説明

鞍乗り型車両

【課題】 本発明は、送受信感度を高めることができ、収納ボックスの収納容量に影響を与えることのない盗難対策装置を備えた鞍乗り型車両を提供することを課題とする。
【解決手段】自動二輪車10は、車体フレーム15と、この車体フレーム15に含まれるヘッドパイプ11と、このヘッドパイプ11に挿嵌されるステアリング軸17と、このステアリング軸17の上端部に設けられる操向ハンドル18と、ヘッドパイプ11の周囲に、このヘッドパイプ11を覆う車体前部カバー33が備えられ、この車体前部カバー33に、車両前方へ膨出して形成される物品収納ボックス32が設けられ、この物品収納ボックス32の外面73に略水平となる平坦面81が形成され、この平坦面81に、盗難対策装置36が取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難対策装置が備えられている鞍乗り型車両の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の位置情報を検出し、この位置情報を無線送信する盗難対策装置が備えられている鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1(図13)参照。)。
【0003】
特許文献1の図13に示されるように、ヘルメット等の物品を収納する収納ボックス(5)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)が車両の後部に設けられ、この収納ボックス(5)の底に、盗難対策装置(20)が配置されている。
【0004】
盗難対策装置(20)には、アンテナを内蔵しており、このアンテナを介して衛星からの信号を受信する。この信号の受信感度が所定以上であることが盗難対策装置(20)の作動条件となる。
衛星からの電波は、鉛直方向に進むため、盗難対策装置(20)を水平にすれば、受信面積が最大となり、受信感度を高めることができる。そのため、盗難対策装置(20)を水平若しくは所定の傾きの範囲内に配置することが求められる。
【0005】
また、収納ボックス(5)には、多様な物品が収納されるが、これらの物品には金属製の物品が含まれる。金属製の物品は電波を遮蔽するため、衛星からの電波が盗難対策装置(20)に届き難くなる。すなわち、衛星からの軌道情報の受信及び位置情報の送信を行う際に送受信感度が低下する。
【0006】
さらに、特許文献1の図13に示されるように、盗難対策装置(20)の存在により、内装材(61)が収納ボックス(5)内に局所的に膨出している。この膨出により、収納ボックス(5)の収納容量が減少する。
しかし、収納ボックス(5)での収納容量は大きいことが望まれる。
そこで、送受信感度を高めることができ、収納ボックスの収納容量に影響を与えることのない盗難対策装置を備えた鞍乗り型車両が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4189154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、送受信感度を高めることができ、収納ボックスの収納容量に影響を与えることのない盗難対策装置を備えた鞍乗り型車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体フレームと、この車体フレームに含まれるヘッドパイプと、このヘッドパイプに回動自在に挿嵌されるステアリング軸と、このステアリング軸の上端部に設けられる操向ハンドルと、車両の位置情報を検出すると共にこの位置情報を無線送信する盗難対策装置と、を備える鞍乗り型車両において、ヘッドパイプの周囲に、このヘッドパイプを覆う車体前部カバーが備えられ、この車体前部カバーに、車両前方へ膨出して形成される物品収納ボックスが設けられ、この物品収納ボックスの外壁面のうちの少なくとも一部に、略水平となる平坦面が形成され、この平坦面に、盗難対策装置が取付けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、操向ハンドルは、収納ボックスの上方に離間して配置され、盗難対策装置は、物品収納ボックスの外壁面のうちの上部外壁面に取付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、物品収納ボックスは、上部外壁面から下方に延ばされる側部外壁面を備え、この側部外壁面と上部外壁面とが交わる部位に、盗難対策装置を物品収納ボックスに装着する取付ステーが取付けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、ヘッドパイプの車幅方向の一側方に、イグニッションスイッチが備えられ、ヘッドパイプの車幅方向の他側方で、且つ、イグニッションスイッチと離間した位置に、盗難対策装置が配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、物品収納ボックス及び前記ヘッドパイプの前方に、バッテリが備えられ、このバッテリの下方で、且つイグニッションスイッチが設けられている車幅方向の一側方に、盗難対策装置に接続されるハーネスが迂回するように配索されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、物品収納ボックス及びヘッドパイプの前方に、バッテリが備えられ、このバッテリの上面と同じ高さに、上部外壁面が形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明では、車体前部カバーは、車両の前方から前記ヘッドパイプを覆うフロントカバーと、車両の後方から前記ヘッドパイプを覆うインナカバーと、を含み、物品収納ボックスの上部外壁面に取付けられている盗難対策装置は、車両側面視で、インナカバーの上端より車両前方に突出するハーネス接続部を有し、このハーネス接続部からハーネスを延ばすようにしたことを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明では、盗難対策装置は、衛星から発信された信号を受けるGPSアンテナと、このGPSアンテナで受けた信号をもとに位置情報を検出するGPS部と、受信した車両位置情報を外部へ報知する報知部と、GPS部と報知部を統合制御する制御部と、を一体のハウジング内に備えるものであって、GPSアンテナは、ハウジングの後部に配置されていることを特徴とする
【0017】
請求項9に係る発明では、GPSアンテナは、ハウジングの車幅方向外側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、ヘッドパイプの周囲に、ヘッドパイプを覆う車体前部カバーが備えられ、この車体前部カバーに、車両前方へ膨出して形成される物品収納ボックスが設けられている。
【0019】
物品収納ボックスの外壁面の外側が、車体前部カバーに覆われているため、車体前部カバーと物品収納ボックスとの間に空間が形成される。この空間を利用して、盗難対策装置を配置することが可能になる。
【0020】
加えて、物品収納ボックスの外壁面に、略水平となる平坦面が形成され、この平坦面に盗難対策装置が取付けられる。平坦面は略水平となるため、この平坦面に取付けられる盗難対策装置の姿勢も略水平になる。衛星からの電波は、鉛直方向に進むため、盗難対策装置を略水平に配置できれば、受信面積が最大となり、受信感度を高めることができる。
【0021】
仮に、盗難対策装置を支持する専用のステーを、物品収納ボックスと別個に設けるとすれば、専用ステーの調達コスト及び取付コストが嵩む。
この点、本発明によれば、物品収納ボックスを利用して、この物品収納ボックスに形成した平坦面に盗難対策装置を取付けるようにしたので、コストダウンを容易に達成することができる。
【0022】
また、専用のステーで盗難対策装置を水平に保持させようとすると、専用ステーの形状が制約され、専用のステーが高価になる。
この点、本発明では。水平な平坦面を物品収納ボックスに容易に形成することになるため、平坦面形成のためのコストアップを抑えることができる。
【0023】
さらに、物品収納ボックスの外壁面に、盗難対策装置が取付けられている。すなわち、盗難対策装置は、物品収納ボックスの外に配置されているので、収納ボックスの収納容量が減少する心配はない。
この結果、本発明によれば、送受信感度を高めることができ、収納ボックスの収納容量に影響を与えることのない盗難対策装置を備えた鞍乗り型車両が提供される。
【0024】
請求項2に係る発明では、盗難対策装置は、物品収納ボックスの上部外壁面に取付けられている。車両のうち比較的高い位置であって、且つ、送受信の妨げとなる操向ハンドルから離間した位置に盗難対策装置が取付けられているので、送受信感度をより一層向上させることができる。加えて、盗難対策装置は、物品収納ボックスの上部外壁面に接しているので、盗難対策装置を確実に支持させることができる。
【0025】
請求項3に係る発明では、物品収納ボックスの上部外壁面と側部外壁面とが交わる部位に、取付ステーが取付けられている。上部外壁面と側部外壁面とが交わる部位であれば、上部外壁面又は側部外壁面に取付ステーを取付ける場合に較べて、取付ステーの取付部位に側方から手を入れ易くなる。取付ステーの取付部位に容易に手を入れ易くなるので、取付ステーの組付作業性を高めることができる。
【0026】
