靱性−弾性材料
本発明は、一方において、低い湿度において高い衝撃強さを有し、他方において、高い湿度において高い弾性率を有しそして広い範囲の湿度において高い伸長能力を有する、デンプンを基材とする靱性−弾性材料であって、その性質のために、例えば、ホイル、フィルム、繊維、射出成形品、特に、可食性フィルムとして使用するための成形品、活性成分、化学薬品、芳香剤及び香料を包装するため成形品、並びに、軟質及び硬質カプセルの分野でのゼラチンの高品質代替品として使用するのに適した靱性−弾性材料に関する。靱性−弾性材料は透明な状態で得られ、水中での膨潤の際に溶解するか又は崩壊するか又はそのままであることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方においては、低い湿度において高い衝撃靱性(impact toughness)を有しており、他方においては、高い湿度において高い弾性率を有しており、広い範囲の湿度において高い伸長能力を有する、デンプンを基材とする靱性−弾性材料(tough-elastic
material)に関する。
【背景技術】
【0002】
殆ど、軟化熱可塑性デンプン(TPS)だけに基づくデンプンを基材とする有用な材料を得るために種々の試験が行われている。典型的には、軟化剤としてポリオールが使用されている。TPSの場合、デンプンは殆ど完全に非晶質形である。非晶質重合体の性質は主として脆化温度(brittle temperature)Tgによって決定される。Tg以下においては、状態はガラス質であり、硬くかつ脆弱であり、Tg以上では軟質である。これらの2つの状態の間の差異はTPSについて特に顕著である。デンプンの巨大粒子は比較的、剛性であり、硬いので、大きな割合の軟化剤を必要とする。Tg以下においては、TPSは極めて脆弱であり、特に、高い応力速度(stress rate)に非常に感受性であり、Tg以上では、温度の増大につれて、ますます、粘稠な、高粘度液体の性質を示す。従って、デンプンとその軟化剤は親水性が強いので、TPSは大気から水を吸収し、TPSの湿度RHに対する感受性は、TPSを実際に使用する用途で生じる別の問題となっている。RHと材料の水分含有量の関係はその吸収曲線によって示される。水の吸収により、Tgはより低い温度に低下し、その結果、一定の温度においては、水含有量が増大するにつれて、温度の増大についてのごとく、比較し得る特性の分布の変動が得られる;即ち、低いRHにおいては、TPSは硬くかつ脆弱であり、高いRHにおいては軟質である。吸収性の結果として、例えば、衝撃靱性K、強度σm、弾性率、伸長能力(elongation capacity)εb、酸素透過性PO2及び表面特性は極めて顕著に湿度に依存するが、理想的には、材料特性の最大数が一定であることが好ましい。今日まで、デンプンに基づいて、低いRHにおいて適度な靱性を得ること、そして同時に、高いRHにおいて適度な強度を得ることは不可能であった;このためには、デンプンを合成物質とブレンドすることが必要であった。上記した不利益を有するTPSの例は特許文献、WO 94/28029号、US 5362777号、US 5382611号、US 5427614、WO 94/04600号、US 5415827号及び
US 5462980号に記載されている。
【0003】
軟質及び硬質カプセルは医薬及び栄養成分についての証明ずみの(proven)形である。一旦、カプセルが摂取されたとき、一般的には、カプセル内容物の可能な最も迅速な放出が生起されるべきである。従って、軟質及び硬質カプセルを製造する物質叉はこの目的に使用することが潜在的に考慮されている物質は、例えば、現在のカプセルの95%以上を製造するのに使用されているゼラチンごとく、少なくとも親水性であり、一般的には水溶性である。RHによって大きく変動する材料特性についての上記したごとき問題は、これらの材料の用途にも適用される。例えばゼラチンは、軟化剤として25〜50%のグリセリンを含有する軟質及び硬質カプセルの分野での従来の標準的解決手段であり、23%のRHにおいて4.5%の水を含有し、一方、約85%のRHでの水分含有量は30%以上である。水は非常に効果的な軟化剤であるので、軟化ゼラチンの性質は湿度に大きく依存する。例えば、剛性及び寸法安定性の目安である弾性率は、85%のRHにおいては23%のRHより約600倍低い;即ち、低い湿度においては、この材料は比較的剛性でかつ硬く、これに対し、高いRHにおいては、この材料は非常に軟質となり、寸法安定性は低下する。別の重要な材料特性も、同様に、RHの関数としてオーダーの大きさで変動する。RHが0%〜75%に増大するとき、約100倍である粘着性及び酸素透過性P02の増大は特に問題である。これらの理由から、ゼラチンカプセルを特に湿度の高い気候に使用することは問題があり、カプセルを水分から保護するのに高価な包装を必要とする。
【0004】
親水性カプセル材料の湿度に対する顕著な依存性は基本的な問題である。広範囲の湿度において一定の性質を有する硬質及び軟質カプセルの分野における理想的解決は従来、不可能であった。実際に、低い湿度での特性と高い湿度での特性の間には、常に妥協が存在しなければならなかった;即ち、低いRHでの靱性は、高いRHでは寸法安定性が減少することを意味し、これと反対に、高いRHでの良好な寸法安定性は、低いRHでは靱性が失われ、脆弱な性質になることを意味する。ゼラチンを基材とするカプセルについては、少なくとも一つの許容され得る妥協が見出され得る。しかしながら、BSE問題の結果として及び菜食製品への趨勢の過程で畜殺場から得られるゼラチンは消費者によってますます拒否されつつあるので、植物起源の原料に基づく新規な手段が探索されている。特許文献、WO 01/
37817号には高い軟化剤含有量を有する熱可塑性デンプン(TPS)に基づく軟質カプセルが記載されている。しかしながら、この軟質カプセルは低い湿度では顕著な脆弱性を有するという重大な不利益を有しており、その結果、乾燥した環境においては、TPS軟質カプセルは最小の応力で既に破壊しかつ亀裂を生じ、ガラス状に破壊する。高いRHにおいては、
TPS軟質カプセルは非常に軟質でかつ粘着性であり、その寸法安定性を失う。従って、TPS軟質カプセルは、明らかに、ゼラチン軟質カプセルの基礎材料であり、TPS軟質カプセルの使用は平均RHにおいてのみ可能である。硬質カプセルの場合、靱性についての要求が自動高速充填機内でのカプセルの応力の結果として、より大きく、従来、RPSを基材とするカプセルは製造し得なかった。特許文献、US 6214376号及びUS 6340473号には、カラジーナン及びデンプンを基材とする軟質カプセルが記載されている。この軟質カプセルの不利益は軟質カプセルが平均RHにおいて既に余りにも軟質であり、従って、寸法安定性が不十分なことである。より高いRHにおいてはこの性質はより顕著になる。更なる不利益は、酸素透過性が高いこと、カラジーナンの原料コストが高いこと、ゼラチンより明らかに高価であること及びカラジーナンに発癌性の疑いがあることである。
【0005】
これらの例は、カプセル内で湿度によって明らかに変化する材料特性についての根本的問題を明らかにしており、このことはホイル、フィルム、繊維、注型製品等の分野における親水性材料の他の用途に適用される。
【0006】
問題
本発明の主題は、少なくとも下記の特性を有するデンプンに基づく材料を提供することである:
1. 10〜90%の範囲のRH、特に、高いRHでの寸法安定性
2. 10〜90%の範囲のRH、特に、低いRHでの靱性
3. 長時間の安定性、特に、老化に対する耐性
4. ガス遮断性、特に、低い酸素透過性
5. 光学的特性:透明性及び無彩色性(achromatism)、但し、着色可能でかつ印刷可能
6. 表面特性:非粘着性
7. 生分解性、特に、可食性
【0007】
所望ならば、下記の特性も得られるべきである:
8. 25〜60%の範囲のRHでの少なくとも100%の弾性
9. 特に、40℃以下の低い温度での溶接性
10. 膨潤能力、特に、水中への溶解性叉は水中での崩壊性
11. 胃(37℃)中での溶解性叉は崩壊性、特に、薬局方に従った物質の放出
12. 少なくとも食品等級で入手し得る原料。
【0008】
上記で規定された特性は独立したものではなく、部分的にないしは大きな程度で相互に依存性である;即ち、特定の性質を最適化することは、他の性質について有利な叉は不利な結果を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の簡単な説明
この課題の解決手段として、最初に、要求を満足させ得るか叉は要求を超え得る物理的構造を探求した。この要求は下記の要素を組合せることにより満足されることが見出された。
【0010】
1. 靱性−弾性材料の基礎は、水溶性であるか叉は水中で膨潤するか叉は分解される親水性相によって与えられる。この相は好ましくは非晶質であるか、叉は、この相が部分的に結晶状態である場合には、微結晶叉は指定領域(ordered region)は<500nmである。この相がより大きな寸法を有する場合には、要件5を満足させることができない。非晶質相は、通常、脆化温度Tg以下の温度で脆性を示す。脆化温度は種々の性質について変動し、靱性−弾性材料は室温における限定された温度範囲で使用されるので、脆性−靱性の転換の温度依存性の代わりに、この転位の依存性はRHの関数であると考えられる。同時に、RHzは、RTにおいて脆性から靱性への転換が生起するRHである。従って、RHz<33%、好ましくは<26%、より好ましくは<20%、最も好ましくは<15%が、低RHにおいて靱性である材料の非晶質相について適用される。従って、非晶質相は特定のRHについて靱性を示す。この状態の調節は選択された割合の軟化剤によって可能である。可能なかぎり最低の融点を有するポリオール叉はポリオールの混合物が軟化剤として使用されるが、その理由は、その軟化効果が最大であり、その結果として、最小量を使用しなければならないからである。高い割合の軟化剤によってRHについての特性の依存性を強化する。
【0011】
2. 非晶質相は、温度≫Tgにおいて又はRH≫RHzにおいては、高度に粘稠な液体のように挙動し、その粘度が非常に高い場合には、固体のごとく見える。水は親水性系においては他の軟化剤と比較して軟化効果に関して数倍、より効率的であるので、非晶質相は湿度が増大するにつれて次第により軟質となり、安定性を失い、最終的には液化する。
【0012】
従って、非晶質相は高いRHにおいては要件1、2、6、8を満足させることができないので、補強方法が探索された。架橋の結果としての、高いRHにおける流動は不可能であるため、RHに対する特性の依存性の少ない網状構造(network)をこの目的のために構成し得ることが認められた。この網状構造は非晶質相に相互挿入する(interpenetrate)ことが好ましく、この相に連結される。現存する網状構造(existing network)、即ち、化学的網状構造は共有結合を形成することから水不溶性であり、膨潤後、崩壊しないので、本発明によれば、連結点が熱可逆性である(thermoreversible)か、又は、特に、37℃で水又は胃液を添加することにより溶剤を介して溶解し得るか、又は、機械的に不安定になる網状構造が導入される。更に、十分に膨潤する網状構造も適当であり、この網状構造は膨潤状態において最小の応力の作用下で崩壊する。これは、特に、薄いフィルムについて可能である。網状構造点(network point)が、少なくとも部分的に、微結晶のごとき配列された領域において形成される場合には、これらの領域は、透明性を達成するためには、<500nmである。
【0013】
3. 大気からの水分の吸収により、網状構造は機械的特性について僅かだけ影響を受ける。例えば、親水性非晶質相の弾性率は、通常の湿度の範囲で、約1000倍だけ、変動し得るのにに対し、網状構造の弾性率は、<10だけ変動し、広い範囲では、弾性率は実質的に一定である。本発明によれば、網状構造密度(network density)は、高い水含有量での弾性率及び強度に対する網状構造の寄与度が、非晶質相の寄与度に少なくとも匹敵するように調節される。この範囲での網状構造の寄与度が非晶質相の寄与度より明らかに大きいことが好ましい。このことにより約30−70%の湿度範囲において実質的に一定の弾性率を得ることさえ可能になる。高い湿度での非晶質相の不満足な性質は適度な網状構造密度を有する網状構造によって補償されかつ同時に、低い湿度において靱性を得ることができ、高い湿度において強度を得ることができる。
【0014】
4. しかしながら、網状構造は水溶解性については不利益であるので、本発明によれば、網状構造密度を非常に低く設定して、網状構造が、強度が最小である結果として最小の応力下で水中で膨潤して崩壊ようにする(これは、特に、薄いフィルムの場合である)か、又は、好ましくは、網状構造点を過剰の水によって溶解する、非常に小さい微結晶によって調節する。
【0015】
5. 調節された後の構造は、異常に広い範囲で交互に変動する湿度及び温度条件で安定である。このことは網状構造密度が所望の容量に調節される配合及び製造条件によって達成し得る。
【0016】
上記で特定した要素は、種々の原料及び製剤に基づいて、種々実際的な解決手段に到達する方法を基本的に示唆している。顕著な点は非晶質相と網状構造のバランス及び網状構造のパラメーターである;このパラメーターは、一方においては、変動する条件下で靱性−弾性材料の機械的性質を達成するのに十分に有力なものであり、他方においては、水中又は胃液中でのカプセルの溶解性又は崩壊性を損なわないものである。これらの要件を調和させることは本発明の中心的要旨でるのに対し、従来技術に相当する網状構造はこれらの要件を満足させるとは不可能である。例えば、デンプンに基づく従来の網状構造は実際上、水に完全に不溶であり、崩壊に対して安定であり、半透明〜完全に不透明であり、非溶接性であり、典型的には<50の範囲の最小の弾力性しか示さず、靱性に対して有利な効果を示す。上記した問題の解決法の本質的な鍵は、網状構造点を構成する配列された領域の寸法である。この寸法は使用した原料の構造パラメーターによって、特に、使用したデンプン分子の網状構造−活性鎖長、CLn,naの選択によって調節し得る。本発明によって調製し得る、デンプンを基材とする材料の新規な性質の範囲は、図面中に例示されておりかつ以下に述べるごとく定量的に特徴ずけられる:
デンプンを基材とする本発明の靭性−弾性材料は、低い相対湿度RHzにおいて、脆性から靭性への変換を示し、その結果、通常の湿度範囲において靭性の状態にある。室温においては、この特性値は、<33、好ましくは、<26、より好ましくは、<20、最も好ましくは、<15のRHZ(%)である。また、85%のRHにおいては、本発明の靭性−弾性材料は>0.1、好ましくは>0.5、より好ましくは>1.0、最も好ましくは>3の弾性率(Mpa)を有している;これらの各々の場合、<50である。
【0017】
本発明の靭性−弾性材料は、下記の範囲の衝撃靭性(impact toughness)K(mJ/mm2)と弾性率(Mpa)を有することが好ましい:
a) 約11%のRHにおいては、K>10、好ましくは、>15、より好ましくは、>30、最も好ましくは、>50;各々の場合、<300である;
b) 約85%のRHにおいては、E>0.1、好ましくは、>0.5、より好ましくは、>1.0、最も好ましくは、>3;各々の場合、<50である;及び/又は、
c) 約75%のRHにおいては、E>0.5、好ましくは、>1.0、より好ましくは、>5、最も好ましくは、>10;各々の場合、<150である。
【0018】
本発明の靭性−弾性材料は、これらの性質について下記の範囲を有することが更に好ましい:
a) 約23%のRHにおいては、K>15、好ましくは、>30、より好ましくは、>50、最も好ましくは、>100;各々の場合、<1000である;
b) 約85%のRHにおいては、E>0.2、好ましくは、>1.0、より好ましくは、>2.0、最も好ましくは、>5;各々の場合、<100である;及び/又は、
c) 約75%のRHにおいては、E>1.0、好ましくは、>2.0、より好ましくは、>10、最も好ましくは>20;各々の場合、<300である。
【0019】
本発明の靭性−弾性材料は、これらの性質について下記の範囲を有することが更に好ましい:
a) 約33%のRHにおいては、K>20、好ましくは、>50、より好ましくは、>100、最も好ましくは、>200;各々の場合、<2000である;
b) 約85%のRHにおいては、E>0.2、好ましくは、>1.0、より好ましくは、>2.0、最も好ましくは、>5.0;各々の場合、<100である;及び/又は、
c) 約75%のRHにおいては、E>1.0、好ましくは、>2.0、より好ましくは、>10、最も好ましくは>20;各々の場合、<300である。
【0020】
本発明の靭性−弾性材料は衝撃試験において靭性破壊(tough break)を示すことが好ましい;即ち、湿度の関数として、下記の範囲の破断点伸び(εk)を示す:
a) 約43%のRHにおいては、εk>5、好ましくは、εk>10、より好ましくは、εk>20、最も好ましくはεk>30;各々の場合、εk<50である;及び/又は
b) 約33%のRHにおいては、εk>3、好ましくは、>7、より好ましくは、>14、最も好ましくは>20;各々の場合、εk<35である;及び/又は
c) 約23%のRHにおいては、εk>2、好ましくは、>5、より好ましくは、>10、最も好ましくは>15;、各々の場合、εk<25である。
【0021】
本発明の靭性−弾性材料は、更に、湿度の関数としての、下記の範囲の10%伸び率における強度(strength at 10% elongation)σm、10%(MPa)を有することが好ましい:
a) 約85%のRHにおいては、σm、10%>0.2、好ましくは>0.4、より好ましくは>1、最も好ましくは、>3;各々の場合、<12である;
b) 約75%のRHにおいては、σm、10%>0.4、好ましくは>0.8、より好ましくは>1.5、最も好ましくは、>5;各々の場合、<20である。
【0022】
本発明の靭性−弾性材料は、更に、破断点伸び(εb)について下記の特性を有することが好ましい:
a) RHの関数としての破断点伸び(εb)の最大値、>50、好ましくは、>100、より好ましくは、>200、最も好ましくは、>300;各々の場合、<600;及び/又は
b) 約75%のRHでの破断点伸び εb RH、>20、好ましくは、>50、より好ましくは、
>75、最も好ましくは、>100;各々の場合、<200。
【0023】
本発明の靭性−弾性材料は、引張り試験において約20−50%のRHの範囲の弾性限界を有することが好ましい。
【0024】
本発明の靭性−弾性材料の特に有利な性質は、弾性率及び10%伸び率における引張強さに関して、RHの関数として準平坦域(quasiplateu)が得られることである;この場合、特に、
a) 23〜85%のRHの範囲のRTでの弾性率の変動の係数FE(23-85)は、<400、好ましくは、<200、より好ましくは、<100、最も好ましくは、<50である;各々の場合、>1である;か、又は
b) 43〜75%のRHの範囲のRTでの弾性率の変動の係数FE(43-75)は、<50、好ましくは、<20、より好ましくは、<10、最も好ましくは<5である;各々の場合、>1である;そして、
c) 23〜85%のRHの範囲のRTでの10%伸び率における引張り強さの変動の係数
Fσ10%(23-85)は、<100、好ましくは、<50、より好ましくは、<25、最も好ましくは、<10である;各々の場合、>1である;か、又は
d) 43〜75%のRHの範囲のRTでの10%伸び率における引張り強さの変動の係数の係数
Fσ10% (43-75)は、<10、好ましくは、<5、より好ましくは、<3、最も好ましくは<5である;各々の場合、>1である。
【0025】
従って、本発明の靭性−弾性材料は寸法安定性の大きな損失を伴うことなしに高いRHで(夏)、また、脆化を伴うことなしに低いRHで(冬)使用し得る。このことは、例えば、この材料を医薬及び栄養剤(nutraceuticals)のための軟質カプセルとして使用する場合に重要である。
【0026】
更に、本発明の靭性−弾性材料の有利な性質は、適当な下記の性質の少なくとも一つからなる:
a) 網状構造の架橋点を形成する靭性−弾性材料の指定領域(ordered area)は、
<500、好ましくは、<300、より好ましくは<150、最も好ましくは、<70の寸法(nm)を有しており、主として非晶質の相に連結されている;
b) この材料は、<50%、好ましくは、<60%、より好ましくは、<70%、最も好ましくは、<90%のRHにおいて透明である;
c) この材料は、RH <70%、好ましくは、<80%、より好ましくは、<90%、最も好ましくは、<100%の範囲のRHにおいて粘着性を示さない;
d) この材料は水又は胃液中で膨潤し、特に、<70、好ましくは、<50、より好ましくは、<40、最も好ましくは、<30の温度℃において、上記媒体の僅かな動きによって溶解又は崩壊する。
【0027】
本発明の靭性−弾性材料の特に有利な性質は、酸素に対する良好な遮断効果であり、RTにおける[cm3mm/(m2)24h]表される酸素の透過効率P02は下記の範囲である:
a)RH 0%においは、P02は、<0.3、好ましくは、<0.15、より好ましくは、<0.07;
及び/又は
b) RH 50%においは、P02は、<2、好ましくは、<1、より好ましくは、<0.5;
及び/又は
c) RH 75%においは、P02は、<20、好ましくは、<10、より好ましくは、<5;である。
【0028】
発明の詳細な説明
異なる用途についての選択された構造の変換は下記の要素に基づいている。
【0029】
基礎及び現存デンプン(present starch; vorliegende starken)
基礎として、現存デンプン(PS)が選択される。基本的には、このデンプンは任意の起源のデンプン又はかかるデンプンの組合せであり得る。しかしながら、多くのデンプンは均質な非晶質構造を形成しない。特に、アミロースを含有するデンプンは劣化(戻り) (retrogradation)を行う傾向があり、しばしば、500nm以下の寸法を有する指定領域(oriented area)を生じる。それによって、一方においては、透明性が減少し(不透明化)、他方においては、劣化デンプンは限定された溶解性又は崩壊性を示す。水溶性は網状構造を導入することによって更に増大するので、基材又は非晶質相の可能な最良の溶解性又は崩壊性は実質的な前提条件である。
【0030】
劣化は、主としてデンプンのアミロース部分によって生じ、それによって、アミロースは少なくとも部分的に結晶化する。この理由から、<25%、特に、<22%、特に、<19%のアミロース含有量を有するPS又はPSの混合物、即ち、コメ又はサゴデンプン、球根及び根から得られるデンプン、例えば、ジャガイモ、ヤム、カンナ、クズウコン又はタピオカから得られるデンプンが好ましい。同様に、典型的には1%以下のアミロース含有量を有するロウ状デンプン(waxy starch)、例えば、ロウ状トウモロコシ、ロウ状コメ、ロウ状アワ、ロウ状オオムギ又はロウ状ジャガイモ、又は、20%以下のアミロース含有量を有するヘテロワックス状デンプン(heterowaxy starch)、例えばヘテロワックス状アワも好ましい。
【0031】
純度に関して、根及び球根に由来するデンプン又はロウ状デンプン、特に、タピオカデンプンが同様に好ましいが、その理由は、そのタンパク質及び脂質含有量が非ロウ状コムギデンプンと比較して低いからである;このことは透明性及び明澄性についての利点でもある。オオムギデンプン及びジャガイモデンプン、特に、トウモロコシデンプンの欠点はこれらのデンプンの種々の遺伝学的に変性された(modified)変種が付加され(add on)、GMO比率(GMO proportion)に関しての純度が演繹的に不確実であることである。従って、この観点から、GMO変種が付加されていないデンプン、例えば、サゴ又は根デンプン、特に、タピオカデンプンが好ましい。しかしながら、技術的適合性に関しては、一般的に、変性デンプンもPSと考えられる。
【0032】
