音声モニタ方法及び音声モニタ装置
【課題】源数が3つ以上の場合でも視覚的な音場表現を可能とする音声モニタ装置を提供する。
【解決手段】A/D変換部14により視聴領域の周辺に配置された3以上のスピーカ131〜13nの出力信号を取り込んで人間の目で見て連続と思われる程度の時間間隔でサンプリング処理を施してデジタル化し、DSP15にて各サンプリング値を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを合成して表示部18に表示するようにしている。
【解決手段】A/D変換部14により視聴領域の周辺に配置された3以上のスピーカ131〜13nの出力信号を取り込んで人間の目で見て連続と思われる程度の時間間隔でサンプリング処理を施してデジタル化し、DSP15にて各サンプリング値を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを合成して表示部18に表示するようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の音声出力装置から出力される各音声信号による音場(音の広がり具合)をモニタする音声モニタ方法及び音声モニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アナログ方式のテレビジョン放送システムでは、主放送番組の映像信号に、ステレオ/モノラル・吹き替え等のための主・副音声信号を多重して放送し、受信側で多重信号を分離し、視聴番組のステレオ再生/モノラル再生、吹き替え再生等を選択可能な機能を持たせている。また、上記放送システムでは、受信側で2以上のプログラム、例えば主音声及び副音声を同時に聴取することも可能である。
【0003】
ところで、上記放送システムでは、ステレオ音場を確認する場合、通常スピーカやヘッドホンにより聴覚で確認するが、2つ以上のプログラム(例えば主音声・副音声)がある場合などは視覚で確認する方法がある。
【0004】
この視覚で確認する方法は、モノラルの場合、音源が1つであり、VUメーターなどによる方法だけである。ステレオの場合は音源が2つであり、2つのVUメーターによる方法のほか、X−Yスコープによる方法が使われている(例えば、特許文献1)。この場合、左チャンネルと右チャンネルの音声信号をX軸/Y軸の信号とし、リサージュ波形の広がりでステレオ音場を表している(X軸/Y軸を予め45度傾け、位相の合う方向を垂直にしている場合もある)。
【特許文献1】特開平7−107600号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、地上波放送システムにおいて、デジタル放送が開始されており、このデジタル放送においては、モノラル/ステレオ再生モードの他に、5.1チャンネル方式ステレオ再生モード等があり、3つ以上の音源を必要とすることになる。この場合、X−Yスコープによる方法では音場を表現できない。
【0006】
そこで、この発明の目的は、音源数が3つ以上の場合でも視覚的な音場表現を可能とする音声モニタ方法及び音声モニタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するために、以下のように構成される。
放送信号の視聴領域の周辺の3以上の複数個所それぞれに設置される音声出力装置の出力信号を表示器に表示する音声モニタ装置において、複数の音声出力装置それぞれの出力信号を取り込み、各出力信号を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを演算処理する演算処理手段と、この演算処理手段による演算結果を各音声出力装置の出力信号による音場として表示器に表示する表示制御手段とを備えるようにしたものである。
【0008】
この構成によれば、視聴領域の周辺に設置された3以上の音声出力装置の出力信号を取り込んで、各出力信号を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを合成するようにしているので、この合成ベクトルの大きさや位相差により音場を表すことができる。
【0009】
演算処理手段は、複数の音声出力装置に挟まれる範囲について複数の音声出力装置の出力信号を時間軸上でサンプリング処理し、各出力信号のサンプリング値を視聴点からの任意の方向に対する複数のベクトルとして演算処理することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、人間の目で見て連続と思われる程度の時間間隔で音声出力装置の出力信号をサンプリングし、このサンプリング値を視聴点からの任意の方向に対する複数のベクトルとして演算処理することにより、従来のリサージュなどと同様の感覚でモニタリングを行なうことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したようにこの発明によれば、音源数が3つ以上の場合でも視覚的な音場表現を可能とする音声モニタ方法及び音声モニタ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明に係わる音声モニタ装置を備える視聴システムの構成を示すブロック図である。符号11は音声再生処理部で、指定モードに応じて入力した音声信号から主音声、副音声またはステレオ左右音声(L,S)、その他の複数音声の各信号に分離して出力する。これら複数の音声信号は、アンプ121〜12n(nは自然数)で所定レベル増幅された後、視聴領域の周辺に配置される音声出力装置としてのスピーカ131〜13nに供給されて音響再生される。
