説明

音叉ジャイロスコープ装置を有する2軸ヨーレート検知ユニット

【課題】単一の機械的な共振構造で構成できる、2軸ヨーレート検知ユニットを提供する。
【解決手段】反対に位置する2つの対を成して同一平面上に配置される4つの開放端音叉F1、F2、F3、F4を含み、第1の対の開放端音叉は第1の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、第2の対の開放端音叉は第2の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、第1の軸及び第2の軸は互いに対して垂直である。4つの開放端音叉は、4つの開放端音叉が全て周波数及び位相に関して同じように振動するように、機械的に互いに結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の機械的な共振構造を有する2軸ヨ−レート検知ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、動いている物体100及びコリオリの力に関して、振動ヨーレートセンサの動作原理を示しており、コリオリの力は、以下の公式によって表される。
【0003】
F=2Ω×V
ここで、Ωは回転座標系XYZの角速度ベクトルであり、Vは回転座標系XYZ内の動いている物体100の速度ベクトルである。この関連で、図1に示されるように、動いている物体100は、回転座標系XYZに対して固定されている観測者には、速度ベクトルV及び角速度ベクトルΩに対して垂直な方向において加速するように見えるであろう。
【0004】
上記の原理に従って動作する微小電気機械システム(MEMS)ジャイロスコープでは、コリオリの力は、その中に含まれる微小機械ビームにかかる応力を変化させることがある。たとえば、圧電又は圧抵抗の原理を用いて、その応力の変化を測定することができる。
【0005】
MEMSジャイロスコープは、自動車用及び民生用の電子機器のような用途を含む、多数の用途において用いられることがある。たとえば、MEMSジャイロスコープは、エレクトロニック・スタビリティ・プログラム(ESP)、ロールオーバセンサ、ナビゲーションシステム、コンピュータゲーム用入力デバイス、カムコーダ安定化、電子玩具等において用いられることがある。この関連で、集積回路(IC)製造技術及びMEMSバッチ工程を使用することにより、低コストで、極めてコンパクトで、集積度が高いジャイロスコープを提供することができ、そのようなジャイロスコープは、大量生産及びコスト重視の用途における従来の機械式又は光学式ジャイロスコープよりも、コスト効率が良く、使いやすい。
【0006】
MEMSジャイロスコープは、振動ジャイロスコープの様態で動作することができる。たとえば、非特許文献1は、振動リングジャイロスコープについて触れており、非特許文献2は、音叉ジャイロスコープについて触れており、非特許文献3は捩れ振動ジャイロスコープについて触れている。捩れ振動MEMSジャイロスコープを小型化するために、最小数の共振構造を用いて、2つ以上の方向においてヨーレートを検知することが望ましいであろう。しかしながら、2つの直交する方向における振動モードを結合することは困難であったので、Juneau等の参考文献において触れられている捩れ振動円板形ジャイロスコープを除いて、単一の音叉共振器構造を用いて、2つ以上の軸のヨーレートを検知するMEMSジャイロスコープは存在しない。
【0007】
2つ以上の軸方向においてヨーレートを検知するために、同じチップ上に2つの個別の振動ジャイロスコープを配置することができ、各ジャイロスコープは、2つの直交する方向のうちの一方においてヨーレートを検知するように配置される。この場合には、製造工程において固有の振動があるため、2つの全く同じく製造された振動ジャイロスコープであっても、共振周波数は全く同じにはならないであろう。それゆえ、そのようなシステムは、2つの別個の検出回路及び制御回路を必要とする。
【0008】
図8は1軸システム800を示しており、そのシステムは、MEMS部810と、評価電子回路820とを含む。MEMS部810は、駆動MEMS811と、コリオリMEMS812とを含む。評価電子回路820は、駆動電子回路821と、コリオリ検出電子回路822と、復調制御回路823とを含む。
【0009】
駆動電子回路821は、コリオリの効果を利用するために、MEMS部810がその共振周波数において所定の振幅で共振するように駆動し、コリオリの効果は、動いている質量の速度に比例し、その効果の結果として、コリオリ検出電子回路822によって測定されることになる力が生成される。この場合、駆動電子回路821は、自動利得制御(AGC)を設けられる。駆動MEMS811と駆動電子回路821とを結ぶ破線によって示されるように、その回路はオプションで、閉ループにおいて動作することもできる。
【0010】
