9) GGGTGGUUU
【0081】
これらの分子は、免疫応答が、所望である1つの抗原もしくは複数の抗原との単純な混
合物として、または担体および免疫応答を最適化するよう設計された1以上の追加的なア
ジュバントとの複合混合物もしくは製剤としてのいずれかで、免疫アジュバントとして用いられることのできる非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの一般的な組成物を示すよう機能
する。このようなアプローチは通常、ミョウバン(リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)などの担体分子または材料を用いるが、当業者に入手可能な担体またはビヒクルの選択は広範であり、当業者は、該担体またはビヒクルを、以下の実施例および特許請求の範囲において定義されるように、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明のポリヌクレオチド配列に適用可能であると認識するであろう。
【0082】
以下の参照ポリヌクレオチドもホスホロチオアート骨格を用いて合成したものであり、Midland(Midland, Texas, USA)から購入した:
(配列番号31) 非CpG 4010 5′-TGCTGCTTTTTGCTGGCTTTTT-3′
(配列番号32) CpG 2006 5′-TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT-3′, (Aクラス)
(配列番号33) CpG 2336 5′-GGGGACGACGTCGTCGGGGGG-3′ (Aクラス)
(配列番号34) CpG 7909 5′-TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT-3′ (Bクラス)
(配列番号35) CpG 2429 5′-TCGTCGTTTTCGGCGGCCGCCG-3′ (Cクラス)
【0083】
実施例2
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドによるTLR活性化の欠失
トール様受容体(TLR)は、免疫アジュバントとして機能することのできるいくつかの
天然および合成分子と相互作用することが公知である。これらの分子の例は、ポリ(I:C)ポリヌクレオチド、リポ多糖、およびCpG含有ポリヌクレオチドである。TLRと相互作用して下流シグナル伝達を誘導するための非DNA塩基含有ポリヌクレオチド(配列番号1〜3)
の相互作用を、ヒトTLR2、3、4、5、7、8、および9を発現するHEK293細胞におけるNF-κB活性化を評価することによって試験した。TLR結合を、NF-κBによって誘導可能なリポー
ターの制御下での、分泌されたアルカリホスファターゼの測定によって決定した。適切なポジティブコントロールを各TLRについて用いた。非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを滅菌水に100μg/mLの濃度で溶解し、10μg/mLの終濃度で用いた。適切なTLRおよびNF-κBレポーターシステム(InvivoGen, San Diego, CA, USA)を、96ウェルプレートのウェルに
配置し(NF-κBの検出に設計された最終容量200μLの培地における25,000〜50,000個は、分泌されたアルカリホスファターゼ発現を誘導した)、非DNA塩基含有ポリヌクレオチド
またはポジティブコントロールとともに16〜20時間インキュベートした。TLR活性化活性
を、Coulter AD340C吸光度検出機を用いて、650nmでの波長の吸光度の測定によって決定
した。示される結果を光学密度(OD)として表す。代表的なアッセイの結果を表1に示す

【0084】
【表1】

【0085】
本結果は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドが、アルカリホスファートリポーター活性
の欠失によって明らかなように、TLR仲介性シグナル伝達経路を活性化することができな
いことを示す(表1)。対照的に、各TLRリポーターを、その特異的リガンドによって活性化させた(使用した個々のポジティブコントロールリガンドについては、表1に対する脚
注を参照されたい)。以下の記述にとらわれたくはないが、これらの結果は、非DNA塩基
含有ポリヌクレオチド免疫アジュバント活性が、TLRを介して仲介されるのではなく、1以上の異なる経路によって仲介されるという仮説を支持する。
【0086】
加えて、これらの結果は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドが、公知の核酸TLR受容体3
、7、8、または9を通じてシグナル伝達しないことを示す。重要なことに、本結果は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドにTLR9シグナル伝達を刺激する能力がないことによって明らかなように、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドが組成的にも機序的にもCpG含有ポリヌクレオチドとは異なることを示す。対照的に、CpG含有ポリヌクレオチドがTLR9シグナル伝達
を刺激し、かつこのシグナル伝達が免疫アジュバント活性と相関することは、当業者に公知である。
【0087】
実施例3
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの免疫アジュバント活性―非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを用いた免疫化後の抗HBsAg IgG抗体力価
