説明

音響反射体

本発明による音響反射体は、コアを取り囲むシェルを含み、このシェルは、シェルの表面に入射した音波をコア内に伝達して集束させ、入射領域の反対側に位置するシェルの領域で反射させて、反射体から反射音響信号を出力することができる。また、シェルはコアを有し、シェルのコアに対する寸法は、シェル壁に入射した音波の一部がシェルに結合し、シェルの円周に沿って誘導され、次に再放射され、反射体から出力された反射音響信号と合わさって強い反射音響信号が出力されるように設定される。コアにおける音波伝達平均速度に対するシェルにおける音波伝達速度の比は、好ましくは2.74〜3.4であり、より好ましくは2.74〜2.86である。水中のパイプラインへの応用や、洗掘の測定及び反射体のアレイにも適用できる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
パッシブ音響反射体は、例えば2007年10月10日出願の英国国防大臣出願の特許文献1(参照により本願に組み込まれる)によって公知である。この特許文献1において、パッシブ音響反射体は、コアを取り囲んで配置された壁を有し、このシェルは、シェルに入射した音波をコア内に伝達して集束させ、入射領域の反対側に位置するシェルの領域から反射させて反射体から反射音響信号を出力することができ、コアが球体または直円柱の形態であり、また音波速度840〜1500ms−1を有する材料の1つ以上の同心層から形成されること、及び、シェルのコアに対する寸法が、シェルに入射した音波の一部がシェル壁に結合し、シェルの円周に沿って誘導され、次に再放射され、前出の出力された反射音響信号と建設的に合わさってより強い反射音響信号が出力されるものである。
【0002】
実際には、このような反射体の性能が常に予測通りであることはなく、また記載の構成に従って形成された反射体は、深く水に沈めた際にまたはそのような深さから引き揚げた際に、状況によっては変型したり破損したりする恐れがあることが判明している。
【0003】
最近では、電気ケーブル等の他の地下物体とは異なって、慣用の電磁波を利用した検出システムの使用では検出が極めて困難な地下ガス管等のマーキングに、音響反射体を応用する新たな可能性が現れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】英国公開特許第2437016号A
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NRL memorandum AD733978、Lastinger「Speed of Sound in Four Elastomers」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において、音響反射体はコアを取り囲むシェルを含み、このシェルは、シェルの表面に入射した音波がコアへと伝達される際に通過する1つまたは複数の音響ウィンドウと、コアに進入した音波を反射して音響ウィンドウの1つに戻す焦点とを有し、シェルにおける音波伝達速度の、コアにおける音波伝達平均速度に対する比は2.5〜3.4の範囲であることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、シェルにおける音波伝達速度の、コアにおける音波伝達平均速度に対する比は、2.74〜3.4(2.74、3.4を含む)の範囲である。
【0008】
より好ましくは、この比は、2.74〜2.86(2.74、2.86を含む)の範囲である。
【0009】
本発明者は、全く予期せぬことに、約2.82の比ではピーク音響反射エコー強度が−4dBの強度で現れるが、上記の範囲内では一般に−15dBより良好であり、2.5〜3.4の範囲では−10dBより良好であることを発見した。
この範囲外では反射体は商業利用にあまり適さないが、これは音響反射強度の低下を補うために反射体の直径を大幅に拡大しなくてはならないからである。例えば、比が2.48の場合、音響反射エコー強度は−27dBにまで低下した。上記の範囲内であれば直径300mm以下の音響反射体の動作に問題は全くないが、以下で説明する理由により、海中環境で動作させる商業用反射体の場合、恐らく100mmが実際的な直径の下限である。これは、反射体が反応する周波数が著しく上昇し、また応答が著しく上昇するからである(段落0060を参照)。
【0010】
臨界パラメータが、コアを通過する平均音波速度に関係するということは、混合材料(例えば、水及びエラストマー)から成るコアを構築すると、これによって高温での輸送及び保管に耐える音響反射体の構築が可能になることを意味する(段落0110以下を参照)。
【0011】
シェルは、非金属、エポキシ含浸カーボンファイバー、Kevlar(登録商標)(アラミド)ファイバー、エポキシ樹脂を含浸させたZylon(登録商標)[ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)すなわちPBO]ファイバーまたはポリエチレンファイバー(例えば、Dyneema(登録商標))から形成することができる。複合材中のファイバー量を変化させることによって、用途に合わせて音波速度を調節することができる。
【0012】
考えられ得る金属製シェルの中でも、アルミニウム及びその合金が特に良いが、これはアルミニウムのシェル材料は、入射音響信号の約50%を反射し、残りはコアまたはシェルに吸収される及びコアまたはシェルを通過するからである。これは、例えば、入射した音響放射の比較的少ない割合しか材料内に進入せず、残りが反射するスチールに匹敵する。シェルとしてアルミニウムまたはその合金の1種を使用する場合、コアは好ましくは約1620ms−1の音波速度を有する材料であり、ブチルゴムNASL−H862A及びB252はこの基準を満たし、また適切であり(非特許文献1)、炭酸カルシウム添加RTV11も同様である。
【0013】
しかしながら、本発明者は、RTV12のシリコンエラストマー製コアの入った25%グラスファイバー強化ポリフタルアミドで製造したシェルが、特定の周波数の入射音波を極めて良好に反射することを発見した。
25%グラスファイバー強化ポリフタルアミドは、E.I.du Pont de Nemours and Companyから商標名Zytel(登録商標)HTN51G25HSLで販売されている。同様のグラスファイバー強化ポリフタルアミドが、Solvey SAから商標Amadelで市販されている。ポリフタルアミド系のシェルは本発明において特に有利であるが、これはポリフタルアミド系のシェルが硬く、約310℃で固相から液相へと素早く相転移し、その温度未満では大きく軟化することがないからである。この特徴は、シェルを、その温度より低い液状コア材料で充填することができ、またシェルが変形するリスクなくコア材料を硬化させることができることを意味する。本発明による音響反射体の実現によって、あらゆる種類の用途向けの反射装置を設計する可能性が開ける。35%、45%及び60%のより高いグラスファイバー含有量のポリフタルアミドも得られ、これらのポリフタルアミドによってより一層硬いシェルがもたらされるが、グラスファイバー含有量が上昇すると、最終製品の脆性及びシェル内での音波伝達速度も上昇する。
【0014】
ある特定の有利な応用例において、音響反射体は、断面が管状の細長いシェルによって取り囲まれたコアとして機能する中心ロッドを備えた、細長く実質的に円筒形の構造体を含むことを特徴とする。
【0015】
このような反射体を、例えばパイプ片に取り付けることによって、水中または地中のパイプをマークすることができる。パイプ片を水に沈める前に、そのパイプ片にそのような反射体を複数(例えば4つ)事前に取り付けると、そのパイプ片をマークするためのシステムが簡単かつ経済的に得られる。パイプラインの全てのパイプ片にこのようなマーカーを取り付けると、パイプライン全体をマークすることができる。
【0016】
本発明の別の実施形態において、本発明による音響反射体はトロイダル形状である。
【0017】
本発明の更なる実施形態において、本発明による音響反射体は、水中の物体が置かれる水塊の底の洗掘をモニタするために、その物体に取り付けられる。反射体は、そのような物体を水中に置く前に、その構造の一部として取り付けられ得る。
【0018】
本発明は、水中での物体の周囲での洗掘をモニタする方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの本発明による音響反射体を取り付け、この音響反射体を、洗掘によって反射体が露出する結果、音響ビームによる問い合わせによって反射体が検出されるようになるように関連する水塊の底の自然な高さより下に位置決めすることを含む。好ましくは、本発明による音響反射体において、音響反射体をロープ、ケーブル等に取り付けるための取り付け手段は便利にはリング(eye)である。反射体がエラストマーまたはその他の非金属製のコアを有する場合、コアを充填するために、シェルにホールを設け得る。このホールをプラグで塞ぎ、便利にはリングをプラグに取り付ける。あるいは、反射体をネットに格納し得る。
【0019】
本発明の別の実施形態において、水中の物体または領域をモニタ及びマークする方法は、本発明による少なくとも1つの音響反射体を目的の物体または領域に位置決めすることによって、音響ビームによる問い合わせで反射体を検出することを可能にすることを含む。これは、例えば、反射体を、紛失の恐れのある高価な物体もしくはコンテナまたは航空機のブラックボックスに取り付けることによって行われ得る。本発明の別の態様は、このようなソナー反射体をダイバーまたはダイバーの機材に取り付け、ソナーで反射体に問い合わせをすることによってダイバーの位置を特定することである。
【0020】
