説明

音響信号符号化装置及び音響信号符号化方法

【課題】簡単な構成で製品を安価かつ、音響信号を忠実に符号化可能な音響信号の符号化装置と音響信号符号化方法を提供する。
【解決手段】音響信号を複数の周波数帯域に分割する帯域分割フィルタと、分割されたそれぞれの周波数帯域の音響信号を分配し、分配された音響信号を離散時間信号にするための所定周期のインパルス列をかけるためのクロック発生器と、分配された一方の音響信号にクロック発生装置からの一定周期インパルス列をかけて標本化する第1標本化手段と、分配された他方の音響信号にクロック発生器からの同期した前記一定周期のインパルス列を位相反転器で位相の異なるインパルス列としたものをかけて標本化する第2標本化手段と、前記第1及び第2標本化手段により得られた2つの離散時間信号を複合する複合化手段と、複合された離散時間信号を量子化する量子化手段と、量子化したものを符号化する符号化手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラオケ、オーディオ等の音楽の音響信号を符号化する音響信号符号化装置及び音響信号符号化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音響信号を符号化するために、連続するアナログ信号からなる音響信号に周期Tのインパルス列をかけて離散時間信号を得る標本化工程を経て量子化、符号化をする方法が一般的である。離散時間信号を元の連続したアナログ信号に近づけるために、それを離散フーリエ変換、離散コサイン変換等のスペクトル変換が行われる。
【特許文献1】特開2000−114975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、離散フーリエ変換や離散コサイン変換等のスペクトル変換により得られたものを復元したものは音響信号を忠実に復元するものではなく、アナログ信号再生に比べて滑らかでないという音質に問題があるものであった。さらに、離散フーリエ変換や離散コサイン変換等のスペクトル変換は、大掛かりな演算装置を必要とし、装置の大型化や製品コストの高騰を招くという問題を有するものであった。
【0004】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであって、簡単な構成で製品コストも安価にできる、連続した音響信号を忠実に符号化することができる音響信号の符号化装置と音響信号符号化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本第1発明は、前記課題を解決するために、音響信号の符号化装置において、音響信号を複数の周波数帯域に分割する帯域分割フィルタと、分割されたそれぞれの周波数帯域の音響信号を分配する信号分配器と、分配された音響信号を離散時間信号にするための所定周期のインパルス列をかけるためのクロック発生器と、分配された一方の音響信号にクロック発生装置からの一定周期インパルス列をかけて標本化する第1標本化手段と、分配された他方の音響信号にクロック発生器からの同期した前記一定周期のインパルス列を位相反転器で位相の異なるインパルス列としたものをかけて標本化する第2標本化手段と、前記第1及び第2標本化手段により得られた2つの離散時間信号を複合する複合化手段と、複合された離散時間信号を量子化する量子化手段と、量子化したものを符号化する符号化手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本第2発明は、音響信号を符号化方法において、音響信号を複数の周波数帯域に分割する周波数帯域分割工程と、分割されたそれぞれの周波数帯域の音響信号を分配する音響信号分配工程と、分配された一方の音響信号に一定周期のインパルス列をかけて標本化する第1標本化工程と、分配された他方の音響信号に第1の標本化工程のインパルス列の間隙部に相当する位相の異なるインパルス列をかけて標本化する第2標本工程と、前記第1標本化工程および第2標本化工程で得られた離散時間信号を複合する複合工程と、前記複合された離散時間信号を量子化する量子化工程と、前記量子化されたものを符号化する符号化工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の、音響信号の符号化装置において、音響信号を複数の周波数帯域に分割する帯域分割フィルタと、分割されたそれぞれの周波数帯域の音響信号を分配する信号分配器と、分配された音響信号を離散時間信号にするための所定周期のインパルス列をかけるためのクロック発生器と、分配された一方の音響信号にクロック発生装置からの一定周期インパルス列をかけて標本化する第1標本化手段と、分配された他方の音響信号にクロック発生器からの同期した前記一定周期のインパルス列を位相反転器で位相の異なるインパルス列としたものをかけて標本化する第2標本化手段と、前記第1及び第2標本化手段により得られた2つの離散時間信号を複合する複合化手段と、複合された離散時間信号を量子化する量子化手段と、量子化したものを符号化する符号化手段とを備える構成により、同一のクロック発生器からのインパルス列を直接かけるものと、位相反転器を経過したものをかけるという単純な回路構成でなんらスペクトル変換等の演算をすることなく原音に近い滑らかな音質を得ることができる音響信号符号化装置を提供できる。
