説明

鞍乗型車両のキャニスタ配置構造

【課題】キャニスタがエアクリーナの後方のスペースに配置される構成において、キャニスタを周囲の外的要因から効果的に保護することができる鞍乗型車両のキャニスタ配置構造を提供する。
【解決手段】サブフレーム8Rの斜め後下方であって、シートフレーム5Rの下方に配置される後輪WRの前斜め上方に、サブフレーム8Rに沿って延びて後輪WRを前方から覆う前部リヤフェンダ29Fを配置し、キャニスタ55を、エアクリーナ45の後方に位置する左右のサブフレーム8Rの間で、これらサブフレーム8Rに沿うように配置する。そしてキャニスタ55がエアクリーナ45によって前方から覆われるとともに、前部リヤフェンダ29Fによって後方から覆われるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のキャニスタ配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の技術として、特許文献1に開示される構造が知られている。
特許文献1に開示される自動二輪車では、車体フレームが、前部にヘッドパイプを有すると共に後部にピボットプレートを有するメインフレームと、このメインフレームの前部から下げたダウンチューブと、メインフレームの後部からタンデムシートを支えるために後方へ延ばされるシートレールと、このシートレールの撓みを防止するためにシートレールの途中からピボットプレートへ前下がり斜めに延ばされるサブフレームと、で構成されている。そして、この自動二輪車では、サブフレームに後下方に延びるステー(フレーム)が取付けられ、このステーに同乗者が脚を載せるピリオンステップが取付けられている。そして、この自動二輪車では、上記ピリオンステップ取付けのためのステーよりも車幅方向内側であって、上記シートレールよりも車幅方向外側の位置に、キャニスタが配置され、このキャニスタが上記ステーに取付けられる構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−1823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に係る構造では、キャニスタがエアクリーナの後方のスペースに配置されているが、その前方、及び後方を覆う部材はない。このため、車両前方及び後方からの外的要因からキャニスタを保護することが求められる。
【0005】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、キャニスタがエアクリーナの後方のスペースに配置される構成において、キャニスタを周囲の外的要因から効果的に保護することができる鞍乗型車両のキャニスタ配置構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明は以下の手段を提供する。
請求項1に記載の発明は、ヘッドパイプ(3)と、該ヘッドパイプ(3)から後方へ延出するメインフレーム(4)と、前記メインフレーム(4)の後部から後斜め下方へ延出する左右一対のセンタフレーム(7L,7R)と、前記メインフレーム(4)の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム(5L,5R)と、前方から後斜め上方に延出し、前記センタフレーム(7L,7R)及び前記シートフレーム(5L,5R)を連結する左右一対のサブフレーム(8L,8R)と、を備える車体フレーム(2)と、クランク軸を収容するクランクケース(25)と、該クランクケース(25)の前部に設けられるシリンダ部(26)と、該シリンダ部(26)に設けられるシリンダヘッド(27)と、を備え、前記車体フレーム(2)の前記メインフレーム(4)の下方に配置されるエンジン(12)と、前記エンジン(12)の上方に配置される燃料タンク(10)と、前記燃料タンク(10)の内部で生じた蒸発燃料を、チャージ管(65)を通して吸着するキャニスタ(55)を有し、該キャニスタ(55)で吸着した燃料を、該キャニスタ(55)からパージ管(64)を通して前記エンジン(12)の吸気系に供給する蒸発燃料処理装置と、前記センタフレーム(7L,7R)と、前記シートフレーム(5L,5R)と、前記サブフレーム(8L,8R)と、で囲まれる領域に配置されるエアクリーナ(45)と、を備える鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記サブフレーム(8L,8R)