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの免疫アジュバント活性を標準的なモデル(マウスに
おけるB型肝炎表面抗原に対する抗体応答)において決定した。この抗原に対する免疫応
答は、この抗原に特異的であるに過ぎないものとしてみなされるべきではない。対照的に、ワクチンの製剤および開発における当業者に公知の他の抗原および他のワクチンの使用は自明であり、ワクチン化における、このおよび他の、広く知られ、使用されているアプローチが、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを用いてアジュバント化されるタンパク質、
ペプチド、炭水化物、および脂質の抗原を含むワクチンの開発において用いられることが可能であることは予期されるべきである。以下の例は、非DNA塩基含有ポリペプチドをワ
クチンアジュバントとして用いると、予防的投与計画または治療的投与計画のいずれかにおいて保護的と通常考えられる免疫応答をいかに誘発できるかを示している。
【0088】
5匹の雌BALB/cマウスの群を0日後、21日後、および31日後の筋肉内(I.M.)経路の投
与を用いて、組換えB型肝炎表面抗原(組換えHBsAg;Cortex Biochemical, San Leandro,
CA, USA)ならびに種々の組み合わせの水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン;SuperFos
Biosector, Vedback, Denmark)および/または配列番号1〜3(それぞれNebGGTGNeb、UUGTUU、およびIIGTII)で免疫化した。ミョウバンとの複合体形成は、免疫化の前に抗原および非DNA塩基含有ポリヌクレオチドをミョウバンと混合することによって達成した。血
清を41日後に回収し、HBsAgを用いたELISAによる抗HBsAg IgGの抗体全体、IgG1、IgG2a
、およびIgG2b抗体(1μg/ウェル、96ウェルマイクロタイタープレート)ならびにHRPに結合したヤギ抗マウスIgG、IgG1、IgG2a、およびIgG2b抗体の存在について分析した(Southern Biotechnologies, Birmingham, Alabama)。抗体力価をエンドポイント力価として決定した。典型的な免疫化研究の結果を表2〜5に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
【表5】

【0093】
本結果は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドについての免疫アジュバント活性を示す。
本実施例において、配列番号1〜3は、ミョウバンと複合体形成した場合、抗抗原IgG抗体
力価によって決定されるように、3の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドについての有意な免役アジュバント活性を示し、達成される抗体力価は、抗原単独または標準的なアジュバントであるミョウバンと複合体形成した抗原について見られるものよりも高いことを示した。より大きい重要なことは、ミョウバンの使用が非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの免疫
アジュバント活性を亢進するが、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドが、より高いレベルの
抗原特異的抗体を誘発する手段として、可溶性抗原との組み合わせで粒子状の担体なしで
用いられうるという実証である。より大きく有意であったのは、単独でまたはミョウバン担体との組み合わせでのいずれかで、アジュバントとしての非DNA塩基含有ポリヌクレオ
チドの使用が結果的に、IgG2aおよびIgG2bイソ型のIgG抗体のレベルの上昇を生じるとい
う観察である。これらの抗体は、当業者によって、ウイルス抗原に対する免疫応答を誘発させる場合、特に有利と認識されている。
【0094】
実施例4
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの免疫アジュバント活性―非DNA塩基含有ポリヌクレオチドによる免疫化後の抗H1N1ビリオンIgG抗体力価
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの免疫アジュバント活性を、標準モデルにおいて決定
した(マウスにおけるH1N1ビリオンに対する抗体応答)。この抗原に対する免疫応答は、このビリオンに特異的であるに過ぎないものとしてみなされるべきではない。対照的に、ワクチンの製剤および開発における当業者に公知の他のビリオンおよび他のワクチンアジュバントの使用は自明であり、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドでアジュバント化される
タンパク質、ペプチド、炭水化物、および脂質の抗原を含むワクチンの開発に用いられることができることが期待されるべきである。以下の実施例は、ワクチンアジュバントとしての非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの使用が、予防的投与計画または治療的投与計画の
いずれかにおいて保護的であると通常考えられる免疫応答をどのように誘発することができるかを示す。
【0095】
