説明

音源方向推定機能付き監視カメラ装置

【課題】音源の方向が表示された映像を直接にかつ確実に撮影することのできる音源方向推定機能付き監視カメラ装置を提供する。
【解決手段】マイクロフォンM1〜M5を枠体15に取付け、カメラ取付部材14に監視カメラ12と透明ディスプレイ13とを取付け、このカメラ取付部材14をステッピングモーター16を介して枠体15に取付け、マイクロフォンM1〜M5の出力する音圧信号を用いて音源方向を推定した後、推定された音源方向の水平角θ’の大きさが監視カメラ12の視野内にある場合には、透明ディスプレイ13に音源方向θ’を示す図形を表示するとともに、水平角θ’の大きさが最大視野を超えている場合には、監視カメラ12の撮影方向が推定された音源方向になるようにカメラ取付部材14を回転させてから透明ディスプレイ13に推定された音源方向θ’を示す図形を表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音源の方向が表示された映像を撮影することのできる音源方向推定機能付き監視カメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、音の到来方向を推定する方法としては、多数のマイクロフォンを等間隔に配置したマイクロフォンアレーを構築し、基準となるマイクロフォンに対する各マイクロフォンの位相差から音波の到来方向である音源の方向を推定する、いわゆる音響学的手法が考案されている(例えば、非特許文献1参照)。
一方、計測点に配置された複数のマイクロフォンの出力信号の位相差からではなく、複数のマイクロフォンから互いに交わる直線状に配置された複数のマイクロフォン対を構成し、対となる2つのマイクロフォン間の位相差に相当する到達時間差と、他の対となる2つのマイクロフォン間の到達時間差との比から音源の方向を推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
具体的には、図6に示すように、4個のマイクロフォンM1〜M4を、互いに直交する2直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対(M1,M3)及びマイクロフォン対(M2,M4)を構成するように配置し、前記マイクロフォン対(M1,M3)を構成するマイクロフォンM1,M3に入力する音圧信号の到達時間差と、前記マイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM2,M4に入力する音圧信号の到達時間差との比から、計測点と音源の位置との水平角θを推定するとともに、第5のマイクロフォンM5を前記マイクロフォンM1〜M4の作る平面上にない位置に配置して、更に4組のマイクロフォン対(M5, M1),(M5, M2),(M5, M3),(M5, M4)を構成し、各マイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の到達時間差から、計測点と音源の位置との成す仰角φを推定する。
【0004】
これにより、マイクロフォンアレーを用いて音源方向を推定する場合に比較して、少ないマイクロフォン数で音源の方向を正確に推定することができる。
また、このとき、CCDカメラ等の映像採取手段により推定された音源方向の映像を撮影し、この映像のデータと音源の方向のデータとを合成して、映像中に推定した音源方向と音圧レベルとを図形で表示するようにすれば、音源を視覚的に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−181913号公報
【特許文献2】特開2006−324895号公報
【特許文献3】特開2008−224259号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】大賀寿郎,山崎芳男,金田豊;音響システムとディジタル処理,コロナ社,1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の方法では、撮影された映像の画像データと音源方向のデータとを合成した画像データを作成し、この画像データをディスプレイ上に表示して音源を推定するようにしているため、この方法を、連続して現場の映像を撮影する監視カメラに適用しようとすると、撮影後に画像処理をする必要があった。
また、監視カメラは視野が狭いため、撮影された監視カメラの視野に推定された音源方向が入らない場合があった。このとき、監視カメラとして広角レンズ付きのカメラを用いることも考えられるが、広角レンズを用いると、画像の歪みが大きくなることから、音源の推定が困難であるといった問題点が生じてしまう。
