説明

音源検出装置

【課題】ノイズ音の影響を抑制する音源検出装置を提供することを課題とする。
【解決手段】移動体(例えば、車両)に搭載され、集音器で集音された音に基づいて検出対象の音源(例えば、他車両の走行音)を検出する音源検出装置1Aであって、音源検出装置が作動されるときに、移動体に備えられるノイズ音の発生源機器の動作状態を制御(例えば、発生源機器を停止/起動、発生源機器の停止条件及び/又は起動条件を変更、発生源機器から発生する音の周波数帯が変わるように動作状態を変更)する動作状態制御手段13Aを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
移動体に搭載され、集音器で集音された音に基づいて検出対象の音源を検出する音源検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音源検出装置では、複数の集音器で周囲の音をそれぞれ集音し、各集音器への音の到達時間差等に基づいて音源(特に、車両の走行音)の移動方向等を検出する。特許文献1に記載の装置では、所定の間隔で配設された複数のマイクロホン(集音器)が出力する電気信号から帯域通過フィルタで低周波帯域と高周波帯域の周波数成分をそれぞれ除去して補正電気信号に変換し、その補正電気信号から車両の走行音の特徴の現れる所定の周波数帯域のパワーを算出し、そのパワーレベルが所定値より大きい場合に接近車両有りと判定するとともに、その補正電気信号により不要な雑音成分を除去して雑音抑制信号に変換し、複数のマイクロホンの雑音抑制信号間の相互相関を演算し、相関が最大となる到達時間差から接近車両の接近方向を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−92767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載された音源検出装置の場合、接近する他車両の走行音以外にも、自車両に備えられる機器が発生する音(例えば、エンジン音、エンジン等の冷却ファン音)も集音する。この自車両で発生する各音の周波数帯と他車両の走行音の周波数帯とが重なると、他車両の走行音に対してノイズ音となり、検出対象の他車両の走行音の認識精度が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、ノイズ音の影響を抑制する音源検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る音源検出装置は、移動体に搭載され、集音器で集音された音に基づいて検出対象の音源を検出する音源検出装置であって、音源検出装置が作動されるときに、移動体に備えられるノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御する動作状態制御手段を備えることを特徴とする。
【0007】
この音源検出装置は、移動体(例えば、車両)に搭載され、移動体に設けられる集音器で集音された音に基づいて移動体周辺の検出対象の音源(例えば、他車両の走行音)を検出する。この音源検出装置は移動体に搭載されているので、移動体に備えられる機器から音が発生すると、その音も集音器で集音され、その音が音源検出に対してノイズ音となる場合がある。そこで、音源検出装置では、音源検出が行われるときには、動作状態制御手段によって、移動体内のノイズ音の発生源機器の動作状態を制御(例えば、発生源機器を停止/再起動、発生源機器から発生する音の周波数帯が変わるように動作状態を変更)する。このように、音源検出装置は、音源検出が行われるときには移動体内のノイズ音の発生源機器の動作状態を制御することにより、ノイズ音の影響を抑制でき、移動体周辺の検出対象の音源の検出精度が向上する。
【0008】
本発明の上記音源検出装置では、動作状態制御手段は、音源検出装置が作動されるときに、ノイズ音の発生源の機器を停止する。このように、音源検出装置では、音源検出が行われるときには移動体内のノイズ音の発生源機器を停止することにより、移動体内のノイズ音の発生源機器からのノイズ音が発生しない。
【0009】
本発明の上記音源検出装置では、動作状態制御手段は、音源検出装置が作動されるときに、ノイズ音の発生源の機器の停止条件及び/又は起動条件を変更する。停止条件の変更としては、例えば、通常の停止条件よりもノイズ源の発生源機器が停止し易くなる条件に変更する。起動条件の変更としては、例えば、通常の起動条件よりもノイズ源の発生源機器が起動し難くなる条件に変更する。このように、音源検出装置では、音源検出が行われるときには移動体内のノイズ音の発生源機器の停止条件や起動条件を変更することにより、移動体内のノイズ音の発生源機器が通常よりも停止し易くなり、ノイズ音の発生を抑制できる。
【0010】
本発明の上記音源検出装置では、ノイズ音の発生源の機器の動作状態に基づいて、音源検出装置での音源検出の信頼度を低下させる信頼度変更手段を備える構成としてもよい。
【0011】
この音源検出装置では、信頼度変更手段によって、ノイズ音の発生源機器の動作状態(例えば、ノイズ音の発生源機器が作動している場合)に基づいて、音源検出に対する信頼度を通常よりも低下させる。移動体に搭載される音源検出装置において移動体周辺の検出対象の音源が検出されると、その音源の方向や距離等を用いて移動体における運転支援等が行われる。このような移動体における運転支援では、音源検出の信頼度が下げられると、ノイズ音によって音源検出の検出精度が低下している可能性があるので、通常よりも運転支援を弱める等の対処ができる。このように、音源検出装置では、ノイズ音の発生源機器の動作状態に基づいて音源検出に対する信頼度を低下させることにより、移動体内で発生するノイズ音による影響を抑制でき、システム全体の信頼性が向上する。
【0012】
本発明の上記音源検出装置では、動作状態制御手段は、音源検出装置の過去の作動時における移動体情報に基づいて、ノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御する構成としてもよい。
【0013】
この音源検出装置では、音源検出装置の過去の作動時における移動体情報(例えば、移動体の位置)に基づいて音源検出装置が作動される状況かを推定でき、そのような状況と推定した場合には事前にノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御する。このように、音源検出装置では、音源検出装置の過去の作動時における移動体情報を利用することにより、早期に音源検出装置の作動を推定でき、事前にノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御できる。
