説明

鞍乗型車両のパワーユニット

【課題】変速機をコンパクトに配置することができる鞍乗型車両のパワーユニットを提供する。
【解決手段】2本の軸51,52上に互いに逆向きに配置されて回転する1次コーン61及び2次コーン62と、1次コーン61及び2次コーン62に摩擦接触して、2次コーン62を囲繞するリング部材63と、を有し、リング部材63を移動させてエンジンEの出力を1次コーン61から2次コーン62に伝達比を変化させながら伝達する変速機TMを備え、1次コーン61及び2次コーン62をエンジンEの側方に、且つ車両前後方向に並列に配置すると共に、1次コーン61の大径側をエンジンE側に向けて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のパワーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鞍乗型車両のパワーユニットとしては、2つの円錐状の摩擦車の間にリング部材を挟み込み、リング部材を移動することによって変速を行う変速機を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−207590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の変速機は、自動車への適用を目的としたもので、自動二輪車などの鞍乗型車両に適用するためにはコンパクトにする必要があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、変速機をコンパクトに配置することができる鞍乗型車両のパワーユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、2本の軸上に互いに逆向きに配置されて回転する1次コーン及び2次コーンと、1次コーン及び2次コーンに摩擦接触して、1次コーン及び2次コーンの一方を囲繞するリング部材と、を有し、リング部材を移動させてエンジンの出力を1次コーンから2次コーンに伝達比を変化させながら伝達する変速機を備える鞍乗型車両のパワーユニットにおいて、1次コーン及び2次コーンをエンジンの側方に、且つ車両前後方向に並列に配置すると共に、1次コーンの大径側をエンジン側に向けて配置することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、リング部材は、2次コーンを囲繞して設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、エンジンは、車両前後方向に対して直交するように配置されるクランクシャフトを備え、1次コーンは、クランクシャフトの一端に直接設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成に加えて、1次コーンの軸中心線と2次コーンの軸中心線を結ぶ線分が略水平になるように配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構成に加えて、クランクシャフトの変速機を設けた側と反対側に発電機を設けることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構成に加えて、変速機を収容する変速機室とエンジンとを密封分離することを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の構成に加えて、変速機室とエンジンとを分離可能にすることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の構成に加えて、エンジンの変速機室を設けた側の側面を覆う蓋部材を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の構成に加えて、1次コーン及び2次コーンに生じる軸方向の力をエンジン側の壁面に設けられる転がり軸受で支持することを特徴とする。
【0015】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の構成に加えて、2次コーンの出力端に2次コーンの支持壁を挟んでリダクションギヤを設けると共に、2次コーンに生じる軸方向の力をリダクションギヤ側に設けられる転がり軸受で支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、1次コーン及び2次コーンをエンジンの側方に、且つ車両前後方向に並列に配置すると共に、1次コーンの大径側をエンジン側に向けて配置するため、変速機の前後を車幅方向外側に向かって先細り形状にすることができる。これにより、変速機と他部品との干渉を少なくすることができるので、変速機をコンパクトに配置することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、リング部材が2次コーンを囲繞して設けられるため、リング部材が1次コーンを囲繞して設けられる場合と比較して、変速機をコンパクトに配置することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、1次コーンがクランクシャフトの一端に直接設けられるため、パワーユニットの前後方向長さを短くすることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、1次コーンの軸中心線と2次コーンの軸中心線を結ぶ線分が略水平になるように配置されるため、1次コーン及び2次コーンの軸中心線とオイル油面が平行になる。