特に興味のあるものはデキストリン、特に、ホワイトデキストリン、イエロー又はカナリア色デンプンのごときピロデキストリン、変性デコストリン、コ−デキストリン又はブリチッシュゴムである。これらのデキストリンは良好なフィルム形成特性を示し、その不規則な構造と典型的には0.05以上の高い程度の枝分れQbの結果として、劣化に関して部分的に又は実際上、完全に安定であり、従って、高度に水溶性でありかつ長期間安定である、即ち、老化に対して抵抗性である。更に、デキストリンの使用は、該デキストリンが良好な接着性を有するので、軟質カプセルの溶接接合の品質に関して有利な効果を示す。低い程度〜平均的な程度の変換率(conversion)を有するデキストリンは単独でPSとして使用することができ、或いは、他のPSと一緒に使用することができ、一方、高い程度の変換率を有するデキストリンは他のPSと共に使用することが好ましい。光学的特性に関してはホワイトデキストリンが好ましい。
【0033】
アミロースとは別に、アミロペクチンも明らかに少ない程度であるが、明らかに長期間に亘って劣化し得る。アミロペクチンの劣化の程度及び水中での溶解性又は崩壊性にかんしての劣化アミロペクチン領域の安定性はアミロペクチンのA側鎖の長さによって決定される。この意味において、最短のA側鎖が有利である。この観点から、18以下、好ましくは、16以下、より好ましくは14以下、最も好ましくは、12以下のCLwを有するデンプン、即ち、例えば、ロウ状デンプン、特に、ロウ状コメ、タピオカデンプン又はサゴデンプンが好ましい。一方、A側鎖の長さは、より容易に測定される特性値の青価(blue value)
(BV)及び沃素親和性(Iodine Affinity)(IA)にも反映され、低いBV又は低いIAのアミロペクチンフラクションを有するPSが好ましい。
【0034】
更に、後の処理又は処理の組合せによって劣化に対して安定化されたデンプン又はデンプンの混合物はPSとして好ましい;この場合、球根又は根デンプンのごとき劣化する傾向の少ないデンプンを使用することが好ましい:
【0035】
酸化(例えば、過沃素酸塩酸化、クロム酸酸化、過マンガン酸塩酸化、二酸化窒素酸化、次亜塩素酸塩酸化:酸化デンプン);エステル化(例えば、アセチル化デンプン、ホスホリル化デンプン(モノエステル)、デンプン硫酸塩、デンプンキサンテート);エーテル化
(例えば、ヒドロキシアルキルデンプン、特に、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシエチルデンプン、メチルデンプン、アリルデンプン、トリフェニルメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジエチルアミノエチルデンプン);架橋(例えば、ジホスフェートデンプン、ジアジペートデンプン); グラフト反応;カルバメート反応(デンプンカルバメート)。
【0036】
部分的に置換されたヒドロキシル基を有するデンプンは、特にフィルムの製造に要求されるごとき有利な皮膜形成特性を使用するための高い伸び率を有しており、置換の結果として、これらのデンプンは劣化に対して安定化される;即ち、水溶性でありかつ透明である。本発明に関して有利なこれらの性質は、通常、置換の程度DS及び置換された基の寸法と共に増大する。従って、0.01以上、より好ましくは、0.05以上、特に、0.10以上、最も好ましくは、0.15以上のDSを有するデンプンが好ましい。上限値は、各々の場合、食用デンプン(food starch)についての通常の測定(regulatory determination)によって与えられる。しかしながら、技術的な観点から、高いDSを有する変性デンプンも安定であり、有用である。
【0037】
特に興味のある置換デンプンの例は、食用デンプンに許容される、最大約0.20の置換率を有する、ヒドロキシプロピル化又はヒドロキシエチル化又はアセチル化又はホスホリル化又は酸化根及び球根デンプン又はロウ状デンプンである。
【0038】
同様に、粘度に関して、特に興味のあるデンプンは、安定化されたPS、即ち、例えば、リン酸二デンプン(distarch phosohate)、アジピン酸二デンプン(distarch adipate)又はインヒビットデンプン(inhibited starch)(Novation Starches)のごとき化学的に架橋されたデンプンである。特に好ましいものは化学的に架橋されたかつ同時に置換されたデンプンであり、この場合にも高度の置換が好ましい。適当な手法、特に、せん断力を制御することにより、そのままの最終製品のデンプン粒子内部に少なくとも一部、化学的架橋が生じる。この場合、非晶質相は元のデンプン粒子の網状構造フラグメントを含有する二相系であり、これによって、カプセルの弾性率と強度は問題となる高い湿度の領域において確実に影響を受け得るが、水溶性は明らかに損失することはない。ここで、不連続網状構造フラグメントは、解決手段について必須である物理的網状構造とは基本的に相違することが強調されなければならない。網状構造フラグメントだけに基いては、所望の特性面は達成されないが、完全な解決という点からは明らかに寄与し得る。置換されたかつ同時に架橋されたデンプンを使用することの利点は、種々の置換度を有する広い範囲の種類及びこれらの好ましい商品としてデンプンが食品等級で商業的に得られることである。その例はヒドロキシプロピル化リン酸二デンプン、ヒドロキシプロピル化アジピン酸酸二デンプン、アセチル化リン酸二デンプン又はアセチル化リン酸二デンプンであり、これらはトウモロコシ、コムギ、アワ、コメ、ジャガイモ、タピオカ等のごとき種々の起源のデンプンから得ることができる。
【0039】
興味のあるデンプンの他の群は、酸−加水分解デンプン又は酵素により加水分解したデンプン並びに化学的に変性された加水分解デンプン、特に、25%以下のアミロース含有量を有するデンプンに基づくものである;但し、これらは劣化する傾向の少ないものであることを条件とし、例えば、酸化又は置換のごとき追加の変性によって得られる。
【0040】
劣化に対する最小の、減少された又は減少している傾向を有するPSが最も好ましい。しかしながら、劣化を防止するか又は最小にする処置を行うならば、コムギデンプン、エンドウマメデンプン又は高アミローストウモロコシデンプンのごとき高アミロース含有量を有するPSを使用し得る;この処置は、例えば、非晶質状態の凍結のごとき手法、及び/又は、規定された水含有量、特に、低い水含有量についての熱処理、及び/又は、例えばヒドロキシル基の置換のごときPSの化学的変性、及び/又は、劣化抑制物質を添加する製剤に関する処置により行われる。一方において、これらの処置の組合せを行うことによって非晶質状態が達成され、この場合、水溶性及び崩壊性が達成され、一方において、限定された、但し、規定された網状構造の形成が依然として可能な程度まで劣化が最小化され、その結果、低い湿度での靱性と高い湿度での適当な強度及び剛性の間でのバランスが得られる。この場合、網状構造可能デンプン(NS)の添加によって導入される追加の網状構造を不要にすることができる;即ち、所望の材料特性をPSのみに基づいて或いはPSの組合せに基づいて達成し得る。しかしながら、通常、PSとNSの組合せが使用される;その理由は手順の変換(procedural conversion)及びかかる材料の材料特性(溶解性、靱性、伸び率、透明性等)の制御が容易であるからである。
【0041】
特定の現存デンプンは天然の粒子の形(クッキングデンプン)並びに物理的に変性された形(予備ゼラチン化、冷水溶解、冷水膨潤)で使用し得る。
【0042】
特定のPS又は2種又はそれ以上のPSの組合せをこの目的について考慮するPSの選択方法により、起源、タイプ及び変性の程度に関して、個々の利益及び不利益を選択することと共に、多数の異なる可能性の存在することが明らかになり、それによって、技術的不利益を別の製剤パラメーターの選択により及び/又は手法により、補償することができる。従って、技術的要求ばかりでなしに、原料価格及び入手性のごとき商業的側面を満足させる
デンプン及びデンプンの組合せをPSとして選択することが可能であり、最適な手法の変法、純度又はGMOからの自由性を考慮し得る。更に、各々の場合において、特定の用途についての製品特性に関して最適の解決手法を選択することもできる。
【0043】
軟化剤
軟化剤(WM)に関して、多数の既知のデンプン軟化剤が存在し、これらは、多数、文献に記載されている(例えば、WO 03/035026 A2号、WO 03/035044 A2号参照);その例はポリオール類、グリセリン、エリスルトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、タガトース、ラクチオール、マルチトール、マルツロース、イソマルトである。これらの軟化剤及び他の軟化剤は、各々、単独で又は種々の混合物として使用し得る。靱性−弾性材料については、特に適当な軟化剤は、<00℃、好ましくは、<70℃、より好ましくは、<50℃、最も好ましくは、<30℃の融点を有することが認められた。水は最も重要な軟化剤である。しかしながら、本発明においては、水は、水と他の軟化剤と区別するための定量的な詳細について、軟化剤としては指定されない。有利な軟化剤含有量は、重量%、dsbで表して、10−60、好ましくは、15−50、より好ましくは、20−40、最も好ましくは、25−35であり、軟化剤は、特に、>50%、好ましくは、>70%、特に、
>80%、より好ましくは>90%、最も好ましくは>90%、特に、100%の融点を有する軟化剤からなる。
【0044】
網状構造及び網状構造可能(network-possible)デンプン(NS)
非晶質相だけに基づいて低いRHにおいて適度な靱性を得ること、同時に、高いRHで適度な安定性と強度を得ることはできないので、規定された網状構造を導入し、それによって網状構造を強化し、好ましくは、、非晶質相が連結されている網状構造を生成させる。この連結は適当なNSを選択することにより及び適当な製造条件下でNSをPSに調和させることにより達成される。
【0045】
アミロースを含有するデンプン又はアミロース状デンプンがNSとして使用される。種々のNSの混合物もNSとして使用される。
【0046】
ある場合には、PSとNSが物質として同一であることが指摘される;その理由は、原則的に、各々のNSはPSとしても使用し得るからである。従って、PSとNSの違いは実質的な性質ではなく、これらの用語は方法との関係で理解されるべきである。NSは網状構造を生じるその潜在性が開放されるように処理され、一方、このことはPSについては必要ではない。
【0047】
アミロースは、線状であるか又は分岐鎖状であることができかつ必要に応じて変性し得る。NSの例は、天然デンプンからのアミロース、特に、>23%のアミロース含有量を有するデンプンの分別によって得られるアミロース、変性アミロース、特に、置換アミロース又は加水分解アミロース、合成アミロース、穀類デンプン、エンドウマメデンプン、高アミロースデンプン、特に、>30、好ましくは、>40、より好ましくは、>60、最も好ましくは、>90のアミロース含有量を有する高アミロースデンプン、加水分解デンプン、特に、加水分解高アミロースデンプン又はサゴデンプン、ゲル化デキストリン、流動性デンプン(fluidity starch)、ミクロクリスタリンデンプン、脂肪置換物(fat replacer)の分野からのデンプンである。また、NSは、例えば高アミロースデンプン中に含まれているかつ分別によって得られるごとき中間体フラクションを含有し得る。その構造と性質に関して、中間体フラクションはアミロースとアミロペクチンの間にある。
【0048】
アミロースについては、通常、DPn>100を有する長鎖アミロース(LCA)とDPn<100を有する短鎖アミロース(SCA)の相違がある。網状構造可能デンプンはLCA及び/又はSCAを含有し得る。
【0049】
短鎖アミロース(SCA)
SCAの例は、アミロデキストリン、線状デキストリン、ネーゲリ(naegeli)デキストリン、リンター化(linterised)デンプン、エリスロデキストリン又はアクロデキストリン
(achrodextrin)であり、これらは種々の銘柄を提供し、SCAのサブグループである。
【0050】
SCAはLCA、LCAアミロペクチン混合物又はアミロペクチン混合物の加水分解から得られ得る。有利な網状構造については、特に適当なSCAは根及び球根からのデンプン又はヘテロワックス状又はロウ状デンプンの加水分解から得られる。加水分解は化学的に、例えば、酸加水分解により、及び/又は、酵素により、例えば、アミラーゼ(アルファ−アミラーゼ、ベーター−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、イソアミラーゼ又はプルラナーゼ)又はアミラアーゼの組合せにより生起させ得る。アミロース含有デンプンは酸/酵素加水分解の組合せによりSCAとして得られ、この場合、2つの加水分解は同時に又は逐次的に生起し得る。これに基づいて、同一のデンプンから出発して種々のタイプのSCAを得ることができる。更に、SCAの特徴も加水分解中の元のデンプンの状態により、例えば、デンプン粒子の膨潤の程度により影響される。従って、広範囲の適当なSCAが得られる。ロウ状デンプンから酸/酵素加水分解又は酵素加水分解により別のタイプのものが得られ、この場合、典型的には約22のDPnを有するSCA加水分解物が得られ、これは特に適当なものである。更に、SCAは特に好ましいものであるが、その理由は、それは、例えばプルラナーゼによりデンプンからNSF、最終的にデンプン網状構造が調製される間に形成されるである。
【0051】
長鎖アミロース(LCA)
原料のデンプン中に含有されるアミロースは、通常、DPn>100を有するLCAである。しかしながら、LCAの重合度DPnは、例えば、酸加水分解及び/又は酵素加水分解及び/又は酸化により<100の値まで減少させることができ、その結果、対応する変性原料もSCAを含有し得る。
【0052】
SCA、LCA及びSCAとLCAの混合物を製造するための多数の方法が文献に記載されている。一方において、両方のアミロース形が純粋な形で得られ、そして、異なる、所望ならば加水分解された市販のデンプン中に異なる割合で含有されている。
【0053】
有利な網状構造
網状構造を非晶質相又は主として非晶質の相に連結するための構造的前提要件は、アミロペクチンフラクションのA側鎖の鎖長CLw(A-AP)及びアミロースフラクションの鎖長によって与えられる。<30のアミロース含有量を有するデンプンからのアミロペクチンについてのアミロペクチンのA側鎖の鎖長CLw(A-AP)は約10−20であるのに対して、高アミロースデンプンは若干、より大きい鎖長CLw(A-AP)を有する。アミロースは、比較すると、非常に大きい鎖長CLw(AM)を有し得る。長鎖アミロース(LCA)については、鎖長CL(LCA)は典型的には100−1000であり、従って、根及び球根デンプンは穀類デンプンより明らかに大きい鎖長を有する。短鎖アミロース(SCA)については、鎖長CL(SCA)は<100であり、原則的に、重合度DP(SCA)とほぼ同一の大きさであり、CL(SCA)<DP(SCA)である。これらのデーターは極めて稀な場合においてのみ、種々のデンプンについての平均重量値CLwであるので、鎖長分布の数値化(numbering means)CLn、又は、重合度分布の数値化手段段DPnは議論を単純化するために使用される。一般的に、CLwはCLnより若干大きく、この場合、アミロペクチンのA側鎖での差は、これらは狭い分布を有するので最小であり、これに対して、SCAにおける差は大きく、LCAにおては非常に大きい。
【0054】
アミロースによる網状構造の非晶質相への連結を得るための、アミロースの最小鎖長CLn(AM)又はアミロースの最小重合度DPn(AM)は、ほぼ、CLn(AM)〜CLn(A-AP)、即ち、10−20であり、ほぼCLn(AM)〜100までの有利な連結が可能である。この値以上でも非晶質相に連結しない網状構造は形成され得る;即ち、これらは、主としてアミロースからなる。設定された要件について、これらの網状構造は、明らかに減少した破断点での伸び率及び靱性の連結網状構造に比較して、不利な性質、例えば、高いRHでの不透明性、水溶性を有する。
【0055】
この理由から、SCAは非晶質相に連結した網状構造を製造するためのNS又はNSの一部として適当であり、網状構造点を形成する微結晶の安定性、即ち、その大きさはCLn又は
DPn(AM)の減少につれて減少し、この物質の水溶解性と透明性は増大する。
【0056】
有利な網状構造はアミロペクチンに対する重量% dsbで表したSCAの割合PSCAについて得られ、SCAは、1−35、好ましくは、2−25、特に、3−20、最も好ましくは、4−14である。
【0057】
更に、非晶質相への網状構造の有利な連結は、その網状構造活性鎖長CLn,na(LCA)がSCAの鎖長の範囲にある、即ち、<100である場合には、可能である。
【0058】
鎖長CLN(AM)においては、化学反応により、特に、アンヒドロセルロースモノマー単位のヒドロキシル基の置換により、酸化により又は架橋により不規則性が導入得る。その鎖長CLによって特徴づけられるセグメントの本体(mass)の中心での化学反応においては、網状構造活性鎖長のCLは1/2CLまで半減する。従って、同様にLCAに基づいて、例えば、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化似より、有利な網状構造を得ることができる。有利な置換率(DS)は約0.01-0.50である。
【0059】
有利な網状構造はアミロペクチンに対する重量% dsbで表したLCAの比率PLCAについて得られ、LCAは、1−70、好ましくは、2−50、特に、3−40、最も好ましくは、5−30である。高度の変性においては、比率PLCAは、程度の変性に比較してより高い値にある。
【0060】
最後に、CLn,na>100を有するLCAに基づく有利な網状構造を得ることができる;これはこのことについての適当な条件が、例えば、比較的低い水分含有量又は低い温度での形成及び/又は20−60%の範囲のRHでの熱処理及び/又は劣化抑制物質(RIM)の添加のごとき手段により形成される場合である;この場合、(大きなスペースの)アミロースとアミロース網状構造の係合(association)が抑制され、(小さいスペースの)アミロースとアミロペクチンのA側鎖との係合が有利である。
【0061】
本発明の靱性−弾性材料は網状構造-活性鎖長CLn,naを有するデンプンを含有することがこのましい;その長さは5−300、好ましくは、6−100、より好ましくは、7−50、特に、8−30、最も好ましくは、9−28、特に、10−27である;この場合、材料は、所望ならば、>0.01、好ましくは、>0.05、より好ましくは、>0.10、最も好ましくは、>0.15の分岐度Qbを有する高度に分岐した他のデンプンを含有している。
【0062】
本発明の靱性−弾性材料はPS及びNSを含有しており、重量% dsbで表される、NS及びPSに対するNSの割合PNSは、1<PNS<90、好ましくは、2<PNS<50、より好ましくは、
3<PNS<30、最も好ましくは、3<PNS<15であることが好ましい。
【0063】
本発明の靱性−弾性材料は、有利なことに、下記の特性を有することを特徴とする:
a) この材料は、1<AM<70、好ましくは、2<AM<50、より好ましくは、3<AM<40、最も好ましくは、3<AM<30の範囲の、重量% dsbで表されるアミロース含有量AMを有する;
b) アミロースはSCA、LCA又はSCAとLCAの混合物であり、重量% dsbで表される、アミロペクチンとSCAに対するSCAの割合PSCAは、1−35、好ましくは、2−25、特に、3−20、最も好ましくは、4−14の範囲である、及び/又は、重量% dsbで表される、アミロペクチンとLCAに対するLCAの割合PLCAは、1−70、好ましくは、2−50、特に、3−40、より好ましくは、4−35、最も好ましくは、5−30の範囲である。
【0064】
本発明の靱性−弾性材料は、更に、有利なことに、下記の特性を有することを特徴とする:
a) SCAは、5<DPn<70、好ましくは、6<DPn<50、特に、7<DPn<30、より好ましくは、8<DPn<28、最も好ましくは、9<DPn<27の範囲の重合度DPnを有する;
b) LCAは、100<DPn<3000、好ましくは、100<DPn<1000、より好ましくは、
100<DPn<500、最も好ましくは、100<DPn<300の範囲の重合度DPnを有する;
c) 所望ならば、LCAは0.01−0.50、好ましくは、0.02−0.30、より好ましくは、
0.03−0.25、最も好ましくは、0.04−0.20の範囲の置換度DSを有する。
【0065】
方法
規定された網状構造を設定するために、NSを混合前又は混合中、PSで活性化し、特に、安定化する。活性化によりNS中に含まれているアミロースが非晶質状態にあることを達成し、その結果、分子分散の後、PSとの混合物の網状構造可能性デンプン流体(NSF)への再結合(recombination)が生起し、これによって、NSとPSの両者が関与する網状構造が生じる。同時に、網状構造の発生は活性化の後に生じるNSの結晶化能力によって誘発される。安定化は網状構造の発生の開始と網状構造のタイプに影響する。
【0066】
可塑化又は溶解工程での水分含有量が高ければ高いほど、剪断力が大きければ大きいほど、必要な温度は低くなる。特に重要なことは、NSの安定化に関連した活性化である。安定化はアミロースを溶融又は溶解工程以上の温度まで過熱することにより達成される。安定化により、アミロースの再結合の温度は低温で所望の網状構造に調節し得る。安定化又は過熱温度が高ければ高い程、同一の水分及び軟化剤含有量について、より低い温度で再結合又は網状構造の発現が生起する。更に、活性化されたNSの過冷(undercooling)により適当な核を生成させるために、異なる核形成(nucleating)手段又は方法を使用し得る。活性化の安定化、核の形成、過冷及び異なる核形成手段については、特許出願
WO 03/035026 A2号及びWO 03/035044 A2号が参照されるが、これらにはPSと混合する前のNSの調製、混合方法及び連続的に続く形成及び網状構造の発現が記載されている(分離連続プロセス、SCP)。
【0067】
更に有利な方法は、例えば顆粒又は粉末の形の予備製品の生成を混合工程の後に生起させることとである。この予備製品を後に同様に調製し、最終製品に加工し得る(分離非連続プロセス、SDP)。種々の予備製品の製造及びNSとPSを一緒に調製し得る他の操作方法
(同時的連続法、TCP及び非連続法、TDP)は特許出願 WO 2004/085482 A2号に記載されている;この出願は2004 7 10に公開されており、本願に対する優先権を有し、参照として本明細書に包含される。
【0068】
水性媒体中での溶解性及び崩壊性
網状構造を導入することにより、高い軟化剤含有量を調節することが可能であり、それによって、カプセルの脆弱性を低い湿度で克服することができ、同時に、高い湿度範囲での機械的特性を保証し得る。しかしながら、既知の網状構造は透明性を損失させ、水不溶性をもたらすので、2つの基本的要件が満足されない。
【0069】
この問題は、一方において、低い網状構造密度を有する網状構造を設定することにより解決することができ、この場合、透明性は殆ど損失することがなく、網状構造は水中で膨潤状態で崩壊することができそして機械的特性が特に高い湿度で保証される。しかしながら、クリアランスが制限され、網状構造のポテンシャルは十分に利用されることがげきない。従って、他方においては、高い網状構造密度においても溶解性と透明性を得るために可能性が求められた。
【0070】
既に述べたごとく、基本的原則は網状構造点を構成する微結晶の寸法を制御することにある。方法、特に、熱処理及び/又は実質的な要件によって影響を受ける。巨大分子の限定された拡散の結果としての平均RH及び低い温度で、より小さい微結晶がより高いRH及びより高い温度で得られる。
【0071】
SCAが一個の伸び(elongation)当り、約6−8モノマー単位及び一個の伸び当り、約0.8nmの長さを有するつるまき線(helix)として存在する、結晶化した形の、例えば24のDPnを有するSCAは約3x0.8nm=2.4nmの長さを有するので、かかるSCAの組合せの最小寸法は、A側鎖がSCAと匹敵し得る、約2.4nmを有するアミロペクチンによって形成される微結晶のA側鎖について与えられる。この寸法は透明性について要求される寸法500nmよりはるかに小さく、かかる微結晶も37℃を超える水中では不安定である。
