説明

面状発熱体

【課題】電気絶縁性に優れて薄い面状発熱体を提供する。
【解決手段】面状発熱体10は、抵抗体12に電気接続された電極14の一部を露出させた状態で、電気絶縁フィルム16a,16bによって抵抗体12が被覆された抵抗シートと、電極14の露出部分に電気接続された電線20と、電極14と電線20の電気接続部分22を挟むように配置された一対の電気絶縁シート26,28と、電気接続部分22および一対の電気絶縁シート26,28を封入する樹脂パッケージ24とを有する。電気絶縁シート28または抵抗シートの少なくとも一方に形成された切り欠き部または切り込み部を介して電気絶縁シート28が抵抗シートに固定された状態で、電気接続部分22および一対の電気絶縁シート26,28が樹脂パッケージ24に封入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の供給を受けて発熱する面状発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、PTC(positive temperature coefficient)ヒータなど、電力の供給を受けて発熱するシート状の面状発熱体が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1記載の面状発熱体は、自己温度制御特性を備えるPTCインクの層からなる抵抗体と該抵抗体に電気接続された電極とを、電気絶縁性を備える2枚のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルムによって挟んで被覆した(ラミネートした)防水仕様の構造である。2つのフィルムにラミネートされたPTCインク層に電力を供給するために、外部の電源に接続される電線(ケーブル)は、一方のPETフィルムと電極とを貫通するハトメを介して該電極に電気接続される。ハトメが貫通するPETフィルムの貫通穴をシールするために、ハトメ全体がシリコン樹脂等のシールによって覆われている。
【0004】
2枚の電気絶縁フィルムによってラミネートされた電極と外部の電源とを電気接続する方法として、ハトメを使用しない方法も考えられる。例えば、2枚の電気絶縁フィルムの間から電極の一部を露出させ、その電極の露出部分に電線を、例えばヒュージング端子を介して接合し、電極と電線との電気接続部分を樹脂パッケージで封入する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−154574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、抵抗体とともに電極が2枚の電気絶縁フィルムに挟まれて被覆される面状発熱体に対して高い電気絶縁性が要求される場合、電極と電線との電気接続部分を十分に絶縁しなければならない。特許文献1に記載する面状発熱体の場合、ハトメ全体を覆うシリコン樹脂等のシールを大きくする必要がある。しかしながら、ハトメ全体を覆うシールを大きくすると、面状発熱体の厚さが部分的に増し、薄いという面状発熱体の利点が損なわれる。樹脂パッケージも、その内部に気泡が発生しうることを考慮するとある程度の厚さが必要であるため、面状発熱体の薄いという利点が損なわれる。樹脂パッケージ内に気泡が発生しないように、樹脂材料やパッケージ成形条件などを調節することが考えられるが、その場合、面状発熱体の作製が複雑になる。
【0007】
そこで、本発明は、薄さという利点を損なうことなく、簡単に高い電気絶縁性を備えることができる構造の面状発熱体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、
抵抗体に電気接続された電極の一部を露出させた状態で、電気絶縁フィルムによって前記抵抗体が被覆された抵抗シートと、
前記電極の露出部分に電気接続された電線と、
前記電極と前記電線の電気接続部分を挟むように配置された一対の電気絶縁シートと、
前記電気接続部分および前記一対の電気絶縁シートを封入する樹脂パッケージとを有し、
前記電気絶縁シートまたは前記抵抗シートの少なくとも一方に形成された切り欠き部または切り込み部を介して前記電気絶縁シートが前記抵抗シートに固定された状態で、前記電気接続部分および前記一対の電気絶縁シートが前記樹脂パッケージに封入されている、面状発熱体が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、