本発明による反射体の更なる応用例は、本発明による1つまたは複数のソナー反射体で特定の領域または物体をマークすることによって、ナビゲーションに反響定位システムを利用している水中哺乳動物にそのような領域の存在を示すことである。この応用例を更に発展させると、水中哺乳動物を訓練して本発明による音響反射体の存在を認識させることによって、このような哺乳動物を経済目的(アイテムの特定、回収または配達等)に利用することが可能になる。
【0021】
本発明による音響反射体は、反射体をロープ、ケーブル、ネット等に取り付け、このロープ、ケーブルまたはネットを巻胴から繰り出すことによって海中に位置決めすることができる。敷設地点の反射体の位置は、巻胴を搭載した船舶が曳航する曳航ソナーアレイを使用することによって特定することができ、これを目的としてソナーシステムを搭載した別の潜水機器を使用する必要性がなくなる。
【0022】
本発明による音響反射体の実現によって、あらゆる用途向けの反射装置を設計する可能性が開かれる。
【0023】
本発明の反射体の別の可能な応用例は、1つ以上の反射体の、既知の位置に対する位置の割り出しを可能にすることである。これは特に、位置の割り出しを慣性航法装置(inertial navigation system:INS)に依存している自律型無人潜水機器(autonomous underwater vehicle:AUV)に有用である。
このような潜水機器のINSが潜水機器の潜水に続いて再キャリブレーションを必要とすることは周知であり、この再キャリブレーションは、既知のスペクトル特性を有する既知の位置の反射体の問い合わせによって達成され得る。データム位置を得ることを目的とした特定の反射体の識別を支援するためには、特定のパターンに反射体群を配置するのが簡便であり得て、これは例えばプレートまたはマット上の事前に準備された組み合わせの形態であり得る。同タイプの構成は、例えばマークされた特定の物体の存在を示す異なる数及び/または配置の反射体を取り付けた海底上の目的の物体(ウェルヘッド、パイプバルブ等)の位置特定にも有用であり得る。ソナーソースはいずれの慣用の輸送体に搭載することもでき、例えば潜水艦、その他の有人潜水機器、恒久設置型水中ソナー、ボート、航空機、ヘリコプターまたはAUVに搭載したディッピングソナーである。
【0024】
本発明の更に別の応用例は海中の物体の特定及び回収システムであり、物体に取り付けられたパッシブソナー反射体と、ソナートランスミッタと、パッシブソナー反射体で反射したソナー信号を受信する手段とが含まれる。受信手段は、トランスミッタと同じまたはどこか別の場所に位置し得る。三角測量システムが可能であり、受信装置は3つの異なる場所に配置され、物体の具体的な位置は、慣用の三角測量によって特定される。
【0025】
他にも多くの応用が本発明で可能である。応用例には以下が含まれる。
・水中の物体(すなわちパイプライン、電力ケーブル、電話線、海底に固定した設備)の具体的な地理的位置のマーキング、または、単体で、もしくはその他の同様のソナー反射体/位置特定の助けとなるアクティブ位置特定装置(例えば、赤+緑対赤+青)と組み合わせて水に沈めるための準備としての、物体への適用。
・水中装置への適用または水に沈める準備としての装置への適用であり、水柱内もしくはその底または海底にある装置の現在地をマークする。すなわち、自由にまたはある範囲内で動き回るケーブル(潮汐及び/または水流あるいはその他の流動物と共に動くある種のケーブル等)またはその他の装置のマーキング。
・石油もしくはガスのプラットフォームの水中部品またはこのようなプラットフォームの残骸のマーキング。特定のカテゴリの水中資産の所有者、機能またはタイプ等を特定するための手段として別々にチューニングされた複数の反射体の使用を含み得る。
・例えば大洋航路用の、港湾内位置特定補助装置として、沈没船またはサンゴ礁、水中の岩石等の航行上のその他の危険物用の、海中で/航行上重要ではあるが特定の機器にソナー反射体を取り付ける必要がない場所のマーキング。
・経済的または商業的関心区域のマーキングまたは指示(例えば、採鉱権に関連した国の海洋境界線)。
・船舶から船外へと失われたもしくは航空機の事故で失われた高価なコンテナの特定または航空機のブラックボックスの位置特定及び回収。
・海中断層の移動のマーキング及びモニタリング等の地理的構造のモニタリング。
・のちに廃棄する予定の海底上の危険な物体(沈没船、採掘坑等)のマーキング。
・ダイバー追跡。
【0026】
本発明のある興味深い応用例は、イルカ、ネズミイルカ及び反響定位を利用する海中哺乳動物を誘導するための経路または物体をマークすることである。
例えばバンドウイルカが発する音の周波数は0.25〜150kHzである。反響定位では主に高い周波数のクリック音(40〜150kHz)が使用される。典型的な反響定位クリック音のピーク周波数は約100kHzであるが、周波数は、個々の反響定位の課題に応じて大きく変化する。この周波数を反射するソナー反射体を製造し、このような反射体を水中の物体に取り付けることによって、物体をマークし、そのような哺乳動物を誘導することができる。特に、ドルフィン類を訓練して特定のソナー反射体を認識させ、反射体のある領域までアイテムを運ばせたり、アイテムを反射体のある領域から回収させたりするために利用することが可能である。
【0027】
特許文献1の音響反射体でも見られた問題点は、エラストマー製のコアを使用する場合、製造中、時折、硬化時にエラストマーが裂けて反射体内で割れ目が発生し、性能に影響することであった。提案される1つの解決策がシェルにホールを設けることであり、最初にエラストマーをそのホールを通してシェル内に注ぎ込み、硬化させ、過充填によって注ぎ足し、再度硬化させ、余分なエラストマーを除去し、ホールを塞ぐ。
【0028】
別の潜在的な問題点は、上記の類の非金属製のシェルを有し、水中深く(5000メートルを超える)で利用される反射体では、水が浸入する統計的リスクがあることである。反射体を水面に引き揚げると、浸入した水の圧力は周囲を取り囲む水または空気の圧力より実質的に大きくなるため、反射体のシェルの突然で壊滅的な破損のリスクが生じる。
【0029】
従来公知の製造方法は、場合によっては煩わしいものになり、固体の材料(金属、セラミック、既に硬化しているまたは未硬化の状態で自由流動していない材料等)から成るコアでは使用することができない。本発明の反射体を製造する方法は他にもあるが、内部に取り込まれた水の急激な減圧によるリスクを管理するように適合された音響反射体の低コストで一様な製造方法が求められている。
【0030】
したがって、本発明による音響反射体は、シェルが、互いに接合された2つの半分割体から構成され、かつコアを取り囲むことを特徴とする。球状反射体において、シェルは、スピンまたはレーザー溶接によって接合できる2つの半球体を含む。
【0031】
シェルを、反射体を水面に引き揚げる際の減圧の結果として内圧で破損し得る材料から形成する場合、シェルの半分割体には、内圧への耐性が低い領域をその接合部に設けることができる。
【0032】
スピン溶接部を間に有する半球体の場合、スピン溶接領域の周囲の厚さは薄くなり得るまたは強度が低くなり得る。
【0033】
半分割体の一方は最初、2つの半分割体をコアの周囲で合わせる際に捕捉される空気を放出するためのベントを有し得る。このベントは、製造完了時に封止される。この封止はシェルの材料にとって適当なものであり得て、小さいプラグのスピン溶接、樹脂の充填等が含まれる。
【0034】
2つの半球体から形成されるシェルの場合、一方の半球体の露出したエッジは、もう一方の半球体の対応する露出したエッジに形成されたグルーブと係合する直立タングを有し得る。半球体を互いにスピン溶接する場合、タングのエッジ及びグルーブの内側は、一方の半球体をもう一方の半球体に対して素早く回転させた場合に優先的に溶融して溶接部を形成する1つ以上の直立した小さなタブを含み得る。
【0035】
半球体が統計的に内圧で破損するリスクのある非金属材料から成る場合、タングは最初はグルーブの約半分を占め得るため、溶接材料は、スピン溶接後もグルーブ全体を満たすことがなく脆弱な円周部となる。通常170MPで破損するガラス強化ポリフタルアミド製シェルの場合、半球体の接合部は50〜100MPで破損するように設計され得て、いかなる内圧であっても安全に開放することができる。
【0036】
本発明の別の態様において、本発明による音響反射体の製造方法は、2つの半球体をコアの周囲で互いに接合する工程を含む。
【0037】
球状音響反射体において、本発明の製造方法は、2つの半球体を球状コアの周囲で互いに接合することを含む。
【0038】
更に、この2つの半球体を互いにスピン溶接する工程を含み得る。
【0039】
スピン溶接は、一方の半球体の露出したエッジ上に形成されたタングをもう一方の半球体の露出したエッジ上に形成されたグルーブ内で回転させる工程を含み得る。加えて、この工程は、タング及びグルーブ上の直立タブを互いに溶融させて溶接部を形成する工程を含み得る。
【0040】
更に、また重要なことに、この製造方法は、コアを反射体内に配置する場合の形状及びサイズに調製する工程、このコアを展開時の温度より低い温度の場所に置く工程、実質的にコア全体をその温度に到達させる工程、そのコアをその場所から取り出す工程、シェルの2つの半分割体の間に置く工程、シェルのこの2つの半分割体を互いに封止する工程を含み得る。
【0041】
好ましくは、捕捉された空気を半分割体の一方のベントから放出してからベントを封止する。
【0042】
上記の2つの段落に記載されるような製造過程では、他の方法で形成したコアに見られるエアポケット及び割れ目のリスクが回避される。他の方法で形成された反射体の完全性を二重にチェックする唯一の方法は、反射体形成後の非破壊検査(X線検査等)である。製造過程終了後にその段階を行うと、反射体が規格を満たさない場合、償却コストが比較的高くなる。前記の技法を利用することによって、償却コストがまだ低い、コアをシェル内に展開する前の段階でその完全性を検査することができる。