の斜め後下方であって、前記シートフレーム(5L,5R)の下方に配置される後輪(WR)の前斜め上方に、前記サブフレーム(8L,8R)に沿って延びて前記後輪(WR)を前方から覆うリヤフェンダ(29F)が配置され、前記キャニスタ(55)は、前記エアクリーナ(45)の後方に位置する左右の前記サブフレーム(8L,8R)の間で、該サブフレーム(8L,8R)に沿って配置され、前記エアクリーナ(45)によって前方から覆われるとともに、前記リヤフェンダ(29F)によって後方から覆われる、ことを特徴とする鞍乗型車両のキャニスタ配置構造を提供する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記キャニスタ(55)の少なくとも後部が、前記リヤフェンダ(29F)の前部に形成される凹部(75)に収容される、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記キャニスタ(55)の少なくとも前部が、前記エアクリーナ(45)の後部に形成される凹部(76)に収容される、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記キャニスタ(55)は、筒状部(56)と、該筒状部(56)の両端を覆う端部(57,58)と、を備え、前記キャニスタ(55)の前記端部(57,58)のうちの一方側に、前記チャージ管(65)及び前記パージ管(64)が接続され、前記エアクリーナ(45)又は前記リヤフェンダ(29F)に形成される前記凹部は、前記筒状部(56)に沿って形成される、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記センタフレーム(7L,7R)及び前記サブフレーム(8L,8R)を側方から覆うカバー部材(38L,38R)が設けられ、前記チャージ管(65)及び前記パージ管(64)は、前記カバー部材(38L,38R)の内側において左右の前記シートフレーム(5L,5R)の間を通るように配策される、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記キャニスタ(55)の前記端部(57,58)のうちの他方側に、該キャニスタ(55)を大気に連通させる新気導入管(68)が接続され、該新気導入管(68)は、前記カバー部材(38L,38R)の内側に配索されて、該カバー部材(38L,38R)の内側で開放する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記パージ管(64)は、逆止弁(66)を通して前記吸気系に接続され、該逆止弁(66)は、左右の前記シートフレーム(5L,5R)の間に配置される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記パージ管(64)は、前記吸気系の車幅方向における一方側から該吸気系に接続されるとともに、前記一方側に対する他方側に位置する前記シートフレーム(5L,5R)に沿って配索され、前記逆止弁(66)は、前記パージ管(64)が接続される接続部(66A,66B)を車幅方向に向けるようにして配置される、ことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記パージ管(64)は、前記吸気系の車幅方向における一方側から該吸気系に接続されるとともに、前記一方側に位置する前記シートフレーム(5L,5R)に沿って配索され、前記逆止弁(66)は、前記パージ管(64)が接続される接続部(66A,66B)を車両前後方向に向けるようにして配置される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、キャニスタが、エアクリーナにより前方から覆われるとともに、リヤフェンダにより後方から覆われることで、エアクリーナ及びリヤフェンダによりキャニスタの前後を保護することができる。また、キャニスタがエアクリーナの後方に位置する左右のサブフレームの間で、サブフレームに沿って配置されることで、キャニスタの左右をサブフレームによって保護することもできる。したがって、キャニスタをエアクリーナ後方のスペースに配置しながら、キャニスタの全周を効果的に保護することができる。
請求項2に記載の発明によれば、キャニスタの後部がリヤフェンダに形成される凹部に収容されることで、キャニスタ及びリヤフェンダが車両前後方向にかさ張るのを防ぐことができ、またキャニスタの後部を効果的に保護することができる。