【0072】
従って、SCAの分子量の選択により、透明性並びに水溶性又は水中での崩壊性は好都合に影響される。SCAのDPnの増大につれて、微結晶凝集物を形成する傾向が増大し、それによって、透明性、水溶性及び靱性も低下する。この傾向はDPn>100について、即ち、LCAについても継続し、これは、SCA、特に、低い重合度DPnを有するSCA、又は、例えば置換によって制限される網状構造−活性鎖長CLn,naを有する高分子量アミロースが好ましい理由である。
【0073】
結晶状態の線状重合体の長さと、対応する微結晶の寸法との関係(ラメラ密度)は合成重合体の分野で知られているが、多糖の分野では、この適合性(legality)を、特に、高い機械的安定性と弾性を有するが、それにも拘わらず水中で崩壊し得る網状構造に有利に利用し得ることは認識されていなかった。
【0074】
より大きな微結晶は凝集物又はより高いDPnを有するSCA又はLCAを経て生じ得る。特に、LCA似ついては、過度に低度の枝分かれQbは不利であり、不透明性及び水不溶性をもたらし、或いは、膨潤後、崩壊を阻害する。透明性と水溶性は高分子量SCA及びLCAを用いて得ることができる;これらのアミロースが置換されている場合、網状構造−活性鎖長
CLn,naが減少しているか又は適当な方法が行われる場合、特に、水分含有量を低い値まで低下させること及び/又は比較的低いRHの後続する生産での熱処理が行われる。このことは、有利な網状構造、特に、非晶質相に連結した網状構造が形成されることを可能にする同一の要因が水溶性及び透明性に対して明確な効果を有することを意味する。全体の水溶性は活性成分の放出についての必要条件ではなく、物質の崩壊性は放出を可能にする。本発明との関係において、水溶性は崩壊性とも理解されるが、その理由はあるタイプの靱性−弾性材料は完全には溶解しないが、崩壊するからである。
【0075】
水溶性は調製及び方法に関連する上記処置によって主として決定され、第2には、水溶性に対する明確な影響は下記の物質を使用して可能である。
【0076】
劣化防止物質(RIM)
RIMはPSだけに基づく靭性−弾性材料又はPSとNSの組合せに基づく靭性−弾性材料の両者に有利に使用し得る。同時に、網状構造−可能デンプン流体(network-capable starch fluid)(NSF)と混和し得る物質は、基本的に、水溶性から生じる。これらの物質の劣化抑制効果は、一方においては、軟化剤として及びデンプン相の希釈においてデンプンについて利用し得る水の減少に基づいており、この場合、デンプン巨大分子の拡散は両者の場合及び結晶化についてのRIMとデンプンの非混和性において困難となる。適当なRIMの例は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、ラクツロース、ラフィノース、グルコースシロップのごとき糖のタイプ、高マルトースシロップ、高フルクトースコーンシロップ、水素化デンプン加水分解物及びポリデキストロース、グリコーゲン、オリゴ糖、オリゴ糖の混合物、特に、DE>20、好ましくは、>25、より好ましくは、>30、最も好ましくは、>70を有するもの、マルトデキストリン、デキストリン、特に、分岐度Qb>0.05、好ましくは>0.10、より好ましくは、>0.15、最も好ましくは、>0.3を有するものである。
【0077】
RIMは、更に、それ自体、水溶性を改善し、好ましくは吸収性、特に、著しく低い酸素透過性の種類の糖に影響し、これが特にこの理由から有利であるという理由である。劣化防止物質が劣化を完全に抑制することができる場合には、特に、デキストリン、マルトデキストリン、オリゴ糖及びグリコーゲンは、透明性が減少しない寸法への劣化から生じる微結晶の寸法の制御を可能にし、水溶性又は水中での崩壊性が達成される。この性質が重要なこれらの用途においては、重量% dsb で表わして、1−70、好ましくは、3−50、より好ましくは、5−25、最も好ましくは、7−20の範囲の、NSとRIMに対する劣化抑制物質(RIM)の割合PRIMはが効率的に使用される。
【0078】
爆発剤(E)
従来の技術に従ってガレン(galenic)で使用される爆発剤、即ち、崩壊アクセサリー(disintegration accessory)は水中での吸収及び/又は膨潤の際に、強力にガスを発生する爆発剤と考えられ、これによって、網状構造が不安定化し、崩壊する。その例はアルカリ及びアルカリ土類の炭酸塩及び炭酸水素塩、特に、炭酸カルシウム、並びに、ダイズタンパク質(例えば、エモコソイ、Emocosoy)、又は、好ましくは、大きく膨潤するデンプン粒子、例えば、ナトリウム グリコレート(カルボキシメチルエーテルデンプンのナトリウム塩)、例えば、エクスプロタブ(Explotab)、ビバスター(Vivastar)又はプリモジェル(Primojel)である。更に、塩類も考慮に入る。
【0079】
崩壊性能を改善することが必要である場合には、重量% dsb で表して、0.1−30、好ましくは、0.5−15、より好ましくは、1−10、最も好ましくは、1.5−7.0の範囲の、PSとNSとEに対する爆発剤(E)の割合PEで添加される。
【0080】
溶剤(S)
溶剤は、特に、良好な水溶解性又は水中での強い膨潤能力を有するかつNS及び/又はPSと混和し得る又はその中に分離した相として存在する、非デンプン多糖又はハイドロコロイドと理解される。必要に応じ、水溶解性又は膨潤能力を改善するために、重量% dsb で表して、1−50、好ましくは、2−25、より好ましくは、3−20、最も好ましくは、4−15の範囲の、PSとNSとSに対する溶剤(S)の割合PSで添加される。
【0081】
光学的特性
37℃での水中又は胃液中での溶解を可能にする処置は、標準網状構造について問題(不透明性)となる透明性の調節も可能にする。対応する処置は既に述べた。これは約85及びゼラチンに匹敵する高品質の高い透明度まで得られ得る。ゼラチンは黄色〜褐色の本来の色を有するのに対し、靭性-弾性材料からなるフィルムは実際に完全に無色である。黄色〜褐色の色を有するピロデキストリンを明確な(clear)割合で使用した場合、ほぼ、ゼラチンの色が得られる。
【0082】
例えば着色ゼラチンカプセルについて使用されるごとく、通常の天然又は合成染料を着色に使用し得る。
【0083】
印刷能力については、デンプンはゼラチンに比較して利点を提供する。このことは、デンプンは製紙工業において大量に利用され、その結果、紙の印刷能力を改善するので、理解できない。
【0084】
表面特性
ゼラチンに比較して、網状構造の形成を開始させる前に粘着性を減少するが、これは、この時点でゼラチンは非常に高い水含有量を有するからである。網状構造が形成されるにつれて粘着性が減少し、網状構造の形成が完了すると粘着性は実際上、存在しない。
【0085】
衝撃靭性
同一のサンプルが低い応力では靭性であるように見え、高い応力では脆弱に見え得る。このことは、特に、デンプンに基づくかつ脆性から靭性に転換する領域の材料の場合に認められる。高い応力速度も実際に生じるので、衝撃靭性は決定的である。破断点で吸収されたサンプル断面に対するエネルギー(衝撃能力)として表される衝撃靭性は別として、破断点までのサンプルの伸長率εkも、突発応力(sudden stress)の生じた場合の変形性又は靭性についての尺度である。約33%RHにおいて、驚くべきことに、デンプンに基づく本発明の靭性−弾性材料は、1000mJ/mm2まで及びそれ以上の高い衝撃靭性Kを受けた;約25%の伸長率εkにおいて、同一の条件において、TPSはεk〜0%において、典型的には約10mJ/mm2の衝撃靭性を有しており、軟質カプセルゼラチンはεk〜25%において、約400mJ/mm2の衝撃靭性を有する。既に述べたごとく、TPS軟質カプセルの最小靭性又は明確な脆性は中心問題であり、著しく限定されるが、対応する技術を利用し得る。
【0086】
TPSの靭性及び本発明の靭性−弾性材料の靭性は、特定のRHにおいて、主として、脆化温度(brittle temperature)Tgによって決定される。脆化温度は非晶質物質における連続相転換を特徴づけるための可能性であり、例えば、高められた熱容量、熱膨張、可撓性又は増大した靭性を生じる、成分の自由度の増大を特徴とし、それによって、それぞれの転換温度が明確な相違を有しそして一定の温度において、軟化剤含有量に応じて変動する特性の対応の変換を観察し得る。RTでのRH、RHzに応じて変動する靭性について、最適の軟化剤又は最適軟化剤の組合せを選択するためには、変換は決定的である。靭性デンプン混合物については、RHzは<30%、好ましくは、<20%、である;即ち、これらの比較的低いRHにおいては、材料は最大靭性の約半分を示す。PS、NS及び例えば劣化抑制物質のごとき他の製剤パラメーターに応じて、グリセリン20−40%の範囲でグリセリンを軟化剤として使用した場合には、RHzは15−30%の範囲であり、この場合、問題となる低RHの範囲で適当な靭性が保証される。
【0087】
ポリビニルアルコール(PVA)を、特に、重量%で、1−50、好ましくは、1.5−30、より好ましくは、2−20、特に、3−15、最も好ましくは、3−10の範囲の割合で添加することにより、靭性−弾性材料の靭性を、特に、RH<33%において更に改善し得る。基本的には、任意のPVAを使用し得るが、好ましくは、90%以下、より好ましくは、<80%以下の加水分解度を有するPVAが好ましい。
【0088】
熱処理及び老化に対する抵抗性
材料を大気中に貯蔵し、大気が時間の関数としての湿度と温度の過程を有する方法が熱処理として設計されている。熱処理を使用して、網状構造の発生、及び、必要ならば、劣化を完成カプセルにおいて制御し得る。RTにおいてそして約0−30%RHの範囲において、網状構造の発生を抑制し、一方、速度を増大させながら、約60−90%RHで熱処理を行う。余りにも高いRHにおいては曇りが生じることがあり、これが熱処理を平均範囲の湿度で行うことが有利な理由である。RT以上に温度を調節することにより、熱処理を短縮することができ、それによって、温度を増大させながら適当なRHを減少させる。熱処理の時間は正確な処方、特に、アミロースの重合度に依存し、数時間〜数日である。ここで、SCAもはLCAと比較して、有利性、即ち、短い熱処理時間を可能にする。より短い分子はより大きく移動する結果として、熱処理を省略し得る。
【0089】
更に、熱処理を行って、変換処理手段(transposition procedure)を正確に予測する、;これは、さもないと、制御されずに進行する。これによって、一定の製品特性と長時間安定性が得られる。
【0090】
添加剤
添加剤及び/又は充填剤及び/又は抵抗でんぷん(resistant starch)を添加剤として靱性−弾性材料に添加っし得る。このことについては、本願発明に対する優先権が確立されている特許出願WO 03/035026 A2及びWO 03/035044 A2並びに28.03.2003出願のDE 特許出願 出願版番号103 14 418.8参照。
【0091】
軟質カプセルの分野での操作コストは、乾燥工程を含めて、ゼラチンカプセルの操作コストに匹敵する。靱性−弾性材料に基づくカプセルは、ゼラチンと比較して、明らかに低い水分含有量を使用して製造されるので、乾燥工程を減少させることができる。最適化された操作パラメーターを使用して、乾燥工程を完全に省略し得る。
【0092】
原料
上記課題に対する解決法として選択される構成は、基本的に、種々の転換可能性を許容し、その際、解決法のパラメーターを、各々の場合に適合させ、最適化し得る。広範囲の商業的に入手し得るデンプンを使用して、デンプンに基づく生産に利用し得る多数の余地が存在する(大きなデンプン製造業者により100以上の種々のデンプンが提供されている;全体で、市場で入手し得る、しばしば、等級の付いた特性を有する、1000以上の独自のデンプンの種類と品質が存在する)。従って、かなりの数の独特の方法が特定の処方及び採用された製法に従って可能である。考慮されている種々のデンプンが文献に詳述されている。特に、良好な品質を有する、好ましい量のデンプン(必需デンプン;commodity starche)の溶液も変換することができ、入手性、純度又はGMO自由度に関する他の要件を、原料価格及び期間に亘って変化する他の条件の他に考慮し得る。全ての価格に於いて、ゼラチンに比較して良好な品質の原料に基づく溶液についての利点は要因2−7について重要である。
【0093】
用途
性質の新規な組合せのため、本発明の靱性−弾性材料は高品質の軟質カプセルに適当であり、このカプセルは慣用のゼラチン軟質カプセルと同様に使用し得る。軟質カプセルは慣用のカプセル化法、例えば、ロータリーダイ法を使用して製造することができ、その場合、カプセルを、ゼラチンのカプセル化と同様、カプセル化装置に対称的に供給されるフィルムから形成し、これらのフィルムは、例えば押出又は注型のごとき現在の標準的な方法を使用して形成させる。溶接は10−120℃、好ましくは、15−90℃、より好ましくは、20-70℃、最も好ましくは、25−50℃の範囲の温度で行われる。カプセル化は製造直後のフィルムを使用して行うか、又は、フィルムを予め加工し、カプセル化を行う前は、ロールとして貯蔵し得る。かかる方法は非常に有利であるが、ゼラチンカプセルについては不可能である。加工フィルムの製造については、これらは、低い水分含有量で既に製造されているが、ゼラチンカプセルとは全く異なり、熱処理又は軟質カプセルの状態調節を減少させるか又は完全に省略し得る。
【0094】
同様に、靱性−弾性材料は高品質硬質カプセルの製造に使用することができ、このカプセルは慣用のゼラチン軟質カプセルと同様に使用し得る。カプセルの形成は浸漬法
(dip process)におけるゼラチン硬質カプセルとのごとく行い得る。更に、カプセルの形成は射出成形法により連続的に行うことができ、この場合、ゼラチンカプセルとは全く異なり、熱処理又は軟質カプセルの状態調節を減少させるか又は完全に省略し得る。
【0095】
靱性−弾性材料は別の成形品の形、特に、フォイル;フィルム、好ましくは、可食フィルム;フィラメント;繊維、好ましくは、ゲル紡糸法で製造される延伸繊維;フォーム;顆粒;粉末;ミクロ粒子;射出成形製品;押出製品;異型注型製品(profile-cast article);深絞り製品;熱成形品の形であり得る。
【0096】
用途は多数であり、特に、食品、ガレン製剤、化粧料、健康ケアー製品、包装又は農業部門、例えば、綿花ロッド、ポリスチロールフォーム代替品、フォイル、二軸延伸フォイル、コンパウンドフォイル成分、ナノ−、ミクロ−又はマクロカプセル化用膜系、紙積層品、セルロース代替品、使い捨て衣料、陶器及び刃物、食品皿、飲料用ストロー、マグ、食品包装、発泡熱絶縁食品容器、犬用チューボーン、廃棄物及び堆肥用サック、マルチフォイル、植物用ポット、ゴルフチップ、オモチャに使用し得る。
【0097】
本発明の利点
本発明の本質的要旨は、現存原料デンプンPSが網状構造-可能デンプンNSの、特徴的網状構造への架橋手段であり、軟化剤及び軟化剤含有量を適度な靱性が低い相対湿度RHにおいて得られる程度まで調節することによりマトリックスの脆化温度Tgを低下させ、一方において、網状構造の結果として、高いRHにおいて、適度な強度と弾性が依然として得られることである。大部分の用途について必要な特性の組合せは、実際上、完全に非晶質である既知の熱可塑性デンプン(TPS)については得られなかった。TPSの機械的性質は通常の湿度において劇的に変動するが、機械的性質の準平坦域を有する靱性−弾性材料、即ち、広範囲の相対湿度で有用な性質を有する靱性−弾性材料が得られる。
【0098】
靱性−弾性材料は低いRHにおいて驚くべき靱性を有しており、これは、例えば、靱性が臨界的である、即ち、限定要素であるTPSと比較して、100倍以上に改善され、同時に高いRHにおいては、良好な寸法安定性、即ち、高い弾性モジュラスを得ることができる。靱性と寸法安定性とのバランスについては、ゼラチンと比較して改善されている特性分布を得ることができる。更に、より低い酸素透過性が設定され、これによって、現在のゼラチン及びTPSに比較して用途の可能性の範囲が更に改善される(酸化感受性活性成分)。改善された吸収作用の結果として、水吸収性も減少し、同様に用途の可能性が改善される。
【0099】
更に、網状構造を、そのタイプと形状に関して、特定の要件に対して最適化できる。更なる変更の可能性は特定の添加剤によって生じるであろう。従って、例えば、水中では非常に弱くなり、崩壊又は溶解する網状構造を得ることができる。この結果として、例えば、軟質及び硬質カプセルにおけるゼラチンの代替物として使用し得る。その組成のために、新規な材料は可食性フィルムに非常に適している。網状構造の結果として、靱性−弾性材料は高い湿度においても粘着性でない。この挙動は好ましくないように見えるが、多くの用途については、新規な性質の組合せと同様、必要である。同様に、透明性も多くの用途について重要なものである。
【0100】
改善された吸収性と減少した酸素透過性により、例えば、カプセル製剤(ガレン製剤、芳香物、香料)の有効寿命が改善される。更に、使用されたデンプンは、要因2−7によって、広範囲に利用可能でありかつ高純度であり、最後に、単純化された又は十分に無駄のない状態調節の結果として、及び、新規な方法(カプセル化法とは独立したカプセル化のためのフィルムの製造、ロールの形のフィルムの製造)により、操作コストもゼラチンカプセルに比較して、低下させることができる。種々の処方が基本的に有用な解決手段を可能にし、それによって、所望ならば、各々の操作パラメーターを採用されなけらばならないので、原料価格、入手性、純度又はGMOからの自由度ごとき個々の解決手段について多数の余地があり、従って、時間に亘って変動し得る好ましくない条件も考慮し得る。
【0101】
本発明の更なる利点、特徴及び用途の選択は非限定的な実施例及び図面から明らかになるであろう。
【0102】
図面
図1:相対湿度の関数としての弾性率。本発明の靱性−弾性材料の種々の変種の弾性率が高いRHに対して高い水準で確立されており、これに対し、低い温度では、靱性熱可塑性デンプン(TPS)は流動し、機械的性質を失う。配合は表1に記載されている。
【0103】
図2:相対湿度の関数としての、破断点での伸び率。
【0104】
図3:相対湿度の関数としての弾性率。熱可塑性デンプンは、低いRH又は高いRHにおいて適当な性質に調節することができ、一方、新規な靱性−弾性材料は全領域で良好な性質を有する。
【0105】
図4:湿度の関数としての、10%伸び率での引張強さ。同一の状態が図3で生じる。
【0106】
図5:相対湿度の関数としての衝撃強さ。軟質熱可塑性デンプンは低いRHにおおて高い靱性を有するが、高いRHにおいては、靱性も、弾性率も強度も有していない(図3、4)。高いRHにおいては、脆弱TPSの靱性は適度であるが、低いRHでは最小である。一方、新規な材料は両方の領域で良好な性質を有する。
【0107】
図6:相対湿度の関数としての弾性率。種々の靱性−弾性材料の変種の性質の範囲。
【0108】
図7:相対湿度の関数としての弾性率。バッチ法(靱性-弾性 1)と比較して、押出により改善された性質が提供され、押出フィルムは最小の異方性を有する。
【0109】
図8:相対湿度の関数としての、破断点での伸び率。
【0110】
図9:引張り試験における伸び率の関数としての引張応力。靱性−弾性材料においては、顕著な弾性限界、例えば、ポリエチレンとの量的類似性がある。
【0111】
図10:吸収性:吸収性はゼラチンに比較して明らかに改善されている。
【0112】
図11:酸素透過性:遮断効果はゼラチンに比較して明らかに改善されている。
【0113】
実施例
バッチ法
実施例1:バッチ法は50cm3の室容量を有する加熱可能なブラベンダーニーダーを使用して行った。第1工程においては、素材温度80−90℃、120rpmで3分間、水と軟化剤を添加することによりPSを可塑化した。これと並行して、NSの溶液を調製しS、溶融物に添加した。100rpmで10分間、均質化を行い、それによって、素材温度が90−105℃に連続的に上昇した。ついで、最終混合物を取り出し、プレス内で0.5mmのフィルムに成形した;このフィルムは例えば約20%の水を含有していた。ついで、フィルムを平衡になるまで、種々の湿度で貯蔵し、その性質について分析した。靱性−弾性材料及び参照材料についての種々の処方が表1に記載されている。
【0114】
【0115】
連続法、直接押出
実施例2:押出パラメーター:同一方向に回転する、緊密にかみ合う30mmツゥイン−シャフト押出機(20L/D)、スクリュー形状:入口ゾーン、分配性混合物(G3)、分散性混合物(G4)、出口ゾーン(G5)、速度300rpm、PS=7.1 kg/h(添加量 G1)、NS溶液=3.3 kg/h
(25%のNS、75%の水、dT/dt=50℃/分、添加量(G2)、軟化剤=3.5 kg/h(添加量G3)、温度ハウジング、G1=40℃、G2=80℃、G3=90℃、G4=90℃、G5=90℃。押出後の最終水含有量は真空により10−30%の範囲で変動させることができた。
【0116】
混合物を広スロットノズルによって厚さ0.6mmのフィルムに成形し、チルロールによって検量した。ついで、ホイルを巻き取り、貯蔵し、後に、更に加工するか、又は、直接、加工して、例えば、ロータリーダイ装置により軟質カプセルに、或いは、溶接及び切断装置により香料袋(sachet)にすることができる。ホイルを一時的に(interim)貯蔵する場合には、水含有量は室温で、約25−35%の軟化剤含有量において約15%以下にすべきであり、かくして、網状構造の発生は開始しない。約7−15%の水分含有量により、非常に興味のある状態が存在する(発生した網状構造が存在しないか、最小である)。これらの比について、NSFは、一方においては、脆化温度Tg以上の状態にある;即ち、材料は比較的軟質であり、例えば、300%及びそれ以上の非常に高い伸長能力を示し、他方においては、NSF中のNS葉、驚くべきことに、少なくとも数ヶ月、分子中に分散した、分配された状態にあり、その結果、良好な成形性が長時間、変化しないままである。加工の後、網状構造の発生を温度及び/又は水分含有量を増大させることにより開始させることができ、それによって、初期の網状構造の発生の結果として材料が固化し、低温での溶接性を失う。上記した条件下で網状構造の発生が生起しない理由は理解されていない;材料は軟質であり、Tg以上であるが、網状構造の発生は明らかに抑制される(核の存在下ではこれらの条件下でも可能である);しかしながら、観察される状態は、例えば貯蔵能力及び材料のさらんる加工に関して技術的に重要な用途を有する。温度及び/又は水分含有量の増加につれてNSFが固化することは実際に驚くべきことである;その理由はTPSの場合と同様、全く反対のことが予測されるからである;しかしながら、得られる網状構造は追加の強度を有しており、この、一見して、逆説的現象は、TPSと、NSF又はNSFから得られるデンプン網状構造の間の多数の有用な相違を明らかに示している。
【0117】
実施例3:実施例1と同じ、但し、NS溶液はG3で添加し、軟化剤はG2で添加。
【0118】
実施例4:実施例1と同じ、但し、NS溶液は軟化剤と混合して調製し(dT/dt=30℃/分)、G2で添加。
【0119】
実施例5:実施例1と同じ、但し、NS溶液及び軟化剤を、各々、G2で添加。
【0120】
予備成形製品に基づく方法
実施例6:(2工程法)。第1工程において予備成形製品を製造、この場合、実施例1と異なり、軟化剤の添加量は1.5 kg/hであり、ストランド又はヘッド粗砕顆粒によって製造。
【0121】
この顆粒(5kg/h)を残りの軟化剤(0.7 kg/h)と水(1.5 kg/h)を添加することにより加工用押出機中で可塑化しついでフィルムに成形するか、又は、硬質カプセルのごとき射出成形製品に成形した。加工用押出機の温度は約90℃であった。
【0122】
性質
図1は、マトリックス又は非晶質相として本発明の靱性−弾性材料に特に適当なかつ極めて良好なフィルム形成能力を有する劣化安定化デンプン(平均〜高いDS)に基づく配合物