【0043】
コアにシリコンエラストマーRTV12を使用する典型的な反射体において、RTV12は、球状の型内に、その利用に必要とされるサイズに過充填され、硬化され、取り出され、スプルーが切除される。目的のコアを完全性について検査し、基準を満たしていれば家庭用冷蔵庫に入れることができる。一方がタングを有し、もう一方がグルーブを有するガラス強化ポリフタルアミド製の半球体は、慣用のやり方で形成される。RTV12製コアを冷蔵庫から取り出し、半球体の一方に入れる。次にもう一方の半球体をコアにかぶせると、一方の半球体のタングがもう一方の半球体のグルーブと係合する。この2つの半球体を上述したように互いにスピン溶接する。コアは、周囲温度に戻るにつれて膨張し、コアと半球体との間に捕捉された空気が半球体の一方にある小さなベントから押し出される。コアが周囲温度に完全に達した後(例えば、24時間後)、ベントを樹脂で封止する。金属製コア、セラミック製コア及びその他のエラストマー製コアは同様のやり方で調製することができる。ただし、多くの場合、モールディングよりキャスティングのほうがより適当なコア調製方法である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】本発明による球状音響反射体の概略断面図
【図1B】入射音響信号の方向から図1AのA−A方向に向かって見た反射体の説明図
【図2A】シェルが2つの音響ウィンドウを有する材料から構成される球状音響反射体の概略断面図
【図2B】入射音響信号の方向から図2AのA−A方向に向かって見た反射体の説明図
【図3】リング付き取り付け手段を備えたプラグを有する非金属製音響反射体の同様の部分断面図
【図4】目的のアイテムをマークするための垂直ケーブルに取り付けられた反射体の使用を示す説明図
【図5】図4同様、ネット支持体を使用した取り付け構成を示す説明図
【図6】堅牢な格納手段を示す説明図
【図7】図6同様、格納手段の説明図
【図8】船舶からの反射体列の設置を示す説明図
【図9】細長い中実の金属音響反射体が取り付けられたパイプ片を示す斜視図
【図10】図9の線B−B’での音響反射体の概略断面図
【図11】本発明による環状音響反射体を示し、図12の線A−A’での断面図
【図12】本発明による環状音響反射体の説明図
【図13】水中の物体(橋脚等)の周囲の洗掘を確認するための音響反射体の使用を示す説明図
【図14】単純な位置情報を水中で得るための音響反射体の使用を示す説明図
【図15】複雑な位置情報システムの概略図であり、本発明による7個の反射体のフィールドに問い合わせをするソナーを搭載した潜水機器を示す説明図
【図16】広帯域トランスミッタの使用及び3つの特定の周波数の1つ以上で7個の反射体を備える図14に図示のフィールドから戻ってきた反射を示すグラフ
【図17】図14のフィールドにおける目的の3つの周波数だけで伝送を行うトランスミッタの使用を示すグラフ
【図18】反射体のフィールドの問い合わせに広帯域ソナー伝送を利用した図16と同様、各反射体がフィールド内の残りの反射体とは異なる反射特性を有することを示すグラフ
【図19】25%ガラス強化ポリフタルアミド製シェルを備えた200mmのRTV12反射体に関しての周波数応答を示すグラフ
【図20A】本発明による球状反射体を形成するための製造過程で使用する部品を示す説明図
【図20B】本発明による球状反射体を形成するための製造過程で使用する部品を示す説明図
【図20C】本発明による球状反射体を形成するための製造過程で使用する部品を示す説明図
【図21A】図20A、20B、20Cの部品から組み立てられた音響反射体を示す説明図
【図21B】摩擦溶接前の図21Aの音響反射体のタング及びグルーブの配置の詳細を示す説明図
【図21C】摩擦溶接後の図21Aの反射体のタング及びグルーブの配置の詳細を示す説明図
【図22A】図20、21の別実施例の半球体構成を示す説明図
【図22B】図20、21の別実施例の半球体構成を示す説明図
【図23A】図22A、22Bの半球体を使用して組み立てられた半球反射体を示す説明図
【図23B】図22A、22Bの半球体を使用して組み立てられた半球反射体を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態例を、添付の図面を基に説明する。
【0046】
図1A、1Bに示すように、音響反射体10は、コア16を取り囲む球状シェル12を含む。このシェル12は、25%グラスファイバー強化ポリフタルアミドから形成される。コア16はRTV12である。
【0047】
音響源(図示せず)から伝送された音波18は、図示されるように、シェル12の外壁14に入射する。シェルは音響伝達ウィンドウ20を有し、その正確な直径はシェルの直径に左右され、このウィンドウ20に入射した音波は、シェル12を通ってコア16へと伝達される。
【0048】
ウィンドウ20に突き当たった入射音波はシェル12を通過してコア16内へと進入し、ウィンドウ20の反対側にあるシェル12の内側の焦点26に集束され、反射してウィンドウへと戻る。
【0049】
入射音波18の一部はシェル12に結合し、弾性波及び横波30の両方を発生させ、これらの波はシェル12内でその外周に沿って誘導される。最も強い波は弾性波である。本発明による反射体において、特定の周波数に関し、シェル壁12に沿って進む弾性波と、コアを通って焦点26に到達する反射音波は互いに同相であり、建設的に合わさって、より強い反射音響信号が反射体の軸に沿って焦点から出力されて強い応答32が得られる。
【0050】
海水に浸漬させる25%グラスファイバー強化ポリフタルアミドは、極めて広い単一の音響ウィンドウを有し、一方、アルミニウム及び合金は、シェルの直交軸の両側に比較的狭い音響ウィンドウを入射音波の方向に有する。
シェル表面への接線が直交軸と形成する角度が65°未満の場合、入射音波は反射してしまって吸収されない。しかしながら、接線の角度が約65°未満の場合、第2の極めて広い音響ウィンドウがあり、このウィンドウは第1のウィンドウと同心であり、音波はこの第2の音響ウィンドウを通ってシェル内に進入することができる。
図2に示すように、音響反射体10は、コア16を取り囲む球状のアルミニウムまたはアルミニウム合金製シェル12を含む。このシェル12はアルミニウムから形成される。コア16はブチルゴムNASL−H862AまたはB252である(あるいは、60%の炭酸カルシウムを添加したシリコン系エラストマーRTV11を使用することができる)。
【0051】
音響源(図示せず)から伝送された音波18は、図示されるように、シェル12の外壁14に入射する。シェルは環状伝達ウィンドウ20を有し、その正確な直径はシェルの直径に左右され、このウィンドウ20に入射した音波は、シェル12を通ってコア16へと伝達される。
【0052】
アルミニウムは約40〜50°の広角の伝達ウィンドウを有し、これは約25(65°の接線に対応する)〜70°の角度で表面に突き当たる全ての音波のエネルギーの50%がアルミニウムシェルに進入することを意味する。この領域は、図2A、2Bに示されるように、環状ウィンドウ20として図示されている。中央の円形ウィンドウである領域22において90°でアルミニウム表面に突き当たる音波のエネルギーの50%も、アルミニウムに進入する。残りのエネルギーは、反射体の表面で反射する。
【0053】
ウィンドウ20、22に突き当たった入射音波はシェル12を通過してコア16内へと進む。ウィンドウ20を通過した入射音波は、断面が環状の経路24を辿ってウィンドウ22の反対側にあるシェル12の内側の焦点26に集束される。中央のウィンドウ22に突き当たった音波は、中央経路28を焦点26へと辿る。ウィンドウ22を通過した音波は、中央経路28に沿って反射して戻る。
【0054】
入射音波18の一部はシェル12に結合し、弾性波及び横波30の両方を発生させ、これらの波はシェル12内でその外周に沿って誘導される。最も強い波は弾性波である。シェル12及びコア16を形成する材料が本発明に従ったものである場合、特定の周波数に関し、シェル壁12に沿って進む弾性波と、コアを通って焦点26に到達する反射音波は互いに同相であり、建設的に合わさって、より強い反射音響信号が経路28に沿って焦点から出力されて強い応答32が得られる。
【0055】
図3に示すように、本発明による音響反射体40は、シェル42及びシェル42を貫通するホール48を含む。シェル42のコア46には、シリコン系エラストマー材料RTV12が充填される。シェルは、25%ガラス強化ポリフタルアミドである。
【0056】
シェル42の内壁44に対応するホール48の内側52の直径は、シェル42の外壁45に対応する外側54より小さい。
【0057】
プラグ50はホール48を塞ぎ、またホール48に閉まり嵌めする。プラグ50の直径はホールの外側54から内側52に向かって縮小する。ホール48は均等に先細りするのではなく、その側面58に形成されたステップ64を有する。プラグ50はその側壁60に、対応するステップ62を有する。段状部62、64は小さな干渉タブを有し、この干渉タブは、プラグを素早く回転させると溶融して段状部62、64間に摩擦溶接部65を形成する。この例においては、プラグの外面上にリング付き取り付け部品(eye fitting)66が取り付けられていて、音響反射体を杭、支柱、桟橋またはその他の水中の物体に固定することを可能にしている。
【0058】
コア46には最初、ホール48からコア材料が粗く充填される。コア材料が硬化するにしたがって収縮割れが出現する。次に、このコア材料に更にコア材料を、若干過充填気味に注ぎ足し、再度硬化させる。余分なコア材料を除去し、プラグ50を挿入する。この例において、プラグ50はシェル42と同様にアルミニウムから形成される。これによって、シェルに沿って伝達される音響信号は干渉されずにすむ。ホール48におけるプラグ50の摩擦溶接が可能であり、これはプラグ50を素早く回転させて段状部62、64上のタブを溶融させて段状部62、64間に摩擦溶融部65を形成することによって行われる。プラグとシェルの材料が異なる場合、タブを省略し、プラグを所定の位置に槌で打ち込んで接着するように構成してもよい。一旦水中に入ると、プラグは水圧によって所定の位置に維持され易い。