請求項4に係る発明では、盗難対策装置は、ヘッドパイプの車幅方向の一側方にイグニッションスイッチが配置され、他側方に盗難対策装置が配置される。すなわち、上から見ると、ヘッドパイプを挟んでイグニッションスイッチと盗難対策装置とが見え、衛星からの電波(信号)がイグニッションスイッチに遮られることなく、盗難対策装置に到達する。このため、イグニッションスイッチを設けたにもかかわらず、盗難対策装置の送受信感度が損なわれる心配はない。
【0027】
請求項5に係る発明では、盗難対策装置に接続されるハーネスは、バッテリの下方で、且つ、イグニッションスイッチの側に迂回するように配索されている。ハーネスは、盗難対策装置の周囲、特に、盗難対策装置の上方を通過しないので、盗難対策装置の送受信感度をより一層向上させることができる。
【0028】
請求項6に係る発明では、盗難対策装置が取付けられる上部外壁面は、バッテリの上面と同じ高さに形成されている。このような上部外壁面の上に、盗難対策装置が取付けられる。すなわち、盗難対策装置は、バッテリより上位に配置されるので、盗難対策装置の送受信感度をより一層向上させることができる。
【0029】
請求項7に係る発明では、盗難対策装置は、車両側面視で、インナカバーの上端より車両前方に突出するハーネス接続部を有している。
仮に、ハーネス接続部が車幅中心側へ突出すると、ヘッドパイプに接近する。また、ハーネス接続部が車幅外側へ突出したり車両後方へ突出すると、インナカバーに接近する。ハーネス接続部が、車両前方のフロントカバーに接近するが、このフロントカバーは取外し容易である。
【0030】
フロントカバーを外したときに、ハーネス接続部がインナカバーから車両前方に突出しているので、ハーネス接続部の回りに空間が確保される。このような空間が確保されれば、ハーネスの配索作業、接続作業及び接続確認作業を容易に行うことが可能になる。したがって、ハーネス着脱に係る良好な組立作業性が確保される。
【0031】
請求項8に係る発明では、GPSアンテナは、ハウジングの後部に配置されている。ハウジングの後部であれば、GPSアンテナを上から見たときに、衛星からの電波(信号)がバッテリに遮られることなく、盗難対策装置に到達する。バッテリによってGPSアンテナが遮られる心配はないので、送受信感度を向上させることができる。
【0032】
請求項9に係る発明では、GPSアンテナは、ハウジングの車幅方向外側に配置されている。すなわち、上から見ると、GPSアンテナは、車幅方向中心に設けられているヘッドパイプやこのヘッドパイプの前方に設けられているバッテリから離間した位置に設けられているので、衛星からの電波(信号)は容易にGPSアンテナに到達する。かかる位置にGPSアンテナを配置したので、GPSアンテナの周囲が遮られることなく、送受信感度を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】自動二輪車の前部構造を説明する左側面図である。
【図3】自動二輪車の前部構造を説明する斜視図である。
【図4】自動二輪車の前部構造を説明する正面図である。
【図5】自動二輪車の前部構造を説明する平面図である。
【図6】盗難対策装置の取付構造を説明する分解斜視図である。
【図7】盗難対策装置及び支持ステーを説明する図である。
【図8】盗難対策装置のブロック図である。
【図9】実施例2に係る自動二輪車の前部構造を説明する右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中及び実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0035】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されているように、鞍乗り型車両としての自動二輪車10は、ヘッドパイプ11と、このヘッドパイプ11から斜め後ろ後方へ延ばされた後、後方略水平に延ばされるメインフレーム12と、このメインフレームの後部に設けられるピボット部13と、このピボット部13から後斜め上方に延ばされた後、後方略水平に延ばされるシートレール14と、から車体フレーム15を構成する。ヘッドパイプ11は、車体フレーム15に含まれている。
【0036】
ヘッドパイプ11の内側に、ヘッドパイプ11に対して回動自在にステアリング軸17が挿入され、このステアリング軸17の上端部に操向ハンドル18を設け、ステアリング軸17の下端部にフロントフォーク21を取付け、このフロントフォーク21に前輪22を取付け、メインフレーム12の中間部に燃料タンク23を設け、メインフレーム12の後部にエンジンEを含むパワーユニット24を揺動可能に取付け、このパワーユニット24に後輪25を取付け、パワーユニット24とシートレール13との間にリヤクッション26を介設し、シートレール13に乗員シート27を載せ、この乗員シート27の下にヘルメット等の物品を収納することができるシート下収納部31を配置し、ヘッドパイプ11及びメインフレーム12の一部を車体前部カバー33及びレッグシールド34で囲い、車体前部カバー33に物品収納ボックス32を設け、この物品収納ボックス32に箱状を呈する盗難対策装置36を取付けた。
