説明

靱帯および腱の処置のために移植片を用いる方法

本発明による靱帯または腱を治療する方法は、靱帯または腱に組織生成移植片を挿入することを含むことができ、これにより損傷を治療する。組織生成移植片は複数の微粒子を含有する。続いて微粒子は生物学的な足場を形成し、これは靱帯または腱における一部の連結組織として少なくとも機能し、再生中に構造上の支持を与える。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般的には手術用移植片に関し、より詳細には靱帯および腱を治療するための手術用移植片および手法に関する。
【0002】
関連技術の記載
靱帯および腱は筋骨格系を支持し、かつ筋骨格系に安定性を与える。一般的に繊維性の結合組織の帯(band)またはシートから成るが、靱帯および腱は損傷した際に痛みを伴い、しばしば衰弱することもある。これらの結合組織の治療は縫合のような手段による修復を含むか、または他の生体物質若しくは合成材料による完全な置換または部分的な置換を包含していてもよい。これらの組織の複雑さおよび機能性、かつ一般的な修復の考察の結果、治療はこれらの組織をそれらの損傷以前の状態に保ち、かつ戻すことが一般的に好ましい。
【0003】
靱帯および腱の修復(置換とは区別される)に関して、より一般的な靱帯修復手段のうちの1つは、前十字靱帯(ACL)の再建を含む。数十万のACL修復および再建が、米国において毎年行われている。その数は、人々がサッカー、フットボール、バスケットボール、陸上競技のようなレクリエーションスポーツおよび競技においてより活動的になるにつれ、増加し続けている。人々の中の一部には、結局そのACLまたは後十字靱帯(PCL)に部分的な損傷を負い、治療に役立つ手術を必要とする個人を含む。ACL損傷(deficient)の膝およびPCL損傷の膝は、半月板裂傷、または側副靱帯弱化(attenuation)のような他の関節内の病変に至るということがかねてから知られている。従って、他の靱帯および腱の損傷と同様に、損傷した靱帯および腱を効果的に治療するための有効な医療介入の追及は活発であり、盛んな努力の必要な分野であり続けている。
【0004】
発明の概要
本発明は、靱帯および腱を修復するあるいは治療するために、靱帯および腱に移植片を導入する。
【0005】
1つの実施形態において、靱帯または腱の治療方法は、靱帯または腱上にまたはその中に複数の微粒子を含む移植片を供給することを含む。
【0006】
他の実施形態において、医療用品一式は微粒子を含む移植片と、少なくとも1種の腱または靱帯を修復するように構成されている1種以上の手術道具を含む。
【0007】
他の実施形態において、移植片は、損傷した靱帯または腱を修復するのに役立つ複数の微粒子を含む。
【0008】
他の実施形態において、腱または靱帯の治療方法は、複数の粒子を靱帯または腱の少なくとも一部と接触させて配置することを含む。
【0009】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、粒子を、コラーゲンを含む媒体中に懸濁させることができる。
【0010】
発明の詳細な記載
本明細書中に記載される全ての特徴または特徴の組み合わせは本発明の範囲内に含まれるが、但し、いかなるこのような組み合わせ中に含まれる特徴も文脈、本記載、および当業者の知識から明らかである通り相互に矛盾しない。さらに、いかなる特徴または特徴の組み合わせも、本発明の全ての実施形態から明確に除外されていてもよい。本発明を要約する目的で、ある種の態様、本発明の利点および新規の特徴を本明細書中に記載する。当然ながら、全てのこのような態様、利点または特徴を本発明の全ての詳細な実施形態において具体化することは必ずしも必要でないことが理解される。
【0011】
本明細書中の記載に関して、簡便および明瞭の目的のみで、先端、底、左、右、上、下、上部、下部、越える、上側に、下側に、真下、後方、および前方のような方向を示す用語を用いる可能性がある。このような方向を示す用語は、本発明の範囲をいかなる仕方でも限定すると解釈されるべきではない。本明細書中に示す実施形態は、例示の目的であり、限定する目的ではないことが理解される。典型的な実施形態を検討するものだが、以下の詳細な記載の目的は、本発明の意図および範囲内にあるであろう実施形態の全ての改変、代替物、および均等物を網羅すると解釈されるべきである。
【0012】
