説明

鞍乗型車両の吸気構造

【課題】走行風の風圧を利用してエンジンへの吸入空気の流速の向上を図ることが可能で、粉塵を吸い込みにくい鞍乗型車両の吸気構造を提供する。
【解決手段】エンジン12へ吸気する吸気ダクト75が車両後方に向かって開口するように設けられ、吸気ダクト75は、エアクリーナーケース61に接続され、エアクリーナーケース61を介してエンジン12の吸気側に接続された自動二輪車10において、エアクリーナーケース61とエンジン12の吸気口43Aとの間に過給機120を設け、車両前方に向かって開口する走行風取入口111から走行風を取り入れ、過給機120は、吸気ダクト75側に設けられた一方の羽根車によりエンジン12へ吸気を過給し、走行風取入口111側に設けられて走行風を受けて回転する他方の羽根車により上記一方の羽根車を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のエンジンに空気を供給する吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車の前部に車両前方に向かって開口する空気取入口を設け、この空気取入口から導入される走行風を、エアボックスを介してエンジンに取り入れることにより、エンジンへの吸入空気の流速の向上を図った構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−213541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行風の風圧を利用して吸入空気の流速の向上を図るためには、特許文献1に開示された構成のように、車両の前部において前方に開口する取入口から吸気する必要があるが、このような構成では、多塵地域等では粉塵を吸い込み易く、エアクリーナーエレメントが目詰まりする時期が早まる可能性があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、走行風の風圧を利用してエンジンへの吸入空気の流速の向上を図ることが可能で、粉塵を吸い込みにくい鞍乗型車両の吸気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジン(12)へ吸気する吸気ダクト(75)が、鞍乗型車両(10)の車両後方に向かって開口するように設けられ、前記吸気ダクトは、エアクリーナー(61、62)に接続され、前記エアクリーナーを介して前記エンジンの吸気側に接続された鞍乗型車両において、前記エアクリーナーと前記エンジンの吸気口(43A)との間に過給機(120、127)を設け、車両前方に向かって開口する走行風取入口(111)から、走行風を取り入れ、前記過給機は、前記吸気ダクト側に設けられた一方の羽根車(124)により前記エンジンへ吸気を過給し、前記走行風取入口側に設けられて走行風を受けて回転する他方の羽根車(123)により前記一方の羽根車を駆動することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、車両前方に向かって開口する走行風取入口から取り入れた走行風により過給機の羽根車を駆動して、車両後方に向かって開口する吸気ダクトから吸い込んだ吸気をエアクリーナーを介してエンジンに過給するので、走行風に含まれる塵埃がエアクリーナーに入らないように、走行風の風圧を利用してエンジンの吸入空気の流速を向上させ、エンジンの吸入空気量を確保できる。
ここで、エンジンの吸気口に、スロットルバルブを具備した気化器、燃料噴射装置を備えたスロットルボディ、及び燃料噴射装置を備えていないスロットルボディのいずれかが装着された構成において、これとエアクリーナーとの間に過給機を設けてもよい。
【0007】
上記構成において、前記エンジンは後方から吸気をし、前方から排気をする構成としてもよい。この構成によれば、車両後方に向かって開口する吸気ダクトを車両後部に設けた場合に、吸気ダクトからエアクリーナーを介してスロットルボディに至る吸気経路が短くなるので、吸気ダクトを車両後部に配置しても配管が短くて済み、過給機の配置の自由度が向上するという利点もある。
【0008】
また、上記構成において、前記吸気ダクト、及び、前記過給機から走行風を出す走行風出口(131、152)は、シート(36)下方に設けられる構成としてもよい。この構成によれば、吸気ダクトをシート下に設けたことで吸気ダクトからより塵埃を吸い込みにくくなる。また、走行風出口をシート下に設けたことで過給機を通った走行風を効率よく、乗員を不快に感じさせないように排気できる。
上記構成において、前記走行風取入口の通路(110)は、前記エンジンの上方を通り、上面視または下面視で前記エンジンのシリンダヘッド(43)と重なる構成としてもよい。この構成によれば、走行風を取り入れる通路を、シリンダヘッドの上方の空間を有効に使用して配置できる。
【0009】
また、上記構成において、前記過給機は前記吸気ダクト側と前記走行風取入口側との2室(121、122)に分割され、その2室につながる同軸(125)があり、その同軸につながる2つの羽根車(123、124)を設け、一方の羽根車(124)は吸気ダクト側の室(122)に、他方の羽根車(123)は走行風取入口側の室(121)に設けられ、前記走行風取入口側の室に設けられた羽根車は、前記吸気ダクト側の室に設けられた羽根車よりも面積が大きい構成としてもよい。この構成によれば、走行風により回転される羽根車がエンジンへの吸気を過給する羽根車より大きく構成されているため、走行風の圧力を効率よく利用し、エンジンの吸気量に対して適切な過給を行うことができる。
【0010】
