説明

音響特性制御ボード装置及びそれを用いた空間装置並びに音響特性制御方法

【課題】従来例に比較して簡単であって、例えば室内などの空間の音響特性を容易に制御する。
【解決手段】音響特性制御ボード装置10において、入射する音又は振動波に対して所定の反射性を有する第1の材料と、入射する音又は振動波に対して所定の吸収性を有する第2の材料の少なくとも一方をボードの片面又は両面の少なくとも一部に形成してなる音響制御ボードを、複数の面により形成されてなる空間の面から所定の間隔だけ離隔して当該空間内に配置することにより、当該空間の音響特性を制御する。また、上記音響制御ボードを1次元又は複数次元で移動し又は回転することにより、当該空間の音響特性をさらに制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間の音響特性を制御するための音響特性制御ボード装置及びそれを用いた空間装置並びに音響特性制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば音響スタジオなどの空間の音響特性を制御するために、様々な反射性や吸音性をもつ室内内面を構成する技術が開発されてきており、壁面建築時に壁面内部や天井裏に吸音材を装填する技術が用いられてきた(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−075193号公報。
【特許文献2】特開平9−313610号公報。
【非特許文献1】豊島政実,「最近のスタジオ設計」,JAS Journal,日本オーディオ協会,Vol.39,No.9,pp.27,1999年。
【非特許文献2】日本音響材料協会編,「建築音響工学ハンドブック」,技報堂,pp.252,pp.275,1963年。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術の室内内面構成技術では、壁及び天井の表面や、壁及び天井そのものを構成する素材が限定されるという限界がある。そのため、例えばガラス面が大部分を占める壁面や天井面に対して音響特性制御を加えることは困難であり、視覚的開放性に大きな限界がある。また、上述の従来技術の室内内面構成技術の実現のためには大規模な工事が必要となる。そのため、調整しながら望ましい空間音響特性を設定することや、すでに建築が完了している壁や天井をもつ空間に対して音響特性制御を加えることは困難である。従って、建築された室内内面の構成素材にかかわらず空間の音響特性をフレキシブルに制御することを可能にする新しい室内内面構成技術の開発が必要である。
【0005】
これを解決するために、室内で音響再生を行った際、定在波を発生を抑制し、音響的に優れた音場を形成するための音響再生装置が例えば特許文献1において開示されている。この従来例に係る音響再生装置においては、音響再生用の主音源を設置し、プログラム再生装置からの出力信号を主音源用増幅装置によって増幅した後、主音源に入力する。また、プログラム再生装置の出力信号を分岐して制御手段に入力し、制御手段で位相、振幅、周波数成分を制御して出力し、副音源用増幅装置で増幅した後、主音源1に対向する位置に設置した副音源に入力して、この副音源を駆動させ、主音源の駆動によって発生した定在波と位相特性が逆になる波形が発生するように制御して、主音源の定在波を抑制し、音響的に優れた音場を形成することを特徴としている。しかしながら、当該従来例に係る音響再生装置では、複数の音源を必要とし、システムがかなり複雑になるという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来例に比較して簡単であって、例えば室内などの空間の音響特性を容易に制御することができる音響特性制御ボード装置及びそれを用いた空間装置並びに音響特性制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る音響特性制御ボード装置は、入射する音又は振動波に対して所定の反射性を有する第1の材料と、入射する音又は振動波に対して所定の吸収性を有する第2の材料の少なくとも一方をボードの片面又は両面の少なくとも一部に形成してなる音響制御ボードを、複数の面により形成されてなる所定の空間装置の面から所定の間隔だけ離隔して当該空間装置内に配置することにより、当該空間装置の音響特性を制御する配置手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記音響特性制御ボード装置において、上記第1の材料又は上記第2の材料は、入射する音又は振動波の周波数に応じて反射姓又は吸収性を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記音響特性制御ボード装置は、上記音響制御ボードを1次元又は複数次元で移動し又は回転することにより、当該空間装置の音響特性をさらに制御する移動手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
第2の発明に係る空間装置は、複数の面により形成されてなる空間装置において、上記音響特性制御ボード装置を備えたことを特徴とする。
【0011】
第3の発明に係る音響特性制御方法は、入射する音又は振動波に対して所定の反射性を有する第1の材料と、入射する音又は振動波に対して所定の吸収性を有する第2の材料の少なくとも一方をボードの片面又は両面の少なくとも一部に形成してなる音響制御ボードを、複数の面により形成されてなる所定の空間装置の面から所定の間隔だけ離隔して当該空間装置内に配置することにより、当該空間装置の音響特性を制御するステップを含むことを特徴とする。
