説明

面実装型電子部品

【課題】 ラジアルリード型部品から製造される面実装型部品を提供する。
【解決手段】 面実装型電子部品1は、ラジアルリード型電子部品3とケース2を備えている。ラジアルリード型電子部品3は、素子部31と接続された2本のリード部32を有している。ケース2は、被吸着面をなす第1面21と、基板に搭載された際に基板と対向する対向面22とを有しており、ラジアルリード型電子部品3を内部に収納する。対向面22上における一方向Xの中央であって直交方向Yの中心に関して点対称な位置には、2本のリード部32をそれぞれ挿通・固定するための2つの挿通固定部222が形成されている。挿通固定部222に固定された2本のリード部32のうち、ケース2の外に延出した2本の延出部32cは、対向面22と略平行な平面上において直交方向Yかつ互いに反対方向に折り曲げられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアルリード型部品から製造される面実装型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、チップ部品等の面実装型電子部品を基板上に実装する際には、まず、面実装型電子部品を吸着機により吸着し、クリームハンダが印刷された基板上のパターンの所定位置に搭載する。続いて、基板に電気炉を通過させることにより、クリームハンダが溶解する。クリームハンダは、電気炉通過後に所定温度以下になると固着するので、これにより、面実装型電子部品は、基板上に実装される。
【0003】
一方、ラジアルリード型部品の場合には、そのリード部分を基板穴に挿入し、手作業でハンダ付けを行うことにより基板上に実装される。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−201538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、面実装型電子部品の基板への実装は、機械により自動的に行うことができるため、ラジアルリード型部品の場合と比べて効率が良い。しかしながら、面実装型電子部品は、ラジアルリード型部品と比べてコストが高いため、今日のように大量の部品を使用する機器を製造する場合には、面実装型電子部品を大量に使用することは難しい。
【0005】
一方、ラジアルリード型部品は、コスト面においては面実装型電子部品よりも有利であるが、吸着機による吸着が可能な所定形状の平面を有さないため吸着を行うことができず、手作業となり作業効率が悪い。
【0006】
そこで、本発明は、実装性とコスト面において有利なラジアルリード型部品を有する面実装型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による面実装型電子部品は、ラジアルリード型電子部品と、ラジアルリード型電子部品を内部に収納するためのケースとを備えている。ラジアルリード型電子部品は、素子部と、素子部と接続された2本のリード部とを有している。ケースは、被吸着面をなす第1面と、基板に搭載された際に基板と対向する対向面を備えた対向部とを少なくとも有しており、対向面を含む平面上において対向面の一方向の中央であって一方向と直交する幅の中心に関して対称な位置には、2本のリード部をそれぞれ挿通・固定するための2つの挿通固定部が形成されている。挿通固定部に固定された2本のリード部のうち、ケースの外に延出した2本の延出部は、対向面を含む平面と略平行な平面上において一方向と略直交する方向かつ互いに反対方向に折り曲げられている。
【0008】
このような構成によれば、ラジアルリード型電子部品は、被吸着面をなす第1面を有するケース内に収納されるので、吸着機による吸着が可能となり、機械による自動ハンダ付け作業が可能となる。更に、面実装型電子部品は、ラジアルリード型部品とケースとからなる簡易かつ安価な構成であるため、他のチップ部品等と比べてコストを抑えることができる。また、2つの挿通固定部は、対向面を含む平面上において対向面の一方向の中央であって一方向と直交する幅の中心に関して対称な位置にあり、延出部は、挿通固定部から対向面を含む平面と略平行な平面上において一方向と略直交する方向かつ互いに反対方向に折り曲げられているので、面実装型電子部品は、基板上で安定した姿勢を保つことができる。
【0009】
また、ケースは、略角柱形状を有しており、対向面は、角柱形状の最大面積を有する面であるのが好ましい。このような構成によれば、ケースは、直方体形状を有しているため、他のチップ部品と同様に扱うことができる。また、対向面は、最大面積を有する面であるため、ケースの低背化が達成でき、面実装型電子部品の重心位置を基板側に近づけることができる。
