説明

頭皮および毛髪の処置のための組成物および方法

メントール誘導体および15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を含む頭皮および毛髪の処置用組成物を提供する。本発明の組成物は、フケおよび頭皮の痒みの予防に有効であるだけでなく、脱け毛、禿頭症、または細毛の予防または処置にも有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、毛髪および頭皮の処置の分野に関する。より詳細には、本発明は、医薬品、薬用化粧品または化粧品として提供されうる毛髪および頭皮の処置用組成物に関する。本発明はまた、頭皮および毛髪を処置する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
このストレスの多い高齢化社会において様々な頭皮および/または毛髪に関する問題が増加している。かかる問題を処置するための頭皮および/または毛髪ケア製品の要求が急速に増えてきている。
【0003】
頭皮および/または毛髪を処置するための多くの製品、例えば、様々な毛髪および頭皮の状態に好適な毛髪用化粧品および育毛促進剤が開発されている。例えば、フケおよび痒みを防ぐことにより抜け毛を予防する製品が開発されている。
【0004】
一般に、禿頭症、脱毛症、抜け毛、細毛、フケおよび頭皮の痒みの既知の原因としては、特定の器官、例えば、皮脂腺での男性ホルモンの活性化、皮脂の過剰生産、過酸化脂質の生成、毛包における血液循環の低下およびストレスが挙げられる。毛包への栄養補給が不十分であると強くて美しい毛髪の成長が行われなくなり、毛髪がより細くなりうる。さらに、毛包における血液循環の低下により、不十分な栄養補給および老廃物排せつ機能の障害が起こりうる。抜け毛に関する上記の機構に鑑み、頭皮角質層の代謝回転の向上、過剰皮脂生産の抑制ならびに頭皮血液循環の促進が、頭皮および/または毛髪に関する問題の処置剤の開発の鍵であると考えられてきた。
【0005】
頭皮および毛髪の処置のための従来の製品は、一般に、禿頭症または抜け毛の1以上の原因を除去または軽減するのに有効な薬剤を組み合わせることによって製造されてきた。例えば、ビタミン B およびビタミン Eなどのビタミン、セリンおよびメチオニンなどのアミノ酸、ニコチン酸、センブリ(Swertia japonica)抽出物、アセチルコリン誘導体などの血管拡張剤、紫根(erythrorhizon)などの抗炎症剤、エストラジオールなどの女性ホルモンおよびセファラチン(cepharathin)などの皮膚機能剤が、禿頭症、抜け毛および/または細毛の処置および予防用組成物の製造に用いられている (特開H2-48516号、H5-255044号、H7-206647号、H7-277930号および特開2001-288047号)。
【0006】
本発明の発明者らの一人は、15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物が育毛促進活性を有することを見いだし、国際特許出願を出願した(WO2005/013928、その出願の開示内容は引用により本出願に含める)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本発明の目的は、フケおよび頭皮の痒みの予防だけでなく、育毛の促進および/または抜け毛の予防にも有効であり、安定性および安全性に優れた毛髪および頭皮の処置用組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、頭皮および/または毛髪の問題を患う対象の頭皮および/または毛髪を処置する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、メントール誘導体および15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を含む頭皮および/または毛髪の処置用組成物を提供する。
【0009】
本発明はまた、有効量のメントール誘導体および15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を対象の頭皮および/または毛髪に局所的に適用することを含む、必要とする対象の頭皮および/または毛髪の処置方法も提供する。
【0010】
発明の詳細な説明
本明細書および特許請求の範囲において用いるPG化合物の命名に際しては、下記式(A)に示すプロスタン酸の番号を用いる。
【化1】