前記抵抗シートに形成された切り欠き部の縁から前記電極の一部が露出し、
前記切り欠き部の縁と前記電気接続部分とによって前記電気絶縁シートが挟持される、第1の態様に記載の面状発熱体が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、
前記切り欠き部の対向し合う2つの側縁と前記電気接続部分とによって前記電気絶縁シートが挟持される、第2の態様に記載の面状発熱体が提供される。
【0011】
本発明の第4の態様によれば、
前記切り欠き部の側縁にスリットが形成され、
前記電気絶縁シートの一部がスリットを通過した状態で、前記切り欠き部の対向し合う2つの側縁と前記電気接続部分とによって前記電気絶縁シートが挟持される、第3の態様に記載の面状発熱体が提供される。
【0012】
本発明の第5の態様によれば、
前記電線が、前記樹脂パッケージ内で少なくとも一度曲がって、前記電気接続部分から前記樹脂パッケージの外部に延びている、第1から第4の態様のいずれか一に記載の面状発熱体が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、樹脂パッケージ内において一対の電気絶縁シートが、電極と電線との電気接続部分を挟むように配置されている。この一対の電気絶縁シートにより、面状発熱体の厚さ方向について上記電気接続部分の絶縁を確保することが可能となり、樹脂パッケージのみで電気接続部分の絶縁距離を確保する場合と比較して、樹脂パッケージのサイズ(特に厚さ)を小さくすることができる。
【0014】
また、電気絶縁シートが抵抗シートに固定されるため、金型を介して樹脂パッケージを作製するときに、電気絶縁シートが溶融樹脂の流れによって移動することがない。これにより、金型に電気絶縁シートを固定する手段が必要なくなり、簡単に、電極と電線との電気接続部分を挟むように配置された状態の一対の電気絶縁シートを樹脂パッケージ内に封入することが可能になる。
【0015】
したがって、薄さという利点を損なうことなく、簡単に高い電気絶縁性を備えることができる構造の面状発熱体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る一実施の形態の面状発熱体の一部の上面図
【図2】図1に示すA−A線に沿った面状発熱体の一部の断面図
【図3】(A)はパッケージを取り除いた状態および電気絶縁シートの着脱状態を示す面状発熱体の一部の上面図、(B)はパッケージを取り除いた状態および電気絶縁シートの着脱状態を示す面状発熱体の一部の下面図
【図4】(A)は面状発熱体の作製工程を説明するための図、(B)は(A)に示す工程の後工程を説明するための図
【図5】(A)は図4(B)に示す工程の後工程を説明するための図、(B)は図5(A)に示す工程の後工程を説明するための図
【図6】本発明に係る別の実施の形態の面状発熱体を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、抵抗体に電気接続された電極の一部を露出させた状態で、電気絶縁フィルムによって前記抵抗体が被覆された抵抗シートと、前記電極の露出部分に電気接続された電線と、前記電極と前記電線の電気接続部分を挟むように配置された一対の電気絶縁シートと、前記電気接続部分および前記一対の電気絶縁シートを封入する樹脂パッケージとを有し、前記電気絶縁シートまたは前記抵抗シートの少なくとも一方に形成された切り欠き部または切り込み部を介して前記電気絶縁シートが前記抵抗シートに固定された状態で、前記電気接続部分および前記一対の電気絶縁シートが前記樹脂パッケージに封入されている、面状発熱体である。
【0018】
第1の発明によれば、樹脂パッケージ内において一対の電気絶縁シートが、電極と電線との電気接続部分を挟むように配置されている。この一対の電気絶縁シートにより、面状発熱体の厚さ方向について上記電気接続部分の絶縁を確保することが可能となり、樹脂パッケージのみで電気接続部分の絶縁距離を確保する場合と比較して、樹脂パッケージのサイズ(特に厚さ)を小さくすることができる。
【0019】
また、電気絶縁シートが抵抗シートに固定されるため、金型を介して樹脂パッケージを作製するときに、電気絶縁シートが溶融樹脂の流れによって移動することがない。これにより、金型に電気絶縁シートを固定する手段が必要なくなり、簡単に、電極と電線との電気接続部分を挟むように配置された状態の一対の電気絶縁シートを樹脂パッケージ内に封入することが可能になる。
【0020】