これにより、変速比が変化してもリング部材が常にオイルに浸っているので、まんべんなくオイルを供給することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、クランクシャフトの変速機を設けた側と反対側に発電機を設けるため、パワーユニットの左右のバランスを良くすることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、変速機を収容する変速機室とエンジンとを密封分離するため、変速機室のトラクションオイルとエンジンの潤滑オイルをそれぞれ適切な個所に供給することができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、変速機室とエンジンとを分離可能にするため、変速機のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、エンジンの変速機室を設けた側の側面を覆う蓋部材を備えるため、蓋部材と共に変速機室を取り外すことができる。これにより、エンジンのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0024】
請求項9の発明によれば、1次コーン及び2次コーンに生じる軸方向の力をエンジン側の壁面に設けられる転がり軸受で支持するため、変速機室を構成する外側壁の剛性を上げる必要がなく、パワーユニットの軽量化を図ることができる。
【0025】
請求項10の発明によれば、2次コーンの出力端に2次コーンの支持壁を挟んでリダクションギヤを設けると共に、2次コーンに生じる軸方向の力をリダクションギヤ側に設けられる転がり軸受で支持するため、変速機室の外側に軸方向の力を受ける転がり軸受を配置することができる。これにより、転がり軸受をエンジンの潤滑オイルで潤滑することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るパワーユニットの一実施形態が搭載される自動二輪車の右側面図である。
【図2】図1に示すパワーユニットの右側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3に示す変速機の周辺の拡大断面図である。
【図5】図3に示す遠心クラッチの周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る鞍乗型車両のパワーユニットの一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、前後、左右、上下は、操縦者から見た方向に従い、図面に車両の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0028】
本実施形態の自動二輪車(鞍乗型車両)1では、車体フレーム2は、図1に示すように、車体前部のヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後方へ斜め下向きに傾斜して延出する1本のメインフレーム4と、メインフレーム4の後部に下方へ向けて延出固着される左右一対のピボットブラケット5と、メインフレーム4の後部で左右一対のピボットブラケット5の固着位置の前付近から後方へ斜め上向きに延出して途中で屈曲して後端に至っている左右一対のシートレール6と、左右一対のピボットブラケット5と左右一対のシートレール6の中央部との間に介装される左右一対のミドルフレーム7とから構成されている。
【0029】
また、車体フレーム2の左右一対のシートレール6の上方には、乗車用シート8が設けられ、その下部は収納部9となっている。また、車体前部上方に、ヘッドパイプ3に軸支されたハンドル10が設けられ、ハンドル10の下方にフロントフォーク11が延びて、フロントフォーク11の下端に前輪WFが軸支されている。左右一対のピボットブラケット5に、ピボット軸12によりリヤフォーク13が前端を揺動可能に軸支されて後方に延びており、リヤフォーク13の後端部に後輪WRが軸支されている。また、リヤフォーク13の後部と左右一対のシートレール6との間には、左右一対のリヤクッション14が介装されている。
【0030】
また、メインフレーム4の下方且つ左右一対のピボットブラケット5の前方にパワーユニットPが懸架されている。パワーユニットPの上部は、メインフレーム4の中央部に垂設された左右一対の支持ブラケット15に吊り下げられ、パワーユニットPの後部は、左右一対のピボットブラケット5に固定されている。また、車体フレーム2は、各部に分割された合成樹脂製のボディカバー16により覆われている。
【0031】
パワーユニットPは、図1〜図3に示すように、前部のエンジンEと後部の変速機TMから構成されている。
【0032】
エンジンEは、単気筒の4サイクルエンジンであり、その外殻は、主として、左側クランクケース21L及び右側クランクケース21Rからなるクランクケース21と、クランクケース21の前面上部に結合されるシリンダブロック22と、シリンダブロック22の前面に結合されるシリンダヘッド23と、シリンダヘッド23の前面に結合されるシリンダヘッドカバー24と、左側クランクケース21Lの左側面に取り付けられる発電機カバー25と、から構成される。また、右側クランクケース21Rの右側面には、後述する遠心クラッチ100を収容するクラッチ室26aを形成するクラッチカバー(蓋部材)26が取り付けられている。また、クラッチカバー26の右側面には、変速機TMを収容する変速機室27aを形成する変速機カバー27が取り付けられている。また、クランクケース21内のクランク室21aには潤滑オイルが封入され、変速機室27aにはトラクションオイルが封入されている。