また、上記構成において、前記過給機(127)は吸気ダクト側(122)と走行風取入口側(121)とに分割され、吸気ダクト側および、走行風取入口側に、それぞれ羽根車(123、124)を設け、前記2つの羽根車の軸(128A、128B)は、変速機構(129)を介して連結され、前記走行風取入口側に設けられた羽根車の回転数を変速して、前記吸気ダクト側に設けられた羽根車に伝達する構成としてもよい。この構成によれば、走行風により回転される羽根車の回転が、リダクション機構を介して、エンジンへの吸気を過給する羽根車に伝達されるので、走行風の圧力によりエンジンの吸気量に対して適切な過給を行うことができる。
【0011】
また、上記構成において、前記走行風取入口から入り、前記過給機を通過した走行風を排出する走行風排出口(150)を備え、前記走行風排出口の後部は二股に分岐し、一方は外気に開放する開放口(152)であり、他方は前記エアクリーナーに連通するエアクリーナー連通口(155)であって、前記開放口と、前記エアクリーナー連通口との分岐路には、走行風をどちらに排出するかを決定するバルブ(157)を備え、ECU(170)からの信号で前記バルブを作動させるアクチュエーター(160)を備えた構成としてもよい。この構成によれば、過給機から走行風を外気に排気する状態と、過給機を出た走行風をエアクリーナーに導入する状態とを、ECUがアクチュエーターを制御することで、バルブの動作により切り替えることができるので、例えば、高速域では過給機から走行風を外気に排気し、低速域では過給機を出た走行風をエアクリーナーに導入することで、エンジンへの過給を過剰にせず、かつ、低速域でもエンジンへの適切な過給を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両前方に向かって開口する走行風取入口から取り入れた走行風により過給機の羽根車を駆動して、車両後方に向かって開口する吸気ダクトから吸い込んだ吸気をエアクリーナーを介してエンジンに過給するので、走行風に含まれる塵埃がエアクリーナーに入らないように、走行風の風圧を利用してエンジンの吸入空気の流速を向上させ、エンジンの吸入空気量を確保できる。
【0013】
また、エンジンは後方から吸気をし、前方から排気をする構成とすることで、車両後方に向かって開口する吸気ダクトを車両後部に設けた場合に、吸気ダクトからエアクリーナーを介してスロットルボディに至る吸気経路が短くなるので、吸気ダクトを車両後部に配置しても配管が短くて済み、過給機の配置の自由度が向上するという利点もある。
また、吸気ダクトをシート下方に設け、過給機から走行風を出す走行風出口もシート下方に設けたことで、吸気ダクトからより塵埃を吸い込みにくくなり、過給機を通った走行風を効率よく、乗員を不快に感じさせないように排気できる。
また、走行風取入口の通路が、エンジンの上方を通り、上面視または下面視でエンジンのシリンダヘッドと重なる構成とすることで、走行風を取り入れる通路を、シリンダヘッドの上方の空間を有効に使用して配置できる。
また、過給機は吸気ダクト側と走行風取入口側との2室に分割され、その2室につながる同軸があり、その同軸につながる2つの羽根車を設け、一方の羽根車は吸気ダクト側の室に、他方の羽根車は走行風取入口側の室に設けられ、走行風取入口側の室に設けられた羽根車は、吸気ダクト側の室に設けられた羽根車よりも面積が大きい構成とすることで、走行風により回転される羽根車がエンジンへの吸気を過給する羽根車より大きく、走行風の圧力を効率よく利用し、エンジンの吸気量に対して適切な過給を行うことができる。
【0014】
また、過給機は吸気ダクト側と走行風取入口側とに分割され、吸気ダクト側および、走行風取入口側に、それぞれ羽根車を設け、2つの羽根車の軸は、リダクション機構を介して連結され、走行風取入口側に設けられた羽根車の回転数を増速して、吸気ダクト側に設けられた羽根車に伝達する構成とすることで、走行風により回転される羽根車の回転が、リダクション機構を介して、エンジンへの吸気を過給する羽根車に伝達され、走行風の圧力によりエンジンの吸気量に対して適切な過給を行うことができる。
【0015】
また、走行風取入口から入り、過給機を通過した走行風を排出する走行風排出口を備え、走行風排出口の後部は二股に分岐し、一方は外気に開放する開放口であり、他方はエアクリーナーに連通するエアクリーナー連通口であって、開放口と、エアクリーナー連通口との分岐路には、走行風をどちらに排出するかを決定するバルブを備え、ECUからの信号でバルブを作動させるアクチュエーターを備えた構成とすることで、過給機から走行風を外気に排気する状態と、過給機を出た走行風をエアクリーナーに導入する状態とを、ECUがアクチュエーターを制御することで、バルブの動作により切り替えることができるので、例えば、高速域では過給機から走行風を外気に排気し、低速域では過給機を出た走行風をエアクリーナーに導入することで、エンジンへの過給を過剰にせず、かつ、低速域でもエンジンへの適切な過給を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】吸気機構を詳細に示す要部左側面図である。
【図3】自動二輪車を下方から見た要部平面図である。
【図4】吸気機構の構成を示す平面図である。
【図5】第2の実施の形態に係る吸気機構の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る車両について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で、上下、前後、左右の方向は、車両の運転者から見た方向をいう。
図1は、本発明を適用した第1の実施の形態に係る自動二輪車10(鞍乗型車両)の左側面図である。また、図2は吸気機構100を詳細に示す要部左側面図である。