【0012】
上記音響特性制御方法において、上記第1の材料又は上記第2の材料は、入射する音又は振動波の周波数に応じて反射姓又は吸収性を有することを特徴とする。
【0013】
また、上記音響特性制御方法は、上記音響制御ボードを1次元又は複数次元で移動し又は回転することにより、当該空間装置の音響特性をさらに制御するステップをさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
従って、本発明に係る音響特性制御ボード装置及びそれを用いた空間装置並びに音響特性制御方法によれば、入射する音又は振動波に対して所定の反射性を有する第1の材料と、入射する音又は振動波に対して所定の吸収性を有する第2の材料の少なくとも一方をボードの片面又は両面の少なくとも一部に形成してなる音響制御ボードを、複数の面により形成されてなる所定の空間装置の面から所定の間隔だけ離隔して当該空間装置内に配置することにより、当該空間装置の音響特性を制御する配置手段を備える。ここで、上記第1の材料又は上記第2の材料は、入射する音又は振動波の周波数に応じて反射姓又は吸収性を有する。さらに、上記音響制御ボードを1次元又は複数次元で移動し又は回転することにより、当該空間装置の音響特性をさらに制御する移動手段をさらに備える。これにより、従来例に比較して簡単であって、例えば室内などの空間の音響特性を容易にかつ柔軟に制御することができる。例えば、特に、ガラス面が大部分を占める室内の壁面に対して音響特性制御を行うことが可能になり、よりオープンなスタジオ環境を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0016】
図1(a)は本発明の一実施形態に係る音響特性制御ボード装置10を示す正面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線についての縦断面図である。本実施形態においては、吸音材を壁や天井の内部に設置したり、音響パネルを壁や天井の表面に配置したりするのではなく、壁や天井の表面から一定距離離して音響パネルを設置すること、さらにレール等を用いて容易に移動できるよう設置することによって、視覚的に開放的でデザイン性に優れるとともに、フレキシブルな音響特性制御を実施できる室内内面構成が可能になる。そこで、上記課題を解決するために、本実施形態では、既知の吸音性及び/又は反射性をもつ音響パネルを建築された室内内面から一定距離離れた位置に吊ることによって空間の音響特性を制御し、さらには、例えば天井等にレールを敷設し、そのレール上を自由に移動できる方式で音響パネルを吊るなどによって、フレキシブルに音響特性を調整することを特徴としている。
【0017】
図1(a)及び(b)において、音響特性制御ボード装置10は以下のように形成される。平板形状のベニヤ板11の両面の縁端部、並びに中央面を3つに区分する2つの区分位置に、例えば木材にてなり矩形柱形状を有する12本の枠材12を貼り付け又はネジ止めすることにより、6個のボード内空間21−26を形成して1枚のボードを形成し、当該ボード内空間21−26内に例えばグラスウールにてなる厚さ40mmの吸音材20を密度32Kで充填する。次いで、当該ボードの上下、両側面、両面の六面に例えばガラスクロスにてなるいわゆる防火クロス(本明細書では、クロスは布地(Cloth)を意味する。)であるクロス13を貼り付けることにより当該ボードを被覆する。これにより、音響特性制御ボード装置10を得る。なお、ボード面の大きさは例えば90cm×180cm、90cm×240cm、45cm×180cm、45cm×240cmである。上記のように形成された音響特性制御ボード装置10を、例えば、音響スタジオなどの室内空間の壁面から所定の距離だけ離隔してかつ天井面から所定の間隔で支持するように吊り下げる。
【0018】
図2は図1の音響特性制御ボード装置10を用いたときの壁面50付近の粒子速度を示す断面図である。音響特性制御ボード装置10を、例えば、音響スタジオなどの室内空間の天井面や壁面に密着させるのではなく、所定の間隔(例えば、少なくとも5cm以上でかつ100cm以下である。)だけを離隔することによって、低音域の音波をより効果的に音響特性制御ボード装置10により吸収することができる。本実施形態において、各周波数帯(又は各周波数域)の概略周波数は例えば以下の通りである。
(1)低周波:概ね5Hz以上で概ね200Hz以下の音又は振動波をいう。
(2)低音、低音域又は低域音:概ね20Hz以上で概ね200Hz以下の音をいう。
(3)可聴音、可聴域音又は可聴域波:概ね20Hz以上で概ね20kHz以下の音又は振動波をいう。
(4)中域音、中域波又は可聴中域波:概ね200Hz以上で概ね2kHz以下の音又は振動波をいう。
(5)高域音又は高周波:概ね2kHz以上で概ね20kHz以下の音又は振動波をいう。
(6)超高周波:概ね20kHz以上で概ね200kHz以下の音又は振動波をいう。
【0019】
低音域の音波を上述のように吸収するためには理論的に以下の物理現象を用いる。例えば、図2に示すように、建築された建築物の室内の壁面から距離Xメートルのところに周波数c/λ[Hz](ここで、音速c=340[m/sec]、波長λ=4X[m]であり、周波数c/λ=85/X[Hz]となる。)の定在波のもつ節があり、気体の粒子速度はこの地点において最大となる。そこで、この位置に吸音パネルとして動作する音響特性制御ボード装置10を配置することによって、周波数85/X[Hz]近辺の音波を効果的に吸収することができる。
【0020】