本発明は、靱帯および腱の内部並びに靱帯および腱上の不具合または他の状態を選択的に治療する組成物および方法を提供する。本発明のこれらの手法は、限定されないが、回旋腱板(棘上筋、棘下筋、小円筋および肩甲下筋)、関節内および関節外の二頭筋腱(biceps tendon)、および手首内で遠位橈尺関節および近位橈尺関節における手根靱帯を含む、例えば手または前腕または上腕および肩における屈筋腱または伸筋腱に対する処置のような靱帯および腱の手術に主として関する。仙腸関節および縫工筋、大腿筋膜張筋の上前腸骨棘における付着部(insertion)、または直筋の起始のための下前腸骨棘における、恥骨結合の分離部、または坐骨における、または大腿二頭筋および半腱様筋、半膜様筋または大内転筋の起始を含む骨盤中および骨盤周りの靱帯または腱に対する処置も含まれる。末端に進んで、腰周りの靱帯および腱の修復または増強処置は、大転子(梨状筋、小殿筋、中殿筋、大殿筋、内閉鎖筋および上双子筋および下双子筋、および外閉鎖筋)に対する結合部についての処置を含む。小転子については、大腰筋および大内転腸骨筋を含む結合について処置を行う。内側上顆および顆上領域における大腿骨遠位骨端へとさらに末端に進んで、処置は、ガストロック(gastroc)の結合部および大内転筋の腱を含む結合部に対して行われ得る。外側顆については、足底筋、腓腹膝窩筋外側頭(lateral head of the gastrocnemius popliteus)、並びに直近、内側広筋、中間広筋、外側広筋を含む大腿四頭筋、並びに共同腱の付着部、並びに膝蓋腱への前記腱の連続部、足の前筋および後筋および側筋、およびそれらの腱の付着部を含む結合部、並びにサイズの小さいものから比較的大きいもの(例えばアキレス腱)に渡る足首および足の靱帯および腱を含む結合部に対して処置が行われ得る。
【0013】
本発明の特定の態様によれば、詳細な実施は、整形外科/スポーツ医学分野において日常的に行われている主な靱帯の再建に関する修復を含むことができ、前十字靱帯(ACL)、後十字靱帯(PCL)、内側側副靱帯および外側側副靱帯、内側半月および外側半月、回旋筋腱板および二頭筋腱筋(biceps tendon musculature)、および肘の内側側副靱帯および外側側副靱帯のようなより小さい靱帯、三角線維軟骨複合体(TFCC)、および手関節および下橈尺関節の他の靱帯、および限定されないが前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯および三角靱帯を含む足首靱帯の処置を含む。
【0014】
脊椎および運動部位を支持するさらなる靱帯が本発明の範囲内に含まれる。従って本発明の方法は、例えば、前縦靱帯、後縦靱帯、椎間関節包(facet joint capsules)、および関節包靱帯、棘上靱帯、および棘下靱帯(intraspinous ligament)を含む靱帯に適用することができ、これらは脊椎、および椎間板変性(disk degeneration)、部分欠損(pars defect)、前方すべり症、脊椎すべり症、外側すべり症(laterallisthesis)、または回旋脊柱側彎症(rotatory scoliosis)に関して含まれ得る運動部位に対してさらなる構造安定を生じさせることができる。
【0015】
上肢および下肢の関節および骨盤に関連する靱帯の治療を含む上記の群の用途は、部分的なリストにすぎない。1つ以上の上記の文脈において、欠損、損傷または問題の領域が(i)いずれの位置の靱帯またはそれらの起始部(origin)および付着部(insertion)を含む隣接する組織であろうと、または(ii)いずれの位置の腱または筋腱移行部のような隣接する組織、または腱領域における、または腱画の付着部におけるいずれの場所であろうと、本発明による組織生成移植片またはコラーゲン生成促進移植片の適用は、靱帯および腱の治癒における構造上の支持を提供することができる。しかしながら、整形外科的な腱および靱帯の再建のための本発明の範囲および分野は幅広く、損傷している、または診療若しくは組織生成移植片を用いる治療による利益を必要としているまたは利益が見込まれると判断され得る靱帯または腱を伴う、全ての重要な関節またはさほど重要でない関節を含むことが意図される。
【0016】
本発明の特徴によれば、例えば上記したもののような靱帯および腱を治療するための方法が提供される。組織生成移植片は、生物に関するまたは生物内部の靱帯および腱の修復または治療に関連する、問題となる1つ以上の組織上におよび/または組織中に導入することができる。組織生成移植片は、組織成長誘発粒子のような粒子を含むことができ、このような微粒子は、角部および端部を実質的に有さない滑らかな表面を有し、このような微粒子を例えば生体適合性の媒体中に懸濁させる。
【0017】