メインフレーム12の残部は、アンダーカバー38で覆われ、シートレール14は、サイドカバー39及びリヤーカバー41で覆われている。
【0037】
前輪22の上方に、泥よけのためのフロントフェンダ43が設けられ、後輪25の斜め上後方に、泥よけのためのリヤフェンダ44が設けられ、パワーユニット24の上方に、エアクリーナ45が設けられ、車体前部カバー33の上方に、操向ハンドル18を囲うとともにこの操向ハンドル18と一体的に回動するハンドルカバー46が設けられ、このハンドルカバー46に、ヘッドライト47が取付けられている。
【0038】
次に、盗難対策装置及びその周辺部の構成について説明する。
図2に示されているように、車体前部カバー33は、車両の前方からヘッドパイプ11及びフロントフォーク21の一部を覆い車両前面の外観面を構成するフロントカバー51と、車両の後方からヘッドパイプ11及びフロントフォーク21の一部を覆い運転席側に臨む外観面を構成するインナカバー52と、を備えている。
【0039】
ヘッドパイプ11の上部から車両前方にフロントカバー51が取付けられるステーパイプ54が延ばされ、ヘッドパイプ11の上部及び下部から車両前方に上下のステー片55、56が延ばされ、これらの上下のステー片55、56に、バッテリ58を支持するバッテリステー59が取付けられている。
【0040】
バッテリステー59は、底板61と、この底板61から上方に延ばされる背板62と、この背板62の高さ方向中間部から、車両前方に延ばされる左右の側板63L、63R(左側の符号63Lのみ示す。)と、これらの左右の側板63L、63Rを車両前方から覆う前板64と、からなる。上記バッテリステー59によって、ヘッドパイプ11の前方に備えられているバッテリ58は、物品収納ボックス32に保持されている。
【0041】
図3に示されるように、インナカバー52は、ヘッドパイプ11に取付けられている。インナカバー52の外縁部に、複数のボス部66が形成されている。前述したステーパイプ54とバッテリステー59の前端部に形成した保持部68に加えて、インナカバー52に形成した複数のボス部66にフロントカバー(図2、符号51)を取付け可能に構成した。
【0042】
車体前部カバー33の構成部材としてのインナカバー52に、物品収納ボックス32が一体的に設けられ、この物品収納ボックス32には、車両前方へ膨出して形成される膨出部71が設けられ、この膨出部71の内側面(図2、符号72)で車両後方に面し運転席に臨む側に、物品が収納可能となっている。
【0043】
膨出部71の外壁面としての外面73は、インナカバー52の表面から車両略前方に延ばされる上部外壁面としての上面74と、この上面74の前端部から下方に延ばされる側部外壁面としての前面75と、この前面75から上面74と平行に車両略後方に延ばされる下面76と、前記上面74、前面75及び下面76の各左右両端部の間を渡すように設けられる左右の側面77L、77R(図左側の符号77Lのみ示す。)と、からなる。
【0044】
物品収納ボックスの外面73のうちの上部外壁面(上面74)に、略水平となる平坦面81が形成され、この平坦面81に、盗難対策装置36が取付けられている。
なお、本実施例では、上面が平坦面となっているが、物品収納ボックスの外壁面のうちの少なくとも一部が平坦面に形成され、この平坦面に盗難対策装置が取付けられるものであっても差し支えない。
【0045】
物品収納ボックス32は、上面74から下方に延ばされる前面75を備え、この前面75と上面74とが交わる部位82に、盗難対策装置36を物品収納ボックスに装着する取付ステー83が取付けられている。なお、取付ステー83の構造等については後述する。
【0046】
図4及び図5に示されるように、ヘッドパイプ11の車幅方向の一側方としての車幅方向右側に、金属製のイグニッションスイッチ84が備えられ、このイグニッションスイッチ84の斜め下方に、ECU部85が備えられ、車幅方向中心でヘッドパイプ11の前方に、バッテリ58が配置され、このバッテリ58の前方に、ホーン86が配置されている。イグニッションスイッチ84はヘッドパイプ11に取付けられている。
盗難対策装置36は、ヘッドパイプ11の車幅方向の他側方としての車幅方向左側で、且つ、イグニッションスイッチ84と離間した位置に配置されている。加えて、盗難対策装置36は、平面視で、操向ハンドル18の前方に、且つ、操向ハンドル18の初期位置(操向ハンドル18が転舵されていない位置)と重ならないように配置されている。