についての、相対湿度の関数としての弾性率を示すグラフである。配合物 TPSソフト10、11及び12は、広い湿度範囲でデンプンに基づく有用な材料を広い湿度範囲で得ることについての基本的な問題を示している。これらの材料は20−30%の低いRHにおいて比較的、衝撃抵抗性であるが、湿度の増大につれて水を急速に吸収し、それによって、これらの材料は約40%RHから非常に軟質になり、粘稠になり、その固体特性を失い、次第に、緩慢に流動する高粘度液体の性質を帯びる。RHによる弾性率の落下は劇的であり、例えば、TPSソフト12は20−40%の範囲のRHにおいて、実際に、1000倍まで変動する。各々の用途について、大気に暴露される場合、かかる材料は、予想される通り、不適当である。
【0123】
配合物 靱性−弾性10-1、10-2、11及び12は、規定された網状構造を示し、それによって、一方において、衝撃耐性は低いRHにおいて減少しないが、他方において、例えば、平均〜高いRHでの弾性率のごとき機械的性質が安定化され得る。驚くべきことに、約40−75%の範囲のRHにおいても弾性率の準平坦域が得られ、それによって、弾性率は実質的に一定のままである。準平坦域の水準は、一方において、選択されたPS及びNSのタイプ及び割合に依存する。靱性−弾性10-1と10%NS、10-2と15NSとの比較により、NSの割合の影響が示される。
【0124】
興味のあることに、約20−50%のRH範囲における靱性−弾性材料の張力伸び曲線は、例えば、ポリエチレンの張力伸び曲線に匹敵するコースを示し、それによって、後続のプラトー範囲及び固化領域が確立され得る。図9においては、張力伸び曲線は、例えば、RH=33%における靱性−弾性10-1について例示されている。
【0125】
図2は図1の配合物の、破断点での伸び率を示す。配合物 靱性−弾性10、11及び12は、約45%RHにおいて最大の300%を示し、そして、約20−70%の湿度の範囲で少なくとも100%の破断点での伸び率を示す。この動向は広い水分含有量における優れたフィルム形成特性を反映している。NSの使用により、NSを使用しない配合物と比較して、破断点での伸び率の最大は若干低いが、高いRHまでの使用の範囲は規定された網状構造を導入することにより部分的に明らかに拡大することができる。
【0126】
図3には、2つの典型的な本発明の靱性−弾性材料(靱性−弾性1及び2)並びにソフト
(TPSソフト1)及び脆性TPS(TPSブリットル1)についての、RHの関数としての弾性率の動向が示されている。対数図表中の軟質カプセルゼラチンはRHの増大と共に弾性率の直線的低下を示し、同時に、約20−85%のRHの範囲で約600倍まで変動する。このRH範囲での靱性−弾性1及び2は100倍までの明らかに減少した変動幅、特に、平均RH範囲において、準平坦域を示す。このことはゼラチンと比較して重要な利点である。ゼラチン及び靱性−弾性1及び2は、22%RHにおいて、同等の弾性率を有するが、85%RHにおいては、靱性−弾性1及び2は約10〜20倍高く、それによって、寸法安定性は高いRHにおいて明らかに改善される。
【0127】
TPSソフト1は低いDSを有する置換デンプンに基づくものである。この配合物は、衝撃−靱性が同時に低いRHにおいて同時に得られる場合に、高いRHでの弾性率についての最も最適なケースにおいて達成されるものを示している。しかしながら、高いRHでの弾性率は適度であり、58%のRHにおいては2MPaの値が既に得られているが、ゼラチンは8MPaを有しているのに対し、靱性−弾性1及び2は、それぞれ、11及び73MPaを依然として有する。DSが低い結果として、TPSソフト1について使用されているデンプンは本発明の靱性−弾性材料についてのPSとして適している;特に、水中での崩壊が必須であるこれらの用途についてはこの性質は十分ではなかった。TPSソフト1と異なり、TPSブリットル1は高い湿度で、靱性−弾性1に匹敵する弾性率を示す。しかしながら、32%EHでの衝撃靱性は極めて小さく、靱性−弾性1における904mJ/mm2に比較して、僅か11mJ/mm2である;即ち、TPSブリットル1は低いRHにおいて極めて脆弱であり、材料は最小の応力においてガラスのように破断する。
【0128】
上記配合物についての、RHの関数としての、10%伸び率での引張強さのグラフが図4に示されている。この性質についての比率は弾性率と同様である。
【0129】
図5には、TPSブリットル1、TPSソフト1及び靱性−弾性1及び21について、RHの関数としての衝撃靱性又は衝撃エネルギーkのグラフが図5に示されている。デンプンに基づく材料は、衝撃強さが少なくとも30mJ/mm2である場合には、靱性であると記載し得るが、より高い値が有利である。TPSブリットル1は、40%RHの直ぐ上で若干、靱性になり、これに対し、靱性−弾性1は20%RH以上で靱性になり、靱性−弾性21は10%RH以下においても靱性であり、従って、これまで生じたことのなかった極端に低い湿度でも依然として靱性である。脆弱性から靱性への転換はTPSソフト1については10〜20%RHについて生起する。高いRHでの衝撃靱性における明確な低下は、材料がRHの増加と共に明らかに軟質となり、高度に粘稠な液体の特徴を呈する。
【0130】
衝撃靱性の他に、衝撃試験における破断点での伸び率εkは、破壊性能を特徴づけるための別の尺度である。TPSブリットル1は測定し得る破断点での伸び率を有していないのに対し、靱性−弾性材料については25%又はそれ以上の伸び率を得ることができ、この材料は高い応力速度においても依然としてプラスチックとして挙動する。
【0131】
図3、4及び5はTPSの基本的な問題を明らかに示している。一方に於いて、低いRHにおいて適度な衝撃靱性を設定することができ、それによって、高いRHにおいては、材料は非常に軟質になりかつ流動性になり(最小弾性率)、或いは、高いRHにおいては、TPSに基づいて適度な衝撃靱性を設定することができ、それによって、材料は低いRHにおいて極端に脆弱になる。この挙動はTPSは実際上、完全に非晶質であり、脆化温度Tg以下ではガラス質であり、Tg以上では、高度に粘稠な流体として存在するという事実に基づいている。かくして、有用な性質は2つの状態の間の転換領域において、狭いRH範囲においてのみ得ることができる。これに対して、本発明の靱性−弾性材料については、靱性と強度特性(弾性率、強度、寸法安定性)の両者を同時に広いRH範囲で得ることができ、それによって、更に、特定の用途に要求される他の特性(例えば、透明性、水性媒体中での崩壊性、水溶性)を調節し得る。更に、典型的には40−75%のRH範囲において特性(弾性率及び強度のプラトー)を実質的に安定化させることができることも特殊な利点である。
【0132】
図6には、RHの関数としての、種々の靱性−弾性配合物についての弾性率が示されている。一方において、これは、本発明の靱性−弾性材料の特徴的性質は種々の配合物を使用して得ることができること、他方においては、弾性率の水準は実質的に20年からなる範囲で変化し得ることを示している。
【0133】
靱性−弾性材料の特性分布は配合物だけでなしに、製造方法にも依存する。バッチ法
(ブラベンダーニーダー、靱性−弾性1)及び連続押出法(靱性−弾性1E)により同一の配合物について製造された材料の性質の比較は図7から明らかである。準平坦域及びそれ以上の範囲にある押出法に従った弾性率は明らかにより高い水準上にあり、この場合、靱性−弾性1と比較して、約3〜5倍高い値がえられることが明らかである;即ち、靱性−弾性材料の利点は、押出による製造及びバッチ法に基づく結果について、一層、顕著である。図8は、靱性−弾性1Eの伸張能力は、平均RHにおいて最大の範囲にある靱性−弾性1と比較して、僅かに減少するが、低いRH及び高いRHにおいて増大することを示している。ブラベンダー法と比較して良好な押出法で得られる性質は一般的に有用であり、例えば、高い均質性、より少ない材料誤差(material error)、短い操作時間のごとき要因に基づいている。
【0134】
図10においては、靱性−弾性1、16及び17の吸収等温線(absorption isotherm)とゼラチンの吸収等温線が比較されている。ゼラチンは同一のRHでの靱性−弾性材料と比較して、より多くの水を吸収する。これは、ゼラチンの種々の性質がRHに高い依存性を示す理由の一つである。靱性−弾性材料の水吸収性は特定の処方、特に、種々の他の性質はRHにあまり依存しない、軟化剤の組成により減少させることができる(靱性−弾性16、17)。
【0135】
特に、カプセル化の分野、及び、一般的に、包装の分野での利用については、良好な遮断性(barrier property)は、ガスと比較して、特に、酸素と比較して、有利である(酸化による内容物の損傷)。図11には軟質ゼラチンカプセルに比較した場合の靱性−弾性1の酸素透過性が2〜3倍、減少することが示されている;この場合、ゼラチンに比較した別の利点が明らかである。酸素透過性は、配合処理、特に、砂糖の使用により更に減少させ得る。靱性−弾性1と比較して、靱性−弾性17は、0〜75%のRH範囲において、1/2倍減少した酸素透過性を示し、これに対し、この倍率は靱性−弾性16については1/4である。
【0136】
典型的な靭性−弾性材料に基づいて、10%の砂糖を添加して変性して、厚さ0.25mmのフィルムをブラベンダーニーダーを使用して製造し、パルス溶接装置により流動性芳香剤濃縮物と香料を含有するバッグを製造した。1ヶ月の貯蔵期間経過後も、バッグはあそのままであり、靭性−弾性材料の優れた遮断効果を確認することができた。バッグを冷水中に放置した場合、15分後に、バッグの完全な崩壊を観察することができ、内容物は効果的に放出された。例えば、この結果は、これまでポリビニルアルコールから製造されていたかつ心地よい芳香を有する洗濯した布を得るのに洗濯機中で使用されていた、香料を含有する香料袋を製造することができることを示している。デンプンに基づくかかるバッグの利点は、一方においては、価格であり、他方においては、デンプンの非常に良好な生分解性である。芳香剤に関して、芳香剤濃縮物を靭性−弾性材料によってカプセルかすることができ、それによって、芳香剤の放出を使用の際に生起させることができ、そして、この時点まで、芳香剤の品質を長時間に亘って非常に良好に保護することができる(トップノート)。芳香剤の分野における従来のカプセル化系と比較して、高い湿度での靭性−弾性材料の安定性及び全RH範囲に亘っての粘着性の不存在は重要な利点である。更に、靭性−弾性材料からなるカプセルからの医薬活性成分の放出について検討し、その結果は薬局方の要件に一致した。
【0137】
測定方法及び状態調節(conditioning)
引張試験
約0.5mmの厚さのフィルムから打ち抜いた、DIN 53504 S3に従った標準化引張試験用サンプルについて、インストロン(Instron)4502 引張試験を使用して、22℃で、50mm/分の綾振速度で引張試験を行った。測定結果は、各々の場合、少なくとも5回の別個の測定の平均値と理解されるべきである。種々の湿度に状態調節した引張り試験サンプルの水分含有量は引張試験中、測定精度の範囲内で一定であった。引張応力σはF/Aとして得られた;ここで、Fは力であり、Aはε=0でのサンプル断面積である。引張試験における伸び率%はε=100(11-10)10として得られる;ここで、10は引張試験の始めにおけるクランプ間のサンプルの伸長可能な長さであり、10は伸長したサンプルの長さである。弾性率はE=σ/εとして得られる。
【0138】
衝撃靭性(impact toughness)
衝撃靭性はアイゾッド衝撃試験法に従って、フランク衝撃試験機(53565型:Karl Frank Gmbh、Weineheim Birkenau ドイツ)を使用し、そして、4ジュール(高衝撃靭性)又は1ジュール(低衝撃靭性)のハンマーを使用して測定した。サンプル本体として、幅5mm、厚さ約0.5mmのフィルムサンプルを使用した。両サイドのクランプ間のサンプルの長さは40mmであった。衝撃試験における破断点での伸び率εkは、εk=100(11-10)10として得られる;ここで、10は引張試験の前のクランプ間のサンプルの伸長可能な長さであり、10は破断後の伸長したサンプルの長さである。測定結果は、各々の場合、少なくとも5回の別個の測定の平均値と理解されるべきである。試験中、サンプルの水分含有量は測定精度の範囲内で一定であった。
【0139】
酸素透過率
酸素透過率の測定は厚さ0.15mmのフィルムについてOX-TRAN 2/21(MOKON Inc. 7500 Boone Avenue North ミネアポリス 米国)を使用して行い、デンプンフィルム及びゼラチンフィルムの各々の場合の酸素透過率を対称的配置で、同時に測定し、その結果、相対的な値を非常に正確に測定できた。
【0140】
吸収性
吸収性の測定は、予め水分含有量0%まで乾燥し(五酸化リン上、75℃で24時間)、ついで、飽和塩溶液により調節した種々のRHで、デシケーター中で7日間貯蔵したサンプル
(辺の長さ5mm、厚さ0.5mmの正方形サンプル)について行った。デシケーターにベンチレーターを取り付け、それによって、大気中での貯蔵と比較して、平衡になるまでの吸収時間は明らかに短縮された(7日)。吸収後の水分含有量はその後の乾燥中の水の損失によって測定した。
【0141】
状態調節
機械的分析(引張試験、衝撃靭性)のためのサンプルの状態調節は吸収試験に使用したものと同一の装置中で行った。
【0142】
記号及び略語
RH [%] 相対湿度 0%<RH<100%
RT [℃] 室温(22℃)
Tg [℃] 脆化温度
WM [%] デンプン及び軟化剤に対する軟化剤含有量(水を除く)、dsb
W [%] デンプン、軟化剤及び水に対する水分含有量
Dsb [-] 乾燥重量に対する固形分
E [MPa] 弾性率(ヤング率)
σm [MPa] 引張試験における最大強度(破断抵抗)
σ10% [MPa] 引張試験におけるε=10%での引張強さ
σb [%] 引張試験における破断点での伸び率
FE(23-85) [-] 23-85%のRHの範囲での弾性率の変動幅、FE(23-85)=E23/E85
【0143】
FE(43-75) [-] 43-75%のRHの範囲での弾性率の変動幅、FE(43-75)=E43/E75
Fσ10%(23-85) [-] 23-85%のRHの範囲でのσ10%の変動幅、
Fσ10%(23-85)=σ10%,23/σ10%,85
Fσ10%(43-75) [-] 43-75%のRHの範囲でのσ10%の変動幅、
Fσ10%(43-75)=σ10%,23/σ10%,85
K [mJ/mm2] 衝撃試験(アイゾッド衝撃試験)における衝撃エネルギー
εk [%] 衝撃試験(アイゾッド衝撃試験)における破断点での伸び率
RHz [%] RTでの脆性から靭性への転換でのRH
K(RHz)は、原則として、Ks << KMはK(RHz)〜1/2KMであるので、
脆性−靭性転換に従って定められる脆性領域Ksと最大靭性KMの
の平坦域の靭性の算術平均となる
PO2 [mlxcm/(cm2x24hxatm) 酸素についての透過率
AM [重量%] デンプンに対するアミロース含有量、dsb
PNS [重量%] NS及びPSに対するNSの割合、dsb
PLCA [重量%] AP及びLCAに対する、重量% dsbで表されるLCAの割合
【0144】
PSCA [重量%] AP及びSCAに対する、重量% dsbで表されるSCAの割合
PRIM [重量%] PS及びNS及びRIMに対する、RIMの割合
PE [重量%] PS及びNS及びEに対する、Eの割合
PS [重量%] PS及びNS及びS対する、Sの割合
DP [−] 重合度
DPN [−] 重合度の数平均
DPw [−] 重合度の重量平均
Qb [−] 巨大分子の分岐度(分岐したモノマー単位の数/モノマー単位の数)
CL [−] 鎖長単位の数(単位の数)
CLn [−] 鎖長の数平均;線状、即ち、非分岐鎖セグメント
【0145】
CLn,na [−] 網状構造活性鎖長の数平均;結晶化し得るかつ網状構造に関与し
得る鎖セグメント、即ち、非分岐、非置換、非ステリル阻害
(non-sterile impeded)鎖セグメント
CLw [−] 鎖長の重量平均
DS [−] 置換度:0<DS<3.0
DE [−] デキストソース当量:0<DE<100
BV [−] ブルー値
IA [g/100g] 沃素親和性
PS 原料デンプン(present starch)
NS 網状構造可能デンプン
WM 個々の軟化剤であるか又は種々の軟化剤の混合物であり得る軟化剤
RIM 劣化抑制物質(RIM)
【0146】
E 爆発剤(explosive)
S 溶剤
AM アミロース
AP アミロペクチン
A-AP アミロペクチンのA側鎖
SCA 10−100の範囲のDPnを有する短鎖アミロース;SCAは、単独で、より高い
程度の重合度の他のデンプンと組合せた場合にのみ、無デンプン網状構造を
形成し得る:かかる混合物からなる網状構造は低軟化剤含有量で、低温でも
形成し得る
LCA 100以上のDPnを有する長鎖アミロース(NS又はNSの一部)はLCA1及びLCA2を
有し得る
LCA1 10−300の範囲のDPnを有するLCA;LCA1は、単独で又は他のデンプンとの
組合せで網状構造を形成し得る;LCA1とPSの混合物は平均軟化剤含有
量でかつ平均温度で網状構造を形成し得る
LCA2 300以上のDPnを有するLCA;LCA2は、単独で又は他のデンプンとの組合せ
で網状構造を形成し得る;
NSF 網状構造可能デンプン;デンプン又はデンプン混合物及び軟化剤を含有する溶融物又は溶液は適当な条件下、デンプン網状構造として得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】相対湿度の関数としての弾性率を示す図面である。
【図2】相対湿度の関数としての、破断点での伸び率を示す図面である。
【図3】相対湿度の関数としての弾性率を示す図面である。
【図4】湿度の関数としての、10%伸び率での引張強さを示す図面である。
【図5】相対湿度の関数としての衝撃強さを示す図面である。
【図6】対湿度の関数としての弾性率を示す図面である。
【図7】相対湿度の関数としての弾性率を示す図面である。
【図8】相対湿度の関数としての、破断点での伸び率を示す図面である。
【図9】引張り試験における伸び率の関数としての引張応力を示す図面である。
【図10】吸収性を示す図面である。
【図11】酸素透過性を示す図面である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方においては、低い湿度において高い衝撃靱性(impact toughness)を有しており、他方においては、高い湿度において高い弾性率を有しており、広い範囲の湿度において高い伸長能力を有する、デンプンを基材とする靱性−弾性材料(tough-elastic
material)に関する。
【背景技術】
【0002】
殆ど、軟化熱可塑性デンプン(TPS)だけに基づくデンプンを基材とする有用な材料を得るために種々の試験が行われている。典型的には、軟化剤としてポリオールが使用されている。TPSの場合、デンプンは殆ど完全に非晶質形である。非晶質重合体の性質は主として脆化温度(brittle temperature)Tgによって決定される。Tg以下においては、状態はガラス質であり、硬くかつ脆弱であり、Tg以上では軟質である。これらの2つの状態の間の差異はTPSについて特に顕著である。デンプンの巨大粒子は比較的、剛性であり、硬いので、大きな割合の軟化剤を必要とする。Tg以下においては、TPSは極めて脆弱であり、特に、高い応力速度(stress rate)に非常に感受性であり、Tg以上では、温度の増大につれて、ますます、粘稠な、高粘度液体の性質を示す。従って、デンプンとその軟化剤は親水性が強いので、TPSは大気から水を吸収し、TPSの湿度RHに対する感受性は、TPSを実際に使用する用途で生じる別の問題となっている。RHと材料の水分含有量の関係はその吸収曲線によって示される。水の吸収により、Tgはより低い温度に低下し、その結果、一定の温度においては、水含有量が増大するにつれて、温度の増大についてのごとく、比較し得る特性の分布の変動が得られる;即ち、低いRHにおいては、TPSは硬くかつ脆弱であり、高いRHにおいては軟質である。吸収性の結果として、例えば、衝撃靱性K、強度σm、弾性率、伸長能力(elongation capacity)εb、酸素透過性PO2及び表面特性は極めて顕著に湿度に依存するが、理想的には、材料特性の最大数が一定であることが好ましい。今日まで、デンプンに基づいて、低いRHにおいて適度な靱性を得ること、そして同時に、高いRHにおいて適度な強度を得ることは不可能であった;このためには、デンプンを合成物質とブレンドすることが必要であった。上記した不利益を有するTPSの例は特許文献、WO 94/28029号、US 5362777号、US 5382611号、US 5427614、WO 94/04600号、US 5415827号及び
US 5462980号に記載されている。
【0003】
軟質及び硬質カプセルは医薬及び栄養成分についての証明ずみの(proven)形である。一旦、カプセルが摂取されたとき、一般的には、カプセル内容物の可能な最も迅速な放出が生起されるべきである。従って、軟質及び硬質カプセルを製造する物質叉はこの目的に使用することが潜在的に考慮されている物質は、例えば、現在のカプセルの95%以上を製造するのに使用されているゼラチンごとく、少なくとも親水性であり、一般的には水溶性である。RHによって大きく変動する材料特性についての上記したごとき問題は、これらの材料の用途にも適用される。例えばゼラチンは、軟化剤として25〜50%のグリセリンを含有する軟質及び硬質カプセルの分野での従来の標準的解決手段であり、23%のRHにおいて4.5%の水を含有し、一方、約85%のRHでの水分含有量は30%以上である。水は非常に効果的な軟化剤であるので、軟化ゼラチンの性質は湿度に大きく依存する。例えば、剛性及び寸法安定性の目安である弾性率は、85%のRHにおいては23%のRHより約600倍低い;即ち、低い湿度においては、この材料は比較的剛性でかつ硬く、これに対し、高いRHにおいては、この材料は非常に軟質となり、寸法安定性は低下する。別の重要な材料特性も、同様に、RHの関数としてオーダーの大きさで変動する。RHが0%〜75%に増大するとき、約100倍である粘着性及び酸素透過性P02の増大は特に問題である。これらの理由から、ゼラチンカプセルを特に湿度の高い気候に使用することは問題があり、カプセルを水分から保護するのに高価な包装を必要とする。
【0004】
親水性カプセル材料の湿度に対する顕著な依存性は基本的な問題である。広範囲の湿度において一定の性質を有する硬質及び軟質カプセルの分野における理想的解決は従来、不可能であった。実際に、低い湿度での特性と高い湿度での特性の間には、常に妥協が存在しなければならなかった;即ち、低いRHでの靱性は、高いRHでは寸法安定性が減少することを意味し、これと反対に、高いRHでの良好な寸法安定性は、低いRHでは靱性が失われ、脆弱な性質になることを意味する。ゼラチンを基材とするカプセルについては、少なくとも一つの許容され得る妥協が見出され得る。しかしながら、BSE問題の結果として及び菜食製品への趨勢の過程で畜殺場から得られるゼラチンは消費者によってますます拒否されつつあるので、植物起源の原料に基づく新規な手段が探索されている。特許文献、WO 01/
37817号には高い軟化剤含有量を有する熱可塑性デンプン(TPS)に基づく軟質カプセルが記載されている。しかしながら、この軟質カプセルは低い湿度では顕著な脆弱性を有するという重大な不利益を有しており、その結果、乾燥した環境においては、TPS軟質カプセルは最小の応力で既に破壊しかつ亀裂を生じ、ガラス状に破壊する。高いRHにおいては、
TPS軟質カプセルは非常に軟質でかつ粘着性であり、その寸法安定性を失う。従って、TPS軟質カプセルは、明らかに、ゼラチン軟質カプセルの基礎材料であり、TPS軟質カプセルの使用は平均RHにおいてのみ可能である。硬質カプセルの場合、靱性についての要求が自動高速充填機内でのカプセルの応力の結果として、より大きく、従来、RPSを基材とするカプセルは製造し得なかった。特許文献、US 6214376号及びUS 6340473号には、カラジーナン及びデンプンを基材とする軟質カプセルが記載されている。この軟質カプセルの不利益は軟質カプセルが平均RHにおいて既に余りにも軟質であり、従って、寸法安定性が不十分なことである。より高いRHにおいてはこの性質はより顕著になる。更なる不利益は、酸素透過性が高いこと、カラジーナンの原料コストが高いこと、ゼラチンより明らかに高価であること及びカラジーナンに発癌性の疑いがあることである。
