説明

音響信号変換器のためのフィルム及びメンブレン

本発明は、次式(I)の構造単位を含むポリエステルからなるフィルム及びそれから製造される音響信号変換器のためのメンブレンに関する。


(式中、R及びRは、互いに独立して、好ましくは水素を示し、及びRは、次式(II)


に相当するか、又は、好ましくはカルボニル基である)。本発明のフィルムは、熱可塑法によって又は、好ましくは、溶剤キャストフィルムとして製造できる。該フィルムは、好ましくは、マイクロホン又はスピーカーのような音響信号変換器のためのメンブレンに深絞りされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次式(I)の構造単位を含むポリエステルからなる、音響信号変換器のためのフィルム及びそれから製造されるメンブレン(Membranen)に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
式中、R及びRは、互いに独立して、ハロゲン、C1−C8−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、C6−C10−アリール、C7−C12−アラルキル又は、好ましくは水素を示し、そしてRは、次式(A)に相当するか、又は好ましくはカルボニル基である。
【0004】
【化2】

【0005】
本発明のフィルムは、熱可塑的な方法によって、又は、好ましくは、溶媒キャストフィルムとして製造することができる。該フィルムは、好ましくは、マイクロホン又はスピーカーのような音響信号変換器のためのメンブレンに深絞りされる。マイクロホン、携帯電話、ラップトップ、携帯情報端末(PDA)、ヘッドホンのような携帯用機器で使用するための音響信号変換器のための、又は例えば自動車におけるような信号伝送装置として使用するための約10cmまでの直径を有する小型のメンブレンを製造するために、これまで、延伸ポリエステルフィルム(PET、PEN)が使用されており、そして高品位の用途にはビスフェノールA−ポリカーボネート(PC)からなるフィルムが使用されている。PCからなるそのようなメンブレンの構成は、特開2002−044781A号公報(特許文献1)及び特開平11−205894A号公報(特許文献2)に記載されている。
【0006】
メンブレンの振動マスを低減し、深絞り時にエンボス構造を正確に形成し、そして更なる小型化を可能にするために、メンブレンはできる限り薄いものであるべきである。上記の合成樹脂からなるフィルムは機械的に非常に耐性があるが、押出プロセスによる配向によって異方性収縮を招くという理由で、スピーカー用メンブレンとしての使用時にそれ自体が“金属的な”音を発生するか、又は複雑なエンボス構造を成形するためには、十分に変形できないという欠点を有する。そのせいで、音響信号、特に、音楽信号及び/又は音声信号は、電気信号に変換される時またはその逆の時に、不都合に変化する。前述の用途範囲のための小型マイクロホン用及びスピーカー用メンブレンの製造は、慣用的に深絞り法で遂行されている。この場合に、フィルムは深絞りの前に、例えば赤外光の照射によって軟化するまで加熱される。深絞り前の非常に薄いフィルムの均一な加熱、そしてその結果としての均一な軟化は、異方的収縮のために、フィルムが強い異方性であればあるほど、技術的に制御がより困難になる。押出しされたビスフェノールA−ポリカーボネート、延伸されたポリエチレンナフタレート(PEN)又はポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムは、異方的に変形する傾向があり、そして延伸されたフィルムは中でも強く収縮する傾向を有する。しかしながら、キャストフィルムの製造は、ポリエステルが溶解性を欠くために不可能である。ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ビスフェノールAとイソフタル酸及び/又はテレフタル酸とのポリエステル、あるいは炭酸とのポリエステル(ビスフェノールA−ポリカーボネート)は、環境にとって非常に有害な、かつ有毒な溶剤、例えば、塩化メチレン又はクロロベンゼンにしか溶解しない。従って、そのようなポリマー類からキャストフィルム法でメンブレンを製造するのは、不利なだけでなく、そのメンブレンは、製造後に、そのような溶媒の残滓をなおも含む。本発明のメンブレンは、熱塑性法、例えば、押出法又はカレンダー法によって製造することができる。カレンダーフィルムとしての一形態において、本発明のメンブレンは、押出フィルムとしての一形態における場合よりも異方性ではない。この理由から、カレンダー法は押出法よりも好ましい。特に好ましくはキャストフィルム法であり、その際、ポリマーは溶媒に溶解され、その後金属、コート紙又はフィルムからなるリボン上に塗工され、引き続き乾燥される。この方法は、等方性のメンブレンを有利に生じさせるだけでなく、それを、熱塑性法で可能なものよりも非常に薄く、すなわち例えば5〜20μmの厚さの範囲内で製造することを可能し、これは上述の通り有利である。この理由からも、そのようなメンブレンのための、ハロゲン含有の溶媒と比較してより有害でない溶媒に可溶なポリマーを見出すことが課題である。音響用途のためのメンブレンに対するさらに重要な要求とは、深絞り性、高いEモジュール(弾性係数)、良好な耐水性及び高い温度安定性である。後者は、ガラス転移温度、ビカット軟化温度(ISO 306(50N及び120K/h))又は熱変形温度HDT Af(ISO 75−1、−2(1.8MPa))によって特徴づけることができる。メンブレンのためのフィルムの厚さはDIN 53370に従って決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−044781A号公報
【特許文献2】特開平11−205894A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、高いEモジュール及び高い温度安定性を有し、そして可能な限りハロゲン不含の溶媒中に可溶なポリマーから構成される、音響用途のためのメンブレンを製造するためのフィルムを提供することであった。更にこのメンブレンは、良好な音声明瞭性を可能にし、そして良好な品質及び十分な音量での音楽の再生を可能し、そして高温時に高い機械的安定性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、特殊なフィルムからなるメンブレンが、押出しされたビスフェノールA−ポリカーボネートフィルム又はポリエステルフィルムから製造された膜よりも、非常に向上された音響特性を有することが示された。そのような特殊なフィルムは、特に、キャストフィルム法から、次式(I)で表される構造単位を含むポリエステルからのものである。
【0010】
【化3】