【0059】
この種の反射体は入射音波ごとに異なる周波数応答を有し、この周波数応答は、シェルの厚さに左右される。
【0060】
RTV12製コア及び25%ガラス強化ポリフタルアミド製シェルを備えた100mmの反射体の場合、最良の周波数応答は厚さ7mmのシェルで450KHzで得られる。直径100mmの反射体の場合、実用的な最小運転周波数は、4mmのシェルで250KHzである。2mmのシェルの場合、最良の運転周波数は690KHzである。直径200mmの反射体の場合、最良の応答は、8.8mmのシェル厚で120KHzで得られる。その他の重要な数値は、4.4mmのシェルでの100KHz、6.1mmでの150KHz、8.1mmでの180KHz、8.3mmでの210KHz、13.7mmでの250KHz、14.0mmでの300KHzである。直径200mmの反射体での実用的な最小運転周波数は約90KHzである。直径300mmの反射体の場合、最小運転周波数は9.8mmのシェルで50KHzであり、その他のサンプルデザインは、厚さ9.4mmで100KHz、7mmで150KHz、5.5mmで200KHz、13.7mmで250KHzである。各壁厚で、多数の周波数応答が高い周波数で得られ、このことは、図19の壁厚8.8の直径200mmの反射体に関してより詳細に見てとることができる。
【0061】
図4は、海の水中ブイ144の垂直ケーブル140に取り付けられた本発明による反射体10の概略図である。
この反射体は、釣合い錘142をブイ144に連結している垂直ケーブル140に連結される。図3に示されるようにプラグ上にまたは(適当ならば)反射体の表面に直接取り付けられた反射体10上のリング(eye)136を通したロープ146は、反射体10を垂直ケーブル140に結びつける。次に、このシステムを使用して、目的の水中の物体またはアイテムをマークすることができる。
【0062】
状況によっては、特にマークする物体が強い潮流にさらされる潮汐域または領域にある場合、反射体の潮汐運動及び潮流の動きとの相互作用によって、過剰な力がプラグ上のリングにかかり得ることから、極端な状況下では、リング136が破損してとれてしまう。これを回避するために、図5では、反射体を、リングに通したロープによって固定するのではなく、ブイ144と釣合い錘142との間に吊ったネット148に格納する。
【0063】
反射体を垂直の物体(支柱、橋脚、ドリリングプラットフォームの脚等)に取り付けられるように、同様の構成を考案することができる。
【0064】
図6では、球状音響反射体10をケージ81に格納している。
このケージは、一対のホイール82、92及び、各ホイールのリムをホイールのハブ86と連結しているスポーク84を備える。ケーブル90は、ハブの中心にあるホール88を通してホイールに取り付けられる。浮力補助具94がケーブル90に取り付けられる。ホイール82とホイール92とはステイ96によって隔てられ、ステイは、ホイール82、92を貫通する端部(図示せず)を有する。この端部の雄ねじと係合するエンドキャップまたはナット98がステイを所定の位置に維持し、またケージ81の容易な分解も可能にする。ホイール82、92とステイ96との組み合わせは、ケージが糸巻様の外観を呈するようなものである。
【0065】
ホイール82、92及びステイ98は、ポリエチレン等の適切なプラスチック材料でモールディングされる。殆どの応用例において、ケージ81が音響反射体80の動作を過度に干渉しすぎることはないが、周波数によっては(ステイ及びスポークの実寸法に左右される)、許容範囲と考えられる限度を超えて音響伝達の吸収が起こり得る。
【0066】
あるいは、図7の構成においては、ステイ98を、ホイール82と92との間に延びる複数のナイロンモノフィラメント100で置き換えている。水中では、この構成は図6の構成より剛性が低いものの、許容範囲の挙動を示すと判明している。典型的には釣り糸に使用される類のナイロンモノフィラメントは、この用途にとって十分な強度を有する。
【0067】
図6及び7に示すように、ケーブル90は、格納容器同士を繋ぎ、各ケージ81は、音響反射体80を格納する。
必要に応じて、浮力補助具94を使用することによって、音響反射体を許容可能な深さに維持することができる。当然のことながら、音響反射体を海底に位置決めする場合、浮力補助具は省略される。
【0068】
図8に示すように、多数の音響反射体10を海底150上に敷設される。
反射体は、曳航ソナーアレイ156を曳航しているケーブル敷設船160の後方に搭載されたリール154に巻かれたケーブル152によって繋がれている。典型的には、ケーブルの長さは100メートル以上であり得る。反射体10に例えば浮力手段を取り付け、海底150に到達した際に反射体がケーブル152より上にくるようにシステムを設計することによって、曳航アレイ156からのソナー信号を特定の反射体10’に反射させて曳航ソナーアレイに反射体10’の位置に関する正確な情報を提供することが可能である。海底に到達した際にこれを各反射体に行うと、各反射体の位置のプロットが可能である。今までは、これは潜水機器を別に使用することによってのみ実現可能であった。ここでは個々の反射体を繋ぐケーブルを使用して説明しているが、ロープ、チェーンまたはネットも状況に応じて使用し得る。
【0069】
図9は、それぞれが本発明による多数の細長い円筒状音響ロッド反射体932を取り付けられたパイプ片930の概略図である。
各反射体は、アルミニウムチューブ936で覆われたブチルまたは炭酸カルシウム添加シリコンエラストマー934を含む。このような材料は、音波速度1640ms−1を有し、アルミニウムと組み合わさって、本発明で必要とされる範囲内のシェル対コア音波速度比2.95を有する。この比は、アルミニウム単体より遅い音波速度を有するアルミニウム/銅合金を使用することによって最適値にまで低下させることができる。反射体932の細長い円筒状端部938のそれぞれは、慣用の電気絶縁材料によってキャップされ、閉鎖される。この絶縁材料は特にアルミニウムチューブ936をパイプ片から隔離し、またその間での電気伝導を防止する。反射体932は、パイプに取り付けられた直立突起部942を介してパイプ片930に取り付けられる。反射体は、突起部の端部に慣用のやり方で取り付けられた絶縁ブッシュによってパイプ片から電気的に絶縁される。パイプ片930は、ホールを有する慣用のエンドフランジ931を有し、このホールによって、エンドフランジを別のパイプ片にボルト締めすることが可能になる。音響反射体を取り付けたパイプ片を陸上で事前に組み立て、フランジ931のボルトホールを介して、同様の反射体を取り付けたパイプに接合することができる。このようにして、音響反射体を取り付けたパイプラインを、水中パイプラインを敷設するための通常の過程の一部として組み立てることができる。
【0070】
運転中、図9の細長い音響反射体は、図2A、2Bに図示の球状反射体と全く同じように動作する。これを図10に示す。
音響源(図示せず)から伝送された音波940は、図示されるように、ロッド932のシェルを形成しているアルミニウムチューブ936に入射する。チューブ936には、伝達「ウィンドウ」として機能する2つの領域がシェルにあるため、これらの領域において入射音波はチューブ936を通ってロッドのコア938へと効率的に伝達される。一方の領域942は入射ビームの中心にあり、もう一方の領域944は、円筒の表面上で楕円を形成する。ウィンドウ942を通った入射音波は経路950に沿ってチューブの中心を越えて進み、また楕円形のエントリーウィンドウ944からの入射音波は、断面が楕円の経路952に沿ってコア938を横断し、屈折し、ウィンドウ942の反対側の円筒状シェル936の内側の焦点954で集束する。次に、経路950、952上の音波は反射してそのそれぞれの経路に沿って戻る。また、入射音波の一部は、チューブ内の矢印956で示されるように、チューブ936内部をチューブに沿って伝達され、これらの音波が焦点954で経路950、852上の音波と建設的に合わさって、より強い反射音響信号958が反射体から出力される。
【0071】
図9及び10における細長い反射体をパイプ片と関連させて説明してきたが、反射体をその他の物体(油田掘削プラットフォーム、海上作業者用の居住用プラットフォーム、水中に設置するその他の物体等)に応用することもできる。後述するように、この原理を、陸上の物体(ガスパイプライン等)に応用することもできる。
【0072】
図11及び12に示すトロイダル形状反射体640を、壁644用のガラス強化ポリフタルアミド、アルミニウムまたはアルミニウム合金及び壁644が25%ガラス強化ポリフタルアミドの場合はコアとしてのRTV12から、あるいは壁644がアルミニウムまたはより密度の高いガラス強化ポリフタルアミドの場合はコア646としてのブチルゴムエラストマーH862AまたはB252から構成することができる。炭酸カルシウム添加RTV11は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用する場合の別の考えられるコア材料である。
【0073】
音響源から伝送された音波は、反射体640の外面642に入射する。コア646を横断する及び壁644に沿った音響信号の伝播並びに入射領域の反対側の地点での建設的干渉については既に説明済みである。材料は、コア646の周囲での壁644における音波速度のコア656を通る音波速度に対する比が、本発明に従ったものとなるように選択される。
【0074】
目的によってはトロイダル形状反射体が有利であり、側方から問い合わせを行った場合に、上部または底部より強い反射を得ることができる。
【0075】