5匹の雌C57BL/6マウスの群を、0、21、および31日後の筋肉内(I.M.)経路の投与を用いて、H1N1ビリオン(Genway Biotech, San Diego, CA, USA, インフルエンザA北京型 H1N1)ならびに水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン;SuperFos Biosector, Vedback, Denmark)および/または配列番号1〜9の異なる組み合わせで免疫化した。ミョウバンとの複合体形成を、H1N1ビリオンおよび非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを免疫化前にミョウバ
ンと混合することによって達成した。血清を41日後に回収し、抗H1N1ビリオンIgG1およびIgG2b抗体の存在について、H1N1ビリオン(1μg/ウェル、96ウェルマイクロタイタープ
レート)ならびにHRPに結合したヤギ抗マウスIgG1およびIgG2b抗体を用いる標準的なELISAによって分析した(Southern Biotechnologies, Birmingham, Alabama)。抗体力価をエンドポイント力価として決定した。典型的な免役化研究の結果を表6〜7に示す。
【0096】
【表6】

【0097】
【表7】

【0098】
表6において示される結果は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列1、2、3、5、および9が、H1N1ビリオン単独で投与される場合にIgG1抗体力価を低下させる能力を有すること
を示す。H1N1ビリオン単独で投与される場合、非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列6および7は、抗IgG1抗体レベルを刺激した。配列番号8は、H1N1ビリオン単独で投与される場合、抗IgG1抗体力価に対して効果を有さなかった。H1N1ビリオンをミョウバンおよび非DNA
塩基含有ポリヌクレオチドと複合体形成させる場合、配列番号2および4のみが、ミョウバン単独と複合体形成したH1N1と比較した場合に上昇するIgG1抗体力価を与えた。これらのデータは、適切な非DNA塩基含有ポリヌクレオチドおよび製剤(生理食塩水におけるまた
は担体ビョウバンと複合体形成した可溶性製剤)を用いることによって、H1N1に対するIgG1応答を減衰または亢進することができることを示す。
【0099】
表7に示される結果は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列番号1、8、および9が、H1N1ビリオンを単独で投与される場合、IgG2b抗体力価を低下させる能力を有することを示す。非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列番号2、3、5、6、および7は、H1N1ビリオンを単独
で投与する場合に、抗IgG1抗体レベルを刺激した。配列番号4は、H1N1ビリオン単独と投
与された場合には抗IgG2b抗体力価に対する効果を有さなかった。H1N1ビリオンをミョウ
バンおよび非DNA塩基含有ポリヌクレオチドと複合体形成する場合、配列番号1、2、3、4
、5、および7は、ミョウバン単独と複合体形成したH1N1と比較した場合、上昇する抗体力価を与えた。配列番号6、8、および9は、ミョウバンと複合体形成した場合、IgG2b抗H1N1抗体レベルに及ぼす効果を何ら有さなかった。これらのデータは、適切な非DNA塩基含有
ポリヌクレオチドおよび製剤(生理食塩水におけるまたは担体ミョウバンと複合体形成した可溶性製剤)を用いることによって、H1N1ビリオンに対するIgG2b応答を減衰または亢
進することが可能であることを示す。
【0100】
実施例5
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの免疫アジュバント活性―非DNA塩基含有ポリヌクレオチドによる免疫化後の抗H1N1ビリオンIgG抗体力価―抗原節約
抗原節約アジュバントとして機能する非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの能力を、マウ
スにおけるH1N1ビリオンモデルシステムを用いて評価した。世界的流行のインフルエンザ大発生の間に遭遇すると考えられるワクチン接種の制約を表すため、省略された免疫化スケジュールおよび低下したビリオン攻撃用量を意図的に選択した。5匹の雌C57BL/6マウ
スの群に対し、0および14日後に、筋肉内(I.M.)経路の投与を0.1および0.01μg/回(Genway Biotech, San Diego, CA, USA, インフルエンザA北京型 H1N1)の免疫化用量なら
びに水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン;SuperFos Biosector, Vedback, Denmark)および/または配列番号1、3、4、5、6、および7との異なる組み合わせのH1N1ビリオンの投与を用いて免疫化を実施した。ミョウバンとの複合体形成を、H1N1ビリオンおよび非DNA
塩基含有ポリヌクレオチドとミョウバンとを免疫化前に混合することによって達成した。血清を22日後に回収し、H1N1ビリオン(1μg/ウェル、96ウェルマイクロタイタープレート)およびHRPに結合したヤギ抗マウスIgG1およびIgG2b抗体(Southern Biotechnologies, Birmingham, Alabama)を用いた標準的なELISAによって、抗H1N1ビリオンIgG2b抗体の
存在について分析した。抗体力価を、エンドポイント力価として決定した。代表的な免疫化研究の結果を表8〜11に示す。
【0101】
【表8】

【0102】
【表9】

【0103】
【表10】

【0104】
【表11】

【0105】
表8〜11に示される結果は、0.1または0.01μg/回の低ビリオン攻撃用量のH1N1ビリオ
ンを非DNA塩基含有ポリヌクレオチドでアジュバント化して、省略された免疫化プロトコ