請求項3に記載の発明によれば、キャニスタの前部がエアクリーナの外壁に形成される凹部に収容されることで、エアクリーナ及びキャニスタが車両前後方向にかさ張るのを防ぐことができる。また、キャニスタの前部を効果的に保護することができる。
請求項4に記載の発明によれば、凹部が筒状部に沿って形成されることで、配管の配索を容易なものにできる。また、キャニスタの筒状部廻りを効果的に保護することができる。
請求項5に記載の発明によれば、側面視でチャージ管及びパージ管が見えにくくなり、外観性を向上できる。また、チャージ管及びパージ管を左右のシートフレームで保護できる。
請求項6に記載の発明によれば、新気導入管が車体カバーの内側で開放するので、比較的汚れの少ない車体カバー内の空気をキャニスタ内に取り込むことができる。
請求項7に記載の発明によれば、側面視で逆止弁が見えにくくなり、外観性を向上できる。また、逆止弁を左右のシートフレームで保護できる。
請求項8に記載の発明によれば、逆止弁のパージ管との接続部を車幅方向に向けることで逆止弁が車両前後方向に広範に配置されるのを防ぎ、シートフレームの間に逆止弁をコンパクトに配置できる。さらに、パージ管が接続される吸気系の車幅方向における一方側に対する他方側に位置するシートフレームに沿ってパージ管を配索する場合において、逆止弁のパージ管との接続部を車幅方向に向けることで、吸気系及び逆止弁の接続に際してのパージ管の屈曲を少なくしやすくなるので、パージ管の配索をコンパクトにすることができる。
請求項9に記載の発明によれば、逆止弁のパージ管との接続部を車両前後方向に向けることで逆止弁が車幅方向に広範に配置されるのを防ぎ、シートフレームの間に逆止弁をコンパクトに配置できる。さらに、パージ管が接続される吸気系の車幅方向における一方側に位置するシートフレームに沿ってパージ管を配索する場合において、逆止弁のパージ管との接続部を車両前後方向に向けることで、吸気系及び逆止弁との接続に際してのパージ管の屈曲を少なくしやすくなるので、パージ管の配索をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る構造を備える自動二輪車の右側面図である。
【図2】同自動二輪車の要部右側面図である。
【図3】同自動二輪車の要部を左後方から見た斜視図である。
【図4】同自動二輪車の要部右側面図であり、一部部材を取り外した状態の図である。
【図5】同自動二輪車の要部を左後方から見た斜視図であり、一部部材を取り外した状態の図である。
【図6】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図7】同自動二輪車の要部上面図である。
【図8】同自動二輪車の変形例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明に用いる図面において、矢印FRは車両前方を、矢印UPは車両上方を、矢印LHは車両左方をそれぞれ示している。
【0018】
図1に示す自動二輪車1の車体フレーム2は、前端を構成するヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後斜め下方へ延出するメインフレーム4と、メインフレーム4の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム5L,5Rと、メインフレーム4の前部から下方へ延出した後、後方へ延出する左右一対のダウンフレーム6L,6Rと、メインフレーム4の後部から後斜め下方へ延出した後、下方へ延出することでダウンフレーム6L,6Rの後部にそれぞれ連結する左右一対のセンタフレーム7L,7Rと、前方から後斜め上方に延出し、センタフレーム7L,7R及びシートフレーム5L,5Rを連結する左右一対のサブフレーム8L,8Rと、を備えている。
【0019】
シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R、及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる領域は、側面視で三角形状を呈している。また、ダウンフレーム6L,6Rの上部の間には、これらダウンフレーム6L,6Rを連結するとともに、メインフレーム4の下部と連結するクロスパイプ6Cが設けられている。なお、上記の部材のうち図中に表れない部材(例えば、シートフレーム5L等)は、説明の便宜上、図中に括弧書きで符合を示している。以下の説明でも、図中に表れない部材は同様に取り扱っている。