【0010】
また、リード部のうち、ケース内に収納されている部分は折り曲げられているのが好ましい。このような構成によれば、他のチップ部品と同様に面実装型電子部品の低背化を実現することができる。
【0011】
また、リード部のうち、ケース内に収納されている部分は、素子部の最大寸法を有する方向を対向面を含む平面と平行な平面上に略一致させるように折り畳まれているのが好ましい。このような構成によれば、他のチップ部品と同様に面実装型電子部品の低背化を実現することができる。
【0012】
また、素子部と、リード部のうち素子部との接続部近傍とには、絶縁性樹脂が塗布されており、リード部は、絶縁性樹脂が塗布された接続部近傍よりもリード部の先端側において折り曲げられているのが好ましい。このような構成によれば、絶縁性樹脂が塗布された接続部近傍でリード部が折り曲げられているので、絶縁性樹脂が剥がれて素子が露出することによる耐湿特性の劣化を防止している。
【0013】
また、2本の延出部の長さは略同一であるのが好ましい。即ち、面実装型電子部品は両面実装基板に装着される場合がある。両面実装基板に面実装型電子部品を装着する場合は、まず第1面に所定の面実装型電子部品を装着面を上向きにして第1のリフローハンダ付けを行い、その後実装基板の面裏を逆転させ、第2面に他の面実装型電子部品を装着し第2のリフローハンダ付けを行う。この際、第1のリフローハンダ付けを行った面実装型電子部品は第1の面が下向きであるため、基板から垂下した状態でハンダが溶融する温度まで加熱される事になる。このとき、第1のリフローハンダ付けを行った面実装型電子部品を固定しているハンダは再溶融し、第1のリフローハンダ付けを行った面実装型電子部品はハンダが再溶融している間は溶融したハンダの表面張力によって基板上に維持される。
【0014】
本発明の前記構成によれば、このような両面実装基板のリフローの際に、両面実装基板の第1面に、本発明の面実装型電子部品をリフローハンダ付けした後に、基板の上下面を逆転させ、両面実装基板の第2面に他の面実装型電子部品を実装する場合、本発明の面実装型電子部品を装着した第1面が下向きになり、本発明の面実装型電子部品が基板から垂下した状態となった場合でも、2本の延出部に均等に面実装型電子部品の重さがかかり、一方の延出部に偏ることはない。一方の延出部に面実装型電子部品の重さが偏る場合には、重さの偏っている延出部を基板から引き剥がすような「てこの力」が生じ、基板から落下する危険性が高くなるが、2本の延出部に均等に面実装型電子部品の重さがかかっている場合には、上記「てこの力」は生じず、面実装型電子部品は、溶融したハンダの表面張力によって基板上に維持される。
【0015】
また、延出部の少なくとも基板に対向する面は、略平坦であるのが好ましい。このような構成によれば、面実装型電子部品を基板上に搭載した際の安定度が増す。
【0016】
また、ラジアルリード型部品は、中高圧用コンデンサであるのが好ましい。また、対向面を含む平面には、2つの挿通固定部を隔てるスリットが形成されているのが好ましい。このような構成によれば、スリットにより2本のリード部間の沿面距離を長くすることができるので、ラジアルリード型部品に高電圧が印加された場合にケースが絶縁破壊されるのを防止することができる。
【0017】
また、ケースは、熱可塑性樹脂により構成されているのが好ましい。通常は、熱可塑性の樹脂は耐電圧が弱いため、高電圧の印加されるラジアルリード型部品に用いる場合には、熱可塑性の樹脂よりも高価ではあるが耐電圧の強い熱硬化性の樹脂が使用される。しかし、スリットにより2本のリード間の沿面距離を長くすることができるため、ケースを構成する樹脂に単位長さ当たりに印加される電圧(即ち電界強度)を低くすることが出来る。このため耐電圧(耐電界強度)が低い熱可塑性樹脂でケースを構成してもケースが絶縁破壊されることを容易に防止できる。従って、このような構成によれば、ケースに熱可塑性樹脂を使用することにより、面実装型電子部品を安価に製造することができる。
【0018】
また、ケースは、対向面を規定する底部を有し、底部の基板側には、挿通固定部を通過するフラックス溜め溝が形成されているのが好ましい。このような構成によれば、一対のリード部を基板にハンダ付けする際に、フラックスが底部を介して一対のリード部間に流れ出すのを防止することができる。これにより、面実装型電子部品における絶縁耐圧性能の劣化を防止することができる。
【0019】