【0011】
式中、R及びRは、互いに独立して、ハロゲン、C1−C8−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、C6−C10−アリール、C7−C12−アラルキル又は、好ましくは水素を示し、そしてRは、次式(A)に相当するか、又は好ましくはカルボニル基である。
【0012】
【化4】

【0013】
キャストフィルム法からのビスフェノールA−ポリカーボネートに比べても、明らかな利点が得られる。式(I)から明らかなように特殊なビスフェノールの使用により、ハロゲン不含の溶媒中への可溶性を有する芳香族ポリエステルが達成できる。慣用のビスフェノールA(PC)からのポリカーボネート、又はテレフタル酸及びイソフタル酸及びビスフェノールAからの芳香族ポリエステル(AP)は、それらの不都合な特性のために、本発明のものではない。
【0014】
上記の構造単位(I)以外に、更なる構造単位を含むことができる。好ましくは、ポリエステルは、上記の構造単位(I)及び次式(II)で表される構造単位を含む。
【0015】
【化5】

【0016】
ビスフェノールAをベースとするPC及びAPは、塩化メチレン又はクロロベンゼン中に溶解しなければならない一方、本発明のポリエステルは、構造単位(I)の割合が、構造単位(I)及び(II)に基づいて少なくとも60重量%である限り、例えば、アセトン、トルエン及びテトラヒドロフラン中に可溶である。ビスフェノールAの割合が少ないと、フィルムの脆性が回避される。それ故、該メンブレンは、好ましくは、60〜90重量%、特に好ましくは65〜85重量%の構造単位(I)及び10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%の構造単位(II)を有するポリエステルを含む。それ故、ハロゲン不含の溶媒中への良好な溶解性によって、深絞りメンブレンのための収縮のない、かつ、等方性のフィルムを製造することができ、同時に、非常に薄いメンブレンを生成することができる。これらの二つの利点は、音響特性に対して好ましい作用をもたらす。本発明のフィルムまたはメンブレン中に含まれる本発明のポリエステルは、好ましくは、少なくとも2350MPaの曲げ弾性率及び/又は好ましくは少なくとも75MPaの降伏応力を有する。ポリエステルの熱変形温度HDT Afは、好ましくは少なくとも173℃、特に好ましくは少なくとも180℃であり、及び/又はビカット軟化温度は好ましくは少なくとも203℃である。
【0017】
ビスフェノールAからなるポリカーボネート(PC)又はテレフタル酸及びイソフタル酸及びビスフェノールAからなる芳香族ポリエステル(AP)と比較して、向上された温度安定性は、メンブレンのより高い温度安定性をももたらす。これは、熱中において音響信号変換器をゆがませる傾向(深絞り構造の形状が元に戻ってしまうこと)がより小さくなることを意味する。驚くべきことに、標準状態下での寿命も長められる。このことから、本発明のメンブレンは、音質を悪くする“伸び(Ausleiern)”を起こす傾向が低下することが推測される。おそらくこれは、良好な機械特性、例えば曲げ弾性率又は降伏応力に起因する。より薄いメンブレンであるほど、より厚い場合と比べて変形に対する強度及び抵抗は低いが、これは、本発明のメンブレンにおいては、そのより高い曲げ弾性率によって相殺することができる。テレフタル酸及びイソフタル酸及びビスフェノールAからなる芳香族ポリエステルは結晶化傾向を示し、それ故、溶液中で凝集物を形成する。これは、粘度を常に増大させ続け、その結果コーティングプロセスにおける偏倚を招き、これは不安的なフィルム品質をもたらすことになる。界面活性剤の添加によって問題を制限することができるが、欠点として、より劣った粘着性及び湿度感受性を受けることになる。驚くべきことに、本発明のポリエステルの溶液は安定である。本発明のポリエステルは、PC(粘度安定性)とAP(係数及び温度安定性)の利点を兼ね備える。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