当該音響特性制御ボード装置10は、吸音材が吸音するだけでなく、ベニヤ板11が建築された壁面50との間の空気層を音響インピーダンスのバネとして低周波で共振することにより、低周波音の吸音特性を向上させる。当該音響特性制御ボード装置10は設計上の自由度が高く、デザイン的にも優れているとともに、設置後の移動、取り付け、取り外しが容易で、経費的にも安価である。上記の例では、一種類の反射・吸収特性をもつ音響特性制御ボード装置10について述べたが、互いに異なる反射性及び/又は吸音性をもつ複数の音響特性制御ボード装置10を入れ替えたり、混在させたりしてもよい。表面と裏面とで互いに異なる反射性及び/又は吸収性をもつ音響パネルの向きを表裏入れ替えて用いるなどの工夫もできる。
【0021】
以上説明したように、本実施形態に係る音響特性制御ボード装置10によれば、例えば建築された室内の壁面の構成素材にかかわらず空間の音響特性をフレキシブルに制御することを目的として、既知の吸音性及び/又は反射性をもつ音響パネルである音響特性制御ボード装置10を建築された室内壁面から一定距離離れた位置に吊ることによって空間の音響特性を制御することができる。
【0022】
次いで、音響特性制御ボード装置10の支持方法について以下に説明する。図3(a)は図1の音響特性制御ボード装置10を天井のレール31,32に支持したときの状況を説明するための概略図である。図3は、例えば音響スタジオの天井にレール31,32を敷設し、そこに音響特性制御ボード装置10を吊り下げた実施形態である。
【0023】
図3(a)において、室内の天井において互いに平行となるようにレール31,32を敷設する。レール31に当該レール31に沿って移動可能な摺動支持部材41a,42aを取り付けとともに、レール32に当該レール32に沿って移動可能な摺動支持部材43a,44aを取り付ける。これら4個の摺動支持部材41a,42a,43a,44aから下方向に延在する円柱支持部材41,42,43,44により、例えば木材平板にてなる支持平板45を吊り下げるように支持する。さらに、音響特性制御ボード装置10を、一端が支持平板45に連結されてなる支持部材46,47により吊り下げるように支持する。以上の構成により、音響特性制御ボード装置10をレール31,32の長手方向に沿って移動させることができる。
【0024】
以上の構成を有する図3(a)の実施形態においては、容易に音響特性制御ボード装置10を所定の1次元の方向に移動して空間の音響特性をフレキシブルに調整することが可能になる。従来の手法では空間音響特性の変更は容易ではなく、目的に対して最適の音響特性を、音を聴きながら造り出すことは困難であったという課題を解決しうる。さらに、この実施形態はガラス面が大部分を占める壁面に対して音響特性制御を加えることが可能にした。これにより、ガラスの前面に吊り下げられた音響特性制御ボード装置10の合間から、中から外、外から中をかいまみることができ、よりオープンなスタジオ環境を形成することができる。
【0025】
図3(b)は車輪10r付きの音響特性制御ボード装置10を天井のレール31に支持したときの状況を説明するための概略図である。図3(b)において、室内の天井の壁間際に敷設したレール31に当該レール31に沿って移動可能な摺動支持部材41a,42aを取り付ける。これら2個の摺動支持部材41a,42aから下方向に延在する円柱支持部材41,42により、例えば矩形平板にてなる支持平板45を吊り下げるように支持する。さらに、当該支持平板45に連結された蛇腹式伸縮支持部材48を介して音響特性制御ボード装置10をその上部で吊すように支持する。音響特性制御ボード装置10の下側には複数の車輪10rが設けられ、音響特性制御ボード装置10を室内の床面で容易に移動可能な構成となっている。以上の構成により、音響特性制御ボード装置10をレール31の長手方向に沿って、壁面から所定の距離だけ離隔された位置で左右に任意に移動させることができるとともに、蛇腹式伸縮支持部材48の伸縮により、音響特性制御ボード装置10を上下方向の高さ方向で移動させて、壁から任意の距離に位置させることが可能になる。
【0026】
以上説明したように、室内壁面から一定距離離れた位置の天井にレール31,32を敷設し、それらのレール31,32上を自由に移動できる様式で音響特性制御ボード装置10を吊り下げることによって、フレキシブルに音響特性を調整することを可能にした。これにより、ガラス面が大部分を占める壁面に対して音響特性制御を加えることができ、よりオープンなスタジオ環境を形成することができる。
【0027】
なお、音響特性制御ボード装置10の移動方向については、例えば天井に平行な平面での2次元方向、もしくはさらに高さ方向を含む3次元方向で移動させる摺動支持部材を用いて音響特性制御ボード装置10を移動させることにより、室内の音響特性を制御してもよい。以上の実施形態においては、音響特性制御ボード装置10を移動させているが、本発明はこれに限らず、音響特性制御ボード装置10を所定の回転機構を用いて回転させて室内の音響特性を制御してもよい。
【0028】
図4(a)は本発明の第1の変形例に係る音響特性制御ボード装置10Aの外観を示す斜視図であり、図4(b)は本発明の第2の変形例に係る音響特性制御ボード装置10Bの外観を示す斜視図である。図4(a)及び(b)において、残響時間を微妙に調節するために、例えば木材等の反射性素材71と、例えばグラスウール等の吸音性素材72とを一枚のボードのなかにベルト状あるいは市松模様状など分散させて配置してもよい。
【0029】
