説明

音声処理装置及び音声処理方法等

【課題】搭乗者が映像を見ていない状況下であっても、音響を通じて乗り物酔いを防止することが可能な音声処理装置及び音声処理方法等を提供する。
【解決手段】本願は、複数のスピーカの拡声により形成される音場空間を有する移動体における各前記スピーカに出力されるべき音声信号に対する処理を行う音声処理装置であって、前記移動体の挙動に関する情報を取得し、当該移動体の挙動に関する情報に基づいて、音像の定位位置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスピーカの拡声により形成される音場空間を有する移動体における各前記スピーカに出力されるべき音声信号に対する処理を行う装置及び方法等の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの移動体のように、揺れが発生する環境内では、搭乗者は乗り物酔いになることがある。特に、揺れが発生する環境内で、移動体に搭載されたテレビチューナやDVD再生装置等からの映像を、搭乗者がディスプレイ上で見ると、乗り物酔いになりやすい。
【0003】
特許文献1には、移動体の動きに合わせて変化する画像をディスプレイ上に表示させることにより、搭乗者は移動体の動きに合った視覚的情報を見ることができ、視覚的情報と体に感じる不一致を防止し、乗り物酔いを防止することが可能な技術が提案されている。
【特許文献1】特開2005−294954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搭乗者が映像を見ていない状況下であっても、例えば、車両がカーブを走行しているとき、車両が急停止や急発進するとき等、搭乗者が通常より大きい重力加速度(G)を受けるときにも、乗り物酔いになりやすいが、従来の技術では、このような状況下では、乗り物酔いを防止することが困難であった。
【0005】
そこで、本願の課題の一例は、搭乗者が映像を見ていない状況下であっても、音響を通じて乗り物酔いを防止することが可能な音声処理装置及び音声処理方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、複数のスピーカの拡声により形成される音場空間を有する移動体における各前記スピーカに出力されるべき音声信号に対する処理を行う音声処理装置であって、前記移動体の挙動に関する情報を取得する取得手段と、前記移動体の挙動に関する情報に基づいて、音像の定位位置を制御する音像定位制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項9に記載の発明は、複数のスピーカの拡声により形成される音場空間を有する移動体における各前記スピーカに出力されるべき音声信号に対する処理を行う音声処理方法であって、前記移動体の挙動に関する情報を取得する工程と、前記移動体の挙動に関する情報に基づいて、音像の定位位置を制御する工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項10に記載の音声処理プログラムの発明は、複数のスピーカの拡声により形成される音場空間を有する移動体における各前記スピーカに出力されるべき音声信号に対する処理を行うコンピュータを、前記移動体の挙動に関する情報を取得する取得手段、及び前記移動体の挙動に関する情報に基づいて、音像の定位位置を制御する音像定位制御手段として機能させることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本願の最良の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、音場空間を有する移動体としての車両に搭載されたオーディオ再生装置に対して本願の音声処理装置等を適用した場合の実施形態である。
【0010】
本実施形態では、車両内の前方右側、前方左側、後方右側、及び後方左側の4つの位置(例えば、何れもドア付近)には、夫々、スピーカが設置されており、これらのスピーカの拡声により音場空間が形成される。図1は、車両内における各スピーカの位置関係を示す。以下、前方右側位置のスピーカをFRスピーカ、前方左側位置のスピーカをFLスピーカ、後方右側位置のスピーカをRRスピーカ、後方左側位置のスピーカをRLスピーカ、と称する。
【0011】
次に、図2を参照して、本実施形態に係るオーディオ再生装置の構成及び機能について説明する。