【0011】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、式(A)においてPG化合物の基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向かって順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消して命名する。炭素数がα鎖上で増加する場合、カルボキシル基(C−1)の代わりに2位において対応する置換基を有する置換化合物として命名する。同様に炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から順次番号を抹消して命名する。また、炭素数がω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特に断りのない限り、上記基本骨格(A)の有する立体配置に従うものとする。
【0012】
また、例えばPGD、PGE、PGFは、9位および/または11位に水酸基を有するPG化合物をいうが、本発明では、9位および/または11位の水酸基に代えて他の基を有するものも包含する。これらの化合物を命名する場合、9−デヒドロキシ−9−置換−PG化合物あるいは11−デヒドロキシ−11−置換−PG化合物の形で命名する。なお、水酸基の代わりに水素を有するPG化合物は、単に9−あるいは11−デヒドロキシ−PG化合物と称する。
【0013】
前述のように、PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、上記化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちα鎖の骨格炭素数が9であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−PG化合物と命名する。同様に、α鎖の骨格炭素数が11であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10であるPG化合物は、20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0014】
アナログ(置換体を含む)または誘導体の例は、上記PG類のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、α鎖が延長された化合物、それらの生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9位および/または11位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
【0015】
本発明において3位、17位、18位および/または19位の好適な置換基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、特にメチル基、エチル基が挙げられる。16位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。17位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。20位の好適な置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の好適な置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の好適な置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含む。9位および/または11位にヒドロキシ基、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有する場合のPG類の立体配置はα、βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
【0016】
さらに、上記アナログまたは誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有する化合物であってもよい。
【0017】
本発明において用いられる好適なプロスタグランジン化合物は下記式(I)で表される:
【化2】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、または−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
およびZは、酸素、窒素または硫黄;
およびRは置換されていてもよい低級アルキルであり、一緒につながって低級アルキレンを形成してもよい;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基または複素環オキシ基]。
【0018】
本発明において用いられるより好ましいプロスタグランジン化合物は、式(II)で表される:
【化3】