図5(a)は本発明の第3の変形例に係る音響特性制御ボード装置10a,10bの外観を示す斜視図であり、図5(b)は本発明の第4の変形例に係る音響特性制御ボード装置10a,10b,10cの外観を示す斜視図である。図5(a)及び(b)において、吸音性又は反射性の相異なる複数の音響特性制御ボード装置10a,10b,10cを上下方向に連結して吊り下げて、空間の音響特性を調節してもよい。
【実施例1】
【0030】
図6は本発明の実施例1に係る音響特性制御ボード装置10のフィルム形成方法を示す側面図である。以下の実施例1及び2においては、音響特性制御ボード装置10の両面の片面のクロス13上に、低周波から高周波まで(概ね周波数20kHzまで)の可聴域の音波Slを通過させるが、超高周波(概ね周波数20kHzから概ね200kHzまで)の音波又は振動波Shを反射する、例えばポリエチレンフィルムにてなるフィルム73を形成したことを特徴としている。
【0031】
実施例1の図6においては、音響特性制御ボード装置10の片面(壁面50とは反対側の片面)にフィルム73を形成している。この場合、可聴域の音波Slはフィルム73を通過した後、音響特性制御ボード装置10に吸収される。また、超高周波の音波又は振動波Shはフィルム73で反射される。すなわち、フィルム73付き音響特性制御ボード装置10では、可聴域の音波Slを吸収するので、室内の残響を低減させて、音響特性を改善できる一方、超高周波の音波又は振動波Shをフィルム73により反射させて聴取しているユーザに対して放射させることができる。後者の場合では、本来のスピーカによる超高周波の放射とともに、音響特性制御ボード装置10からの超高周波の反射による放射により、聴取者に対してより大きな放射量で効果的に超高周波の音波又は振動波を放射できる。超高周波の放射については、例えば特許文献2において以下のように開示されている。
「例えばイヤホンの低周波信号音発生部を介して低周波成分を印加するとともに、スピーカを介して高周波成分を印加したとき(イヤホンからの低周波成分+スピーカからの高周波成分)の方が、α波EEG電位が増大し、かつ脳の角回の部位、後部帯状回内の部位、及び後部帯状回の境界の部位の3つの部位において脳血流が増大していることが明らかであり、低周波成分については、聴覚に直接に印加するとともに、高周波成分については、被験者の人間30に対して聴覚のみならず、身体全体に印加することにより、α波EEG電位を増大させることができるとともに、脳血流を増大させることができ、人間の緊張をといて人間をリラックスさせてストレスを解消させることができる。」
【0032】
すなわち、本来のスピーカによる超高周波の放射とともに、音響特性制御ボード装置10からの超高周波の反射による放射により、聴取者に対してより大きな放射量で効果的に超高周波の音波又は振動波を放射でき、これにより、聴取者のα波EEG電位を増大させることができるとともに、脳血流を増大させることができ、人間の緊張をといて人間をリラックスさせてストレスを解消させることができる。すなわち、フィルム73付き音響特性制御ボード装置10を用いて、超周波振動波又は音波を吸収せず反射することによって、ハイパーソニック・エフェクト(HSE)の発現を大幅に促進することができるという特有の効果を有する。
【実施例2】
【0033】
図7は本発明の実施例2に係る音響特性制御ボード装置10のフィルム形成方法を示す側面図である。図7においては、音響特性制御ボード装置10の両面のクロス13上に、例えばポリエチレンフィルムにてなるフィルム73を形成したことを特徴としている。図7の実施例2では、壁面50からの可聴域の音波Slはフィルム73を通過した後、音響特性制御ボード装置10に吸収される。また、壁面50からの超高周波の音波又は振動波Shはフィルム73で反射される。この場合においても、視聴者側の面でフィルム73が形成されているので、フィルム73付き音響特性制御ボード装置10を用いて、超周波振動波又は音波を吸収せず反射することによって、ハイパーソニック・エフェクト(HSE)の発現を大幅に促進することができるという特有の効果を有する。
【0034】
次いで、音響特性制御ボード装置10の壁面材質とボード材質の組み合わせについての実施例について以下の表1に示す。また、ボード材質のもつ帯域毎の吸音/反射性質について以下の表2に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表2において、ポリエチレンフィルムに代えて、動物の皮革薄膜、ゴムフィルム、金属フィルム、金属箔などを用いてもよい。
【0038】
音響特性制御ボード装置10において例えば表1のように構成することにより、各項目毎の目的を達成することができる。特に、表1から明らかなように、フィルム付き音響特性制御ボード装置10を用いて、超周波振動波又は音波を吸収せず反射することによって、ハイパーソニック・エフェクト(HSE)の発現を大幅に促進することができる。
【0039】
なお、吸収性又は吸音性を有する材料とは吸収又は吸音を目的として所定の吸収率を有する材料であり、反射性を有する材料とは反射を目的として所定の反射率を有する材料である。エネルギー比で表した吸収率αと反射率γとは、α=1−γの関係にあり、一般的には、反射率50%を越えるときに反射性を有するといい、反射率50%未満であるときに吸収性又は吸音性を有するという。
【実施例3】
【0040】
図8は本発明の実施例3に係る音響特性制御ボード装置10を用いた、ハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオの一例を示す平面図である。図9乃至図11はそれぞれ図8のハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオの各壁面を示す正面図である。実施例3では、ハイパーソニック・エフェクトの応用による音環境創造実装実験のための発信スタジオのコンセプト・プランについて以下説明する。