【0020】
ヘッドパイプ3には、下部に前輪WFを支持するフロントフォーク9が回転自在に取付けられ、メインフレーム4には、燃料タンク10が取付けられている。センタフレーム7L,7Rの下部には、左右一対のピボットプレート11L,11Rが取付けられ、このピボットプレート11L,11Rには、エンジン12及び変速機13からなるパワーユニット14が支持されるとともに、スイングアーム15が上下スイング自在に支持されている。また、シートフレーム5L,5Rには、シート16が支持されている。
【0021】
フロントフォーク9は、左右一対のフォーク単体18L,18Rをトップブリッジ19及びこのトップブリッジ19の下方に配置したボトムブリッジ20で連結したものであり、トップブリッジ19には、バーハンドル21が取付けられている。トップブリッジ19及びボトムブリッジ20の前方には、フロントカウル24が支持されている。また、ダウンフレーム6L,6Rには、エンジン12を前方から保護する矩形の枠体であるエンジンガード部材22が固定されている。
【0022】
エンジン12は、クランク軸を収容するクランクケース25と、クランクケース25の前部に設けられるシリンダ部26と、シリンダ部26に設けられるシリンダヘッド27と、を備え、メインフレーム4の下方に位置している。シリンダ部26の内部には、ピストンが摺動可能に収容されている。シリンダ部26は、そのシリンダ軸線C1の延長線が少なくとも前輪WFと交差する、すなわち前輪WFを指向して略水平となるようにクランクケース25に取付けられている。
【0023】
燃料タンク10の下方には、収納ボックス33が配置され、収納ボックス33は、メインフレーム4と、エンジン12のシリンダ部26と、の間に位置している。燃料タンク10の後方に位置するシート16は、シートフレーム5L,5Rに沿って前後方向に延在し、シート16の後部両端部の下方には、左右一対のリヤカバー28L,28Rが配置されている。また、シートフレーム5L,5Rの後部には、リヤカバー28L,28Rの間から後斜め下方に延びる後部リヤフェンダ29Rが取付けられている。
【0024】
シート16の後部には同乗者が着座可能であり、シート16の下方には、同乗者が足を載せるための左右一対の後部ステップ30L,30Rが配置されている。後部ステップ30L,30Rは、サブフレーム8L,8Rから後斜め下方に延出した左右一対のステップフレーム31L,31Rの下端部に取付けられている。また、ステップフレーム31L,31Rの下端部は、ピボットプレート11L,11Rから後方に延びる左右一対のサポートフレーム32L,32Rの後端部に接続され補強されている。
【0025】
スイングアーム15は、左右一対のアーム部材34L,34Rで構成され、後端部に後輪WRを回転可能に支持している。また、アーム部材34L,34Rの後端部には、左右一対のリヤクッションユニット36L,36Rのそれぞれの下端が取付けられ、これらリヤクッションユニット36L,36Rの上端は、シートフレーム5L,5Rにそれぞれ固定されている。
【0026】
エンジン12のシリンダヘッド27には、吸気装置40及び排気装置41が接続されており、吸気系である吸気装置40は、シリンダヘッド27の上面に吸気管42を介して接続した燃料供給装置であるキャブレタ43と、このキャブレタ43にコネクティングチューブ44を介して接続したエアクリーナ45と、から構成されている。吸気管42は側面視で、シリンダヘッド27の上面に接続されて後方へ向けて延びている。なお、キャブレタ43は、燃料噴射装置用のスロットルボディであっても良いことは言うまでもない。
【0027】
また、排気装置41は、シリンダヘッド27の下面に接続された排気管46と、この排気管46の後端に取付けたマフラ47と、から構成されている。
【0028】
上記エアクリーナ45は、樹脂材料から形成された筐体であるエアクリーナケース48内にエレメント(不図示)を収容してなるものであって、シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる側面視で三角形状の領域に配置されている。エアクリーナ45は、メインフレーム4の後部、シートフレーム5L,5Rの前部等に、図示しないブラケットを介して取付けられている。また、このエアクリーナ45は、左右両側を左右一対のセンタカバー38L,38Rで覆われている。これらセンタカバー38L,38Rは、側面視で台形状に形成されており、シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる領域に沿うようにして、これら各フレームを覆っている。