【0008】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、音源の方向が表示された映像を直接にかつ確実に撮影することのできる音源方向推定機能付き監視カメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、音源の方向を推定し、この推定された音源の方向が表示された映像を撮影する音源方向推定機能付き監視カメラ装置であって、音源から伝搬される音の情報を採取する複数のマイクロフォンと、これら複数のマイクロフォンを取付けるマイクロフォン取付部材と、室内もしくは室外の映像を撮影する監視カメラと、非表示状態において透明な透明ディスプレイと、前記監視カメラと前記透明ディスプレイとを、透明ディスプレイを監視カメラのレンズの前方に位置するように取付けるカメラ取付部材と、前記各マイクロフォンが出力する音圧信号を用いて音源方向を推定する音源方向推定手段と、前記カメラ取付部材を回転させるカメラ回転手段とを備え、前記カメラ回転手段は、前記推定された音源方向に基づいて、監視カメラの撮影方向が前記推定された音源方向になるように、前記カメラ取付部材を回転させ、前記透明ディスプレイは、前記推定された音源方向を示す図形を表示することを特徴とする。
これにより、音源方向の水平角θや仰角φが大きな場合でも、再度音の情報の採取と音源方向の推定とを行うことなく、音源推定方向の鮮明な映像を撮影することができる。
【0010】
また、本願発明は、前記カメラ取付部材は前記カメラ回転手段を介して前記マイクロフォン取付部材に取付けられていることを特徴とする。
これにより、ステッピングモーターなどの回転手段が1個という簡単な構成で、音源推定方向の鮮明な映像を撮影することができる。
【0011】
また、本願発明は、前記マイクロフォン取付部材はマイクロフォン回転手段を介して前記カメラ取付部材に取付けられており、前記マイクロフォン回転手段は、前記マイクロフォン取付部材を、前記カメラ取付部材とは逆方向に、かつ、前記カメラ取付部材と同じ角度だけ回転させることを特徴とする。
これにより、マイクロフォン取付部材を小さくしても、マイクロフォン取付部材が監視カメラの視野に入ることがないので、装置を小型化できる。
【0012】
また、本願発明は、前記複数のマイクロフォンを、互いに交わる2つの直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対を構成する第1〜第4のマイクロフォンと、前記2組のマイクロフォン対の作る平面上にない第5のマイクロフォンとから構成するとともに、前記音源方向推定手段にて、前記2組のマイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の位相差の比と、前記第5のマイクロフォンと前記2組のマイクロフォン対を構成する4個のマイクロフォンのそれぞれとで構成される4組のマイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の位相差とを用いて前記音源方向(水平角θと仰角φ)を推定することを特徴とする。
これにより、音源方向の水平角θや仰角φを、少ないマイクロフォン数で、効率よくかつ正確に推定することができる。
【0013】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る音源方向推定機能付き監視カメラ装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】マイクロフォンと透明ディスプレイと監視カメラの位置関係を説明するための図である。
【図3】監視カメラの映像の一例を示す図である。
【図4】音源方向推定機能付き監視カメラ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】音源方向推定機能付き監視カメラ装置の他の構成を示す図である。
【図6】従来の音源推定方法におけるマイクロフォンの配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、音源方向推定機能付き監視カメラ装置10の構成を示す機能ブロック図である。
同図において、11は複数のマイクロフォンM1〜M5を有する音採取ユニット、12は監視カメラ、13は透明ディスプレイ、14はカメラ取付部材、15はマイクロフォン取付部材としての枠体、16はカメラ回転手段としてのステッピングモーター、17はモーター制御手段、20は演算装置である。
音採取ユニット11は、5本のマイクロフォンM1〜M5と、これらのマイクロフォンM1〜M5を以下のように配置して固定する固定台11Dとを備える。