本発明のメンブレンに含まれるようなポリマーは、高い透明度、温度安定性、屈折率及び靭性を特徴としていて、これまでに光学用途、例えば、自動車の電灯ハウジングや家庭用器具の照明フード及び注射器の蓋や殺菌可能な透明容器などの医療技術においてにのみ使用されていた。今までは、これらの製品は熱塑性加工によってのみ製造されており、キャストフィルム技術のような溶媒プロセスでは製造されていなかった。
【0021】
更に、本発明のメンブレンが、高いダンピングファクター、及び高い周波数範囲及び大きな音量範囲にわたってほぼ線型の音響特性を有し、それゆえ、音響用途に直接利用できることが見出された。本発明のメンブレンは、卓越した立ち上がり及び立ち下がり挙動(Ein− und Ausschwingverhalten)、及び高い周波数範囲及び音量範囲にわたる均一な振動挙動を有し、かつ、良好な音声明瞭性を可能にする。それの優れたダンピング特性(“内部損失”)故に、本発明のメンブレンは、音響用途の変換器として、好ましくはマイクロホン用メンブレン及び/又はスピーカー用メンブレンとしての深絞りメンブレンの製造に非常に良好に適している。このメンブレンは、別のポリマーからなる公知のメンブレンと比べて、より僅かな“金属的な”音を示す。これは、音声明瞭さに対する高い要求、例えば、マイクロホンカプセル、携帯電話、ハンドフリースピーチユニット(Freisprechanlagen)、無線機器、補聴器、ヘッドホン、ミニラジオ、コンピューター及びPDAにおけるマイクロホン用メンブレン及びスピーカー用メンブレンとして、又は信号伝送器としての使用時の高い要求に非常に適している。
【0022】
フィルムをメンブレンへ深絞りするためには、これを加熱しなくてはならない。好ましくは、その加熱は赤外線放射器によって行われる。そのために、フィルムは、好ましくは、染料、顔料又はIR吸収剤を含む。その例としては、有機系染料、例えばCAS No. 4702−90−3、カーボンブラック、例えばトナー、又はIR吸収剤、例えばSDA 7257 (H.W. Sands Corp.)、バナジル−5,14,23,32−テトラフェニル−2,3−ナフタロシアニン、銅(II)−1,4,8,11,15,18,22,25−オクタブトキシ−29H,31H−フタロシアニン及びITO(インジウム−スズ−酸化物、例えば、Nanogate社の94%超の酸化インジウムを有するITO)である。好ましくは、フィルム中に、0.75〜4.0μmの領域、特に好ましくは1.0〜2.0μmの領域に吸収を示す添加剤が含まれる。
【0023】
完成した成形されたメンブレンは、その後、機械的な方法、例えば、ナイフや型抜き機を使って、又は非接触的に、例えば、ウォータージェットやレーザーを使って、フィルムから切り出すことができる。好ましくは、成形されたメンブレンは、型抜きされるか、又はレーザーによって裁断される。引き続いて、メンブレンは、その外周部において、合成樹脂又は金属からなる支持リング及びコイルでもって、コネクタ接点と接続させることができ、そしてマイクロホン用又はスピーカー用メンブレンとして、永久磁石と一緒に、音響信号を変換又は発生させる適当な装置中に組み込むことができる。
【0024】
好ましくは、フィルムは、埃の堆積を防止するために、帯電防止剤、例えば、グリセリンモノステアレート、セチルトリメチルアンモニウムブロミド又は非イオン性もしくはアニオン性界面活性剤を含む。
【0025】