【0029】
上記キャブレタ43は、キャニスタ55と連通しており、図2〜図5を参照し、本実施形態においてキャニスタ55は、エアクリーナ45の後方(厳密には、後斜め下方)に位置する左右のサブフレーム8L,8Rの間で、これらサブフレーム8L,8Rに沿って配置されている。ここで、サブフレーム8L,8Rの斜め後下方であって、シートフレーム5L,5Rの下方に配置される後輪WRの前斜め上方には、サブフレーム8L,8Rに沿って延びて後輪WRを前方から覆う前部リヤフェンダ29Fが配置されており、キャニスタ55は、エアクリーナ45によって前方から覆われるとともに、前部リヤフェンダ29Fによって後方から覆われている。さらに、キャニスタ55はその両側方をサブフレーム8L,8Rによって覆われる状態になっている。
【0030】
キャニスタ55は円筒状を呈し、その長手方向、すなわち、その軸線C2をサブフレーム8L,8Rに沿わせた状態で、リヤフェンダ29Fに支持されている。キャニスタ55は、燃料タンク10に連通し、燃料タンク10から導き出された蒸発燃料を吸着剤で吸着し、当該吸着剤に吸着した燃料を、吸気系を構成するキャブレタ43に供給する。
【0031】
図5に良く示すように、キャニスタ55は、吸着材を収容した筒状部56と、筒状部56の上端部を覆う上端ガード部57と、筒状部の下端部を覆う下端ガード部58と、を備え、上端ガード部57は車両の後斜め上方に向けられ、下端ガード部58は車両の前斜め下方に向けられている。ここで、図6に示すように、前部リヤフェンダ29Fの前部には、後方(厳密には、後斜め下方)にへこむ凹部75が形成され、この凹部75はサブフレーム8L,8Rに沿って長尺に形成され、キャニスタ55の筒状部56の後部を収容し、覆っている。
【0032】
前部リヤフェンダ29Fの凹部75におけるキャニスタ55の左右には、キャニスタ55を支持するための左右一対の支持ステー部61,61が一体形成され、支持ステー部61,61は前方に向けて突出し、先端部分でキャニスタ55を支持する。キャニスタ55の筒状部56には、弾性部材(ラバー部材)からなる筒状のケース62が嵌め入れられ、このケース62には、キャニスタ55の径方向の外側に突出する係合片63,63が径方向に対向して一対形成されている。そしてキャニスタ55は、係合片63,63に支持ステー部61,61の先端部分が挿入されることで、前部リヤフェンダ29Fに支持されている。
【0033】
以下、キャニスタ55の配管について説明する。図2〜図5、及び図7を併せて参照し、キャニスタ55の上端ガード部57には、パージ管64と、チャージ管65と、が接続され、キャニスタ55は、パージ管64によりキャブレタ43に接続され、チャージ管65により燃料タンク10に接続されている。パージ管64及びチャージ管65は、センタカバー38L,38Rの内側において左右のシートフレーム5L,5Rの間を通るように配策されている。
【0034】
パージ管64は、キャニスタ55から上方に引き出されてシートフレーム5L,5Rの間で前方に延ばされ、シートフレーム5L,5Rの前部上方で左のシートフレーム5Lの外側を通るように湾曲された後、下方に延ばされてキャブレタ43に接続されている。ここで、図5に示すように、パージ管64は、その下流側の端部をキャブレタ43の左側の部位に接続する一方で、シートフレーム5L,5R間では、右のシートフレーム5Rに近接して、このシートフレーム5Rに沿って配索されている。
【0035】
パージ管64は、経路途中に配された逆止弁66を通してキャブレタ43に接続されており、この逆止弁66は、シートフレーム5L,5Rの前部の間に配置されている。逆止弁66は、パージ管64の管内の圧力に応じて、キャブレタ43側へ向かう蒸発燃料の流れを許容すべく開放する一方弁であり、図7に示すように、パージ管64が接続される上流側接続部66A及び下流側接続部66Bを車幅方向に向けるように配置されている。なお、逆止弁66は図示しないブラケットによってシートフレーム5L,5Rに固定されている。
【0036】
また、チャージ管65は、キャニスタ55から上方に引き出されてシートフレーム5L,5Rの間で前方に延ばされ、燃料タンク10の内部に進入する。チャージ管65は、燃料タンク10の内部において上方に配された気液分離部67に接続され、気液分離部67は、例えばシール部材を備えて液体の燃料がチャージ管65に供給されないように構成されている。