組織生成移植片を、部分的または完全な靱帯損傷または腱損傷のような靱帯および腱中に挿入する(例えば注入する)ことができ、これによって、靱帯損傷または腱損傷の修復を促進するかまたは増強する。部分的な靱帯損傷または腱損傷は完全に切断されていない靱帯または腱を含み得る。完全な靱帯損傷または腱損傷は、例えば、完全に切断または分離し、かつ例えば縫合を用いる接合のような当業者に知られる手段により再付着される、または修復される靱帯を含み得る。
【0018】
本発明の実施は、例えば先天性、特発性、または後天性の脊柱側彎症または脊柱後彎症を有する患者の、異常彎曲を示す問題の領域への組織生成移植片の添加による治療を含み得る。運動部位のある特定の側に対する付加的な構造上の支持の提供は、その領域における力学に有利に働き、かつ彎曲の進行を阻止する、または場合により彎曲を修正さえする手段を提供することができる。
【0019】
一般的に、全ての上記の用途の1つ以上において、組織生成移植片の添加は、例えば脊椎への適用の例において、異常な動きを柔らげる若しくは最小限に抑えるおよび/または脊椎の固有安定性を高めるように、修復部位(例えば、運動部)に対する高められた構造上の支持および完全性を可能にし得る。従って、組織生成移植片の典型的な用途は、部分的または完全に切断した靱帯または腱に対する構造上の支持を提供することを含むことができ、または修復を増進することを含むことができる。例えば、組織生成移植片は、問題の靱帯または腱の修復または増強のための固着を支持するのに役立つ生物学的な足場(biological scaffold)を提供することができ、かつ靱帯または腱修復における部分的な永久結合組織の足場として機能することができる。
【0020】
本発明の用途の1つの例示的な分野として、組織生成移植片を、手術を必要とするACLまたはPCLのいずれかの中に挿入することができ、これにより治癒を支援する。組織生成移植片は、例えば、側副靱帯を、これらがグレード1またはグレード2の損傷で損傷した場合に補強するために用いることができ、これにより治癒を可能にしまたは促進し、時には外科的介入の必要を未然に防ぐ、または外科的介入の必要または範囲を減縮する。
【0021】
本発明に従う組織生成移植片の挿入による靱帯または腱の治療は、最終的には、さらなる宿主組織(host tissue)によりこれらの靱帯または腱を増強する役目を果たすことができる。さらなる宿主組織は移植するのでなく、むしろ挿入の部位における宿主(host)により自然に発生し、挿入部位における宿主により既存の組織中に組み込まれる。靱帯または腱上または靱帯または腱中への宿主組織のこの自然な導入は、これらの組織の治癒力を高めることができる。
【0022】
組織生成移植片は、典型的には、生体適合性媒体中に担持され(例えば懸濁される)、治療は、典型的に、部分的または完全な靱帯または腱損傷部、または問題の領域への組織生成移植片の注入を含む。
【0023】
ACL、PCL、または内側靱帯および側副靱帯のうちの一方のような靱帯または腱の問題の領域への組織生成移植片の挿入(例えば注入)に続いて、本発明の1つの態様に従う組織生成移植片は、生体適合性媒体の完全なまたは部分的な生分解を受け始める。典型的な実施形態において、生体適合性媒体はウシコラーゲンを含み、これは、組織生成移植片の挿入に続いて、(i)宿主である哺乳類の体の組織中でまたは組織を介して吸収され始め、および/または(ii)宿主組織(例えばコラーゲン)と置き換わるまたは宿主組織で補われ始める。典型的な実施形態において、生体適合性媒体は、吸収されかつ宿主組織で置き換えられる。任意に、側副靱帯中への組織生成移植片の注入のようないずれかの上記の用途において、靱帯、腱、または隣接する関節軟骨のような隣接組織を、以下に概略を説明する通りに穿孔するかあるいは処理し、治療または修復の領域への流体(例えば血液)の供給を高めることができる。さらなる流体の利用可能性は生体適合性媒体の吸収、および/または生体適合性媒体の宿主組織による置換または宿主組織の補充に関与し得る。
【0024】
角部および端部の無い滑らかな表面を有し、かつ生体適合性媒体に懸濁されている微粒子を含む組織生成移植片の靱帯または腱中への挿入を含む典型的な実施形態において、微粒子は、挿入領域におけるまたは挿入領域付近への宿主組織(例えばコラーゲン)の形成を誘発する。1つの例において、微粒子はポリメチルメタクリレート(PMMA)微小球を含み、宿主コラーゲンは、これらのPMMA微小球の周りに、それらの位置を保ちながら形成される。続いてこの宿主コラーゲンの追加は、例えばACLまたはPCL損傷膝、またはACL/PCL部分損傷膝に対して構造上の支持および安定性を生じさせる。確実なことであるが、ACLまたはPCLが修復されるべき深刻な損傷において、本組織生成移植片の添加は、修復についての高められた安定性および成功を生じさせることができる。手根および遠位橈尺関節における小さい靱帯、並びにACLおよびPCLのような大きい靱帯は、同様に本発明の組織生成移植片法を用いて治療し易い。