盗難対策装置36は、車両平面視で、操向ハンドル18の前方で、操向ハンドル18が
転舵されていないときに、操向ハンドル18と重ならない位置に配置されている。
車両の操向ハンドル18は、大抵の場合、転舵されていない位置としての初期位置又は初期位置の近傍に位置する。操向ハンドル18は、初期位置又はその近傍に位置しているので、操向ハンドル18と盗難対策装置36とを離間させることができる。したがって、盗難対策装置36の受信感度を高めることができる。
【0047】
バッテリ58の下方で、且つ、イグニッションスイッチ84が設けられている車幅方向の一側方としての右側に、盗難対策装置36に接続されるハーネス87が迂回するように配索されている。具体的には、ハーネス87は、盗難対策装置36から下方に延ばされ、バッテリ58の左側方を通り、その後、バッテリ58の下方を通って車幅方向右側へ配索されている。
物品収納ボックス32の外壁面としての外面73の構成部位である上部外壁面(上面74)は、バッテリの上面58tと概ね同じ高さに形成されている。
バッテリ58の上面58tには、プラス端子95とマイナス端子96が設けられている。プラス端子95とマイナス端子96は、バッテリ58の左右端部に離間して設けられ、これらのプラス端子95とマイナス端子96から、各々、バッテリハーネス97、98が延びている。
【0048】
図2に戻って、物品収納ボックスの上面74に取付けられている盗難対策装置36は、車両側面視で、インナカバーの上端52a及び物品収納ボックスの上面74の前端より車両前方に突出するハーネス接続部88を有し、このハーネス接続部88に、着脱可能にカプラー89が挿入され、このカプラー89からハーネス87を延ばすようにした。
また、図1において、フロントカバー51に設けられているインナカバー52との合わせ面51sとインナカバー52に設けられているフロントカバー51との合わせ面52sよりも前方にハーネス接続部88が突出している。
【0049】
図6に示されているように、物品収納ボックス32は、上面74から下方に延ばされる前面75を備え、この前面75と上面74とが交わる部位82に、盗難対策装置36を物品収納ボックス32に装着する取付ステー83が取付けられる。
【0050】
詳細には、前面75と上面74とが交わる部位82に、凹部91が形成され、この凹部91にステー締付部92が付設され、このステー締付部92にクリップ93が挿入され、このクリップ93に盗難対策装置36が装着可能な第1突設部101〜第3突設部103を有する取付ステー83が締結部材104を介して取付けられる。
そして、取付ステー83の第1突設部101〜第3突設部103に、弾性部材113を介して盗難対策装置36が装着される。
【0051】
物品収納ボックスの上面74と前面75とが交わる部位82に、取付ステー83が取付けられる。上面74と前面75とが交わる部位82であれば、上面74又は前面75に取付ステー83を取付ける場合に較べて、取付ステー83の取付部位に側方から手を入れ易くなる。取付ステー83の取付部位に容易に手を入れ易くなれば、取付ステー83の組付作業性を高めることができる。
【0052】
次に、取付ステーに突設される第1突設部〜第3突設部へ取付可能にする盗難対策装置の構造について説明する。
図7(a)に盗難対策装置の平面図が示されており、図7(b)に図7(a)の(b)矢視図が示されており、図7(c)に図7(a)の(c)−(c)断面図が示されている。
【0053】
盗難対策装置36の外側を覆うハウジング106は、ハウジング上面107とハウジング下面108とハウジング前面109とハウジング後面110とハウジング左面111Lとハウジング右面111Rとからなる直方体のケース体であり、ハウジング前面109に、ハーネス接続部88が設けられ、これらのハーネス接続部88にカプラー89が接続されている。
【0054】
ハウジング106の周囲は、弾性部材113で縦横に囲われるように止められている。弾性部材83は、ハウジング左面111Lとハウジング下面108とハウジング右面111Rとハウジング上面107とを囲う第1保持部121と、この第1保持部121から車両後方に延設されハウジング上面107とハウジング後面110とハウジング下面108とを囲う第2保持部122と、からなる部材であり、ハウジング左面111Lに沿って第1保持部121に、第1係合穴131を有する凸部123が設けられ、ハウジング右面111Rに沿って第1保持部121に、第2係合穴132を有する凸部123が設けられ、ハウジング後面110に沿って第2保持部122に、第3係合穴133を有する凸部123が設けられている。これらの第1係合穴131、第2係合穴132、第3係合穴133は、各々、第1〜第3突設部(図6、符号101、102、103)に差込まれ係合される。すなわち、弾性部材113は、盗難対策装置36のハウジング106を取付ステー(図6、符号83)に止める部材である。