【0041】
本発明者らは、ハイパーソニック・エフェクト(HSE)の応用による市街地音環境創造に資する知見を得るために、実在の市街地にモデル地区を設定し、市街地音環境創造実装実験を行っている。そのために必要となるハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオについて、求められる機能を検討し、それを実現するためのコンセプト・プランを構成した。
【0042】
次いで、発信スタジオの必要性と求められる機能について以下に説明する。モデル地区における実装実験で構築しようとするシステムは、今後広範に構築されることが予想されるHSSを市街地へと供給するシステムのプロトタイプとなる。そこで、本発明者らは、将来の拡張性を視野に入れ、ハイパーソニック・サウンド(HSS)の信号データを記録し固定したパッケージメディアから再生して信号を発信する機能と、その信号を受信して空気振動に変換する機能とを独立させ、両者を互いにある程度離れた地点に設置し、その間を高速ネットワークで接続してハイパーソニック・サウンド(HSS)を供給することを構想した。そのためには、モデル地区の一角にハイパーソニック・サウンド(HSS)信号の発信拠点を設置することが必要になる。
【0043】
一方、ハイパーソニック・エフェクト(HSE)を応用した市街地音環境創造に対する理解が深まるにつれて、これを街づくりの新しいコンセプトに取りこもうとする機運が地元に自律的に生まれ、ハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信拠点をそのシンボルとしたいという要請が寄せられた。「音」という不可視の現象を街づくりのコンセプトとするうえでは、来訪者や住民の視覚に訴えるわかりやすい展示機能をもった設備が不可欠であり、ハイパーソニック・サウンド(HSS)発信拠点はそれに格好のものとなりうるからである。こうした背景から、信号発信拠点においても街に流れているそれと同様に、ハイパーソニック・サウンド(HSS)を体験できること、将来的には発信拠点の設備を利用して、ハイパーソニック・サウンド(HSS)を含む環境音材料の編集・発信が可能となることも期待された。さらに、こうした複数の機能を含むハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信拠点の構築空間として、地域の多目的中核施設1階正面のショールームの提供が地元の関係組織から提案された。
【0044】
以上の積極的な提案を活かすために、本発明者らはこの発信スタジオの備える機能を改めて以下のように整理し、その実現に取り組んだ。
(1)<脳にやさしい街づくり>のシンボルとしての展示機能。スタジオ内の機器や作業状況を室外から見学可能にするとともに、パネル等の展示も行う。
(2)ハイパーソニック・サウンド(HSS)信号をネットワークを介して街区に供給する送出機能。
(3)街に流れているものと等しいハイパーソニック・サウンド(HSS)を、良好な音響特性を有する室内で来場者が体験できる環境音体験機能。そのためにスタジオ内に6台、スタジオ外に6台の音響発信装置を設置して、ハイパーソニック・サウンド(HSS)体験を可能にする。
(4)超高周波成分を豊富に含む音素材を加工編集し、ハイパーソニック・サウンド(HSS)による作品を制作しうる音響編集機能。そのために、高周波応答特性の優れたミクシング・コンソールを設置。その他の編集機器は必要に応じて外部から持ち込んで使用可能にした。
【0045】
さらに、発信スタジオのプランについて以下に説明する。以上の機能を満たすために、この発信スタジオは、メインストリートに面して建設される観光案内所を含む地域の多目的中核施設の1階正面に設置されることになった。ただし、メインストリート、及び屋内の観光案内所という2方向からスタジオ内部を見学するために、ふたつの壁面をガラスで構成する、いわゆるオープンスタジオ形式をとる必要が生じた。しかし、このような視覚的開放性は、音響的独立性とも、またスタジオに要求される吸音性能とも矛盾する。しかも、この中核施設となる建物全体の基本設計は概成しており、専用の音響スタジオを建設する場合に比べて、設計上の自由度はかなり制約を受けざるを得なかった。
【0046】
このような状況のなか、オープンスタジオとしての視覚的開放性と、音響スタジオとして必要な遮音性能、吸音性能とをともに実現するために、まず、街路に面するスタジオ前面は、全面19mm厚のガラスで構成した。この条件では、スピーカーの再生音がガラス面に反射してミキシングポイントに到達する。そこでそれを解消する手段として、正面のガラスの内側のガラスに反射する音が天井の吸音面に向かう角度を与えた(図8乃至図11参照。)。さらに、天井及び壁面に、強力な吸音性能をもちデザイン上も優れた可動式の音響パネルモジュールを開発して設置し、高品質の音響空間を創出することに成功した。
【0047】
以上説明したように、実施例3では、視覚的開放性、音響的独立性、吸音性能という相互に矛盾する困難な設計上の課題を解決するスタジオのコンセプト・プランについて説明した。
【実施例4】
【0048】
図12は本発明の実施例4に係る音響特性制御ボード装置10を用いた、ハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオの一例を示す平面図である。また、図13は図12のスタジオを用いる音響特性制御ボード装置10の吸音率の周波数特性を示すグラフであり、図14は図12のスタジオにおける残響時間の周波数特性を示すグラフである。実施例4では、ハイパーソニック・エフェクト(HSE)の応用による音環境創造実装実験のための音響パネルモジュール(以下、上述の音響特性制御ボード装置10をいう。実施例4及び5では、以下、音響パネルモジュール10という。)によるスタジオ設計方法及び実験結果について以下に説明する。