マイクロフォンM1〜M5の配置は、図6に示したものと同様で、4個のマイクロフォンM1〜M4を、互いに直交する2直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対(M1,M3)及びマイクロフォン対(M2,M4)を構成するように配置するとともに、第5のマイクロフォンM5を前記マイクロフォンM1〜M4の作る平面上にない位置、詳細には、マイクロフォンM1〜M4の作る正方形を底面とする四角錐の頂点の位置に配置する。これにより、更に4組のマイクロフォン対(M5, M1)〜(M5, M4)が構成される。
【0017】
監視カメラ12としては、長時間の映像を記憶できる記憶装置を備えたカメラであればよい。本例では、カラーCCDカメラを用いた。
透明ディスプレイ13は非表示状態においては透明であり、表示データが入力された場合には、表示部分が不透明となるディスプレイで、例えば、透過率の高い薄膜から成るエレクトロルミネッセンス素子(EL素子)と透明電極とをガラス基板で挟んだELディスプレイや、液晶表示素子と偏光板とを組み合わせた単色ディスプレイなどの公知の透明ディスプレイを用いることができる。
【0018】
カメラ取付部材14は、監視カメラ12を支持するカメラ支持部材14aと透明ディスプレイ13を支持するディスプレイ支持部材14bと、これらの支持部材14a,14bを連結する連結部材14cとから成り、監視カメラ12と透明ディスプレイ13とを、透明ディスプレイ13が監視カメラ12のレンズの前方に位置するように、かつ、レンズの光軸が透明ディスプレイ13の中心を通るように取付ける。なお、透明ディスプレイ13の表示面13mは、同図の一点鎖線で示すレンズ光軸kと直交している。
ここで、監視カメラ12の視野の大きさは、透明ディスプレイ13の表示部の大きさとなる。すなわち、図2(a)〜(c)に示すように、監視カメラ12の焦点Oと透明ディスプレイ13の幅方向(後述するx方向)の両端A,A’を結ぶラインの成す角αが水平角方向の視野であり、焦点Oと透明ディスプレイ13の高さ方向(後述するz方向)の両端を結ぶラインの成す角βが仰角方向の視野である。なお、同図のDは、監視カメラ12と透明ディスプレイ13との距離で、zmは透明ディスプレイ13の中心とマイクロフォンM1〜M5の中心との距離である。
ここで、監視カメラ12の初期位置における焦点の位置を原点O(0,0,0)とすると、透明ディスプレイ13の中心ODの位置座標は(0,D,0)となり、マイクロフォンM1〜M4の中心Omの位置座標は(0,D,zm)となる。
【0019】
枠体15は、底面を構成するビーム状の底板15aと、この底板15aの両端からそれぞれ底板15aに直交する方向に延長する側板15bと、底板15aに対向するように配置されて2枚の側板15bを連結する天板15cとを備えた枠状の部材である。
以下、底板15aが延在する面をx−y平面、側板15bの延長方向をz方向とする。なお、x−y平面は必ずしも水平面を指すものではないが、本例では、説明を簡単にするため、水平面をx−y平面とし、z方向を上下方向とする。また、底板15aの延長方向をx方向とする。
【0020】
ステッピングモーター16は、モーター制御手段17からの制御パルス信号により駆動される。モーター制御手段17は、後述する指定回転角Θの情報をパルス信号に変換してステッピングモーター16に出力する。
音採取ユニット11と演算装置20とは枠体15の天板15cに取付けられ、カメラ取付部材14はステッピングモーター16を介して底板15aに取付けられる。また、モーター制御手段17は底板15aに取付けられる。このとき、透明ディスプレイ13の中心位置がステッピングモーター16の回転軸上にあり、かつ、ステッピングモーター16の回転軸とマイクロフォンM1〜M5の中心線とが一致するように、音採取ユニット11とカメラ取付部材14とを枠体15に取付けることが好ましい。
なお、取付時(以下、初期位置という)においては、監視カメラ12のレンズ光軸が枠体15に垂直になるように、カメラ取付部材14を枠体15に取付ける。
モーター制御手段17は、演算装置20とともに、天板15c上に取付けてもよいし、演算装置20に組み込んでもよい。
演算装置20は、音採取ユニット11、透明ディスプレイ13、及び、モーター制御手段17と図示しないケーブルによって接続されている。
【0021】
演算装置20は、増幅器21と、A/D変換器22と、記憶手段23と、音源方向推定手段24と、座標変換手段25と、回転判定手段26と、ディスプレイ制御手段27とを備える。
増幅器21はローパスフィルタを備え、マイクロフォンM1〜M5で採取した各音の音圧信号から高周波ノイズ成分を除去するとともに、各音圧信号をそれぞれ増幅してA/D変換器22に出力する。A/D変換器22は、各音圧信号をA/D変換した音圧波形データを作成し、これを、記憶手段23に出力する。