【0033】
また、図2に示すように、シリンダブロック22、シリンダヘッド23、及びシリンダヘッドカバー24は、クランクケース21の前面から略水平に近い状態にまで大きく前傾した姿勢で突出している。また、図1に示すように、シリンダヘッド23の上方に延出した吸気管17aに、スロットルボディ17bとエアクリーナ17cが接続されている。また、シリンダヘッド23の下方に延出し後方へ屈曲した排気管18aは、後方へ延びて後輪WRの右側に配置されるマフラー18bに接続されている。また、後述するファイナルシャフト92に取り付けられるドライブスプロケット93と後輪WRに一体に設けられるドリブンスプロケット19aとの間にドライブチェーン19bが架け渡され、後輪WRが駆動される。
【0034】
また、クランクケース21には、車両前後方向に対して直交するようにクランクシャフト30が設けられており、このクランクシャフト30は、左側及び右側クランクケース21L,21Rにそれぞれ設けられる転がり軸受41a,41bに回転可能に支持されている。また、クランクシャフト30の右端部には変速機TMが取り付けられ、左端部には発電機31が取り付けられている。
【0035】
また、シリンダヘッド23の下面には、燃焼室32が形成されており、この燃焼室32に臨むようにスパークプラグ33が装着されている。
【0036】
また、シリンダヘッド23には、動弁機構のカムシャフト34が回転可能に支承されており、カムシャフト34の左端部にはカムドリブンスプロケット35が固定されている。そして、このカムドリブンスプロケット35とクランクシャフト30に形成されるカムドライブスプロケット36との間にはカムチェーン37が巻き回されている。
【0037】
また、クランクシャフト30のクランクピン30aには、ピストン38のピストンピン38aがコネクティングロッド39を介して接続されており、ピストン38は、シリンダブロック22のシリンダライナー22a内でシリンダ軸線方向に往復運動する。
【0038】
変速機TMは、図4に示すように、クランクシャフト30の右端部の外周面にスプライン嵌合される円筒状の第1シャフト51と、第1シャフト51の外周面に相対回転可能に嵌合される円錐形状の1次コーン61と、第1シャフト51と1次コーン61との間に設けられトルク変動を緩和するトルクダンパ70と、クランクシャフト30の後方に設けられる第2シャフト52と、第2シャフト52の外周面に相対回転可能に嵌合され、1次コーン61とは逆向きに配置される円錐形状の2次コーン62と、第2シャフト52と2次コーン62との間に設けられる押圧力発生機構80と、1次コーン61及び2次コーン62に摩擦接触して、2次コーン62を囲繞するように配置されるリング部材63と、を備える。そして、変速機TMは、リング部材63を軸方向に移動させることにより、クランクシャフト30の回転力を1次コーン61から2次コーン62に伝達比を変化させながら伝達する。
【0039】
1次コーン61の左端部は、クラッチカバー26に設けられる転がり軸受42aに回転可能に支持されている。また、第1シャフト51の右端部には軸部材51aが嵌合されており、この軸部材51aは、変速機カバー27に設けられる転がり軸受42bに回転可能に支持されている。また、第2シャフト52は、クラッチカバー26及び変速機カバー27にそれぞれ設けられる転がり軸受43,44に回転可能に支持されている。また、転がり軸受42aは、クラッチカバー26の幅方向外側に配置され、転がり軸受43は、クラッチカバー26の幅方向内側に配置される。これにより、1次コーン61及び2次コーン62に生じる軸方向の力(図4の矢印X、Y参照)は、エンジンE側の壁面であるクラッチカバー26に設けられる転がり軸受42a,43でそれぞれ支持される。
【0040】
また、本実施形態では、1次コーン61及び2次コーン62は、エンジンEの右側方、且つ車両前後方向に並列に配置される。また、1次コーン61は、その大径側がエンジンE側に向くように配置されている。
【0041】
また、図2に示すように、1次コーン61及び2次コーン62は、その1次コーン61の軸中心線L1と2次コーン62の軸中心線L2を結ぶ線分L3が略水平になるように配置される。これにより、1次コーン61及び2次コーン62の軸中心線L1,L2とトラクションオイルの油面L4が略平行になる。
【0042】
トルクダンパ70は、カム式トルクダンパであり、1次コーン61内に収容されており、第1シャフト51の外周面に軸方向移動可能且つ相対回転不能にスプライン嵌合されるカム部材71と、1次コーン61の内周面に形成され、カム部材71と係合する複数のカム溝72と、第1シャフト51の外周面のカム部材71より車幅方向内側に軸方向移動不能且つ相対回転不能にスプライン嵌合される固定部材73と、カム部材71と固定部材73との間に配置され、1次コーン61を車幅方向外側に付勢する複数の板ばね74と、を備える。
【0043】
押圧力発生機構80は、2次コーン62内に収容されており、第2シャフト52の右端部に軸方向移動不能且つ相対回転不能にスプライン嵌合される固定部材81と、2次コーン62の内周面に軸方向移動可能且つ相対回転不能に嵌合され、第2シャフト52に対して2次コーン62と共に軸方向移動可能に設けられる移動部材82と、固定部材81に形成される複数の半球状のボール受け81aと移動部材82に形成される複数の半球状のボール受け82aとの間に設けられる複数のボール83と、2次コーン62と移動部材82との間に配置され、2次コーン62を車幅方向内側に付勢するコイルばね84と、を備える。そして、伝達力が大きくなると、押圧力発生機構80が2次コーン62を左方(転がり軸受43側)に押圧し、リング部材63をより大きな力で挟み込んでスリップを抑制する。