自動二輪車10は、車体フレーム11の中央部にエンジン12が配置され、車体フレーム11の前端にフロントフォーク13が操舵可能に支持され、車体フレーム11の後部の下部に上下に揺動可能なスイングアーム14が支持された鞍乗り型の車両である。
【0018】
車体フレーム11は、フロントフォーク13を操舵可能に支持するヘッドパイプ16と、ヘッドパイプ16の上部から後下方に延びる左右一対のメインフレーム17と、ヘッドパイプ16の下部から後下方に延びる左右一対のダウンフレーム18と、車両の前後方向中間部でメインフレーム17の後端から下方に延びる左右一対のセンターフレーム19と、メインフレーム17の後部から後ろ上がりに車両後部へ延びる左右一対のシートレール20と、スイングアーム14とを備えて構成される。シートレール20の中間部には、左右のシートレール20を連結するシート下クロスメンバ26が設けられている。
【0019】
左右のセンターフレーム19は、メインフレーム17及びシートレール20が連結された上部から下方に延びる板状のピボット部を有し、このピボット部にはスイングアーム14を揺動自在に軸支するピボット軸30が貫通して配置されている。ピボット軸30は、車幅方向に平行に配置されている。
スイングアーム14は、前後に延びる左右一対のアーム7を連結して構成されている。スイングアーム14の前端部にはピボット軸30が貫通され、スイングアーム14はこのピボット軸30を揺動中心として後方へ延びている。駆動輪としての後輪WRは、スイングアーム14の後端に支持されている。
【0020】
一方、操行ハンドル33はフロントフォーク13の上部に取り付けられ、前輪WFはフロントフォーク13の下部に取り付けられている。車体フレーム11の前部上方には燃料タンク35が配置されている。詳細には、燃料タンク35はメインフレーム17の上方において、左右のメインフレーム17に跨って配置され、ヘッドパイプ16の後方からセンターフレーム19の上方まで延在している。
左右のシートレール20に跨って設けられる乗員用のシート36は、燃料タンク35の後端に連続してシートレール20の上方に配置され、シートレール20に沿うように後方に延びている。シート36は、シート36の後部に設けられたロック機構(図示略)によりロックされ、乗員等がこのロック機構を解除することで着脱自在に設けられている。また、シート36の下方には左右のシートレール20の間にバッテリー(図示略)が配置されている。
【0021】
エンジン12は、水冷4サイクル単気筒エンジンであり、シリンダ軸線が前傾して設けられ、クランク軸が収容されるクランクケース41の側から順に、ピストンが内部を摺動するシリンダブロック42、シリンダヘッド43及びシリンダヘッドカバー44を備えて構成されている。クランクケース41の後部には変速機45が一体的に設けられている。
エンジン12は、ダウンフレーム18及びセンターフレーム19に締結され、全体として車体フレーム11に吊り下げられるように支持されている。
【0022】
クランクケース41の後部の左側面には、エンジン12の回転を出力するドライブスプロケット56が設けられている。後輪WRの左側面にはドリブンスプロケット57が設けられ、後輪WRは、ドライブスプロケット56とドリブンスプロケット57とに巻き掛けられたチェーン58によって駆動される。
シリンダヘッド43の前部に設けられた排気口43Bには排気管49が連結され、排気管49はクランクケース41の前方に出て、クランクケース41の下方を通って後方へ延び、排気管49の後端には後ろ上がりに延びるマフラー50が接続されている。また、シリンダヘッド43の後部に設けられた吸気口43Aには燃料及び燃焼空気を供給するスロットルボディ52が連結されている。スロットルボディ52には後述する吸気機構100により空気が供給されるとともに、インジェクタ(図示略)が設けられている。スロットルボディ52の内部では、燃料タンク35に内蔵された燃料ポンプ(図示略)により供給される燃料がインジェクタから噴射され、この燃料が吸気機構100により供給された空気とともに吸気口43Aに供給される。
【0023】
また、自動二輪車10は、エンジン12よりも前方においてヘッドパイプ16、メインフレーム17及びダウンフレーム18の側方を覆う左右一対の樹脂製の車体カバー25カバーを備えている。自動二輪車10には、車体カバー25に加えて、車体中央部を覆うサイドカバーやシートレール20を覆うリアカバー等を設けてもよい。
前輪WFは、フロントフォーク13に取り付けられたフロントフェンダ8によって上方を覆われている。ヘッドパイプ16の前方にはヘッドライト40が設けられている。
【0024】
吸気機構100は、スロットルボディ52に接続される過給機120と、外気を導入する吸気ダクト75を備え、過給機120に空気を供給するエアクリーナーケース61(エアクリーナー)と、過給機120に走行風を導入する走行風取入管110(通路)とを備えて構成される。
走行風取入管110は、自動二輪車10の前後方向に伸びる中空の管状部材であり、その一端はフロントフォーク13の間に位置して、自動二輪車10の前方に向かって開口する走行風取入口111となっている。走行風取入管110の他端は過給機120に連結され、自動二輪車10の走行時に走行風取入口111から流れ込む走行風が、走行風取入管110を通って過給機120に流れ込む。
【0025】
エアクリーナーケース61は、燃料タンク35及びシート36の下方で、かつ、エンジン12の上方に位置している。エアクリーナーケース61の上部は燃料タンク35の底面に形成された凹部(図示略)に嵌り込み、エアクリーナーケース61はメインフレーム17に固定されている。