また、ケースは、対向面を規定する底部を有し、底部の少なくとも2つの挿通固定部間を結ぶ直線上には、基板側に突出する突出部が設けられているのが好ましい。このような構成によれば、突出部が基板に接触することにより、第1面と基板の間の密着を妨げ、空隙を形成する事が可能になる。この空隙により、一対のリード部を基板にハンダ付けする際に、前記第1面と基板との密着面に表面張力により溶融したフラックスが拡散することを防止することができる。これにより、面実装型電子部品における絶縁耐圧性能の劣化を防止することができる。
【0020】
また、ケースは、対向面を規定する底部を有し、底部には少なくとも2つの基板側に突出する突出部が設けられているのが好ましい。このような構成によれば、突出部が基板に接触することにより、第1面と基板の間の密着を妨げ、空隙を形成する事が可能になる。この空隙により、一対のリード部を基板にハンダ付けする際に、前記第1面と基板との密着面に表面張力により溶融したフラックスが拡散することを防止することができる。これにより、面実装型電子部品における絶縁耐圧性能の劣化を防止することができる。
【0021】
また、ケースは、対向面を規定する底部を有し、底部の第1面側の2つの挿通固定部間には、第1面側に突出するスパーク防止用壁が設けられているのが好ましい。このような構成によれば、2本のリード部間の沿面距離を長くすることができるため、ケースを構成する樹脂に単位長さ当たりに印加される電圧(即ち電界強度)を低くすることが出来る。このため耐電圧(耐電界強度)が低い熱可塑性樹脂でケースを構成してもケースが絶縁破壊されることを容易に防止できる。
【0022】
また、本発明の別の観点では、面実装型電子部品は、ラジアルリード型電子部品と、ラジアルリード型電子部品を内部に収納するためのケースとを備えている。ラジアルリード型電子部品は、素子部と、素子部と接続された2本のリード部とを有している。ケースは、被吸着面をなす第1面と、基板に搭載された際に基板と対向する対向面を備えた対向部とを少なくとも有しており、対向面の重心に関して点対称な位置には、2本のリード部をそれぞれ挿通・固定するための2つの挿通固定部が形成されている。挿通固定部に固定された2本のリード部のうち、ケースの外に延出した2本の延出部は、対向面を含む平面と略平行な平面上において略180度の角度を有するように互いに反対方向に折り曲げられている。
【0023】
このような構成によれば、ラジアルリード型電子部品は、被吸着面をなす第1面を有するケース内に収納されるので、吸着機による吸着が可能となり、機械による自動ハンダ付け作業が可能となる。更に、面実装型電子部品は、ラジアルリード型部品とケースとからなる簡易かつ安価な構成であるため、他のチップ部品等と比べてコストを抑えることができる。また、2つの挿通固定部は、対向面の重心に関して点対称な位置にあり、延出部は、挿通固定部から対向面を含む平面と略平行な平面上において略180度の角度を有するように互いに反対方向に折り曲げられているので、面実装型電子部品は、基板上で安定した姿勢を保つことができる。
【0024】
また、本発明の別の観点では、素子部と、素子部と接続された2本のリード部と、を有するラジアルリード型電子部品と、基板に搭載された際に前記基板と対向する対向面を有し対向面の一方向の中央であって一方向と直交する幅の中心に関して対称な位置に2つの挿通固定部が形成されたケースと、から面実装型電子部品を製造する方法を提供する。
【0025】
面実装型電子部品の製造方法は、リード部のうち、ケース内に収納されている部分を、素子部の最大外径寸法を有する方向を対向面を含む平面と平行な平面上に略一致させるように折り畳むステップと、2本のリードを2つの挿通固定部にそれぞれ固定するステップと、ケースの外に延出した2本の延出部を、対向面と略平行な平面上において一方向と略直交する方向かつ互いに反対方向に折り曲げるステップと、ケースに、被吸着面となる第1面を取り付けるステップとを備えている。
【0026】
このような構成によれば、ラジアルリード型電子部品とケースという簡易かつ安価な構成で、機械による自動ハンダ付け作業が可能となる面実装型電子部品を製造することができる。
【0027】
また、2本のリードを2つの挿通固定部に固定するステップの前に、延出部の基板に対向する面を略平坦に成形するステップを備えるのが好ましい。このような構成によれば、リード部を挿通固定部に挿入する前に上記成形を行うため、リード部の平坦化成形を精度良く行うことが出来る。また、リード部が平坦化されているため、ケース外に延出した2本の延出部を精度良く折り曲げることが可能になる。なお、ケースの挿通固定部の形状は、平坦化したリード部を挿通することが可能なように楕円状、長方形状等の適当な形状とすれば良い。
【発明の効果】
【0028】
