説明

音響波測定装置

【課題】音響波変換器と圧迫プレートの間の潤滑剤の状態を適切に保ち、測定の信頼性を向上するための技術を提供する。
【解決手段】音響波測定装置が、被検体に押し当てられるプレートと、前記被検体から発生する音響波を前記プレートを介して受信して電気信号に変換する音響波変換器を有するプローブと、前記音響波変換器の周囲を囲むように前記プローブに設けられ、前記プレートと前記音響波変換器の間に潤滑剤を保持するための空間を形成するシール材と、前記シール材で形成された前記空間内に潤滑剤を供給する供給手段と、前記プレートと前記音響波変換器の間が潤滑剤で満たされているか否かを検知する潤滑剤監視手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波などの音響波を測定するための装置に関し、特に、生体の内部観察に利用される音響波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音響波を用いた診断装置としては、音響波を対象物に照射し、その反射波を映像化することで、対象物内部を撮像する生体内部観察装置が知られている。このような生体内部観察装置には、音響波を発振し、その反射波(エコー)を受信して信号を出力する音響波プローブが用いられる。このプローブで受信した音響波を電気信号に変換し、画像を生成して表示する。
【0003】
また、最近では、光音響効果を利用した光音響トモグラフィー(PAT:Photo Acoustic Tomography)の診断システムの開発が進められている。この装置では、圧迫プレート
と音響波プローブで被検体(乳房)を圧迫し、圧迫プレート越しにNd:YAGレーザを光源とする照明光(近赤外線)を乳房に照射する。そして被検体(乳房)内部で発生する光音響波をプローブで受信し、被検体(乳房)内部の組織、特に乳がんにおける新生血管を画像再構成して表示する。
【0004】
このような生体内部から発せられる音響波を測定する装置では、音響インピーダンスの整合をとるため、音響波が伝達する部材間に隙間が生じないような(空気が入らないような)構成にしなければならない。
【0005】
図10Aは、特許文献1に開示されている超音波プローブの構造を示している。このプローブでは、超音波変換器1と圧迫プレート2との間に潤滑剤を満たすために、潤滑剤を含浸させたスポンジ3を変換器1とカバー4の間に具備している。これにより、変換器1が圧迫プレート2に沿って移動するときに潤滑剤の薄い膜が形成され、変換器1と圧迫プレート2とが密着する。
【0006】
図10Bは、特許文献2に開示されている超音波プローブの構造を示している。このプローブ12は、超音波変換器5、ゲルを収納する収納部7、音響レンズ9、噴出口6、送出管10、ポンプ11を備える。ポンプ11により収納部7内のゲルが送出管10を通じて噴出口6から噴出される。これにより、被検体と音響レンズ9の間にゲルが満たされ、密着性が向上する。また、特許文献2には、図10Cに示すように、超音波プローブ12の外に、ポンプ13とゲルを収納する収納部14を設ける構成も開示されている。ポンプ13が稼働することで、送出チューブ15を通じて、ゲルがプローブ12に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−325523号公報
【特許文献2】特開2004−141260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の構成では、潤滑剤の残量不足や送出管の詰まりなどの原因で潤滑剤の供給がうまくいかなかった場合に、潤滑剤不足による密着性の低下が生じるおそれがある。また超音波プローブを移動させたときに潤滑剤が流出し、十分な密着性が得られない可能性もある。もし測定中に音響波変換器と圧迫プレートの間に隙間が発生すると、測定結果の信
