説明

音響信号再生装置

【課題】 どんな入力信号に対しても音像を広げて再生する。
【解決手段】 信号相関算出部1は2チャンネルの入力信号Lin,Rinから信号間の相関係数を算出し、相関低減処理部2は算出された相関係数に応じて、2チャンネルの入力信号の相関低減処理を行い、ワイドステレオ処理部3は相関低減処理部2により相関低減処理された2チャンネルの信号を入力して、その再生信号の音像を広げる処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は音像を広げて再生する音響信号再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の音響信号再生装置として、左右のステレオ信号の音像を広げて再生する技術として、左右の信号間で異なる時間遅延や位相シフトを与えるものがある。
また、左右の入力信号の和信号及び差信号を用いた技術もある。特許文献1では、左右の入力信号から生成された差信号成分を処理して再生することで、広がったステレオ像を生成するステレオ増強システムが示されている。左右のステレオ信号の差信号のレベルを上げると、差信号に存在する周囲音や残響音が増強されるため、左右のスピーカから再生される音の音像を広げることができる。
【0003】
ライブ演奏では、この周囲音が適切なレベルで知覚されるが、録音された演奏では直接音にマスクされ、同じレベルでは知覚されないため、その損失を補償する。しかし、全ての周波数で増強してしまうと、人の音の知覚に好ましくない影響を与えるので、選択された周波数帯における差信号の増強を行う。
【0004】
差信号成分は、増強知覚あるいは正規化曲線として示されている周波数応答によって表される修正を通すことで処理され、処理された差信号は、左右の入力信号と、左右の入力信号から生成された和信号と結合され出力される。
【0005】
【特許文献1】特表平11−504478号公報(好ましい実施形態の詳細な説明の欄、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の音響信号再生装置は以上のように構成されているので、左右の入力信号の相関が高かった場合に、広がり感が得られにくいという課題があった。また、逆相感による不自然さのため、不快感を感じるという課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、入力信号の相関の高さにかかわらず、どんな入力信号に対しても音像を広げて再生することができる音響信号再生装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る音響信号再生装置は、2チャンネルの入力信号から信号間の相関係数を算出する信号相関算出部と、該信号相関算出部により算出された相関係数に応じて、2チャンネルの入力信号の相関低減処理を行う相関低減処理部と、該相関低減処理部により相関低減処理された2チャンネルの信号を入力して、その再生信号の音像を広げる処理を行うワイドステレオ処理部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明により、どんな入力信号に対しても音像を広げて再生することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による音響信号再生装置の構成を示すブロック図である。この音響信号再生装置は、信号相関算出部1、相関低減処理部2及びワイドステレオ処理部3を備えている。
【0011】
次に動作について説明する。
信号相関算出部1は、Lチャンネル(Lch)入力信号LinとRチャンネル(Rch)入力信号Rinを入力し、Lch入力信号LinとRch入力信号Rinの相関係数Rを算出して出力する。相関低減処理部2は、Lch入力信号LinとRch入力信号Rinと信号相関算出部1により算出された相関係数Rを入力し、その相関係数Rに適した量でLch入力信号LinとRch入力信号Rinの相関低減処理を行う。ワイドステレオ処理部3は相関低減処理部2の出力を入力し、その再生信号の音像を広げる処理を行う。
【0012】
信号相関算出部1は、例えばLch入力信号LinとRch入力信号Rinの2つの信号の相互相関を求めることで相関係数Rを算出する。ここで、相互相関は時間遅延を伴わない簡易的なものでも良い。例えば、E(・)を期待値演算として、相関係数Rを次の式(1)により求める。
R=E(Lin(x)・Rin(x)) (1)
この期待値演算は時間平均で代用できる。相関係数Rは、Lch入力信号LinとRch入力信号Rinの相関が高ければ絶対値が大きな値となり、相関が小さければ絶対値が小さな値となる。まったく相関がない場合にはR=0となる。