ールを用いることによって、単独かまたはミョウバンと複合体形成されるかのいずれかであるH1N1が免疫原性をほぼ示さなかった条件下でも、IgG1およびIgG2bクラスの抗H1N1抗
体を誘発することがなおも可能であることを示す。ミョウバンをビリオンおよび非DNA塩
基含有ポリヌクレオチドのための担体として用いて、最適な抗体応答を得た。それゆえ、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドは、決して最適ではない免疫化スケジュールで使用する
場合でさえ、抗体節約アジュバントとして用いられることができる。
【0106】
実施例6
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの免疫アジュバント活性―非DNA塩基含有ポリヌクレオチドによる免疫化後の抗ヒト血清アルブミンIgG抗体力価
(サブユニット抗原性タンパク質ワクチンを代表するモデルとしての)タンパク質抗原を用いた非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの免疫アジュバント活性を、マウスにおけるヒ
ト血清アルブミンを用いて研究した。本研究は、ミョウバンなどのワクチン担体アジュバントの不在下で可溶性抗原および可溶性ペプチドにより免疫化する効果を決定するよう意図された。5匹の雌C57BL/6マウス(Charles River Laboratories Inc., St. Constant, Quebec, Canada)の群を、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、および9なしでまたはそれ
との組み合わせで、1μg/回の免疫化用量のヒト血清アルブミン(HSA, Sigma-Aldrich Canada, Oakville, Ontario, Canada #A9731, 28.5 mg/mL)の0および21日後の筋肉内(I.M.)経路の投与を用いて免疫化した。ポリヌクレオチドを免疫化の前に生理食塩水中の
HSAと単純に混合し、粒子状の担体系を用いなかった。血清を29〜30日後に回収し、HSA(1 μg/ウェル、96ウェルマイクロタイタープレート)およびHRPに結合したヤギ抗マウスIgG抗体(Southern Biotechnologies, Birmingham, Alabama)を用いる標準的なELISAに
よって、抗HSA IgG抗体の存在について分析した。IgG抗HSA抗体力価をエンドポイント力
価として決定した。典型的な免疫化研究の結果を表12に示す。
【0107】
【表12】

【0108】
本研究の結果は、HSAを生理食塩水中のポリヌクレオチドと混合することが、2種類のアジュバント効果を結果として生じたことを示す。第一に、配列番号1、2、3、7、8、およ
び9は、HSA単独と比較した場合、IgG抗体力価の低下を結果的に生じた。第二に、配列番
号4、5、および6は、HSA単独と比較した場合、IgG抗体力価の上昇を結果として生じた。
これらのデータから、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドが、5'OH、3'OHの保護されていな
い、ホスホジエステル非DNA塩基含有ポリヌクレオチドと同じ、可溶性形態の抗原を有す
る組成物として投与される場合、免疫アジュバント活性に関して免疫調節因子として作用する能力を有する(すなわち、抗体応答の阻害または刺激)ことが明らかである。
【0109】
実施例7
非DNA塩基含有ポリヌクレオチドによるヒトPBMCからのサイトカインの誘導
いくつかの免疫アジュバントは、ヒトPBMC細胞からサイトカインを誘発することができることが公知である。このようなアジュバントの例は、ミョウバン、リポ多糖、モノホスホリルリピドA、CpG含有ポリヌクレオチドおよび非CpG含有ODN、ならびにマイコバクテリア細胞壁‐DNA複合体(MCC)である。非DNA塩基含有ポリヌクレオチド、具体的には配列
番号1〜3(1〜100μg/mL)が、3名の健常な成人個体から得られたヒトPBMCからサイトカインを誘導する能力を決定した。PBMCを標準的なFicoll‐Paque(GE Healthcare Life Sciences, Baie d'Urfe, QC, Canada)勾配遠心分離を用いて全血から単離し、106個/mL(全容量:10%熱失活済みFBSを含有するRPMI 1640培地における1mL, 両方ともWisent, St-Bruno, QC, Canada製)の濃度、および50μg/mLの硫酸ゲンタマイシン(Sigma-Aldrich
Canada, Oakville, ON, Canada)の組織培養プレートに配置した。配列番号1、2、または3を添加して、100μg/mLの終濃度を与え、細胞を48時間培養した。インキュベーション
の終了時に上清におけるサイトカイン(IL-1β、IL-2、IL-6、IL-10、およびIL-12p40)
を、サイトカイン捕捉アッセイプロセス(Biosource, Camarillo, CA)を用いるELISAに
よって決定した。配列番号32のCpG2006 ODN(1-100 μg/mL, 5'-TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT-3', A-クラスのCpG)、MCC(1-100 μg/mL)、およびLPS(10 μg/mL)をポジティブコントロールとして用いた。サイトカイン捕捉アッセイの結果を表13に示す。
【0110】
【表13】

【0111】
本結果は、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドが、CpG2006、MCC、またはLPSとは別個のサイトカイン合成刺激特性を有することを示す。また、本発明の非DNA塩基含有ポリヌクレ