本発明の面実装型電子部品によれば、ラジアルリード型部品とケースという簡易かつ安価な構成で、機械による自動ハンダ付け作業が可能となる。また、ラジアルリード型部品がケースに収納されているため、電気炉の熱や熱風がラジアルリード型部品に直接当たることがなく、かつ、ケース内の空気により断熱性が確保されるので、熱による影響を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態による面実装型電子部品について、図1から図5を参照して説明する。図1は、面実装型電子部品1の斜視図である。面実装型電子部品1は、ケース2とコンデンサ3とを備えている。コンデンサ3は、ケース2内に折り畳まれて収納されている。
【0030】
図2は、ケース2の斜視図である。ケース2は、熱可塑性の樹脂により構成されており、上面21と底面22が最大面積を有する直方体形状を有している。上面21は、図示せぬ吸着用サクションパイプが面当接し得るに十分な面積を有している。底面22には、長方形形状の底面22を折半するスリット221が形成されている。また、底面22には、底面22の長手方向Xの中央位置であってスリット221に関して対称な位置に2つの挿通固定孔222が形成されている。
【0031】
コンデンサ3は、中高電圧用のラジアルリード型コンデンサである。中高電圧用コンデンサとは、具体的には定格電圧がDC500V〜8KV(AC125V〜600V)の円板絶縁型固定磁気コンデンサである。図1に示すように、コンデンサ3は、略円形の素子部31と、一対のリード部32と、塗装部33とを備えている。一対のリード部32は、素子部31とそれぞれ接続されている。塗装部33は、絶縁性の樹脂から構成されており、主塗装部33aと、主塗装部33aと一体の副塗装部33bとを備えている。主塗装部33aは、素子部31を覆い、副塗装部33bは、一対のリード部32の素子部31との接続部近傍を覆っている。素子部31は、略円板形状であるため、主塗装部33aも円板形状を有している。
【0032】
コンデンサ3は、円板状の素子部31の平面部分が上面21及び底面22と略平行になるように、第1屈曲部32aにおいて、一対のリード部32が折り畳まれている。一対のリード部32の先端側は、2つの挿通固定孔222をそれぞれ挿通し、第2屈曲部32bで折り曲げられている。第2屈曲部32bは、主塗装部33aの反リード部側の先端と第1屈曲部32aとの略中間点に位置している(図4)。一対のリード部32の第2屈曲部32bよりも先端側は、互いに略同一の長さを有する延出部32cをなし、長手方向Xと略直交する直交方向Yかつ互いに離れる方向に折り曲げられている。また、延出部32cは、面実装部品1が基板に安定して搭載されるように、ケース2の内部から底面22へ向う方向に平坦に成形されている。なお、図1では、延出部32cは、底面22の面積外まで延びているが、面積内に収まっていても良い。
【0033】
実装の際には、上面21が図示せぬ吸着機のサクションパイプにより吸着されて基板上のパターンの所定位置に搭載され、延出部32cの平坦面が基板上のパターンにハンダ付けされる。
【0034】
このように、面実装型電子部品1は、ラジアルリード型のコンデンサ3をケース2内に収納することで、定型性を有する平面上の上面21を有することとなるので、吸着機による吸着が可能となり、機械による自動ハンダ付け作業が可能となる。更に、面実装型電子部品1は、通常のラジアルリード型部品3とケース2とからなる簡易かつ安価な構成であるため、他のチップ部品等と比べてコストを抑えることができる。また、ラジアルリード型部品がケースに収納されているため、電気炉の熱や熱風がラジアルリード型部品に直接当たることがなく、かつ、ケース内の空気により断熱性を確保されるので、熱による影響を軽減することができる。
【0035】
また、2つの挿通固定孔222は、底面22において底面22の長手方向の中央であって長手方向と直交する幅の中心に関して対称な位置にあり、延出部32cは、挿通固定孔222から底面22と略平行な平面上において長手方向と略直交する方向かつ互いに反対方向に折り曲げられているので、面実装型電子部品1は、基板上で安定した姿勢を保つことができる。
【0036】
また、略同一の長さを有する一対の延出部32cが、底面22の長手方向Xの中央位置に直交する方向かつ互いに反対方向に延出しているので、両面実装基板のリフローの際に、両面実装基板の第1面に、面実装型電子部品1をリフローハンダ付けした後に、基板の上下面を逆転させ、両面実装基板の第2面に他の面実装型電子部品1を実装する場合、面実装型部品1を装着した第1面が下向きになり、面実装型電子部品1が基板から垂下した状態となった場合でも、2本の延出部32cに均等に面実装型電子部品1の重さがかかり、一方の延出部32cに偏ることはない。
【0037】