【0014】
本発明の上記音源検出装置では、移動体の位置を取得する位置取得手段と、音源検出装置が作動した場合の移動体の位置を対応付けて記憶する記憶手段とを備え、動作状態制御手段は、位置取得手段で取得した移動体の現在の位置と記憶手段に記憶されている位置に基づいて、ノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御する。
【0015】
この音源検出装置では、位置取得手段によって移動体の位置を取得し、音源検出が行われた場合にはそのときの移動体の位置を対応付けて記憶手段に記憶しておく。そして、音源検出装置では、位置取得手段で移動体の位置を取得する毎に、動作状態制御手段によって移動体の現在位置と記憶手段に記憶されている過去に音源検出が行われた各位置とを比較し、位置によって音源検出装置の作動を推定した場合には事前にノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御する。このように、音源検出装置では、過去の音源検出とそのときの位置を関連付けて記録しておくことにより、現在位置が音源検出装置の作動位置か否かを高精度に推定できる。
【0016】
本発明の上記音源検出装置では、日時を取得する日時取得手段を備え、記憶手段に、音源検出装置が作動した場合の日時を対応付けて記憶し、動作状態制御手段は、日時取得手段で取得した移動体の現在の日時と記憶手段に記憶されている日時に基づいて、ノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御する。
【0017】
この音源検出装置では、日時取得手段によって日時を取得し、音源検出が行われた場合には移動体の位置に加えて日時も対応付けて記憶手段に記憶しておく。そして、音源検出装置では、日時取得手段で日時を取得する毎に、動作状態制御手段によって位置に加えて日時(曜日、時刻など)と記憶手段に記憶されているその位置で音源検出が行われたときの各日時とを比較し、位置に加えて日時によって音源検出装置の作動を推定した場合には事前にノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御する。このように、音源検出装置では、過去の音源検出とそのときの位置に加えて日時を関連付けて記録しておくことにより、現在日時が音源両検出装置の作動日時か否かを高精度に推定できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、音源検出が行われるときには移動体内のノイズ音の発生源機器の動作状態を制御することにより、ノイズ音の影響を抑制でき、移動体周辺の検出対象の音源の検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態に係るシステムの構成図である。
【図2】エンジン再起動判定に用いる閾値の一例であり、(a)がアクセル開度に対する閾値であり、(b)がバッテリ残充電量に対する閾値である。
【図3】第1の実施の形態に係るシステムにおける動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態に係るシステムの構成図である。
【図5】第2の実施の形態に係るシステムにおける動作の流れを示すフローチャートである。
【図6】第3の実施の形態に係るシステムの構成図である。
【図7】第3の実施の形態に係るシステムにおける動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る音源検出装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
本実施の形態では、本発明に係る音源検出装置を、車両に搭載される接近車両検出装置、運転支援装置、ノイズ源機器の関連装置(ノイズ源機器制御装置、ノイズ源機器状態取得装置)からなるシステムに適用する。本実施の形態に係るシステムでは、接近車両検出装置において集音器(マイクロホン)で集音された音に基づいて自車両に接近する他車両を検出し(つまり、自車両周辺の他車両の走行音(音源)を検出し)、運転支援装置において接近車両の情報を利用して運転支援を行う。特に、本実施の形態に係るシステムは、自車両内のノイズ源機器から発生するノイズ音の影響を抑制するためのシステムであり、ノイズ源機器に対して制御したりあるいはノイズ源機器の動作状態に応じて運転支援の様態を変更する。本実施の形態には、3つの形態があり、第1の実施の形態がノイズ音の影響を抑制するためにノイズ源機器を停止する形態であり、第2の実施の形態がノイズ源機器が駆動している場合に運転支援を弱める形態であり、第3の実施の形態が過去のデータから接近車両検出が作動する状況を推定した場合にはノイズ源機器を停止する形態である。
【0022】
なお、車両の走行音は、主として、ロードノイズ(タイヤ表面と路面との摩擦音)とパターンノイズ(タイヤ溝における空気の渦(圧縮/開放))である。この他にも、エンジン音や風切り音などもある。この車両の走行音の周波数成分の範囲は、実験等によって予め測定しておいてもよい。
【0023】
車両におけるノイズ源機器としては、主なものとして、エンジンとエンジン等を冷却するために取り付けられたラジエータに風を送る冷却ファンがある。このエンジンから発生する音と冷却ファンから発生する音が、他車両の走行音に対してノイズ音となる。特に、冷却ファンから発生する音は、車両の走行音の周波数帯と近く、接近車両検出に対して影響が大きい。
【0024】
図1及び図2を参照して、第1の実施の形態に係るシステムについて説明する。図1は、第1の実施の形態に係るシステムの構成図である。図2は、エンジン再起動判定に用いる閾値の一例であり、(a)がアクセル開度に対する閾値であり、(b)がバッテリ残充電量に対する閾値である。
【0025】
第1の実施の形態に係るシステムは、ハイブリッド車両に搭載され、接近車両検出装置1A、運転支援装置2A、ノイズ源機器制御装置3からなる。第1の実施の形態に係るシステムでは、接近車両検出(走行音認識)が必要な状況の場合(接近車両検出が作動される場合)、ハイブリッド制御でノイズ源機器N1,・・・(エンジン等)を停止しているときにはノイズ源機器N1,・・・の再起動条件を変更して通常よりも再起動を遅らせる。なお、第1の実施の形態では、ノイズ源機器の一つであるエンジンの停止/再起動について詳細に説明する。