【0013】
もっと簡易的に相関係数を求める場合には、相関係数R’を次の式(2)により求めても良い。
R’=(Lin−Rin) (2)
この場合は、相関係数R’が大きいほどLch入力信号LinとRch入力信号Rinの相関が少なく、相関係数R’が小さいほど相関が高くなる。
【0014】
相関低減処理部2は、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに基づき、相関係数Rの絶対値が大きい場合には、Lch入力信号LinとRch入力信号Rinの相関低減処理を大きくし、逆に相関係数Rの絶対値が小さい場合には、相関低減処理を抑えるようにする。相関係数Rの代わりに差信号で代用した相関係数R’を使用する場合には、相関係数R’の絶対値が小さい場合には、Lch入力信号LinとRch入力信号Rinの相関低減処理を大きくし、逆に相関係数R’の絶対値が大きい場合には、相関低減処理を抑えるようにする。相関低減処理部2は、後述の図6及び図7に示されるような相関低減処理を行う。
【0015】
図2はワイドステレオ処理部3の内部構成を示すブロック図である。このワイドステレオ処理部3は、フィルタ31,32と加算器33,34を備え、クロストークキャンセルと呼ばれる方式で再生信号の音像を広げる処理を行う。フィルタ31,32は、クロストーク信号の伝達関数と逆特性を持つフィルタであり、加算器33はLch入力信号Linとフィルタ32からのRch入力信号Rinの逆特性の信号を加算して出力する。同様に、加算器34はRch入力信号Rinとフィルタ31からのLch入力信号Linの逆特性の信号を加算して出力する。
【0016】
通常、左右のスピーカから2つの信号を再生した場合に、左側の信号は左耳だけでなく右耳にも到達する。同様に右側の信号は右耳だけでなく左耳にも到達する。この空間クロストークと呼ばれる右側スピーカから左耳への信号と左側スピーカから右耳への信号を排除することで、再生信号の音像を広げることができる。
【0017】
ワイドステレオ処理部3は、例えば従来例に示されるような左右の信号の差信号成分を強調する処理でも実現される。
【0018】
これらのワイドステレオ処理は、左右の信号の相違を利用した処理なので、左右の信号の相関が高い場合には十分な効果が発揮されず、音像を広げることはできない。そこで、ワイドステレオ処理部3の入力に対して、相関低減処理部2により入力信号間の相関の高さに応じた相関低減処理を施すことで、ワイドステレオ処理の効果が強化され、従来以上に音像を広げることができる。
【0019】
また、ワイドステレオ処理による音質劣化を補償するために、左右の入力信号にゲインを掛けたものをワイドステレオ処理後の左右の信号にそれぞれ加えることもできる。また、さらに音像を広げるために、左右の入力信号から擬似的に後方信号を作り出し、それに後方定位処理を加えた上でワイドステレオ処理後の左右の信号にそれぞれ加えることもできる。
【0020】
以上のように、この実施の形態1によれば、2chの入力信号の相関係数に応じて、2chの入力信号の相関低減処理を行い、ワイドステレオ処理を行うことにより、どんな入力信号に対しても音像を広げて再生することができるという効果が得られる。
【0021】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2による音響信号再生装置の構成を示すブロック図である。この音響信号再生装置は、信号相関算出部1、相関低減処理部2、ワイドステレオ処理部3、乗算器(第1の乗算器)4、乗算器(第2の乗算器)5、加算器(第1の加算器)6、加算器(第2の加算器)7及び加算器(第3の加算器)8を備えている。
【0022】
次に動作について説明する。
信号相関算出部1、相関低減処理部2及びワイドステレオ処理部3は、いずれも上記実施の形態1の図1と同じ処理を行う。乗算器4はLch入力信号Linに所定の係数を乗算して加算器6に出力する。乗算器5はRch入力信号Rinに所定の係数を乗算して加算器6に出力する。加算器6は乗算器4及び乗算器5からの2つの信号を入力して加算して左右の和信号を出力する。加算器7はワイドステレオ処理部3からのLch信号と加算器6の和信号を加算して出力する。加算器8はワイドステレオ処理部3からのRch信号と加算器6の和信号を加算して出力する。
【0023】