【0037】
一方で、キャニスタ55の下端ガード部58には、キャニスタ55を大気に連通させる新気導入管68と、キャニスタ55内の不要物を排出するためのドレイン管69と、が接続されている。新気導入管68は、キャニスタ55から上方に引き出され、センタカバー38R内に挿入され、センタカバー38L内で開放している。また、ドレイン管69は、キャニスタ55から下方に引き出され、その下端を下方に向けて開放している。
【0038】
以上に説明したように、この自動二輪車1は、サブフレーム8L,8Rの斜め後下方であって、シートフレーム5L,5Rの下方に配置される後輪WRの前斜め上方に、サブフレーム8L,8Rに沿って延びて後輪WRを前方から覆う前部リヤフェンダ29Fが配置され、キャニスタ55が、エアクリーナ45の後方に位置する左右のサブフレーム8L,8Rの間で、これらサブフレーム8L,8Rに沿って配置され、エアクリーナ45によって前方から覆われるとともに、前部リヤフェンダ29Fによって後方から覆われる構造を有している。
【0039】
このような構造では、エアクリーナ45及び前部リヤフェンダ29Fによりキャニスタ55の前後を保護することができ、また、キャニスタ55がエアクリーナ45の後方に位置する左右のサブフレーム8L,8Rの間で、サブフレーム8L,8Rに沿って配置されることで、キャニスタ55の左右をサブフレームに8L,8Rよって保護することができる。したがって、キャニスタ55をエアクリーナ45後方のスペースに配置しながら、キャニスタ55の全周を効果的に保護することができる。
【0040】
また、この自動二輪車1は、キャニスタ55の後部が、リヤフェンダ29Fの前部に形成される凹部75に収容される構造を有する。この構造では、キャニスタ55及び前部リヤフェンダ29Fが車両前後方向にかさ張るのを防ぐことができ、またキャニスタ55の後部を効果的に保護することができる。
【0041】
また、この自動二輪車1では、凹部75が、キャニスタ55の筒状部56に沿って形成されるが、この場合は、配管が接続する端部(上端ガード部57及び下端ガード部58)以外の部位のみが凹部75に収容され、当該端部は凹部75に覆われないようにすることができるため、上記管の配索を容易なものにできる。また、キャニスタ55の筒状部56廻りを効果的に保護することができる。
【0042】
また、この自動二輪車1は、センタフレーム7L,7R及びサブフレーム8L,8Rを側方から覆うセンタカバー38L,38Rが設けられ、チャージ管65及びパージ管64が、センタカバー38L,38Rの内側において左右のシートフレーム5L,5Rの間を通るように配策される構造を有する。この構造では、側面視でチャージ管65及びパージ管64が見えにくくなり、外観性を向上できる。なお、本実施形態では、チャージ管65及びパージ管64の大部分がシートフレーム5L,5Rの間に配置しているわけではないが、チャージ管65及びパージ管64の大部分をシートフレーム5L,5Rの間に配置すれば、外観性の向上に加え保護性も良好になる。
【0043】
また、この自動二輪車1は、キャニスタ55の下端ガード部58に、キャニスタ55を大気に連通させる新気導入管68が接続され、新気導入管68が、センタカバー38L,38Rの内側に配索されて、センタカバー38L,38Rの内側で開放する構造を有する。この構造では、新気導入管68がセンタカバー38L,38Rの内側で開放するので、比較的汚れの少ないセンタカバー38L,38内の空気をキャニスタ55内に取り込むことができる。
【0044】
また、この自動二輪車1は、パージ管64は、逆止弁66を通してキャブレタ43に接続され、逆止弁66が、左右のシートフレーム5L,5Rの間に配置される構造を有するが、この構造では、側面視で逆止弁66が見えにくくなり、外観性を向上できる。なお、本実施形態では、完全に逆止弁66が側面視でシートフレーム5L,5Rと重なっているわけではないが、逆止弁66の大部分を側面視でシートフレーム5L,5Rと重ねるようにすれば、外観性の向上に加え保護性も良好になる。
【0045】
さらに、この自動二輪車1は、パージ管64が、キャブレタ43の左側の部位に接続されるとともに、右側に位置するシートフレーム5Rに沿って配索され、逆止弁66が、パージ管64が接続される接続部(66A,66B)を車幅方向に向けるようにして配置される構造を有する。