【0026】
エンジンとモータを併用するハイブリッド車両の場合、モータのみでの走行が可能であり、エンジンの停止/再起動が容易な構成である。したがって、ハイブリッド車両の場合、接近車両検出が必要な状況のときに、エンジンや冷却ファンを停止あるいは動作様態を通常と異なる設定とすることが可能である。
【0027】
ハイブリッド車両におけるエンジン停止/再起動について説明しておく。ハイブリッド制御では、低い車速域や車両発進時にはモータで走行したほうがエネルギ効率が良いので、速度とアクセル開度に応じてエンジンの停止/再起動を判定する場合がある。一般に、車両が停止あるいは停止寸前で車速が低い場合にはエンジンを停止してモータのみの走行に移行する。エンジン停止後、発進あるいは車速を上げるためにアクセルが踏み込まれた場合、アクセルの踏み込みが小さい(アクセル開度が小さい)段階ではモータのみの走行を継続し、アクセルの踏み込みが大きく(アクセル開度が大きく)なるとエンジンを再起動する。第1の実施の形態では、エンジンの停止については、ハイブリッド制御の通常の停止条件で停止した場合を適用する。
【0028】
接近車両検出装置1Aについて説明する。接近車両検出装置1Aは、車両走行中に周辺の音を集音し、その集音した音データに基づいて接近する車両(車両の走行音)を検出し、その接近車両検出情報を運転支援装置2Aに提供する。特に、接近車両検出装置1Aでは、接近車両検出が必要と判定した場合(接近車両検出が作動する場合)、エンジンが停止しているときにはエンジンの再起動条件の閾値を変更する。接近車両検出装置1Aは、集音装置10A、ECU[Electronic Control Unit]11Aを備えている。
【0029】
集音装置10Aは、1個以上の集音器を有している。1個以上の集音器は、例えば、車両の前端部に車幅方向(左右方向)に並べて配置される(1個の場合は車両の前端部の中央に配置)。集音器は、音響電気変換器であり、車外の周囲の音を集音し、集音した音を電気信号に変換する。集音装置10Aでは、集音器で音を集音し、集音した音データをECU11Aに送信する。
【0030】
ECU11Aは、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットであり、接近車両検出装置1Aを統括制御する。ECU11Aには、接近車両検出部12A、接近車両検出装置動作状態変更部13Aが構成される。ECU11Aは、集音装置10Aから集音器で集音された音データ(電気信号)を受信する。ECU11Aでは、音データに対する前処理として、各音データに対して、アナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換し、その電気信号から所定の周波数帯域(車両の走行音の周波数帯域を十分に含む帯域よりも高い高周波数帯域と低い低周波数帯域)を除去する。なお、第1の実施の形態では、接近車両検出装置動作状態変更部13Aが特許請求の範囲に記載する動作状態制御手段に相当する。
【0031】
接近車両検出部12Aでは、接近車両検出が必要な状況の場合、前処理後の集音器の音データに基づいて自車両に接近する車両を検出し、接近する車両が存在する場合にはその接近車両の方向や距離等を算出する。検出方法としては、従来の方法を適用し、例えば、CSP[Cross power Spectrum Phase analysis]法がある。CSP法は、集音装置10Aが複数個の集音器を有し、1対以上の集音器対を構成しており、集音器対で集音された各音データに対して周波数領域でのマッチングを行い、相互相関値(CSP係数)を求め、相互相関値が閾値以上の場合には車両(音源となる車両の走行音)が存在すると判断し、車両が存在する場合には相互相関値が最大となる到達時間差から車両の方向や距離等を求める。
【0032】
接近車両検出装置動作状態変更部13Aでは、ノイズ源機器制御装置3からノイズ源機器N1,・・・の動作状態の情報(例えば、エンジンが停止中/駆動中、冷却ファンが停止中/駆動中)を受信する。また、接近車両検出装置動作状態変更部13Aでは、接近車両検出が必要な状況か否かを判定する。この判定方法としては、例えば、地図データに基づいて信号機の無い交差点(特に、見通しの悪い交差点)に自車両が差し掛かっているか、自車両の車速が低下して停止に移行しているかなどで判定する。
【0033】
接近車両検出装置動作状態変更部13Aでは、ハイブリッド制御でエンジンが停止しており、接近車両検出が必要な状況と判定した場合、エンジンの再起動条件を変更する。エンジンの再起動条件としては、アクセル開度に対する閾値がある。図2(a)に示すように、通常のハイブリッド制御ではアクセル開度の再起動条件は閾値TA1である。接近車両検出装置動作状態変更部13Aでは、この通常の閾値TA1よりも高い閾値TA2に変更する。この閾値TA2は、実験等によって予め設定される。閾値TA2の値としては、運転者がアクセル操作する車両の加速で違和感を与えない程度とする。また、エンジンの再起動条件としては、バッテリ残充電量に対する閾値がある。図2(b)に示すように、通常のハイブリッド制御ではバッテリ残充電量の再起動条件は閾値TB1である。接近車両検出装置動作状態変更部13Aでは、この通常の閾値TB1よりも低い閾値TB2に変更する。この閾値TB2は、実験等によって予め設定される。閾値TB2の値としては、車両走行中にバッテリ残充電量が不足しない程度とする。接近車両検出装置動作状態変更部13Aでは、アクセル開度に対する閾値とバッテリ残充電量に対する閾値の両方を変更してもよいし、一方だけを変更してもよい。なお、実際には、アクセル開度やバッテリ残充電量だけでなく、車速等の他の情報も参照して再起動を判定している。
【0034】
接近車両検出装置動作状態変更部13Aでは、閾値を変更すると、変更後の閾値でエンジンの再起動を判定する。そして、接近車両検出装置動作状態変更部13Aでは、エンジンが再起動条件を満たした場合には、エンジンを再起動する指令をノイズ源機器制御装置3に送信する。なお、接近車両検出装置動作状態変更部13Aでエンジンの再起動を判定するのでなく、変更後の閾値をノイズ源機器制御装置3に送信し、ノイズ源機器制御装置3でエンジンの再起動を判定してもよい。