【0055】
このように、第1係合穴131、第2係合穴132、第3係合穴133を有する弾性部材113で盗難対策装置36のハウジング106を拘束したので、この弾性部材113により車両の振動が吸収され、盗難対策装置36に車両の振動を伝達し難くすることができる。加えて、ハウジング106を取付ステー部材の突設部(図6、符号101、102、103)に確実に固定することができる。
なお、本実施例では、盗難対策装置の取付のための取付ステーを用いたが、取付ステーを省略し、物品収納ボックスの上面に直接取付けるものであっても良い。
【0056】
次に、盗難対策装置の構成について説明する。
図8に示されているように、盗難対策装置36は、複数のGPS衛星から軌道情報を受信することにより車両の現在位置を検出する受信機としてのGPS部(Global Positioning System)141(「全地球測位システム141」とも云う。)と、盗難時に車体に加えられた振動を検出する加速度センサ142と、これらのGPS部141からの位置情報JP、加速度センサ142からの加速度信号SAを受けて盗難対策を指令する制御部143と、この制御部143との交信指令SCに基づいて携帯電話基地局144へ位置情報JPを送信する報知部としての衛星携帯電話通信部145と、制御部143からのエンジン制御信号SECに基づきエンジン(図1、符号E)の点火装置146に点火停止信号SSSを送って点火装置146の作動を停止させる、すなわち、エンジンEを停止させるエンジン制御部148と、制御部143からの警報制御信号SACに基づき警報装置149(ヘッドライト、ウインカ、テールランプなどの灯火器、ホーン)に警報信号SAを送って灯火器、ホーンを作動させる警報発生部151と、GPS部141、制御部143、報知部としての衛星携帯電話通信部145、エンジン制御部148及び警報発生部151へ電力を供給するバッテリ153とからなり、これらのGPS部141及び衛星携帯電話通信部145等に電力を供給するバッテリ153とを1つのハウジング106内に備える。
【0057】
1つのハウジング106内に盗難対策装置36のシステムが収納されているため、車両への組付性を向上させることができる。この場合に、ハウジング106が大型化しても、上記のような盗難対策装置配置構造を採用することで、車両全体の大型化を防止することができる。
【0058】
GPS部141には、衛星から発信された信号を受けるGPSアンテナ154を含み、このGPSアンテナ154で受けた信号をもとにGPS部141にて位置情報を検出する。報知部としての衛星携帯電話通信部145は、受信した車両位置情報を外部へ報知する機能を有し、制御部143は、報知部としての衛星携帯電話通信部145を統合制御するものである。
【0059】
この他、ヘッドライト37やエンジン制御部148など車体に備える電装系統に通信ユニットとしての盗難対策装置36を接続することにより、エンジン停止機能と警報機能とを作動させることができるため、新たな機能部品を配置したり、配線を増やしたりする必要がなく既存の部品を盗難対策装置36の一部として有効に活用することができる。
【0060】
図5に戻って、GPSアンテナ154は、ハウジング106の後部であって、ハウジング106の車幅方向外側に配置されている。
盗難対策装置36は、ボックス状に形成され、ボックスの最も大きな面としての上面107が水平又は水平に近い状態で配置されている。
ここで、盗難対策装置36の最も大きな上面107が略水平となる平坦面とは、例えば、水平面に対して盗難対策装置36の傾斜角度が−20°〜+20°の範囲をいう。
【0061】
以上に述べた鞍乗り型車両の作用を次に述べる。
図2に戻って、物品収納ボックス32の外壁面としての外面73に、盗難対策装置36が取付けられているので、車体前部カバー33と物品収納ボックス32との間に形成される空間Sを有効利用して、盗難対策装置36を配置することができる。このため、物品収納ボックス32の容量に影響を与えることなく、物品収納ボックス32の収納容量が十分に確保される。
【0062】
また、盗難対策装置36は、物品収納ボックス32の上方に配置されており、物品収納ボックス32は、車両前方へ膨出するように形成されているので、物品収納ボックス32の容量を拡大することができる。
【0063】
加えて、盗難対策装置36は、物品収納ボックス32の上方で、且つ、ヘッドパイプ11の上端部近傍に配置されている。車両のうち比較的高い位置に盗難対策装置36が配置可能となるので、所定の送受信感度を確保することができる。