即ち、面実装型部品1は両面実装基板に装着される場合がある。両面実装基板に面実装型部品1を装着する場合には、まず第1面に所定の面実装型電子部品1を装着面を上向きにして第1のリフローハンダ付けを行い、その後実装基板の面裏を逆転させ、第2面に他の面実装型部品1を装着し第2のリフローハンダ付けを行う。この際、第1のリフローハンダ付けを行った面実装型部品1は第1の面が下向きであるため、基板から垂下した状態でハンダが溶融する温度まで加熱される事になる。この時、第1のリフローハンダ付けを行った面実装型部品1を固定しているハンダは再溶融し、第1のリフローハンダ付けを行った面実装型部品1はハンダが再溶融している間は溶融したハンダの表面張力によって基板上に維持される。
【0038】
このように、一方の延出部32cに面実装型電子部品1の重さが偏る場合には、重さの偏っている延出部32cを基板から引き剥がすような「てこの力」が生じ、基板から落下する危険性が高くなるが、2本の延出部32cに均等に面実装型電子部品1の重さがかかっている場合には、上記「てこの力」は生じず、面実装型電子部品1は、溶融したハンダの表面張力によって基板上に維持される。
【0039】
また、ケース2は、直方体形状を有しているため、他のチップ部品と同様に扱うことができる。更に、コンデンサ3は、円板状の素子部31の略平面部分が上面21及び底面22と略平行になるように、リード部32が折り曲げられてケース2内に収納されるため、面実装型電子部品1の低背化が達成でき面実装型電子部品1の重心位置を基板側に下げることができる。また、底面22が、最大面積を有する面であることからも、面実装型電子部品1の低背化を実現することができる。
【0040】
また、本実施の形態のような中高電圧用のコンデンサには、最大でDC6〜8KVもの電圧が印加される場合がある。その場合、ケース2が絶縁破壊を起こし、一対のリード部32が短絡してしまう恐れがある。しかし、本実施の形態のケース2には、スリット221により一対のリード部32間の沿面距離を長くすることができので、ケース2が絶縁破壊されるのを防止することができる。また、スリット221は、ハンダに含まれるフラックスが流れ出すことにより一対のリード部32を短絡する恐れも防止することができる。
【0041】
また、本実施の形態においては、ケース2を熱可塑性の樹脂によって成形している。通常は、熱可塑性の樹脂は耐電圧が弱いため、本実施の形態のように高電圧の印加されるコンデンサ等に用いる場合には、熱可塑性の樹脂よりも高価ではあるが耐電圧の強い熱硬化性の樹脂が使用される。しかし、本実施の形態においては、スリット221により一対のリード部32間の沿面距離を長くすることができるため、ケース2を構成する樹脂に単位長さ当たりに印加される電圧(即ち電界強度)を低くすることが出来る。このため耐電圧(耐電界強度)が低い熱可塑性樹脂でケース2を構成してもケース2が絶縁破壊されることを容易に防止できる。従って、ケース2に熱可塑性樹脂を使用することができ、面実装型電子部品を安価に製造することができる。
【0042】
次に、図3から図5を参照しながら面実装型電子部品1の製造方法について説明する。面実装型電子部品1は、図2に示すケース2に、図3に示すコンデンサ3を折り曲げて収納することにより製造される。なお、上面21は、製造前の段階ではケース2に取り付けられていない。
【0043】
図4は、リード部32が折り曲げられた状態のコンデンサ3を示す図である。まず、第1屈曲部32aにおいて、一対のリード部32を折り畳む。第1屈曲部32aは、折り畳みの際に、副塗装部33bがリード部32から剥離して素子部31が露出することによる耐湿特性の劣化を防止するために、副塗装部33bよりもリード部32の先端側の所定位置に位置している。
【0044】
具体的には、第1屈曲部32aと、リード部32と副塗装部33bの境界との距離が0.2mm未満の場合には、塗装部33bが剥離することによる不良率が90%となることが分かっているため、本実施の形態においては、第1屈曲部32aは、リード部32と副塗装部33bとの境界から1mm以上離れている。なお、第1屈曲部32aと、リード部32と副塗装部33bと境界との距離が0.2mm以上の場合に不良率が改善され、0.2mmの場合には5%、0.5mmの場合には2%、1mmの場合には0%の不良率となることが実験より明らかとなっている。従って、第1屈曲部32aと、リード部32と副塗装部33bの境界との距離は、少なくとも0.2mm以上離れていることが望ましい。
【0045】
続いて、リード部32の第2屈曲部32bにおいて、リード部32の先端側を素子部31及び塗装部33から離れる方向へ略90度折り曲げる。この際、第2屈曲部32bは、主塗装部33aの反リード部32側の先端と第1屈曲部32aとの略中間点に位置する。なお、第1屈曲部32aと第2屈曲部32bの折り曲げは、どちらを先に行っても良い。