したがって、薄さという利点を損なうことなく、簡単に高い電気絶縁性を備えることができる構造の面状発熱体を提供することができる。
【0021】
第2の発明は、前記抵抗シートに形成された切り欠き部の縁から前記電極の一部が露出し、前記切り欠き部の縁と前記電気接続部分とによって前記電気絶縁シートが挟持される、第1の発明の面状発熱体である。これにより、抵抗シートに形成された切り欠き部を介して、電気絶縁シートを抵抗シートに固定することができる。
【0022】
第3の発明は、前記切り欠き部の対向し合う2つの側縁と前記電気接続部分とによって前記電気絶縁シートが挟持される、第2の発明の面状発熱体である。これにより、抵抗シートに形成された切り欠き部を介して、電気絶縁シートを抵抗シートに確実に固定することができる。
【0023】
第4の発明は、前記切り欠き部の側縁にスリットが形成され、前記電気絶縁シートの一部がスリットを通過した状態で、前記切り欠き部の対向し合う2つの側縁と前記電気接続部分とによって前記電気絶縁シートが挟持される、第3の発明の面状発熱体である。スリットにより、電気絶縁シートを抵抗シートに強固に固定することができる。
【0024】
第5の発明は、前記電線が、前記樹脂パッケージ内で少なくとも一度曲がって、前記電気接続部分から前記樹脂パッケージの外部に延びている、第1から第4の発明のいずれか一の面状発熱体である。これにより、電線が引っ張られることによって起こる電極と電線との電気接続部分での断線を抑制することができる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
図1は、本発明に係る一実施の形態の面状発熱体の一部を示している。また、図2は、図1に示すA−A線沿った面状発熱体の断面を示している。
【0027】
図1および図2に示すように、面状発熱体10は、電力の供給を受けて発熱する抵抗体12と、抵抗体12に電気接続された電極14と、抵抗体12と電極14とを挟んで被覆(ラミネート)する2枚の電気絶縁フィルム16a,16bとを備える抵抗シート18を有する。
【0028】
抵抗体12は、例えば、電気絶縁フィルム16aの表面上に形成されたPTC(positive temperature coefficient)インク層によって構成される。PTCインク層から構成される抵抗体12は、自己温度制御特性、すなわち、所定の温度を超えると抵抗が急激に増大する性質を備えるため、面状発熱体10による過剰な加熱を抑制することができる。
【0029】
電極14は、例えば、薄板の帯形状であって、可撓性を備える導電性材料(例えば、銅)から作製されている。
【0030】
電気絶縁フィルム16a,16bは、可撓性および電気絶縁性を備える、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)から作製されている。電気絶縁フィルム16a,16bは、抵抗体12と電極14とを挟んだ状態で、これらを被覆(ラミネート)している。電気絶縁フィルム16a,16bが抵抗体12と電極14とを挟んだ状態で接着されるまたは熱融着されることにより、抵抗体12を防水する抵抗シート18が構成されている。
【0031】
面状発熱体10はまた、電極14と外部の電源(図示せず)とを結線する電線20と、電極14と電線20との電気接続部分22を封入するホットメルト樹脂のパッケージ24とを有する。電線20は、例えば、絶縁材料で被覆されたリード線などである。ホットメルト樹脂のパッケージ24は、詳細は後述するが、型成形によって形成される。パッケージ24に使用されるホットメルト樹脂は、加熱されると流動性を備える、電気絶縁性の樹脂である。
【0032】
パッケージ24を取り除いた状態の面状発熱体10の上面図である図3(A)および下面図である図3(B)に示すように、電極14の一端14aは、抵抗シート18から露出し、電線20に電気接続されている。電線20と電極14の一端14aの電気接続は、例えば、はんだ接合またはヒュージング(ヒュージング端子を介して)によって行われる。
【0033】
電線20は、抵抗シート18の電気絶縁フィルム16bの表面に沿って配設されている(電気絶縁フィルム16aの表面に沿って配設されていない)。
【0034】