図13には、海底666の表面下に延びる支柱(橋脚等)の下部660が示されている。
図5及び6を参照しながら説明した一連の音響反射体661、662、663、664が、海面下の橋脚660の周囲に取り付けられている。反射体のデザインは、本発明に従ったいずれのものでもあり得て、球状や、図9及び10で説明したような細長い円筒形、あるいは図11及び12で説明したようなトロイダル形状である。図11及び12に図示の類のトロイダル形状反射体について説明する。恒久的に海底より上にあるこれらの反射体661、662を使用することによって、水中の橋脚660をマークすることができる。潮流が支持体660の周囲の海底を優先的に洗掘する結果、海底の高さは667へと低くなり、最初は海底より下にあった音響反射体663が露出する。ソナー信号による問い合わせでこの反射体663が検出されることによって、洗掘について、場合によっては注意が必要であるとの早期警告がなされる。
【0076】
洗掘が続くと、線668で示されるように海底は更に沈んで第2の反射体が露出し、これは、潜在的に危険な状況が進行していて、支持体660の水中の土台に緊急の注意が必要であることを示唆し得る。
【0077】
4個の音響反射体が図示されているが、関連する設計基準に合わせて、それより多いまたは少ない数の反射体を使用し得る。
【0078】
図14には、単純な位置指示装置が示されている。
本明細書に記載の類の2つの同じ音響反射体214が、海底212(例えば、油田掘削プラットフォーム(図示せず)の脚の間)に固定された三叉の矛様の取り付け台210の横木213の端部に水中で取り付けられる。同じ種類の別のより大きな音響反射体が、取り付け台210の縦木217に、2つの小さい音響反射体214の中間に取り付けられる。各反射体は球状であり、2つの小さい反射体214は、大きい反射体216より小さい直径を有する。
【0079】
潜水機器に取り付けられたソナーアレイ202は、比較的広帯域のソナー伝送で音響反射体に問い合わせをする。この伝送信号は、上述のようにして反射される。しかしながら、反射した信号の周波数組成は反射体の直径によって異なり、小さい反射体からの反射音波220の周波数は概して大きい反射体216からの反射音波222より高い。潜水機器はこれらの信号を受け取ると慣用の方法でこれを分析することができ、反射音波の出力、入射角度から、潜水機器からの反射体214、216までの距離に関する情報が得られる。取り付け台210の寸法、横木213及び縦木217の長さに関する情報を使用して、取り付け台210に対しての潜水機器の位置を極めて正確にコンピュータで計算することができる。
【0080】
この構成は別の興味深い利点も有する。波長の短いソナー信号は波長の長いソナー信号よりはるかに早く減衰することがよく知られている。したがって、反射体216からの反射信号222を、反射体214からの短い波長の反射信号220よりはるかに遠い位置で潜水機器が「聞く」ことができるのは明らかである。したがって、取り付け台210によってマークされる標的物体に向かっての潜水機器の最初の誘導を、反射体216からの反射音響信号222に基づいて行うことができる。潜水機器が取り付け台210に接近するにつれて、2つの小さい反射体214からの反射が得られ、潜水機器のその目標に向かっての最終的な操舵が精確に達成される。
【0081】
本発明を利用したより洗練された位置指示システムを、図15〜18を参照しながら説明する。
図15において、上述したような音響反射体7個(001〜007)から成るセットが、目的のフィールド312の海底に配置されている。各反射体は、図16のように1つ以上のピーク周波数316、318、320で入射音響放射を反射するように設計される。各反射体が応答する3つの特定の周波数から選択することによって、各反射体をコードすることが可能である。したがって、反射体001は周波数320にのみ応答し、名目上、2進数001を有する。反射体006は周波数316、318で応答し、2進数110を有し、セットの残りの反射体についても同様である。
【0082】
ここでフィールド312に、広帯域で信号314を発するソナー324を搭載した潜水機器322が接近すると、各反射体(001、002、003・・・007)は、3つの周波数のそれぞれでの応答によって特徴づけられる、各々に対応する2進数(001、010、011・・・111)で応答する。
【0083】
戻ってきた信号を分析することによって、音響反射体001〜007のそれぞれに対しての潜水機器322の位置を特定する。
【0084】
図16に図示の方法での広帯域の信号の伝送には、無駄が多いことが見て取れる。エネルギーのごく一部しか反射されないからである。図17において、ここでは伝送信号314も、反射体セットが応答するように設計されている周波数316、318、320と同じ周波数316’、318’、320’となるように編成される。このようにすると、潜水機器が必要とする出力がずっと少なくなる。あるいは、図16の広帯域伝送の場合と同じ総出力を伝送する場合、信号はより遠くへと伝達されることから、フィールド312をより遠い位置から「見る」ことが可能になる。
【0085】
より広いフィールドをマークするためのより大規模な音響反射体セットは、4つ以上の周波数を使用して構築することができ、4つの周波数を使用して最高15個、5つの周波数を使用して最大31個の反射体のセットを構築することができ、以下同様である。
【0086】
図18に図示の状況において、音響反射体のセットは、図15に図示されるように海底に敷設される。
しかしながら、この場合、音響反射体の直径は異なり、例えば反射体001の直径は15cm、反射体002の直径は17.5cmと、反射体007まで直径は2.5cmずつ大きくなる。直径以外の点では、反射体は同じものである。ここでこの反射体セットに、図16において314として示される類の広帯域音響伝送で問い合わせをすると、反射体001からの応答は、図18の上の波形のようになる。左側の反射は反射体の表面からの反射であり、本明細書に記載されるようにソナーからの音波が反射体の外周に沿って及び反射体を横断して伝達されていない。右側のより大きな応答の反射波は、上述したような、ソナー反射体を横断して及び反射体の外周に沿って伝達された反射ソナー信号である。
【0087】
ここで第2の波形を参照するが、反射体002の直径が反射体001より大きいことの直接の結果として第2のより大きな反射までの時間がより長くなることを除けばパターンは同じである。第3の波形を参照するが、2つの応答の間の時間間隔は、反射体003の直径がより大きい結果として一層大きい。したがって、第1の反射とメインの反射との間の時間間隔は、反射体セットを構成する反射体のそれぞれに特徴的であり、セットの各反射体の一意的な特定が可能になる。実際には、異なる直径の反射体を使用したこのアプローチのほうが、図16及び17で説明したアプローチより利用し易い傾向がある。これは場合によっては、反射した信号と同時に到着するノイズが、更に処理をしない限り、図16及び17の狭いパルスの見分けを困難にし得るからである。
【0088】
本出願人は、赤外線による誘導によって熱源(航空機のエンジン等)の位置を特定する熱線追尾ミサイル等を逸らすまたは混乱させるために広く使用されている、空気中のチャフの音響水中等価物が、本明細書に記載の類の音響反射体の使用によって得られることを発見した。水中において、潜水機器の通常の標的追尾機構はソナーである。
【0089】
水中の船舶を隠すまたは保護するための本発明を使用したシステムは、船舶の周囲の水中に展開する複数の本発明によるパッシブ音響反射体を含み、この音響反射体は、脅威であると認識される特定の音響周波数でソナー信号を反射するようにチューニングされる。音響反射体を同調させる音響周波数は、ソナーを使用して標的を追尾する潜水機器が使用する周波数または船舶それ自体が水中を進む間に発する音波の周波数であり得る。
【0090】
本明細書に記載の類の反射体が応答する設計周波数は、反射体の直径及びシェルの厚さの関数である。したがって、これらのパラメータを設計することによって、関心のある特定の周波数でソナー信号を反射する多数の反射体を利用するシステムを設計することができる。広いスペクトルをカバーするシステムは、船舶にとっての様々な脅威に対抗するための多数の異なる周波数で動作する反射体を含めることによって設計することができる。
【0091】
この種のシステムを、脅威(例えば、潜在的な標的をソナーによる探測によって特定する標的追尾魚雷)から船舶を保護するために、あるいは潜水艦もしくは船舶のソナーまたはいわゆる「ダンキングソナー(dunking sonar)」システムから船舶を不可視にするために使用することができる。システムは、船舶それ自体が発する音響信号を、その発せられた音を散乱させることによってマスクすることもでき、例えば音響探知機に検知されることなく船舶を出港させることができる。
【0092】
この種のシステムは極めて単純なものであり得る。水上艦の場合、多数の音響反射体をネットに入れて保管し、必要な際に放出することができる。利用する反射体を、上述したようにケーブル、ロープでまたはネットに入れて繋げ、反射体の利用の原因である脅威が排除された後に回収することができる。潜水艦においては、本発明によるパッシブソナー反射体をチューブを介して展開し得る。
【0093】
状況によっては、水面を浮き沈みする傾向がある反射体について、浮力が問題となり得る。反射体が上述したようなリング付きプラグを有する場合、浮力補助具をそのリングに取り付けることによって反射体が沈もうとしないように支援し、また同様に表面から反射体が浮き上がろうとしないように錘を取り付けることによって、望ましくないソナーによる検知から船舶を隠すのに必要な高さに反射体を維持することができる。
【0094】