【0025】
靱帯および腱に関して、組織生成移植片を部分的または完全な靱帯または腱損傷部または問題の領域に挿入する、例えば注射針により注入することができ、例えば挿入デバイスを引き抜いた際に挿入デバイス(例えば針)経路の長さに沿って広がる。例えば以下に論じるように、組織生成移植片を接合部位に注射針により注入することができ、問題の靱帯の起始部または付着部にまで広げることができる。同様に以下に論じるミクロ穿孔のような組織処理を、針または突き錐(awl)を用いて同じように形成することができ、周囲組織への血流量増大を確実にする。
【0026】
組織生成移植片の挿入(例えば注入)は、靱帯または腱の長さに平行である方向で、靱帯または腱の長さと垂直の方向に沿って、および/またはいずれかの他の方向で若しくは方向の組み合わせで行われ得る。注入の方向および/または長さは、同様のまたは異なる経路または軸に沿って変化してもよく、組織生成移植片の量は、個々の注入経路に沿った単位長さ、および/または異なる注入経路間の単位長さにつき変化してもよい。組織生成移植片の量のこのような変化は、用いられる組織生成移植片および/または生体適合性媒体のタイプを変化させること、注入速度を変化させること、引き抜き速度を変化させること、注入デバイスの直径を変化させること、および注入技術および材料の他の関連する変化の結果として、個々の注入に沿った単位長さおよび/または種々の注入の間の単位長さにつき異なり得る。
【0027】
例えば、問題の1以上の領域に対する流体(例えば血液)流量の増加のように組織反応を容易にするための穿孔、または典型的な実施形態においてミクロ穿孔のような組織処理を、治療されるべき靱帯若しくは腱上若しくは内部に、および/または隣接する組織上若しくは内部に形成することができる。処置(例えば穿孔)は、靱帯、腱および/または隣接する組織に対するいずれかの方向、配向、軸に沿った地点、直線部位または彎曲部位に形成され得る。穿孔を、例えば、靱帯、腱および/または隣接する組織に針または突き錐を用いて形成することができ、従って例えば、短いまたは細長い流体流路を形成する。靱帯または腱の接合手段を含む例において、靱帯または腱の近接端部および/または遠位末端を、以下に記載するように穿孔することができる。穿孔を接合部位に形成し、問題の靱帯の起始部および付着部にまで広げる。一般的に、本明細書中に記載される組織処理(例えば穿孔)を、靱帯または腱の長さに平行な方向に、靱帯または腱の長さに垂直な方向に沿って、および/またはいかなる方向若しくはこれらの間の方向の組み合わせに沿って形成することができる。例えば、用いられる穿孔器具のタイプ、大きさおよび形を変える、並びに穿孔技術を変える結果として、穿孔の方向および/または長さは、同種のまたは異なる経路または軸によって変化してもよく、または穿孔の断面領域若しくは直径は、個々の穿孔に沿ったおよび/または穿孔間の単位長さにつき変化してもよい。
【0028】
組織生成移植片が小さい靱帯のような靱帯中に本発明に従って挿入される際に、組織処理(例えば針または突き錐を用いて形成されたミクロ穿孔)を、靱帯の起始部および付着部に導入することができ、周囲組織への血流を増加させる。加えて、またはあるいは、組織生成移植片を、例えば靱帯の周囲および/または付近(特に靱帯または腱に対する傷または損傷の領域にまたは領域周囲に)に配置する際に、組織処理(例えばミクロ穿孔)を、靱帯再建の初め(origin)および途中(insertion)において導入することができ、組織生成移植片への高められた血流量を提供し、従って、生体適合性媒体(例えばウシコラーゲン)の吸収、および宿主組織(例えばコラーゲン)による置換を確実にし、問題の靱帯に与えられる構造上の支持を高める。腱に関しては、経皮的修復または切開(open)修復のいずれかを、手術時に組織生成移植片と共に利用することができ、その構造上の完全性を高める。腱に関しては、筋腱移行部および遠位の付着部における組織処理(例えば穿孔)からの血流量は、適切な生体適合性媒体(例えばウシコラーゲン)吸収および宿主組織(例えばヒトコラーゲン)による置換をもたらす血流量を可能にするまたは高めるのに十分なものであり、それにより、同様に腱に対する構造上の支持を提供する。靱帯の起始付着部(origin insertion)または腱の付着部に位置する穿孔を行う例示的な実施形態において、穿孔はミクロ穿孔で十分であり、その領域への血流量を増加させ、この吸収が適切な時間に渡り起こることを確実にする。