その他の添加剤は、例えば、フィルムを製造するのに慣習的に使用されるような、例えば、酸化防止剤、滑剤、光保護剤又は加水分解防止剤である。
【0026】
本発明のキャストフィルムを製造するためには、好ましくは10〜40%、特に好ましくは15〜25%の固形分を有する溶液を、例えば、キャストヘッド、ダイ、ドクターナイフ、グラビアシリンダーでもって支持体に塗工し、そして一段階又は多段階で乾燥させる。本発明のフィルムは引き続いて剥ぎ取ることができる。別の実施形態においては、剥ぎ取る前に、別の層、例えば、塗料、ラミネート接着剤又は接着テープが施用される。支持体としては、例えば、金属、シリコーン処理された紙又はフィルム、好ましくはシリコーン処理されていない二軸延伸ポリプロピレンフィルム及びポリエステルフィルム、就中、ポリエチレンテレフタレートからなるローラー及びエンドレステープが適している。そのような二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエステルフィルムの使用により、欠陥のないコーティングパターンがもたらされ、そして本発明のフィルムの支持体材料に対する粘着力が、更なる加工工程又は輸送/保管のために本発明のフィルムを強化するほど十分に高いものとなる。それに加えて、その粘着力は高すぎることはなく、その結果、フィルムを所望の時点で問題なく剥ぎ取ることができる。フィルムは、汚染及び機械的な損傷に対しても、本発明のフィルムを保護する。フィルムは、好ましくは少なくとも片面がつや消しであり、それ故、より容易に巻き取り及び巻き出しができる。つや消し効果は、支持体のつや消し表面又はつや消し剤(ポリオレフィンからなるボール)のキャスト溶液への添加によって達成することができる。
【0027】
厚手なフィルム(20μm超、特に40μm超)ほど、フラットフィルム法又はカレンダー法におけるような押出しによってより容易に製造できる。性質の応力及び異方性を取り除くために、好ましくは、巻き取り前に、多数のアニーリングローラーでフィルムを脱収縮させる。脱収縮は、オーブン中でのフィルムの保管によっても達成できる。この場合、ブロック化を防止するために、前もって剥離紙、剥離フィルム又は別のフィルムでフィルムを覆うのがよい。
【0028】
以下の例は、本発明を制限することなく説明するものである。
【実施例】
【0029】
例1
69重量%の構造要素(I)及び31重量%の構造要素(II)を有するポリエステルが使用される。
特性:
ビカット軟化温度203℃(ISO 306、50N、120K/分)、曲げ弾性率2400MPa(ISO 178、2mm/分)、降伏応力76MPa(ISO 527−1及び−2、50mm/分)、降伏ひずみ6.9%(ISO 527−1及び−2、50mm/分)、メルトマスフローレート(Schmelze−Massefliessrate)8g/10分(MVR、ISO 1133、330℃、2.16kg)、熱変形温度 HDT、Af 173℃(ISO 75−1及び−2、1.8MPa)
【0030】
このポリエステル100gを、室温で撹拌下で400gの無水テトラヒドロフラン中に溶解する。更に、0.01gのグリセリンモノステアレート及び0.001gの銅(II)-1,4,8,11,15,18,22,25−オクタブトキシ−29H,31H−フタロシアニンを添加する。ポリエチレンテレフタレートからなる23μm厚の二軸延伸フィルム上に、コーティングバー(Streichbalken, “knife over roll”)でこの溶液をコーティングし、引き続いて乾燥させる。10μm厚のそのポリマー層上に接着テープ、tesa 4389(12μmポリエステルフィルム、両面にそれぞれ9g/m2の溶剤アクリレート系感圧接着剤がコーティングされ、かつ片面がライナーで覆われている)をラミネートする。この複合体はその粘着面上に、別の本発明のポリマー層がラミネートされて、それによって次の構造が得られる。