【0013】
一方、音声再生処理部11から出力された複数の音声信号は、A/D(Analog/Digital)変換部14でサンプリング処理されることでデジタル信号に変換されてDSP(Digital Signal Processor)15に供給される。
【0014】
このDSP15は、入力されたデジタル信号を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを合成する等の演算処理を施すものである。DSP15で得られた演算結果は、メモリマッピング部16で所定のメモリマッピング処理を受けた後、表示制御部17により表示部18に表示される。
【0015】
次に、上記構成における運用について説明する。
音声再生処理部11では、指定モードが主/副多重音声かモノラル音声かステレオ音声からを判断する。主/副音声同時出力の場合は、入力された音声信号から主音声と副音声とを分離し、主音声を左用音声としてスピーカ131へ供給し、副音声を右用音声としてスピーカ132へ供給する。
【0016】
一方、ステレオ音声と判断された場合、音声再生処理部11は左右の音声信号を合成し、この合成音声信号をスピーカ131,132に均等に振り分けて供給する。また、モノラル音声と判断された場合、音声再生処理部11はモノラル音声信号をスピーカ131,132に均等に振り分けて供給する。
【0017】
ここで、ステレオ音場を表示部18で視認するために、X−Yスコープによる方法が使われている。スピーカ131(左)用とスピーカ132(右)用の音声信号をX軸/Y軸の信号とし、リサージュ波形の広がりでステレオ音場を表している。
【0018】
リサージュ波形の場合、図2及び図3に示すように、完全な同相または逆相の場合には直線で表される。また、同相より少し位相差のある場合には、図4に示すように楕円で表される。
【0019】
しかし、3つ以上の音源(スピーカ131〜13n)を持つステレオの場合、従来のX−Yスコープによる方法では音場を表現できない。
【0020】
そこで、本実施形態では、聴取点からの任意の方向に対し、各音源のベクトル成分を表示することで、音源数が3つ以上の場合でも視覚的な音場表現を可能としている。
【0021】
図5は、ベクトル表示による音場表示の原理を示す。1つの音源に対し、聴取点からの任意の方向(Vθ)に対し、その方向の成分を考える。音源を見込む方向に対し、左右に45°(π/4)ずつの範囲を音場と考え、ベクトルの先端を結ぶと、円形の図形が得られる。2つ以上の音源の場合には、この1つの音源による音場を重ね合わせることにより、表す。
【0022】
図6は、聴取点から2つの音源(スピーカ131(L),132(R))を見込む角度が直角の場合のベクトル合成例を示す。2つの音源が作る音場内の、聴取点からの任意の方向(Vθ)に対し、各音源のその方向の成分の和を求め、その方向のベクトルの値(大きさ)とする。これを2つの音源に挟まれる範囲について連続して行い、ベクトルの歪んだ図形で音源の広がりを表すようにする。
【0023】
音源の大きさは、ある瞬間の音声信号の値によるが、音声信号は平均値が0(零)であるため、負の値を取る時もある。ベクトル合成するときには符号通りに演算することとし、ベクトルの大きさ求める時にその絶対値を取るようにする。
【0024】
この方法によると、同相の場合には図7のような円弧状で表され、逆相の場合には図8のように表される。また、音源が片方だけの場合には、図9のような円弧状で表される。左右の音声信号の大きさが異なる場合には、信号の大きいほうに偏った形になる。
【0025】
そこで、本実施形態では、ある瞬間の音声信号の大きさを基に音場を表すので、A/D変換部14により一定時間ごと、あるいは不規則な時間間隔ごとに音声信号のサンプリングを行い、その値によりDSP15にて演算を行っていく。
【0026】
音声信号は刻一刻変化し、左右の比率も一定ではないので、円の大きさや形も変化することになるが、信号の大きさや位相差による音場を表すことができる。
【0027】
そこで、A/D変換部14にて人間の目で見て連続と思われる程度の時間間隔で音声信号をサンプリングし、DSP15にて演算された結果を表示部18に表示することにより、従来のリサージュ等と同様の感覚でモニタリングが行える。
【0028】
上記構成において、2−2方式ステレオを例に説明する。
【0029】
この場合、図10に示すように、視聴領域の周辺にスピーカ131〜134が配置される。そして、2つずつのスピーカ131〜134の組み合わせによる4つの音場についてDSP15のベクトル演算処理による音場表現を行い、これらを1つの音場として表すことにより、図11に示すように、4チャンネルステレオの音場を表示部18に表示することができる。
【0030】