【0049】
本発明者らは、ハイパーソニック・エフェクト(HSE)を、市街地音環境の改善に実地に応用する研究開発を進めている。そのために、市街地の多目的建築物の一室に、モデル地区に供給するハイパーソニック・サウンド(HSS)送出機能、音空間体験機能、展示機能、音響編集機能など、互いに矛盾する点を持ち共存が難しい複数の機能を担う発信スタジオ(音響調整室)を実現する必要が生じた。この輻輳した課題を矛盾なく解決するために、独特の構造をもつ吸音用音響パネルモジュール10を開発し、それらを組み合せて設置することにより、高品質の音響空間を創出することに成功したので報告する。あわせて、この音響パネルモジュール10を録音スタジオ等における残響可変システムに応用する可能性について述べる。
【0050】
次いで、発信スタジオ設計における制約条件について以下説明する。このスタジオは、街づくりのシンボルとしての視覚的美観と開放性を求められる一方、レコーディング・スタジオのコントロールルームに相当する吸音性能と音響的独立性を備えた上に、リスニングルームとして快適なアコースティックを実現するという、相互に矛盾する性能をすべて成り立たせなければならない。さらに、基本設計がすでに完了した地区中核施設内に設置されることにともない、設計上の制約や、施工日程・予算にも大きな制約が課されている。
【0051】
これらの要請をすべて満たす高品質の音響空間を創出するために、本発明者らは従来の常套的な施工法とは一線を画し、独自の音響パネルモジュール10を開発して、その有効性を最大限活用したスタジオ設計を試みた。
【0052】
さらに、音響パネルモジュール10の設計について以下説明する。スタジオの、特にコントロールルームの吸音処理には、ベニヤ板などの両面にグラスウールを張り付けたベーストラップなどと呼ばれるサンドイッチ構造体を、遮音層(遮音壁)に直角又は直角に近い角度で固定して設置する方法が採用されることが多い。この方式は吸音に優れている反面、視覚的開放性とは矛盾し、結果的に壁が厚くなって室内の有効容積が狭小になるうえ、施工にも少なからぬ時間と経費を要する。
【0053】
これに対して本発明者らは、ベニヤ板の両面にグラスウールを貼りつけたパネルを遮音壁に平行に設置し、スタジオ設計に応用する方法を開発しつつある。この原理を活かし、パネルをレールに吊り下げて可動化する。この方法では、まず、グラスウールによる吸音効果とともに、パネルそのものの板共振による吸音効果が期待できる。また、パネルの大きさや配置を始めとする設計上の自由度が高く、デザイン的にも優れ、設置後の移動、取り付け、取り外しが容易で、経費的にも安価である。
【0054】
今回は目的とするスタジオの求める諸条件を最適にクリアするよう音響パネルモジュール10を設計した。これは、図1(a)及び(b)に示すように、厚さ5.5mmの定尺ベニヤ板11の両面に密度32K、厚さ40mmのグラスウール20を貼り付け、防火クロス13で表面を覆って音響パネルモジュール10を製作した。
【0055】
音響パネルモジュール10の大きさは、縦1800mm、横900mmとした。壁面から200〜500mm離れた天井面に取り付け用レールを設置し、パネルを壁面沿いに天井から吊り下げた。図13にこの音響パネルモジュール10の吸音特性を示す。
【0056】
さらに、音響パネルモジュール10の音響効果について以下に検討する。実際の吸音処理工事は、あらかじめ工場で製作したパネルの取り付けのみで済むため、基本的な内装工事が完了した後1日で終了し、全体の工程に影響を与えることはなかった。完成した発信スタジオにおけるパネル配置等を図12に示す。
【0057】
発信スタジオでのパネル配置完成した発信スタジオについて、すべての音響パネルモジュール10を設計どおりに配置して、残響時間特性を計測した。その結果、図14に示すように0.2〜0.4秒にわたりほぼ平坦という良好な結果が得られた。また、音響パネルモジュール10の配置を変更することによる残響特性の調整に十分な自由度があることも確認された。
【0058】
この手法は、厳しい制約をともなう設計条件下で良好な音響空間を手軽に実現する上で、大きな有効性、可能性を有すると考えられる。また、これらの音響パネルモジュール10の発展形として、片面反射・片面吸音のパネルを作成し、これらを吊るす向きを調整することによって、簡易型の残響可変システムを構成することも有効といえる。
【0059】
以上説明したように、視覚的開放性、音響的独立性、吸音性能という相矛盾する要請を満たす良好な音響空間を短期間かつ安価に造成するうえで効果的な音響パネルモジュール10の方式について説明した。
【実施例5】
【0060】
図15(a)は本発明の実施例5に係る実験で用いたハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオの平面図であり、図15(b)は図15(a)のスタジオの壁面の正面図である。また、図16は実施例5に係る実験による吸音率の周波数特性を示すグラフである。実施例5では、実施例4で述べた音響パネルモジュール10を用いて、壁から離して移動させた場合の効果を調べる残響計測実験を行った。
【0061】