[式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHまたは−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
およびZは、酸素、窒素または硫黄;
およびRは置換されていてもよい低級アルキルであり、一緒につながって低級アルキレンを形成してもよい;,
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
は、単結合または低級アルキレン;そして、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ基]。
【0019】
上記式中、RおよびRaの定義における「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和結合は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和結合は両方の位置番号を表示して示す。
【0020】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素原子数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素原子数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素基を意味し、好ましくは炭素原子数1〜10、特に1〜8の炭化水素基である。
【0021】
「ハロゲン原子」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0022】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0023】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0024】
「低級アルキレン」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の二価飽和炭化水素基を意味し、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t−ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
【0025】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−基を意味する。
【0026】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0027】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキル基が酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0028】
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0029】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−基を意味する。
【0030】
「アリール」の語は、非置換または置換の芳香族炭化水素環基を包含し、(好ましくは単環式基の)、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン原子、ハロ(低級)アルキル(ここで、ハロゲン原子および低級アルキルは前記の意味)が含まれる。
【0031】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール)で示される基を意味する。
【0032】
「複素環基」の語としては、置換されていてもよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1〜4個、好ましくは1〜3個含む、5〜14員環、好ましくは5〜10員環の、単環式〜3環式、好ましくは単環式の複素環基が含まれる。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲン原子および低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0033】
「複素環オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0034】
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0035】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩;または有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0036】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
【0037】
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステル;および例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
【0038】
Aのアミドは、式−CONR’R''(式中、R’およびR''はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニル)で示される基を意味し、例えばメチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリド、トルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキル−もしくはアリール−スルホニルアミド等が挙げられる。
【0039】
好ましいLおよびMの例は、ヒドロキシ、オキソを含み、特にMおよびLがヒドロキシであるいわゆるPGFタイプと称される5員環構造を有するものを含む。
【0040】
好ましいAは、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステルまたはアミドである。
【0041】
好ましいBは−CH−CH−であり、いわゆる13,14−ジヒドロタイプと称されるものである。
【0042】
好ましいXおよびXの例はフッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称されるものである。
【0043】
好ましいRは、炭素原子数1〜10であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の炭化水素残基である。脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい。
【0044】
の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる:
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−O−CH−、
−CH−CH=CH−CH−O−CH−、
−CH−C≡C−CH−O−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−CH−、および、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−。
【0045】
好ましいRaは、1−10炭素原子、より好ましくは1−8炭素原子を有する炭化水素である。Raは1の炭素原子を有する1または2の側鎖を有していてもよい。
【0046】
好ましいZおよびZは酸素である。
【0047】
およびRは好ましくは一緒につながってC2またはC3アルキレンを形成する。
【0048】
上記式(I)および(II)における環、および、α−および/またはω−鎖の配置は、天然PG類の配置と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの配置を有する化合物と非天然タイプの配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0049】
本発明においては、個々の互変異性体、その混合物または光学異性体、その混合物、ラセミ体、その他の立体異性体等の異性体も、同じ目的に使用することが可能である。
【0050】
本発明において、好ましいプロスタグランジン化合物は、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2αイソプロピルエステル、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-17-フェニル-18,19,20-トリノール-PGF2αイソプロピルエステル、13,14-ジヒドロ-15,15-トリメチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステル、13,14-ジヒドロ-15,15-ジメトキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステルおよび13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α エチルエステルである。特に、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2αエチルエステルが好ましく用いられる。
【0051】
本発明の組成物におけるプロスタグランジン化合物の量は、十分な血液循環促進および/または頭皮軟化作用を提供するのに有効であり、製品の製造における困難性をもたらさない量であり得る。量は組成物の総重量当たり0.0001-10.0 wt% (乾燥重量)であり得、好ましくは、0.001-5.0 wt%である。
【0052】
本発明に用いられるメントール誘導体は化粧品または医薬品に用いられるいずれのメントールであってもよく、例えば、l-メントールおよびdl-メントールが挙げられる。メントール誘導体は市販されているか、または、ハッカ類(Mentha herbs)、例えばペパーミントから抽出することによって得ることが出来る。メントール誘導体は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明の組成物におけるメントール誘導体の量は、抗炎症、抗肌荒れ、抗フケ、抗痒み、育毛促進および/または抜け毛予防効果を提供するのに有効な量であり得る。さらに量の上限は、組成物が好ましくない刺激の感覚を提供せず、製品の製造における困難性をもたらさないように決定すべきである。
【0054】
本発明の組成物におけるメントール誘導体の量は、組成物の総量当たり0.001-5.0 wt%であり得、好ましくは、0.01-3.0 wt%である。
【0055】
本発明の組成物はさらに、本発明の目的を損なわない限り、従来の頭皮および/または毛髪処置用組成物に通常添加されている活性成分を含んでいてもよい。
【0056】