エアクリーナーケース61は、上下2分割で構成された中空の箱であり、その分割面はパッキン等を介して気密性を保持できるよう接合され、クリップ等により接離可能に連結される。分割されるエアクリーナーケース61の後部側には、後方に伸びる吸気ダクト75が設けられ、吸気ダクト75の先端は後方向きに開口して、外気を吸い込む外気吸入口76となっている。一方、エアクリーナーケース61の前部には、過給機120に空気を供給するコネクティングチューブ140が設けられている。
【0026】
エアクリーナーケース61の分割面には、エアクリーナーケース61の後部側の吸気ダクト75から吸い込まれた外気に含まれる塵埃等を吸着除去する板状のエレメント70が配置される。エレメント70は、エアクリーナーケース61の分割面に形成された枠(図示略)に保持されて、上記分割面を覆い、吸気ダクト75から吸い込まれた外気は漏れなくエレメント70を通過して浄化される。このエレメント70により、エアクリーナーケース61の内部空間は、エレメント70よりも上流側のダーティーサイド71と、エレメント70よりも下流側のクリーンサイド72とに区画される。吸気ダクト75はダーティーサイド71に連通してエレメント70に外気を供給し、コネクティングチューブ140はクリーンサイド72に連通して、エレメント70により浄化された空気を過給機120に送出する。
【0027】
図3は、自動二輪車10における吸気機構100の配置状態を示す図であり、自動二輪車10を下方から見た要部平面図である。また、図4は、吸気機構100の各部を上方からみた平面図であり、一部を模式化して示している。図4中の矢印は気流を示す。
図3及び図4に示すように、過給機120には、自動二輪車10の車体前端部から、シリンダヘッドカバー44の上を通って設けられた走行風取入管110により、走行風が導かれる。走行風取入管110は、図3に示す下面視でシリンダヘッド43と重なるように配置されているため、他の部材と干渉しにくく、空きスペースとなりやすい場所を有効に活用して配置されている。図3には下面視を示しているが、自動二輪車10の車体を上面視した場合にも、走行風取入管110はシリンダヘッド43に重なる位置にある。
過給機120は、走行風取入管110からの走行風が流れる室121と、エアクリーナーケース61から供給される燃焼用空気が流れる室122とを有し、室122内部の羽根車124によって燃焼用空気をスロットルボディ52に過給するタービンである。
【0028】
過給機120の室121は、上面視で右側、下面視で左側に位置しており、室121の前部には走行風取入管110が連結されている。走行風取入管110は、図2及び図3に示すように、自動二輪車10の車体の中心軸より右側に位置して、自動二輪車10の車体前端部から略中央部にかけて、エンジン12のシリンダヘッドカバー44の上を通るように配設される。走行風取入管110の先端の走行風取入口111は、フロントフォーク13の間においてヘッドライト40の下方かつフロントフェンダ8の上方で開口し、走行風を正面から取り込む。走行風取入管110の基端部は下方に曲がって過給機120の室121に連結される。室121は円形の内部空間を有し、走行風取入管110は、室121の中心から前に偏った位置で下向きに接続され、この走行風取入管110から室121の内部には下向きに走行風が吹き込むので、走行風が室121内部の壁に沿って流れるため旋回流を発生する。また、室122の円形の空間の中心には、自動二輪車10の車体の側方に延びる走行風排出管130が設けられている。
【0029】
室121の内部空間には羽根車123が配設される。羽根車123は、室121の厚み方向に立設された軸125に固定され、走行風取入管110を通った走行風を受けて軸125とともに回転する。羽根車123は、例えば、略三角形に形成された多数の板状の羽根を、軸125の側面に軸方向に接合し、各々の羽根が軸125の周方向に等間隔で配置され、室121の側面視で放射状に設けられた構成、或いは、室121に同心に配置された円筒の周面を切り起こして複数の羽根を形成した構成となっている。
上記のように走行風取入管110から室121に下向きに走行風が吹き込まれ、この走行風が旋回流を生じると、羽根車123は走行風のエネルギーにより図2中で反時計回りに回転する。羽根車123を回転させた走行風は走行風排出管130から外へ流出する。
【0030】
軸125は室121の側壁を貫通して、室121に隣り合わせに設けられた室122の内部に達しており、室121と室122とを区画する壁には、図4に示すように軸125を回転自在に支持するベアリング126が配設されている。このため、走行風取入口111から取り込まれた走行風により羽根車123が回転すると、この回転力は軸125を介して室122内に伝達される。
【0031】
一方、過給機120が有する室122は、図3及び図4に示すように、自動二輪車10の車体において上面視で左側、下面視で右側に位置している。室122の側面にはコネクティングチューブ140が接続され、室122の前部はスロットルボディ52に連結されている。室122は室121と同様に、円形の内部空間を有し、この円形の空間の中心にコネクティングチューブ140が繋がっている。
【0032】
室122の内部空間には、室121に繋がる軸125が貫通して設けられ、この軸125に羽根車124が固定される。羽根車124は、例えば、羽根車123と同様に、多数の板状の羽根を軸125に接合した構成、或いは、円筒の側面を切り起こして羽根を設けた構成を有し、軸125とともに回転して室122内部の空気を室122の中心から周囲に向けて押し出すとともに旋回流を発生する。このため、上述のように、室121内の羽根車123が走行風を受けて回転することによって軸125に回転力が与えられると、この回転力により、羽根車124が室122内を図2中で反時計回りに回転し、エアクリーナーケース61から供給される燃焼用空気の旋回流を生じる。スロットルボディ52は、室122に対し、室122の中心より上に偏った位置に連結されているので、室122内を旋回して流れる燃焼用空気が、旋回中の流速をほぼ保ったままスロットルボディ52に流入する。これにより、スロットルボディ52に燃焼用空気が圧送される。