まず、実施例5の実験方法について以下説明する。計測を行った実験室を図15(a)及び(b)に示す。本実施例5に係る音響パネルモジュール10は、音響特性を十分に考慮せずに設計・施工された空間を対象として音響特性のコントロールを行うことを目的としているので、実験室としても音響特性が十分には考慮されていない部屋が望ましい。そこで、実施例5では、長辺9.9m、短辺6.5m、天井高3mのコンクリート壁とガラス窓を有する通常の会議室を実験室として用いた。
【0062】
次いで、音響パネルモジュール10の設置方法について以下に説明する。実施例4に係る音響パネルモジュール10を4枚用意し、それらを間隔20cmで、図15(a)及び(b)に示すように壁面に平行に設置した。図15に示されているのは、空気層0cm条件による設置である。この条件に加えて、空気層20cm、空気層45cmの2条件の設置条件(すなわち、壁面からそれぞれ20cm、45cmの間隔をおいて音響パネルを設置する条件である。)並びに対照条件として音響パネル非設置条件の合計4条件について、残響時間の計測を実施した。
【0063】
計測ポイントとしては、図15(a)に示すM1、M2、M3の3点を聴取者位置とし、立位の聴取者の耳の位置にあたる高さ1.5mに無指向性マイクロホンを設置して計測を行った。上記の室内において、音響パネルモジュール10の設置前の残響時間Tを計測し、次に、音響パネルモジュール10を設置して残響時間T’を計測した。これら残響時間T及びT’の差から吸音率を計算した。残響時間測定方法は次の通りである。CD再生による信号音ピンクノイズをフルレンジパワードスピーカにより、1秒程度再生し2秒程度休止し、これを各マイクロホン位置について10回繰り返した。この残響音を聴取者位置に高さ1.5mに設置した無指向性マイクロホンにて収音用ディジタルオーディオテープレコーダ(DAT)に記録した。次いで、記録した残響音をディジタルオーディオテープレコーダ(DAT)を用いて再生してパーソナルコンピュータのハードディスクメモリに取り込み、1/3オクターブ毎の周波数について残響時間を算出した。
【0064】
さらに、実験結果について以下に説明する。空気層0cm、20cm、45cmの各条件について計測・算出した吸音率を図16に示す。従来技術に係る吸音材設置方法である空気層0cm条件(すなわち、壁面と音響パネルとを一体化させた条件)に比べて、空気層20cm、空気層45cmを隔てて音響パネルを設置する条件では、500Hz未満の低周波成分を吸音する率が向上した。特に、空気層が大きいほど(すなわち、音響パネルを壁面からより遠くに設置した場合に)500Hz未満の低周波成分を吸音する率が向上した。一方、500Hz以上の可聴域成分については、音響パネルと壁面との距離は、吸音率に影響を与えなかった。
【0065】
以上の実験結果について考察すると、音響パネルモジュール10を壁面から離して設置する本実施例に係る方法は、従来技術に係る方法に比べて低周波成分吸音率向上の効果が認められた。また、壁からより遠くに移動してパネルを設置する方が低周波成分の吸音率は向上する(本実験条件で少なくとも45cmまで)ことが示された。しかしながら、音響パネルモジュール10を壁から隔てて設置するほど、室内の有効利用面積が減少するというデメリットも同時に存在する。そこで実装においては、室内の利用性と低周波成分吸収性との両面から最適設置位置を決定する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上詳述したように、本発明に係る音響特性制御ボード装置及びそれを用いた空間装置並びに音響特性制御方法によれば、入射する音又は振動波に対して所定の反射性を有する第1の材料と、入射する音又は振動波に対して所定の吸収性を有する第2の材料の少なくとも一方をボードの片面又は両面の少なくとも一部に形成してなる音響制御ボードを、複数の面により形成されてなる所定の空間装置の面から所定の間隔だけ離隔して当該空間装置内に配置することにより、当該空間装置の音響特性を制御する配置手段を備える。ここで、上記第1の材料又は上記第2の材料は、入射する音又は振動波の周波数に応じて反射姓又は吸収性を有する。さらに、上記音響制御ボードを1次元又は複数次元で移動し又は回転することにより、当該空間装置の音響特性をさらに制御する移動手段をさらに備える。これにより、従来例に比較して簡単であって、例えば室内などの空間の音響特性を容易にかつ柔軟に制御することができる。例えば、特に、ガラス面が大部分を占める室内の壁面に対して音響特性制御を行うことが可能になり、よりオープンなスタジオ環境を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る音響特性制御ボード装置10を示す正面図であり、(b)は図1(a)のA−A線についての縦断面図である。
【図2】図1の音響特性制御ボード装置10を用いたときの壁面50付近の粒子速度を示す断面図である。
【図3】(a)は図1の音響特性制御ボード装置10を天井のレール31,32に支持したときの状況を説明するための概略図であり、(b)は車輪10r付きの音響特性制御ボード装置10を天井のレール31に支持したときの状況を説明するための概略図である。
【図4】(a)は本発明の第1の変形例に係る音響特性制御ボード装置10Aの外観を示す斜視図であり、(b)は本発明の第2の変形例に係る音響特性制御ボード装置10Bの外観を示す斜視図である。
【図5】(a)は本発明の第3の変形例に係る音響特性制御ボード装置10a,10bの外観を示す斜視図であり、(b)は本発明の第4の変形例に係る音響特性制御ボード装置10a,10b,10cの外観を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例1に係る音響特性制御ボード装置10のフィルム形成方法を示す側面図である。