具体的には、抵抗シート18は、一つの側端18aから切り込んで形成された切り欠き部18bを備えており、その切り欠き部18bの先端縁18cから電極14の一端14aが露出している。電線20は、図1に示すように、電気接続部分22から抵抗シート18の側端18aに略平行に延び、その後、約90度曲がって側端18aに向かって延びている。すなわち、電線20は、パッケージ24内で少なくとも一度曲がって、電気接続部分22からパッケージ24の外部に向かって延びている。これにより、電線20がパッケージ24内で一度も曲がらずにパッケージ24の外部に延びる場合と比べて、電線20が引っ張られることによって起こる電極14と電線20との断線を抑制することができる。
【0035】
電極14と電線20との電気接続部分22は、図2に示すように、絶縁距離(空間距離)を確保するために、電気絶縁性を備えた2枚の電気絶縁シート26,28の間に挟み込まれるように配置されている。好ましい例では、2枚の電気絶縁シート26,28は、互いに平行した状態で面状発熱体10の厚さ方向に且つ電気接続部分22に可能な限り近接するよう配置される。また、2つの電気絶縁シート26,28は、パッケージ24内に少なくとも部分的に封入されている。これらの電気絶縁シート26,28は、可撓性を備えた、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)から作製されている。
【0036】
電気絶縁シート26は、図1に示すように、四角形状であって、一方の表面がパッケージ24の外部に露出した状態で該パッケージ24に封入(保持)されている。なお、電気絶縁シート26のパッケージ24内への封入方法については後述する。
【0037】
これに対して、電気絶縁シート28は、パッケージ24によって封入(保持)されるとともに、抵抗シート18に固定されている。電気絶縁シート28が抵抗シート18に固定される理由については後述する。
【0038】
具体的には、電気絶縁シート28は、抵抗シート18に形成された切り欠き部18bを介して抵抗シート18に固定される。そのために、切り欠き部18bは、抵抗シート18の側端18aに対して略直交する距離W1離れた2つの側縁18dと、抵抗シート18の側端18aから距離D1離れた先端縁18cとを備える。すなわち、切り欠き部18bは、幅W1と、奥行きD1とを備える形状である。
【0039】
このような切り欠き部18bと対応するために、電気絶縁シート28は、W1に比べて大きい幅W2と、D1に比べて小さい奥行きD2とを備える略四角形状に構成されている。
【0040】
電気絶縁シート28は、図3(A)および図3(B)に示すように、幅方向の側端28aが切り欠き部18bの側縁18dを越えて電気絶縁フィルム16b上に配置されることにより、且つ、2つの側端28aに挟まれた中央部分が電気接続部分22に対して電気絶縁フィルム16a側に配置されることにより、抵抗シート18に固定される。すなわち、電気絶縁シート28は、切り欠き部18bを介して電気接続部分22と抵抗シート18とに挟持される。
【0041】
また、電気絶縁シート28の前端(電気絶縁シート28の取り付け方向側の端)28bが切り欠き部18bの先端縁18cと接触することにより、切り欠き部18bの奥行きD1方向に関して、電気絶縁シート28は位置決めされる。
【0042】
さらに、切り欠き部18bの奥行きD1に比べて電気絶縁シート28の奥行きD2が小さいために、電気絶縁シート28は、抵抗シート18の輪郭からはみ出ることなく、抵抗シート18に固定され、且つ、パッケージ24で覆われることになる。これより、電気接続部分22の絶縁がより確実なものとなる。
【0043】
なお、抵抗シート18に固定された状態の電気絶縁シート28が切り欠き部18bの幅W1方向に移動しないように、電気絶縁シート28は、切り欠き部18bの幅W1に比べて小さい幅の突出部28cを備えるのが好ましい。この電気絶縁シート28の突出部28cは、図3(B)に示すように、電気絶縁シート28が抵抗シート18に固定された状態のとき、抵抗シート18の電気絶縁フィルム16a側に配置される。なお、この突出部28cは、電気接続部分22からの水平方向への距離を確保し、面状発熱体10の水平方向の絶縁距離を伸ばす効果がある。
【0044】
加えて、電気絶縁シート28を抵抗シート18に強固に固定するために、抵抗シート18の切り欠き部18bの側縁18dに、スリット(小さい切り欠き部)18eを形成してもよい。図3(A)および図3(B)に示すように、このスリット18eを介して、電気絶縁シート28の後端側(前端28bに対して反対側の端側)の角部(スリット18e側の角部)を抵抗シート18の電気絶縁フィルム16a側に配置することにより、電気絶縁シート28が抵抗シート18に強固に固定される。なお、図面では、スリット18eは、切り欠き部18bの一方の側縁18dにのみ形成されているが、両方の側縁18dに形成してもよい。