【0005】
これらの例は、カプセル内で湿度によって明らかに変化する材料特性についての根本的問題を明らかにしており、このことはホイル、フィルム、繊維、注型製品等の分野における親水性材料の他の用途に適用される。
【0006】
問題
本発明の主題は、少なくとも下記の特性を有するデンプンに基づく材料を提供することである:
1. 10〜90%の範囲のRH、特に、高いRHでの寸法安定性
2. 10〜90%の範囲のRH、特に、低いRHでの靱性
3. 長時間の安定性、特に、老化に対する耐性
4. ガス遮断性、特に、低い酸素透過性
5. 光学的特性:透明性及び無彩色性(achromatism)、但し、着色可能でかつ印刷可能
6. 表面特性:非粘着性
7. 生分解性、特に、可食性
【0007】
所望ならば、下記の特性も得られるべきである:
8. 25〜60%の範囲のRHでの少なくとも100%の弾性
9. 特に、40℃以下の低い温度での溶接性
10. 膨潤能力、特に、水中への溶解性叉は水中での崩壊性
11. 胃(37℃)中での溶解性叉は崩壊性、特に、薬局方に従った物質の放出
12. 少なくとも食品等級で入手し得る原料。
【0008】
上記で規定された特性は独立したものではなく、部分的にないしは大きな程度で相互に依存性である;即ち、特定の性質を最適化することは、他の性質について有利な叉は不利な結果を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の簡単な説明
この課題の解決手段として、最初に、要求を満足させ得るか叉は要求を超え得る物理的構造を探求した。この要求は下記の要素を組合せることにより満足されることが見出された。
【0010】
1. 靱性−弾性材料の基礎は、水溶性であるか叉は水中で膨潤するか叉は分解される親水性相によって与えられる。この相は好ましくは非晶質であるか、叉は、この相が部分的に結晶状態である場合には、微結晶叉は指定領域(ordered region)は<500nmである。この相がより大きな寸法を有する場合には、要件5を満足させることができない。非晶質相は、通常、脆化温度Tg以下の温度で脆性を示す。脆化温度は種々の性質について変動し、靱性−弾性材料は室温における限定された温度範囲で使用されるので、脆性−靱性の転換の温度依存性の代わりに、この転位の依存性はRHの関数であると考えられる。同時に、RHzは、RTにおいて脆性から靱性への転換が生起するRHである。従って、RHz<33%、好ましくは<26%、より好ましくは<20%、最も好ましくは<15%が、低RHにおいて靱性である材料の非晶質相について適用される。従って、非晶質相は特定のRHについて靱性を示す。この状態の調節は選択された割合の軟化剤によって可能である。可能なかぎり最低の融点を有するポリオール叉はポリオールの混合物が軟化剤として使用されるが、その理由は、その軟化効果が最大であり、その結果として、最小量を使用しなければならないからである。高い割合の軟化剤によってRHについての特性の依存性を強化する。
【0011】
2. 非晶質相は、温度≫Tgにおいて又はRH≫RHzにおいては、高度に粘稠な液体のように挙動し、その粘度が非常に高い場合には、固体のごとく見える。水は親水性系においては他の軟化剤と比較して軟化効果に関して数倍、より効率的であるので、非晶質相は湿度が増大するにつれて次第により軟質となり、安定性を失い、最終的には液化する。
【0012】
従って、非晶質相は高いRHにおいては要件1、2、6、8を満足させることができないので、補強方法が探索された。架橋の結果としての、高いRHにおける流動は不可能であるため、RHに対する特性の依存性の少ない網状構造(network)をこの目的のために構成し得ることが認められた。この網状構造は非晶質相に相互挿入する(interpenetrate)ことが好ましく、この相に連結される。現存する網状構造(existing network)、即ち、化学的網状構造は共有結合を形成することから水不溶性であり、膨潤後、崩壊しないので、本発明によれば、連結点が熱可逆性である(thermoreversible)か、又は、特に、37℃で水又は胃液を添加することにより溶剤を介して溶解し得るか、又は、機械的に不安定になる網状構造が導入される。更に、十分に膨潤する網状構造も適当であり、この網状構造は膨潤状態において最小の応力の作用下で崩壊する。これは、特に、薄いフィルムについて可能である。網状構造点(network point)が、少なくとも部分的に、微結晶のごとき配列された領域において形成される場合には、これらの領域は、透明性を達成するためには、<500nmである。
【0013】
3. 大気からの水分の吸収により、網状構造は機械的特性について僅かだけ影響を受ける。例えば、親水性非晶質相の弾性率は、通常の湿度の範囲で、約1000倍だけ、変動し得るのにに対し、網状構造の弾性率は、<10だけ変動し、広い範囲では、弾性率は実質的に一定である。本発明によれば、網状構造密度(network density)は、高い水含有量での弾性率及び強度に対する網状構造の寄与度が、非晶質相の寄与度に少なくとも匹敵するように調節される。この範囲での網状構造の寄与度が非晶質相の寄与度より明らかに大きいことが好ましい。このことにより約30−70%の湿度範囲において実質的に一定の弾性率を得ることさえ可能になる。高い湿度での非晶質相の不満足な性質は適度な網状構造密度を有する網状構造によって補償されかつ同時に、低い湿度において靱性を得ることができ、高い湿度において強度を得ることができる。
【0014】
4. しかしながら、網状構造は水溶解性については不利益であるので、本発明によれば、網状構造密度を非常に低く設定して、網状構造が、強度が最小である結果として最小の応力下で水中で膨潤して崩壊ようにする(これは、特に、薄いフィルムの場合である)か、又は、好ましくは、網状構造点を過剰の水によって溶解する、非常に小さい微結晶によって調節する。
【0015】
5. 調節された後の構造は、異常に広い範囲で交互に変動する湿度及び温度条件で安定である。このことは網状構造密度が所望の容量に調節される配合及び製造条件によって達成し得る。
【0016】
上記で特定した要素は、種々の原料及び製剤に基づいて、種々実際的な解決手段に到達する方法を基本的に示唆している。顕著な点は非晶質相と網状構造のバランス及び網状構造のパラメーターである;このパラメーターは、一方においては、変動する条件下で靱性−弾性材料の機械的性質を達成するのに十分に有力なものであり、他方においては、水中又は胃液中でのカプセルの溶解性又は崩壊性を損なわないものである。これらの要件を調和させることは本発明の中心的要旨でるのに対し、従来技術に相当する網状構造はこれらの要件を満足させるとは不可能である。例えば、デンプンに基づく従来の網状構造は実際上、水に完全に不溶であり、崩壊に対して安定であり、半透明〜完全に不透明であり、非溶接性であり、典型的には<50の範囲の最小の弾力性しか示さず、靱性に対して有利な効果を示す。上記した問題の解決法の本質的な鍵は、網状構造点を構成する配列された領域の寸法である。この寸法は使用した原料の構造パラメーターによって、特に、使用したデンプン分子の網状構造−活性鎖長、CLn,naの選択によって調節し得る。本発明によって調製し得る、デンプンを基材とする材料の新規な性質の範囲は、図面中に例示されておりかつ以下に述べるごとく定量的に特徴ずけられる:
デンプンを基材とする本発明の靭性−弾性材料は、低い相対湿度RHzにおいて、脆性から靭性への変換を示し、その結果、通常の湿度範囲において靭性の状態にある。室温においては、この特性値は、<33、好ましくは、<26、より好ましくは、<20、最も好ましくは、<15のRHZ(%)である。また、85%のRHにおいては、本発明の靭性−弾性材料は>0.1、好ましくは>0.5、より好ましくは>1.0、最も好ましくは>3の弾性率(Mpa)を有している;これらの各々の場合、<50である。
【0017】
本発明の靭性−弾性材料は、下記の範囲の衝撃靭性(impact toughness)K(mJ/mm2)と弾性率(Mpa)を有することが好ましい:
a) 約11%のRHにおいては、K>10、好ましくは、>15、より好ましくは、>30、最も好ましくは、>50;各々の場合、<300である;
b) 約85%のRHにおいては、E>0.1、好ましくは、>0.5、より好ましくは、>1.0、最も好ましくは、>3;各々の場合、<50である;及び/又は、
c) 約75%のRHにおいては、E>0.5、好ましくは、>1.0、より好ましくは、>5、最も好ましくは、>10;各々の場合、<150である。
【0018】
本発明の靭性−弾性材料は、これらの性質について下記の範囲を有することが更に好ましい:
a) 約23%のRHにおいては、K>15、好ましくは、>30、より好ましくは、>50、最も好ましくは、>100;各々の場合、<1000である;
b) 約85%のRHにおいては、E>0.2、好ましくは、>1.0、より好ましくは、>2.0、最も好ましくは、>5;各々の場合、<100である;及び/又は、
c) 約75%のRHにおいては、E>1.0、好ましくは、>2.0、より好ましくは、>10、最も好ましくは>20;各々の場合、<300である。
【0019】
本発明の靭性−弾性材料は、これらの性質について下記の範囲を有することが更に好ましい:
a) 約33%のRHにおいては、K>20、好ましくは、>50、より好ましくは、>100、最も好ましくは、>200;各々の場合、<2000である;
b) 約85%のRHにおいては、E>0.2、好ましくは、>1.0、より好ましくは、>2.0、最も好ましくは、>5.0;各々の場合、<100である;及び/又は、
c) 約75%のRHにおいては、E>1.0、好ましくは、>2.0、より好ましくは、>10、最も好ましくは>20;各々の場合、<300である。
【0020】
本発明の靭性−弾性材料は衝撃試験において靭性破壊(tough break)を示すことが好ましい;即ち、湿度の関数として、下記の範囲の破断点伸び(εk)を示す:
a) 約43%のRHにおいては、εk>5、好ましくは、εk>10、より好ましくは、εk>20、最も好ましくはεk>30;各々の場合、εk<50である;及び/又は
b) 約33%のRHにおいては、εk>3、好ましくは、>7、より好ましくは、>14、最も好ましくは>20;各々の場合、εk<35である;及び/又は
c) 約23%のRHにおいては、εk>2、好ましくは、>5、より好ましくは、>10、最も好ましくは>15;、各々の場合、εk<25である。
【0021】
本発明の靭性−弾性材料は、更に、湿度の関数としての、下記の範囲の10%伸び率における強度(strength at 10% elongation)σm、10%(MPa)を有することが好ましい:
a) 約85%のRHにおいては、σm、10%>0.2、好ましくは>0.4、より好ましくは>1、最も好ましくは、>3;各々の場合、<12である;
b) 約75%のRHにおいては、σm、10%>0.4、好ましくは>0.8、より好ましくは>1.5、最も好ましくは、>5;各々の場合、<20である。
【0022】
本発明の靭性−弾性材料は、更に、破断点伸び(εb)について下記の特性を有することが好ましい:
a) RHの関数としての破断点伸び(εb)の最大値、>50、好ましくは、>100、より好ましくは、>200、最も好ましくは、>300;各々の場合、<600;及び/又は
b) 約75%のRHでの破断点伸び εb RH、>20、好ましくは、>50、より好ましくは、
>75、最も好ましくは、>100;各々の場合、<200。
【0023】
本発明の靭性−弾性材料は、引張り試験において約20−50%のRHの範囲の弾性限界を有することが好ましい。
【0024】
本発明の靭性−弾性材料の特に有利な性質は、弾性率及び10%伸び率における引張強さに関して、RHの関数として準平坦域(quasiplateu)が得られることである;この場合、特に、
a) 23〜85%のRHの範囲のRTでの弾性率の変動の係数FE(23-85)は、<400、好ましくは、<200、より好ましくは、<100、最も好ましくは、<50である;各々の場合、>1である;か、又は
b) 43〜75%のRHの範囲のRTでの弾性率の変動の係数FE(43-75)は、<50、好ましくは、<20、より好ましくは、<10、最も好ましくは<5である;各々の場合、>1である;そして、
c) 23〜85%のRHの範囲のRTでの10%伸び率における引張り強さの変動の係数
Fσ10%(23-85)は、<100、好ましくは、<50、より好ましくは、<25、最も好ましくは、<10である;各々の場合、>1である;か、又は
d) 43〜75%のRHの範囲のRTでの10%伸び率における引張り強さの変動の係数の係数
Fσ10% (43-75)は、<10、好ましくは、<5、より好ましくは、<3、最も好ましくは<5である;各々の場合、>1である。
【0025】
従って、本発明の靭性−弾性材料は寸法安定性の大きな損失を伴うことなしに高いRHで(夏)、また、脆化を伴うことなしに低いRHで(冬)使用し得る。このことは、例えば、この材料を医薬及び栄養剤(nutraceuticals)のための軟質カプセルとして使用する場合に重要である。
【0026】
更に、本発明の靭性−弾性材料の有利な性質は、適当な下記の性質の少なくとも一つからなる:
a) 網状構造の架橋点を形成する靭性−弾性材料の指定領域(ordered area)は、
<500、好ましくは、<300、より好ましくは<150、最も好ましくは、<70の寸法(nm)を有しており、主として非晶質の相に連結されている;
b) この材料は、<50%、好ましくは、<60%、より好ましくは、<70%、最も好ましくは、<90%のRHにおいて透明である;
c) この材料は、RH <70%、好ましくは、<80%、より好ましくは、<90%、最も好ましくは、<100%の範囲のRHにおいて粘着性を示さない;
d) この材料は水又は胃液中で膨潤し、特に、<70、好ましくは、<50、より好ましくは、<40、最も好ましくは、<30の温度℃において、上記媒体の僅かな動きによって溶解又は崩壊する。
【0027】
本発明の靭性−弾性材料の特に有利な性質は、酸素に対する良好な遮断効果であり、RTにおける[cm3mm/(m2)24h]表される酸素の透過効率P02は下記の範囲である:
a)RH 0%においは、P02は、<0.3、好ましくは、<0.15、より好ましくは、<0.07;
及び/又は
b) RH 50%においは、P02は、<2、好ましくは、<1、より好ましくは、<0.5;
及び/又は
c) RH 75%においは、P02は、<20、好ましくは、<10、より好ましくは、<5;である。
【0028】
発明の詳細な説明
異なる用途についての選択された構造の変換は下記の要素に基づいている。
【0029】
基礎及び現存デンプン(present starch; vorliegende starken)
基礎として、現存デンプン(PS)が選択される。基本的には、このデンプンは任意の起源のデンプン又はかかるデンプンの組合せであり得る。しかしながら、多くのデンプンは均質な非晶質構造を形成しない。特に、アミロースを含有するデンプンは劣化(戻り) (retrogradation)を行う傾向があり、しばしば、500nm以下の寸法を有する指定領域(oriented area)を生じる。それによって、一方においては、透明性が減少し(不透明化)、他方においては、劣化デンプンは限定された溶解性又は崩壊性を示す。水溶性は網状構造を導入することによって更に増大するので、基材又は非晶質相の可能な最良の溶解性又は崩壊性は実質的な前提条件である。
【0030】
劣化は、主としてデンプンのアミロース部分によって生じ、それによって、アミロースは少なくとも部分的に結晶化する。この理由から、<25%、特に、<22%、特に、<19%のアミロース含有量を有するPS又はPSの混合物、即ち、コメ又はサゴデンプン、球根及び根から得られるデンプン、例えば、ジャガイモ、ヤム、カンナ、クズウコン又はタピオカから得られるデンプンが好ましい。同様に、典型的には1%以下のアミロース含有量を有するロウ状デンプン(waxy starch)、例えば、ロウ状トウモロコシ、ロウ状コメ、ロウ状アワ、ロウ状オオムギ又はロウ状ジャガイモ、又は、20%以下のアミロース含有量を有するヘテロワックス状デンプン(heterowaxy starch)、例えばヘテロワックス状アワも好ましい。
【0031】
純度に関して、根及び球根に由来するデンプン又はロウ状デンプン、特に、タピオカデンプンが同様に好ましいが、その理由は、そのタンパク質及び脂質含有量が非ロウ状コムギデンプンと比較して低いからである;このことは透明性及び明澄性についての利点でもある。オオムギデンプン及びジャガイモデンプン、特に、トウモロコシデンプンの欠点はこれらのデンプンの種々の遺伝学的に変性された(modified)変種が付加され(add on)、GMO比率(GMO proportion)に関しての純度が演繹的に不確実であることである。従って、この観点から、GMO変種が付加されていないデンプン、例えば、サゴ又は根デンプン、特に、タピオカデンプンが好ましい。しかしながら、技術的適合性に関しては、一般的に、変性デンプンもPSと考えられる。
【0032】
特に興味のあるものはデキストリン、特に、ホワイトデキストリン、イエロー又はカナリア色デンプンのごときピロデキストリン、変性デコストリン、コ−デキストリン又はブリチッシュゴムである。これらのデキストリンは良好なフィルム形成特性を示し、その不規則な構造と典型的には0.05以上の高い程度の枝分れQbの結果として、劣化に関して部分的に又は実際上、完全に安定であり、従って、高度に水溶性でありかつ長期間安定である、即ち、老化に対して抵抗性である。更に、デキストリンの使用は、該デキストリンが良好な接着性を有するので、軟質カプセルの溶接接合の品質に関して有利な効果を示す。低い程度〜平均的な程度の変換率(conversion)を有するデキストリンは単独でPSとして使用することができ、或いは、他のPSと一緒に使用することができ、一方、高い程度の変換率を有するデキストリンは他のPSと共に使用することが好ましい。光学的特性に関してはホワイトデキストリンが好ましい。
【0033】
アミロースとは別に、アミロペクチンも明らかに少ない程度であるが、明らかに長期間に亘って劣化し得る。アミロペクチンの劣化の程度及び水中での溶解性又は崩壊性にかんしての劣化アミロペクチン領域の安定性はアミロペクチンのA側鎖の長さによって決定される。この意味において、最短のA側鎖が有利である。この観点から、18以下、好ましくは、16以下、より好ましくは14以下、最も好ましくは、12以下のCLwを有するデンプン、即ち、例えば、ロウ状デンプン、特に、ロウ状コメ、タピオカデンプン又はサゴデンプンが好ましい。一方、A側鎖の長さは、より容易に測定される特性値の青価(blue value)
(BV)及び沃素親和性(Iodine Affinity)(IA)にも反映され、低いBV又は低いIAのアミロペクチンフラクションを有するPSが好ましい。
【0034】
更に、後の処理又は処理の組合せによって劣化に対して安定化されたデンプン又はデンプンの混合物はPSとして好ましい;この場合、球根又は根デンプンのごとき劣化する傾向の少ないデンプンを使用することが好ましい:
【0035】
酸化(例えば、過沃素酸塩酸化、クロム酸酸化、過マンガン酸塩酸化、二酸化窒素酸化、次亜塩素酸塩酸化:酸化デンプン);エステル化(例えば、アセチル化デンプン、ホスホリル化デンプン(モノエステル)、デンプン硫酸塩、デンプンキサンテート);エーテル化
(例えば、ヒドロキシアルキルデンプン、特に、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシエチルデンプン、メチルデンプン、アリルデンプン、トリフェニルメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジエチルアミノエチルデンプン);架橋(例えば、ジホスフェートデンプン、ジアジペートデンプン); グラフト反応;カルバメート反応(デンプンカルバメート)。
【0036】
部分的に置換されたヒドロキシル基を有するデンプンは、特にフィルムの製造に要求されるごとき有利な皮膜形成特性を使用するための高い伸び率を有しており、置換の結果として、これらのデンプンは劣化に対して安定化される;即ち、水溶性でありかつ透明である。本発明に関して有利なこれらの性質は、通常、置換の程度DS及び置換された基の寸法と共に増大する。従って、0.01以上、より好ましくは、0.05以上、特に、0.10以上、最も好ましくは、0.15以上のDSを有するデンプンが好ましい。上限値は、各々の場合、食用デンプン(food starch)についての通常の測定(regulatory determination)によって与えられる。しかしながら、技術的な観点から、高いDSを有する変性デンプンも安定であり、有用である。
【0037】
特に興味のある置換デンプンの例は、食用デンプンに許容される、最大約0.20の置換率を有する、ヒドロキシプロピル化又はヒドロキシエチル化又はアセチル化又はホスホリル化又は酸化根及び球根デンプン又はロウ状デンプンである。
【0038】
同様に、粘度に関して、特に興味のあるデンプンは、安定化されたPS、即ち、例えば、リン酸二デンプン(distarch phosohate)、アジピン酸二デンプン(distarch adipate)又はインヒビットデンプン(inhibited starch)(Novation Starches)のごとき化学的に架橋されたデンプンである。特に好ましいものは化学的に架橋されたかつ同時に置換されたデンプンであり、この場合にも高度の置換が好ましい。適当な手法、特に、せん断力を制御することにより、そのままの最終製品のデンプン粒子内部に少なくとも一部、化学的架橋が生じる。この場合、非晶質相は元のデンプン粒子の網状構造フラグメントを含有する二相系であり、これによって、カプセルの弾性率と強度は問題となる高い湿度の領域において確実に影響を受け得るが、水溶性は明らかに損失することはない。ここで、不連続網状構造フラグメントは、解決手段について必須である物理的網状構造とは基本的に相違することが強調されなければならない。網状構造フラグメントだけに基いては、所望の特性面は達成されないが、完全な解決という点からは明らかに寄与し得る。置換されたかつ同時に架橋されたデンプンを使用することの利点は、種々の置換度を有する広い範囲の種類及びこれらの好ましい商品としてデンプンが食品等級で商業的に得られることである。その例はヒドロキシプロピル化リン酸二デンプン、ヒドロキシプロピル化アジピン酸酸二デンプン、アセチル化リン酸二デンプン又はアセチル化リン酸二デンプンであり、これらはトウモロコシ、コムギ、アワ、コメ、ジャガイモ、タピオカ等のごとき種々の起源のデンプンから得ることができる。
【0039】
興味のあるデンプンの他の群は、酸−加水分解デンプン又は酵素により加水分解したデンプン並びに化学的に変性された加水分解デンプン、特に、25%以下のアミロース含有量を有するデンプンに基づくものである;但し、これらは劣化する傾向の少ないものであることを条件とし、例えば、酸化又は置換のごとき追加の変性によって得られる。
【0040】
劣化に対する最小の、減少された又は減少している傾向を有するPSが最も好ましい。しかしながら、劣化を防止するか又は最小にする処置を行うならば、コムギデンプン、エンドウマメデンプン又は高アミローストウモロコシデンプンのごとき高アミロース含有量を有するPSを使用し得る;この処置は、例えば、非晶質状態の凍結のごとき手法、及び/又は、規定された水含有量、特に、低い水含有量についての熱処理、及び/又は、例えばヒドロキシル基の置換のごときPSの化学的変性、及び/又は、劣化抑制物質を添加する製剤に関する処置により行われる。一方において、これらの処置の組合せを行うことによって非晶質状態が達成され、この場合、水溶性及び崩壊性が達成され、一方において、限定された、但し、規定された網状構造の形成が依然として可能な程度まで劣化が最小化され、その結果、低い湿度での靱性と高い湿度での適当な強度及び剛性の間でのバランスが得られる。この場合、網状構造可能デンプン(NS)の添加によって導入される追加の網状構造を不要にすることができる;即ち、所望の材料特性をPSのみに基づいて或いはPSの組合せに基づいて達成し得る。しかしながら、通常、PSとNSの組合せが使用される;その理由は手順の変換(procedural conversion)及びかかる材料の材料特性(溶解性、靱性、伸び率、透明性等)の制御が容易であるからである。