一般に信号に音像を広げる処理を施す場合、本来、中央に定位すべき信号も同様に処理してしまうと“ぼやけ”が発生し、聴感上の品質を劣化させてしまう場合がある。例えば音楽再生等では、中央に定位すべきボーカルがぼやけてしまうことになる。これを防ぐために、中央に定位すべき信号を2chの入力信号から取り出して再生信号に加える。中央に定位すべき信号は、左右のchに同位相で同じように含まれるので、加算器6で左右の信号の和をとることで抽出できる。これを加算器7及び加算器8で左右の再生信号にそれぞれ加えて、中央に定位する成分を強調する。
【0024】
以上のように、この実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、左右の出力再生信号に中央に定位すべき信号成分を付加することにより、再生信号の音像を広げても、中央に定位する成分がぼやけることなく、聴感上の品質劣化を防ぐことができるという効果が得られる。
【0025】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3による音響信号再生装置の構成を示すブロック図である。この音響信号再生装置は、信号相関算出部1、相関低減処理部2、ワイドステレオ処理部3、乗算器(第1の乗算器)9、乗算器(第2の乗算器)10、加算器6、加算器7及び加算器8を備えている。
【0026】
次に動作について説明する。
信号相関算出部1、相関低減処理部2及びワイドステレオ処理部3はいずれも図1と同じ処理を行う。また、加算器6、加算器7及び加算器8は、上記実施の形態2の図3と同じ処理を行う。乗算器9は、信号相関算出部1により算出された相関係数Rを入力し、Lch入力信号Linに相関係数Rに応じた所定の係数を乗算して加算器6に出力する。乗算器10は、信号相関算出部1により算出された相関係数Rを入力し、Rch入力信号Rinに相関係数Rに応じた所定の係数を乗算して加算器6に出力する。
【0027】
信号相関算出部1で求めた相関係数Rが大きい場合には、中央に定位すべき成分が大きいので、乗算器9及び乗算器10で乗算する係数を大きくし、逆に相関係数Rが小さい場合には、中央に定位すべき成分が小さいので、係数を小さくするように係数の大きさを適応的に制御する。
【0028】
以上のように、この実施の形態3によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、入力信号間の相関の高さに応じて中央に定位すべき信号成分の付加の大きさを調整することにより、どんな入力信号に対しても、中央定位成分がぼやけることなく、音像を広げて再生することができるという効果が得られる。
【0029】
実施の形態4.
図5はこの発明の実施の形態4による音響信号再生装置の構成を示すブロック図である。この音響信号再生装置は、信号相関算出部1、帯域分割フィルタ(第1の帯域分割フィルタ)11、帯域分割フィルタ(第2の帯域分割フィルタ)12、相関低減処理部13、帯域合成フィルタ(第1の帯域合成フィルタ)14、帯域合成フィルタ(第2の帯域合成フィルタ)15及びワイドステレオ処理部3を備えている。
【0030】
次に動作について説明する。
信号相関算出部1及びワイドステレオ処理部3はいずれも図1と同じ処理を行う。帯域分割フィルタ11はLch入力信号Linを低域/高域側信号に帯域分割して出力する。帯域分割フィルタ12はRch入力信号Rinを低域/高域側信号に帯域分割して出力する。相関低減処理部13は、帯域分割フィルタ11及び帯域分割フィルタ12によって分割されたLch入力信号Lin及びRch入力信号Rinの高域側信号と、信号相関算出部1により算出された入力信号間の相関係数Rを入力し、その相関係数Rに適した量で2chの高域側信号の相関低減処理を行う。
【0031】
帯域合成フィルタ14はLch入力信号Linの低域側信号と相関低減処理されたLch入力信号Linの高域側信号を合成して出力する。帯域合成フィルタ15はRch入力信号Rinの低域側信号と相関低減処理されたRch入力信号Rinの高域側信号を合成して出力する。
【0032】
信号の例えば1kHz以下の低域側成分には音声等の主要成分が多く含まれるため、逆相関を伴うワイドステレオ処理を必要以上に施してしまった場合に、不自然さや不快感を感じるという聴感上の問題点がある。そこで、この実施の形態4では、左右の入力信号を帯域分割し、高域側の信号のみ相関低減処理を施してからワイドステレオ処理を行うことで、ワイドステレオ処理による音像の広がり感が効果的に得られる部分を、聴感上の問題の生じない高域側信号に限定することができる。
【0033】
以上のように、この実施の形態4によれば、上記実施の形態1と同様の効果が得られると共に、2chの入力信号の高域側信号に相関低減処理を加えてからワイドステレオ処理を行うことで、不快感なく再生信号の音像を広げることができるという効果が得られる。
【0034】
実施の形態5.