オチドによって誘導されるサイトカインのレベルは、MCCまたはLPSによって誘導されるものよりも有意に低く(10倍低い)、以下に対して保持されたくはないが、このようなデータは、サイトカインを誘導する能力が、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの免疫アジュバ
ント活性と直接的に関連しないことを強く示す。
【0112】
実施例8
ヒトPBMCからのサイトカインの誘導、ホスホロチオアートCpG含有ポリヌクレオチドとの
比較
別個の研究において、ヒトPBMC集団におけるサイトカイン合成を誘導する非DNA塩基含
有ポリヌクレオチド(ホスホジエステル)の能力を決定し、いくつかのCpG含有ホスホロ
チオアートポリヌクレオチドの能力と比較した。LPSおよびMCCは実施例7において説明さ
れるとおり、ポジティブコントロールとして含んだ。PBMCを全血から、標準的なFicoll−Paque Plus(GE Healthcare Life Sciences, Baie d'Urfe, QC, Canada)勾配遠心分離を用いて単離し、1×106個/mLの組織培養プレート(総容量: 10%熱失活済みFBSを含有す
るRPMI 1640培地における1mL(両方ともWisent, St-Bruno, QC, Canada製) および50μg
/mLの硫酸ゲンタマイシン(Sigma-Aldrich Canada, Oakville, ON, Canada)にプレートした。非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、および9を個別のウェルに添加し、10μg/mLの終濃度とし、LPSを添加して、10μg/mLの終濃度を与え
、非CpG4010、CpG2336、CpG2429、およびCpG7909ポリヌクレオチド(それぞれ配列番号31、33、35、および34)を添加して、10μg/mLの終濃度とした。
【0113】
次に、細胞を48時間培養した。培養上清におけるサイトカイン(インターロイキンIL-6およびIL-10、ケモカインMCP‐1およびランテス)を、Bio‐Plex200システム(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)においてMilliplex(商標)MAPキット(Millipore Corporation, Billerica, MA, USA)を用いて測定した。単球走化性タンパク質としても公
知のMCP‐1は、有効な単球および骨髄樹状細胞の活性化、ならびに内皮および上皮の障壁を通過する輸送(例えば、Henkel et al, 2004 Ann. Neurol. 55:221-235参照)に必要とされる必須のケモカインであり、ランテス(活性化の際に調節され、発現および分泌される正常T細胞であり、いまやCCL5としてより普遍的に公知)は、記憶表現型T細胞によって産生され、T細胞について走化性であり、T細胞を活性化する(例えば、Swanson et al, 2002 Immunity 17:605-615参照)。本研究の結果を表14に示す。
【0114】
【表14】

【0115】
本研究の結果は、免疫刺激物質LPSおよびMCCとの比較において、配列番号4および5のみが、ヒトPBMCに対する強いインターロイキン(IL-6)およびケモカイン誘導活性(MCP-1
、ランテス)の両方を示すことを示す。配列番号9のみが、強いMCP-1誘導活性を示した。配列番号1、2、3、6、7、および8は、インターロイキン誘導活性をほとんどまたはまったく、およびケモカイン誘導活性をほとんどまたはまったく示さなかった。CpGポリヌクレ
オチド(配列番号33、34、35)は、サイトカインを誘導しなかったが、すべて、強いMCP-1誘導活性を有した。配列番号31の非CpG4010ポリヌクレオチドも、ケモカイン誘導活性を有することも注記されるべきである。これらのデータから、配列番号1〜9が、ホスホロチオアート骨格CpGポリヌクレオチドのものとは別個のインターロイキンおよびケモカイン
誘導特性を有すること、ならびにインターロイキンおよびケモカインを誘導する能力が、先の実施例において示されたような免疫アジュバントとして作用する能力と相関しないことが明らかである。
【0116】
実施例9
ミョウバンを含むワクチンと非DNA塩基含有ポリヌクレオチドとの同時アジュバント化
以下の実施例は、抗原担体およびアジュバントとして用いられるアルミニウム塩(ミョ
ウバン)を含む従来のワクチンに対する免疫応答を高める上での、本発明のポリヌクレオチド配列の使用を説明する。ミョウバンは、集団ベースの免疫化手順のための安全なアジュバントとみなされる。いくつかの市販のワクチンの大部分は、アルミニウム塩(水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、または硫酸アルミニウムなどだが、これらに限定されない)でアジュバント化される。これらのワクチンは、本発明の非DNA塩基含有ポリヌ
クレオチドを用いてさらにアジュバント化され、それにより抗体産生および保護活性の刺激が達成される。用いられる非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの用量(1〜100μg/ワクチン用量の範囲内だがこれに限定されない)を、アルミニウム複合体形成段階の間の製造過程の間かまたは免疫化直前のいずれかでワクチンに添加し、個体の免疫化を、確立されたワクチン用量および投与経路(従来的には三角筋への筋肉内)を用いる確立されたワクチン接種手順に従って実施する。非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含有する、アルミニウ