【0035】
閾値を変更して判定するのは、最初に接近車両検出が必要と判定してから一定時間までとし、一定時間後に通常の閾値に戻す。この一定時間としては、接近車両検出に必要な時間を実験等によって求め、その必要な時間よりもある程度長い時間を設定する。あるいは、接近車両検出が作動して接近車両を検出し、運転支援を実施した後に一定の条件(例えば、一定時間経過後、車速が所定車速以上、ステアリング操作が所定角度以上)を満たしたら通常の閾値に戻す。
【0036】
なお、冷却ファンが停止しており、接近車両検出が必要な状況と判定した場合、冷却ファンの再起動条件を変更するようにしてもよい。冷却ファンの場合、例えば、エンジンの温度で再起動を判定し、通常の閾値よりも高い温度の閾値に変更する。また、接近車両検出が必要な状況と判定した場合、冷却ファンが停止できないときには、接近車両検出に影響を与える周波数帯成分が少なくなるようにあるいは接近車両検出に影響を与える周波数帯と異なる周波数帯となるように、冷却ファンの回転数を調整するようにしてもよい。
【0037】
ECU11Aでは、接近車両検出部12Aでの検出結果に基づいて接近車両情報を生成し、接近車両情報を運転支援装置2Aに送信する。接近車両情報としては、例えば、接近車両の有無、接近車両が存在する場合には方向、距離の情報である。
【0038】
運転支援装置2Aは、各種センサやECU等からなり、運転者に対して各種運転支援する装置である。特に、運転支援装置2Aでは、接近車両検出装置1Aから接近車両情報を受信すると、接近車両に関する運転支援を実施する。例えば、自車両に対して接近する車両が存在する場合、自車両に対する接近車両の衝突の可能性を判定し、衝突の可能性があると判定したときには運転者に対して注意喚起を行い、更に、衝突の可能性が高まった場合には自動ブレーキ等の車両制御を行う。なお、このような衝突の可能性の判断や運転支援は、信号機の無い交差点においてより有効である。
【0039】
ノイズ源機器制御装置3は、ノイズ源機器N1,・・・の動作状況を取得し、ノイズ源機器N1,・・・を制御する装置であり、例えば、エンジンとモータに対するハイブリッド制御を行うハイブリッドECUである。ノイズ源機器制御装置3では、接近車両検出装置1AのECU11Aに対して、ノイズ源機器N1,・・・の動作状態の情報(例えば、エンジンが停止中/駆動中、冷却ファンが停止中/駆動中)を送信する。また、ノイズ源機器制御装置3では、接近車両検出装置1AのECU11Aから指令を受信すると、その指令に応じてノイズ源機器N1,・・・を制御する(例えば、エンジンを再起動指令に対してエンジンを再起動、エンジンの再起動条件の閾値変更指令に対して閾値を変更)。
【0040】
図1及び図2を参照して、第1の実施の形態に係るシステムでの動作を図3のフローチャートに沿って説明する。図3は、第1の実施の形態に係るシステムにおける処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、接近車両検出に対するノイズ源機器の影響を抑制するための動作についてのみ説明する。なお、ハイブリッドECU(ノイズ源機器制御装置3)においてエンジンを停止する場合を前提とし、ハイブリッド制御で交差点の手前等でエンジンの停止条件を満たしたので、エンジンが停止しており、モータのみで走行している。
【0041】
接近車両検出装置1AのECU11Aでは、接近車両検出が必要な状況か否かを判定する(S10)。S10にて接近車両検出が必要な状況と判定した場合(接近車両検出部12Aが作動される場合)、ECU11Aでは、エンジンの再起動の閾値として通常よりも再起動し難くなる第2閾値に変更し、第2閾値に基づいてエンジンの再起動を判定する(S11)。この場合、通常ではエンジンが再起動する状態であってもエンジンが再起動せず、モータのみの走行を継続する。その結果、接近する他車両の走行音の認識に対して自車両からノイズ音が発生せず、他車両の走行音を高精度に認識できる。一方、S10にて接近車両検出が不要な状況と判定した場合、ECU11Aでは、エンジンの再起動の閾値として通常の第1閾値を維持し、第1閾値に基づいてエンジンの再起動を判定する(S12)。この場合、通常と同様に、エンジンが再起動する。
【0042】
第1の実施の形態に係るシステムによれば、接近車両検出が必要な状況の場合にはノイズ源機器の再起動条件の閾値を変更することにより、ノイズ音の影響を抑制でき、他車両の走行音を高精度に認識でき、接近車両の検出精度が向上する。
【0043】
図4を参照して、第2の実施の形態に係るシステムについて説明する。図4は、第2の実施の形態に係るシステムの構成図である。
【0044】
第2の実施の形態に係るシステムは、エンジン車両に搭載され、接近車両検出装置1B、運転支援装置2B、ノイズ源機器状態取得装置4からなる。第2の実施の形態に係るシステムでは、ノイズ源機器N1,・・・が駆動している場合、接近車両検出の信頼度を下げて運転支援を通常より弱める。なお、第2の実施の形態では、ノイズ源機器としてエンジンと冷却ファンの場合について詳細に説明する。
【0045】
エンジンのみで走行する車両の場合、ハイブリッド車両のようにエンジンを停止することできない。また、エンジンを常時駆動しているので、エンジン温度が上昇し、冷却ファンを停止できる状況も少ない。したがって、エンジンや冷却ファンが駆動している状況で、接近車両検出を行っている場合、自車両内で発生するノイズ音の影響を受けて他車両の走行音の認識精度が低下している可能性が高く、接近車両に関する情報の信頼性も低くなる。そこで、第2の実施の形態では、このような情報を用いて運転支援を行う場合には、通常よりも運転支援を弱める。
【0046】
接近車両検出装置1Bについて説明する。接近車両検出装置1Bは、車両走行中に周辺の音を集音し、その集音した音データに基づいて接近する車両を検出し、その接近車両検出情報を運転支援装置2Bに提供する。特に、接近車両検出装置1Bでは、エンジン及び/又は冷却ファンが駆動している場合、その駆動の組み合わせに応じて接近車両検出の信頼度に上限値を設けて信頼度を再設定する。接近車両検出装置1Bは、集音装置10B、ECU11Bを備えている。なお、集音装置10Bは、第1の実施の形態に係る集音装置10Aと同様の装置なので、説明を省略する。
【0047】