図6はこの発明の実施の形態5による音響信号再生装置の相関低減処理部の内部構成を示すブロック図である。この相関低減処理部2は、乗算器(第3の乗算器)201、乗算器(第5の乗算器)202、乗算器(第6の乗算器)203、乗算器(第4の乗算器)204、加算器(第4の加算器)205及び加算器(第5の加算器)206を備えている。なお、この音響信号再生装置の全体構成は上記実施の形態1の図1、上記実施の形態2の図3、上記実施の形態3の図4、上記実施の形態4の図5の何れでも良い。
【0035】
次に動作について説明する。
乗算器201は、Lchの入力信号Linに、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第1の係数)を乗算して出力する。乗算器202は、Lchの入力信号Linに、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第2の係数)を乗算して出力する。乗算器203は、Rchの入力信号Rinに、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第2の係数)を乗算して出力する。乗算器204は、Rchの入力信号Rinに、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第1の係数)を乗算して出力する。
【0036】
加算器205は乗算器201より出力されたLchの信号から乗算器203より出力されたRchの信号を減算し出力する。加算器206は乗算器204より出力されたRchの信号から乗算器202より出力されたLchの信号を減算し出力する。これにより、左右の信号から他方の信号の成分を減ずることで相関を低減する。
【0037】
例えば、信号相関算出部1により算出された相関係数Rが大きい場合には、相関低減処理を大きくするために、乗算器201及び乗算器204が乗算する所定の係数を小さくし、乗算器202及び乗算器203が乗算する所定の係数を大きくする。一方、信号相関算出部1により算出された相関係数Rが小さい場合には、相関低減処理を抑えるために、乗算器201及び乗算器204が乗算する所定の係数を大きくし、乗算器202及び乗算器203が乗算する所定の係数を小さくする。
【0038】
なお、乗算器201、乗算器202、乗算器203及び乗算器204が乗算する各係数は、例えば固定値で、乗算器201及び乗算器204には1.0、乗算器202及び乗算器18には0.2等指定しても良い。
【0039】
以上のように、この実施の形態5によれば、上記実施の形態1〜上記実施の形態4と同様の効果が得られる。
【0040】
実施の形態6.