【0045】
ここからは本発明に係る一実施の形態の面状発熱体10の製造方法について説明する。
【0046】
図4(A)および図4(B)に示すように、抵抗シート18の側端18aに、切り欠き部18bを形成し、電極14の一端14aを抵抗シート18の外部に露出させる。また、切り欠き部18bの側縁18dにスリット18eを形成する。
【0047】
次に、図5(A)に示すように、電線20を抵抗シート18の電気絶縁フィルム16bに沿って配設するとともに、電線20と露出する電極14の一端14aとを電気接続する(電気接続部分22が形成される)。続いて、上述したように、電気絶縁シート28を、切り欠き部18bを介して(加えてスリット18eを介して)抵抗シート18に固定(仮固定)する。
【0048】
続いて、図5(B)に示すように、パッケージ24を成形するために、電気絶縁シート28が仮固定された抵抗シート18を金型40にセットする。なお、抵抗シート18は、電気絶縁フィルム16bを下方に向けた状態で金型40にセットする。電気絶縁シート26は、金型40のキャビティ40aの底面上に載置されている。なお、電気絶縁シート26は、金型40のキャビティ40aの底面の形状と、略同一形状に作製されている。
【0049】
図5(B)に示すように金型40を閉じた後、溶融したホットメルト樹脂をキャビティ40a内に流し込む。このとき、電気絶縁シート26は、金型40のキャビティ40aの底面と略同一形状であるため、溶融したホットメルト樹脂の流れによってほとんど移動しない。一方、電気絶縁シート28も、抵抗シート18に仮固定されているため、溶融したホットメルト樹脂の流れによって移動することがない。したがって、金型40のキャビティ40a内に溶融したホットメルト樹脂を充満し、その後冷却して金型40のキャビティ40a内のホットメルト樹脂を硬化させれば、図2に示すように、電気接続部分22を好ましく挟んだ状態の電気絶縁シート26,28を封入したパッケージ24が完成される。
【0050】
以上、本実施の形態によれば、パッケージ24内において2枚の電気絶縁シート26,28が、電極14と電線20との電気接続部分22を挟むように配置されている。この電気絶縁シート26,28を用いることで、面状発熱体10の厚さ方向について、電気接続部分22の絶縁を確保することができるため、パッケージ24のみで電気接続部分22の絶縁距離を確保する必要がなくなる。その結果、パッケージ24のサイズ、特にパッケージ24の厚さを小さくすることができる。
【0051】
また、電気絶縁シート28が抵抗シート18に固定されているため、金型40を介してホットメルト樹脂のパッケージ24を作製するときに、電気絶縁シート28が溶融したホットメルト樹脂の流れによって移動することがない。これにより、金型40に電気絶縁シート28を固定する手段が必要なくなり、簡単に、電気接続部分22を挟むように配置された状態の電気絶縁シート26,28をパッケージ24内に封入することが可能になる。
【0052】
したがって、薄さという利点を損なうことなく、簡単に高い電気絶縁性を備えることができる構造の面状発熱体10を提供することができる。
【0053】
なお、補足すると、電気絶縁シート26,28の大きさを変更するだけで、面状発熱体10をその厚さ方向に大きくすることなく、電極14と電線20との電気接続部分22は所望の絶縁距離を確保することができる。
【0054】
以上、上述の一実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限らない。
【0055】
例えば、電気絶縁シート28を抵抗シート18に固定するための切り欠き部18bの形状は、図3に示すような形状に限らない。また、固定するための切り欠き部18bは、抵抗シート18ではなく電気絶縁シート28に形成してもよいし、もしくは両方に形成してもよい。
【0056】
図6は、本発明に係る別の実施の形態の面状発熱体を示している。
【0057】
図6に示す面状発熱体110において、電気絶縁シート128はその前端128bに一対の切り欠き部128dを備え、一方、抵抗シート118はその側端118aに一対の切り欠き部118bを備える。電気絶縁シート128の一対の切り欠き部128dおよび抵抗シート118の一対の切り欠き部118bは、その幅が電気絶縁シート128の厚さと略同一にされている。また、抵抗シート118の電極114の一部は、一対の切り欠き部118bの間の側端118a部分から露出している。