【0041】
特定の現存デンプンは天然の粒子の形(クッキングデンプン)並びに物理的に変性された形(予備ゼラチン化、冷水溶解、冷水膨潤)で使用し得る。
【0042】
特定のPS又は2種又はそれ以上のPSの組合せをこの目的について考慮するPSの選択方法により、起源、タイプ及び変性の程度に関して、個々の利益及び不利益を選択することと共に、多数の異なる可能性の存在することが明らかになり、それによって、技術的不利益を別の製剤パラメーターの選択により及び/又は手法により、補償することができる。従って、技術的要求ばかりでなしに、原料価格及び入手性のごとき商業的側面を満足させる
デンプン及びデンプンの組合せをPSとして選択することが可能であり、最適な手法の変法、純度又はGMOからの自由性を考慮し得る。更に、各々の場合において、特定の用途についての製品特性に関して最適の解決手法を選択することもできる。
【0043】
軟化剤
軟化剤(WM)に関して、多数の既知のデンプン軟化剤が存在し、これらは、多数、文献に記載されている(例えば、WO 03/035026 A2号、WO 03/035044 A2号参照);その例はポリオール類、グリセリン、エリスルトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、タガトース、ラクチオール、マルチトール、マルツロース、イソマルトである。これらの軟化剤及び他の軟化剤は、各々、単独で又は種々の混合物として使用し得る。靱性−弾性材料については、特に適当な軟化剤は、<00℃、好ましくは、<70℃、より好ましくは、<50℃、最も好ましくは、<30℃の融点を有することが認められた。水は最も重要な軟化剤である。しかしながら、本発明においては、水は、水と他の軟化剤と区別するための定量的な詳細について、軟化剤としては指定されない。有利な軟化剤含有量は、重量%、dsbで表して、10−60、好ましくは、15−50、より好ましくは、20−40、最も好ましくは、25−35であり、軟化剤は、特に、>50%、好ましくは、>70%、特に、
>80%、より好ましくは>90%、最も好ましくは>90%、特に、100%の融点を有する軟化剤からなる。
【0044】
網状構造及び網状構造可能(network-possible)デンプン(NS)
非晶質相だけに基づいて低いRHにおいて適度な靱性を得ること、同時に、高いRHで適度な安定性と強度を得ることはできないので、規定された網状構造を導入し、それによって網状構造を強化し、好ましくは、、非晶質相が連結されている網状構造を生成させる。この連結は適当なNSを選択することにより及び適当な製造条件下でNSをPSに調和させることにより達成される。
【0045】
アミロースを含有するデンプン又はアミロース状デンプンがNSとして使用される。種々のNSの混合物もNSとして使用される。
【0046】
ある場合には、PSとNSが物質として同一であることが指摘される;その理由は、原則的に、各々のNSはPSとしても使用し得るからである。従って、PSとNSの違いは実質的な性質ではなく、これらの用語は方法との関係で理解されるべきである。NSは網状構造を生じるその潜在性が開放されるように処理され、一方、このことはPSについては必要ではない。
【0047】
アミロースは、線状であるか又は分岐鎖状であることができかつ必要に応じて変性し得る。NSの例は、天然デンプンからのアミロース、特に、>23%のアミロース含有量を有するデンプンの分別によって得られるアミロース、変性アミロース、特に、置換アミロース又は加水分解アミロース、合成アミロース、穀類デンプン、エンドウマメデンプン、高アミロースデンプン、特に、>30、好ましくは、>40、より好ましくは、>60、最も好ましくは、>90のアミロース含有量を有する高アミロースデンプン、加水分解デンプン、特に、加水分解高アミロースデンプン又はサゴデンプン、ゲル化デキストリン、流動性デンプン(fluidity starch)、ミクロクリスタリンデンプン、脂肪置換物(fat replacer)の分野からのデンプンである。また、NSは、例えば高アミロースデンプン中に含まれているかつ分別によって得られるごとき中間体フラクションを含有し得る。その構造と性質に関して、中間体フラクションはアミロースとアミロペクチンの間にある。
【0048】
アミロースについては、通常、DPn>100を有する長鎖アミロース(LCA)とDPn<100を有する短鎖アミロース(SCA)の相違がある。網状構造可能デンプンはLCA及び/又はSCAを含有し得る。
【0049】
短鎖アミロース(SCA)
SCAの例は、アミロデキストリン、線状デキストリン、ネーゲリ(naegeli)デキストリン、リンター化(linterised)デンプン、エリスロデキストリン又はアクロデキストリン
(achrodextrin)であり、これらは種々の銘柄を提供し、SCAのサブグループである。
【0050】
SCAはLCA、LCAアミロペクチン混合物又はアミロペクチン混合物の加水分解から得られ得る。有利な網状構造については、特に適当なSCAは根及び球根からのデンプン又はヘテロワックス状又はロウ状デンプンの加水分解から得られる。加水分解は化学的に、例えば、酸加水分解により、及び/又は、酵素により、例えば、アミラーゼ(アルファ−アミラーゼ、ベーター−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、イソアミラーゼ又はプルラナーゼ)又はアミラアーゼの組合せにより生起させ得る。アミロース含有デンプンは酸/酵素加水分解の組合せによりSCAとして得られ、この場合、2つの加水分解は同時に又は逐次的に生起し得る。これに基づいて、同一のデンプンから出発して種々のタイプのSCAを得ることができる。更に、SCAの特徴も加水分解中の元のデンプンの状態により、例えば、デンプン粒子の膨潤の程度により影響される。従って、広範囲の適当なSCAが得られる。ロウ状デンプンから酸/酵素加水分解又は酵素加水分解により別のタイプのものが得られ、この場合、典型的には約22のDPnを有するSCA加水分解物が得られ、これは特に適当なものである。更に、SCAは特に好ましいものであるが、その理由は、それは、例えばプルラナーゼによりデンプンからNSF、最終的にデンプン網状構造が調製される間に形成されるである。
【0051】
長鎖アミロース(LCA)
原料のデンプン中に含有されるアミロースは、通常、DPn>100を有するLCAである。しかしながら、LCAの重合度DPnは、例えば、酸加水分解及び/又は酵素加水分解及び/又は酸化により<100の値まで減少させることができ、その結果、対応する変性原料もSCAを含有し得る。
【0052】
SCA、LCA及びSCAとLCAの混合物を製造するための多数の方法が文献に記載されている。一方において、両方のアミロース形が純粋な形で得られ、そして、異なる、所望ならば加水分解された市販のデンプン中に異なる割合で含有されている。
【0053】
有利な網状構造
網状構造を非晶質相又は主として非晶質の相に連結するための構造的前提要件は、アミロペクチンフラクションのA側鎖の鎖長CLw(A-AP)及びアミロースフラクションの鎖長によって与えられる。<30のアミロース含有量を有するデンプンからのアミロペクチンについてのアミロペクチンのA側鎖の鎖長CLw(A-AP)は約10−20であるのに対して、高アミロースデンプンは若干、より大きい鎖長CLw(A-AP)を有する。アミロースは、比較すると、非常に大きい鎖長CLw(AM)を有し得る。長鎖アミロース(LCA)については、鎖長CL(LCA)は典型的には100−1000であり、従って、根及び球根デンプンは穀類デンプンより明らかに大きい鎖長を有する。短鎖アミロース(SCA)については、鎖長CL(SCA)は<100であり、原則的に、重合度DP(SCA)とほぼ同一の大きさであり、CL(SCA)<DP(SCA)である。これらのデーターは極めて稀な場合においてのみ、種々のデンプンについての平均重量値CLwであるので、鎖長分布の数値化(numbering means)CLn、又は、重合度分布の数値化手段段DPnは議論を単純化するために使用される。一般的に、CLwはCLnより若干大きく、この場合、アミロペクチンのA側鎖での差は、これらは狭い分布を有するので最小であり、これに対して、SCAにおける差は大きく、LCAにおては非常に大きい。
【0054】
アミロースによる網状構造の非晶質相への連結を得るための、アミロースの最小鎖長CLn(AM)又はアミロースの最小重合度DPn(AM)は、ほぼ、CLn(AM)〜CLn(A-AP)、即ち、10−20であり、ほぼCLn(AM)〜100までの有利な連結が可能である。この値以上でも非晶質相に連結しない網状構造は形成され得る;即ち、これらは、主としてアミロースからなる。設定された要件について、これらの網状構造は、明らかに減少した破断点での伸び率及び靱性の連結網状構造に比較して、不利な性質、例えば、高いRHでの不透明性、水溶性を有する。
【0055】
この理由から、SCAは非晶質相に連結した網状構造を製造するためのNS又はNSの一部として適当であり、網状構造点を形成する微結晶の安定性、即ち、その大きさはCLn又は
DPn(AM)の減少につれて減少し、この物質の水溶解性と透明性は増大する。
【0056】
有利な網状構造はアミロペクチンに対する重量% dsbで表したSCAの割合PSCAについて得られ、SCAは、1−35、好ましくは、2−25、特に、3−20、最も好ましくは、4−14である。
【0057】
更に、非晶質相への網状構造の有利な連結は、その網状構造活性鎖長CLn,na(LCA)がSCAの鎖長の範囲にある、即ち、<100である場合には、可能である。
【0058】
鎖長CLN(AM)においては、化学反応により、特に、アンヒドロセルロースモノマー単位のヒドロキシル基の置換により、酸化により又は架橋により不規則性が導入得る。その鎖長CLによって特徴づけられるセグメントの本体(mass)の中心での化学反応においては、網状構造活性鎖長のCLは1/2CLまで半減する。従って、同様にLCAに基づいて、例えば、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化似より、有利な網状構造を得ることができる。有利な置換率(DS)は約0.01-0.50である。
【0059】
有利な網状構造はアミロペクチンに対する重量% dsbで表したLCAの比率PLCAについて得られ、LCAは、1−70、好ましくは、2−50、特に、3−40、最も好ましくは、5−30である。高度の変性においては、比率PLCAは、程度の変性に比較してより高い値にある。
【0060】
最後に、CLn,na>100を有するLCAに基づく有利な網状構造を得ることができる;これはこのことについての適当な条件が、例えば、比較的低い水分含有量又は低い温度での形成及び/又は20−60%の範囲のRHでの熱処理及び/又は劣化抑制物質(RIM)の添加のごとき手段により形成される場合である;この場合、(大きなスペースの)アミロースとアミロース網状構造の係合(association)が抑制され、(小さいスペースの)アミロースとアミロペクチンのA側鎖との係合が有利である。
【0061】
本発明の靱性−弾性材料は網状構造-活性鎖長CLn,naを有するデンプンを含有することがこのましい;その長さは5−300、好ましくは、6−100、より好ましくは、7−50、特に、8−30、最も好ましくは、9−28、特に、10−27である;この場合、材料は、所望ならば、>0.01、好ましくは、>0.05、より好ましくは、>0.10、最も好ましくは、>0.15の分岐度Qbを有する高度に分岐した他のデンプンを含有している。
【0062】
本発明の靱性−弾性材料はPS及びNSを含有しており、重量% dsbで表される、NS及びPSに対するNSの割合PNSは、1<PNS<90、好ましくは、2<PNS<50、より好ましくは、
3<PNS<30、最も好ましくは、3<PNS<15であることが好ましい。
【0063】
本発明の靱性−弾性材料は、有利なことに、下記の特性を有することを特徴とする:
a) この材料は、1<AM<70、好ましくは、2<AM<50、より好ましくは、3<AM<40、最も好ましくは、3<AM<30の範囲の、重量% dsbで表されるアミロース含有量AMを有する;
b) アミロースはSCA、LCA又はSCAとLCAの混合物であり、重量% dsbで表される、アミロペクチンとSCAに対するSCAの割合PSCAは、1−35、好ましくは、2−25、特に、3−20、最も好ましくは、4−14の範囲である、及び/又は、重量% dsbで表される、アミロペクチンとLCAに対するLCAの割合PLCAは、1−70、好ましくは、2−50、特に、3−40、より好ましくは、4−35、最も好ましくは、5−30の範囲である。
【0064】
本発明の靱性−弾性材料は、更に、有利なことに、下記の特性を有することを特徴とする:
a) SCAは、5<DPn<70、好ましくは、6<DPn<50、特に、7<DPn<30、より好ましくは、8<DPn<28、最も好ましくは、9<DPn<27の範囲の重合度DPnを有する;
b) LCAは、100<DPn<3000、好ましくは、100<DPn<1000、より好ましくは、
100<DPn<500、最も好ましくは、100<DPn<300の範囲の重合度DPnを有する;
c) 所望ならば、LCAは0.01−0.50、好ましくは、0.02−0.30、より好ましくは、
0.03−0.25、最も好ましくは、0.04−0.20の範囲の置換度DSを有する。
【0065】
方法
規定された網状構造を設定するために、NSを混合前又は混合中、PSで活性化し、特に、安定化する。活性化によりNS中に含まれているアミロースが非晶質状態にあることを達成し、その結果、分子分散の後、PSとの混合物の網状構造可能性デンプン流体(NSF)への再結合(recombination)が生起し、これによって、NSとPSの両者が関与する網状構造が生じる。同時に、網状構造の発生は活性化の後に生じるNSの結晶化能力によって誘発される。安定化は網状構造の発生の開始と網状構造のタイプに影響する。
【0066】
可塑化又は溶解工程での水分含有量が高ければ高いほど、剪断力が大きければ大きいほど、必要な温度は低くなる。特に重要なことは、NSの安定化に関連した活性化である。安定化はアミロースを溶融又は溶解工程以上の温度まで過熱することにより達成される。安定化により、アミロースの再結合の温度は低温で所望の網状構造に調節し得る。安定化又は過熱温度が高ければ高い程、同一の水分及び軟化剤含有量について、より低い温度で再結合又は網状構造の発現が生起する。更に、活性化されたNSの過冷(undercooling)により適当な核を生成させるために、異なる核形成(nucleating)手段又は方法を使用し得る。活性化の安定化、核の形成、過冷及び異なる核形成手段については、特許出願
WO 03/035026 A2号及びWO 03/035044 A2号が参照されるが、これらにはPSと混合する前のNSの調製、混合方法及び連続的に続く形成及び網状構造の発現が記載されている(分離連続プロセス、SCP)。
【0067】
更に有利な方法は、例えば顆粒又は粉末の形の予備製品の生成を混合工程の後に生起させることとである。この予備製品を後に同様に調製し、最終製品に加工し得る(分離非連続プロセス、SDP)。種々の予備製品の製造及びNSとPSを一緒に調製し得る他の操作方法
(同時的連続法、TCP及び非連続法、TDP)は特許出願 WO 2004/085482 A2号に記載されている;この出願は2004 7 10に公開されており、本願に対する優先権を有し、参照として本明細書に包含される。
【0068】
水性媒体中での溶解性及び崩壊性
網状構造を導入することにより、高い軟化剤含有量を調節することが可能であり、それによって、カプセルの脆弱性を低い湿度で克服することができ、同時に、高い湿度範囲での機械的特性を保証し得る。しかしながら、既知の網状構造は透明性を損失させ、水不溶性をもたらすので、2つの基本的要件が満足されない。
【0069】
この問題は、一方において、低い網状構造密度を有する網状構造を設定することにより解決することができ、この場合、透明性は殆ど損失することがなく、網状構造は水中で膨潤状態で崩壊することができそして機械的特性が特に高い湿度で保証される。しかしながら、クリアランスが制限され、網状構造のポテンシャルは十分に利用されることがげきない。従って、他方においては、高い網状構造密度においても溶解性と透明性を得るために可能性が求められた。
【0070】
既に述べたごとく、基本的原則は網状構造点を構成する微結晶の寸法を制御することにある。方法、特に、熱処理及び/又は実質的な要件によって影響を受ける。巨大分子の限定された拡散の結果としての平均RH及び低い温度で、より小さい微結晶がより高いRH及びより高い温度で得られる。
【0071】
SCAが一個の伸び(elongation)当り、約6−8モノマー単位及び一個の伸び当り、約0.8nmの長さを有するつるまき線(helix)として存在する、結晶化した形の、例えば24のDPnを有するSCAは約3x0.8nm=2.4nmの長さを有するので、かかるSCAの組合せの最小寸法は、A側鎖がSCAと匹敵し得る、約2.4nmを有するアミロペクチンによって形成される微結晶のA側鎖について与えられる。この寸法は透明性について要求される寸法500nmよりはるかに小さく、かかる微結晶も37℃を超える水中では不安定である。
【0072】
従って、SCAの分子量の選択により、透明性並びに水溶性又は水中での崩壊性は好都合に影響される。SCAのDPnの増大につれて、微結晶凝集物を形成する傾向が増大し、それによって、透明性、水溶性及び靱性も低下する。この傾向はDPn>100について、即ち、LCAについても継続し、これは、SCA、特に、低い重合度DPnを有するSCA、又は、例えば置換によって制限される網状構造−活性鎖長CLn,naを有する高分子量アミロースが好ましい理由である。
【0073】
結晶状態の線状重合体の長さと、対応する微結晶の寸法との関係(ラメラ密度)は合成重合体の分野で知られているが、多糖の分野では、この適合性(legality)を、特に、高い機械的安定性と弾性を有するが、それにも拘わらず水中で崩壊し得る網状構造に有利に利用し得ることは認識されていなかった。
【0074】
より大きな微結晶は凝集物又はより高いDPnを有するSCA又はLCAを経て生じ得る。特に、LCA似ついては、過度に低度の枝分かれQbは不利であり、不透明性及び水不溶性をもたらし、或いは、膨潤後、崩壊を阻害する。透明性と水溶性は高分子量SCA及びLCAを用いて得ることができる;これらのアミロースが置換されている場合、網状構造−活性鎖長
CLn,naが減少しているか又は適当な方法が行われる場合、特に、水分含有量を低い値まで低下させること及び/又は比較的低いRHの後続する生産での熱処理が行われる。このことは、有利な網状構造、特に、非晶質相に連結した網状構造が形成されることを可能にする同一の要因が水溶性及び透明性に対して明確な効果を有することを意味する。全体の水溶性は活性成分の放出についての必要条件ではなく、物質の崩壊性は放出を可能にする。本発明との関係において、水溶性は崩壊性とも理解されるが、その理由はあるタイプの靱性−弾性材料は完全には溶解しないが、崩壊するからである。
【0075】
水溶性は調製及び方法に関連する上記処置によって主として決定され、第2には、水溶性に対する明確な影響は下記の物質を使用して可能である。
【0076】
劣化防止物質(RIM)
RIMはPSだけに基づく靭性−弾性材料又はPSとNSの組合せに基づく靭性−弾性材料の両者に有利に使用し得る。同時に、網状構造−可能デンプン流体(network-capable starch fluid)(NSF)と混和し得る物質は、基本的に、水溶性から生じる。これらの物質の劣化抑制効果は、一方においては、軟化剤として及びデンプン相の希釈においてデンプンについて利用し得る水の減少に基づいており、この場合、デンプン巨大分子の拡散は両者の場合及び結晶化についてのRIMとデンプンの非混和性において困難となる。適当なRIMの例は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、ラクツロース、ラフィノース、グルコースシロップのごとき糖のタイプ、高マルトースシロップ、高フルクトースコーンシロップ、水素化デンプン加水分解物及びポリデキストロース、グリコーゲン、オリゴ糖、オリゴ糖の混合物、特に、DE>20、好ましくは、>25、より好ましくは、>30、最も好ましくは、>70を有するもの、マルトデキストリン、デキストリン、特に、分岐度Qb>0.05、好ましくは>0.10、より好ましくは、>0.15、最も好ましくは、>0.3を有するものである。
【0077】
RIMは、更に、それ自体、水溶性を改善し、好ましくは吸収性、特に、著しく低い酸素透過性の種類の糖に影響し、これが特にこの理由から有利であるという理由である。劣化防止物質が劣化を完全に抑制することができる場合には、特に、デキストリン、マルトデキストリン、オリゴ糖及びグリコーゲンは、透明性が減少しない寸法への劣化から生じる微結晶の寸法の制御を可能にし、水溶性又は水中での崩壊性が達成される。この性質が重要なこれらの用途においては、重量% dsb で表わして、1−70、好ましくは、3−50、より好ましくは、5−25、最も好ましくは、7−20の範囲の、NSとRIMに対する劣化抑制物質(RIM)の割合PRIMはが効率的に使用される。
【0078】
爆発剤(E)
従来の技術に従ってガレン(galenic)で使用される爆発剤、即ち、崩壊アクセサリー(disintegration accessory)は水中での吸収及び/又は膨潤の際に、強力にガスを発生する爆発剤と考えられ、これによって、網状構造が不安定化し、崩壊する。その例はアルカリ及びアルカリ土類の炭酸塩及び炭酸水素塩、特に、炭酸カルシウム、並びに、ダイズタンパク質(例えば、エモコソイ、Emocosoy)、又は、好ましくは、大きく膨潤するデンプン粒子、例えば、ナトリウム グリコレート(カルボキシメチルエーテルデンプンのナトリウム塩)、例えば、エクスプロタブ(Explotab)、ビバスター(Vivastar)又はプリモジェル(Primojel)である。更に、塩類も考慮に入る。
【0079】
崩壊性能を改善することが必要である場合には、重量% dsb で表して、0.1−30、好ましくは、0.5−15、より好ましくは、1−10、最も好ましくは、1.5−7.0の範囲の、PSとNSとEに対する爆発剤(E)の割合PEで添加される。
【0080】
溶剤(S)
溶剤は、特に、良好な水溶解性又は水中での強い膨潤能力を有するかつNS及び/又はPSと混和し得る又はその中に分離した相として存在する、非デンプン多糖又はハイドロコロイドと理解される。必要に応じ、水溶解性又は膨潤能力を改善するために、重量% dsb で表して、1−50、好ましくは、2−25、より好ましくは、3−20、最も好ましくは、4−15の範囲の、PSとNSとSに対する溶剤(S)の割合PSで添加される。
【0081】
光学的特性
37℃での水中又は胃液中での溶解を可能にする処置は、標準網状構造について問題(不透明性)となる透明性の調節も可能にする。対応する処置は既に述べた。これは約85及びゼラチンに匹敵する高品質の高い透明度まで得られ得る。ゼラチンは黄色〜褐色の本来の色を有するのに対し、靭性-弾性材料からなるフィルムは実際に完全に無色である。黄色〜褐色の色を有するピロデキストリンを明確な(clear)割合で使用した場合、ほぼ、ゼラチンの色が得られる。
【0082】
例えば着色ゼラチンカプセルについて使用されるごとく、通常の天然又は合成染料を着色に使用し得る。
【0083】
印刷能力については、デンプンはゼラチンに比較して利点を提供する。このことは、デンプンは製紙工業において大量に利用され、その結果、紙の印刷能力を改善するので、理解できない。
【0084】
表面特性
ゼラチンに比較して、網状構造の形成を開始させる前に粘着性を減少するが、これは、この時点でゼラチンは非常に高い水含有量を有するからである。網状構造が形成されるにつれて粘着性が減少し、網状構造の形成が完了すると粘着性は実際上、存在しない。
【0085】
衝撃靭性