・ポリエチレンテレフタレート23μm
・本発明のポリエステルフィルム10μm
・アクリレート系接着剤8μm
・ポリエチレンテレフタレート12μm
・アクリレート系接着剤8μm
・本発明のポリエステルフィルム10μm
【0031】
深絞り及び型抜き前に、23μm厚のポリエステルフィルムを剥がす。
【0032】
例2
83%重量%の構造要素(I)及び17重量%の構造要素(II)を有するポリエステルが使用される。
特性:
ビカット軟化温度218℃、曲げ弾性率2400MPa、降伏応力78MPa、降伏ひずみ6.9%、メルトマスフローレート5g/10分、熱変形温度HDT、Af 187℃
【0033】
このポリマーを、0.05重量%のカラーバッチ(標準ポリカーボネート中のカーボンブラック)と混合し、フラットフィルム装置で25μmの厚さのフィルムに加工する(ダイ温度280℃、チルロール温度150℃)。このフィルムをその後150℃で脱収縮する。
【0034】
比較例1
次の特性を有するポリカーボネートを使用する。
ビカット軟化温度145℃、曲げ弾性率2300MPa、降伏応力66MPa、降伏ひずみ6.1%、メルトマスフローレート11g/10分(ISO 1133、300℃、1.2kg)、熱変形温度 HDT、Af 125℃
【0035】
これを塩化メチレン中に溶解し、更なる添加剤を添加することなく、例1と同様に10μm厚フィルムに、それから接着テープを有する複合体に加工する。
【0036】
比較例2
比較例1からのポリカーボネートを、カラーバッチを添加することなく、フラットフィルム装置で25μmの厚さを有するフィルムに加工し(ダイ温度260℃、チルロール温度130℃)、そして脱収縮しない。
【0037】
比較例3
次の特性を有する、イソフタル酸及びテレフタル酸を同じ割合で有するビスフェノールAのポリエステルを使用する。
ビカット軟化温度195℃、曲げ弾性率2100MPa、降伏応力69MPa、降伏ひずみ60%、熱変形温度 HDT、Af 175℃
【0038】
これを塩化メチレン中に溶解し、そして例1と同様に10μm厚フィルムに、それから接着テープを有する複合体に加工する。そのフィルム厚は、製造中、溶液粘度の上昇のために一定にとどまらない。
【0039】
製造されたフィルムの評価
例1を除くフィルムを、それらの表面を埃によって急速に汚染する。これらのフィルムを、赤外線放射器によって加温する。例1及び例2からのフィルムは急速に温度が上昇したが、比較例からのフィルムの場合は、深絞りのための十分高い温度を達成するために暖気で支援しなければならなかった。完成した成形されたメンブレンを、型抜き機でもって13mm直径に切り出し、そしてその外周部を支持リング及びコイルによってコンタクト接点に接続させる。こうして、永久磁石を用いてスピーカーを製造する。これを、DIN ETS 300019規格に従って寿命試験に供する。このスピーカーを、負荷下で様々な試験、例えば、高い空気湿度又は85℃での継続負荷での温度サイクル(−40℃〜85℃)への複数回の曝露(Durchlaufen von Temperaturzyklen)に供される。各スピーカーは、電気負荷下で、スピーカーの定格出力で“ピンクノイズ(Pink Noise)”で500時間にわたって負荷をかけられる。500時間の最初と最後に、音質を主観的に評価する。
1:非常に良好、2:制限つき、3:耐えられない
【0040】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルからなるフィルムであって、該ポリエステルが、次式(I)で表される構造単位を含むことを特徴とする、フィルム。
【化1】