記憶手段23は、A/D変換された音圧波形データと、監視カメラ12の初期位置における焦点の位置座標を原点としたときの、マイクロフォンM1〜M4の中心位置の座標データOm(0,D,zm)を記憶する。なお、図2(a)に示すように、Dは透明ディスプレイ13の中心と監視カメラ12の焦点位置との距離で、zmは透明ディスプレイ13の中心とマイクロフォンM1〜M4の中心との距離である。透明ディスプレイ13の中心は、監視カメラ12の撮影方向であるレンズ光軸z上にある。
【0022】
音源方向推定手段24は、記憶手段23から音圧波形データを取出し、この取出された音圧波形データから各マイクロフォンM1〜M5間の位相差を求め、この求められた位相差から音源方向である水平角θと仰角φとを推定し、座標変換手段25とに出力する。
なお、水平角θと仰角φとは、所定の周波数帯域毎に推定する。また、音源方向の推定の詳細については、後述する。
【0023】
座標変換手段25では、記憶手段23に記憶されたマイクロフォンM1〜M4の中心位置の座標データの座標データOm(0,D,zm)を用いて、音源方向推定手段24で推定されたマイクロフォンM1〜M4の中心位置と音源とのなす水平角θと仰角φとを、監視カメラ12から見たときの水平角θ’と仰角φ’とに変換してディスプレイ制御手段27に出力するとともに、前記水平角θ’を回転判定手段26に出力する。なお、座標変換の詳細については省略する。
【0024】
回転判定手段26では、監視カメラ12から見たときの水平角θ’と水平角方向の視野αとを比較し、水平角θ’の大きさがα/2−γ(γは10°程度)を超えた場合には、水平角θ’と仰角φ’とをディスプレイ制御手段27に出力するとともに、水平角θ’を指定回転角Θとしてモーター制御手段17とディスプレイ制御手段27とに出力する。
水平角θ’の大きさがα/2−γ以下の場合には、水平角θ’と仰角φ’とをそのままディスプレイ制御手段27に出力する。
【0025】
透明ディスプレイ13の表示面13mでは、x軸がθ’を表し、y軸がφ’を表す。本例では、表示面13mの中心位置を原点とした。
ディスプレイ制御手段27は、音源の方向のデータを変換した座標データ(θ’,φ’)上に音源方向を示す図形を作成する。図3(a)はその一例を示す図で、本例では、音源方向を示す図形を網目模様の丸印Rとした。丸の中心は、前記座標データ(θ’,φ’)を表す点であり、半径は、各マイクロフォンM1〜M5で採取した音圧信号の大きさである。なお、予め設定した周波数帯域の音源方向を表示する場合や、周波数帯域毎の音源方向を表示する場合には、周波数帯域により丸印Rの色をそれぞれ設定すればよい。
これにより、監視カメラ12により撮影された映像に音源50が映っている場合には、音源50は網目模様の丸印Rがついて撮影される。
なお、水平角θ’の大きさθ’Mがα/2−γを超えていると判定された場合には、図3(b)に示すように、ディスプレイ制御手段27は、表示面13mの中心位置を、(θ’=0,φ’=0)から(θ’=θ’M=Θ,φ’=0)に変更して、網目模様の丸印Rを表示する。
【0026】
水平角θ及び仰角φの計算方法は以下の通りである。
各マイクロフォン対(Mi, Mj)のマイクロフォンMiとマイクロフォンMjとの間の到達時間差をDijとすると、音の入射方向である水平角θと仰角φとは以下の式(1),(2)で表わせるので、各マイクロフォンM1〜M5の出力信号をFFTを用いて周波数分析し、対象となる周波数fにおける各マイクロフォンM,M間の到達時間差Dijを算出することにより、前記水平角θ及び仰角φを求めることができる。
【数1】

すなわち、互いに直交する2直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対(M1,M3)及びマイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM1,M3に入力する音圧信号の到達時間差D13と、前記マイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM2,M4に入力する音圧信号の到達時間差D24との比から、計測点と音源位置との水平角θを推定し、前記到達時間差D13,D24と、前記第5のマイクロフォンM5と他のマイクロフォンM1〜M4との到達時間差D5j(j=1〜4)とから計測点と音源位置との成す仰角φを推定する。
【0027】
なお、前記到達時間差Dijは、2つのマイクロフォン対(M,M)に入力される信号のクロススペクトルPij(f)を求め、更に、対象とする前記周波数fの位相角情報Ψ(rad)を用いて、以下の式(3)を用いて算出される。
【数2】

水平角θと仰角φとは、fを中心周波数とする所定の帯域幅を有する周波数帯域毎に求めることができる。
【0028】