ムでアジュバント化されたワクチンによる免疫化は、亢進した保護抗体力価および感染性曝露に対する耐性または確立された疾患の除去によって決定されるように、アルミニウムでアジュバント化されたワクチンを用いたワクチン接種と比較した場合、優れた免疫応答を結果的に生じる。当業者は、a)亢進した免疫応答からの利点が、免疫化の回数が最適
でない場合(例えば、3回の代わりに2回)、または投与される抗原(複数可)の用量が、例えば、大流行の免疫化の間のように最適未満である場合にも達成され、b)ミョウバン
でアジュバント化されたワクチンにおける抗原節約が、非DNA塩基含有ポリヌクレオチド
と同時アジュバント化した結果として生じることを認識するであろう。非DNA塩基含有ポ
リヌクレオチドの添加に由来する利点は、DTaP(ジフテリア‐破傷風‐百日咳)ワクチン、A型肝炎ワクチン、A型+B型肝炎、Hib(B型インフルエンザ)ワクチン、DTaP-IPV(不
活性化型ポリオウイルス)-B型肝炎、肺炎球菌抱合体、DT(ジフテリア‐破傷風)ワクチン、Hib‐B型肝炎ワクチン、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン、H1N1ワクチン、
およびラビーワクチンである(がこれらに限定されない)。
【0117】
実施例10
油ベースのアジュバントを含むワクチンの、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドとの同時ア
ジュバント化
以下の実施例は、油または油ベースのエマルションをアジュバントとして含む従来のワクチンに対する免疫応答を高める上での本発明のポリヌクレオチド配列の使用を説明する。いくつかの市販のワクチン、特に獣医学的実施において用いられるワクチンを、油または油ベースのエマルションでアジュバント化する。これらの油は、ミネラルオイル、モンタニド、またはスクアレンを含むが、これらに限定されない。これらのワクチンは、本発明の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを用いてさらにアジュバント化され、それにより抗
体産生および保護活性の刺激が達成される。用いられる非DNA塩基含有ポリヌクレオチド
の用量(1〜100μg/ワクチン用量内だが、これに限定されない)を製剤段階中の製造過
程の間または免疫化直前のいずれかにおいてワクチンに添加し、個体の免疫化を、確立されたワクチン用量および投与経路(従来的には筋肉内注射だがこれに限定されない)を用いて、確立されたワクチン接種手順に従って実施する。非DNA塩基含有ポリヌクレオチド
を含有する油または油ベースのエマルションでアジュバント化したワクチンを用いた個体の免疫化は、亢進した保護抗体力価、感染性生物体への曝露に対する耐性、または確立された疾患の除去によって決定されるように、油または油ベースのエマルションでアジュバント化したワクチンのみを使用するワクチン接種と比較して優れた免疫応答を結果的に生じる。当業者は、a)亢進した免疫応答からの利点が、免疫化の回数が最適でない場合(
例えば、3回以上の免疫化の代わりに1または2回の免疫化)、または投与される抗原(複
数可)の用量が、例えば、大流行の免疫化の間のように最適未満である場合にも達成され、b)ワクチン油または油ベースのエマルションでアジュバント化されたワクチンにおけ
る抗原節約が、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドと同時アジュバント化した結果として生
じることを認識するであろう。非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの添加から利益を得る油
または油ベースのエマルションでアジュバント化されたワクチンの例は、大腸菌O157シデ
ロホアタンパク質ワクチン、大腸菌O157 3型分泌タンパク質ワクチン、ライム病(ボレリア・ブルグドルフェリ外側表面プロテインA[OspA]およびプロテインC[OspC]バクトリン(bactrin))ワクチン、口蹄疫(FMDワクチン、不活性化型ビリオンまたはウイルスタンパク質)、出血性敗血症(不活性化型パスツレラ・マルトシダ)ワクチン、ジョーンズ病(不活性化型鳥型結核菌亜種副結核症バクトリンまたは保護的免疫原性タンパク質)ワクチン、クローン病(不活性化型鳥型結核菌亜種副結核症[MAP]バクトリンまたは免疫
原性タンパク質または[MAP]からの保護的免疫原性タンパク質をコードする配列を含むウ
イルスベクター)ワクチン、H1N1ワクチン、ラビーワクチンである(が、これらに限定されない)。
【0118】
実施例11
ISCOMベースのアジュバントを含むワクチンと非DNA塩基含有ポリヌクレオチドとの同時アジュバント化
以下の実施例は、ISCOMS(免疫刺激複合体)をアジュバントとして含む従来のワクチンに対する免疫応答を高める上での本発明のポリヌクレオチド配列の使用を説明する。いくつかのワクチンは、ISCOMSでアジュバント化されていることから利益を得ることが示されてきた。これらのワクチンは、本発明の非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを用いてさらに
アジュバント化され、それにより抗体産生および保護活性の刺激が達成される。用いられる非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの用量(1〜100μg/ワクチン用量内だが、これに限定されない)を製剤段階中の製造過程の間または免疫化直前のいずれかにおいてワクチンに添加し、個体の免疫化を、確立されたワクチン用量および投与経路(従来的には筋肉内注射だがこれに限定されない)を用いて、確立されたワクチン接種手順に従って実施する。非DNA塩基含有ポリヌクレオチドを含有するISCOMでアジュバント化したワクチンを用いた個体の免疫化は、亢進した保護抗体力価、感染性生物体への曝露に対する耐性、または確立された疾患の除去によって決定されるように、ISCOMでアジュバント化されたワクチン