ECU11Bは、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、接近車両検出装置1Bを統括制御する。ECU11Bには、接近車両検出部12B、認識信頼度設定部14Bが構成される。ECU11Bは、集音装置10Bから集音器で集音された音データ(電気信号)を受信する。ECU11Bでは、音データに対する前処理として、第1の実施の形態に係るECU11Aと同様の処理を行う。なお、第2の実施の形態では、認識信頼度設定部14Bが特許請求の範囲に記載する信頼度変更手段に相当する。
【0048】
接近車両検出部12Bでは、第1の実施の形態に係る接近車両検出部12Aと同様の処理を行う。さらに、接近車両検出部12Bでは、他車両の走行音の認識(接近車両の検出)の信頼度を設定(算出)する。この信頼度としては、例えば、CSP法の場合には相互相関値に応じて設定し、0から1.0の値とし、値が大きいほど信頼度が高い。
【0049】
認識信頼度設定部14Bでは、ノイズ源機器状態取得装置4からノイズ源機器N1,・・・の動作状態の情報(エンジンが停止中/駆動中、冷却ファンが停止中/駆動中)を受信する。そして、認識信頼度設定部14Bでは、この動作状態の情報に基づいて、エンジンのみ駆動中、冷却ファン駆動中(エンジン停止中又は駆動中)、エンジン及び冷却ファン停止中かを判定する。エンジン及び冷却ファンが共に停止中の場合、認識信頼度設定部14Bでは、接近車両検出部12Bで設定した信頼度をそのまま最終的な信頼度として用いる。エンジンのみ駆動中の場合、認識信頼度設定部14Bでは、ファン非駆動上限信頼度に基づいて、接近車両検出部12Bで設定した信頼度がファン非駆動上限信頼度を超える場合にはファン非駆動上限信頼度を最終的な信頼度として設定する。冷却ファン駆動中の場合、認識信頼度設定部14Bでは、ファン駆動中上限信頼度に基づいて、接近車両検出部12Bで設定した信頼度がファン駆動中上限信頼度を超える場合にはファン駆動中上限信頼度を最終的な信頼度として設定する。各上限信頼度は、実験等によって予め設定される。
【0050】
上限信頼度の設定方法の一例を説明する。事前に、まず、テストコースのように、環境をコントロールできる状態で、エンジンや冷却ファン等のノイズ源機器を停止し、車両の走行音の認識の性能を計測する。このとき、ノイズ源機器のノイズ音の影響を受けない場合の信頼度も算出する。次に、エンジンや冷却ファン等のノイズ源機器を単体あるいは組み合わせて駆動し、それ以外は全く同じ状況で車両の走行音の認識の性能をそれぞれ計測する。このとき、駆動しているノイズ源機器単体毎あるいは組み合わせ毎に信頼度もそれぞれ算出する。これによって、ノイズ源機器の動作状態の違い(停止中/駆動中)によって、信頼度が異なることを観測できる。通常は、ノイズ源機器が駆動していないときの信頼度のほうが、ノイズ源機器が駆動しているときの信頼度よりも高い。コントロール環境下で、上記の各条件で計測を複数回繰り返し、上記の各条件での信頼度を複数回算出する。そして、ノイズ源機器が全て停止している場合の信頼度の平均値、各ノイズ源機器が単体で駆動している場合及び各組み合わせのノイズ源機器が駆動している場合の信頼度の平均値を求める。この信頼度の平均値に基づいて、上限信頼度をそれぞれ設定する。ちなみに、冷却ファンの影響度はエンジンの影響度より大きい場合が多いので、ファン駆動中上限信頼度のほうがファン非駆動上限信頼度よりも低く設定するのが好適である。
【0051】
例えば、冷却ファン駆動中の信頼度の平均値が0.5であった場合、ファン駆動中上限信頼度を0.5とする。実際の車両走行時に冷却ファン駆動中に接近車両検出部12Bで信頼度が0.8と算出された場合でも、この信頼度は何らの要因で一時的に高くなっている可能性があることが考えられる。したがって、冷却ファンが駆動中の場合には、ファン駆動中上限信頼度の0.5に基づいて、信頼度として0.5を最終的に設定する。
【0052】
なお、事前の計測では複数段階の音圧レベルで計測をそれぞれ行い、各段階の音圧レベルに応じて複数の信頼度を算出するようにしてもよい。実際の車両の走行音の認識の場合、接近車両が近傍に存在するときには集音器で集音する音の音圧レベルが大きく、そのときの信頼度は一般に高くなる。一方、接近車両が遠方に存在するときには集音器で集音する音の音圧レベルが小さく、そのときの信頼度は一般に低くなる。したがって、音圧レベルと信頼度は関連して変化するので、音圧レベルによって上限信頼度も変えるようにするとよい。
【0053】
ECU11Bでは、接近車両検出部12Bでの検出結果及び認識信頼度設定部14Bの信頼度の設定結果に基づいて接近車両情報を生成し、接近車両情報を運転支援装置2Bに送信する。接近車両情報としては、例えば、接近車両の有無、接近車両が存在する場合には方向、距離の情報に加えて信頼度である。
【0054】
運転支援装置2Bは、各種センサやECU等からなり、運転者に対して各種運転支援する装置である。運転支援装置2Bには、運転支援様態決定部20Bと運転支援部21Bが構成される。
【0055】
運転支援様態決定部20Bでは、接近車両検出装置1Bから接近車両情報を受信すると、接近車両情報に基づいて接近車両が存在する場合には、信頼度に応じて運転支援の様態を決定する。例えば、第1の実施の形態の運転支援装置2Aで説明した衝突防止装置の場合、信頼度の高い場合には強い注意喚起、状況に応じて自動ブレーキ等の車両制御と決定する。一方、信頼度が低い場合には弱い注意喚起と決定する。例えば、信頼度の大きさに応じて予め強さの異なる注意喚起方法を設定しておき、信頼度の大きさに応じて注意喚起方法を変更する。また、信頼度が一定値以上の場合にのみ車両制御を実施する。
【0056】
運転支援部21Bでは、運転支援様態決定部20Bで運転支援の様態を決定すると、その決定した様態に応じて運転支援を実施する。例えば、注意喚起の場合に注意喚起の内容に応じてディスプレイの画像信号を送信したり、音声出力装置に音声信号を送信し、自動ブレーキの場合にはブレーキアクチュエータにブレーキ制御信号を送信する。
【0057】
ノイズ源機器状態取得装置4は、ノイズ源機器N1,・・・の動作状況を取得する装置であり、例えば、エンジンに対するエンジン制御を行うエンジンECUである。ノイズ源機器状態取得装置4では、接近車両検出装置1BのECU11Bに対して、ノイズ源機器N1,・・・の動作状態の情報(例えば、エンジンが停止中/駆動中、冷却ファンが停止中/駆動中)を送信する。
【0058】