本発明の組成物に添加してもよい活性成分の例としては、血液循環を改善しうる物質、例えば、センブリ(Swertia japonica) 抽出物、ビタミン E またはその誘導体、アセチルコリン誘導体、セファランチン、塩化カルプロニウム、ニコチン酸およびニコチン酸誘導体およびミノキシジル; 局所刺激物質、例えば、トウガラシチンキ、ノニル酸バニルアミド(nonylic acid vanilamide)、ノニル酸バニリルアミド(nonylic acid vanillylamide)、ショウノウ、ショウキョウチンキ(ginger tincture)およびニコチン酸ベンジルエステル; 抗脂漏物質、例えば、 ピリドキシンまたはその誘導体、イオウおよびビタミン B6; 代謝促進物質、例えば、 感光色素 301、胎盤タンパク質、ビオチン、ニコチンアミド、ビタミン B6およびその誘導体、ビオチン、パントテン酸およびその誘導体、セファランチン、モノ-ニトログアイアコール、ナトリウム・モノ-ニトログアイアコール、6-ベンジルアミノプリン、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、ヒノキチオール、ペンタデカン酸モノグリセリド、DADA、CTPおよびSD-35; 消炎剤、例えば、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸またはそれらの誘導体、アデノシンまたはその誘導体、紫根(lithospermi radix)抽出物、サリチル酸およびその誘導体、オクトピロックス(octopirox)、酸化亜鉛、アラントイン、塩化ベンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノール、ショウノウ、イクタモール、グアイアズレン、イプシロン・アミノカプロン酸、塩化リゾチームおよび塩酸ジフェンヒドラミン; 5α-レダクターゼ阻害剤、例えば、 オキセンドロンおよびフィナステリド; 保湿剤 、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、グルカム(glucam) E-10、ヒアルロン酸、ビオヒアルロン酸、ソルビット液(sorbit solution)、エリスリトール、マルチトール、可溶性コラーゲン、コンドロイチン硫酸、チューベローズ(polianthes tuberosa)由来多糖、尿素、三糖、ビタミン C リン酸エステルカルシウム塩およびピロリドンナトリウムカルボキシラート; 女性ホルモン、例えば、 エストラジオールおよびエストロン; アミノ酸、例えば、 セリン、メチオニンおよびトリプトファン、ビタミン、例えば、 ビタミン A、B2、B12 およびD、パントテン酸またはその誘導体等が挙げられる。
【0057】
従来の頭皮および/または毛髪処置用組成物に通常添加されている植物抽出物も本発明の組成物に添加してもよい。植物抽出物の例としては以下の植物から得られるものが挙げられる: ビロードアオイ(Althaea officinalis)、ヨクイニン(Coix seed)、ナガバギシギシ(Rumex crispus)、トウガラシ、アロエ、クコ(wolfberry)、ヨモギ、イネ、ハマゴウ(Vitex rotundifolia)、ロスマリヌス(Rosmarinus)、ハカマウラボシ(Drynaria Rhizome (Drynaria fortunei))、エニシダ、ゲンチアナ、レッドルーテッドセージ(red rooted sage (Salvia miltiorrhiza))、ヘチマ(sponge cucumber)、キキョウ(balloon flower)、マツ、クジン(Sophora Root (Sophora flavescens Aiton))、トウキ(Japanese angelica root)、ベニバナ、メギ(Japanese barberry)、ビンロウジ(betel nut (areca seed))、ユーカリ(tasmanian blue gum)、カゴソウ(Prunellae Spica)、モクツウ(Akebia stem)、ケイノコズチ根(Achyrantes root)、サイコ(Bupleurum root)、チャノキ(Camellia sinensis)、カンゾウ(Licorice root (Glycyrrhiza))、ホップ(hop)、キク(Chrysanthemum)、セネガ(Senega root (Polygala senega))、ゴマ、センキュウ(Cnidium rhizome (Cnidium officinal))、ツルドクダミ(Polygonum multiflorum)、カッコン(Pueraria root)、マイカイ花(Rosa maikwai H.Hara flower)、サフラン、ローズマリー、ジオウ(Rehmannia root)、ゼニアオイ(Tree mallow)、アセンヤク(Gambir)、チコリー(Chicory)、レモングラス(Hierba Luisa (Lemon grass))、イチイ(yew)、カワラヨモギ(Artemisia capillaris)、ウチワヤシ(Borassus filabellifer)、ウイキョウ(fennel)、コモンマロウ(Common mallow)、エイジツ(Rose fruit)、ロアサ・ウレンス(Loasa urens)、オンジ(Polygala root)、カコチャ(Kakocha)、ツルドクダミ(Polygonum multiflorum)、カッコウアザミ(Mexican ageratum)、カノコソウ(Valeriana fauriei)、ガラナ(guarana)、ムラサキイガヤグルマギク(Centaurea calcitrapa)、カンタリス(Cantharides)、キササゲ(Catalpa ovata G. Don)、キンセンカ(pot marigold)、キンモクセイ(Osmanthus fragrans var. aurantiacus)、ケイガイ(Japanese catnip (Schizonepeta tenuifolia Briq. var japonica Kitagawa))、ケンゴシ(Pharbitis seed)、ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)、クアチャララテ(cuachalalate)、クサノオウ(Greater celandine (Chelidonium majus))、クマセバ(Kumaseba)、モッショクシ(Chinese nutgalls (Galla rhois))、ゴボウシ(Great burdock achene (Arctii fructus))、コリアンダー(cilantro)、サイカチ(Gleditsia japonica)、サイコ(Bupleurum root)、サンシン(Gardenia fruit)、サンショウ(Japanese pepper)、シャクヤク(peony)、シャゼンシ(Plantago seed)、ヤツデアオギリ(Sterculia foetida)、ディクロア根(Dichroa root)、セドロン(Cedron)、センソ(Toad venom)、センブリ(Swertia japonica)、コノテガシワ(Thuja orientalis L.)、ソヨウ(Perilla herb)、ソフォラ(Sophora)、ダイオウ(Rhubarb)、コショウ(Piper angustifolium)、チャンカピエドラ(Chanca piedra (Phyllanthus niruri))、チョウジ(Clove)、ニガキ(Picrasma ailanthoides)、ヒレハリソウ(comfrey)、ビンロウジ(betel nut (areca seed))、ホミカ(Strychni Semen)、カリン(Chaenomeles fruit)、メハジキ(Leonurus japonicus)、ヤマハギ(Lespedeza bicolor)、スギナ(Regro (Equisetum arvense))、コロフォニー(Colophony)、ワタ(cotton)、ボタンピ(Moutan bark)、コンフリー(beinwell (Symphytum officinale L.))、アルニカ(Mountain arnica)、アマチャ(Sweet hydrangea (Hydrangea macrophylla var. thunbergii))、トウチュウカソウ(Chinese caterpillar fungus (Cordyceps sinensis))、ヒキオコシ(Isodon japonicus Hara)、オオムギ(Barley)、オレンジ(orange)、海藻(seaweed)、キュウリ(cucumber)、ゴボウ(burdock)、シイタケ(shiitake mushroom)、ランシウム・ドメスティクム(Ransium domesticum)、ビワ(loquat)、ブドウ葉(grape leaf)、スモモ(prune)、ヘチマ(sponge cucumber)、マイカイ(Rosa maikwai H.Hara)、ユリ(lily)およびリンゴ(apple)。
【0058】
さらに、本発明の効果を損なわない限り以下の物質を本発明の組成物に添加してもよい: 乳酸またはそのアルキルエステル; 有機酸、例えば、 コハク酸、リンゴ酸およびクエン酸; プロテアーゼ阻害剤、例えば、 トラネキサム酸; 油、例えば、オリーブ油、スクアラン、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、高級脂肪酸および高級アルコール; 多価アルコール、例えば、グリセリンおよびプロピレングリコール;その他、例えば、界面活性剤、例えば、硬化ヒマシ油のエチレンオキシド付加物、湿潤剤、増粘剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、清涼剤、香料、色素、エタノールおよび水。
【0059】
本発明の頭皮および毛髪の処置用組成物は、頭皮に外用出来る限りいかなる形態でもよく、例えば、液剤、乳剤、軟膏、クリーム、ゲルおよびエアロゾルが挙げられる。組成物は、所望の形態の製造に常套的に用いられる適当な基材成分を用いて製造すればよい。本発明の組成物は、医薬品、薬用化粧品または化粧品として提供することが出来る。
【0060】
本発明の毛髪および頭皮ケア組成物は、抜け毛、禿頭症、脱毛症、フケおよび/または頭皮の痒みの処置または予防に用いることが出来る。組成物が適用される非限定的な状態の例は、男性型禿頭症、主に女性にみられる広汎性脱毛症および円形脱毛症の処置または予防である。
【0061】
本発明の組成物は頭皮に局所的に塗布または噴霧するとよい。成分の組合せにより、活性成分は有効に経皮的に吸収される。
【0062】
本発明の毛髪および頭皮ケア組成物の用量は、対象の年齢および性別、および処置すべき抜け毛または細毛の程度に応じて決定され得る。量は組成物の剤形に応じても変動しうる。一般に、成人男性について、組成物は0.0001-100mg/日/kg 体重、好ましくは、0.001-10mg/日/kg 体重のプロスタグランジン化合物の量にて適用される。量は一日2-4回に分けて分割用量で与えてもよい。
【0063】
合成例1
13,14-ジヒドロ-15,15-トリメチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステル (5)
【化4】