本発明によるこのようなソナー反射体によって、ソナー音ベースでソナーの操作性能を測定し、またオペレータの訓練及び演習用のリアルな擬似標的を得るための単純な方法が得られることも判明した。このようなソナー反射体は、訓練を目的として様々な種類の標的を得るために、異なる応答を有するように個別に製造することができる。
【0095】
理想的な水の状態では、物体(例えば、潜水機器の泳者)のソナーによる検出が800〜1000mの範囲で可能である。しかしながら、温度変化、塩分濃度及び浮遊粒子が検出範囲に劇的に影響し得て、また水の状態はごく短時間で大きく変化し得る。
【0096】
このようなソナー反射体は、水の状態の変化によってのみ変動する一定した音響反射強度を提供し、これは、運転のために沿岸からの電力供給やバッテリーを必要としないため、設置及びメンテナンスが実質的により単純なものになる。
このようなソナー反射体を、適切な錘及びその他の部品を装備した状態で、望ましい範囲マーカーの適切な地点に、例えば小型船舶の側面にわたって配置することによって、ソナー検波器オペレータのための訓練法を提供することが可能である。あるいは、このような反射体が連なったものを海底に一定の間隔で、展開したソナーの最大検出範囲にまで敷設することによって、そのソナーが実際に物体をその特定のモーメントで検出できる実際の範囲をキャリブレートすることが可能である。後者は、例えば港への進入をモニタしている安全保障環境において重要であり得る。というのは、物体の検出がソナーの最大検出範囲で可能な場合、泳者が港に到達するまでに少なくとも25分かかるが、水中検出範囲が狭くなると、検知されるまでに泳者は港により近い位置、例えば港から6分の距離に到達してしまうからである。検出範囲におけるこの違いは、脅威への対応チームを波止場に配備するか水中に配備するかの間で大きな違いを生む。
【0097】
地下のプラスチックまたはその他の非金属製のパイプ、特にはガスを送るために使用されるもの(現在、これらをマークする方法はなく、試行錯誤によってのみ発見できる)のマーキングにおける本発明で説明の類の反射体の応用が特に有用である。このようなパイプを敷設する場合または一旦敷設されたものを発見した場合に、本発明による反射体をそのパイプの近くに埋設することができる。低周波数の地中探知音波は反射体で反射され、地上で音響マイクロホンによって検出され、反射体の存在ひいてはパイプの存在を示す。
【0098】
ブチルゴム及びシリコンエラストマー中での音波速度が、弾性がより低い材料(金属、セラミック等)より温度依存性が高いことは、留意すべき興味深い可能性である。したがって、これらの材料の1種から形成されたコアを、そのコアを使用する用途に慎重に適合させることが可能である。海面近くより水温が低い深海で展開する反射体では、浅瀬で使用するものより密度が低いエラストマーを使用し得る。コアにブチルまたはシリコン系エラストマーを使用する全ての例において、硬化前にエラストマーに炭酸カルシウムを添加することによってエラストマーにおける音波速度を上昇させることが可能である。したがって、実地では、炭酸カルシウムの含有量を変化させることによって、特定のエラストマーをコアでの使用に合わせて最適化することができる。発明者は、エラストマー中の実用的な最大炭酸カルシウム量が体積で30%あまりであり、それ以上になると、炭酸カルシウムによって音波が減衰してしまい、出力が著しく劣化することを発見した。
【0099】
図19は、直径200mm、シェルの厚さが8.8mmの球状音響反射体の周波数応答を示したものである。
最大応答は周波数120KHzであるが、大きな2次応答が約230、385、470、520及び625KHzで起きることが見てとれる。この情報を利用して、前記で説明したようにシステムの反射体を識別することができる。壁の厚さまたは直径を変更することによって、全く異なる応答が得られ、またその情報を利用することによって、目的の反射体を一意的に特定することができる。
【0100】
図20及び21は、球状音響反射体の別の製造方法を示す。
【0101】
図20A、20Bにはそれぞれ、球状反射体10のシェル12の2つの半球体702、704が図示されている。半球体は25%ガラス強化ポリフタルアミドから形成される。反射体のコア16(この場合、RTV12の球体)が、図20Cに示される。コアの直径は、組み立てた場合に2つの半球体702、704の内径より周囲温度でごくわずかに大きくなるようなものである。小さなベント712が半球体の一方に設けられるが、これは重要ではない。一方の半球体702のリム708に沿ってタング706が設けられる。タング706の直立エッジ及びリム708は、そのエッジに沿って分布する複数のタブ710を有する。もう一方の半球体704のリム716にはグルーブ714が設けられ、グルーブ714及びリム716はエッジに沿ってタブ718を有する。
【0102】
最初に、コア16のRTV12は、意図する用途に合った寸法の、内部が球状の型に流し込まれ、硬化させられる。型にRTV12を過充填し、スプルーを残し、割れ目形成の機会を減少させる。スプルーを除去し、成型されたRTV12製の硬化球体に欠陥がないか点検し、冷蔵庫に入れ、反射体の使用を意図している温度より低い均一温度に達するまで反射体を放置する。
【0103】
続いて、RTV12製コアを冷蔵庫から取り出し、半球体の一方、例えば704に入れる。次に、もう一方の半球体、例えば702をコア16にかぶせ、半球体702のタング706をもう一方の半球体704のグルーブ714内で係合させる。これは図21Bでより詳細に見て取れる。この例において、タング及びグルーブの寸法は、タングの片側と、その同じ側のグルーブ714の壁との間に間隙722が残るようなものである。タブ710、718は、半球体を回転させると互いに干渉する。一方の半球体をもう一方の半球体に対して回転させるとタブ710、718が溶融して互いに融合し、タング708とグルーブ714との間に摩擦溶接部720が形成される。タングとグルーブとの間の空間722は、溶融による溶融物724によって緩く充填され、反射体の直径周囲に脆弱な領域が形成される。
【0104】
コアの温度が周囲温度に戻るにつれてコアは膨張し、コアと半球体との間に捕捉された空気が小さいベント712から押し出される。一旦、コアが完全に周囲温度に達したら(例えば、24時間後)、ベント712を樹脂で封止する。このケースではコアがエラストマーであるため、その膨張によってシェルの内壁がその表面全体にわたって圧迫され、間隙が生じない。
【0105】
同じ原理を、別の材料の組み合わせにも適用することができる。特に有用な組み合わせは、アルミニウム製シェルと、ブチルゴムから形成されるエラストマー製コア(例えば、NASL−H862A、B252等)との組み合わせである(非特許文献1)。製造過程は、ベント712を所定の位置でスピン溶接されたアルミニウム製ピンで塞いだこと以外は既に記載のものと同じである。
【0106】
コアを冷却して周囲温度に戻すことは製造過程において重要な工程ではないが、発明者は、シェルとコアとの間に捕捉される空気を最小限に抑えることが、シェルとコアとの間での優れた音響カップリングの確保にとって望ましいこと、及びこの工程を含めることによって、その通常の製造上の公差内でのコア及びシェルの寸法の小さな変動に起因する、得られる反射体の性能における変動傾向が軽減されることを発見した。
【0107】
別の半球体の構成を図22A、22B、23A、23Bに示す。この図において、反射体10は、2つの半球体752、754から形成されるシェル12を有する。これらの半球体のエッジは切り出しステップ756、758を有し、ステップ756は半球体752のリム760の外側に面し、ステップ758は半球体754のエッジリム762の内側に面する。これらの半分割体を接合した場合、ステップ756の深さは、ステップ758の深さより深いため、半球体を合わせると、深いほうのステップ758によって、シェルの赤道付近に厚さの薄い円周部766が形成される。2つの半球体752、754は、摩擦溶接またはレーザー溶接によって接合される。摩擦溶接を支援するために、直立タブをステップ756、758の外方エッジ及びリム760、762の切欠き部に設け得る。ベント764が、半球体の一方に含まれる。コアは、上記の段落0101〜0105に記載されるようにして形成され、シェルはコアの周囲で組み立てられ、2つの半球体は、上述のようにスピン溶接によって互いに接合される。水がシェルを通って反射体の内部に浸入し、反射体の内側と反射体の外側との間に著しい圧力差が生じると、反射体は、優先的に、厚さの薄い内方円周部で爆発的にではなく安全に破損する。
【0108】
図3の構造を採用する場合、図20〜23のベント712、764をより直径の大きい充填ホールで置き換え、上記の段落0055〜0060に記載されるようにコアを充填し、反射体を塞ぐ。
【0109】
図20〜23に図示の構造が解決に役立つ問題がある。通常、本発明の音響反射体は比較的温和な温度条件下で保管及び輸送される。しかしながら、世界には、海中(または地中)での利用前の輸送または保管中に反射体が極度の暑さにさらされる地域がある。本発明に必要とされる典型的なコア材料は典型的なシェル材料よりずっと高い膨張係数を有するため、膨張によってシェルにかなりの応力がかかる可能性があり、これはシェルの破裂につながり得る。あるいは、図3の実施形態の場合、プラグが飛び出し得る。
【0110】
臨界パラメータを、任意の地点での絶対速度ではなくコアでの平均音波速度であると認識することによって、この問題を克服できる代替のコアの構築が可能になる。一実施形態においては、コア材料をシェル内に入れず、展開した際に海水がシェルの内部に自由に進入できるように、図20、21、22、23のそれぞれにおけるベント712、764を開放したままにする。海水は、その塩分濃度に応じて約1433〜1500ms−1の音波速度を有し、シェルが真鍮または別の軟質金属(鉛等)であると、本発明の要件を満たす反射体が構築され、この反射体は動作時に堅牢でありかつ浸水または温度膨張によって引き起こされる問題にわずらわされることがない。