コリオリ検出電子回路822は、コリオリの効果に起因して生成される力を測定する。駆動MEMS811は、駆動共振周波数において振動しているので、コリオリ信号は、駆動共振周波数と全く同じAC信号である。コリオリ共振周波数が、駆動共振周波数と全く同じであり、且つコリオリMEMSのQ値が高い場合には、コリオリ信号は、高い信号対雑音比を有するはずである。コリオリ検出電子回路822は、フロントエンド824と、復調器825と、LP826と備える。コリオリ検出電子回路822は、コリオリ検出電子回路822とコリオリMEMS812とを結ぶ破線によって示されるように、オプションで閉ループにおいて動作することができる。
【0011】
復調制御回路823は、駆動共振周波数の信号でコリオリフロントエンド824の出力を復調するための制御信号、及びコリオリループにおいてコリオリ信号をフィルタリングして除去するのに適した位相情報を与える。この場合、復調のための制御信号を生成するために、位相同期ループ(PLL)を用いることができる。しかしながら、そのような位相同期ループは、かなりの量のチップ面積及び電力を消費することがある。位相同期ループ(PLL)の使用は必須ではないが、位相同期ループ(PLL)は、付加的なクロックユニットの代わりに用いられることがある。
【0012】
図9は、2軸システム900を示しており、そのシステムは、図8の1軸システム800の電子回路を二重にする。そのように二重にする場合、2軸システム900は、2つの別個の駆動共振周波数を必要とし、その周波数は等しいという保証はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Putty及びNajafi、Tech. Dig. Solid-State Sensor and Actuator Workshop, Hilton Head Island, South Carolina, June 1994, pages213-220
【非特許文献2】Bernstein他、MEMS’93, Fort Lauderdale, Florida, February 1993, pages 143-148
【非特許文献3】Juneau他、Tech. Dig. 9th International Conference on Solid State Sensors and Actuators(Transducers’97), Chicago, Illinois, June 1997, pages 883-886
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの例示的な実施形態は、単一の機械的な共振構造に基づく、1つの例示的な2軸ヨーレート検知ユニットを提供する。すなわち、2つの軸方向においてヨーレートを同時に検知するための少なくとも2つの共振構造を必要とする、他の先行する振動ジャイロスコープとは異なり、本発明の例示的な2軸ヨーレート検知ユニットは、単一の共振構造だけを用いて、2つの軸方向において同時にヨーレートを検知することができる。
【0015】
本発明の例示的な2軸ヨーレート検知ユニットは、1つのマスクだけを用いて製造することができる。言い換えると、アンカー、個々の音叉、及びその結合部品を画定するのに1つのマスクで十分である。その例示的な2軸ヨーレート検知ユニットは、容量性及び/又は圧電性素子を用いる駆動装置と、容量性、圧電性及び/又はピエゾ抵抗素子を有する検知装置とを含むことができる。
【0016】
本発明の1つの例示的な実施の形態は、2軸ヨーレートセンサであって、反対に位置する2つの対を成して同一平面上に配置される4つの開放端音叉を含み、第1の対の開放端音叉は第1の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、第2の対の開放端音叉は第2の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、第1の軸及び第2の軸は互いに対して垂直であり、4つの開放端音叉は、4つの開放端音叉が全て周波数及び位相に関して同じように振動するように、機械的に互いに結合される、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0017】
本発明の別の実施の形態は、音叉を固定すると共に音叉が機械的に互いに結合される共通点としての役割を果たすアンカーをさらに備える、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0018】
本発明のさらに別の実施の形態は、音叉のうちの少なくとも1つを振動させるように構成される少なくとも一対の駆動電極をさらに備える、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0019】
本発明のまた別の実施の形態は、少なくとも一対の駆動電極を共通の周波数において駆動するための駆動ユニットをさらに備える、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0020】
本発明のさらに別の実施の形態は、少なくとも一対の駆動電極は、静電力を生成するように動作する、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0021】