図7はこの発明の実施の形態6による音響信号再生装置の相関低減処理部の内部構成を示すブロック図である。この相関低減処理部2は、無相関化処理部211、乗算器(第7の乗算器)212、乗算器(第9の乗算器)213、乗算器(第10の乗算器)214、乗算器(第8の乗算器)215、加算器(第6の加算器)216及び加算器(第7の加算器)217を備えている。なお、この音響信号再生装置の全体構成は上記実施の形態1の図1、上記実施の形態2の図3、上記実施の形態3の図4、上記実施の形態4の図5の何れでも良い。
【0041】
次に動作について説明する。
乗算器212はLchの入力信号Linに、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第3の係数)を乗算して出力する。また、乗算器215はRchの入力信号Rinに、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第3の係数)を乗算して出力する。無相関化処理部211は、Lchの入力信号LinとRchの入力信号Rinをそれぞれ無相関化して出力する。
【0042】
乗算器213は無相関化処理部211からの無相関化されたLchの信号に、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第4の係数)を乗算して出力する。乗算器214は無相関化処理部211からの無相関化されたRchの信号に、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第4の係数)を乗算して出力する。加算器216は乗算器212からのLchの信号と乗算器213からのLchの信号を加算して出力する。また、加算器217は乗算器215からのRchの信号と乗算器214からのRchの信号を加算して出力する。
【0043】
例えば、信号相関算出部1により算出された相関係数Rが大きい場合には、相関低減処理を大きくするために、乗算器212及び乗算器215が乗算する所定の係数を小さくし、乗算器213及び乗算器214が乗算する所定の係数を大きくする。一方、信号相関算出部1により算出された相関係数Rが小さい場合には、相関低減処理を抑えるために、乗算器201及び乗算器204が乗算する所定の係数を大きくし、乗算器202及び乗算器203が乗算する所定の係数を小さくする。
【0044】
このように、Lchの入力信号Lin,Rchの入力信号Rinに、それぞれを無相関化した信号を加算することで相関を低減する。無相関化処理部211による無相関化の一例としては、主成分分析の手法を応用することによって実現することができる。今、入力信号ベクトルを次の式(3)で表すとし、時刻tと共に変化させる2行2列行列WtをXの右から乗算することにより線形演算でLin(t),Rin(t)を無相関化する。
Xt=[Lin(t),Rin(t)]^T (3)ここで、X^Tは行列の転置を表す。このとき、行列Wtを次の式(4)により、時刻tと共に適応的に変化させる。
Wt+1=Wt−a(I−XX^T)Wt (4)
ここで、aは適応速度を決定するパラメータであり、例えばa=0.001等、適当な値に設定する。これにより、相関係数Rを確率的に0に収束させることができる。
【0045】
また、無相関化処理部211の代わりに、2chの入力信号にそれぞれ周波数特性等の特性の異なるオールパスフィルタを使用しても、相関低減処理を行うことができる。ここで、オールパスフィルタは、全ての周波数の信号を通過させ、位相だけを変化させるフィルタである。
【0046】
図7に示す無相関化処理部211を、Lchの入力信号Linを通過させるオールパスフィルタ(第1のオールパスフィルタ)221(図示せず)、Rchの入力信号Rinを通過させるオールパスフィルタ(第2のオールパスフィルタ)222(図示せず)に置き換えた場合、乗算器(第11の乗算器)212はLchの入力信号Linに、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第5の係数)を乗算して出力する。また、乗算器(第12の乗算器)215はRchの入力信号Rinに、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第5の係数)を乗算して出力する。オールパスフィルタ221は、Lchの入力信号Linの位相を変化させて出力する。オールパスフィルタ222は、Rchの入力信号Rinの位相を変化させて出力する。
【0047】
乗算器(第13の乗算器)213はオールパスフィルタ221からのLchの信号に、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第6の係数)を乗算して出力する。乗算器(第14の乗算器)214はオールパスフィルタ222からのRchの信号に、信号相関算出部1により算出された相関係数Rに応じて所定の係数(第6の係数)を乗算して出力する。加算器(第8の加算器)216は乗算器212からのLchの信号と乗算器213からのLchの信号を加算して出力する。また、加算器(第9の加算器)217は乗算器215からのRchの信号と乗算器214からのRchの信号を加算して出力する。
【0048】