同一のサンプルが低い応力では靭性であるように見え、高い応力では脆弱に見え得る。このことは、特に、デンプンに基づくかつ脆性から靭性に転換する領域の材料の場合に認められる。高い応力速度も実際に生じるので、衝撃靭性は決定的である。破断点で吸収されたサンプル断面に対するエネルギー(衝撃能力)として表される衝撃靭性は別として、破断点までのサンプルの伸長率εkも、突発応力(sudden stress)の生じた場合の変形性又は靭性についての尺度である。約33%RHにおいて、驚くべきことに、デンプンに基づく本発明の靭性−弾性材料は、1000mJ/mm2まで及びそれ以上の高い衝撃靭性Kを受けた;約25%の伸長率εkにおいて、同一の条件において、TPSはεk〜0%において、典型的には約10mJ/mm2の衝撃靭性を有しており、軟質カプセルゼラチンはεk〜25%において、約400mJ/mm2の衝撃靭性を有する。既に述べたごとく、TPS軟質カプセルの最小靭性又は明確な脆性は中心問題であり、著しく限定されるが、対応する技術を利用し得る。
【0086】
TPSの靭性及び本発明の靭性−弾性材料の靭性は、特定のRHにおいて、主として、脆化温度(brittle temperature)Tgによって決定される。脆化温度は非晶質物質における連続相転換を特徴づけるための可能性であり、例えば、高められた熱容量、熱膨張、可撓性又は増大した靭性を生じる、成分の自由度の増大を特徴とし、それによって、それぞれの転換温度が明確な相違を有しそして一定の温度において、軟化剤含有量に応じて変動する特性の対応の変換を観察し得る。RTでのRH、RHzに応じて変動する靭性について、最適の軟化剤又は最適軟化剤の組合せを選択するためには、変換は決定的である。靭性デンプン混合物については、RHzは<30%、好ましくは、<20%、である;即ち、これらの比較的低いRHにおいては、材料は最大靭性の約半分を示す。PS、NS及び例えば劣化抑制物質のごとき他の製剤パラメーターに応じて、グリセリン20−40%の範囲でグリセリンを軟化剤として使用した場合には、RHzは15−30%の範囲であり、この場合、問題となる低RHの範囲で適当な靭性が保証される。
【0087】
ポリビニルアルコール(PVA)を、特に、重量%で、1−50、好ましくは、1.5−30、より好ましくは、2−20、特に、3−15、最も好ましくは、3−10の範囲の割合で添加することにより、靭性−弾性材料の靭性を、特に、RH<33%において更に改善し得る。基本的には、任意のPVAを使用し得るが、好ましくは、90%以下、より好ましくは、<80%以下の加水分解度を有するPVAが好ましい。
【0088】
熱処理及び老化に対する抵抗性
材料を大気中に貯蔵し、大気が時間の関数としての湿度と温度の過程を有する方法が熱処理として設計されている。熱処理を使用して、網状構造の発生、及び、必要ならば、劣化を完成カプセルにおいて制御し得る。RTにおいてそして約0−30%RHの範囲において、網状構造の発生を抑制し、一方、速度を増大させながら、約60−90%RHで熱処理を行う。余りにも高いRHにおいては曇りが生じることがあり、これが熱処理を平均範囲の湿度で行うことが有利な理由である。RT以上に温度を調節することにより、熱処理を短縮することができ、それによって、温度を増大させながら適当なRHを減少させる。熱処理の時間は正確な処方、特に、アミロースの重合度に依存し、数時間〜数日である。ここで、SCAもはLCAと比較して、有利性、即ち、短い熱処理時間を可能にする。より短い分子はより大きく移動する結果として、熱処理を省略し得る。
【0089】
更に、熱処理を行って、変換処理手段(transposition procedure)を正確に予測する、;これは、さもないと、制御されずに進行する。これによって、一定の製品特性と長時間安定性が得られる。
【0090】
添加剤
添加剤及び/又は充填剤及び/又は抵抗でんぷん(resistant starch)を添加剤として靱性−弾性材料に添加っし得る。このことについては、本願発明に対する優先権が確立されている特許出願WO 03/035026 A2及びWO 03/035044 A2並びに28.03.2003出願のDE 特許出願 出願版番号103 14 418.8参照。
【0091】
軟質カプセルの分野での操作コストは、乾燥工程を含めて、ゼラチンカプセルの操作コストに匹敵する。靱性−弾性材料に基づくカプセルは、ゼラチンと比較して、明らかに低い水分含有量を使用して製造されるので、乾燥工程を減少させることができる。最適化された操作パラメーターを使用して、乾燥工程を完全に省略し得る。
【0092】
原料
上記課題に対する解決法として選択される構成は、基本的に、種々の転換可能性を許容し、その際、解決法のパラメーターを、各々の場合に適合させ、最適化し得る。広範囲の商業的に入手し得るデンプンを使用して、デンプンに基づく生産に利用し得る多数の余地が存在する(大きなデンプン製造業者により100以上の種々のデンプンが提供されている;全体で、市場で入手し得る、しばしば、等級の付いた特性を有する、1000以上の独自のデンプンの種類と品質が存在する)。従って、かなりの数の独特の方法が特定の処方及び採用された製法に従って可能である。考慮されている種々のデンプンが文献に詳述されている。特に、良好な品質を有する、好ましい量のデンプン(必需デンプン;commodity starche)の溶液も変換することができ、入手性、純度又はGMO自由度に関する他の要件を、原料価格及び期間に亘って変化する他の条件の他に考慮し得る。全ての価格に於いて、ゼラチンに比較して良好な品質の原料に基づく溶液についての利点は要因2−7について重要である。
【0093】
用途
性質の新規な組合せのため、本発明の靱性−弾性材料は高品質の軟質カプセルに適当であり、このカプセルは慣用のゼラチン軟質カプセルと同様に使用し得る。軟質カプセルは慣用のカプセル化法、例えば、ロータリーダイ法を使用して製造することができ、その場合、カプセルを、ゼラチンのカプセル化と同様、カプセル化装置に対称的に供給されるフィルムから形成し、これらのフィルムは、例えば押出又は注型のごとき現在の標準的な方法を使用して形成させる。溶接は10−120℃、好ましくは、15−90℃、より好ましくは、20-70℃、最も好ましくは、25−50℃の範囲の温度で行われる。カプセル化は製造直後のフィルムを使用して行うか、又は、フィルムを予め加工し、カプセル化を行う前は、ロールとして貯蔵し得る。かかる方法は非常に有利であるが、ゼラチンカプセルについては不可能である。加工フィルムの製造については、これらは、低い水分含有量で既に製造されているが、ゼラチンカプセルとは全く異なり、熱処理又は軟質カプセルの状態調節を減少させるか又は完全に省略し得る。
【0094】
同様に、靱性−弾性材料は高品質硬質カプセルの製造に使用することができ、このカプセルは慣用のゼラチン軟質カプセルと同様に使用し得る。カプセルの形成は浸漬法
(dip process)におけるゼラチン硬質カプセルとのごとく行い得る。更に、カプセルの形成は射出成形法により連続的に行うことができ、この場合、ゼラチンカプセルとは全く異なり、熱処理又は軟質カプセルの状態調節を減少させるか又は完全に省略し得る。
【0095】
靱性−弾性材料は別の成形品の形、特に、フォイル;フィルム、好ましくは、可食フィルム;フィラメント;繊維、好ましくは、ゲル紡糸法で製造される延伸繊維;フォーム;顆粒;粉末;ミクロ粒子;射出成形製品;押出製品;異型注型製品(profile-cast article);深絞り製品;熱成形品の形であり得る。
【0096】
用途は多数であり、特に、食品、ガレン製剤、化粧料、健康ケアー製品、包装又は農業部門、例えば、綿花ロッド、ポリスチロールフォーム代替品、フォイル、二軸延伸フォイル、コンパウンドフォイル成分、ナノ−、ミクロ−又はマクロカプセル化用膜系、紙積層品、セルロース代替品、使い捨て衣料、陶器及び刃物、食品皿、飲料用ストロー、マグ、食品包装、発泡熱絶縁食品容器、犬用チューボーン、廃棄物及び堆肥用サック、マルチフォイル、植物用ポット、ゴルフチップ、オモチャに使用し得る。
【0097】
本発明の利点
本発明の本質的要旨は、現存原料デンプンPSが網状構造-可能デンプンNSの、特徴的網状構造への架橋手段であり、軟化剤及び軟化剤含有量を適度な靱性が低い相対湿度RHにおいて得られる程度まで調節することによりマトリックスの脆化温度Tgを低下させ、一方において、網状構造の結果として、高いRHにおいて、適度な強度と弾性が依然として得られることである。大部分の用途について必要な特性の組合せは、実際上、完全に非晶質である既知の熱可塑性デンプン(TPS)については得られなかった。TPSの機械的性質は通常の湿度において劇的に変動するが、機械的性質の準平坦域を有する靱性−弾性材料、即ち、広範囲の相対湿度で有用な性質を有する靱性−弾性材料が得られる。
【0098】
靱性−弾性材料は低いRHにおいて驚くべき靱性を有しており、これは、例えば、靱性が臨界的である、即ち、限定要素であるTPSと比較して、100倍以上に改善され、同時に高いRHにおいては、良好な寸法安定性、即ち、高い弾性モジュラスを得ることができる。靱性と寸法安定性とのバランスについては、ゼラチンと比較して改善されている特性分布を得ることができる。更に、より低い酸素透過性が設定され、これによって、現在のゼラチン及びTPSに比較して用途の可能性の範囲が更に改善される(酸化感受性活性成分)。改善された吸収作用の結果として、水吸収性も減少し、同様に用途の可能性が改善される。
【0099】
更に、網状構造を、そのタイプと形状に関して、特定の要件に対して最適化できる。更なる変更の可能性は特定の添加剤によって生じるであろう。従って、例えば、水中では非常に弱くなり、崩壊又は溶解する網状構造を得ることができる。この結果として、例えば、軟質及び硬質カプセルにおけるゼラチンの代替物として使用し得る。その組成のために、新規な材料は可食性フィルムに非常に適している。網状構造の結果として、靱性−弾性材料は高い湿度においても粘着性でない。この挙動は好ましくないように見えるが、多くの用途については、新規な性質の組合せと同様、必要である。同様に、透明性も多くの用途について重要なものである。
【0100】
改善された吸収性と減少した酸素透過性により、例えば、カプセル製剤(ガレン製剤、芳香物、香料)の有効寿命が改善される。更に、使用されたデンプンは、要因2−7によって、広範囲に利用可能でありかつ高純度であり、最後に、単純化された又は十分に無駄のない状態調節の結果として、及び、新規な方法(カプセル化法とは独立したカプセル化のためのフィルムの製造、ロールの形のフィルムの製造)により、操作コストもゼラチンカプセルに比較して、低下させることができる。種々の処方が基本的に有用な解決手段を可能にし、それによって、所望ならば、各々の操作パラメーターを採用されなけらばならないので、原料価格、入手性、純度又はGMOからの自由度ごとき個々の解決手段について多数の余地があり、従って、時間に亘って変動し得る好ましくない条件も考慮し得る。
【0101】
本発明の更なる利点、特徴及び用途の選択は非限定的な実施例及び図面から明らかになるであろう。
【0102】
図面
図1:相対湿度の関数としての弾性率。本発明の靱性−弾性材料の種々の変種の弾性率が高いRHに対して高い水準で確立されており、これに対し、低い温度では、靱性熱可塑性デンプン(TPS)は流動し、機械的性質を失う。配合は表1に記載されている。
【0103】
図2:相対湿度の関数としての、破断点での伸び率。
【0104】
図3:相対湿度の関数としての弾性率。熱可塑性デンプンは、低いRH又は高いRHにおいて適当な性質に調節することができ、一方、新規な靱性−弾性材料は全領域で良好な性質を有する。
【0105】
図4:湿度の関数としての、10%伸び率での引張強さ。同一の状態が図3で生じる。
【0106】
図5:相対湿度の関数としての衝撃強さ。軟質熱可塑性デンプンは低いRHにおおて高い靱性を有するが、高いRHにおいては、靱性も、弾性率も強度も有していない(図3、4)。高いRHにおいては、脆弱TPSの靱性は適度であるが、低いRHでは最小である。一方、新規な材料は両方の領域で良好な性質を有する。
【0107】
図6:相対湿度の関数としての弾性率。種々の靱性−弾性材料の変種の性質の範囲。
【0108】
図7:相対湿度の関数としての弾性率。バッチ法(靱性-弾性 1)と比較して、押出により改善された性質が提供され、押出フィルムは最小の異方性を有する。
【0109】
図8:相対湿度の関数としての、破断点での伸び率。
【0110】
図9:引張り試験における伸び率の関数としての引張応力。靱性−弾性材料においては、顕著な弾性限界、例えば、ポリエチレンとの量的類似性がある。
【0111】
図10:吸収性:吸収性はゼラチンに比較して明らかに改善されている。
【0112】
図11:酸素透過性:遮断効果はゼラチンに比較して明らかに改善されている。
【0113】
実施例
バッチ法
実施例1:バッチ法は50cm3の室容量を有する加熱可能なブラベンダーニーダーを使用して行った。第1工程においては、素材温度80−90℃、120rpmで3分間、水と軟化剤を添加することによりPSを可塑化した。これと並行して、NSの溶液を調製しS、溶融物に添加した。100rpmで10分間、均質化を行い、それによって、素材温度が90−105℃に連続的に上昇した。ついで、最終混合物を取り出し、プレス内で0.5mmのフィルムに成形した;このフィルムは例えば約20%の水を含有していた。ついで、フィルムを平衡になるまで、種々の湿度で貯蔵し、その性質について分析した。靱性−弾性材料及び参照材料についての種々の処方が表1に記載されている。
【0114】
【0115】
連続法、直接押出
実施例2:押出パラメーター:同一方向に回転する、緊密にかみ合う30mmツゥイン−シャフト押出機(20L/D)、スクリュー形状:入口ゾーン、分配性混合物(G3)、分散性混合物(G4)、出口ゾーン(G5)、速度300rpm、PS=7.1 kg/h(添加量 G1)、NS溶液=3.3 kg/h
(25%のNS、75%の水、dT/dt=50℃/分、添加量(G2)、軟化剤=3.5 kg/h(添加量G3)、温度ハウジング、G1=40℃、G2=80℃、G3=90℃、G4=90℃、G5=90℃。押出後の最終水含有量は真空により10−30%の範囲で変動させることができた。
【0116】
混合物を広スロットノズルによって厚さ0.6mmのフィルムに成形し、チルロールによって検量した。ついで、ホイルを巻き取り、貯蔵し、後に、更に加工するか、又は、直接、加工して、例えば、ロータリーダイ装置により軟質カプセルに、或いは、溶接及び切断装置により香料袋(sachet)にすることができる。ホイルを一時的に(interim)貯蔵する場合には、水含有量は室温で、約25−35%の軟化剤含有量において約15%以下にすべきであり、かくして、網状構造の発生は開始しない。約7−15%の水分含有量により、非常に興味のある状態が存在する(発生した網状構造が存在しないか、最小である)。これらの比について、NSFは、一方においては、脆化温度Tg以上の状態にある;即ち、材料は比較的軟質であり、例えば、300%及びそれ以上の非常に高い伸長能力を示し、他方においては、NSF中のNS葉、驚くべきことに、少なくとも数ヶ月、分子中に分散した、分配された状態にあり、その結果、良好な成形性が長時間、変化しないままである。加工の後、網状構造の発生を温度及び/又は水分含有量を増大させることにより開始させることができ、それによって、初期の網状構造の発生の結果として材料が固化し、低温での溶接性を失う。上記した条件下で網状構造の発生が生起しない理由は理解されていない;材料は軟質であり、Tg以上であるが、網状構造の発生は明らかに抑制される(核の存在下ではこれらの条件下でも可能である);しかしながら、観察される状態は、例えば貯蔵能力及び材料のさらんる加工に関して技術的に重要な用途を有する。温度及び/又は水分含有量の増加につれてNSFが固化することは実際に驚くべきことである;その理由はTPSの場合と同様、全く反対のことが予測されるからである;しかしながら、得られる網状構造は追加の強度を有しており、この、一見して、逆説的現象は、TPSと、NSF又はNSFから得られるデンプン網状構造の間の多数の有用な相違を明らかに示している。
【0117】
実施例3:実施例1と同じ、但し、NS溶液はG3で添加し、軟化剤はG2で添加。
【0118】
実施例4:実施例1と同じ、但し、NS溶液は軟化剤と混合して調製し(dT/dt=30℃/分)、G2で添加。
【0119】
実施例5:実施例1と同じ、但し、NS溶液及び軟化剤を、各々、G2で添加。
【0120】
予備成形製品に基づく方法
実施例6:(2工程法)。第1工程において予備成形製品を製造、この場合、実施例1と異なり、軟化剤の添加量は1.5 kg/hであり、ストランド又はヘッド粗砕顆粒によって製造。
【0121】
この顆粒(5kg/h)を残りの軟化剤(0.7 kg/h)と水(1.5 kg/h)を添加することにより加工用押出機中で可塑化しついでフィルムに成形するか、又は、硬質カプセルのごとき射出成形製品に成形した。加工用押出機の温度は約90℃であった。
【0122】
性質
図1は、マトリックス又は非晶質相として本発明の靱性−弾性材料に特に適当なかつ極めて良好なフィルム形成能力を有する劣化安定化デンプン(平均〜高いDS)に基づく配合物
についての、相対湿度の関数としての弾性率を示すグラフである。配合物 TPSソフト10、11及び12は、広い湿度範囲でデンプンに基づく有用な材料を広い湿度範囲で得ることについての基本的な問題を示している。これらの材料は20−30%の低いRHにおいて比較的、衝撃抵抗性であるが、湿度の増大につれて水を急速に吸収し、それによって、これらの材料は約40%RHから非常に軟質になり、粘稠になり、その固体特性を失い、次第に、緩慢に流動する高粘度液体の性質を帯びる。RHによる弾性率の落下は劇的であり、例えば、TPSソフト12は20−40%の範囲のRHにおいて、実際に、1000倍まで変動する。各々の用途について、大気に暴露される場合、かかる材料は、予想される通り、不適当である。
【0123】
配合物 靱性−弾性10-1、10-2、11及び12は、規定された網状構造を示し、それによって、一方において、衝撃耐性は低いRHにおいて減少しないが、他方において、例えば、平均〜高いRHでの弾性率のごとき機械的性質が安定化され得る。驚くべきことに、約40−75%の範囲のRHにおいても弾性率の準平坦域が得られ、それによって、弾性率は実質的に一定のままである。準平坦域の水準は、一方において、選択されたPS及びNSのタイプ及び割合に依存する。靱性−弾性10-1と10%NS、10-2と15NSとの比較により、NSの割合の影響が示される。
【0124】
興味のあることに、約20−50%のRH範囲における靱性−弾性材料の張力伸び曲線は、例えば、ポリエチレンの張力伸び曲線に匹敵するコースを示し、それによって、後続のプラトー範囲及び固化領域が確立され得る。図9においては、張力伸び曲線は、例えば、RH=33%における靱性−弾性10-1について例示されている。
【0125】
図2は図1の配合物の、破断点での伸び率を示す。配合物 靱性−弾性10、11及び12は、約45%RHにおいて最大の300%を示し、そして、約20−70%の湿度の範囲で少なくとも100%の破断点での伸び率を示す。この動向は広い水分含有量における優れたフィルム形成特性を反映している。NSの使用により、NSを使用しない配合物と比較して、破断点での伸び率の最大は若干低いが、高いRHまでの使用の範囲は規定された網状構造を導入することにより部分的に明らかに拡大することができる。
【0126】
図3には、2つの典型的な本発明の靱性−弾性材料(靱性−弾性1及び2)並びにソフト
(TPSソフト1)及び脆性TPS(TPSブリットル1)についての、RHの関数としての弾性率の動向が示されている。対数図表中の軟質カプセルゼラチンはRHの増大と共に弾性率の直線的低下を示し、同時に、約20−85%のRHの範囲で約600倍まで変動する。このRH範囲での靱性−弾性1及び2は100倍までの明らかに減少した変動幅、特に、平均RH範囲において、準平坦域を示す。このことはゼラチンと比較して重要な利点である。ゼラチン及び靱性−弾性1及び2は、22%RHにおいて、同等の弾性率を有するが、85%RHにおいては、靱性−弾性1及び2は約10〜20倍高く、それによって、寸法安定性は高いRHにおいて明らかに改善される。
【0127】
TPSソフト1は低いDSを有する置換デンプンに基づくものである。この配合物は、衝撃−靱性が同時に低いRHにおいて同時に得られる場合に、高いRHでの弾性率についての最も最適なケースにおいて達成されるものを示している。しかしながら、高いRHでの弾性率は適度であり、58%のRHにおいては2MPaの値が既に得られているが、ゼラチンは8MPaを有しているのに対し、靱性−弾性1及び2は、それぞれ、11及び73MPaを依然として有する。DSが低い結果として、TPSソフト1について使用されているデンプンは本発明の靱性−弾性材料についてのPSとして適している;特に、水中での崩壊が必須であるこれらの用途についてはこの性質は十分ではなかった。TPSソフト1と異なり、TPSブリットル1は高い湿度で、靱性−弾性1に匹敵する弾性率を示す。しかしながら、32%EHでの衝撃靱性は極めて小さく、靱性−弾性1における904mJ/mm2に比較して、僅か11mJ/mm2である;即ち、TPSブリットル1は低いRHにおいて極めて脆弱であり、材料は最小の応力においてガラスのように破断する。
【0128】
上記配合物についての、RHの関数としての、10%伸び率での引張強さのグラフが図4に示されている。この性質についての比率は弾性率と同様である。
【0129】
図5には、TPSブリットル1、TPSソフト1及び靱性−弾性1及び21について、RHの関数としての衝撃靱性又は衝撃エネルギーkのグラフが図5に示されている。デンプンに基づく材料は、衝撃強さが少なくとも30mJ/mm2である場合には、靱性であると記載し得るが、より高い値が有利である。TPSブリットル1は、40%RHの直ぐ上で若干、靱性になり、これに対し、靱性−弾性1は20%RH以上で靱性になり、靱性−弾性21は10%RH以下においても靱性であり、従って、これまで生じたことのなかった極端に低い湿度でも依然として靱性である。脆弱性から靱性への転換はTPSソフト1については10〜20%RHについて生起する。高いRHでの衝撃靱性における明確な低下は、材料がRHの増加と共に明らかに軟質となり、高度に粘稠な液体の特徴を呈する。
【0130】
衝撃靱性の他に、衝撃試験における破断点での伸び率εkは、破壊性能を特徴づけるための別の尺度である。TPSブリットル1は測定し得る破断点での伸び率を有していないのに対し、靱性−弾性材料については25%又はそれ以上の伸び率を得ることができ、この材料は高い応力速度においても依然としてプラスチックとして挙動する。
【0131】
図3、4及び5はTPSの基本的な問題を明らかに示している。一方に於いて、低いRHにおいて適度な衝撃靱性を設定することができ、それによって、高いRHにおいては、材料は非常に軟質になりかつ流動性になり(最小弾性率)、或いは、高いRHにおいては、TPSに基づいて適度な衝撃靱性を設定することができ、それによって、材料は低いRHにおいて極端に脆弱になる。この挙動はTPSは実際上、完全に非晶質であり、脆化温度Tg以下ではガラス質であり、Tg以上では、高度に粘稠な流体として存在するという事実に基づいている。かくして、有用な性質は2つの状態の間の転換領域において、狭いRH範囲においてのみ得ることができる。これに対して、本発明の靱性−弾性材料については、靱性と強度特性(弾性率、強度、寸法安定性)の両者を同時に広いRH範囲で得ることができ、それによって、更に、特定の用途に要求される他の特性(例えば、透明性、水性媒体中での崩壊性、水溶性)を調節し得る。更に、典型的には40−75%のRH範囲において特性(弾性率及び強度のプラトー)を実質的に安定化させることができることも特殊な利点である。
【0132】
図6には、RHの関数としての、種々の靱性−弾性配合物についての弾性率が示されている。一方において、これは、本発明の靱性−弾性材料の特徴的性質は種々の配合物を使用して得ることができること、他方においては、弾性率の水準は実質的に20年からなる範囲で変化し得ることを示している。
【0133】
靱性−弾性材料の特性分布は配合物だけでなしに、製造方法にも依存する。バッチ法