【0046】
この構造では、逆止弁66のパージ管64との接続部を車幅方向に向けることで逆止弁66が車両前後方向に広範に配置されるのを防ぎ、シートフレーム5L,5Rの間に逆止弁66をコンパクトに配置できる。さらに、パージ管64が接続されるキャブレタ43の左側の部位に対して、右側に位置するシートフレーム5Rに沿ってパージ管64を配索する場合において、逆止弁66のパージ管64との接続部を車幅方向に向けることで、キャブレタ43及び逆止弁66の接続に際してのパージ管64の屈曲を少なくしやすくなるので、パージ管64の配索をコンパクトにすることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0048】
例えば、図8に示すように、キャニスタ55の前部が、エアクリーナ45の後部に形成される凹部76に収容される構成であってもよい。なお、この例では、エアクリーナ45及び前部リヤフェンダ29Fの前部に凹部を設けているが、エアクリーナ45に凹部76を設けた場合に、前部リヤフェンダ29Fに凹部75を設けなくてもよい。また、支持ステー61を前部リヤフェンダ29Fでなく、エアクリーナ45から突出形成してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、パージ管64が、キャブレタ43の左側の部位に接続され、パージ管64が右のシートフレーム5Rに沿って配索される構成を説明したが、図7に二点鎖線で示すように、左側に位置するシートフレーム5Lに沿ってパージ管64を配索する場合には、逆止弁66が、パージ管64が接続される接続部(66A,66B)を車両前後方向に向けるようにして配置される構造とすることが好ましい。この場合は、逆止弁66が車幅方向に広範に配置されるのを防ぎ、シートフレーム5L,5Rの間に逆止弁66をコンパクトに配置できる。また、パージ管64が接続されるキャブレタ43の左側に対して、同位置に位置するシートフレーム5Rに沿ってパージ管64を配索する場合において、逆止弁66のパージ管64との接続部を車両前後方向に向けることで、キャブレタ43及び逆止弁66との接続に際してのパージ管64の屈曲を少なくしやすくなるので、パージ管64の配索をコンパクトにすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
2 車体フレーム
4 メインフレーム
5L,5R シートフレーム
6L,6R ダウンフレーム
7L,7R センタフレーム
8L,8R サブフレーム
10 燃料タンク
12 エンジン
25 クランクケース
26 シリンダ部
27 シリンダヘッド
29F 前部リヤフェンダ(リヤフェンダ)
38L,38R センタカバー
45 エアクリーナ
55 キャニスタ
56 筒状部
57 上端ガード部
58 下端ガード部
64 パージ管
65 チャージ管
66 逆止弁
66A 上流側接続部
66B 下流側接続部
68 新気導入管
69 ドレイン管
75 凹部
WR 後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(3)と、該ヘッドパイプ(3)から後方へ延出するメインフレーム(4)と、前記メインフレーム(4)の後部から後斜め下方へ延出する左右一対のセンタフレーム(7L,7R)と、前記メインフレーム(4)の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム(5L,5R)と、前方から後斜め上方に延出し、前記センタフレーム(7L,7R)及び前記シートフレーム(5L,5R)を連結する左右一対のサブフレーム(8L,8R)と、を備える車体フレーム(2)と、
クランク軸を収容するクランクケース(25)と、該クランクケース(25)の前部に設けられるシリンダ部(26)と、該シリンダ部(26)に設けられるシリンダヘッド(27)と、を備え、前記車体フレーム(2)の前記メインフレーム(4)の下方に配置されるエンジン(12)と、
前記エンジン(12)の上方に配置される燃料タンク(10)と、
前記燃料タンク(10)の内部で生じた蒸発燃料を、チャージ管(65)を通して吸着するキャニスタ(55)を有し、該キャニスタ(55)で吸着した燃料を、該キャニスタ(55)からパージ管(64)を通して前記エンジン(12)の吸気系に供給する蒸発燃料処理装置と、