【0064】
トルエン (10.2ml)中の化合物 1 (510.0mg、1.273mmol)の溶液に、1,3-プロパンジオール (0.92ml、12.73mmol)および触媒量のp-トルエンスルホン酸を添加し、混合物を17時間還流下で加熱した。その後、反応を室温まで冷えるまで放置し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液、および塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し(Merck 7734、ヘキサン: 酢酸エチル=3:2)、化合物 2 (581.3mg)を得た。
【0065】
トルエン (11.6ml)中の化合物 2 (580.0mg、1.265mmol)の溶液を-78℃に冷却し、1.5M-DIBAH (トルエン中、2.95ml、4.427mmol)をそれに滴下し、混合物を1時間撹拌し、次いで、メタノール (1.79ml)を結果として得られた混合物に滴下した。ロッシェル塩飽和水溶液(100ml)をそれに添加し、混合物を30分間激しく撹拌した。結果として得られた混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(Merck 7734、ヘキサン: 酢酸エチル=1:9-0:10)、化合物3 (275.2mg、1からの収率 61.4%)を得た。
【0066】
THF (6ml)中の (4-カルボキシブチル)トリフェニル臭化ホスホニウム (1.346g、3.038mmol)の分散液に、0℃のTHF 中の1M- カリウムt-ブトキシド(6.07ml、6.07mmol)を添加した。反応を室温で1時間撹拌し、-20℃に冷却した。THF (7ml)中の化合物 3 (269.2mg、0.7594mmol)をそれに滴下し、-20-0℃で2時間撹拌した。氷冷水を反応に添加し、THFを減圧下でエバポレートして除いた。濃縮された残渣に、0℃で、氷冷 1N 塩酸水溶液を滴下し、溶液をpH 4に調整した。
【0067】
溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣にエーテルを添加し、17 時間室温で撹拌し、セライトでろ過した。ろ液を減圧下でエバポレートし、粗化合物 4を得た。
【0068】
アセトニトリル (7.6ml)中の化合物 4 (0.7594mmol)にDBU (0.45ml、3.038mmol)、ヨウ化イソプロピル (0.30ml、3.038 mmol) を添加し、4時間45℃で撹拌した。反応混合物を減圧下でエバポレートした。残渣に水を添加し、酢酸エチルで抽出した。有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(Merck 9385、ヘキサン : 酢酸エチル= 2:3)、727.2mgの目的生成物 (3からの収率 72.1%)を得た。こうして得られた化合物 4 (カルボン酸、259.0mg)を分取HPLCでさらに精製し、化合物 5 (イソプロピルエステル、240.3mg、HPLC 精製収率 92.8%)を得た。
化合物 51H-NMR スペクトル (200MHz,CDCl3):δ5.57-5.14(2H、m)、 5.01(1H、sept、J=6.2Hz)、4.17(1H、bs)、3.97(1H、bs)、4.00-3.78(4H、m)、2.76(1H、d、J=6.2Hz)、2.29(2H、t、J=7.5Hz)、 2.44-2.06 (5H、m,)、1.88(2H、bt,)、1.93-1.18(22H、m)、1.23(6H、d、J=6.2Hz)、0.89(3H、t、J=6.8Hz)
【0069】
合成例 2
13,14-ジヒドロ-15,15-ジメトキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステル (10)
【化5】