【0012】
図2は、本実施形態に係るオーディオ再生装置の概要構成例を示す図である。
【0013】
図2に示すように、オーディオ再生装置1は、オーディオ再生部11、オーディオ処理部12、G(重力加速度)センサ13、GPS(Global Positioning System)受信機14、制御部15、及び操作部16を備えて構成され、上記各スピーカに出力されるべき音声信号に対する処理を行う。また、オーディオ再生装置1には、車両の運転者により操作される操作機器(例えば、ステアリング(ハンドル)、アクセル、ブレーキ等)の操作情報が車載機器センサからI/F17を介して入力されるようになっている。
【0014】
オーディオ再生部11は、オーディオデータが記録された記録媒体(例えば、CD(Compact Disc)、カード型記録媒体等)からオーディオデータを再生する。なお、オーディオ再生部11は、ハードディスクドライブであっても良い。
【0015】
オーディオ処理部12は、DSP(Digital Signal Processor)等により構成されており、オーディオ再生部11により再生されたオーディオデータに対して復調処理等の所定の音声処理を施し、FRスピーカ、FLスピーカ、RRスピーカ、及びRLスピーカ用の4チャンネル分の音声信号を生成した後、各音声信号の信号レベル(つまり、音量)を調整して各スピーカに出力するようになっている。
【0016】
Gセンサ13は、車両の搭乗者が受ける前後方向のGの大きさ、及び左右方向のGの大きさを検出するようになっている。車両が停止中、搭乗者は、地球から1Gを受けているが、車両がカーブ等を走行中には外側へ向けて横G(言い換えれば、遠心力)を受ける。Gセンサ13は、このようなGを検出し、その大きさ及び方向を示す情報を制御部15に出力する。
【0017】
GPS受信部14は、衛星軌道上に配置され地球を周回するGPS衛星から出力される航法電波を、アンテナ(図示せず)を介して受信し、受信した信号に基づいて現在位置(経度及び緯度)を測位し、その現在位置を示す情報を制御部15に出力する。
【0018】
制御部15は、CPU,ROM,RAM,及び不揮発性メモリ等により構成されており、ユーザ(搭乗者)からの操作部16を通じた操作指示にしたがってオーディオ再生装置1全体を統括制御すると共に、例えばROMに記憶された本願の音声処理プログラムの実行により取得手段及び音像定位制御手段として機能するようになっている。
【0019】
具体的には、制御部15は、車両の挙動に関する情報を取得し、当該車両の挙動に関する情報に基づいて、音像の定位位置を制御、例えば、音像の定位位置を基準位置から右側又は左側に移動させる。かかる音像の定位位置の制御は、各音声信号の音量や出力タイミングを調整することによりなされる。例えば、FRスピーカに出力されるべき音声信号の音量を増加させる一方、FLスピーカに出力されるべき音声信号の音量を減少させるように調整される。これにより、音像の定位位置が変化する。
【0020】
ここで、車両の挙動に関する情報としては、例えばGセンサ13から取得されるGの大きさ及び方向を示す情報を利用することができる。この場合、制御部15は、例えば、Gがかかる方向(搭乗者が傾く方向)に設置されるスピーカに出力されるべき音声信号の音量をGの大きさに応じた量分減少させ、Gがかかる方向とは反対側に設置されるスピーカに出力されるべき音声信号の音量をGの大きさに応じた量分増加させることにより、音像の定位位置を変化させる。
【0021】
或いは、制御部15は、Gがかかる方向に設置されるスピーカに出力されるべき音声信号の音量をGの大きさに応じた量分減少させ、Gがかかる方向とは反対側に設置されるスピーカに出力されるべき音声信号の音量をそのままとすることにより、音像の定位位置を変化させても良い。なお、制御部15における不揮発性メモリには、車両内におけるFRスピーカ、FLスピーカ、RRスピーカ、及びRLスピーカの設置位置に関する情報が予め記憶されている。
【0022】
図3は、一定方向にかかるGの大きさと、音声信号の音量の調整量との関係を示す図である。なお、図3の例では、簡単のため、Gの方向として一方向のみを示しているが、各方向(例えば、右方向、左方向、前(進行)方向、後(後退)方向)とも、このような関係がある。
【0023】