【0029】
いくつかの実施において、組織生成移植片を嫌色素(chromophobe)に含浸することができ、これは、レーザを用いて体外から活性化することができ、靱帯または腱内での生体反応を促進する。
【0030】
本発明の1つの態様によれば、組織生成移植片を、例えば切開手法において靱帯または腱の接合部位に適用することができる。組織生成移植片を、接合の前、最中および/または後のあらゆる時間において、少なくとも1つの靱帯または腱(例えば靱帯末端または腱末端)に適用することができる。典型的な実施形態において、組織生成移植片を靱帯末端または腱末端に、末端同士の解剖学的接近および結合前に注入する。例えば、腱接合手法において、2つの切断された腱末端を、瘢痕化を引き起こし得る伸張操作および鉗子操作を最小限にするように試みながら、解剖学的に近接させることができる。組織生成移植片を接合部位に注射針により注入し、問題の腱の起始部および付着部にまで広げることができる。以下に論じる任意のミクロ穿孔を、例えば周囲組織への血流量を高めるために、針または突き錐を用いて同様に導入することができる。腱末端を、例えば周知の外科的方法により、4−0メルシレン(Mersilene)縫合を用いて互いに縫合することができる。改変バンネル腱縫合を用いることができ、ここで結び目は、近接させる力を除いた後に腱末端に隙間ができることを回避するようにしっかりと結ぶ。単連続6−0ナイロン腱鞘縫合を例えば腱修復の前半分に対して用いることができる。続いて腱修復の後ろ半分を、修復の解剖学的正確さを確かめるおよび/または腱単連続縫合を仕上げるために利用することができる。
【0031】
本明細書中に記載されるあらゆる治療(例えば接合)の前、最中、または治療に続くある時点で、少なくとも一方の露出面(例えば靱帯または腱の近位端および遠位端の1以上)に穿孔するまたは処置することができ、例えば1つ以上の隣接する組織または周囲組織への血流量を高める。例えば、ミクロ穿孔を近位および遠位の靱帯末端または腱末端に針または突き錐を用いて形成することができ、周囲組織への血流量の増加を促す。1つの実施形態において、接合部位に導入されるミクロ穿孔は、問題の靱帯または腱の起始部および付着部にまで広がる。腱修復に関して、腱が早期断裂または後期断裂を被ることが当業者により容易に想定される。早期段階では、腱の急激な負荷または伸縮は結合部位の故障を導き得る。後期断裂は同じ部位で起こる可能性があり、修復部位に入ってくる細胞および血管の生物学的効果に起因している。
【0032】
本発明の組織生成移植片は好ましくは複数の微粒子を含み、これは典型的な態様においては固体の微粒子を含み得る。改変された実施において、微粒子は完全に固体でなくてよく、中空または多孔性の微粒子を含む実施のようなものである。本明細書中で用いられる「微粒子」という語は、500ミクロン以下の平均直径を有する粒子(例えばダスト形態またはパウダー形態にあるもの)を指す。典型的には、平均直径は約20ミクロンよりも大きく、過剰に大きい微粒子は単球により「貪食」されることになる。微粒子は、移植部位からリンパ管または他の組織管(tissue tract)を通して洗い流されないようにするのに十分な直径を有し得る。微粒子が球状の形態を有さない場合には、本明細書中で用いられる直系は、最も小さい断面積の最も大きい直径を指す。しかしながら、直径が5〜10ミクロンであるより小さい微粒子を用いることも可能である。典型的には、微粒子は約200ミクロン未満の平均直径を有する。典型的な実施形態において、微粒子は約15〜約200ミクロンの平均直径を有していてもよく、特定の実施においては、約15〜約60ミクロンの平均直径を有していてもよい。典型的な形状において、微粒子は計測器排管(gauge cannula)または注射器により、所望の靱帯または腱中におよび/または靱帯または腱上に注入するのに十分な小ささである。本明細書中に明記した直径を有する粒子は、周囲組織、すなわち腱付近の筋肉、骨および関節軟骨に対して比較的最小限の効果を有する。
【0033】
用いる微粒子の成形された表面と大きさのために、これらは異物として体内マクロファージにより検知されず、従って防衛反応は起こらない。典型的な実施形態によれば、微粒子は、これらが移植され、さらに組織およびコラーゲンのような材料により個々に封入され得る部位においてぎっしりと詰まった配置を形成することができる球状の形態または球状様の形態を有する。
【0034】