【0033】
このように、過給機120においては、隣り合わせに設けられた2つの室121、122に羽根車123、124を設け、これら羽根車123、124を一つの軸125により連結して一体に回転する構成とし、室121には走行風取入管110から走行風を取り入れ、この走行風により羽根車123、124を回転させることで、羽根車124によってエレメント70で浄化された燃焼用空気を圧送し、エンジン12の吸い込み圧による流速を超える速度でスロットルボディ52へ燃焼用空気が送り込まれる。スロットルボディ52では、過給機120から過給された燃焼用空気に、燃料タンク35に設けられた燃料ポンプ(図示略)が送出する燃料が噴射されて燃焼用混合気が生成され、吸気口43Aからエンジン12のシリンダヘッド43に混合気が送り込まれる。
【0034】
また、図4に示すように、室121に設けられる羽根車123は、室122に設けられる羽根車124よりも大きい。すなわち、羽根車123、124が同一形状で構成される場合において、一枚の羽根の大きさ、羽根車123、124がそれぞれ風を受ける面積、羽根車123、124の径等のいずれか1以上において羽根車123が羽根車124より大きい。また、羽根車123、124が同一形状でない場合は、羽根車123、124がそれぞれ風を受ける面積で比較して、羽根車123が羽根車124より大きい。
【0035】
この構成では、走行風のエネルギーを回転力に変える側の羽根車123が大きいことから、より多くの走行風を受けて効率よく回転力を生み出すとともに、燃焼用空気を回転させて圧送する羽根車124を小さくしたため、回転の抵抗を減らすことで回転速度を高くすることができる。また、自動二輪車10の停車中や低速走行中など、走行風の流速が小さく羽根車123、124が回転しない場合、或いは、羽根車123、124の回転速度が低速で、羽根車123、124が生じる旋回流の流速がエンジン12の吸い込み圧による燃焼用空気の流速よりも低い場合には、羽根車124がスロットルボディ52に送り出すより多くの燃焼用空気がスロットルボディ52に流れるようにする必要がある。ここで、羽根車124を室122に対して小さくすれば、羽根車124の周囲の隙間が大きいために、羽根車124の回転速度より高速で燃焼用空気を流す際の通風抵抗が小さくなる。これにより、過給機120が、停車中や低速走行中における燃焼用空気の供給の妨げにならないという利点がある。
【0036】
また、走行風排出管130は、室121の側方から自動二輪車10の車体後方にかけて延設され、走行風排出管130の先端の走行風出口131は、図1及び図2に示すようにシート36の下方で後方を向いて開口する。走行風出口131は、エアクリーナーケース61に外気を吸い込む吸気ダクト75の外気吸入口76よりも後方で開口しているので、自動二輪車10の走行中は、走行風出口131から出た走行風が外気吸入口76から吸い込まれない構成となっている。
【0037】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、エンジン12へ吸気する吸気ダクト75が、自動二輪車10の車両後方に向かって開口するように設けられ、吸気ダクト75は、エアクリーナーケース61に接続され、エアクリーナーケース61を介してエンジン12の吸気側に接続された自動二輪車10において、エアクリーナーケース61とエンジン12の吸気口43Aとの間に過給機120を設け、自動二輪車10の車体前方に向かって開口する走行風取入口111から走行風を取り入れて、過給機120が、吸気ダクト75側に設けられた一方の羽根車124によりエンジン12へ吸気を過給する一方で、この羽根車124を、走行風取入口111側に設けられて走行風を受けて回転する他方の羽根車123により駆動するので、走行風の風圧を利用してエンジン12の吸入空気の流速を向上させ、かつ、走行風に含まれる塵埃をエアクリーナーケース61に進入させず、エンジン12の吸入空気量を確保できる。
この構成において、スロットルボディ52においてインジェクタ(図示略)が噴射する燃料を、過給機120が過給する過給圧に応じて増減させることで空燃比を調整し、より一層の燃焼効率の向上や出力向上を図るようにしてもよい。
【0038】
また、第1の実施の形態では、エンジン12が吸気口43Aにおいて後方から吸気をし、排気口43Bにおいて前方から排気をする構成としたので、塵埃がエアクリーナーケース61に入り込みにくくなるように、車両後方に向かって開口する吸気ダクト75を車両後部に設けても、吸気ダクト75からエアクリーナーケース61を介してスロットルボディ52に至る吸気経路が短くて済む。また、シリンダヘッド43の後方では、前方よりも過給機120を設置するスペースを確保しやすいので、過給機120の配置の自由度が向上するという利点もある。
【0039】
さらに、吸気ダクト75の外気吸入口76、及び、過給機120から走行風を出す走行風排出管130の走行風出口131がシート36下方に設けられているので、より吸気ダクト75から塵埃を吸い込みにくくなるとともに、過給機120を通った走行風を効率よく、乗員を不快に感じさせないように排気できる。また、走行風出口131が外気吸入口76よりも後方で開口するので、走行風出口131から出た走行風が外気吸入口76に回りこみにくく、エアクリーナーケース61に塵埃を吸い込みにくい。