ここで、音声信号の音量の調整量が大きいとは、音声信号の音量の増加量又は減少量が大きいことを意味する。例えば、右方向にかかるGが大きくなるにつれて、同じ方向に設置されたFRスピーカ及びRRスピーカに出力されるべき音声信号の音量の減少量が大きくなり、逆の方向に設置されたFLスピーカ及びRLスピーカに出力されるべき音声信号の音量の増加量が大きくなる。或いは、後方向にかかるGが大きくなるにつれて、同じ方向に設置されたRRスピーカ及びRLスピーカに出力されるべき音声信号の音量の減少量が大きくなり、逆の方向に設置されたFRスピーカ及びFLスピーカに出力されるべき音声信号の音量の増加量が大きくなる。
【0024】
このような関係は、図3に示すように、直線51(つまり、比例関係)、2次曲線52、又は2次曲線53で表すことができ、具体的には、このような関係を規定する計算式(関数)やテーブル等が制御部15における不揮発性メモリに予め記憶される。制御部15は、このように記憶された計算式(関数)やテーブル等を用いて、音像の定位位置を制御することになる。なお、上記直線51、2次曲線52、2次曲線53のどの関係を用いるかはユーザが任意に選択することができる。
【0025】
また、図3に示すように、Gが閾値より小さいときに調整量を“0”とする不感帯が設定されている。つまり、制御部15は、Gの大きさが閾値以上である場合に、音像の定位位置を制御する。このように不感帯を設ける理由は、さほど大きくない揺れ状況下において、音像の定位位置を頻繁に変えると逆効果につながりかねないからである。なお、この不感帯は、ユーザが閾値を任意に選択することで変更することができる。
【0026】
また、不感帯では、音像の定位位置を制御しないのではなく、例えば、Gの増加に応じた調整量の増加割合を落としたり(感度を落とす)、段階的に調整量を上げるように構成しても良い。
【0027】
また、左右方向にGがかかる場合、前方のFRスピーカとFLスピーカに出力されるべき各音声信号の音量の調整量より、後方のRRスピーカとRLスピーカに出力されるべき各音声信号の音量の調整量を大きくするように構成しても良い。これは、後方座席に座る搭乗者の方が、前方視界が悪く対処し難い(どちらに曲がるのかの心構えができない)等、車両の挙動変化の影響を受けやすいからである。また、前方座席と後方座席とで極性を反転する等の可変制御を行うように構成しても良い。
【0028】
また、制御するトリガーにマスクをかける手法として、不感帯を設けることを説明したが、もう一つの例として、Gセンサ13により一定時間サンプリングされたGを平均化した値を上記Gの大きさとして利用しても良い。
【0029】
また、サンプリング期間が短すぎるとノイズ成分を拾ってしまう。これを回避する方法としてサンプリング期間を500msec等と長めにとる方法と、ある閾値を一定時間継続して超えたかで判断する方法がある。
【0030】
また、搭乗者の状況によってはGの方向と音量増減方向が逆の方が効果がある場合がある。例えば、ドライバーは体が固定されているのでその他の搭乗者とは逆相にするほうが良い。
【0031】
また、Gセンサ13だけではなくジャイロセンサや地磁気センサを用いることにより回転を検知し、当該回転方向に応じて音像の定位位置を制御するように構成しても良い。
【0032】
次に、図4及び図5を参照して、制御部15の定位位置制御に係る処理例について説明する。
【0033】
図4及び図5は、Gの大きさ及び方向を示す情報を利用した場合における、制御部15の定位位置制御に係る処理例を示すフローチャートであり、図4は実施例1、図5は実施例2である。
【0034】
なお、図4及び図5に示す処理は、例えば、ユーザからの操作部16を通じてオーディオ再生指示があったときに開始される。なお、オーディオ再生指示により、例えばユーザにより予め選択されていた音量がオーディオ処理部12において設定(以下、「初期設定」という)され、オーディオ再生部11から再生されたオーディオデータに対応する音声信号は、当該初期設定された音量でオーディオ処理部12から各スピーカに対して出力されることになる。また、この初期段階、つまり、音像の定位位置制御前の段階では、FRスピーカ、FLスピーカ、RRスピーカ、及びRLスピーカに出力されるべき音声信号の音量は、例えば、最初に環境にあわせた音量(夫々のスピーカ位置に応じた音量)に設定されている。なお、4チャンネル分の各スピーカに出力される音声信号の音量は同一に設定されていても構わない。
【0035】
(実施例1)