音響信号を符号化方法において、音響信号を複数の周波数帯域に分割する周波数帯域分割工程と、分割されたそれぞれの周波数帯域の音響信号を分配する音響信号分配工程と、分配された一方の音響信号に一定周期のインパルス列をかけて標本化する第1標本化工程と、分配された他方の音響信号に第1の標本化工程のインパルス列の間隙部に相当する位相の異なるインパルス列をかけて標本化する第2標本工程と、前記第1標本化工程および第2標本化工程で得られた離散時間信号を複合する複合工程と、前記複合された離散時間信号を量子化する量子化工程と、前記量子化されたものを符号化する符号化工程とを有する構成により、第1の標本化工程と第1の標本化工程で得られた第1の離散時間信号の間隙部に位置する第2の離散時間信号を簡単に得ることができ、第1、第2の離散時間信号を複合することにより、原音に近い滑らかな音質を得ることができる音響信号符号化方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の音響信号符号化装置の概略図である。
【0009】
音響信号を帯域分割フィルタ1を通して、例えば低周波帯域と高周波帯域に分割する。分割された低周波帯域の音響信号及び高周波帯域の音響信号がそれぞれ信号分配器2により2つに分割される。
【0010】
分配された一方の音響信号にクロック発生器3からの所定周期のインパルス列がかけられる第1標本化手段4により第1の離散時間信号を得る。
【0011】
分配された他方の音響信号に、クロック発生器3から前記第1標本化手段4にかけられた所定周期のインパルス列と同期したインパルス列が位相反転器5を経て、位相の異なるインパルス列としたものがかけられる第2標本化手段6により第2の離散時間信号を得る。第2の離散時間信号は第1の離散時間信号の間隙部に位置する。
【0012】
第1の離散時間信号と第2の離散時間信号が複合手段7により複合される。
【0013】
複合手段7により複合された離散時間信号は量子化手段8により量子化され、符号化手段9により符号化される。
【0014】
前記信号分配から符号化の工程を分割された低周波帯域の音響信号と高周波帯域の音響信号毎に実施し、最後にそれらを複合する。
【0015】
以上のように、本発明の音響信号符号化装置は、分配された音響信号の一方にクロック発生器からのインパルス列をかけ、分配された他方の音響信号に前記インパルス列の位相を反転したインパルス列をかけるだけの構成で、なんらスペクトル変換等の演算をすることなく原音に近い滑らかな音質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1:帯域分割フィルタ、2:信号分配器、3:クロック発生器、4:第1標本化手段、
5:位相反転器、6:第2標本化手段、7:複合化手段、8:量子化手段、9:符号化手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響信号の符合化装置において、音響信号を複数の周波数帯域に分割する帯域分割フィルタと、分割されたそれぞれの周波数帯域の音響信号を分配する信号分配器と、分配された音響信号を離散時間信号にするための所定周期のインパルス列をかけるためのクロック発生器と、分配された一方の音響信号にクロック発生装置からの一定周期インパルス列をかけて標本化する第1標本化手段と、分配された他方の音響信号にクロック発生器から同期した前記一定周期のインパルス列を位相反転器で位相の異なるインパルス列としたものをかけて標本化する第2標本化手段と、前記第1及び第2標本化手段により得られた2つの離散時間信号を複合する複合化手段と、複合された離散時間信号を量子化する量子化手段と、量子化したものを符号化する符号化手段とを備えることを特徴とする音響信号符合化装置。
【請求項2】
音響信号を符号化方法において、音響信号を複数の周波数帯域に分割する周波数帯域分割工程と、分割されたそれぞれの周波数帯域の音響信号を分配する音響信号分配工程と、分配された一方の音響信号に一定周期のインパルス列をかけて標本化する第1標本化工程と、分配された他方の音響信号に第1の標本化工程のインパルス列の間隙部に相当する位相の異なるインパルス列をかけて標本化する第2標本工程と、前記第1標本化工程および第2標本化工程で得られた離散時間信号を複合する複合工程と、前記複合された離散時間信号を量子化する量子化工程と、前記量子化されたものを符合化する符合化工程とを有することを特徴とする音響信号符号化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−275730(P2008−275730A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116587(P2007−116587)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(500431564)株式会社エス・イー・シー (5)
【Fターム(参考)】