【0111】
シェル(Zytel(登録商標)HTN51G25HSL)の内径よりわずかに小さいプレキャストRTV12製コアを有し、また図20A、20Bに図示されるような半球状シェルを使用した音響反射体を使用して、特に良好な結果が得られている。コアは、上記の段落0101〜0104に記載されるようにして半球状シェル部材702、704内に取り付けられるが、ベント712は、封止されずに開放されたままである。装置が高温で輸送される場合、コアはシェル内で自由に膨張できることから、応力による破損が回避される。反射体を水中に入れると、水がベント712からコアとシェル内部との間に浸入することができる。それまでにコアは若干収縮していることから、コアとシェル壁との間に小さい間隙ができ、この間隙が水で満たされる。コアとシェル壁内側との間に水が存在することによって、実際に音響カップリング及び装置の性能が改善され、存在する水の量は、コア(水及びRTV12)の平均音波速度にほとんど影響しないことが判明している。
【0112】
前記の構造の場合、シェルを通っての水の浸透は問題とならない。反射体を水上に引き揚げた際に、ベントの存在によって過剰な圧力がかからないからである。これは図21及び23の722及び766で表わされる脆弱な円周領域を省略できることを意味する。この結果、より強靭な構造が得られる。
【0113】
更なる代替実施形態には、ベント712または764に続くダクトを備えた中心穴を有するコアをキャスティングし、水を外周ではなくコアの中心に入れることが含まれる。その他の代替の実施形態には、高温にさらされた際にコア材料の膨張を緩衝する少量の空気またはその他の気体の気泡をコア材料に入れることが含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを取り囲むシェルを含む音響反射体であって、
そのシェルが、シェルの表面に入射した音波がコアへと伝達される際に通過する1つまたは複数の音響ウィンドウと、コアに進入した音波を反射して音響ウィンドウの1つに戻す焦点とを有し、
コアにおける音波伝達平均速度に対するシェルにおける音波伝達速度の比が、2.5〜3.4の範囲である
ことを特徴とする音響反射体。
【請求項2】
コアにおける音波伝達平均速度に対するシェルにおける音波伝達速度の比が、2.74〜3.4の範囲である
請求項1に記載の音響反射体。
【請求項3】
コアにおける音波伝達平均速度に対するシェルにおける音波伝達速度の比が、2.74〜2.86の範囲である
請求項2に記載の音響反射体。
【請求項4】
シェルがガラス強化ポリフタルアミドを含み、コアがシリコン系エラストマーを含む
請求項3に記載の音響反射体。
【請求項5】
コアがRTV12を含む
請求項4に記載の音響反射体。
【請求項6】
シェルがアルミニウムまたはその合金を含む
請求項1に記載の音響反射体。
【請求項7】
コアがブチルエラストマーである
請求項6に記載の音響反射体。
【請求項8】
コアが、最高30体積%の炭酸カルシウムを含有するシリコンまたはブチル系エラストマーである
請求項1ないし7のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項9】
炭酸カルシウムの量が、コアにおける音波伝達平均速度に対するシェルにおける音波伝達速度の比が2.74〜3.4の範囲となるように最適化された
請求項8に記載の音響反射体。
【請求項10】
シェルが樹脂含浸ファイバーを含み、そのファイバーが、カーボンファイバー、アラミドファイバー、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)(PBO)ファイバー及びポリエチレンファイバーを含む群から選択される
求項1に記載の音響反射体。
【請求項11】
球状であり、また、シェルの厚さが、所望の反射応答周波数によって決定される
請求項1ないし10のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項12】
直径が100〜300mmである
請求項11に記載の音響反射体。
【請求項13】
直径が200mmでありかつ厚さ8.8mmのシェルを有する
請求項12に記載の音響反射体。
【請求項14】
直径が100mmでありかつ厚さ7mmのシェルを有する
請求項12に記載の音響反射体。
【請求項15】
複数の異なる入射周波数で異なる反射応答を有する
請求項1ないし14のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項16】
細長い円筒の形態である
請求項1ないし10のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項17】
細長い管状シェル(936)によって取り囲まれたコアとして機能する中心ロッド(938)を含む
請求項16に記載の音響反射体。
【請求項18】
水中のパイプ片(930)に取り付けられる
請求項17に記載の音響反射体。
【請求項19】
トロイダル形状である
請求項1ないし10のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項20】
水中の物体に取り付けられかつ洗掘モニタである
請求項1ないし17または18のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項21】
円形の断面を有し、かつ、シェル(42)にホール(48)を有し、そのホール(50)が、シェルの内側(22)より大きな直径を外側(44)に有しかつプラグ(50)で塞がれる
請求項1ないし10のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項22】
ホールの内径(58)がステップ(62)を有し、プラグ(50)が対応するステップ(64)を有する
請求項21に記載の音響反射体。
【請求項23】
対応するステップ対(62、64)間に摩擦溶接部(65)を有する
請求項22に記載の音響反射体。
【請求項24】
プラグが外部リング(66、136)を有する
請求項21ないし23のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項25】
格納容器内にある
請求項1ないし15のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項26】
格納容器が少なくとも部分的に目的の音波に対して透過性である
請求項25に記載の音響反射体。
【請求項27】
格納容器を繋ぐための少なくとも1本のつなぎ綱を更に含むことを特徴とする、請求項25または26に記載の音響反射体。
【請求項28】
格納容器がネット(148)である
請求項25ないし27のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項29】
ネットがモノフィラメントファイバーを含む
請求項28に記載の音響反射体。
【請求項30】
格納容器が円筒状のケージ(81)である
請求項25または27のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項31】
反射体を格納するために、ケージ(81)が、一対の対向するスポーク付きホイール(82、92)と、それらのホイールを連結するリンク(96)とを含み、また、ホイール(82、92)とリンク(96)との間の空間に配置される
請求項30に記載の音響反射体。
【請求項32】
リンク(96)が剛性ステイを含む
請求項31に記載の音響反射体。
【請求項33】
リンクがモノフィラメントファイバーを含む
請求項31に記載の音響反射体。
【請求項34】
モノフィラメントファイバーの直径が0.25〜2.25mmである
請求項29または33に記載の音響反射体。
【請求項35】
連結手段(152)によって少なくとも1つの別の音響反射体に連結される
請求項1ないし34のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項36】
格納容器が、ロープ、ケーブルまたはチェーンによって少なくとも1つの別の音響反射体の格納容器に連結される
請求項35に記載の音響反射体。
【請求項37】
浮力補助具が格納容器に取り付けられる
請求項25ないし36のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項38】
シェルが互いに接合された2つの半分割体を含む
請求項1ないし37のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項39】
シェルの半分割体が、内圧への耐性が低い領域をその接合部に有する
請求項38に記載の音響反射体。
【請求項40】
球状であり、また、シェルが2つの半球体を含む
請求項38に記載の音響反射体。
【請求項41】
2つの半球体がその間に溶接部を有する
請求項40に記載の音響反射体。
【請求項42】
溶接部がスピン溶接部である
請求項41に記載の音響反射体。
【請求項43】
シェルの半分割体が、内圧への耐性が低い領域をその接合部に有する
請求項40ないし42のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項44】
半球体の一方がそのリムにタングを有し、もう一方の半球体がそのリムにグルーブを有し、タングがグルーブと係合する
請求項40ないし42のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項45】
タングが、グルーブの幅の一部を占める
請求項44に記載の音響反射体。
【請求項46】
リム、タング及びグルーブが最初は直立タブを有する
請求項44または45に記載の音響反射体。
【請求項47】
2つの半球体の間の溶接部が、タブからの溶融し固化した材料を含む
請求項41に記載の音響反射体。
【請求項48】