【0044】
そして、変速機TMの第2シャフト52から出力される回転力は、図5に示すように、クラッチ室26a内に配置される第1減速機構110、遠心クラッチ100、第2減速機構120、及びクランクケース21のクランク室21a内に配置される第3減速機構130を介してエンジンEの外部に出力される。
【0045】
遠心クラッチ100は、遠心力式の発進クラッチであり、右側クランクケース21R及びクラッチカバー26にそれぞれ設けられる転がり軸受45,46に回転可能に支持される出力シャフト101と、出力シャフト101の右半部に相対回転可能に設けられる入力シャフト102と、入力シャフト102に相対回転不能に結合されるドライブプレート103と、出力シャフト101に相対回転不能に結合され、ドライブプレート103を覆う椀状のクラッチハウジング104と、ドライブプレート103に回転可能に軸支される複数のクラッチウェイト105と、クラッチウェイト105に貼り付けられ、クラッチハウジング104の内周面と摩擦係合可能な摩擦材106と、クラッチハウジング104と摩擦材106との摩擦係合を解除する方向にクラッチウェイト105を付勢するスプリング107と、を備える。
【0046】
第1減速機構110は、変速機TMの第2シャフト52の左端部に形成される第1駆動歯車(リダクションギヤ)111と、遠心クラッチ100の入力シャフト102の右端部に形成され、第1駆動歯車111と噛合する第1従動歯車112と、を備える。また、第1駆動歯車111は、2次コーン62の支持壁であるクラッチカバー26を挟んで配置される。これにより、2次コーン62に生じる軸方向の力(図4の矢印Y参照)は、第1駆動歯車111側に設けられる転がり軸受43で支持される。
【0047】
第2減速機構120は、遠心クラッチ100の出力シャフト101の左端部に形成される第2駆動歯車121と、左側及び右側クランクケース21L,21Rにそれぞれ設けられる転がり軸受47,48に回転可能に支持される中間シャフト91の右端部にスプライン嵌合され、第2駆動歯車121と噛合する第2従動歯車122と、を備える。
【0048】
第3減速機構130は、中間シャフト91の左半部に形成される第3駆動歯車131と、左側及び右側クランクケース21L,21Rにそれぞれ設けられる転がり軸受49,50に回転可能に支持されるファイナルシャフト92に設けられ、第3駆動歯車131と噛合する第3従動歯車132と、を備える。また、ファイナルシャフト92の左側クランクケース21Lから突出する左端部には、後輪WRにドライブチェーン19bを介して回転力を伝達するドライブスプロケット93が取り付けられている。
【0049】
また、本実施形態では、上述したように、右側クランクケース21Rの右側面にクラッチ室26aを有するクラッチカバー26が取り付けられると共に、クラッチカバー26の右側面に変速機室27aを有する変速機カバー27が取り付けられているため、変速機カバー27と共にクラッチカバー26を取り外すことにより、変速機室27aとエンジンEのクランクケース21とを密封状態で分離することが可能である。このため、変速機TMを分解することなく(変速機室27aを開封することなく)、エンジンEから変速機TMを取り外すことができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の鞍乗型車両のパワーユニットPによれば、1次コーン61及び2次コーン62をエンジンEの側方に、且つ車両前後方向に並列に配置すると共に、1次コーン61の大径側をエンジンE側に向けて配置するため、変速機TMの前後を車幅方向外側に向かって先細り形状にすることができる。これにより、変速機TMと他部品との干渉を少なくすることができるので、変速機TMをコンパクトに配置することができる。
【0051】
また、本実施形態の鞍乗型車両のパワーユニットPによれば、リング部材63が2次コーン62を囲繞して設けられるため、リング部材63が1次コーン61を囲繞して設けられる場合と比較して、変速機TMをコンパクトに配置することができる。
【0052】
また、本実施形態の鞍乗型車両のパワーユニットPによれば、1次コーン61がクランクシャフト30の一端に直接設けられるため、パワーユニットPの前後方向長さを短くすることができる。
【0053】
また、本実施形態の鞍乗型車両のパワーユニットPによれば、1次コーン61の軸中心線L1と2次コーン62の軸中心線L2を結ぶ線分L3が略水平になるように配置されるため、1次コーン61及び2次コーン62の軸中心線L1,L2とトラクションオイルの油面L4が略平行になる。これにより、変速比が変化してもリング部材63が常にトラクションオイルに浸っているので、まんべんなくオイルを供給することができる。
【0054】
また、本実施形態の鞍乗型車両のパワーユニットPによれば、クランクシャフト30の変速機TMを設けた側と反対側に発電機31を設けるため、パワーユニットPの左右のバランスを良くすることができる。
【0055】
また、本実施形態の鞍乗型車両のパワーユニットPによれば、変速機TMを収容する変速機室27aとエンジンEとを密封分離するため、変速機室27aのトラクションオイルとエンジンEの潤滑オイルをそれぞれ適切な個所に供給することができる。
【0056】
また、本実施形態の鞍乗型車両のパワーユニットPによれば、変速機室27aとエンジンEとを分離可能にするため、変速機TMのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0057】