以上のように、この実施の形態6によれば、上記実施の形態1〜上記実施の形態4と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の実施の形態1による音響信号再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による音響信号再生装置のワイドステレオ処理部の内部構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2による音響信号再生装置の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態3による音響信号再生装置の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態4による音響信号再生装置の構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態5による音響信号再生装置の相関低減処理部の内部構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態6による音響信号再生装置の相関低減処理部の内部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1 信号相関算出部、2 相関低減処理部、3 ワイドステレオ処理部、4 乗算器、5 乗算器、6 加算器、7 加算器、8 加算器、9 乗算器、10 乗算器、11 帯域分割フィルタ、12 帯域分割フィルタ、13 相関低減処理部、14 帯域合成フィルタ、15 帯域合成フィルタ、31 フィルタ、32 フィルタ、33 加算器、34 加算器、201 乗算器、202 乗算器、203 乗算器、204 乗算器、205 加算器、206 加算器、211 無相関化処理部、212 乗算器、213 乗算器、214 乗算器、215 乗算器、216 加算器、217 加算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2チャンネルの入力信号から信号間の相関係数を算出する信号相関算出部と、
該信号相関算出部により算出された相関係数に応じて、2チャンネルの入力信号の相関低減処理を行う相関低減処理部と、
該相関低減処理部により相関低減処理された2チャンネルの信号を入力して、その再生信号の音像を広げる処理を行うワイドステレオ処理部とを備えた音響信号再生装置。
【請求項2】
2チャンネルの入力信号にそれぞれ所定の係数を乗算する第1及び第2の乗算器と、
該第1及び第2の乗算器からの信号を加算する第1の加算器と、
該第1の加算器により加算された信号を上記ワイドステレオ処理部の出力信号にそれぞれ加算して出力する第2及び第3の加算器とを備えたことを特徴とする請求項1記載の音響信号再生装置。
【請求項3】
上記第1及び第2の乗算器は、上記信号相関算出部により算出された相関係数に応じて、乗算する所定の係数を適応的に変化させることを特徴とする請求項2記載の音響信号再生装置。
【請求項4】
2チャンネルの入力信号から信号間の相関係数を算出する信号相関算出部と、
2チャンネルの入力信号をそれぞれ低域/高域側信号に分割する第1及び第2の帯域分割フィルタと、
上記信号相関算出部により算出された相関係数に応じて、上記第1及び第2の帯域分割フィルタからの高域側信号の相関低減処理を行う相関低減処理部と、
上記第1及び第2の帯域分割フィルタからの低域側信号と、上記相関低減処理部の出力とをそれぞれ合成する第1及び第2の帯域合成フィルタと、
該第1及び第2の帯域合成フィルタからの2チャンネルの信号を入力して、その再生信号の音像を広げる処理を行うワイドステレオ処理部とを備えた音響信号再生装置。
【請求項5】
上記相関低減処理部は、
2チャンネルの入力信号に、上記信号相関算出部により算出された相関係数に応じて、それぞれ第1の係数を乗算する第3及び第4の乗算器と、
2チャンネルの入力信号に、上記信号相関算出部により算出された相関係数に応じて、それぞれ第2の係数を乗算する第5及び第6の乗算器と、
上記第3の乗算器の出力から上記第6の乗算器の出力を減算して出力する第4の加算器と、
上記第4の乗算器の出力から上記第5の乗算器の出力を減算して出力する第6の加算器とを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項4記載の音響信号再生装置。
【請求項6】
上記相関低減処理部は、
2チャンネルの入力信号に、上記信号相関算出部により算出された相関係数に応じて、それぞれ第3の係数を乗算する第7及び第8の乗算器と、
2チャンネルの入力信号をそれぞれ無相関化して出力する無相関化処理部と、
該無相関化処理部により無相関化された信号に、上記信号相関算出部により算出された相関係数に応じて、それぞれ第4の係数を乗算する第9及び第10の乗算器と、
上記第7の乗算器の出力と上記第9の乗算器の出力を加算する第6の加算器と、
上記第8の乗算器の出力と上記第10の乗算器の出力を加算する第7の加算器とを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項4記載の音響信号再生装置。
【請求項7】
上記相関低減処理部は、
2チャンネルの入力信号に、上記信号相関算出部により算出された相関係数に応じて、それぞれ第5の係数を乗算する第11及び第12の乗算器と、
2チャンネルの入力信号をそれぞれ通過させる特性の異なる第1及び第2のオールパスフィルタと、
該第1及び第2のオールパスフィルタからの信号に、上記信号相関算出部により算出された相関係数に応じて、それぞれ第6の係数を乗算する第13及び第14の乗算器と、
上記第11の乗算器の出力と上記第13の乗算器の出力を加算する第8の加算器と、
上記第12の乗算器の出力と上記第14の乗算器の出力を加算する第9の加算器とを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項4記載の音響信号再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−303799(P2006−303799A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121265(P2005−121265)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】