また、走行風取入口111の走行風取入管110は、エンジン12の上方を通り、上面視及び下面視でエンジン12のシリンダヘッド43と重なるので、走行風取入管110を、シリンダヘッド43の上方の空間を有効に使用して配置できる。
【0040】
さらにまた、過給機120は吸気ダクト75側と走行風取入口111側との2室に分割され、その2室につながる軸125があり、その同軸につながる2つの羽根車123、124を設け、一方の羽根車124は吸気ダクト75側の室122に、他方の羽根車123は走行風取入口111側の室121に設けられ、走行風取入口111側の室121に設けられた羽根車123は、吸気ダクト75側の室122に設けられた羽根車124よりも面積が大きい構成となっているので、走行風を受けて駆動する側の羽根車124を大きくすることで走行風の圧力を効率よく利用して軸125を回転させ、エンジン12の吸気量に対して適切な過給を行うことができる。
【0041】
また、走行風取入管110の走行風取入口111は、自動二輪車10の前面においてヘッドライト40の下方かつフロントフェンダ8の上方で開口するので、大きな走行風取入口111の開口面積を確保できる。さらに、走行風取入管110は、エンジン12の上方かつ燃料タンク35の下方を通るように、自動二輪車10の車体の右側に偏った位置において車体の前後方向に延設される。このため、燃料タンク35に設けられた燃料ポンプからスロットルボディ52に延びる燃料供給管、操行ハンドル33に設けられたアクセルレバーからスロットルボディ52に繋がるアクセルワイヤ、及び、ヘッドパイプ16の上端部に設けられるメーターパネルから延びるハーネス類等に干渉しないように、断面積の大きい走行風取入管110を設けることが可能である。これにより、大風量の走行風を取り入れて過給機120に送り込むことができ、効率よくエンジン12への過給ができる。
【0042】
[第2の実施の形態]
図5は、本発明を適用した第2の実施の形態に係る吸気機構101の構成を示す平面図であり、一部を模式化して示している。図5中の矢印は気流を示す。
本第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と共通の構成部については同符号を付して説明を省略する。
【0043】
図5に示す吸気機構101は、第1の実施の形態の吸気機構100に代えて自動二輪車10に設けられ、走行風取入管110の先端の走行風取入口111から走行風を取り込み、この走行風の圧力によってスロットルボディ52に燃焼用空気を過給するものである。
吸気機構101は、過給機120に代えて過給機127を備える。過給機127は、過給機120と同様に、走行風取入管110を通った走行風が吹き込まれる室121と、スロットルボディ52に向けて燃焼用空気を圧送する室122とを有し、室121には羽根車123が、室122には羽根車124が設けられている。
【0044】
吸気機構101において、羽根車123の軸128Aと、羽根車124の軸128Bとは別体となっており、室121と室122との間に設けられたリダクション機構129(変速機構)を介して連結されている。リダクション機構129は、軸128Aの回転を減速して軸128Bに伝える減速機であり、走行風が羽根車123を回転させるトルクに比べてより強いトルクが羽根車124に与えられる。このため、羽根車123が羽根車124より大きいことと相まって、走行風の圧力で羽根車124をより強く回転させて、エンジン12へ適切に過給できる。このリダクション機構129を設けたことにより、羽根車123と羽根車124とを同等の大きさとしても、支障なくエンジン12へ適切に過給できる。
【0045】
すなわち、過給機127が吸気ダクト75側と走行風取入口111側とに分割され、吸気ダクト75側および、走行風取入口111側に、それぞれ羽根車123、124を設け、2つの羽根車123、124の軸128A、128Bは、リダクション機構129(変速機構)を介して連結され、走行風取入口111側に設けられた羽根車123の回転数を減速して、吸気ダクト75側に設けられた羽根車124に伝達する構成としてもよい。この構成によれば、走行風により回転される羽根車123の回転がリダクション機構129を介して、エンジン12への吸気を過給する羽根車124に伝達されるので、走行風の圧力によりエンジン12の吸気量に対して適切な過給を行うことができる。
【0046】
なお、軸128A、128Bの間に、変速機構として、軸128Aの回転を増速して軸128Bに伝える増速機構をリダクション機構129に代えて設けてもよい。この場合、羽根車123よりも高速で羽根車124が回転するので、例えば、大風量の走行風を取り込み可能であって羽根車123の回転トルクが強力な場合に、この強いトルクを生かして羽根車124を効率よく回転させることができる。
【0047】
また、吸気機構101は、エアクリーナーケース61と同様に箱形のエアクリーナーケース62(エアクリーナー)を有する。エアクリーナーケース62の内部は、エレメント70によってダーティーサイド71とクリーンサイド72とに区画され、ダーティーサイド71には外気を取り込む吸気ダクト75に加え、室121から出た走行風を取り込む走行風導入管155が設けられている。
【0048】
略円形に形成された室121の中心には、羽根車123を回転させた走行風が室121から出る出口として走行風排出管150が接続されている。走行風排出管150は室121の側方に突出してから自動二輪車10の車体後方に延び、その先端は2方向に分岐していて、一方は自動二輪車10の車体側方に向けて湾曲した側方排出管151となっており、他方はエアクリーナーケース62に繋がる走行風導入管155(エアクリーナー連通口)となっている。側方排出管151は、図1に示した走行風排出管130と同様にシート36の下方に達しており、側方排出管151の先端の走行風排出口152(走行風出口、開放口)は、シート36の下方で車体側方に向かって開口し、ここから走行風が車体の側方に向けて排気される。