図4を参照して、第2の実施の形態に係るシステムでの動作を図5のフローチャートに沿って説明する。図5は、第2の実施の形態に係るシステムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0059】
集音装置10Bの各集音器が、車外の周囲の音をそれぞれ集音し、その集音した音を電気信号に変換してECU11Bに送信している。ECU11Bでは、この各集音器の音データを受信し、複数の音データに対して前処理を施す。ECU11Bでは、その前処理後の各音データを用いて相互相関値を算出し、相互相関値が閾値以上の場合には車両(車両の走行音)が存在すると判断し、車両が存在する場合には相互相関値が最大となる到達時間差から車両の方向や距離等を算出するとともに、相互相関値に基づいて信頼度を算出する。
【0060】
ノイズ源機器状態取得装置4では、エンジンの動作状態及び冷却ファンの動作状態をECU11Bに送信している。そして、ECU11Bでは、この受信した動作状態に基づいて、エンジンが駆動中か及び冷却ファンが駆動中かを判定する(S20)。S20にてエンジン、冷却ファンが共に停止中と判定した場合、ECU11Bでは、相互相関値に基づく信頼度をそのまま設定する。S20にて冷却ファンが駆動中と判定した場合、ECU11Bでは、相互相関値に基づく信頼度に対してファン駆動中上限信頼度に基づいて信頼度を設定する(S21)。S20にてエンジンのみが駆動中と判定した場合、ECU11Bでは、相互相関値に基づく信頼度に対してファン非駆動上限信頼度に基づいて信頼度を設定する(S22)。
【0061】
そして、ECU11Bでは、接近車両の検出情報と信頼度からなる接近車両情報を運転支援装置2Bに送信する(S23)。運転支援装置2Bでは、接近車両が存在する場合、信頼度に応じて運転支援の様態を決定し、決定した様態の運転支援を実施する(S24)。
【0062】
第2の実施の形態に係るシステムによれば、ノイズ源機器が駆動している場合には信頼度の上限を設けて運転支援を通常より弱めることにより、ノイズ音による運転支援への影響を抑制でき(最低限の運転支援のみ)、システム全体の信頼性が向上する。また、第2の実施の形態に係るシステムによれば、ノイズ源機器の駆動の組み合わせに応じて信頼度の上限を設定することにより、駆動しているノイズ源機器に応じて最適な信頼度を設定できる。
【0063】
図6を参照して、第3の実施の形態に係るシステムについて説明する。図6は、第3の実施の形態に係るシステムの構成図である。
【0064】
第3の実施の形態に係るシステムは、ハイブリッド車両に搭載され、接近車両検出装置1C、運転支援装置2C、ノイズ源機器制御装置3、位置情報取得装置5、日時情報取得装置6からなる。第3の実施の形態に係るシステムでは、自車両の接近車両検出の作動状況とそのときの位置情報や日時情報を記録しておき、その過去のデータに基づいて接近車両検出(走行音認識)が作動するかを推定し、接近車両検出が作動すると推定した場合には第1の実施の形態にようにノイズ源機器の動作状態を制御したりあるいは第2の実施の形態にように運転支援の様態を変更する。
【0065】
例えば、一般の乗用車の場合、同一の場所を同一の曜日や時刻に通る場合が多く、同じ場所で同じ日時の接近車両検出の作動状況が記録され、蓄積される。ある程度の観測数が蓄積されると、特定の場所と日時で接近車両検出が頻繁に行われる場所や日時とそうでない場所や日時が観測されるようになる。このような蓄積データを利用することによって、接近車両検出が必要な場所や日時を推定できる。ここでは、地図データに基づいて自車両が信号機のない交差点等に差し掛かっていることを検出する前に、その交差点で接近車両検出が行われることを推定できる。
【0066】
位置情報取得装置5について説明する。位置情報取得装置5は、自車両の現在位置を検出する装置である。位置情報取得装置5としては、例えば、GPS[Global Positioning System]を利用して現在位置を演算する装置、自車両がナビゲーションシステムを搭載している場合にはそのナビゲーションシステムから現在位置情報を取得する装置である。位置情報取得装置5では、一定時間毎に、自車両の現在位置を取得し、その現在位置情報をECU11C等に送信する。なお、第3の実施の形態では、位置情報取得装置5が特許請求の範囲に記載する位置取得手段に相当する。
【0067】
日時情報取得装置6について説明する。日時情報取得装置6は、現在の時刻や曜日等の日時情報を取得する装置である。日時情報取得装置6では、一定時間毎に、日時情報をECU11C等に送信する。なお、第3の実施の形態では、日時情報取得装置6が特許請求の範囲に記載する日時取得手段に相当する。
【0068】
接近車両検出装置1Cについて説明する。接近車両検出装置1Cは、車両走行中に周辺の音を集音し、その集音した音データに基づいて接近する車両(車両の走行音)を検出し、その接近車両検出情報を運転支援装置2Cに提供する。特に、接近車両検出装置1Cでは、接近車両検出の作動状況、自車両の位置、日時を関連付けて記憶しておき、その記憶したデータに基づいて現在位置や現在日時において接近車両検出が作動するかを推定する。接近車両検出装置1Cは、集音装置10C、ECU11Cを備えている。なお、集音装置10Bは、第1の実施の形態に係る集音装置10Aと同様の装置なので、説明を省略する。
【0069】
ECU11Cは、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、接近車両検出装置1Cを統括制御する。ECU11Cには、接近車両検出部12C、接近車両検出装置動作状態変更部13C、接近車両検出様態/運転支援様態記録装置15Cが構成される。ECU11Cは、集音装置10Cから集音器で集音された音データ(電気信号)を受信する。ECU11Cでは、音データに対する前処理として、第1の実施の形態に係るECU11Aと同様の処理を行う。接近車両検出部12Cについては、第1の実施の形態に係る接近車両検出部12Aと同様の処理を行うので、説明を省略する。なお、第3の実施の形態では、接近車両検出装置動作状態変更部13Cが特許請求の範囲に記載する動作状態制御手段に相当し、接近車両検出様態/運転支援様態記録装置15Cが特許請求の範囲に記載する記憶手段に相当する。
【0070】