単独を用いたワクチン接種と比較した場合、優れた免疫応答を結果的に生じる。当業者は、a)亢進した免疫応答からの利点が、免疫化の回数が最適でない場合(例えば、3回以上の免疫化の代わりに1または2回の免疫化)、または投与される抗原(複数可)の用量が、例えば、大流行の免疫化の間のように最適未満である場合にも達成され、b)ISCOMでアジュバント化されたワクチンにおける抗原節約が、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドと同時
アジュバント化した結果として生じることを認識するであろう。非DNA塩基含有ポリヌク
レオチドの添加から利益を得るISCOMでアジュバント化されたワクチンの例は、ロドコッ
カス・エクイワクチン、ウマ2型ヘルペスウイルス(EHV‐2)ワクチン、牛肺疫(CPBB)
ワクチン、ウシのウイルス性下痢(BVDV)ワクチン、トキソプラズマ・ゴンヂワクチン、トリインフルエンザウイルスワクチン、ネコインフルエンザウイルスワクチン、ゴナドトロピン放出因子ワクチン、ニューカッスル病ワクチン、呼吸系発疹ウイルス、ヘルペスワクチン、麻疹ウイルスワクチン、ヒトパピローマワクチンがある(が、これらに限定されない)。
【0119】
実施例12
ウイロソームを含有するワクチンと非DNA塩基含有ポリヌクレオチドとの同時アジュバン
ト化
以下の実施例は、ウイロソームを含むワクチンに対する免疫応答を高める上での本発明のポリヌクレオチド配列の使用を説明する。ウイロソームは、ヌクレオキャプシドを欠く再構成された空のウイルスエンベロープおよび源ウイルスの遺伝子材料を表す。ウイロソームは、免疫学的活性物質の送達のための市販の認可された担体およびアジュバント系である。この主として合成の担体は、ほぼいずれの抗原にも広範に適用可能である。用いられる非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの用量(1〜100μg/ワクチン用量内だが、これに限定されない)を製剤段階中の製造過程の間または免疫化直前のいずれかにおいてワクチンに添加し、個体の免疫化を、確立されたワクチン用量および投与経路(従来的には三角筋
への筋肉内)を用いて、確立されたワクチン接種手順に従って実施する。非DNA塩基含有
ポリヌクレオチドを含有するウイロソームを用いた免疫化は、亢進した保護抗体力価および感染性曝露に対する耐性または確立された疾患の除去によって決定されるように、ウイロソームワクチンを用いたワクチン接種と比較した場合、優れた免疫応答を結果的に生じる。当業者は、a)亢進した免疫応答からの利点が、免疫化の回数が最適でない場合(例
えば、3回の代わりに2回の免疫化)、または投与される抗原(複数可)の用量が、例えば、大流行の免疫化の間のように最適未満である場合にも達成され、b)ウイロソームでア
ジュバント化されたワクチンにおける抗原節約が、非DNA塩基含有ポリヌクレオチドと同
時アジュバント化した結果として生じることを認識するであろう。非DNA塩基含有ポリヌ
クレオチドのウイロソームへの添加から利益を得るワクチンの例は、A型肝炎ワクチン、A+B型肝炎ワクチン、HIV/エイズワクチン、マラリアワクチン、インフルエンザワクチン、および呼吸系発疹ウイルス(RSV)ワクチンがある(が、これらに限定されない)。
【0120】
実施例13
モノホスホリルリピドAを含むワクチンと非DNA塩基含有ポリヌクレオチドとの同時アジュバント化
以下の実施例は、免疫系であるモノホスホリルリピドA(MPL)を刺激するように意図された免疫刺激物質を含むワクチンに対する免疫応答を高める上での本発明のポリヌクレオチド配列の使用を説明する。MPLは、抗原特異的免疫性を高めるトール様4型受容体(TLR4)アゴニストである。Pollinex Quattro(登録商標)などのブタクサワクチンは、免疫保護(IgG)抗体の産生を刺激するよう意図され、MPLでアジュバント化される。用いられる非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの用量(1〜100μg/ワクチン用量の範囲内だが、これに限定されない)を製造過程の間または免疫化直前のいずれかにおいてワクチンに添加し、個体の免疫化を、確立されたワクチン用量および投与経路(従来的には三角筋への筋肉内)を用いて、確立されたワクチン接種手順に従って実施する。非DNA塩基含有ポリヌクレ
オチドを含有するMPL含有ワクチンを用いた免疫化は、亢進した保護抗体力価およびブタ
クサの季節のアレルギー発作の低下によって決定されるように、MPL含有ワクチンを用い
たワクチン接種と比較した場合、優れた免疫応答を結果的に生じる。当業者は、a)亢進
した免疫応答からの利点が、免疫化の回数が最適でない場合(例えば、4回の代わりに2回の免疫化)でも達成されることを認識するであろう。非DNA塩基含有ポリヌクレオチドのMPL含有ワクチンへの添加から利益を得るワクチンの例は、ブタクサワクチン、B型肝炎ワ
クチン、熱帯熱マラリア原虫ワクチン、(陰部ヘルペスを含む)ヘルペスウイルスワクチン、インフルエンザワクチン、牧草花粉アレルギーワクチンがある(が、これらに限定されない)。
【0121】
先に引用されたすべての特許、刊行物、および要約は、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれる。上記が、本発明の好ましい実施態様に関するものに過ぎず、かつ該実施態様において数多くの改変または変更が、以下の特許請求の範囲に定義される発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ3〜30塩基の合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列、医薬として許容し得るビヒクル、および1以上の抗原を含む組成物であって、該非DNA塩基は、ネブラリン、ヒポキサンチン、またはウラシルのうちの1以上である、該組成物。