頼性が低下するため好ましくない。しかしながら、従来の構成では、潤滑剤の供給不良を発見することができなかった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、音響波変換器と圧迫プレートの間の潤滑剤の状態を適切に保ち、測定の信頼性を向上するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る音響波測定装置は、被検体に押し当てられるプレートと、前記被検体から発生する音響波を前記プレートを介して受信して電気信号に変換する音響波変換器を有するプローブと、前記音響波変換器の周囲を囲むように前記プローブに設けられ、前記プレートと前記音響波変換器の間に潤滑剤を保持するための空間を形成するシール材と、前記シール材で形成された前記空間内に潤滑剤を供給する供給手段と、前記プレートと前記音響波変換器の間が潤滑剤で満たされているか否かを検知する潤滑剤監視手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、音響波変換器と圧迫プレートの間の潤滑剤の状態を適切に保ち、測定の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の音響波測定装置のブロック図。
【図2】音響波測定装置の斜視図。
【図3】実施例1の音響波プローブの斜視図。
【図4】音響波プローブの断面図。
【図5】測定前準備処理の流れを示すフローチャート。
【図6】測定中の潤滑剤の監視処理の流れを示すフローチャート。
【図7】測定中における音響波プローブの軌道線図。
【図8】実施例2の音響波プローブの斜視図。
【図9】実施例2の音響波測定装置のブロック図。
【図10】従来の超音波プローブの構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施例1>
以下、本発明に係る音響波測定装置の好適な実施例について、図面を参照しながら説明する。
本発明の音響波測定装置は、生体内部から発生する音響波を受信して電気信号に変換し、その信号から生体内部の情報(断層像、光学特性値分布など)を取得するために利用される装置である。この音響波測定装置は、例えば、超音波エコーを用いた超音波診断装置や光音響トモグラフィー装置(PAT)などの生体内部観察装置に好ましく適用可能である。以下、音響波を受信する部分の構成を主に説明する。なお、音響波としては、典型的には超音波が用いられるが、超音波よりも低い周波数の可聴域の弾性波を用いてもよい。
【0014】
(音響波測定装置)
図1は、実施例1の音響波測定装置の概要構成を示している。図2は、音響波測定装置の斜視図である。
【0015】
図1において、音響波プローブ16(以下、単に「プローブ16」ともよぶ)は、2軸の駆動ユニット18に取り付けられており、固定された圧迫プレート17の表面に沿って2次元的に移動可能である。圧迫プレート17は、測定対象となる被検体に押し当てられ
るプレートである。音響波プローブ16は、被検体から発生する音響波を圧迫プレート17を介して測定する音響センサを備えている。音響センサとしては、音響波と電気信号の間の変換を行う音響波変換器19を用いることができる。音響波変換器19(以下、単に「変換器19」ともよぶ)は、圧電現象を用いたトランスデューサ、光の共振を用いたトランスデューサ、容量の変化を用いたトランスデューサなどを用いることができ、複数の振動子(トランスデューサ)を1次元又は2次元に配列したトランスデューサ・アレイを用いてもよい。生体から音響波変換器19までの音響インピーダンスの整合をとるため、圧迫プレート17の材質は樹脂が好ましく、特にポリメチルペンテンが好適である。
【0016】
プローブ16は、変換器19の周囲を囲むシール材21を有している。このシール材21により、圧迫プレート17と変換器19の間に潤滑剤を保持するための空間22が形成される。プローブ16には、潤滑剤を空間22内に供給するための送出口23が形成されている。タンク24に収納されている潤滑剤を供給手段であるポンプ25で配管29を経て送出する。潤滑剤は脱気したものが好ましく、例えば、油、水、音響ジェルなどを潤滑剤として用いることができる。油の場合は、ひまし油が好適である。タンク24の材質は、ポリエチレン、ステンレスなどが適用できる。ただし、絶縁体の潤滑剤を循環させると静電気を帯電する場合があるので、ステンレス材質のタンクにアース線を付けてグランドに落とせる構成が好ましい。また、潤滑剤を送出する配管29についても、材質はポリエチレンでもステンレスでも良いが、ステンレス材質にしてアース線でグランドに落とせる構成が好ましい。また、タンク24には、異常な液漏れで潤滑剤が減った場合に感知する、図示しない液面監視手段が具備されている。液面を監視する手段としては、フロー式、光学式、超音波など、潤滑剤が絶縁体においても感知できるものが良い。