本発明による音源方向推定機能付き監視カメラ装置10の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、監視カメラ12の作動開始時には、カメラ取付部材14は初期位置、すなわち、枠体15とレンズ光軸kと直交しているとする。
まず、監視カメラ12で監視対象を撮影しながら、マイクロフォンM1〜M5にて音の情報を採取する(ステップS10)。そして、音の情報を増幅器21で増幅した後、A/D変換器22によりA/D変換して、音圧波形データとして記憶手段23に保存する(ステップS11)。
次に、音源方向推定手段24により、記憶手段23に保存された音圧波形から各マイクロフォンM1〜M5間の位相差を求め、この求められた位相差から音源方向である水平角θと仰角φとを推定する(ステップS12)。
【0029】
音源方向の推定が終了した後は、推定された水平角θと仰角φとを、座標変換手段25にて、監視カメラから見た水平角θ’と仰角φ’とに変換する(ステップS13)。
そして、回転判定手段26にて、水平角θ’と水平角方向の視野αとを比較する(ステップS14)。水平角θ’の大きさがα/2−γ以下の場合には、水平角θ’と仰角φ’とをそのままディスプレイ制御手段27に出力し、透明ディスプレイ13の表示面13mに中心が座標データ(θ’,φ’)を表す点であり、半径が各マイクロフォンで採取した音圧信号の大きさである網目状の丸印Rを描画する(ステップS15)。監視カメラ12は、この網目状の丸印Rが映った映像を撮影する。
【0030】
ステップS14において、水平角θ’の大きさがα/2−γを超えた場合には、ステップS16に進んで、水平角θ’をディスプレイ制御手段27に出力するとともに、水平角θ’を指定回転角Θとしてモーター制御手段17に出力して、ステッピングモーター16を回転させ、監視カメラ12と透明ディスプレイ13とを指定回転角Θだけ回転させる(ステップS16)。
透明ディスプレイ13は、原点の座標を(0,0)から(Θ,0)に変更するとともに、前記網目状の丸印Rを、原点が変更された表示面13mに描画する(ステップS17)。監視カメラ12は、この網目状の丸印Rが映った映像を撮影する。
【0031】
これにより、監視カメラ12は、常に、音源の推定位置が映った画像を撮影することができる。なお、音の大きさが一定レベル以下になった場合には、カメラ取付部材14を初期位置に戻す。また、更に、一定レベルより大きな音が発生した場合には、カメラ取付部材14を回転させて、監視カメラ12のレンズ光軸が新たな音源方向を向くように、カメラ取付部材14を回転させるようにしてもよいし、そのまま測定中の音の方向を撮影してもよい。
【0032】
このように、本実施の形態では、枠体15の天板15cにマイクロフォンM1〜M5が取付けられた固定台11Dを取付け、カメラ取付部材14に、監視カメラ12と透明ディスプレイ13とを、透明ディスプレイ13が監視カメラ12のレンズの前方に位置するように取付け、このカメラ取付部材14をステッピングモーター16を介して枠体15の底板15aに取付け、マイクロフォンM1〜M5の出力する音圧信号を用いて音源方向を推定した後、推定された音源方向の水平角θ’の大きさが監視カメラ12の視野内にある場合には、透明ディスプレイ13に推定された音源方向θ’を示す図形を表示するとともに、推定された音源方向の水平角θ’の大きさが監視カメラ12の最大視野を超えている場合には、監視カメラ12の撮影方向が前記推定された音源方向になるようにカメラ取付部材14を回転させてから透明ディスプレイ13に推定された音源方向θ’を示す図形を表示するようにしたので、簡単な構成で、音源の推定位置が映った画像を撮影することができる。
なお、推定された水平角θ’は、マイクロフォンM1〜M5の中心位置を原点としたときの水平角θを、監視カメラ12から見たときの水平角に変換したものである。
【0033】
なお、前記実施の形態では、カメラ取付部材14を枠体15に対して回転させる構成としたが、枠体15が小さい場合には、カメラ取付部材14を回転させたときに、枠体15が監視カメラ12の視野に入ってしまい、映像が見にくくなることがある。
そこで、図5に示すように、第1のステッピングモーター16Aを用いてカメラ取付部材14を枠体15とともに固定部材である枠体支持台19に対して回転させるとともに、第2のステッピングモーター16Bを用いて音採取ユニット11を枠体15と逆方向に同角度だけ回転させる構成とすれば、枠体15を小さくしても、枠体15が監視カメラ12の視野に入ることがない。なお、第2のステッピングモーター16Bの回転軸と第1のステッピングモーター16Aの回転軸とは同一直線状にあることはいうまでもない。
この構成では、図1の構成に比べてステッピングモーターが1台多いが、枠体15が監視カメラ12の視野に入らないように枠体15を大きくする必要がないので、装置を小型化できる。なお、映像中に枠体15があっても問題ない場合には、図1の構成を用いる方が安価であるので好ましい。