本発明のまた別の実施の形態は、少なくとも一対の駆動電極は、圧電力を生成するように動作する、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0022】
本発明のさらに別の実施の形態は、音叉のうちの少なくとも1つの振動を検知するように動作する少なくとも一対の検知電極をさらに備える、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0023】
本発明のまた別の実施の形態は、共通の周波数の少なくとも一対の検知電極からの検出信号を処理するための共通検知ユニットであって、検出信号は、2つの軸方向におけるヨーレートを表す、共通検知ユニットを備える、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0024】
本発明のさらに別の実施の形態は、少なくとも一対の検知電極は容量性電極として動作する、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0025】
本発明のまた別の実施の形態は、少なくとも一対の検知電極は圧電性電極として動作する、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0026】
本発明のさらに別の実施の形態は、少なくとも一対の検知電極はピエゾ抵抗性電極として動作する、2軸ヨーレートセンサを対象とする。
【0027】
本発明のまた別の実施の形態は、ヨーレートセンサであって、2つの軸方向においてヨーレートを同時に検知するための単一共振構造であって、当該単一共振構造は、4つの開放端音叉を含み、当該開放端音叉は、4つの開放端音叉が全て周波数及び位相に関して同じように振動するように共通点において機械的に互いに結合される、単一共振構造を備える、ヨーレートセンサを対象とする。
【0028】
本発明のさらに別の実施の形態は、共通周波数において、音叉を振動させるための単一の駆動ユニットをさらに備える、ヨーレートセンサを対象とする。
【0029】
本発明のまた別の実施の形態は、共通周波数において、2つの軸方向における音叉の振動を同時に検知するための単一の検知ユニットをさらに備える、ヨーレートセンサを対象とする。
【0030】
本発明のさらに別の実施の形態は、音叉の振動を検知するための2つの検知ユニットであって、2つの検知ユニットのそれぞれが、2つの軸方向のうちの1方の方向においてヨーレートを検知する、2つの検知ユニットをさらに備える、ヨーレートセンサを対象とする。
【0031】
本発明のまた別の実施の形態は、ヨーレートセンサであって、複数の開放端音叉であって、音叉が全て周波数及び位相に関して同じように振動するように、機械的に互いに結合される、複数の開放端音叉を備える、ヨーレートセンサを対象とする。
【0032】
本発明のさらに別の実施の形態は、共通周波数において、複数の音叉を振動させるための単一の駆動ユニットをさらに備える、ヨーレートセンサを対象とする。
【0033】
本発明のまた別の実施の形態は、共通周波数において、2つ以上の軸方向における音叉の振動を同時に検知するための単一の検知ユニットをさらに備える、ヨーレートセンサを対象とする。
【0034】
本発明のさらに別の実施の形態は、複数の開放端音叉は、反対に位置する2つの対を成して同一平面上に配置され、第1の対の開放端音叉は第1の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、第2の対の開放端音叉は第2の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、第1の軸及び第2の軸は互いに対して垂直である、ヨーレートセンサを対象とする。
【0035】
本発明のまた別の実施の形態は、ヨーレートセンサであって、第1のコリオリ構成要素、第2のコリオリ構成要素、第1のコリオリ構成要素を駆動する第1の駆動構成要素、及び第2のコリオリ構成要素を駆動する第2の駆動構成要素を含むMEMS装置であって、第1の駆動構成要素及び第2の駆動構成要素は、それぞれが周波数及び位相に関して同じように振動するように、互いに機械的に結合される、MEMS装置と、第1の駆動構成要素及び第2の駆動構成要素を駆動するための共通駆動装置とを備える、ヨーレートセンサを対象とする。
【0036】
本発明のさらに別の実施の形態は、第1のコリオリ装置及び第2のコリオリ装置に結合される共通評価装置をさらに備える、ヨーレートセンサを対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】動いている物体及びコリオリの効果に関する振動ヨーレートセンサの動作原理を示す図である。
【図2】単一の共振構造だけを用いて、2つの軸方向においてヨーレートを同時に検知するための例示的なヨーレート検知ユニットの平面図である。
【図3】図2の例示的なヨーレート検知ユニットの例示的な動作モードによる動作を示す図である。