先ず、実施例1に係る図4に示す処理では、先ず、制御部15は、Gセンサ13から出力されたGの大きさ及び方向を示す情報を取得(RAMに記憶)する(ステップS1)。
【0036】
次いで、制御部15は、Gセンサ13から得られたGの大きさが第一の閾値以上であるか否かを判別し(ステップS2)、第一の閾値以上である場合には(ステップS2:YES)、当該Gの方向を特定し、ステップS3に進み、第一の閾値以上でない(つまり、不感帯である)場合には(ステップS2:NO)、ステップS1に戻る。
【0037】
ステップS3では、制御部15は、上記第一の閾値以上であるGの方向に基づき、音量を減少させるスピーカと、音量を増加させるスピーカとを特定すると共に、不揮発性メモリに記憶された計算式又はテーブル等を用いて、夫々のスピーカに対する音声信号の音量の調整量(増加量又は減少量)を算出する。なお、左右のスピーカのうち一方のスピーカへの音声信号の音量の調整量を“0”としても良い。
【0038】
次いで、制御部15は、各スピーカと調整量との対応付けを示す情報を含む調整指令をオーディオ処理部12に対して与える(ステップS4)。これにより、オーディオ処理部12は、各スピーカに対する音声信号の初期設定に係る音量に対して、上記調整指令に含まれる調整量を加算又は減算して新たな音量を設定し、当該音量で各スピーカに対して音声信号を出力することになる。
【0039】
次いで、制御部15は、Gの大きさが第一の閾値より小さくなったか否かを判別し(ステップS5)、第一の閾値より小さくなった場合には(ステップS5:YES)、ステップ6に進み、第一の閾値より小さくなっていない場合には(ステップS5:NO)、ステップS3に戻る。
【0040】
ステップS6では、制御部15は、調整量リセット(初期化)指令をオーディオ処理部12に対して与え、ステップS1に戻る。これにより、オーディオ処理部12は、各スピーカに対する音声信号の音量を初期設定に戻し(上記自動的な定位位置制御の前の状態に戻し)、当該初期設定の音量で各スピーカに対して音声信号を出力することになる。
【0041】
以降、かかる処理は、例えばオーディオ再生が終了するまで繰り返し行われることになる。
【0042】
(実施例2)
先ず、制御部15は、Gセンサ13から出力されたGの大きさ及び方向を示す情報を取得する(ステップS11)。
【0043】
次いで、制御部15は、Gセンサ13から得られたGの大きさが第一の閾値以上であるか否かを判別し(ステップS12)、第一の閾値以上である場合には(ステップS12:YES)、当該Gの方向を特定し、ステップS13に進み、第一の閾値以上でない(つまり、不感帯である)場合には(ステップS12:NO)、ステップS14に進む。
【0044】
ステップS14では、制御部15は、調整量リセット(初期化)指令をオーディオ処理部12に対して与え、ステップS11に戻る。
【0045】
ステップS13では、上記ステップS3と同様、制御部15は、上記第一の閾値以上であるGの方向に基づき、音量を減少させるスピーカと、音量を増加させるスピーカとを特定すると共に、夫々のスピーカに対する音声信号の音量の調整量を算出する。
【0046】
次いで、上記ステップS4と同様、制御部15は、各スピーカと調整量との対応付けを示す情報を含む調整指令をオーディオ処理部12に対して与える(ステップS15)。
【0047】
次いで、制御部15は、Gセンサ13から出力されたGの大きさ及び方向を示す情報を取得し(ステップS16)、当該Gの大きさが第二の閾値より大きくなったか否かを判別し(ステップS17)、第二の閾値より大きくなった場合には(ステップS17:YES)、ステップ16に戻り、第二の閾値より大きくなっていない場合には(ステップS17:NO)、ステップS11に戻る。なお、上記第一の閾値と第二の閾値との関係は、「第一の閾値<第二の閾値」である。
【0048】
以降、かかる処理は、例えばオーディオ再生が終了するまで繰り返し行われることになる。
【0049】
以上説明したように、上記実施形態によれば、オーディオ再生装置1は、車両の挙動に関する情報を取得し、車両の挙動に関する情報に基づいて、音像の定位位置を制御するように構成したので、搭乗者が映像を見ていない状況下であっても、より効果的に音響を通じて乗り物酔いを防止することができる。
【0050】
特に、車両の挙動に関する情報として、Gセンサ13により検出されたGの大きさ及び方向を示す情報を利用することで、実際の揺れの大きさに応じた最適位置(つまり、揺れの感覚を低減する位置)に音像を定位させることができる。