【0049】
走行風排出管150が側方排出管151と走行風導入管155とに分岐する分岐箇所には、側方排出管151及び走行風導入管155を開閉するバルブ157が設けられ、バルブ157はECU170の制御に従って動作するアクチュエーター160により駆動される。アクチュエーター160は、バルブ157を動かして、走行風排出管150を流れる走行風を側方排出管151から排気するか、走行風導入管155からエアクリーナーケース62に送風するかを切り替える。
【0050】
ECU170は、エンジン12の回転数、自動二輪車10の走行速度、スロットル開度等を検出し、スロットルボディ52が有するインジェクタからの燃料噴射量等の制御等を行う制御装置である。ECU170は、検出した自動二輪車10の走行速度等に基づいてアクチュエーター160を制御して、スロットルボディ52への燃焼用空気の過給圧を調整し、効率よく適正な過給を実現する。具体的には、自動二輪車10の走行速度が予め設定された速度より高速の場合に、ECU170はアクチュエーター160を制御して、バルブ157により排気経路を側方排出管151に切り替える。また、自動二輪車10の走行速度が予め設定された速度以下の場合には、ECU170はアクチュエーター160を制御してバルブ157を動かし,排気経路を走行風導入管155に切り替える。
【0051】
これにより、走行風の風量が十分に多い状態では走行風を走行風排出口152から排出し、走行風の通風抵抗を減らすことにより、高速かつ大風量の走行風によって羽根車123を効率よく高速に回転させ、適正な過給を実現する。また、走行風の風量が少ない低速走行中は、走行風を直接エアクリーナーケース62に導き,このエアクリーナーケース62に吹き込む走行風の風圧によって燃焼用空気をスロットルボディ52に過給するので、適正な過給を実現できる。このため、自動二輪車10の走行速度が低速であっても高速であっても、エンジン12に対して適正な過給を行うことができる。
【0052】
また、ECU170は、例えば図示しないスイッチの操作に従って,アクチュエーター160を駆動してバルブ157による切り替えを行ってもよく、この場合、例えば、自動二輪車10が粉塵の多い環境を走行している間に、走行速度に関わらず走行風を常に走行風排出口152から排気して、エアクリーナーケース62への塵埃の進入を抑制することができる。
【0053】
このように、走行風取入口111から入り、過給機120を通過した走行風を排出する走行風排出管150を備え、走行風排出管150の後部は二股に分岐し、一方は外気に開放する走行風排出口152であり、他方はエアクリーナーケース61に連通する走行風導入管155であって、走行風排出口152と、走行風導入管155との分岐路には、走行風をどちらに排出するかを決定するバルブ157を備え、ECU170からの信号でバルブを作動させるアクチュエーター160を備えた構成としてもよい。この構成によれば、過給機120から走行風を外気に排気する状態と、過給機120を出た走行風をエアクリーナーケース61に導入する状態とを、ECU170がアクチュエーター160を制御してバルブ157を駆動することより切り替えられるので、高速域でも低速域でもエンジン12への適切な過給を実現することができる。
また、アクチュエーター160によってバルブ157を中間位置で静止させることで、走行風の一部を側方排出管151から排気し、残りを走行風導入管155からエアクリーナーケース62に送風することもできる。この場合,走行風排出管150からエアクリーナーケース62へ供給する走行風の風量を細かく調整できる。
【0054】
なお、上記第1及び第2の実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されない。例えば,上記各実施の形態では、エアクリーナーケース61は上下2分割で構成され、その分割面にエレメント70が設けられたものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一体的に構成されたエアクリーナーケース内に板状のエレメント70を設け、エレメント70を着脱するためのメンテナンス用のスリットを別に設けた構成としてもよい。また、過給機120が備える羽根車123、124は図1、2中反時計回りに回転する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、羽根車123、124が時計回りに回転する構成としてもよい。すなわち、室121、122の形状を上記の形状とは逆にして、走行風取入管110が過給機120の室121の上部に接続されるとともに、スロットルボディ52が室122の下部に接続され、室121、122内部の旋回流が上記の例とは逆向きに流れる構成としてもよい。羽根車123、124は、直線状に流れる気流により回転力を得ることが可能な形状であればよく、その大きさや羽根の数等は任意である。
また、上記各実施の形態では水冷4サイクル単気筒エンジンを有する自動二輪車に本願発明を適用した例を挙げて説明したが、エンジンが空冷エンジンであっても2サイクルエンジンであってもよいし、多気筒のエンジンであってもよく、チェーンにより後輪を駆動する自動二輪車に限らずシャフトドライブの自動二輪車に本発明を適用することも勿論可能である。
【0055】