【0034】
また、前記例では、マイクロフォンM1〜M5を枠体15の天板15cに設置したが、側面15bに設置してもよい。
また、前記例では、推定された水平角θ及び仰角φを座標変換して水平角θ’及び仰角φ’を求めたが、音源50が遠い場合には、推定された水平角θ及び仰角φをそのまま音源の座標としてもよい。
また、前記例では、監視カメラ12を水平角方向のみに回転させたが、ステッピングモーターを追加して、水平角方向と仰角方向の両方に回転させてもよい。これにより、音源推定方向の更に鮮明な映像を撮影することができる。
【0035】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、音源の方向が表示された映像を直接にかつ確実に撮影することのできる音源方向推定機能付き監視カメラ装置を提供することができるので、監視カメラの性能を飛躍的に向上させることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 音源方向推定機能付き監視カメラ装置、11 音採取ユニット、
11D 固定台、12 監視カメラ、13 透明ディスプレイ、13m 表示面、
14 カメラ取付部材、14a カメラ支持部材、14b ディスプレイ支持部材、
14c 連結部材、15 枠体、15a 底板、15b 側板、15c 天板、
16 ステッピングモーター、17 モーター制御手段、20 演算装置、
21 増幅器、22 A/D変換器、23 記憶手段、24 音源方向推定手段、
25 座標変換手段、26 回転判定手段、27 ディスプレイ制御手段、
50 音源、M1〜M5 マイクロフォン、k レンズ光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源から伝搬される音の情報を採取する複数のマイクロフォンと、
これら複数のマイクロフォンを取付けるマイクロフォン取付部材と、
室内もしくは室外の映像を撮影する監視カメラと、
非表示状態において透明な透明ディスプレイと、
前記監視カメラと前記透明ディスプレイとを、透明ディスプレイを監視カメラのレンズの前方に位置するように取付けるカメラ取付部材と、
前記各マイクロフォンが出力する音圧信号を用いて音源方向を推定する音源方向推定手段と、
前記カメラ取付部材を回転させるカメラ回転手段とを備え、
前記カメラ回転手段は、前記推定された音源方向に基づいて、監視カメラの撮影方向が前記推定された音源方向になるように、前記カメラ取付部材を回転させ、
前記透明ディスプレイは、前記推定された音源方向を示す図形を表示することを特徴とする音源方向推定機能付き監視カメラ装置。
【請求項2】
前記カメラ取付部材は前記カメラ回転手段を介して前記マイクロフォン取付部材に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の音源方向推定機能付き監視カメラ装置。
【請求項3】
前記マイクロフォン取付部材はマイクロフォン回転手段を介して前記カメラ取付部材に取付けられており、
前記マイクロフォン回転手段は、前記マイクロフォン取付部材を、前記カメラ取付部材とは逆方向に、かつ、前記カメラ取付部材と同じ角度だけ回転させることを特徴とする請求項1に記載の音源方向推定機能付き監視カメラ装置。
【請求項4】
前記複数のマイクロフォンは、
互いに交わる2つの直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対を構成する第1〜第4のマイクロフォンと、前記2組のマイクロフォン対の作る平面上にない第5のマイクロフォンとを有し、
前記音源方向推定手段は、
前記2組のマイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の位相差の比と、前記第5のマイクロフォンと前記2組のマイクロフォン対を構成する4個のマイクロフォンのそれぞれとで構成される4組のマイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の位相差とを用いて前記音源方向の水平角と仰角とを推定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の音源方向推定機能付き監視カメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−188016(P2011−188016A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47968(P2010−47968)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】