【図4A】容量性原理に従って動作する例示的なヨーレート検知ユニットの平面図である。
【図4B】図4Aの例示的なヨーレート検知ユニットの側面図である。
【図5A】圧電性原理に従って動作する例示的なヨーレート検知ユニットの平面図である。
【図5B】図5Aの例示的なヨーレート検知ユニットの側面図である。
【図6A】ピエゾ抵抗性原理に従って動作する例示的なヨーレート検知ユニットの平面図である。
【図6B】図6Aの例示的なヨーレート検知ユニットの側面図である。
【図7】容量性原理に従って動作する例示的なヨーレート検知ユニットのための例示的な駆動及び検知回路図である。
【図8】従来の1軸システムを示す図である。
【図9】図8の1軸システムの電子回路を二重にする、従来の2軸システムを示す図である。
【図10】本願発明の1つの例示的な実施形態に従って、ただ1つの駆動電子回路と復調のためのただ1つの制御回路とを有する、2軸ヨーレートシステムを示す図である。
【図11】本願発明の1つの例示的な実施形態に従って、コリオリループのための1つのマルチプレクサが続いて接続される、ただ1つのフロントエンドを用いる2軸ヨーレートシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、本発明の1つの例示的な2軸ヨーレート検知システムは、4つの個別の開放端音叉を含み、それらの音叉はそれぞれ、+X、−X、+Y及び−Y方向に沿って配置することができる。4つの開放端音叉は、製造工程に差があっても、4つ全ての音叉が周波数及び位相に関して同じように振動することになるように、機械的に互いに結合される。この関連で、音叉が互いに機械的に結合される点は、音叉を固定するための役割も果たすことができる。
【0039】
4つの個別の開放端音叉の対称で、釣り合ったトポロジに起因して、任意の個別の音叉が振動する結果として、他の音叉が全く同じ周波数で振動し、ジャイロユニットの基本動作を引き起こすことになるので、例示的な2軸ヨーレート検知ユニットの駆動構成及び検知構成はいずれも、他の先行する振動ジャイロスコープに比べて簡単にすることができる。たとえば、−X軸方向に沿って配置される音叉が駆動される(すなわち、振動する)場合には、+X、+Y及び−Y軸方向に沿って配置される他の3つの音叉も同じ周波数で振動するであろう。代替的に、はっきりした位相を達成するために、駆動音叉として2つの音叉を用いてもよい。たとえば、−X方向に沿って配置される音叉及び+Y軸方向に沿って配置される音叉の両方が駆動される場合には、中央での機械的な結合に起因して、+X及び−Y軸方向に沿って配置される他の2つの音叉も振動するであろう。こうして、−X及び+Y軸方向に沿って配置される音叉が駆動されるとき、+X及び−Y方向に沿って配置される他の2つの音叉は検知音叉としての役割を果たす。信号検出に関しては、2方向ヨーレートを検知するための素子が全く同じ周波数において振動するので、その検出信号は、単一の検知ユニットを用いて処理することができる。
【0040】
図2は、単一の共振構造だけを用いて、2つの軸方向においてヨーレートを同時に検知するための例示的なヨーレート検知ユニット200の平面図を示す。その例示的なヨーレート検知ユニット200は、+X、−X、+Y及び−Y軸方向に沿ってそれぞれ配置される4つの個別の音叉F1〜F4を含む。すなわち、個別の音叉F1は+X軸方向に沿って配置され、個別の音叉F2は−X軸方向に沿って配置され、個別の音叉F3は+Y軸方向に沿って配置され、個別の音叉F4は−Y軸方向に沿って配置される。
【0041】
4つの個別の音叉F1〜F4は中央の場所においてアンカーを介して機械的に互いに結合され、アンカーは4つの個別の音叉F1〜F4を下にある基板に固定することができる。したがって、4つの個別の音叉F1〜F4は全く(少なくとも実用的には)同じ周波数において振動する。それゆえ、4つの個別の音叉のうちのいずれか1つが振動する場合には、他の3つの音叉も同じ周波数において振動する。
【0042】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、+X及び−X軸方向に沿ってそれぞれ配置される2つの個別の音叉F1及びF2を用いて、X軸に沿ってヨーレートを検知することができ、+Y及び−Y軸方向に沿ってそれぞれ配置される2つの個別の音叉F3及びF4を用いて、Y軸に沿ってヨーレートを検知することができる。本発明の別の例示的な実施形態によれば、4つの個別の音叉のそれぞれが、個々の駆動電極及び検知電極を有する個別のジャイロスコープとして動作する。駆動電極は、たとえば、容量性及び/又は圧電性原理に従って動作することができる。検知電極は、たとえば、容量性、圧電性及び/又はピエゾ抵抗性原理に従って動作することができる。
【0043】
図3は、図2の例示的なヨーレート検知ユニットの例示的な動作モードによる動作を示しており、音叉F1〜F4が振動して、X軸及びY軸に沿って角速度を検知する。詳細には、音叉F1及びF2が振動して、X軸に沿った角速度ベクトルΩを検知し、音叉F3及びF4が振動して、Y軸に沿った角速度ベクトルΩを検知する。