前記センタフレーム(7L,7R)と、前記シートフレーム(5L,5R)と、前記サブフレーム(8L,8R)と、で囲まれる領域に配置されるエアクリーナ(45)と、を備える鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、
前記サブフレーム(8L,8R)の斜め後下方であって、前記シートフレーム(5L,5R)の下方に配置される後輪(WR)の前斜め上方に、前記サブフレーム(8L,8R)に沿って延びて前記後輪(WR)を前方から覆うリヤフェンダ(29F)が配置され、
前記キャニスタ(55)は、前記エアクリーナ(45)の後方に位置する左右の前記サブフレーム(8L,8R)の間で、該サブフレーム(8L,8R)に沿って配置され、前記エアクリーナ(45)によって前方から覆われるとともに、前記リヤフェンダ(29F)によって後方から覆われる、
ことを特徴とする鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項2】
前記キャニスタ(55)の少なくとも後部が、前記リヤフェンダ(29F)の前部に形成される凹部(75)に収容される、
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項3】
前記キャニスタ(55)の少なくとも前部が、前記エアクリーナ(45)の後部に形成される凹部(76)に収容される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項4】
前記キャニスタ(55)は、筒状部(56)と、該筒状部(56)の両端を覆う端部(57,58)と、を備え、
前記キャニスタ(55)の前記端部(57,58)のうちの一方側に、前記チャージ管(65)及び前記パージ管(64)が接続され、
前記エアクリーナ(45)又は前記リヤフェンダ(29F)に形成される前記凹部は、前記筒状部(56)に沿って形成される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項5】
前記センタフレーム(7L,7R)及び前記サブフレーム(8L,8R)を側方から覆うカバー部材(38L,38R)が設けられ、
前記チャージ管(65)及び前記パージ管(64)は、前記カバー部材(38L,38R)の内側において左右の前記シートフレーム(5L,5R)の間を通るように配策される、
ことを特徴とする請求項4に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項6】
前記キャニスタ(55)の前記端部(57,58)のうちの他方側に、該キャニスタ(55)を大気に連通させる新気導入管(68)が接続され、
該新気導入管(68)は、前記カバー部材(38L,38R)の内側に配索されて、該カバー部材(38L,38R)の内側で開放する、
ことを特徴とする請求項5に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項7】
前記パージ管(64)は、逆止弁(66)を通して前記吸気系に接続され、
該逆止弁(66)は、左右の前記シートフレーム(5L,5R)の間に配置される、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項8】
前記パージ管(64)は、前記吸気系の車幅方向における一方側から該吸気系に接続されるとともに、前記一方側に対する他方側に位置する前記シートフレーム(5L,5R)に沿って配索され、
前記逆止弁(66)は、前記パージ管(64)が接続される接続部(66A,66B)を車幅方向に向けるようにして配置される、
ことを特徴とする請求項7に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項9】
前記パージ管(64)は、前記吸気系の車幅方向における一方側から該吸気系に接続されるとともに、前記一方側に位置する前記シートフレーム(5L,5R)に沿って配索され、
前記逆止弁(66)は、前記パージ管(64)が接続される接続部(66A,66B)を車両前後方向に向けるようにして配置される、
ことを特徴とする請求項7に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−67274(P2013−67274A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207519(P2011−207519)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】