4チャンネルステレオの場合には、各音源(スピーカ131〜134)を見込む角度がそれぞれ直角になるため、上記図6に示す2音源のベクトル合成方法がそのまま各音場に適用できる。
【0031】
次に、3−1方式ステレオを例に説明する。
【0032】
この場合、図12に示すように、視聴領域の周辺にスピーカ131,132、135,136が3:1となるように配置される。3−1方式ステレオの場合には、音源の方向が直角とならない。この場合には、各音源(スピーカ131,132、135,136)の作る音場を重ねることにより、図13に示すように表示部18に音場を表示できる。
【0033】
次に、5.1チャンネル方式ステレオを例に説明する。
【0034】
この場合、図14に示すように、視聴領域の周辺にスピーカ131,132,133,134,135が配置される。なお、図14において、LFE(重低音)は指向性を持たないため、音源の方向は認識されない。
【0035】
すなわち、5.1チャンネル方式ステレオは2−2方式ステレオにセンター(C)用スピーカ135と重低音(LFE)が重なったものと考えられる。この場合、各音源(スピーカ131,132,133,134,135)の作る音場を重ねることにより、図15に示すように表示部18に音場を表示できる。
【0036】
以上のように上記実施形態では、A/D変換部14により視聴領域の周辺に配置された3以上のスピーカ131〜13nの出力信号を取り込んで人間の目で見て連続と思われる程度の時間間隔でサンプリング処理を施してデジタル化し、DSP15にて各サンプリング値を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを合成して表示部18に表示するようにしている。
【0037】
従って、この合成ベクトルの大きさや位相差により音場を表示画面上で従来のリサージュなどと同様の感覚でモニタリングを行なうことができる。これにより、主音声や副音声といった2つ以上のプログラムがある場合でも、同時に音場を確認でき、さらに2人以上でも、同時に音場を確認できる。
【0038】
なお、この発明は種々変形して実施可能であり、例えば視聴システムが映像系と音声系が一体のテレビジョン受像機であってもよい。また、VTR(Video Tape Recorder)等にその機能を持たせてもよい。
【0039】
その他、音声モニタ装置の構成、音場の表示方法等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明に係わる音声モニタ装置を備える視聴システムの構成を示すブロック図。
【図2】以前に行なわれていた2つの音声信号が完全な同相の場合のリサージュ波形を示す図。
【図3】以前に行なわれていた2つの音声信号が完全な逆相の場合のリサージュ波形を示す図。
【図4】以前に行なわれていた2つの音声信号が同相より少し位相差のある場合のリサージュ波形を示す図。
【図5】ベクトル表示による音場表示の原理を示す図。
【図6】聴取点から2つの音源を見込む角度が直角の場合のベクトル合成例を示す図。
【図7】本実施形態において、2つのベクトルが同相である場合の表示例を示す図。
【図8】本実施形態において、2つのベクトルが逆相である場合の表示例を示す図。
【図9】本実施形態において、音源が片方だけの場合の表示例を示す図。
【図10】本実施形態において、2−2方式ステレオの場合の音源の配置例を示す図。
【図11】本実施形態において、2−2方式ステレオの場合のベクトル表示例を示す図。
【図12】本実施形態において、3−1方式ステレオの場合の音源の配置例を示す図。
【図13】本実施形態において、3−1方式ステレオの場合のベクトル表示例を示す図。
【図14】本実施形態において、5.1チャンネル方式ステレオの場合の音源の配置例を示す図。
【図15】本実施形態において、5.1チャンネル方式ステレオの場合のベクトル表示例を示す図。
【符号の説明】
【0041】
11…音声再生処理部、121〜12n…アンプ、131〜13n…スピーカ、14…A/D変換部、15…DSP、16…メモリマッピング部、17…表示制御部、18…表示部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の音声出力装置から出力される各音声信号による音場(音の広がり具合)をモニタする音声モニタ方法及び音声モニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アナログ方式のテレビジョン放送システムでは、主放送番組の映像信号に、ステレオ/モノラル・吹き替え等のための主・副音声信号を多重して放送し、受信側で多重信号を分離し、視聴番組のステレオ再生/モノラル再生、吹き替え再生等を選択可能な機能を持たせている。また、上記放送システムでは、受信側で2以上のプログラム、例えば主音声及び副音声を同時に聴取することも可能である。
【0003】
ところで、上記放送システムでは、ステレオ音場を確認する場合、通常スピーカやヘッドホンにより聴覚で確認するが、2つ以上のプログラム(例えば主音声・副音声)がある場合などは視覚で確認する方法がある。
【0004】