【0017】
タンク24から送出された潤滑剤は、温度制御系26、バルブ27、フィルタ28を経て、送出口23から空間22に供給される。温度制御系26は、送出される潤滑剤の温度を測定する機能と、所定の温度になるよう潤滑剤を加熱又は冷却する機能を具備している。これにより、潤滑剤、音響波変換器19などの温度条件の変動が抑制されるので、安定した測定をすることが出来る。バルブ27は、潤滑剤の流量・圧力を調整するためのものである。フィルタ28は、潤滑剤が循環する間で混入したゴミが空間22に入り込まないように、ゴミを除去する機能である。例えばメッシュ構造のフィルタを用いることができる。これにより、ゴミによる測定ノイズの発生や、変換器19及び圧迫プレート17の傷つきを抑制することができる。
【0018】
測定時には、圧迫プレート17、変換器19、シール材21で形成された空間22(少なくとも、圧迫プレート17と変換器19の間の部分)が潤滑剤で満たされるようにする。本実施例では、プローブ16に設けた潤滑剤監視手段によって、空間22内が適量の潤滑剤で満たされているか否かを検知する。
【0019】
潤滑剤監視手段は、音響波変換器19が兼ねることができる。振動子(トランスデューサ)と圧迫プレート17の間に潤滑剤がない場合は、音響波を受信できなかったり、音響波の受信レベルが著しく低下する。これを潤滑剤の検知に利用するのである。例えば、音響波変換器19の最上列の振動子を潤滑剤監視手段として利用し、その振動子で音響波を検出できるか否かで潤滑剤が適量か否かを判断してもよい。また、音響波変換器19の全ての振動子で同等レベルの音響波を検出できたときには、潤滑剤が適量(空間22内が潤滑剤で満たされている)と判断し、音響波の受信レベルが振動子ごとに大きくばらついている場合には、潤滑剤の供給状態が適切でない(潤滑剤不足)と判断することもできる。潤滑剤に気泡が混入すると、その気泡の部分の振動子の受信レベルが低下することから、音響波変換器19を気泡の監視に用いることもできる。
【0020】
あるいは、音響波変換器19とは別に、潤滑剤監視手段としての専用のセンサーを設け
てもよい。図1の例では、変換器19の上方に液面センサー20が配置されている。この液面センサー20により、空間22内の潤滑剤が音響波変換器19よりも高い位置まで満たされているかどうかを検知するのである。液面センサー20としては、光学式、超音波式、静電容量式、フロート式などいかなるタイプのセンサーを用いてもよく、潤滑剤の種類に応じて適切なタイプを選択すればよい(例えば、絶縁性の潤滑剤に対しては光学式や超音波式が好ましい)。
【0021】
圧迫プレート17の下部には、シール材21から空間22の外に漏れ出た潤滑剤を回収する回収手段としての回収系48が設けられている。本実施例の回収系48は、圧迫プレート17を伝い落ちる潤滑剤を受ける受け容器48a(図2参照)と、受け容器48aとタンク24を接続する配管とから構成される。測定中に、シール材21から漏れ出た潤滑剤は、回収系48で回収しタンク24に循環させる。なお、空間22の形状及び体積は、プローブ16の移動に伴い潤滑剤が漏れ出たとしても、測定開始から終了までの間は圧迫プレート17と変換器19の間を十分に満たす程度の潤滑剤が残るように、設計されている。具体的には、実験又は計算により、プローブ16が測定の初期位置から終了位置に移動するまでの間に漏れ出る潤滑剤の最大量を見積もり、その量を減じても潤滑剤の液面が変換器19よりも上になるように空間22の形状及び体積を設計すればよい。測定が終了した後は、バルブ49を開放することで、空間22内の潤滑剤が回収口39から配管56を経てタンク24へと回収される。
【0022】