【0051】
なお、車両の挙動に関する情報として、車両の運転者により操作される操作機器(例えば、ステアリング(ハンドル)、アクセル、ブレーキ)の操作情報を利用するように構成しても良い。この場合、制御部15は、車載機器センサからI/F17を介して当該操作情報を取得し、この操作情報に基づいて、音像の定位位置を制御する。例えば、ステアリングの切れ角等により左右方向のGを推定できるので、これにより、上記実施形態と同様に、音量を減少させるスピーカと、音量を増加させるスピーカとを特定し、夫々のスピーカに対する音声信号の音量の調整量を算出することになる。また、アクセル信号、及びブレーキ信号等により前後方向のGを推定できるので、これにより、上記実施形態と同様に、音量を減少させるスピーカと、音量を増加させるスピーカとを特定し、夫々のスピーカに対する音声信号の音量の調整量を算出することになる。
【0052】
また、車両の挙動に関する情報として、GPS受信部14により測位された車両の現在位置から進行方向における道路情報を利用するように構成しても良い。この場合、制御部15は、GPS受信部14から車両の現在位置を示す情報を取得し、さらに、ナビゲーション機能で使用される地図データ(例えば、図示しないハードディスクに記憶)から、車両の現在位置から進行方向における道路情報を取得する。そして、制御部15は、当該道路情報に基づいて車両の挙動を予測し、予測した車両の挙動を示す情報に基づいて、音像の定位位置を制御する。例えば、道路情報に示されるカーブや曲がり角等の方向より左右方向のGを推定できるので、これにより、上記実施形態と同様に、音量を減少させるスピーカと、音量を増加させるスピーカとを特定し、夫々のスピーカに対する音声信号の音量の調整量を算出することになる。また、道路情報に示される信号機、踏み切り、交差点、一時停止場所、減速場所、加速レーン等により前後方向のGを推定できるので、これにより、上記実施形態と同様に、音量を減少させるスピーカと、音量を増加させるスピーカとを特定し、夫々のスピーカに対する音声信号の音量の調整量を算出することになる。この構成によれば、実際に揺れが生じる(搭乗者にGがかかる)前に、上述した音像の定位位置の制御を行うことができる。
【0053】
また、上記実施形態における音像の定位位置の制御においては、音楽等のオーディオデータに係る音声信号の音量を調整(増加又は減少)することを想定したが、音楽等のオーディオデータに重畳されたノイズ(例えば、“ザァー”と聴こえるノイズ)の音信号の音量を調整するように構成しても良い。
【0054】
また、上記実施形態における音像の定位位置の制御においては、各スピーカに出力されるべき音声信号の音量を調整するように構成したが、別の例として、各スピーカに出力されるべき音声信号の出力タイミングを調整(つまり、Gの方向に応じたスピーカへの音声信号の出力タイミングを遅延)させるように構成しても良い。
【0055】
なお、上記実施形態においては、移動体として車両を例にとって説明したが、例えば、人が搭乗することが可能な船舶、航空機、列車等に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】車両内における各スピーカの位置関係を示す図である。
【図2】本実施形態に係るオーディオ再生装置の概要構成例を示す図である。
【図3】一定方向にかかるGの大きさと、音声信号の音量の調整量との関係を示す図である。
【図4】Gの大きさ及び方向を示す情報を利用した場合における、制御部15の定位位置制御に係る実施例1の処理例を示すフローチャートである。
【図5】Gの大きさ及び方向を示す情報を利用した場合における、制御部15の定位位置制御に係る実施例2の処理例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 オーディオ再生装置
11 オーディオ再生部
12 オーディオ処理部
13 Gセンサ
14 GPS受信機
15 制御部
16 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスピーカの拡声により形成される音場空間を有する移動体における各前記スピーカに出力されるべき音声信号に対する処理を行う音声処理装置であって、
前記移動体の挙動に関する情報を取得する取得手段と、