【0070】
メタノール (2.4ml)中の化合物 1 (797.8mg、2.002mmol) の溶液に、触媒量の p-トルエンスルホン酸、オルトギ酸メチル(2.19ml、20.02mmol)および無水硫酸マグネシウム (1.20g、10.01mmol)を添加し、還流下で4時間加熱した。反応を冷却し、炭酸水素ナトリウムを添加し、セライトでろ過した。ろ液を減圧下でエバポレートし、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(Merck 7734、ヘキサン : 酢酸エチル = 3:2)、化合物 7 (884.3mg、収率 98.9%)を得た。
【0071】
トルエン(15.4ml)中の化合物 7 (767.5mg、1.719mmol) の溶液を-78℃に冷却し、1.5M-DIBAH (トルエン中、4.0ml、6.016mmol)をそれに滴下し、混合物を1時間撹拌した。次いで、メタノールを反応に滴下し、反応を室温まで加熱した。ロッシェル塩飽和水溶液(150ml)をそれに添加し、混合物を30分間激しく撹拌した。結果として得られた混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(Merck 9385、ヘキサン: 酢酸エチル=1:9)、化合物 8 (415.8mg、収率 70.2%)を得た。
【0072】
THF中の(4-カルボキシブチル)トリフェニル臭化ホスホニウム(1.250g、2.819mmol)の分散液に、THF中の1M- カリウム t-ブトキシド(5.64ml、5.64mmol)を0℃ で添加した。反応を室温で1時間撹拌し、-20℃に冷却した。THF (4ml)中の化合物 8 (242.8mg、0.7048mmol)をそれに滴下し、-20-0℃で2時間撹拌した。氷冷水を反応に添加し、THFを減圧下でのエバポレーションによって除いた。残渣に0℃で、氷冷 1N 塩酸水溶液を滴下して溶液をpH 5に調整した。溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣にエーテルを添加し、17 時間室温で撹拌し、セライトでろ過した。ろ液を減圧下でエバポレートして粗化合物 9 (カルボン酸)を得た。
【0073】
アセトニトリル (7ml)中の化合物 9 (0.7048mmol)の溶液に、DBU (0.42ml、2.819mmol)、ヨウ化イソプロピル (0.28ml、2.819mmol)を添加し、混合物を16 時間45℃で撹拌した。反応混合物を減圧下でエバポレートした。残渣に水を添加し、酢酸エチルで抽出した。有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣をシリカゲルカラム (Merck 9385、ヘキサン:酢酸エチル= 1:2)で精製し、化合物 10(268.0mg、8からの収率 80.8%)を得た。
【0074】
上記のようにして得た化合物 10 (合計370 mg)をさらに分取HPLCで精製し、純粋な化合物 10 (341.9mg、HPLC 精製収率 92.4%)を得た。
【0075】
化合物 10の1H-NMR スペクトル (200MHz,CDCl3):δ5.54-5.13(2H、m)、5.00(1H、sept、J=6.2Hz)、4.18(1H、bs)、3.95(1H、bs)、3.16(6H、s)、2.66(1H、d、J=6.4Hz)、2.29(2H、t、J=7.3Hz)、2.48-2.06(5H、m)、1.89(2H、bt)、1.79-1.17(20H、m)、1.23(6H、d、J=6.2Hz)、0.89(3H、t、J=6.8Hz)
【0076】
合成例 3
13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-17-フェニル-18,19,20-トリノール-PGF2α イソプロピルエステル (12)
化合物 12を合成例合成例 1と同様にして化合物 11から調製した。
【0077】
【化6】