この視覚で確認する方法は、モノラルの場合、音源が1つであり、VUメーターなどによる方法だけである。ステレオの場合は音源が2つであり、2つのVUメーターによる方法のほか、X−Yスコープによる方法が使われている(例えば、特許文献1)。この場合、左チャンネルと右チャンネルの音声信号をX軸/Y軸の信号とし、リサージュ波形の広がりでステレオ音場を表している(X軸/Y軸を予め45度傾け、位相の合う方向を垂直にしている場合もある)。
【特許文献1】特開平7−107600号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、地上波放送システムにおいて、デジタル放送が開始されており、このデジタル放送においては、モノラル/ステレオ再生モードの他に、5.1チャンネル方式ステレオ再生モード等があり、3つ以上の音源を必要とすることになる。この場合、X−Yスコープによる方法では音場を表現できない。
【0006】
そこで、この発明の目的は、音源数が3つ以上の場合でも視覚的な音場表現を可能とする音声モニタ方法及び音声モニタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するために、以下のように構成される。
放送信号の視聴領域の周辺の3以上の複数個所それぞれに設置される音声出力装置の出力信号を表示器に表示する音声モニタ装置において、複数の音声出力装置それぞれの出力信号を取り込み、各出力信号を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを演算処理する演算処理手段と、この演算処理手段による演算結果を各音声出力装置の出力信号による音場として表示器に表示する表示制御手段とを備えるようにしたものである。
【0008】
この構成によれば、視聴領域の周辺に設置された3以上の音声出力装置の出力信号を取り込んで、各出力信号を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを合成するようにしているので、この合成ベクトルの大きさや位相差により音場を表すことができる。
【0009】
演算処理手段は、複数の音声出力装置に挟まれる範囲について複数の音声出力装置の出力信号を時間軸上でサンプリング処理し、各出力信号のサンプリング値を視聴点からの任意の方向に対する複数のベクトルとして演算処理することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、人間の目で見て連続と思われる程度の時間間隔で音声出力装置の出力信号をサンプリングし、このサンプリング値を視聴点からの任意の方向に対する複数のベクトルとして演算処理することにより、従来のリサージュなどと同様の感覚でモニタリングを行なうことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したようにこの発明によれば、音源数が3つ以上の場合でも視覚的な音場表現を可能とする音声モニタ方法及び音声モニタ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明に係わる音声モニタ装置を備える視聴システムの構成を示すブロック図である。符号11は音声再生処理部で、指定モードに応じて入力した音声信号から主音声、副音声またはステレオ左右音声(L,S)、その他の複数音声の各信号に分離して出力する。これら複数の音声信号は、アンプ121〜12n(nは自然数)で所定レベル増幅された後、視聴領域の周辺に配置される音声出力装置としてのスピーカ131〜13nに供給されて音響再生される。
【0013】
一方、音声再生処理部11から出力された複数の音声信号は、A/D(Analog/Digital)変換部14でサンプリング処理されることでデジタル信号に変換されてDSP(Digital Signal Processor)15に供給される。
【0014】
このDSP15は、入力されたデジタル信号を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを合成する等の演算処理を施すものである。DSP15で得られた演算結果は、メモリマッピング部16で所定のメモリマッピング処理を受けた後、表示制御部17により表示部18に表示される。
【0015】
次に、上記構成における運用について説明する。
音声再生処理部11では、指定モードが主/副多重音声かモノラル音声かステレオ音声からを判断する。主/副音声同時出力の場合は、入力された音声信号から主音声と副音声とを分離し、主音声を左用音声としてスピーカ131へ供給し、副音声を右用音声としてスピーカ132へ供給する。
【0016】
一方、ステレオ音声と判断された場合、音声再生処理部11は左右の音声信号を合成し、この合成音声信号をスピーカ131,132に均等に振り分けて供給する。また、モノラル音声と判断された場合、音声再生処理部11はモノラル音声信号をスピーカ131,132に均等に振り分けて供給する。
【0017】
ここで、ステレオ音場を表示部18で視認するために、X−Yスコープによる方法が使われている。スピーカ131(左)用とスピーカ132(右)用の音声信号をX軸/Y軸の信号とし、リサージュ波形の広がりでステレオ音場を表している。
【0018】