【0064】
詳細には、物品収納ボックス32の上面74に取付けられている盗難対策装置36は、送受信の妨げとなる操向ハンドル18から離間した位置に取付けられているので、送受信感度をより一層向上させることができる。加えて、盗難対策装置36は、物品収納ボックスの上面74に接しているので、盗難対策装置36を確実に支持させることができる。
【0065】
盗難対策装置36が取付けられる上面74は、バッテリの上面58tと概ね同じ高さに形成されている。盗難対策装置36の周囲、特に、盗難対策装置の上方にバッテリ58が配置されていないため、盗難対策装置36の送受信感度をより一層向上させることができる。
【0066】
物品収納ボックス32の外面73の構成要素としての上面74に、平坦面81が形成され、この平坦面81を利用して盗難対策装置36を取付けるようにしたので、別途、物品収納ボックス32に平坦面等を設けることなく、適正な状態で盗難対策装置36が取付可能になる。盗難対策装置36が適正な状態で取付可能となるので、所定の送受信感度を確保することができる。
【0067】
盗難対策装置36は、車両側面視で、インナカバーの上端より車両前方に突出するハーネス接続部88を有している。フロントカバー51を外したときに、ハーネス接続部88がインナカバー52から車両前方に突出しているので、ハーネス87の配索作業、接続作業及び接続確認作業を容易に行うことが可能になる。したがって、良好な組立作業性が確保される。
【0068】
図4を併せて参照して、盗難対策装置36はヘッドパイプ11を挟んでイグニッションスイッチ84とは反対側である車幅方向左側にイグニッションスイッチ84とは離間して配置されている。このため、イグニッションスイッチ84を設けることにより盗難対策装置36の送受信感度が損なわれる心配がない。
【0069】
図5に戻って、GPSアンテナ154は、ハウジング106の後部に配置されているので、GPSアンテナ154をヘッドパイプ11やバッテリ58から離間させて配置することができる。GPSアンテナ154の周囲が遮られる心配はないので、送受信感度を向上させることができる。
【0070】
加えて、GPSアンテナ154は、ハウジング106の車幅方向外側に配置されているので、GPSアンテナ154をヘッドパイプ11やバッテリ58から一層離間させて配置することができる。GPSアンテナ154の周囲が遮られる心配はないので、送受信感度を一層向上させることができる。
【0071】
図4を併せて参照して、盗難対策装置36に接続されるハーネス87は、バッテリ58の下方で、且つ、イグニッションスイッチ84の側に迂回するように配索されている。ハーネス87は、盗難対策装置36の周囲、特に、盗難対策装置36の上方を通ることはないので、盗難対策装置36の送受信感度をより一層向上させることができる。
【実施例2】
【0072】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図9に示されているように、物品収納ボックス32は、車両幅方向右側で、且つ、イグニッションスイッチ84が設けられている側に配置されている。この物品収納ボックス32は、物品収納ボックス32の下部外壁面としての下面76に取付けられている。その他、実施例1と大きく変わるところはなく説明を省略する。
【0073】
上記構成によれば、イグニッションスイッチ84が設けられている車幅方向右側に、GPSアンテナを含む盗難対策装置36を配置する場合であっても、遮蔽物としてのイグニッションスイッチとの距離を十分に確保することができ、盗難対策装置36の送受信感度をより向上させることができる。
【0074】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、鞍乗り型3輪車(3輪バギー)や鞍乗り型4輪車(4輪バギー)にも適用可能であり、一般の鞍乗り型車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、盗難対策装置が備えられている自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0076】
10…鞍乗り型車両(自動二輪車)、11…ヘッドパイプ、15…車体フレーム、17…ステアリング軸、18…操向ハンドル、32…物品収納ボックス、33…車体前部カバー、36…盗難対策装置、51…フロントカバー、52…インナカバー、58…バッテリ、74…上部外壁面、75…側部外壁面、81…平坦面、83…取付ステー、84…イグニッションスイッチ、87…ハーネス、88…ハーネス接続部、106…ハウジング、141…GPS部、143…制御部、145…報知部、154…GPSアンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(15)と、この車体フレーム(15)に含まれるヘッドパイプ(11)と、このヘッドパイプ(11)に回動自在に挿嵌されるステアリング軸(17)と、このステアリング軸(17)の上端部に設けられる操向ハンドル(18)と、車両の位置情報を検出すると共にこの位置情報を無線送信する盗難対策装置(36)と、を備える鞍乗り型車両において、