【0078】
化合物 111H-NMR スペクトル (200MHz、CDCl3):δ8.04-7.93(2H、m)、7.63-7.38(3H、m)、7.35-7.11(5H、m)、5.215.03(2H、m)、2.98-2.24(11H、m)、2.12-1.98(1H、m)、1.80-1.50(2H、m)
化合物 121H-NMR スペクトル (200MHz、CDCl3):δ7.35-7.12(5H,m)、5.56-5.35(2H、m)、5.00(1H、sept、J=6.2Hz)、4.15(1H、bs)、3.96(4H、s)、3.92(1H、bs)、3.18(1H、bd)、2.86(1H、bd)、2.75-2.63(2H、m)、2.28(2H、t、J=7.3Hz)、2.46-1.15 (17H、m)、1.22(6H、d、J=6.2Hz)
【0079】
合成例 4
13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α エチルエステル (15)
【化7】

【0080】
メタノール (91.8 ml)中の化合物 13 (9.18 g、19.59 mmol)の溶液に、8N-水酸化ナトリウム水溶液 (24.49 ml)を0℃で添加した。反応混合物を3時間室温で撹拌し、0℃で6N-塩酸で酸性にした。混合物を酢酸エチル (100 ml + 50 ml) で抽出した。有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液 (100 ml x 2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。抽出物を減圧下でエバポレートし、粗酸 14を油状物として得た。
【0081】
アセトニトリル (60 ml)中の粗酸 14および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エン(11.72 ml)の溶液に、ヨウ化エチル (6.27 ml)を0℃で滴下した。反応混合物を45℃で17 時間撹拌し、室温まで冷却し、エバポレートした。残渣に、水(100 ml)を添加した。混合物を酢酸エチル (100 ml x 2)で抽出した。有機層を0.1N-塩酸、重炭酸ナトリウム飽和水溶液 (100 ml)および塩化ナトリウム飽和水溶液 (100 ml)で洗浄した。抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレートした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで2回精製し (Merck 7734、220 g、ヘキサン : 酢酸エチル= 2:3、-> BW-300、210g、ヘキサン:2-プロパノール=6:1)、エチルエステル 15 (8.60 g、18.92 mmol、13から96.6%)を無色油状物として得た。
【0082】
化合物151H-NMR (200MHz、CDCl3中、TMS = 0ppm):δ5.58-5.29(2H、m)、4.15(1H、brs)、4.13(2H、q、J=7.1Hz)、3.97(1H、brs)、3.94(4H、s)、2.80-2.70(1H、br)、2.49-2.36(1H、m)、2.32(2H、t、J=7.4Hz)、2.36-2.15 (4H、m)、1.90-1.83(2H、m)、1.83-1.12(20H、m)、1.26(3H、t、J=7.1Hz)、0.88(3H、t、J=6.5Hz)
【0083】
実施例
本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。しかしこれら実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。
【0084】
頭皮および毛髪の処置用ローションを表1に示す成分を用いて調製し、そのフケおよび頭皮の痒みの予防効果を評価した。以下の実施例において、成分の量は、特に断りのない限り組成物の総重量に基づく重量% (乾燥重量)として表す。
1)ローションの調製
グリチルリチン酸アンモニウム、ニコチンアミド、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2αエチルエステル (以下、「PG化合物A」と称する)、DL-α-酢酸トコフェロール、L-メントールおよび香料をエタノールに添加してアルコール成分を得た。乳酸、乳酸ナトリウム、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および着色料を精製水に添加して水性成分を得た。アルコールおよび水性成分を混合し、撹拌およびろ過して被験組成物を得た。実施例2、4、6、7および8は比較例である。
【0085】
表1
【表1】