接近車両検出様態/運転支援様態記録装置15Cは、ECU11Cの記憶装置の所定の領域に構成される。接近車両検出様態/運転支援様態記録装置15Cには、接近車両検出部12Cが作動する毎(接近車両を検出する毎)に、接近車両検出部12Cの作動状況と位置情報取得装置5で取得された自車両の現在位置情報及び日時情報取得装置6で取得された日時情報とを関連付けて記録される。さらに、運転支援装置2Cで実施された運転支援の様態も関連付けて記録してもよい。
【0071】
接近車両検出装置動作状態変更部13Cでは、接近車両検出様態/運転支援様態記録装置15Cに記録されているデータを参照し、位置情報取得装置5で取得した現在位置において過去に接近車両検出が作動したか(概ね、その場所での交通量や見通しの悪さに相当する)を判定する。現在位置が過去に接近車両検出が作動した場所の場合、接近車両検出装置動作状態変更部13Cでは、接近車両検出が作動すると推定する。あるいは、場所だけでなく、接近車両検出装置動作状態変更部13Cでは、接近車両検出様態/運転支援様態記録装置15Cに記録されているデータを参照し、過去に接近車両検出が作動した現在位置において、日時情報取得装置6で取得した曜日や時刻が過去に接近車両検出が作動した曜日や時刻か否かを判定する。現在位置が過去に接近車両検出が作動した場所でありかつ曜日や時刻が接近車両検出が作動した曜日や時刻の場合、接近車両検出装置動作状態変更部13Cでは、接近車両検出が作動すると推定する。ここでは、同じ場所、同じ曜日や時刻のデータが蓄積されているデータ数に応じて、接近車両検出が必要な度合い(必要度)を設定するようにしてもよい。なお、時刻についてある程度幅を持たせて判定するとよい。
【0072】
接近車両検出が作動すると推定した場合、接近車両検出装置動作状態変更部13Cでは、ノイズ源機器制御装置3からノイズ源機器N1,・・・(エンジン、冷却ファン等)の動作状態の情報を受信する。そして、接近車両検出装置動作状態変更部13Cでは、ノイズ源機器N1,・・・を停止できるような動作状況か否かを判定し、停止できるような動作状況の場合にはノイズ源機器制御装置3にノイズ源機器N1,・・・の停止指令を送信する。ここでは、第1の実施の形態に係る接近車両検出装置動作状態変更部13Aのように、ハイブリッド制御でエンジン等のノイズ源機器N1,・・・が停止している場合に再起動条件の閾値を変更するようにしてもよい。ノイズ源機器N1,・・・を停止するのは、最初に接近車両検出が作動と推定してから一定時間までとし、一定時間後にノイズ源機器制御装置3にノイズ源機器N1,・・・の再起動指令を送信する。あるいは、接近車両検出が作動して接近車両を検出し、運転支援を実施した後に一定の条件を満たしたらノイズ源機器制御装置3にノイズ源機器N1,・・・の再起動指令を送信する。
【0073】
ノイズ源機器N1,・・・を停止できない動作状況の場合、接近車両検出装置動作状態変更部13Cでは、第2の実施の形態に係る認識信頼度設定部14Bと同様に、上限信頼度を設定し、上限信頼度に基づいて接近車両検出の信頼度を設定する。これによって、第2の実施の形態のように、運転支援を通常よりも弱める。
【0074】
上記したように接近車両検出の必要度が設定されている場合、必要度に応じてノイズ源機器N1,・・・に対して制御様態や信頼度の設定様態(運転支援の様態)を変えるようにしてもよい。
【0075】
なお、接近車両検出様態/運転支援様態記録装置15Cにデータが蓄積されていない初期段階では、第1の実施の形態で示した方法等で接近車両検出の必要性を判定したり、地図データに見通しの悪い交差点や交通量の多い交差点を登録しておき、その登録データにも基づいて判定する。
【0076】
また、センタにおいてネットワークを介して任意の車両から接近車両検出様態/運転支援様態記録装置15Cに蓄積されるようなデータを収集し、センタにおいて各車両に対して多数の車両で接近車両検出が作動した場所や日時(曜日、時間)の情報を提供するようにしてもよい。このように構成した場合、任意の車両で頻繁に接近車両検出が作動した場所を、初めて通る車両でも(あるいは、稀に通る車両でも)接近車両検出が必要と判定でき、システムとしての効果を向上できる。また、システム内に記憶領域を確保する必要がない。
【0077】
運転支援装置2Cは、各種センサやECU等からなり、運転者に対して各種運転支援する装置である。運転支援装置2Cには、運転支援様態決定部20Cと運転支援部21Cが構成される。運転支援装置2Cは、第1の実施の形態に係る運転支援装置2Aあるいは第2の実施の形態に係る運転支援装置2Bと同様の処理を行う。
【0078】
図6を参照して、第3の実施の形態に係るシステムでの動作を図7のフローチャートに沿って説明する。図7は、第3の実施の形態に係るシステムにおける処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、接近車両検出に対するノイズ源機器の影響を抑制するための動作(エンジン等の停止)についてのみ説明する。
【0079】
位置情報取得装置5では、一定時間毎に、自車両の現在位置を取得し、その情報をECU11C等に送信している(S30)。日時情報取得装置6では、一定時間毎に、現在の日時を取得し、その情報をECU11C等に送信している。(S31)。ECU11Cの接近車両検出部12Cで接近車両が検出された場合、ECU11Cでは、接近車両検出様態/運転支援様態記録装置15Cに接近車両検出部12Cでの作動状況と自車両の現在位置情報及び現在の日時情報とを関連付けて記録する。
【0080】
ECU11Cでは、接近車両検出様態/運転支援様態記録装置15Cに記録されているデータを参照し、現在位置が過去に接近車両を検出した位置か否か(さらに、現在日時が過去に接近車両を検出した曜日や時刻か否か)判定する(S32)。S32にて現在位置が過去に接近車両を検出した位置(さらに、現在日時が過去に接近車両を検出した曜日や時刻)と判定した場合、ECU11Cでは、エンジンや冷却ファンを停止できるような動作状況の場合、エンジンや冷却ファンを停止する指令をノイズ源機器制御装置3に送信する(S33)。ノイズ源機器制御装置3では、その指令を受信すると、エンジンや冷却ファンを停止する(S33)。その結果、接近する他車両の走行音の認識に対して自車両からノイズ音が発生せず、他車両の走行音を高精度に認識できる。
【0081】