(ブラベンダーニーダー、靱性−弾性1)及び連続押出法(靱性−弾性1E)により同一の配合物について製造された材料の性質の比較は図7から明らかである。準平坦域及びそれ以上の範囲にある押出法に従った弾性率は明らかにより高い水準上にあり、この場合、靱性−弾性1と比較して、約3〜5倍高い値がえられることが明らかである;即ち、靱性−弾性材料の利点は、押出による製造及びバッチ法に基づく結果について、一層、顕著である。図8は、靱性−弾性1Eの伸張能力は、平均RHにおいて最大の範囲にある靱性−弾性1と比較して、僅かに減少するが、低いRH及び高いRHにおいて増大することを示している。ブラベンダー法と比較して良好な押出法で得られる性質は一般的に有用であり、例えば、高い均質性、より少ない材料誤差(material error)、短い操作時間のごとき要因に基づいている。
【0134】
図10においては、靱性−弾性1、16及び17の吸収等温線(absorption isotherm)とゼラチンの吸収等温線が比較されている。ゼラチンは同一のRHでの靱性−弾性材料と比較して、より多くの水を吸収する。これは、ゼラチンの種々の性質がRHに高い依存性を示す理由の一つである。靱性−弾性材料の水吸収性は特定の処方、特に、種々の他の性質はRHにあまり依存しない、軟化剤の組成により減少させることができる(靱性−弾性16、17)。
【0135】
特に、カプセル化の分野、及び、一般的に、包装の分野での利用については、良好な遮断性(barrier property)は、ガスと比較して、特に、酸素と比較して、有利である(酸化による内容物の損傷)。図11には軟質ゼラチンカプセルに比較した場合の靱性−弾性1の酸素透過性が2〜3倍、減少することが示されている;この場合、ゼラチンに比較した別の利点が明らかである。酸素透過性は、配合処理、特に、砂糖の使用により更に減少させ得る。靱性−弾性1と比較して、靱性−弾性17は、0〜75%のRH範囲において、1/2倍減少した酸素透過性を示し、これに対し、この倍率は靱性−弾性16については1/4である。
【0136】
典型的な靭性−弾性材料に基づいて、10%の砂糖を添加して変性して、厚さ0.25mmのフィルムをブラベンダーニーダーを使用して製造し、パルス溶接装置により流動性芳香剤濃縮物と香料を含有するバッグを製造した。1ヶ月の貯蔵期間経過後も、バッグはあそのままであり、靭性−弾性材料の優れた遮断効果を確認することができた。バッグを冷水中に放置した場合、15分後に、バッグの完全な崩壊を観察することができ、内容物は効果的に放出された。例えば、この結果は、これまでポリビニルアルコールから製造されていたかつ心地よい芳香を有する洗濯した布を得るのに洗濯機中で使用されていた、香料を含有する香料袋を製造することができることを示している。デンプンに基づくかかるバッグの利点は、一方においては、価格であり、他方においては、デンプンの非常に良好な生分解性である。芳香剤に関して、芳香剤濃縮物を靭性−弾性材料によってカプセルかすることができ、それによって、芳香剤の放出を使用の際に生起させることができ、そして、この時点まで、芳香剤の品質を長時間に亘って非常に良好に保護することができる(トップノート)。芳香剤の分野における従来のカプセル化系と比較して、高い湿度での靭性−弾性材料の安定性及び全RH範囲に亘っての粘着性の不存在は重要な利点である。更に、靭性−弾性材料からなるカプセルからの医薬活性成分の放出について検討し、その結果は薬局方の要件に一致した。
【0137】
測定方法及び状態調節(conditioning)
引張試験
約0.5mmの厚さのフィルムから打ち抜いた、DIN 53504 S3に従った標準化引張試験用サンプルについて、インストロン(Instron)4502 引張試験を使用して、22℃で、50mm/分の綾振速度で引張試験を行った。測定結果は、各々の場合、少なくとも5回の別個の測定の平均値と理解されるべきである。種々の湿度に状態調節した引張り試験サンプルの水分含有量は引張試験中、測定精度の範囲内で一定であった。引張応力σはF/Aとして得られた;ここで、Fは力であり、Aはε=0でのサンプル断面積である。引張試験における伸び率%はε=100(11-10)10として得られる;ここで、10は引張試験の始めにおけるクランプ間のサンプルの伸長可能な長さであり、10は伸長したサンプルの長さである。弾性率はE=σ/εとして得られる。
【0138】
衝撃靭性(impact toughness)
衝撃靭性はアイゾッド衝撃試験法に従って、フランク衝撃試験機(53565型:Karl Frank Gmbh、Weineheim Birkenau ドイツ)を使用し、そして、4ジュール(高衝撃靭性)又は1ジュール(低衝撃靭性)のハンマーを使用して測定した。サンプル本体として、幅5mm、厚さ約0.5mmのフィルムサンプルを使用した。両サイドのクランプ間のサンプルの長さは40mmであった。衝撃試験における破断点での伸び率εkは、εk=100(11-10)10として得られる;ここで、10は引張試験の前のクランプ間のサンプルの伸長可能な長さであり、10は破断後の伸長したサンプルの長さである。測定結果は、各々の場合、少なくとも5回の別個の測定の平均値と理解されるべきである。試験中、サンプルの水分含有量は測定精度の範囲内で一定であった。
【0139】
酸素透過率
酸素透過率の測定は厚さ0.15mmのフィルムについてOX-TRAN 2/21(MOKON Inc. 7500 Boone Avenue North ミネアポリス 米国)を使用して行い、デンプンフィルム及びゼラチンフィルムの各々の場合の酸素透過率を対称的配置で、同時に測定し、その結果、相対的な値を非常に正確に測定できた。
【0140】
吸収性
吸収性の測定は、予め水分含有量0%まで乾燥し(五酸化リン上、75℃で24時間)、ついで、飽和塩溶液により調節した種々のRHで、デシケーター中で7日間貯蔵したサンプル
(辺の長さ5mm、厚さ0.5mmの正方形サンプル)について行った。デシケーターにベンチレーターを取り付け、それによって、大気中での貯蔵と比較して、平衡になるまでの吸収時間は明らかに短縮された(7日)。吸収後の水分含有量はその後の乾燥中の水の損失によって測定した。
【0141】
状態調節
機械的分析(引張試験、衝撃靭性)のためのサンプルの状態調節は吸収試験に使用したものと同一の装置中で行った。
【0142】
記号及び略語
RH [%] 相対湿度 0%<RH<100%
RT [℃] 室温(22℃)
Tg [℃] 脆化温度
WM [%] デンプン及び軟化剤に対する軟化剤含有量(水を除く)、dsb
W [%] デンプン、軟化剤及び水に対する水分含有量
Dsb [-] 乾燥重量に対する固形分
E [MPa] 弾性率(ヤング率)
σm [MPa] 引張試験における最大強度(破断抵抗)
σ10% [MPa] 引張試験におけるε=10%での引張強さ
σb [%] 引張試験における破断点での伸び率
FE(23-85) [-] 23-85%のRHの範囲での弾性率の変動幅、FE(23-85)=E23/E85
【0143】
FE(43-75) [-] 43-75%のRHの範囲での弾性率の変動幅、FE(43-75)=E43/E75
Fσ10%(23-85) [-] 23-85%のRHの範囲でのσ10%の変動幅、
Fσ10%(23-85)=σ10%,23/σ10%,85
Fσ10%(43-75) [-] 43-75%のRHの範囲でのσ10%の変動幅、
Fσ10%(43-75)=σ10%,23/σ10%,85
K [mJ/mm2] 衝撃試験(アイゾッド衝撃試験)における衝撃エネルギー
εk [%] 衝撃試験(アイゾッド衝撃試験)における破断点での伸び率
RHz [%] RTでの脆性から靭性への転換でのRH
K(RHz)は、原則として、Ks << KMはK(RHz)〜1/2KMであるので、
脆性−靭性転換に従って定められる脆性領域Ksと最大靭性KMの
の平坦域の靭性の算術平均となる
PO2 [mlxcm/(cm2x24hxatm) 酸素についての透過率
AM [重量%] デンプンに対するアミロース含有量、dsb
PNS [重量%] NS及びPSに対するNSの割合、dsb
PLCA [重量%] AP及びLCAに対する、重量% dsbで表されるLCAの割合
【0144】
PSCA [重量%] AP及びSCAに対する、重量% dsbで表されるSCAの割合
PRIM [重量%] PS及びNS及びRIMに対する、RIMの割合
PE [重量%] PS及びNS及びEに対する、Eの割合
PS [重量%] PS及びNS及びS対する、Sの割合
DP [−] 重合度
DPN [−] 重合度の数平均
DPw [−] 重合度の重量平均
Qb [−] 巨大分子の分岐度(分岐したモノマー単位の数/モノマー単位の数)
CL [−] 鎖長単位の数(単位の数)
CLn [−] 鎖長の数平均;線状、即ち、非分岐鎖セグメント
【0145】
CLn,na [−] 網状構造活性鎖長の数平均;結晶化し得るかつ網状構造に関与し
得る鎖セグメント、即ち、非分岐、非置換、非ステリル阻害
(non-sterile impeded)鎖セグメント
CLw [−] 鎖長の重量平均
DS [−] 置換度:0<DS<3.0
DE [−] デキストソース当量:0<DE<100
BV [−] ブルー値
IA [g/100g] 沃素親和性
PS 原料デンプン(present starch)
NS 網状構造可能デンプン
WM 個々の軟化剤であるか又は種々の軟化剤の混合物であり得る軟化剤
RIM 劣化抑制物質(RIM)
【0146】
E 爆発剤(explosive)
S 溶剤
AM アミロース
AP アミロペクチン
A-AP アミロペクチンのA側鎖
SCA 10−100の範囲のDPnを有する短鎖アミロース;SCAは、単独で、より高い
程度の重合度の他のデンプンと組合せた場合にのみ、無デンプン網状構造を
形成し得る:かかる混合物からなる網状構造は低軟化剤含有量で、低温でも
形成し得る
LCA 100以上のDPnを有する長鎖アミロース(NS又はNSの一部)はLCA1及びLCA2を
有し得る
LCA1 10−300の範囲のDPnを有するLCA;LCA1は、単独で又は他のデンプンとの
組合せで網状構造を形成し得る;LCA1とPSの混合物は平均軟化剤含有
量でかつ平均温度で網状構造を形成し得る
LCA2 300以上のDPnを有するLCA;LCA2は、単独で又は他のデンプンとの組合せ
で網状構造を形成し得る;
NSF 網状構造可能デンプン;デンプン又はデンプン混合物及び軟化剤を含有する溶融物又は溶液は適当な条件下、デンプン網状構造として得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】相対湿度の関数としての弾性率を示す図面である。
【図2】相対湿度の関数としての、破断点での伸び率を示す図面である。
【図3】相対湿度の関数としての弾性率を示す図面である。
【図4】湿度の関数としての、10%伸び率での引張強さを示す図面である。
【図5】相対湿度の関数としての衝撃強さを示す図面である。
【図6】対湿度の関数としての弾性率を示す図面である。
【図7】相対湿度の関数としての弾性率を示す図面である。
【図8】相対湿度の関数としての、破断点での伸び率を示す図面である。
【図9】引張り試験における伸び率の関数としての引張応力を示す図面である。
【図10】吸収性を示す図面である。
【図11】酸素透過性を示す図面である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンを基材とする靱性−弾性材料であって、半結晶質網状構造を示しかつ室温においては、33%以下の相対湿度(RH)では脆性〜靱性の転換RHzを示し、85%では0.1<E<50の範囲の、MPaで表される弾性率を有することを特徴とする靱性−弾性材料。
【請求項2】
mJ/mm2で表される衝撃靱性K及びMPaで表される弾性率Eは下記の特性値:
a) 約11%のRHにおいては、10<K<300及び
b) 約85%のRHにおいては、0.1<E<50及び/叉は
c) 約75%のRHにおいては、0.5<E<150
を有する、請求項1に記載の 靱性−弾性材料。
【請求項3】
mJ/mm2で表される衝撃靱性K及びMPaで表される弾性率Eは下記の特性値:
a) 約23%のRHにおいては、15<K<1000及び
b) 約85%のRHにおいては、0.2<E<100及び/叉は
c) 約75%のRHにおいては、1.0<E<300
を有する、請求項1又は2に記載の靱性−弾性材料。
【請求項4】
mJ/mm2で表される衝撃靱性K及びMPaで表される弾性率Eは下記の特性値:
a) 約33%のRHにおいては、20<K<2000及び
b) 約85%のRHにおいては、0.2<E<100及び/叉は
c) 約75%のRHにおいては、1.0<E<300
を有する、請求項1又は2に記載の靱性−弾性材料。
【請求項5】
衝撃試験における靱性−弾性材料の破壊は靱性−弾性的に生起すること、即ち、衝撃試験で破壊したとき、靱性−弾性材料は下記の特性値:
a) 約43%のRHにおいては、5<εk<50及び
b) 約33%のRHにおいては、3<εk<35及び/叉は
c) 約23%のRHにおいては、2<εk<25
を有する、εkで表される伸長率を有する、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項6】
MPaで表される、伸長率10%におけるその強度σm,10%は、下記の特性値:
a) 約85%のRHにおいては、0.2<σm,10%<12及び/叉は
b) 約75%のRHにおいては、0.4<σm,10%<20
を有する、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項7】
靱性−弾性材料は、弾性率及びRHの関数としての10%伸び率での引張強さについての準平坦域を有する、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項8】
下記の特性の少なくとも一つを有する、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料:
a) 網状構造の架橋点を形成する靱性−弾性材料の指定帯域は、nm<500の寸法を有しておりかつ主として非晶質の相に連結されている;
b) 靱性−弾性材料はRH<90%において透明である;
c) 靱性−弾性材料はRH<100%の範囲において粘着性ではない;
d) 靱性−弾性材料は水叉は胃液中で膨潤し、70℃以下の温度においてこれらの媒体の極めて僅かな移動で崩壊する。
【請求項9】
靱性−弾性材料は5〜300の範囲の網状構造活性鎖長、CLn,naを有するデンプンを有しており、所望ならば、Qb>0.01の程度の分岐度を有する他のデンプンを含有する、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項10】
靱性−弾性材料は現存のデンプンPSと網状化可能デンプンNSを含有しており、NSとPSに対するNSの重量%でdsbで表した比率は1−90である、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項11】
靱性−弾性材料は
a) 1〜70の範囲の、重量% dsbで表されるアミロース含有量AMを有しており;そして
b) アミロースはSCA、LCA叉はSCAとLCAの混合物であり、アミロペクチン及びSCAに対する、重量% dsbで表されるSCAの割合PSCAは1〜35の範囲であるか、叉は、アミロペクチン及びLCAに対する、重量% dsbで表されるSCAの割合PLCAは1〜70の範囲である、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項12】
靱性−弾性材料叉はこの材料からなる最終製品は、NS及びPS及びこれらの成分の混合物を、この混合物から連続的に別々に製造することにより得られるか、叉は、NS及びPSをこれらの混合物から連続的に同時に製造することにより得られるか、叉は、NS及びPSを別々に叉は同時に製造した後に得られる予備生成物を経て非連続的に得られる、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一つに記載されるデンプンを基材とする靱性−弾性材料からなる軟質カプセル、特に、貯蔵される皮膜の間で製造される軟質カプセル。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一つに記載されるデンプンを基材とする靱性−弾性材料からなる硬質カプセル、特に、射出成形法によって得られる硬質カプセル。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一つに記載されるデンプンを基材とする靱性−弾性材料に基づく包装材料、特に、香料、芳香剤、浴用添加物、薬品のごとき揮発性物質のための包装材料叉は遮断材、特に、水中で崩壊する香料袋叉はカプセル。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一つに記載されるデンプンを基材とする靱性−弾性材料に基づく成形品、特に、ホイル;フィルム、好ましくは可食性フィルム;フィラメント;繊維、好ましくは、ゲル紡糸法により製造される延伸繊維;フォーム;顆粒;粉末;ミクロ粒子;射出成形品;押出成形品;異型製品、深絞り成形品;熱成形品。
【請求項1】
デンプンを基材とする靱性−弾性材料であって、半結晶質網状構造を示しかつ室温においては、33%以下の相対湿度(RH)では脆性〜靱性の転換RHzを示し、85%では0.1<E<50の範囲の、MPaで表される弾性率を有することを特徴とする靱性−弾性材料。
【請求項2】
mJ/mm2で表される衝撃靱性K及びMPaで表される弾性率Eは下記の特性値:
a) 約11%のRHにおいては、10<K<300及び
b) 約85%のRHにおいては、0.1<E<50及び/叉は
c) 約75%のRHにおいては、0.5<E<150
を有する、請求項1に記載の 靱性−弾性材料。
【請求項3】
mJ/mm2で表される衝撃靱性K及びMPaで表される弾性率Eは下記の特性値:
a) 約23%のRHにおいては、15<K<1000及び
b) 約85%のRHにおいては、0.2<E<100及び/叉は
c) 約75%のRHにおいては、1.0<E<300
を有する、請求項1又は2に記載の靱性−弾性材料。
【請求項4】
mJ/mm2で表される衝撃靱性K及びMPaで表される弾性率Eは下記の特性値:
a) 約33%のRHにおいては、20<K<2000及び
b) 約85%のRHにおいては、0.2<E<100及び/叉は
c) 約75%のRHにおいては、1.0<E<300
を有する、請求項1又は2に記載の靱性−弾性材料。
【請求項5】
衝撃試験における靱性−弾性材料の破壊は靱性−弾性的に生起すること、即ち、衝撃試験で破壊したとき、靱性−弾性材料は下記の特性値:
a) 約43%のRHにおいては、5<εk<50及び
b) 約33%のRHにおいては、3<εk<35及び/叉は
c) 約23%のRHにおいては、2<εk<25
を有する、εkで表される伸長率を有する、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項6】
MPaで表される、伸長率10%におけるその強度σm,10%は、下記の特性値:
a) 約85%のRHにおいては、0.2<σm,10%<12及び/叉は
b) 約75%のRHにおいては、0.4<σm,10%<20
を有する、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項7】
靱性−弾性材料は、弾性率及びRHの関数としての10%伸び率での引張強さについての準平坦域を有する、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項8】
下記の特性の少なくとも一つを有する、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料:
a) 網状構造の架橋点を形成する靱性−弾性材料の指定帯域は、nm<500の寸法を有しておりかつ主として非晶質の相に連結されている;
b) 靱性−弾性材料はRH<90%において透明である;
c) 靱性−弾性材料はRH<100%の範囲において粘着性ではない;
d) 靱性−弾性材料は水叉は胃液中で膨潤し、70℃以下の温度においてこれらの媒体の極めて僅かな移動で崩壊する。
【請求項9】
靱性−弾性材料は5〜300の範囲の網状構造活性鎖長、CLn,naを有するデンプンを有しており、所望ならば、Qb>0.01の程度の分岐度を有する他のデンプンを含有する、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項10】
靱性−弾性材料は現存のデンプンPSと網状化可能デンプンNSを含有しており、NSとPSに対するNSの重量%でdsbで表した比率は1−90である、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項11】
靱性−弾性材料は
a) 1〜70の範囲の、重量% dsbで表されるアミロース含有量AMを有しており;そして
b) アミロースはSCA、LCA叉はSCAとLCAの混合物であり、アミロペクチン及びSCAに対する、重量% dsbで表されるSCAの割合PSCAは1〜35の範囲であるか、叉は、アミロペクチン及びLCAに対する、重量% dsbで表されるSCAの割合PLCAは1〜70の範囲である、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項12】
靱性−弾性材料叉はこの材料からなる最終製品は、NS及びPS及びこれらの成分の混合物を、この混合物から連続的に別々に製造することにより得られるか、叉は、NS及びPSをこれらの混合物から連続的に同時に製造することにより得られるか、叉は、NS及びPSを別々に叉は同時に製造した後に得られる予備生成物を経て非連続的に得られる、前記請求項の少なくとも一つに記載の靱性−弾性材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一つに記載されるデンプンを基材とする靱性−弾性材料からなる軟質カプセル、特に、貯蔵される皮膜の間で製造される軟質カプセル。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一つに記載されるデンプンを基材とする靱性−弾性材料からなる硬質カプセル、特に、射出成形法によって得られる硬質カプセル。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一つに記載されるデンプンを基材とする靱性−弾性材料に基づく包装材料、特に、香料、芳香剤、浴用添加物、薬品のごとき揮発性物質のための包装材料叉は遮断材、特に、水中で崩壊する香料袋叉はカプセル。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一つに記載されるデンプンを基材とする靱性−弾性材料に基づく成形品、特に、ホイル;フィルム、好ましくは可食性フィルム;フィラメント;繊維、好ましくは、ゲル紡糸法により製造される延伸繊維;フォーム;顆粒;粉末;ミクロ粒子;射出成形品;押出成形品;異型製品、深絞り成形品;熱成形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−521427(P2006−521427A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504162(P2006−504162)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000191
【国際公開番号】WO2004/085483
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(504436664)イノゲル アクチエンゲゼルシヤフト (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000191
【国際公開番号】WO2004/085483
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(504436664)イノゲル アクチエンゲゼルシヤフト (1)
【Fターム(参考)】
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