【0046】
なお、一対のリード部32を挿通固定部222に固定する前に、延出部32cの基板に対向する面を略平坦に成形しても良い。この場合には、リード部32を挿通固定部222に挿入する前に上記成形を行うため、リード部32の平坦化成形を精度良く行うことが出来る。またリード部32が平坦化されているため、ケース2外に延出した2本の延出部32cを精度良く折り曲げることが可能になる。なお、ケース2の挿通固定部222の形状は、平坦化したリード部32を挿通することが可能なように楕円状、長方形状等の適当な形状とすれば良い。
【0047】
この状態で、一対のリード部32の先端をケース2の挿通固定孔222にそれぞれ挿入固定する。リード部32が、屈曲部32bまで挿通固定孔222に挿入されたら、続いて、図5に示すように、一対のリード部32を、直交方向Y方向かつ互いに離れる方向に折り曲げる。この際、リード部32の平坦に成形された面は、基板に搭載される際に基板と当接するように、ケース2の内部から底面22へ向う方向を向く。この状態で、一対の延出部32cは略同一の長さとなる。最後に、ケース2に上面21を取り付けることにより面実装型電子部品1が完成する。
【0048】
尚、本発明の面実装型電子部品は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0049】
例えば、本実施の形態においては、コンデンサ3は、中高圧コンデンサであるが、ラジアルリード型部品であれば、例えば、バリスタのような他の電子部品であっても良い。また、素子部31及び主塗装部33aも円板形状に限らない。更に、図1等では、ケース2は側壁を有するが、側壁の代わりに上面21を支持するための柱を備えるのみの構成であっても良い。その場合は、それぞれの柱の底面であって外縁側の辺を互いに互いに結ぶことにより、「対向面を含む平面」が画成される。
【0050】
また、本実施の形態においては、ケース2は、直方体形状であったが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示す面実装型電子部品101のように円筒形状のケース103を備えても良いし、図7に示す面実装型部品201のように非対称形状のケース203を備えても良い。その場合には、2つの挿通固定孔222を、底面22の長手方向Xの中央位置であってスリット221に関して対称な位置に形成する代わりに、底面22の重心に関して点対称な位置に形成しても良い。これにより、面実装型電子部品1の重さが2本の延出部22cに均等にかかることとなるため、面実装型電子部品1は、基板上で安定した姿勢を保つことができる。
【0051】
更に、スリット221は、1つに限らず、図8に示すように複数備えても良い。また、図9(a)及び図9(b)に示すように、底面22の基板側に一対のフラックス溜め溝223と、一対の段差部224とを備えても良い。フラックス溜め溝223は、挿通固定孔222を通過するように形成されており、底面22よりもZ軸方向において低くなっている。段差部224は、フラックス溜め溝223の両縁に沿って形成されており、底面22よりもZ軸方向において高くなっている。このような構成によれば、リード部32を基板にハンダ付けする際に、フラックスが底面22を介して一対のリード部32間に流れ出すのを防止することができる。これにより、面実装型電子部品1における絶縁耐圧性能の劣化を防止することができる。また、段差部224が基板に接触することにより、底面22と基板の間の密着を妨げ、空隙を形成する事が可能になる。この空隙により、一対のリード部32を基板にハンダ付けする際に、底面22と基板との密着面に表面張力により溶融したフラックスが拡散することを防止することができる。これにより、面実装型電子部品1における絶縁耐圧性能の劣化を防止することができる。
【0052】
また、図10に示すように、底面22の一対の挿通固定孔222間に、上面21側に延出した端子間スパーク防止用壁225を備えてもよい。これにより、スリット221と同様に一対のリード部32間の沿面距離を長くすることができるため、ケースを構成する樹脂に単位長さ当たりに印加される電圧(即ち電界強度)を低くすることが出来る。このため耐電圧(耐電界強度)が低い熱可塑性樹脂でケースを構成してもケースが絶縁破壊されることを容易に防止できる。
【0053】
リード部32は、図11(a)及び図11(b)に示すように、第1屈曲部32aにおいて、底面22とは反対側に折り曲げてもよい。この場合、コンデンサ3は、図12に示すようにケース3内に収納される。このような構成によれば、ケース3内におけるコンデンサ3のZ軸方向の高さを低くすることができるので、面実装型電子部品1の低背化を一層実現することができる。