【0044】
図4A及び図4Bはそれぞれ、容量性原理に従って動作する、1つの例示的なヨーレート検知ユニット400の平面図及び側面図である。その例示的なヨーレート検知ユニット400は、4つの個別の音叉F1〜F4と、駆動電極と、検知電極と、基板とを含む。4つの個別の音叉F1〜F4はそれぞれ、+X、−X、+Y及び−Y軸方向に沿って配置され、中央の場所においてアンカーを介して機械的に互いに結合され、アンカーは4つの個別の音叉F1〜F4を基板に固定する。駆動電極は、4つの個別の音叉F1〜F4のそれぞれの各共振構造の外側に沿って、対を成して配置される。検知電極は、4つの個別の音叉F1〜F4のそれぞれの各共振構造の上下に対を成して配置される。この関連で、各共振構造の下に配置される検知電極は、基板上に直に配置することができる。各共振構造の上に配置される検知電極はオプションにすることができる。ここで、共振構造に対する検知電極の特定の配置が、製造工程を容易にすることができ、且つ/又は雑音を相殺するのを助けることができる。たとえば、共振構造上に検知電極を配置することによって、製造工程の複雑さを低減するのを助けることができ、一方、共振構造の上面及び底面に検知電極を配置することによって、出力信号雑音を相殺するのを助けることができる。
【0045】
1つの例示的な実施形態によれば、駆動電極を個別に動作させて、単一の音叉、2つの直交する音叉、及び/又は4つ全ての音叉を駆動することができる。
【0046】
図5A及び図5Bはそれぞれ、圧電性原理に従って動作する、1つの例示的なヨーレート検知ユニット500の平面図及び側面図である。その例示的なヨーレート検知ユニット500は、4つの個別の音叉F1〜F4と、駆動電極と、検知電極とを含む。4つの個別の音叉F1〜F4はそれぞれ、+X、−X、+Y及び−Y軸方向に沿って配置され、中央の場所においてアンカーを介して機械的に互いに結合される。駆動電極は、4つの個別の音叉F1〜F4のそれぞれの各共振構造の外側に沿って、対を成して配置される。検知電極は、4つの個別の音叉F1〜F4のそれぞれの各共振構造の上下に対を成して配置される。各共振構造の上に配置される検知電極はオプションにすることができる。
【0047】
1つの例示的な実施形態によれば、駆動電極を個別に動作させて、単一の音叉、2つの直交する音叉、及び/又は4つ全ての音叉を駆動することができる。
【0048】
検知信号は、4つ全ての個別の音叉F1〜F4からもたらされることがあるか、又は2つの直交する音叉だけからもたらされることがある。
【0049】
図6A及び図6Bはそれぞれ、ピエゾ抵抗性原理に従って動作する、1つの例示的なヨーレート検知ユニット600の平面図及び側面図である。その例示的なヨーレート検知ユニット600は、4つの個別の音叉F1〜F4と、ピエゾ抵抗素子とを含む。4つの個別の音叉F1〜F4はそれぞれ、+X、−X、+Y及び−Y軸方向に沿って配置され、中央の場所においてアンカーを介して機械的に互いに結合される。ピエゾ抵抗素子は、4つの個別の音叉F1〜F4のそれぞれの各共振構造の上面及び/又は底面に配置される。
【0050】
1つの例示的な実施形態によれば、その例示的なヨーレート検知ユニット600は、静電力又は圧電力を用いて駆動される。検知は、ピエゾ抵抗率を介して達成される。
【0051】
図7は、容量性原理に従って動作する1つの例示的なヨーレート検知ユニットの1つの例示的な駆動及び検知回路図を示す。ここでは、1つの駆動回路しか必要としない。
【0052】
図10は、ただ1つの駆動電子回路と、復調のためのただ1つの制御回路とを有する1つの例示的な2軸ヨーレートシステム1000を示しており、それはチップ空間要件を緩和し、消費電力を低減する。その例示的な2軸ヨーレートシステム1000は、MEMS装置又はMEMS部1010と、評価電子回路1020とを含む。MEMS部1010は、第1の駆動MEMS1011aと、第2の駆動MEMS1011bと、第1のコリオリMEMS1012aと、第2のコリオリMEMS1012bとを含む。この関連で、第1の駆動MEMS1011a及び第2の駆動MEMS1011bは、一方が駆動される(すなわち、振動する)場合には、他方も同じ共振周波数で振動するように、機械的に互いに結合される。評価電子回路1020は、駆動電子回路1021と、第1のコリオリ検出電子回路1022aと、第2のコリオリ検出電子回路1022bと、復調制御回路1023とを含む。
【0053】
駆動電子回路1021は、コリオリの効果を利用するために、MEMS部1010(すなわち、第1の駆動MEMS1011a及び第2の駆動MEMS1011b)がその共振周波数において所定の振幅で共振するように駆動し、コリオリの効果は、動いている質量の速度に比例し、その効果の結果として、第1のコリオリ検出電子回路1022a及び第2のコリオリ検出電子回路1022bによって測定される力が生成される。この場合、駆動電子回路1021は、自動利得制御(AGC)を設けられる。第1の駆動MEMS1011aと駆動電子回路1021とを結ぶ破線は、回路がオプションで、閉ループにおいて動作することができることを示す。