前記ヘッドパイプ(11)の周囲に、このヘッドパイプ(11)を覆う車体前部カバー(33)が備えられ、この車体前部カバー(33)に、車両前方へ膨出して形成される物品収納ボックス(32)が設けられ、この物品収納ボックス(32)の外壁面のうちの少なくとも一部に、略水平となる平坦面(81)が形成され、この平坦面(81)に、前記盗難対策装置(36)が取付けられていることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記操向ハンドル(18)は、前記収納ボックス(32)の上方に離間して配置され、 前記盗難対策装置(36)は、前記物品収納ボックス(32)の外壁面のうちの上部外壁面(74)に取付けられていることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記物品収納ボックス(32)は、前記上部外壁面(74)から下方に延ばされる側部外壁面(75)を備え、この側部外壁面(75)と前記上部外壁面(74)とが交わる部位に、前記盗難対策装置(36)を前記物品収納ボックス(32)に装着する取付ステー(83)が取付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記ヘッドパイプ(11)の車幅方向の一側方に、イグニッションスイッチ(84)が備えられ、前記ヘッドパイプ(11)の車幅方向の他側方で、且つ、前記イグニッションスイッチ(84)と離間した位置に、前記盗難対策装置(36)が配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記物品収納ボックス(32)及び前記ヘッドパイプ(11)の前方に、バッテリ(58)が備えられ、このバッテリ(58)の下方で、且つ前記イグニッションスイッチ(84)が設けられている車幅方向の一側方に、前記盗難対策装置(36)に接続されるハーネス(87)が迂回するように配索されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記物品収納ボックス(32)及び前記ヘッドパイプ(11)の前方に、バッテリ(58)が備えられ、このバッテリ(58)の上面と同じ高さに、前記上部外壁面(74)が形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記車体前部カバー(33)は、車両の前方から前記ヘッドパイプ(11)を覆うフロントカバー(51)と、車両の後方から前記ヘッドパイプ(11)を覆うインナカバー(52)と、を含み、
前記物品収納ボックス(32)の前記上部外壁面(74)に取付けられている前記盗難対策装置(36)は、車両側面視で、前記インナカバー(52)の上端より車両前方に突出するハーネス接続部(88)を有し、このハーネス接続部(88)からハーネス(87)を延ばすようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の鞍乗り型車両。
【請求項8】
前記盗難対策装置(36)は、衛星から発信された信号を受けるGPSアンテナ(154)と、このGPSアンテナ(154)で受けた信号をもとに位置情報を検出するGPS部(141)と、受信した車両位置情報を外部へ報知する報知部(145)と、前記GPS部(141)と前記報知部(145)を統合制御する制御部(143)と、を一体のハウジング(106)内に備えるものであって、前記GPSアンテナ(154)は、前記ハウジング(106)の後部に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の鞍乗り型車両。
【請求項9】
前記GPSアンテナ(154)は、前記ハウジング(106)の車幅方向外側に配置されていることを特徴とする請求項8記載の鞍乗り型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−183999(P2011−183999A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53805(P2010−53805)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】