図2に示すように、2枚の圧迫プレート17、51が平行に配置されている。圧迫プレート17は、固定プレート55に固定され、圧迫プレート51は、固定プレート52に固定されている。固定プレート55、52は、ガイドロッド53とリニアガイド54により平行移動自在に設けられている。被検体の測定部位を圧迫プレート17と圧迫プレート51との間に入れて、図示していない圧迫機構、例えば、台形ネジとかさ歯車による機構や、エアシリンダ機構などで圧迫プレート17、51の間隔を制御し、測定部位を挟む。音響波の送受信だけならば駆動ユニット18aでプローブ16を圧迫プレート17に沿って移動させる。駆動ユニット18aの構成は、モータとボールネジとガイドからなる構成でもよいし、モータとギヤとベルトリンクからなる構成でもよいし、空気シリンダとガイドからなる構成でもよい。また、光音響効果を用いた測定をする場合には、パルス光を照射する光源50を駆動ユニット18bに取り付ける。駆動ユニット18a、18bを同期制御することで、光源50と音響波プローブ16を被検体を挟んで対向配置させ、光源50から発した光により被検体内で発生した音響波をプローブ16で測定する。
【0023】
(音響波プローブ)
次に、図3、図4A〜図4Cを参照して、音響波プローブの構成について詳しく説明する。図3は、音響波プローブの斜視図である。図4A〜図4Cは、それぞれ、音響波プローブの詳細断面図である。
【0024】
図3に示すように、音響波プローブ16の測定側の面には、音響波変換器(音響センサ)19の周囲を取り囲むようにシール材21が設けられている。そして、シール材21で囲まれた空間の下部には、潤滑剤を供給するための送出口23と潤滑剤を回収するための回収口39が設けられ、上部には、液面センサー20が設けられている。シール材21の上部には、潤滑剤に混入した空気を逃がすための開口45が形成されている。シール材21としては、ゴム、多孔質材(スポンジ)、皮革、樹脂などの材質からなるパッキンを用いることができる。
【0025】
図4Aは、シール材21aとしてOリングを使用した例を示している。音響波変換器19の周囲に凹溝が形成され、その凹溝内に環状のOリングが設けられている。Oリングの代わりに、リップパッキン、スポンジパッキンなどを用いてもよい。図4Bは、シール材
21bとしてホッティーポリマー株式会社のシリコーントリムHR−06を使用した例である。このシール材21bの先端部44は鋭角形状になっていると共に、内部が中空であるため、圧迫プレート17に対する押し圧が小さくても先端部44が潰れて良好な密着性を発揮する。また、先端部44の潰れが、圧迫プレート17とプローブ16の距離の変動を吸収するため、圧迫時のひずみにより圧迫プレート17が約5mm程度変形しても密着性を保つことができる。例えば、圧迫プレート17と変換器19の平行度が0.5mm以下の時、シール材21bの先端部44を約0.2mm潰す程度で、変換器19を200mm/secで移動させても潤滑剤でのマッチングが保てる。また、シール材21bと圧迫プレート17との界面からの気泡の混入もない。図4Cは、さらに好ましい形態を示している。図4Cでは、変換器19側に傾斜した傾斜部46にシール材21bを取り付けることで、シール材21bの先端部44を傾斜させている。この構成によると、潤滑剤に気泡が入り込んだときに、傾斜に沿って気泡を変換器19と圧迫プレート17の間から逃がすことが容易になる。
【0026】
(測定及び制御方法)
次に、図5、図6、図7を参照して、本実施例の装置による測定及び制御方法について説明する。図5は、測定前準備処理の流れを示すフローチャートである。図6は、測定中の潤滑剤の監視処理の流れを示すフローチャートである。図7は、測定中における音響波プローブの軌道線図を示している。
【0027】
以下で述べる処理は、図1の制御部100によって実行されるものである。制御部100は、マイクロコントローラ又はコンピュータで構成され、駆動ユニット18、ポンプ25、温度制御系26、バルブ49などの制御を担う制御手段である。また、潤滑剤監視手段の検知結果、温度制御系26で測定した潤滑剤温度などの情報は制御部100に入力され、潤滑剤の供給や温度の制御に利用される。
【0028】