リム、タング及びグルーブが最初は直立タブを有し、溶融し固化した材料がタングとグルーブ壁との間の空間にも形成される
請求項47に記載の音響反射体。
【請求項49】
シェルが、そのリムに段状部を有する2つの半球体を含み、一方のリムの段状部がリムの外側に面し、もう一方のリムの段状部がリムの内側に面し、その段状部が組み立てられたシェル内で互いに重なる
請求項38ないし43のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項50】
半分割体の一方がベントホールを有する
請求項38ないし49のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項51】
ベントホールが封止される
請求項50に記載の音響反射体。
【請求項52】
シェルが円周に脆弱な領域を有する
請求項38ないし51のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項53】
脆弱な領域が50〜100MPでの破損モードを有する
請求項52に記載の音響反射体。
【請求項54】
ベントが封止されない
請求項51に記載の音響反射体。
【請求項55】
コアが水である
請求項54に記載の音響反射体。
【請求項56】
シェルが真鍮または鉛から選択される
請求項55に記載の音響反射体。
【請求項57】
コアの一部が、温和な環境においてシェルの内部より若干小さい直径のキャストエラストマーであり、水に沈めると水がコアの残りを構成し得る
請求項50に記載の音響反射体。
【請求項58】
コアの一部が、エラストマーであり、また、コアが周囲環境につづく通り道を備えた中空の中心部を有し、その通り道を通って水が中空の中心部に出入りし得る
請求項50に記載の音響反射体。
【請求項59】
コアがガスの気泡を取り込む
請求項50または51に記載の音響反射体。
【請求項60】
シェルに入射した音波の一部がシェル壁に結合し、シェルの円周に沿ってシェル壁内を焦点にまで誘導され、元々のコアを横断した音波と焦点で合わさり、合わさった音波がコアを通ってシェルに戻って入射音波とは反対の方向でシェルから再放射される
請求項1ないし59のいずれかに記載の音響反射体。
【請求項61】
コアを取り囲むシェルを含む音響反射体の製造方法であって、
最初にコア(46)にコア材料をシェル(42)のホール(48)を通して粗く充填し、硬化させ、コア材料を更に注ぎ足し、再度硬化させ、余分なコア材料を除去し、プラグを挿入する
ことを特徴とする音響反射体の製造方法。
【請求項62】
プラグをホールに摩擦溶接する工程を含む
請求項61に記載の音響反射体の製造方法。
【請求項63】
請求項1に記載の音響反射体の製造方法であって
シェルを2つの半分割体からコアの周囲で互いに接合する工程を含む
ことを特徴とする音響反射体の製造方法。
【請求項64】
2つの半球体を球状のコアの周囲で互いに接合する工程を含む
請求項63に記載の球状音響反射体の製造方法。
【請求項65】
一方の半球体のリム上のタングを、もう一方の半球体のリム上のグルーブと係合させる工程を含む
請求項64に記載の音響反射体の製造方法。
【請求項66】
2つの半球体を互いにスピン溶接する工程を更に含む
請求項64または65に記載の音響反射体の製造方法。
【請求項67】
一方の半球体のリム上に形成されたタングを、もう一方の半球体のリム上に形成されたグルーブ内で回転させる工程を含む
請求項64ないし66のいずれかに記載の音響反射体の製造方法。
【請求項68】
タング、グルーブ及びリム上の直立タブを互いに溶融させることによって溶接部を形成する工程を含む
請求項67に記載の音響反射体の製造方法。
【請求項69】
タング、グルーブ及びリム上の直立タブをタングとグルーブとの間の空間へと溶融させる工程を含む
請求項68に記載の音響反射体の製造方法。
【請求項70】
コアを反射体内で展開した場合の形状及びサイズに調製する工程と、
そのコアを展開時の温度より低い温度の場所に置く工程と、
コアの略全体をその温度に到達させる工程と、
コアをその場所から取り出す工程と、
コアをシェルの2つの半分割体の間に置く工程と、
シェルの2つの半分割体を互いに接合する工程と含む
請求項63ないし69のいずれかに記載の音響反射体の製造方法。
【請求項71】
コアがエラストマー材料であり、最初はシェルの内径の一部より若干大きい直径に形成される
請求項70に記載の音響反射体の製造方法。
【請求項72】
半分割体の一方のベントから空気を放出し、次にそのベントを封止する工程を含む
請求項63ないし71のいずれかに記載の音響反射体の製造方法。
【請求項73】
最初にコアにコア材料をシェルのホールを通して粗く充填し、硬化させ、コア材料を更に注ぎ足し、再度硬化させ、余分なコア材料を除去し、プラグを挿入する
請求項63ないし71のいずれかに記載の音響反射体の製造方法。
【請求項74】
プラグをホール内で摩擦溶接する工程を含む
請求項73に記載の音響反射体の製造方法。
【請求項75】
少なくとも部分的に水中で展開される物体であって、
請求項1ないし60のいずれかに記載の少なくとも1つの音響反射体が取り付けられている
ことを特徴とする物体。
【請求項76】
水中での物体の周囲での洗掘をモニタする方法であって、
請求項1ないし60のいずれかに記載の少なくとも1つの音響反射体を物体に取り付け、その音響反射体を、洗掘によって反射体を露出させ、音響ビームによる問い合わせによって反射体が検出されるように、関連する水塊の底の自然な高さより下に位置決めすることを含む
ことを特徴とする洗掘モニタ方法。
【請求項77】
少なくとも部分的に地中で展開される物体であって、
請求項1ないし60に記載の少なくとも1つの音響反射体が取り付けられている
ことを特徴とする物体。
【請求項78】
ガスパイプラインを検出する方法であって、
請求項1ないし60に記載の1つまたは複数の音響反射体をガスパイプライン上またはその近傍に設置し、その反射体に音響伝送で問い合わせを行い、その反射体からの反射信号を受信する工程を含む
ことを特徴とするガスパイプライン検出方法。
【請求項79】
音響マーカーシステムであって、
異なる反射特性を有する請求項1ないし60のいずれかに記載の少なくとも2つのパッシブ音響反射体を含む
ことを特徴とする音響マーカーシステム。
【請求項80】
各音響反射体が略球状であり、少なくとも1つの球体が少なくとも1つの別の球体とは異なる断面を有する
請求項79に記載の音響マーカーシステム。
【請求項81】
互いに近接して位置決めされた3つの反射体のセットを含み、3つの反射体のうちの2つの反射体(214)の直径が同じであり、3つ目の反射体(216)が異なる直径を有する
請求項80に記載の音響マーカーシステム。
【請求項82】
第3の反射体(216)が取り付け台(210)に残りの2つの反射体(214)と共に取り付けられ、その2つの反射体(214)が、直径がより大きい第3の反射体(216)の両側に取り付けられる
請求項81に記載の音響マーカーシステム。
【請求項83】
請求項1ないし60のいずれかに記載の音響反射体のセットであって、
各反射体(001〜007)が1つ以上の特徴的な周波数(316、318、320)を反射し、その1つ以上の特徴的な周波数が、ある反射体を残りの反射体から一意的に識別する
ことを特徴とする音響反射体セット。
【請求項84】
各反射体が球状であり、どの反射体も互いに同じ直径を有していない
請求項83に記載のパッシブ音響反射体のセット。
【請求項85】
請求項1ないし60のいずれかに記載の音響反射体と、関連する問い合わせ装置とのセットであって、
各反射体(001〜007)が1つ以上の特徴的な周波数(316、318、320)を反射し、問い合わせ装置がその全ての特徴的な周波数で選択的に音響放射を伝送する
ことを特徴とする音響反射体問い合わせ装置セット。
【請求項86】
水中の物体を検出するための音響検出装置の能力をキャリブレートする方法であって、
一連の音響反射体を、キャリブレートする検出装置からの距離を増大させながら分布させ、それらの反射体に音響信号で問い合わせを行い、反射信号が検出できる最大範囲までマークする反射体を特定する
ことを特徴とする音響検出装置キャリブレート方法。
【請求項87】
ソナーのオペレータを訓練する方法であって、
請求項1ないし60のいずれかにそれぞれ記載の1つまたは複数の音響反射体を、オペレータを訓練する範囲に利用する工程を含む
ことを特徴とするソナーオペレータ訓練方法。
【請求項88】
複数の音響反射体を敷設する方法であって、
請求項1ないし60のいずれかに記載の複数の音響反射体を水域に送り出す工程を含む
ことを特徴とする音響反射体敷設方法。
【請求項89】
1つ以上の音響反射体の位置を曳航ソナーを使用して検出する工程を含む
請求項88に記載の音響反射体敷設方法。
【請求項90】
船舶の音響信号を減衰させる方法であって、
船舶に近接させて複数のパッシブ音響反射体を展開する工程を含み、
各反射体が請求項1ないし60のいずれかに記載の反射体である
ことを特徴とする船舶音響信号減衰方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【公表番号】特表2013−500493(P2013−500493A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522249(P2012−522249)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051161
【国際公開番号】WO2011/012877
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(511168224)サブシー アセット ロケーション テクノロジーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】