【図7】本発明の実施例2に係る音響特性制御ボード装置10のフィルム形成方法を示す側面図である。
【図8】本発明の実施例3に係る音響特性制御ボード装置10を用いた、ハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオの一例を示す平面図である。
【図9】図8のハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオの第1の壁面を示す正面図である。
【図10】図8のハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオの第2の壁面を示す正面図である。
【図11】図8のハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオの第3の壁面を示す正面図である。
【図12】本発明の実施例4に係る音響特性制御ボード装置10を用いた、ハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオの一例を示す平面図である。
【図13】図12のスタジオを用いる音響特性制御ボード装置10の吸音率の周波数特性を示すグラフである。
【図14】図12のスタジオにおける残響時間の周波数特性を示すグラフである。
【図15】(a)は本発明の実施例5に係る実験で用いたハイパーソニック・サウンド(HSS)信号発信のためのスタジオの平面図であり、(b)は図15(a)のスタジオの壁面の正面図である。
【図16】実施例5に係る実験による吸音率の周波数特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
10,10A,10B,10a,10b,10c…音響特性制御ボード装置(音響パネルモジュール)、
10r…車輪、
11…ベニヤ板、
12…枠材、
13…クロス、
20…吸音材、
21,22,23,24,25,26…ボード内空間、
31,32…レール、
41,42,43,44…円柱支持部材、
41a,42a,43a,44a…摺動支持部材、
45…支持平板、
46,47…支持部材、
48…蛇腹式伸縮支持部材、
50…壁面、
61,62,63,64,65,66…円柱支持部材、
71…吸音性素材、
72…反射性素材、
73…フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する音又は振動波に対して所定の反射性を有する第1の材料と、入射する音又は振動波に対して所定の吸収性を有する第2の材料の少なくとも一方をボードの片面又は両面の少なくとも一部に形成してなる音響制御ボードを、複数の面により形成されてなる所定の空間装置の面から所定の間隔だけ離隔して当該空間装置内に配置することにより、当該空間装置の音響特性を制御する配置手段を備えたことを特徴とする音響特性制御ボード装置。
【請求項2】
上記第1の材料又は上記第2の材料は、入射する音又は振動波の周波数に応じて反射姓又は吸収性を有することを特徴とする請求項1記載の音響特性制御ボード装置。
【請求項3】
上記音響制御ボードを1次元又は複数次元で移動し又は回転することにより、当該空間装置の音響特性をさらに制御する移動手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の音響特性制御ボード装置。
【請求項4】
複数の面により形成されてなる空間装置において、
請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の音響特性制御ボード装置を備えたことを特徴とする空間装置。
【請求項5】
入射する音又は振動波に対して所定の反射性を有する第1の材料と、入射する音又は振動波に対して所定の吸収性を有する第2の材料の少なくとも一方をボードの片面又は両面の少なくとも一部に形成してなる音響制御ボードを、複数の面により形成されてなる所定の空間装置の面から所定の間隔だけ離隔して当該空間装置内に配置することにより、当該空間装置の音響特性を制御するステップを含むことを特徴とする音響特性制御方法。
【請求項6】
上記第1の材料又は上記第2の材料は、入射する音又は振動波の周波数に応じて反射姓又は吸収性を有することを特徴とする請求項5記載の音響特性制御方法。
【請求項7】
上記音響制御ボードを1次元又は複数次元で移動し又は回転することにより、当該空間装置の音響特性をさらに制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項5又は6記載の音響特性制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−65046(P2008−65046A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242733(P2006−242733)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本音響学会発行の「日本音響学会2006年春季研究発表会講演論文集 講演要旨・講演論文CD−ROM」865〜866頁(3−10−18)及び講演要旨95頁において2006年3月7日に発表した。 社団法人日本音響学会発行の「日本音響学会2006年春季研究発表会講演論文集 講演要旨・講演論文CD−ROM」867〜868頁(3−10−19)及び講演要旨95頁において2006年3月7日に発表した。
【出願人】(306029350)合資会社豊島総合研究所 (1)
【出願人】(500439009)株式会社アクション・リサーチ (11)
【Fターム(参考)】