前記移動体の挙動に関する情報に基づいて、音像の定位位置を制御する音像定位制御手段と、
を備えることを特徴とする音声処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音声処理装置において、
前記取得手段は、前記移動体の挙動により当該移動体の搭乗者が受ける重力加速度(G)の大きさ及び方向を示す情報を前記移動体の挙動に関する情報として取得し、
前記音像定位制御手段は、前記重力加速度(G)の大きさ及び方向を示す情報に基づいて、音像の定位位置を制御することを特徴とする音声処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の音声処理装置において、
前記音像定位制御手段は、前記重力加速度(G)がかかる方向に設置される前記スピーカに出力される前記音声信号の音量を減少させることにより、音像の定位位置を変化させることを特徴とする音声処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の音声処理装置において、
前記音像定位制御手段は、前記重力加速度(G)がかかる方向とは反対側に設置される前記スピーカに出力される前記音声信号の音量を増加させることにより、音像の定位位置を変化させることを特徴とする音声処理装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか一項に記載の音声処理装置において、
前記音像定位制御手段は、前記重力加速度(G)の大きさが閾値以上である場合に、音像の定位位置を制御することを特徴とする音声処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の音声処理装置において、
前記取得手段は、前記移動体の運転者により操作される操作機器(例えば、ハンドル、アクセル、ブレーキ)の操作情報を前記移動体の挙動に関する情報として取得し、
前記音像定位制御手段は、前記操作情報に基づいて、音像の定位位置を制御することを特徴とする音声処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の音声処理装置において、
前記移動体の現在位置から進行方向における道路情報に基づいて前記移動体の挙動を予測する挙動予測手段を更に備え、
前記取得手段は、前記予測された移動体の挙動を示す情報を前記移動体の挙動に関する情報として取得し、
前記音像定位制御手段は、前記予測された移動体の挙動を示す情報に基づいて、音像の定位位置を制御することを特徴とする音声処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の音声処理装置において、
前記移動体内には、前方右側と前方左側の夫々にスピーカが設置され、後方右側と後方左側の夫々にスピーカが設置されており、
前記音像定位制御手段は、前記スピーカに出力されるべき前記音声信号の音量を調整することにより、音像の定位位置を制御するものであって、
前方右側と前方左側のスピーカに出力されるべき前記各音声信号の音量の調整量より、後方右側と後方左側のスピーカに出力されるべき各前記音声信号の音量の調整量を大きくすることを特徴とする音声処理装置。
【請求項9】
複数のスピーカの拡声により形成される音場空間を有する移動体における各前記スピーカに出力されるべき音声信号に対する処理を行う音声処理方法であって、
前記移動体の挙動に関する情報を取得する工程と、
前記移動体の挙動に関する情報に基づいて、音像の定位位置を制御する工程と、
を備えることを特徴とする音声処理方法。
【請求項10】
複数のスピーカの拡声により形成される音場空間を有する移動体における各前記スピーカに出力されるべき音声信号に対する処理を行うコンピュータを、
前記移動体の挙動に関する情報を取得する取得手段、及び前記移動体の挙動に関する情報に基づいて、音像の定位位置を制御する音像定位制御手段として機能させることを特徴とする音声処理プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の音声処理プログラムがコンピュータ読み取り可能に記録されていることを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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