典型的な実施形態においてPMMA球状ビーズを含み得る微粒子は、靱帯または腱に挿入された後に、結合組織の脆い被膜により封入されてもよく、および/または結合組織若しくは繊維中に埋め込まれてもよく、組織に固定されている。本明細書中に記載される生体適合性媒体の使用は強制でない。というのは、微粒子を体内中に生体適合性媒体を必要とせずに挿入する(例えば配置する)または注入することができるためである。
【0035】
靱帯または腱中に一度配置すれば、組織生成移植片は、靱帯または腱の生理学的な構造の少なくとも1つの特性を模倣するか、または靱帯または腱の生理学的な構造の少なくとも1つの特性の代替物を提供する。例えば、組織生成移植片は、靱帯または腱の一部の人工的な部分を模倣する、および/または靱帯または腱の一部の人工的な部分として機能する。従って、靱帯または腱の形態は、組織生成移植片の移植を受けて、変更または改善され得る。例えば、靱帯若しくは腱内での組織生成移植片の微粒子の蓄積、および/または微粒子周りの瘢痕組織の蓄積は、靱帯または腱内部に対してある種の物理的な膨化または安定性を与えることができる。組織生成移植片が成長した(例えば、例えば移植片の微粒子周りの永久瘢痕組織の形成を通じて宿主組織中に取り込まれた)後の、後の試験は、例えば靱帯または腱の強度の増加を与え得る。
【0036】
典型的な実施形態においてPMMA球状ビーズを含み得る微粒子の成長に関して、PMMAビーズの大きさおよび物理的な安定性の結果として、これらを貪食または溶解することはできない。異物として単離するためには、動物体は瘢痕組織の形態で異物を繊維により封ずることができるのみである。このようなプロセスは、動物体により破壊することができないほぼ全ての異物に対して起こる。本範囲内で、結合組織の繊維性成長は、挿入器具に起因する組織の損傷、かつ微粒子の存在に対する自然な反応である。繊維形成反応は、微粒子(例えばPMMAビーズ)の滑らかで化学的に不活性な表面のために、組織生成移植片注入後3〜6ヶ月の間に起こり得る。それ以降、ビーズは反応することなく組織に留まり、永久繊維性脈管性結合(fibrovascular connective)組織の形成および存在を提供する。
【0037】
組織生成移植片は、1つの実施形態において、パウダーの形態にある組織適合性固体を含む。固体を形成する微粒子を生体適合性媒体中に取り込み、例えば注射針で損傷部位に注入することができる。
【0038】
本発明の1つの実施形態により用いられる微粒子が滑らかな表面を持ち、角部および端部を有さないことは有利であり、従って、微粒子はその表面に鋭い変わり目を有さない。加えて、これらはどんな種類の先端部または先細の突出部も有さないであろう。1つの実施形態によれば、表面は孔を有さない。他の実施形態において、表面は孔を有していてもよい。いくつかの実施形態においては滑らかで、特に球状の粒子が有利であり得るが、角部および先端部等を有する微粒子を、本靱帯および腱処理用途において用いることもできる。
【0039】
多くの有利な実施形態において、本発明の1つの実施形態により用いられる微粒子の一方の外面から他方の外面への移行は連続して起こる。立方体の端部の場合のようにこのような移行が存在する場合には、このような移行は平滑化され得る。本発明の1つの実施形態によれば、結晶性である微粒子(例えば針状)、または大きい単位を小さな破片に機械的に砕くことにより得られる微粒子は、この微粒子が上記した鋭い端部および角部を有する限りは用いられない。滑らかな表面構造のために、細胞または他の組織構造に対する損傷が最小限に抑えられる。加えて、異物反応または顆粒形成のような組織の反応(これは、感染が続き得る)を引き起こす危険は最小限に抑えられる。
【0040】
1つの実施形態において、動的に均整のとれた微粒子、特に楕円形または球状の形態を有する微粒子を用いることができる。加えて、全ての微粒子、または他の実施形態においては微粒子の大部分が滑らかで平滑化された表面を有する場合には、異なる幾何学的形の微粒子を用いることもできる。本発明の典型的な実施形態により用いられる、不活性で組織適合性の材料である微粒子は、滑らかなおよび/または平滑化された表面を有するガラスビーズまたはガラスペレットを含むことができる。本発明の典型的な実施により用いられる微粒子はポリマー、特に完全に硬化され十分に重合したポリマーを含んでいてもよく、従って毒性であり得るか、またはガンを引き起こし得る残留するモノマーは治療施行患者の体内中に取り込まれない。完全に重合したPMMAは組織適合性であり、有害な毒性反応または発ガン性反応を伴うことなくヒトの体内に取り込まれることができ、従ってこれは化学的または物理的に不活性であり、生体適合性があるとみなされ得る。