第3の実施の形態に係るシステムによれば、接近車両検出の作動状況とそのときの位置や日時を関連付けて記録しておくことにより、現在位置や現在日時が接近車両検出が作動する位置や日時かを推定でき、交差点に近づく早期に接近車両検出の作動を高精度に推定できる。これによって、接近車両検出が作動する場合には事前にノイズ源機器を停止するなどして、ノイズ音の影響を抑制でき、他車両の走行音を高精度に認識でき、接近車両の検出精度が向上する。
【0082】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0083】
例えば、本実施の形態では音源検出装置が車両に搭載され、接近車両(音源として車両の走行音)を検出する接近車両検出装置に適用したが、車両以外の音源を検出する装置でもよいし、車両以外の移動体に搭載される音源検出装置でもよい。また、本実施の形態では検出した接近車両情報を運転支援装置に提供する装置に適用したが、他の構成でもよい。例えば、運転支援装置の中に接近車両検出機能として組み込まれるものでもよいし、接近車両検出装置の中に警報機能等を有するものでもよい。
【0084】
また、本実施の形態ではエンジンと冷却ファンをノイズ源機器として例に挙げたが、他の機器がノイズ源となる場合がある。また、車両の形態や車両に装備されている機器によって、ノイズ源機器が変わる。
【0085】
また、第1の実施の形態ではハイブリッド車両に適用したが、エンジン車両や電気自動車等にも適用可能である。例えば、エンジン車両の場合、エンジンを停止することはできないが、状況に応じて冷却ファンを停止したりあるいは冷却ファンの回転数を変更して発生する音の周波数帯を変えてノイズ音の影響を抑制することができる。冷却ファンの停止/再起動の条件としては、エンジンの温度等で判定し、その判定閾値を変える。また、第2の実施の形態ではエンジン車両に適用したが、電気自動車等にも適用可能である。
【0086】
また、第1の実施の形態ではハイブリッド制御においてエンジンや冷却ファンを停止している場合に再起動条件として通常よりも再起動し難くなる閾値に変更する構成としたが、接近車両検出が作動する場合にエンジンや冷却ファンを停止したり、あるいは、エンジンや冷却ファンの停止条件として通常よりも停止し易くなる閾値に変更してもよい。
【0087】
また、第1の実施の形態ではノイズ音の影響を抑制するためにエンジンや冷却ファンを停止する構成としたが、車両の走行音に影響を抑制するようにノイズ源機器の動作状態を変更するようにしてもよい。例えば、上記したように、冷却ファンの回転数を調整する。
【0088】
また、第2の実施の形態では上限信頼度を上限として信頼度を設定する構成としたが、信頼度の設定方法としては他の方法でもよく、例えば、ノイズ源機器毎(あるいは、ノイズ源機器の組み合わせ毎)に最低レベルの信頼度を予め決めておき、駆動しているノイズ源機器(あるいは、ノイズ源機器の組み合わせ毎)にその最低レベルの信頼度を設定する。
【0089】
また、第1の実施の形態に係る接近車両検出が作動する場合にはノイズ源機器の制御を行う構成と第2の実施の形態に係る接近車両検出が作動する場合には運転支援の様態を変更する構成を組み合わせる形態としてもよい。例えば、接近車両検出が作動する場合に、ノイズ源機器を停止できないようなときには、上限信頼度に基づいて信頼度を設定して運転支援を弱める。
【符号の説明】
【0090】
1A,1B,1C…接近車両検出装置、2A,2B,2C…運転支援装置、3…ノイズ源機器制御装置、4…ノイズ源機器状態取得装置、5…位置情報取得装置、6…日時情報取得装置、10A、10B,10C…集音装置、11A,11B,11C…ECU、12A,12B,12C…接近車両検出部、13A,13C…接近車両検出装置動作状態変更部、14B…認識信頼度設定部、15C…接近車両検出様態/運転支援様態記録部、20B,20C…運転支援様態決定部、21B,21C…運転支援部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、集音器で集音された音に基づいて検出対象の音源を検出する音源検出装置であって、
前記音源検出装置が作動されるときに、移動体に備えられるノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御する動作状態制御手段を備えることを特徴とする音源検出装置。
【請求項2】
前記動作状態制御手段は、前記音源検出装置が作動されるときに、前記ノイズ音の発生源の機器を停止することを特徴とする請求項1に記載の音源検出装置。
【請求項3】
前記動作状態制御手段は、前記音源検出装置が作動されるときに、前記ノイズ音の発生源の機器の停止条件及び/又は起動条件を変更することを特徴とする請求項2に記載の音源検出装置。
【請求項4】
前記ノイズ音の発生源の機器の動作状態に基づいて、前記音源検出装置での音源検出の信頼度を低下させる信頼度変更手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の音源検出装置。
【請求項5】
前記動作状態制御手段は、前記音源検出装置の過去の作動時における移動体情報に基づいて、前記ノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御することを特徴とする請求項1に記載の音源検出装置。
【請求項6】
移動体の位置を取得する位置取得手段と、
前記音源検出装置が作動した場合の移動体の位置を対応付けて記憶する記憶手段と、
を備え、
前記動作状態制御手段は、前記位置取得手段で取得した移動体の現在の位置と前記記憶手段に記憶されている位置に基づいて、前記ノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御することを特徴とする請求項5に記載の音源検出装置。
【請求項7】
日時を取得する日時取得手段を備え、
前記記憶手段に、前記音源検出装置が作動した場合の日時を対応付けて記憶し、
前記動作状態制御手段は、前記日時取得手段で取得した移動体の現在の日時と前記記憶手段に記憶されている日時に基づいて、前記ノイズ音の発生源の機器の動作状態を制御することを特徴とする請求項6に記載の音源検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−68428(P2013−68428A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205157(P2011−205157)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】