(式中、R及びRは、互いに独立して、ハロゲン、C1−C8−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、C6−C10−アリール、C7−C12−アラルキル又は、好ましくは、水素を示し、及びRは、次式(A)に相当するか、又は、好ましくは、カルボニル基である)
【化2】

【請求項2】
染料、顔料、IR吸収剤又は帯電防止剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリエステルからなるフィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィルムを製造する方法であって、前記ポリエステルが、好ましくはハロゲンを含まない、溶剤中に溶解され、そして支持体、好ましくは強化ポリエステルフィルム上のキャストフィルムとして、キャストフィルムに加工されることを特徴とする、上記の方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のフィルムを製造する方法であって、前記ポリエステルが、押出法又はカレンダー法でフィルムに加工され、そして、好ましくは引き続き、熱作用によって脱収縮されることを特徴とする、上記の方法。
【請求項5】
音響信号変換器のための深絞りメンブレン(Membran)であって、該メンブレンが、請求項1又は2に記載のフィルムから製造されることを特徴とする、上記のメンブレン。
【請求項6】
前記メンブレンが、請求項1又は2に記載のフィルムから製造され、そしてこのフィルムが、上記の式(I)の構造単位及び次式(II)の構造単位を有するポリエステルを含むことを特徴とする、請求項2に記載の音響信号変換器のための深絞りメンブレン。
【化3】

【請求項7】
前記ポリエステルが、60〜90重量%、好ましくは65〜85重量%の前記構造単位(I)を含み、及び10〜40重量%、好ましくは15〜35重量%の構造単位(II)を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の音響信号変換器のための深絞りメンブレン。
【請求項8】
前記ポリエステルが、少なくとも2350MPaの曲げ弾性率及び/又は少なくとも75MPaの降伏応力を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の音響信号変換器のための深絞りメンブレン。
【請求項9】
前記ポリエステルが、少なくとも173℃、好ましくは、少なくとも180℃の熱変形温度HDT Af及び/又は少なくとも203℃のビカット軟化温度を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の音響信号変換器のための深絞りメンブレン。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つに記載の深絞りメンブレンの、マイクロホンカプセル、携帯電話、ハンドフリースピーチユニット(Freisprechanlagen)、無線機器、補聴器、ヘッドホン、ミニラジオ、コンピューター、PDA及び/又は信号伝送装置における使用。

【公表番号】特表2012−517490(P2012−517490A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548644(P2011−548644)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050984
【国際公開番号】WO2010/091960
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】