図5に示すように、測定前準備として、まず制御部100は潤滑剤監視手段の検知結果に基づき、空間22に潤滑剤が満たされているか否かを確認する(ステップS30)。空間22に潤滑剤が満たされていることが確認されれば、測定前準備は完了である。ステップS30において、空間22に潤滑剤が入っていないと確認された場合、制御部100はポンプ25を駆動し、空間22に潤滑剤を供給する(ステップS31)。その後、制御部100は、潤滑剤監視手段の検知結果から、空間22内に潤滑剤が満たされたことを検知したら(ステップS32)、ポンプ25を停止する(ステップS33)。以上の測定前準備処理によって、圧迫プレート17と音響波変換器19の間の空間22を適量の潤滑剤で満たすことができ、良好な測定を行うための準備が整う。
【0029】
制御部100は、測定中においても、空間22内の潤滑剤が適量か否かを常に監視する。具体的には、制御部100は、図6の処理を定期的に繰り返し実行する。すなわち、制御部100は、一定の時間間隔で潤滑剤監視手段の検知結果を取り込み、空間22が潤滑剤で満たされていないことを検知したら(ステップS34)、ポンプ25を駆動して潤滑剤を供給する(ステップS35)。そして、制御部100は、潤滑剤監視手段の検知結果から、空間22内に潤滑剤が満たされたことを確認すると(ステップS36)、ポンプ25を停止する(ステップS37)。このように潤滑剤の量を監視・制御することで、変換器19と圧迫プレート17の間の潤滑剤の状態を適切に保つことができ、信頼性の高い測定が可能となる。また、ポンプ25を連続で駆動させることがないので、電気ノイズの低減や消費電力の低減などの効果があると共に、患者の不安を誘うポンプの騒音を最小限に抑えることができる。
【0030】
図7の矢印47は、測定時における音響波プローブ16の移動の軌跡を示している。プローブ16は、測定初期段階において、測定範囲の最上部側端に位置している。測定が開
始されると、矢印47に示すように、プローブ16は水平方向に移動しながら1ラインのスキャンを行うと、1ライン下に移動して水平方向逆向きに移動しながら次ラインのスキャンを行う。この動作を繰り返し、上から順番に1ラインずつスキャンする。そして、プローブ16が終了位置に到達すると、初期位置に戻る。空間22内の潤滑剤に気泡が混入していた場合、プローブ16が上から下に移動するときに開口45から気泡を逃がすことができる。
【0031】
音響波変換器19は、受信した音響波を電気信号に変換し、画像生成部42へと出力する。画像生成部42は、その信号に基づいて生体内部の情報を表す画像を生成する。なお、音響波信号から生体内部の情報を構成する手法については、従来知られているものを利用可能であるため、ここでは詳しい説明を省略する。画像生成部42で生成された画像は表示系43に出力される。
【0032】
以上述べた本実施例の構成によれば、潤滑剤の供給不良を防止し、音響波変換器19と圧迫プレート17の間の潤滑剤の状態(量)を適切に保つことができると共に、潤滑剤に混入した気泡を速やかに除去することができる。したがって、信頼性の高い音響波測定を実現することができる。また、シール材21によって変換器19の周囲を囲い、潤滑剤が充填される空間22を形成したので、プローブ16を高速移動させても変換器19と圧迫プレート17の密着性を保ち、安定した測定が可能である。また潤滑剤が圧迫プレート17と変換器19の間に常に介在することで、摩擦による傷発生を防ぐこともできる。さらに、シール材21から漏れた潤滑剤や空間22内の潤滑剤を回収・循環させる構成を設けたので、潤滑剤の無駄がなくなり経済的である。
【0033】
<実施例2>
図8、図9を参照して、実施例2の音響波測定装置について説明する。図8は、本実施例の音響波プローブの斜視図であり、図9は、本実施例の音響波測定装置の概要構成を示すブロック図である。実施例1では、気泡を逃がすための開口をシール材の上部に設けているのに対し、実施例2では、シール材で形成した空間内の潤滑剤を循環させる循環手段によって気泡を除去する。
【0034】
本実施例の音響波プローブ16は、空間22の上部に潤滑剤の回収口57を有している。この回収口57は配管58を介してタンク24につながっている。その他の構成は実施例1の図1の構成と同じである。
【0035】