【請求項2】
前記非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列は、長さ3〜20塩基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列は、長さ3〜9塩基である、請求項1に記載の
組成物。
【請求項4】
前記医薬として許容し得るビヒクルが、1以上のアジュバントビヒクルを含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項5】
前記1以上のアジュバントビヒクルが、ミョウバン、油ベースのアジュバント、免疫刺
激複合体、ウイロソーム、もしくはモノホスホリルリピドA、またはそれらの類似体であ
る、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
免疫調節剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
長さ3〜30塩基の合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列を含む組成物であって、該非DNA塩基が、ネブラリン、ヒポキサンチン、またはウラシルのうちの1以上であり、該ポリヌクレオチド配列が、配列番号5である、該組成物。
【請求項8】
長さ3〜30塩基の合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列、医薬として許容し得るビヒクル、および1以上の抗原を含む組成物の、薬剤の調製における使用であって、該非DNA塩基は、ネブラリン、ヒポキサンチン、またはウラシルのうちの1以上である、該使用。
【請求項9】
長さ3〜30塩基の合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列、医薬として許容し得るビヒクル、および1以上の抗原を含む組成物の、インビボ又はインビトロでの免疫応答を調節
するための、薬剤の調製における使用であって、該非DNA塩基が、ネブラリン、ヒポキサ
ンチン、またはウラシルのうちの1以上である、該使用。
【請求項10】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の組成物をインビトロまたはインビボ投与することを含む、1以上の抗原に対する免疫応答を調節する方法。
【請求項11】
前記インビボでの投与が、動物またはヒトに投与することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記調節された免疫応答が、抗原による攻撃後の抗体応答の変化である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物をインビトロまたはインビボで投与することを含む、抗原提示細胞を刺激する方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物を動物またはヒトに投与することを含む、抗原に対する免疫応答を亢進する方法であって、該組成物における抗原の量が、前記非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの不在下で該免疫応答を亢進するために必要とされる抗原の
量よりも少ない、該方法。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物を動物またはヒトに投与することを含む、抗原に対する免疫応答を低下させる方法。
【請求項16】
前記組成物における抗原の量は、前記非DNA塩基含有ポリヌクレオチドの不在下で前記
免疫応答を低下させるために必要とされる抗原の量よりも少ない、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチドが、配列番号1〜30のいずれか1である、請求
項1〜16のいずれか一項に記載の合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列。
【請求項18】
前記合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列が、該合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列の5'末端または3'末端において、TEG-コレステリル部分、1以上の追加的なアデニ
ン、チミン、シトシン、もしくはグアニン塩基、または1以上の追加的なネブラリン、ヒ
ポキサンチン、もしくはウラシル塩基をさらに含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の合成非DNA塩基含有ポリヌクレオチド配列。

【公表番号】特表2013−510189(P2013−510189A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538420(P2012−538420)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002561
【国際公開番号】WO2011/058400
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(503082723)バイオニケ ライフ サイエンシーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】