リサージュ波形の場合、図2及び図3に示すように、完全な同相または逆相の場合には直線で表される。また、同相より少し位相差のある場合には、図4に示すように楕円で表される。
【0019】
しかし、3つ以上の音源(スピーカ131〜13n)を持つステレオの場合、従来のX−Yスコープによる方法では音場を表現できない。
【0020】
そこで、本実施形態では、聴取点からの任意の方向に対し、各音源のベクトル成分を表示することで、音源数が3つ以上の場合でも視覚的な音場表現を可能としている。
【0021】
図5は、ベクトル表示による音場表示の原理を示す。1つの音源に対し、聴取点からの任意の方向(Vθ)に対し、その方向の成分を考える。音源を見込む方向に対し、左右に45°(π/4)ずつの範囲を音場と考え、ベクトルの先端を結ぶと、円形の図形が得られる。2つ以上の音源の場合には、この1つの音源による音場を重ね合わせることにより、表す。
【0022】
図6は、聴取点から2つの音源(スピーカ131(L),132(R))を見込む角度が直角の場合のベクトル合成例を示す。2つの音源が作る音場内の、聴取点からの任意の方向(Vθ)に対し、各音源のその方向の成分の和を求め、その方向のベクトルの値(大きさ)とする。これを2つの音源に挟まれる範囲について連続して行い、ベクトルの歪んだ図形で音源の広がりを表すようにする。
【0023】
音源の大きさは、ある瞬間の音声信号の値によるが、音声信号は平均値が0(零)であるため、負の値を取る時もある。ベクトル合成するときには符号通りに演算することとし、ベクトルの大きさ求める時にその絶対値を取るようにする。
【0024】
この方法によると、同相の場合には図7のような円弧状で表され、逆相の場合には図8のように表される。また、音源が片方だけの場合には、図9のような円弧状で表される。左右の音声信号の大きさが異なる場合には、信号の大きいほうに偏った形になる。
【0025】
そこで、本実施形態では、ある瞬間の音声信号の大きさを基に音場を表すので、A/D変換部14により一定時間ごと、あるいは不規則な時間間隔ごとに音声信号のサンプリングを行い、その値によりDSP15にて演算を行っていく。
【0026】
音声信号は刻一刻変化し、左右の比率も一定ではないので、円の大きさや形も変化することになるが、信号の大きさや位相差による音場を表すことができる。
【0027】
そこで、A/D変換部14にて人間の目で見て連続と思われる程度の時間間隔で音声信号をサンプリングし、DSP15にて演算された結果を表示部18に表示することにより、従来のリサージュ等と同様の感覚でモニタリングが行える。
【0028】
上記構成において、2−2方式ステレオを例に説明する。
【0029】
この場合、図10に示すように、視聴領域の周辺にスピーカ131〜134が配置される。そして、2つずつのスピーカ131〜134の組み合わせによる4つの音場についてDSP15のベクトル演算処理による音場表現を行い、これらを1つの音場として表すことにより、図11に示すように、4チャンネルステレオの音場を表示部18に表示することができる。
【0030】
4チャンネルステレオの場合には、各音源(スピーカ131〜134)を見込む角度がそれぞれ直角になるため、上記図6に示す2音源のベクトル合成方法がそのまま各音場に適用できる。
【0031】
次に、3−1方式ステレオを例に説明する。
【0032】
この場合、図12に示すように、視聴領域の周辺にスピーカ131,132、135,136が3:1となるように配置される。3−1方式ステレオの場合には、音源の方向が直角とならない。この場合には、各音源(スピーカ131,132、135,136)の作る音場を重ねることにより、図13に示すように表示部18に音場を表示できる。
【0033】
次に、5.1チャンネル方式ステレオを例に説明する。
【0034】
この場合、図14に示すように、視聴領域の周辺にスピーカ131,132,133,134,135が配置される。なお、図14において、LFE(重低音)は指向性を持たないため、音源の方向は認識されない。
【0035】
すなわち、5.1チャンネル方式ステレオは2−2方式ステレオにセンター(C)用スピーカ135と重低音(LFE)が重なったものと考えられる。この場合、各音源(スピーカ131,132,133,134,135)の作る音場を重ねることにより、図15に示すように表示部18に音場を表示できる。
【0036】
以上のように上記実施形態では、A/D変換部14により視聴領域の周辺に配置された3以上のスピーカ131〜13nの出力信号を取り込んで人間の目で見て連続と思われる程度の時間間隔でサンプリング処理を施してデジタル化し、DSP15にて各サンプリング値を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを合成して表示部18に表示するようにしている。
【0037】
従って、この合成ベクトルの大きさや位相差により音場を表示画面上で従来のリサージュなどと同様の感覚でモニタリングを行なうことができる。これにより、主音声や副音声といった2つ以上のプログラムがある場合でも、同時に音場を確認でき、さらに2人以上でも、同時に音場を確認できる。
【0038】
なお、この発明は種々変形して実施可能であり、例えば視聴システムが映像系と音声系が一体のテレビジョン受像機であってもよい。また、VTR(Video Tape Recorder)等にその機能を持たせてもよい。