【0054】
更に、ケース2の上面21の代わりに、図13(a)に示すような四隅が熱圧着用に部分的に形状変更されたケース421を用いても良い。この場合、ケース421は、図13(b)に示すように、熱圧着部422でケース2と接続され、図13(c)に示すような面実装型電子部品401を構成する。なお、ケース421は、図13に示すような角形状に限らず、例えば、丸形状であっても良い。
【0055】
また、本実施の形態では、ケース2の底面21、22は、長方形形状を有していたが、正方形形状であっても良い。この場合、長手方向Xと直交方向Yは、任意に選ぶことができる。更に、2つの挿通固定孔222は、長手方向Xの中央位置でなくても、底面22の直交方向Yの中央位置であってスリット221に関して対称な位置に形成されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態による面実装型電子部品の斜視図である。
【図2】本実施の形態による面実装型電子部品を構成するケースの斜視図である。
【図3】本実施の形態による面実装型電子部品を構成するコンデンサの正面図である。
【図4】リード部が折り曲げられた状態の本実施の形態によるコンデンサを示す図である。
【図5】本実施の形態によるコンデンサのケースへの固定を説明する図である。
【図6】本実施の形態によるケースの変更例を示す図である。
【図7】本実施の形態によるケースの他の変更例を示す図である。
【図8】本実施の形態によるケースの他の変更例を示す図である。
【図9(a)】本実施の形態によるケースの底面の他の変更例を示す図である。
【図9(b)】図9(a)の断面図である。
【図10】本実施の形態によるケースの底面の他の変更例を示す図である。
【図11(a)】リード部が折り曲げられた状態の本実施の形態によるコンデンサの変更例を示す図である。
【図11(b)】図11(a)の平面図である。
【図12】図11(a)のコンデンサがケース内に収納された状態を示す図である。
【図13(a)】本実施の形態によるケースの上面の他の変更例を示す図である。
【図13(b)】図13(a)の上面がケースに接続される様子を示す図である。
【図13(c)】図13(a)の上面が接続されたケースを示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 面実装型電子部品
2 ケース
3 コンデンサ
21 上面
22 底面
221 スリット
222 挿通固定孔
223 フラックス溜め溝
224 段差部
225 端子間スパーク防止用壁
31 素子部
32 リード部
32a、32b 屈曲部
32c 延出部
33 塗装部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子部と、前記素子部と接続された2本のリード部と、を有するラジアルリード型電子部品と、
被吸着面をなす第1面と、基板に搭載された際に前記基板と対向する対向面と、を少なくとも有し、前記ラジアルリード型電子部品を内部に収納するためのケースと、を備えた面実装型電子部品であって、
前記対向面の一方向の中央であって前記一方向と直交する幅の中心に関して対称な位置には、前記2本のリード部をそれぞれ挿通・固定するための2つの挿通固定部が形成されており、前記挿通固定部に固定された2本のリード部のうち、前記ケースの外に延出した2本の延出部は、前記対向面と略平行な平面上において前記一方向と略直交する方向かつ互いに反対方向に折り曲げられていることを特徴とする面実装型電子部品。
【請求項2】
前記ケースは、略角柱形状を有しており、前記対向面は、前記角柱形状の最大面積を有する面であることを特徴とする請求項1に記載の面実装型電子部品。
【請求項3】
前記リード部のうち、前記ケース内に収納されている部分は折り曲げられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の面実装型電子部品。
【請求項4】
前記リード部のうち、前記ケース内に収納されている部分は、前記素子部の最大寸法を有する方向を前記対向面を含む平面と平行な平面上に略一致させるように折り畳まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項5】
前記素子部と、前記リード部のうち前記素子部との接続部近傍とには、絶縁性樹脂が塗布されており、前記リード部は、前記絶縁性樹脂が塗布された前記接続部近傍よりも前記リード部の先端側において折り曲げられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項6】