【0054】
第1のコリオリ検出電子回路1022a及び第2のコリオリ検出電子回路1022bは、コリオリの効果に起因して生成される力を測定する。第1の駆動MEMS1011a及び第2の駆動MEMS1011bは同じ駆動共振周波数において振動しているので、コリオリ信号は、その駆動共振周波数のAC信号である。コリオリ共振周波数が駆動共振周波数と同じであり、コリオリMEMSのQ値が高い場合には、コリオリ信号は高い信号対雑音比を有するはずである。第1のコリオリ検出電子回路1022a及び1022bはそれぞれ、フロントエンド1024a又は1024bと、復調器1025a又は1025bと、LP1026a又は1026bとを含む。第1のコリオリ検出電子回路1022a及び第2のコリオリ検出電子回路1022bは、第1のコリオリ検出電子回路1022aと第1のコリオリMEMS1012aとを結び、第2のコリオリ検出電子回路1022bと第2のコリオリMEMS1012bとを結ぶ破線によって示されるように、オプションで閉ループにおいて動作することができる。
【0055】
復調制御回路1023は、駆動共振周波数の信号で第1のコリオリフロントエンド1024a及び第2のコリオリフロントエンド1024bのそれぞれの出力を復調するための制御信号、及びコリオリループにおいてコリオリ信号をフィルタリングして除去するのに適した位相情報を与える。この場合、復調のための制御信号を生成するために、位相同期ループ(PLL)を用いることができる。
【0056】
図11は、1つの例示的な2軸ヨーレートシステム1100を示しており、両方の駆動ループが同じ周波数において動作する場合には、フロントエンド間の多重化が容易に実行されるので、そのシステムが、コリオリループのために使用するのは、ただ1つのフロントエンドと、それに接続される1つのマルチプレクサである。その例示的な2軸ヨーレートシステム1100は、MEMS部1110と、評価電子回路1120とを含む。MEMS部1110は、第1の駆動MEMS1111aと、第2の駆動MEMS1111bと、第1のコリオリMEMS1112aと、第2のコリオリMEMS1112bとを含む。この関連で、第1の駆動MEMS1111a及び第2の駆動MEMS1111bは、一方が駆動される(すなわち、振動する)場合には、他方も同じ共振周波数で振動するように、機械的に互いに結合される。評価電子回路1120は、駆動電子回路1121と、コリオリ検出電子回路1122と、復調制御回路1123とを含む。
【0057】
駆動電子回路1121は、コリオリの効果を利用するために、MEMS部1110(すなわち、第1の駆動MEMS1111a及び第2の駆動MEMS1111b)がその共振周波数において所定の振幅で共振するように駆動し、コリオリの効果は、動いている質量の速度に比例し、その効果の結果として、コリオリ検出電子回路1122によって測定される力が生成される。この場合、駆動電子回路1121は、自動利得制御(AGC)を設けられる。第1の駆動MEMS1111と駆動電子回路1121とを結ぶ破線は、回路がオプションで、閉ループにおいて動作することができることを示す。
【0058】
コリオリ検出電子回路1122は、コリオリの効果に起因して生成される力を測定する。第1の駆動MEMS1111a及び第2の駆動MEMS1111bは同じ駆動共振周波数において振動しているので、コリオリ信号は、その駆動共振周波数のAC信号である。コリオリ共振周波数が駆動共振周波数と同じであり、コリオリMEMSのQ値が高い場合には、コリオリ信号は高い信号対雑音比を有するはずである。コリオリ検出電子回路1122は、マルチプレクサ1127と、フロントエンド1124と、デマルチプレクサ1128と、第1の復調器1125aと、第2の復調器1125bと、第1のLP1126aと、第2のLP1126bとを含む。コリオリ検出電子回路1122は、コリオリ検出電子回路1122と、第1のコリオリMEMS1112a及び第2のコリオリMEMS1112bのそれぞれとを結ぶ破線によって示されるように、オプションで閉ループにおいて動作することができる。
【0059】
復調制御回路1123は、駆動共振周波数の信号でコリオリフロントエンド1124の出力を復調するための制御信号、及びコリオリループにおいてコリオリ信号をフィルタリングして除去するのに適した位相情報を与える。この場合、復調のための制御信号を生成するために、位相同期ループ(PLL)を用いることができる。
(参考発明1)
2軸ヨーレートセンサであって、
反対に位置する2つの対を成して同一平面上に配置される4つの開放端音叉を含み、第1の対の開放端音叉は第1の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、第2の対の開放端音叉は第2の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、該第1の軸及び該第2の軸は互いに対して垂直であり、