これらの理由のために、PMMAポリマーは、顔および頭蓋における骨の損傷のプラスチック被膜のための移植片、または完全股関節形成術若しくは人工膝関節形成術における移植片を製造するために既に用いられている。ポリマーは、また入れ歯を製造するために、および関節内レンズ(intra-articular lenses)および透析膜を製造するために用いられる。原理上は、本発明により用いられる微粒子を製造するためには、あらゆる不活性な組織適合性ポリマーを用いることができる。改変された実施形態は、全体または一部として、非ポリマー性微粒子を含み得る。典型的な実施形態において、組織生成移植片は、Artecoll(登録商標)の名で記載され、www.artecoll.com. および www.canderm.com. にて入手できる1種以上の移植片を含む。典型的な実施形態は、また、米国特許第5,344,452号明細書に記載されている。
【0041】
移植片材料は、例えば約20%の約32〜40マイクロメータ直径サイズにある実質的に滑らかな球状PMMAビーズを含むことができ、メチルメタクリレートモノマー不純物は低いレベルである。残りの80%は部分変性コラーゲンの溶液を含み、これは水および/またはアルコールの溶液中約3.5%のコラーゲンであってよい。1つの実施形態において、移植片材料のccあたり約600万の粒子が存在する。
【0042】
靱帯または腱のための組織生成移植片として本発明により用いられる微粒子またはポリマー微粒子を注入するために、微粒子はある種の生体適合性媒体中に懸濁され得る。それ自体は既知であり、体内で分解される例えばゼラチンまたは好ましくはコラーゲンに基づくゲルを、生体適合性媒体として用いることができる。本発明の1つの実施により用いられる生体適合性媒体は、Tween ad のような界面活性剤を含むことができる。というのは、このような界面活性剤は水の表面張力を変化させ、従って微粒子、特有の実施形態においてはポリマー微粒子がより均一な分布を有するためである。
【0043】
挿入は、スコープを通じて靱帯または腱の少なくとも一部分を観察しながら、靱帯または腱に組織生成移植片を挿入することができる。このスコープは、ビデオフルオロスコープを含み、挿入を蛍光透視しながら導くことができる。1つの実施において、靱帯または腱への組織生成移植片の挿入中の視覚化を容易にするために、組織生成移植片を水溶性のX線不透過性の染料に含浸させることができる。
【0044】
生体適合性媒体の成分の混合比は必要に応じて、例えば挿入に用いられる挿入デバイスのサイズまたは種類により選択することができる。本発明の1つの実施形態により用いられる組織生成移植片の適用または注入のために、微粒子を液状不活性媒体中に懸濁させるかまたはスラリー化することができる。
【0045】
さらに、医療用品一式を、組織促進(tissue-promoting)移植片を用いて腱または靱帯を治療するおよび/または修復するために必要な要素を含めて製造することができる。このようなキットは、多数の移植片と、シリンジまたは他のアプリケータのような供給デバイスを含むことができる。慣習的な腱および/または靱帯修復手術において用いられる1種以上の手術道具を有利には、このようなキットに備える。
【0046】
上記した実施形態は例としてのみ提供され、本発明はこれらの例に制限されない。開示された実施形態に対する複数の変形または改変が、以上の記載を考慮した際に、互いに矛盾しない範囲内で当業者には考え付くであろう。さらに、他の組み合わせ、省略、考慮および改変が、本明細書中の開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。従って、本発明は開示された実施形態により制限されることが意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靱帯若しくは腱上に、または靱帯若しくは腱中に複数の微粒子を含む移植片を供給することを含む靱帯または腱の治療方法。
【請求項2】
前記靱帯または腱における損傷を確認することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移植片は微粒子の少なくとも一部を含む生物学的な足場(biological scaffold)を形成し、前記生物学的な足場は、前記靱帯または腱における少なくとも一部の結合組織として機能する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記移植片は、宿主組織により部分的に置換されるように構成される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記移植片がコラーゲンをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記移植片が、水、生理食塩水、界面活性剤、放射線不透過性色素および嫌色素(chromophobe)のうちの少なくとも1種を含む請求項1の方法。