前記2本の延出部の長さは略同一であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項7】
前記延出部の少なくとも前記基板に対向する面は、略平坦であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項8】
前記ラジアルリード型部品は、中高圧用コンデンサであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項9】
前記対向面を含む平面には、前記2つの挿通固定部を隔てるスリットが形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項10】
前記ケースは、熱可塑性樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項11】
前記ケースは、前記対向面を規定する底部を有し、前記底部の前記基板側には、前記挿通固定部を通過するフラックス溜め溝が形成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項12】
前記ケースは、前記対向面を規定する底部を有し、前記底部の少なくとも前記2つの挿通固定部間を結ぶ直線上には、前記基板側に突出する突出部が設けられていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項13】
前記ケースは、前記対向面を規定する底部を有し、前記底部には少なくとも2つの前記基板側に突出する突出部が設けられていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項14】
前記ケースは、前記対向面を規定する底部を有し、前記底部の前記2つの挿通固定部間には、前記第1面側に突出するスパーク防止用壁が設けられていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の面実装型電子部品。
【請求項15】
素子部と、前記素子部と接続された2本のリード部と、を有するラジアルリード型電子部品と、
被吸着面をなす第1面と、基板に搭載された際に前記基板と対向する対向面を備えた対向部と、を少なくとも有し、前記ラジアルリード型電子部品を内部に収納するためのケースと、を備えた面実装型電子部品であって、
前記対向面を含む平面上において前記対向面の重心に関して点対称な位置には、前記2本のリード部をそれぞれ挿通・固定するための2つの挿通固定部が形成されており、前記挿通固定部に固定された2本のリード部のうち、前記ケースの外に延出した2本の延出部は、前記対向面を含む平面と略平行な平面上において互いに略180度の角度を有するように互いに反対方向に折り曲げられていることを特徴とする面実装型電子部品。
【請求項16】
素子部と、前記素子部と接続された2本のリード部と、を有するラジアルリード型電子部品と、基板に搭載された際に前記基板と対向する対向面を有し前記対向面の一方向の中央であって前記一方向と直交する幅の中心に関して対称な位置に2つの挿通固定部が形成されたケースと、から面実装型電子部品を製造する方法であって、
前記リード部のうち、前記ケース内に収納されている部分を、前記素子部の最大外径寸法を有する方向を前記対向面を含む平面と平行な平面上に略一致させるように折り畳むステップと、
前記2本のリードを前記2つの挿通固定部にそれぞれ固定するステップと、
前記ケースの外に延出した2本の延出部を、前記対向面と略平行な平面上において前記一方向と略直交する方向かつ互いに反対方向に折り曲げるステップと、
前記ケースに、被吸着面となる第1面を取り付けるステップと、
を備えたことを特徴とする面実装型電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記2本のリードを前記2つの挿通固定部に固定するステップの前に、前記延出部の前記基板に対向する面を略平坦に成形するステップを備えたことを特徴とする請求項16に記載の面実装型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図10】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図12】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図13(c)】
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