前記4つの開放端音叉は、前記4つの開放端音叉は全て周波数及び位相に関して同じように振動するように、機械的に互いに結合される、2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明2)
前記音叉を固定すると共に、前記音叉が機械的に互いに結合される共通点としての役割を果たすアンカーをさらに備える、参考発明1に記載の2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明3)
前記音叉のうちの少なくとも1つを振動させるように構成される少なくとも一対の駆動電極をさらに備える、参考発明2に記載の2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明4)
前記少なくとも一対の駆動電極を共通の周波数において駆動するための駆動ユニットをさらに備える、参考発明3に記載の2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明5)
前記少なくとも一対の駆動電極は、静電力を生成するように動作する、参考発明4に記載の2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明6)
前記少なくとも一対の駆動電極は、圧電力を生成するように動作する、参考発明4に記載の2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明7)
前記音叉のうちの少なくとも1つの振動を検知するように動作する少なくとも一対の検知電極をさらに備える、参考発明4に記載の2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明8)
前記共通の周波数の前記少なくとも一対の検知電極からの検出信号を処理するための共通検知ユニットであって、前記検出信号は、2つの軸方向におけるヨーレートを表す、共通検知ユニットをさらに備える、参考発明7に記載の2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明9)
前記少なくとも一対の検知電極は容量性電極として動作する、参考発明8に記載の2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明10)
前記少なくとも一対の検知電極は圧電性電極として動作する、参考発明8に記載の2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明11)
前記少なくとも一対の検知電極はピエゾ抵抗性電極として動作する、参考発明8に記載の2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明12)
ヨーレートセンサであって、
少なくとも2つの軸方向において前記ヨーレートを同時に検知するための単一共振構造であって、該単一共振構造は、少なくとも4つの開放端音叉を含み、該開放端音叉は、該開放端音叉が全て周波数及び位相に関して同じように振動するように共通点において機械的に互いに結合される、単一共振構造を備える、ヨーレートセンサ。
(参考発明13)
前記共通周波数において、前記音叉を振動させるための単一の駆動ユニットをさらに備える、参考発明12に記載のヨーレートセンサ。
(参考発明14)
前記共通周波数において、前記少なくとも2つの軸方向における前記音叉の振動を同時に検知するための単一の検知ユニットをさらに備える、参考発明13に記載のヨーレートセンサ。
(参考発明15)
前記音叉の振動を検知するための複数の検知ユニットであって、該検知ユニットのそれぞれが、少なくとも2つの軸方向のうちの1つの方向において前記ヨーレートを検知する、複数の検知ユニットをさらに備える、参考発明13に記載のヨーレートセンサ。
(参考発明16)
ヨーレートセンサであって、
複数の開放端音叉であって、前記音叉が全て周波数及び位相に関して同じように振動するように機械的に互いに結合される、複数の開放端音叉を備える、ヨーレートセンサ。
(参考発明17)
前記共通周波数において、前記複数の音叉を振動させるための単一の駆動ユニットをさらに備える、参考発明16に記載のヨーレートセンサ。
(参考発明18)
前記共通周波数において、2つ以上の軸方向における前記音叉の振動を同時に検知するための単一の検知ユニットをさらに備える、参考発明17に記載のヨーレートセンサ。
(参考発明19)
前記複数の開放端音叉は、反対に位置する2つの対を成して同一平面上に配置され、第1の対の開放端音叉は第1の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、第2の対の開放端音叉は第2の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、該第1の軸及び該第2の軸は互いに対して垂直である、参考発明16に記載のヨーレートセンサ。
(参考発明20)
2軸ヨーレートセンサであって、