【請求項7】
前記微粒子が組織適合性固体を含む請求項1の方法。
【請求項8】
前記微粒子が実質的に球状であり約15〜約200ミクロンの範囲にある直径を有する請求項1の方法。
【請求項9】
前記微粒子が、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、硬化ポリマー、完全に重合したポリマー、およびガラスの1種以上を含む請求項1の方法。
【請求項10】
前記靱帯または腱が、前縦靱帯、後縦靱帯、棘上靱帯、棘下靱帯(intraspinous ligament)、関節包靱帯、前十字靱帯(ACL)、後十字靱帯(PCL)および回旋筋腱板の少なくとも1種を含む請求項1の方法。
【請求項11】
損傷の位置が、筋腱連結部、腱の領域、および腱画(tendon insertion)の起始部(insertion)のうちの少なくとも1つである請求項1の方法。
【請求項12】
前記移植片を接合部位に供給することを含む請求項1の方法。
【請求項13】
組織反応を促進するために、靱帯または腱または隣接する組織上または内部で組織処置を行うことを含む請求項1の方法。
【請求項14】
損傷を確認することが、先天性、特発性、または後天性脊柱側彎症または脊柱後彎を有する患者における損傷を確認することを含み、かつ
前記移植片を供給することが、異常彎曲を示す患者の部位における靱帯または腱に移植片を供給することを含む
請求項2の方法。
【請求項15】
前記彎曲の進行を阻止すること、または前記彎曲を部分的に修正することを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記移植片は嫌色素(chromophobe)を含み、前記方法は、前記靱帯または腱におけるまたはその周囲の反応を促進するために、レーザを用いて前記嫌色素を活性化することをさらに含む請求項1の方法。
【請求項17】
前記移植片が放射線不透過物質を含み、前記方法は、前記放射性不透過物質を用いて前記移植片を可視化することをさらに含む請求項1の方法。
【請求項18】
前記放射線不透過物質がバリウムを含む請求項17の方法。
【請求項19】
スコープを通して前記靱帯または腱を観察することをさらに含む請求項1の方法。
【請求項20】
前記スコープがビデオフルオロスコープを含み、前記移植片の供給を蛍光透視しながら導く請求項19の方法。
【請求項21】
微粒子を含む移植片と、
少なくとも1種の腱または靱帯を修復するように構成されている1種以上の手術道具と
を含む医療用品一式。
【請求項22】
前記移植片を供給するように構成された供給デバイスをさらに含む請求項21に記載の医療用品一式。
【請求項23】
損傷した靱帯または腱を修復するのに用いる、複数の微粒子を含む移植片。
【請求項24】
前記移植片が、生体適合性媒体中の実質的に球状の微粒子を含む請求項23の移植片。
【請求項25】
前記生体適合性媒体がコラーゲンを含む請求項24の移植片。
【請求項26】
腱または靱帯を治療する方法であって、複数の粒子を前記靱帯または腱の少なくとも一部と接触するように配置することを含む方法。
【請求項27】
前記粒子を前記靱帯または腱の少なくとも一部の中に配置する請求項26の方法。
【請求項28】
前記粒子を前記靱帯または腱の損傷部分上に配置する請求項26の方法。
【請求項29】
前記複数の粒子を、コラーゲンを含む溶液中に懸濁する請求項26の方法。
【請求項30】
前記粒子は実質的に球状であり、前記粒子が約15ミクロン〜約200ミクロンの直径を有する請求項29の方法。

【公表番号】特表2008−511405(P2008−511405A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530236(P2007−530236)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/030678
【国際公開番号】WO2006/026554
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(507063676)
【出願人】(507063687)
【Fターム(参考)】