また、本実施形態の鞍乗型車両のパワーユニットPによれば、エンジンEの変速機室27aを設けた側の側面を覆うクラッチカバー26を備えるため、クラッチカバー26と共に変速機室27aを取り外すことができる。これにより、エンジンEのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0058】
また、本実施形態の鞍乗型車両のパワーユニットPによれば、1次コーン61及び2次コーン62に生じる軸方向の力をエンジンE側の壁面であるクラッチカバー26に設けられる転がり軸受42a,43で支持するため、変速機室27aを構成する変速機カバー27の剛性を上げる必要がなく、パワーユニットPの軽量化を図ることができる。
【0059】
また、本実施形態の鞍乗型車両のパワーユニットPによれば、2次コーン62の出力端である第2シャフト52の端部に、2次コーン62の支持壁であるクラッチカバー26を挟んで第1駆動歯車111を設けると共に、2次コーン62に生じる軸方向の力を第1駆動歯車111側に設けられる転がり軸受43で支持するため、変速機室27aの外側に軸方向の力を受ける転がり軸受43を配置することができる。これにより、転がり軸受43をエンジンEの潤滑オイルで潤滑することができる。
【符号の説明】
【0060】
P パワーユニット
E エンジン
TM 変速機
21 クランクケース
21R 右側クランクケース
21L 左側クランクケース
26 クラッチカバー(蓋部材、壁面、支持壁)
27 変速機カバー
27a 変速機室
30 クランクシャフト
31 発電機
42a 転がり軸受
43 転がり軸受
51 第1シャフト
52 第2シャフト
61 1次コーン
62 2次コーン
63 リング部材
111 第1駆動歯車(リダクションギヤ)
L1 1次コーンの軸中心線
L2 2次コーンの軸中心線
L3 線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の軸(51,52)上に互いに逆向きに配置されて回転する1次コーン(61)及び2次コーン(62)と、
前記1次コーン及び前記2次コーンに摩擦接触して、前記1次コーン及び前記2次コーンの一方を囲繞するリング部材(63)と、を有し、
前記リング部材を移動させてエンジン(E)の出力を前記1次コーンから前記2次コーンに伝達比を変化させながら伝達する変速機(TM)を備える鞍乗型車両のパワーユニット(P)において、
前記1次コーン及び前記2次コーンを前記エンジンの側方に、且つ車両前後方向に並列に配置すると共に、前記1次コーンの大径側を前記エンジン側に向けて配置することを特徴とする鞍乗型車両のパワーユニット。
【請求項2】
前記リング部材(63)は、前記2次コーン(62)を囲繞して設けられることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両のパワーユニット。
【請求項3】
前記エンジン(E)は、車両前後方向に対して直交するように配置されるクランクシャフト(30)を備え、
前記1次コーン(61)は、前記クランクシャフトの一端に直接設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のパワーユニット。
【請求項4】
前記1次コーン(61)の軸中心線(L1)と前記2次コーン(62)の軸中心線(L2)を結ぶ線分(L3)が略水平になるように配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のパワーユニット。
【請求項5】
前記クランクシャフト(30)の前記変速機(TM)を設けた側と反対側に発電機(31)を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のパワーユニット。
【請求項6】
前記変速機(TM)を収容する変速機室(27a)と前記エンジン(E)とを密封分離することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のパワーユニット。
【請求項7】
前記変速機室(27a)と前記エンジン(E)とを分離可能にすることを特徴とする請求項6に記載の鞍乗型車両のパワーユニット。
【請求項8】
前記エンジン(E)の前記変速機室(27a)を設けた側の側面を覆う蓋部材(26)を備えることを特徴とする請求項7に記載の鞍乗型車両のパワーユニット。
【請求項9】
前記1次コーン(61)及び前記2次コーン(62)に生じる軸方向の力を前記エンジン(E)側の壁面(26)に設けられる転がり軸受(42a,43)で支持することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のパワーユニット。
【請求項10】
前記2次コーン(62)の出力端に前記2次コーンの支持壁(26)を挟んでリダクションギヤ(111)を設けると共に、前記2次コーンに生じる軸方向の力を前記リダクションギヤ側に設けられる転がり軸受(43)で支持することを特徴とする請求項9に記載の鞍乗型車両のパワーユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−77832(P2012−77832A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222851(P2010−222851)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(502199431)ゲーイーエフ ゲゼルシャフト フュア インドゥストリーフォルシュング エムベーハー (2)
【Fターム(参考)】