また、上記の各実施の形態では、エンジン12に、インジェクタを有するスロットルボディ52が接続され、このスロットルボディ52に過給機120、127が過給する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、インジェクタが直接シリンダ内に燃料を噴射する、いわゆる直噴型のエンジンを有する自動二輪車にも適用可能であるし、スロットルボディ52に代えて、スロットルバルブを有するキャブレターを備えた自動二輪車にも適用可能である。これらのいずれの構成においても、本発明を適用してスロットルボディまたはキャブレターとエンジンの吸気口との間に過給機を設けた場合、上記各実施の形態と同様に走行風によってエンジンに適切に過給できるという効果が得られる。
その他、図1〜図5に図示していない部分を含め、自動二輪車10の細部構成および本発明の適用範囲は任意に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
10 自動二輪車(鞍乗型車両)
12 エンジン
35 燃料タンク
36 シート
43 シリンダヘッド
43A 吸気口
43B 排気口
44 シリンダヘッドカバー
52 スロットルボディ
61、62 エアクリーナーケース(エアクリーナー)
70 エレメント
71 ダーティーサイド
72 クリーンサイド
75 吸気ダクト
76 外気吸入口
100、101 吸気機構
110 走行風取入管(通路)
111 走行風取入口
120、127 過給機
121、122 室
123、124 羽根車
125 軸
128A、128B 軸
129 リダクション機構(変速機構)
130 走行風排出管
131 走行風出口
140 コネクティングチューブ
150 走行風排出管
151 側方排出管
152 走行風排出口(走行風出口、開放口)
155 走行風導入管(エアクリーナー連通口)
157 バルブ
160 アクチュエーター
170 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(12)へ吸気する吸気ダクト(75)が、鞍乗型車両(10)の車両後方に向かって開口するように設けられ、
前記吸気ダクトは、エアクリーナー(61、62)に接続され、前記エアクリーナーを介して前記エンジンの吸気側に接続された鞍乗型車両において、
前記エアクリーナーと前記エンジンの吸気口(43A)との間に過給機(120、127)を設け、
車両前方に向かって開口する走行風取入口(111)から、走行風を取り入れ、
前記過給機は、前記吸気ダクト側に設けられた一方の羽根車(124)により前記エンジンへ吸気を過給し、前記走行風取入口側に設けられて走行風を受けて回転する他方の羽根車(123)により前記一方の羽根車を駆動する
ことを特徴とする鞍乗型車両の吸気構造。
【請求項2】
前記エンジンは後方から吸気をし、前方から排気をすることを特徴とする請求項1記載の鞍乗型車両の吸気構造。
【請求項3】
前記吸気ダクト、及び、前記過給機から走行風を出す走行風出口(131、152)は、シート(36)下方に設けられることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗型車両の吸気構造。
【請求項4】
前記走行風取入口の通路(110)は、前記エンジンの上方を通り、上面視または下面視で前記エンジンのシリンダヘッド(43)と重なることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鞍乗型車両の吸気構造。
【請求項5】
前記過給機は前記吸気ダクト側と前記走行風取入口側との2室(121、122)に分割され、その2室につながる同軸(125)があり、その同軸につながる2つの羽根車(123、124)を設け、
一方の羽根車(124)は吸気ダクト側の室(122)に、他方の羽根車(123)は走行風取入口側の室(121)に設けられ、
前記走行風取入口側の室に設けられた羽根車は、前記吸気ダクト側の室に設けられた羽根車よりも面積が大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鞍乗型車両の吸気構造。
【請求項6】
前記過給機(127)は吸気ダクト側(122)と走行風取入口側(121)とに分割され、吸気ダクト側および、走行風取入口側に、それぞれ羽根車(123、124)を設け、
前記2つの羽根車の軸(128A、128B)は、変速機構(129)を介して連結され、
前記走行風取入口側に設けられた羽根車の回転数を変速して、前記吸気ダクト側に設けられた羽根車に伝達することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鞍乗型車両の吸気構造。
【請求項7】
前記走行風取入口から入り、前記過給機を通過した走行風を排出する走行風排出口(150)を備え、
前記走行風排出口の後部は二股に分岐し、一方は外気に開放する開放口(152)であり、他方は前記エアクリーナーに連通するエアクリーナー連通口(155)であって、
前記開放口と、前記エアクリーナー連通口との分岐路には、走行風をどちらに排出するかを決定するバルブ(157)を備え、
EC∪(170)からの信号で前記バルブを作動させるアクチュエーター(160)を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の鞍乗型車両の吸気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−202595(P2011−202595A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70963(P2010−70963)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】