【0039】
その他、音声モニタ装置の構成、音場の表示方法等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明に係わる音声モニタ装置を備える視聴システムの構成を示すブロック図。
【図2】以前に行なわれていた2つの音声信号が完全な同相の場合のリサージュ波形を示す図。
【図3】以前に行なわれていた2つの音声信号が完全な逆相の場合のリサージュ波形を示す図。
【図4】以前に行なわれていた2つの音声信号が同相より少し位相差のある場合のリサージュ波形を示す図。
【図5】ベクトル表示による音場表示の原理を示す図。
【図6】聴取点から2つの音源を見込む角度が直角の場合のベクトル合成例を示す図。
【図7】本実施形態において、2つのベクトルが同相である場合の表示例を示す図。
【図8】本実施形態において、2つのベクトルが逆相である場合の表示例を示す図。
【図9】本実施形態において、音源が片方だけの場合の表示例を示す図。
【図10】本実施形態において、2−2方式ステレオの場合の音源の配置例を示す図。
【図11】本実施形態において、2−2方式ステレオの場合のベクトル表示例を示す図。
【図12】本実施形態において、3−1方式ステレオの場合の音源の配置例を示す図。
【図13】本実施形態において、3−1方式ステレオの場合のベクトル表示例を示す図。
【図14】本実施形態において、5.1チャンネル方式ステレオの場合の音源の配置例を示す図。
【図15】本実施形態において、5.1チャンネル方式ステレオの場合のベクトル表示例を示す図。
【符号の説明】
【0041】
11…音声再生処理部、121〜12n…アンプ、131〜13n…スピーカ、14…A/D変換部、15…DSP、16…メモリマッピング部、17…表示制御部、18…表示部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送信号の視聴領域の周辺の3以上の複数個所それぞれに、前記放送信号から再生された音声信号を出力する音声出力装置を設置し、これら複数の音声出力装置それぞれの出力信号を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを演算処理することで、各音声出力装置の出力信号による音場を表示器に表示することを特徴とする音声モニタ方法。
【請求項2】
放送信号の視聴領域の周辺の3以上の複数個所それぞれに設置される音声出力装置の出力を表示器に表示する音声モニタ装置において、
前記複数の音声出力装置それぞれの出力信号を取り込み、各出力信号を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを演算処理する演算処理手段と、
この演算処理手段による演算結果を各音声出力装置の出力信号による音場として前記表示器に表示する表示制御手段とを具備したことを具備したことを特徴とする音声モニタ装置。
【請求項3】
前記演算処理手段は、前記複数の音声出力装置に挟まれる範囲について前記複数の音声出力装置それぞれの出力信号を時間軸上でサンプリング処理し、各出力信号のサンプリング値を前記視聴点からの任意の方向に対する前記複数のベクトルとして演算処理することを特徴とする請求項2記載の音声モニタ装置。
【請求項1】
放送信号の視聴領域の周辺の3以上の複数個所それぞれに、前記放送信号から再生された音声信号を出力する音声出力装置を設置し、これら複数の音声出力装置それぞれの出力信号を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを演算処理することで、各音声出力装置の出力信号による音場を表示器に表示することを特徴とする音声モニタ方法。
【請求項2】
放送信号の視聴領域の周辺の3以上の複数個所それぞれに設置される音声出力装置の出力を表示器に表示する音声モニタ装置において、
前記複数の音声出力装置それぞれの出力信号を取り込み、各出力信号を視聴点からの任意の方向に対するベクトルとして表現し、これら複数のベクトルを演算処理する演算処理手段と、
この演算処理手段による演算結果を各音声出力装置の出力信号による音場として前記表示器に表示する表示制御手段とを具備したことを具備したことを特徴とする音声モニタ装置。
【請求項3】
前記演算処理手段は、前記複数の音声出力装置に挟まれる範囲について前記複数の音声出力装置それぞれの出力信号を時間軸上でサンプリング処理し、各出力信号のサンプリング値を前記視聴点からの任意の方向に対する前記複数のベクトルとして演算処理することを特徴とする請求項2記載の音声モニタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−243318(P2007−243318A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59704(P2006−59704)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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