図8に示すように、回収口57から潤滑剤を回収することで、空間22内に、矢印60で示すような下から上への潤滑剤の流れが形成される。圧迫プレート17と変換器19との間に気泡が混入した場合には、下から上への潤滑剤の流れ60を作ることで気泡を除去することが可能である。
【0036】
測定及び制御方法に関しては、実施例1とほぼ同様であるが、例えば、潤滑剤に入り込んだ気泡を断続的に抜く必要がある場合は、測定開始からポンプ25を連続稼動させる。また、連続でポンプ25を稼動させる必要がない場合には、音響波変換器19の各振動子で気泡を監視し、気泡を検知したらポンプ25を駆動して潤滑剤を循環させるようにしてもよい。
【0037】
以上述べた本実施例の構成によれば、潤滑剤に入り込んだ気泡を確実に除去することができる。これにより、測定の信頼性及び安定性を向上できる。
【符号の説明】
【0038】
16:音響波プローブ、17:圧迫プレート、19:音響波変換器、20:液面センサ
ー(潤滑剤監視手段)、21:シール材、22:空間、25:ポンプ(供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に押し当てられるプレートと、
前記被検体から発生する音響波を前記プレートを介して受信して電気信号に変換する音響波変換器を有するプローブと、
前記音響波変換器の周囲を囲むように前記プローブに設けられ、前記プレートと前記音響波変換器の間に潤滑剤を保持するための空間を形成するシール材と、
前記シール材で形成された前記空間内に潤滑剤を供給する供給手段と、
前記プレートと前記音響波変換器の間が潤滑剤で満たされているか否かを検知する潤滑剤監視手段と、
を備えることを特徴とする音響波測定装置。
【請求項2】
前記潤滑剤監視手段が前記プレートと前記音響波変換器の間が潤滑剤で満たされていないことを検知した場合に、前記供給手段が前記空間内に潤滑剤を供給することを特徴とする請求項1に記載の音響波測定装置。
【請求項3】
前記音響波変換器が前記潤滑剤監視手段を兼ねることを特徴とする請求項1又は2に記載の音響波測定装置。
【請求項4】
前記潤滑剤監視手段は、前記空間内の潤滑剤が前記音響波変換器よりも高い位置まで満たされているか否かを検知する液面センサーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の音響波測定装置。
【請求項5】
前記シール材は、ゴム、多孔質材、皮革、又は樹脂からなるパッキンであることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の音響波測定装置。
【請求項6】
前記シール材から前記空間の外に漏れ出た潤滑剤を回収し、前記供給手段へと循環させる回収手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の音響波測定装置。
【請求項7】
前記シール材は、前記空間内の潤滑剤に混入した空気を前記空間から逃がすための開口を備えることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の音響波測定装置。
【請求項8】
前記空間内の潤滑剤を循環させることにより前記空間内の潤滑剤に混入した空気を除去する循環手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の音響波測定装置。
【請求項9】
前記供給手段によって前記空間内へ供給される潤滑剤の温度を所定の温度に制御する温度制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の音響波測定装置。
【請求項10】
前記シール材の先端部が前記音響波変換器の側に傾斜していることを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の音響波測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−103913(P2011−103913A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258930(P2009−258930)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】