【0058】
図6に示すように、電気絶縁シート128の一対の切り欠き部128dと抵抗シート118の一対の切り欠き部118bとが係合することにより、電気絶縁シート128を抵抗シート118に固定することができる。
【0059】
なお、この場合、図6に示すように、パッケージ124は、その概ね半分が抵抗シート118の側端118aから外側に位置する状態で形成されるが、パッケージ124内に抵抗シート118の一部が封入されていれば、面状発熱体110の構造的な強度は十分に確保される。
【0060】
このように、本発明は、広義には電気絶縁シートまたは抵抗シートの少なくとも一方に形成された切り欠き部を介して電気絶縁シートが抵抗シートに固定されるものであるため、電気絶縁シートが抵抗シートに固定できる切り欠き部であれば、その切り欠き部の形状は問わない。具体的に言えば、電極と電線の電気接続部分および切り欠き部の縁により電気絶縁シートを挟持できれば、あらゆる形状の切り欠き部が可能である。
【0061】
また、上述の実施の形態の場合、図2に示すように、一方の電気絶縁シート28は抵抗シート18に固定されるものの、他方の電気絶縁シート26は抵抗シート18に固定されていないが、本発明はこれに限定するわけではない。電極と電線との電気接続部分を挟むように配置された一対の電気絶縁シートの両方が、抵抗シートに固定されてもよい。
【0062】
さらに、上述の実施の形態の場合、電気絶縁シートは、抵抗シートの一部を削除して形成された切り欠き部を介して抵抗シートに固定されるが、本発明はこれに限らない。例えば、電気絶縁シートまたは抵抗シートの少なくとも一方に切り込みを入れて(切り込み部を形成し)、その切込み部を介して電気絶縁シートを抵抗シートに固定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る面状発熱体は、電気絶縁性に優れ且つ薄いため、例えば電気自動車のバッテリを暖めるなど、様々な用途に、また様々な分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 面状発熱体
12 抵抗体
14 電極
16a 電気絶縁フィルム
16b 電気絶縁フィルム
18 抵抗シート
18b 切り欠き部
20 電線
22 電気接続部分
24 パッケージ
26 電気絶縁シート
28 電気絶縁シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体に電気接続された電極の一部を露出させた状態で、電気絶縁フィルムによって前記抵抗体が被覆された抵抗シートと、
前記電極の露出部分に電気接続された電線と、
前記電極と前記電線の電気接続部分を挟むように配置された一対の電気絶縁シートと、
前記電気接続部分および前記一対の電気絶縁シートを封入する樹脂パッケージとを有し、
前記電気絶縁シートまたは前記抵抗シートの少なくとも一方に形成された切り欠き部または切り込み部を介して前記電気絶縁シートが前記抵抗シートに固定された状態で、前記電気接続部分および前記一対の電気絶縁シートが前記樹脂パッケージに封入されている、面状発熱体。
【請求項2】
前記抵抗シートに形成された切り欠き部の縁から前記電極の一部が露出し、
前記切り欠き部の縁と前記電気接続部分とによって前記電気絶縁シートが挟持される、請求項1に記載の面状発熱体。
【請求項3】
前記切り欠き部の対向し合う2つの側縁と前記電気接続部分とによって前記電気絶縁シートが挟持される、請求項2に記載の面状発熱体。
【請求項4】
前記切り欠き部の側縁にスリットが形成され、
前記電気絶縁シートの一部がスリットを通過した状態で、前記切り欠き部の対向し合う2つの側縁と前記電気接続部分とによって前記電気絶縁シートが挟持される、請求項3に記載の面状発熱体。
【請求項5】
前記電線が、前記樹脂パッケージ内で少なくとも一度曲がって、前記電気接続部分から前記樹脂パッケージの外部に延びている、請求項1から4のいずれか一に記載の面状発熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−174650(P2012−174650A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38555(P2011−38555)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】