第1のコリオリ構成要素、第2のコリオリ構成要素、該第1のコリオリ構成要素を駆動する第1の駆動構成要素、及び該第2のコリオリ構成要素を駆動する第2の駆動構成要素を含むMEMS装置であって、前記第1の駆動構成要素及び前記第2の駆動構成要素は、それぞれが周波数及び位相に関して同じように振動するように、互いに機械的に結合される、MEMS装置と、
前記第1の駆動構成要素及び前記第2の駆動構成要素を駆動するための共通駆動装置とを備える、2軸ヨーレートセンサ。
(参考発明21)
前記第1のコリオリ装置及び前記第2のコリオリ装置に結合される共通評価装置をさらに備える、参考発明21に記載の2軸ヨーレートセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーレートセンサであって、
少なくとも2つの軸方向において前記ヨーレートを同時に検知するための単一共振構造であって、該単一共振構造は、少なくとも4つの開放端音叉を含み、該開放端音叉は、該開放端音叉が全て周波数及び位相に関して同じように振動するように共通点において機械的に互いに結合される、単一共振構造を備える、ヨーレートセンサ。
【請求項2】
前記共通周波数において、前記音叉を振動させるための単一の駆動ユニットをさらに備える、請求項1に記載のヨーレートセンサ。
【請求項3】
前記共通周波数において、前記少なくとも2つの軸方向における前記音叉の振動を同時に検知するための単一の検知ユニットをさらに備える、請求項2に記載のヨーレートセンサ。
【請求項4】
前記音叉の振動を検知するための複数の検知ユニットであって、該検知ユニットのそれぞれが、少なくとも2つの軸方向のうちの1つの方向において前記ヨーレートを検知する、複数の検知ユニットをさらに備える、請求項2に記載のヨーレートセンサ。
【請求項5】
ヨーレートセンサであって、
複数の開放端音叉であって、前記音叉が全て周波数及び位相に関して同じように振動するように機械的に互いに結合される、複数の開放端音叉を備える、ヨーレートセンサ。
【請求項6】
前記共通周波数において、前記複数の音叉を振動させるための単一の駆動ユニットをさらに備える、請求項5に記載のヨーレートセンサ。
【請求項7】
前記共通周波数において、2つ以上の軸方向における前記音叉の振動を同時に検知するための単一の検知ユニットをさらに備える、請求項6に記載のヨーレートセンサ。
【請求項8】
前記複数の開放端音叉は、反対に位置する2つの対を成して同一平面上に配置され、第1の対の開放端音叉は第1の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、第2の対の開放端音叉は第2の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、該第1の軸及び該第2の軸は互いに対して垂直である、請求項5に記載のヨーレートセンサ。
【請求項9】
2軸ヨーレートセンサであって、
第1のコリオリ構成要素、第2のコリオリ構成要素、該第1のコリオリ構成要素を駆動する第1の駆動構成要素、及び該第2のコリオリ構成要素を駆動する第2の駆動構成要素を含むMEMS装置であって、前記第1の駆動構成要素及び前記第2の駆動構成要素は、それぞれが周波数及び位相に関して同じように振動するように、互いに機械的に結合される、MEMS装置と、
前記第1の駆動構成要素及び前記第2の駆動構成要素を駆動するための共通駆動装置とを備える、2軸ヨーレートセンサ。
【請求項10】
前記第1のコリオリ装置及び前記第2のコリオリ装置に結合される共通評価装置をさらに備える、請求項9に記載の2軸ヨーレートセンサ。
【請求項11】
2軸ヨーレートセンサであって、
反対に位置する2つの対を成して同一平面上に配置される4つの開放端音叉を含み、第1の対の開放端音叉は第1の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、第2の対の開放端音叉は第2の軸に沿って互いに反対の位置に配置され、該第1の軸及び該第2の軸は互いに対して垂直であり、
前記音叉を固定すると共に、前記音叉が機械的に互いに結合される共通点としての役割を果たすアンカーと、
前記音叉のうちの少なくとも1つの振動を検知するように動作する少なくとも一対の検知電極とを備え、
前記4つの開放端音叉は、全て周波数及び位相に関して同じように振動するように、機械的に互いに結合され、
前記少なくとも一対の検知電極は、アンカー近傍で音叉の横に配置されている、2軸ヨーレートセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−198224(P2012−198224A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−109870(P2012−109870)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2009−524699(P2009−524699)の分割
【原出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】