【0086】
(2)フケおよび頭皮の痒みの予防効果、および使用感の評価
フケおよび頭皮の痒みを訴える男性に実施例1-8の組成物により処置を施し、フケおよび頭皮の痒みの予防効果を評価した。使用感も評価した。この試験は1群当たり5名にて行った。
【0087】
2-3 mlの組成物を、各被験対象の頭皮に1日2回、1ヶ月間適用した。この期間の間、被験対象は薬用成分を含まないシャンプーで毛髪を1日1回洗った。処置期間の最後に、被験対象のフケを吸引装置により集め、フケのタンパク質量を測定した。フケの量は以下に示す基準にしたがって評価し、平均スコアを表1に示す。さらに、被験対象は頭皮の痒みおよび使用感を以下に示す基準にしたがって評価した。平均スコアを表1に示す。
【0088】
評価基準
i) 頭皮の痒み
3:非常に痒い
2:中程度に痒い
1:わずかに痒い
0:ほとんど痒くない
ii)フケの量
3:たくさんのフケ
2:中程度のフケ
1:わずかなフケ
0:ほとんどフケ無し
iii)使用感
各対象は組成物の使用感を評価し、以下の基準にしたがってスコア付けし、平均スコアを表1に示す。
5: 非常に良い
4: 良い
3: 普通
2: 悪い
1: 非常に悪い
【0089】
(3)育毛促進アッセイ (マウスにおける育毛活性化アッセイ)
実験はOgawa et al. (Normal and Abnormal Epidermal Differentiation、M. Seiji and I. A. Barstein編集、東大出版会発行、この文献は引用によりその内容を本出願に含める)に記載の方法にしたがって行った。雄性 C3H マウス (60日齢)を用いた。各マウスの背中の毛を約 2 x 4 cmの大きさで剪毛した。翌日から、被験組成物を毎日1日1回剪毛領域に適用した。18日目に、毛の再生が観察された領域の全剪毛領域に対する比を評価し、以下に示す基準にしたがってスコア付けした。3匹のマウスを各被験組成物について用い、 平均値を表2に示す。
【0090】
評価基準
0:毛の再生は観察されなかった
1:毛の再生が剪毛領域の10%未満で観察された
2:毛の再生が剪毛領域の約 30 %で観察された
3:毛の再生が剪毛領域の約 50 %で観察された
4:毛の再生が剪毛領域の80%を超えて観察された
【0091】
結果を表2に示す。
表2
【表2】

【0092】
(4) 組成物中での13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2αエチルエステル (PG化合物A)の安定性
実施例1および2の組成物を室温で2 ヶ月保存した。その後、およそ 5gの各組成物を秤りとり、重量を正確に測定した。正確に5mlのオクタノフェノンを内部標準としてそれに添加し、被験溶液とした。2μlの被験溶液を液体クロマトグラフのカラムに注入し、PG化合物Aの安定性を判定した。PG化合物のピーク面積と、内部標準であるオクタノフェノンのピーク面積との比(PG化合物A/オクタノフェノン)をクロマトグラムから読み取った。重量比 (PG化合物A/オクタノフェノン)をあらかじめ準備しておいた検量線に基づきピーク面積比から判定し、組成物中のPG化合物Aの重量を計算した。同時に、上記と同じ組成物を2 ヶ月0℃で保存した。その後、組成物中のPG化合物Aの量を上記と同様にして判定した。室温で保存した化合物と0℃で保存した化合物の比を0℃で保存したPG化合物Aの量を100%として計算した。
【0093】
測定条件
LC システム: LC-2010C (島津製作所、日本、京都)
検出器: 紫外分光計
波長: 254nm
カラム: CAPCELL PAK C18 MGII(S-3) (株式会社資生堂、日本、東京)
運転温度: 40℃
移動相:希リン酸とアセトニトリルとの混合溶媒
流速:PG化合物Aの保持時間が約 16分となるよう調整
【0094】
結果を表3に示す。
表3
【表3】

【0095】
製剤例
製剤例を以下に示す:
製剤例 1
製剤の目的および効果:
フケおよび頭皮の痒みの予防。爽快感の提供。
表4
【表4】

【0096】
製剤例 2
製剤の目的および効果:
フケおよび頭皮の痒みの予防。 爽快感の提供。
表5
【表5】

【0097】
製剤例 3
製剤の目的および効果:
フケおよび頭皮の痒みの予防。爽快感の提供。
表6
【表6】

【0098】
製剤例 4
製剤の目的および効果:
フケおよび頭皮の痒みの予防。抜け毛の予防。爽快感の提供。
表7
【表7】

【0099】
製剤例 5
製剤の目的および効果:
フケおよび頭皮の痒みの予防。爽快感の提供。白髪予防。
表8
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メントール誘導体および15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を含む頭皮および毛髪の処置用組成物。
【請求項2】
該プロスタグランジン化合物が下記式(I)で示される化合物である請求項1に記載の組成物:
【化1】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、または−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
およびZは、酸素、窒素または硫黄;
およびRは置換されていてもよい低級アルキルであり、一緒につながって低級アルキレンを形成してもよい;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基または複素環オキシ基]。
【請求項3】
プロスタグランジン化合物が式(II)で表される請求項2記載の組成物:
【化2】

[式中、L、M、A、B、Z、Z、R、RおよびRは請求項2に記載の意味と同義である;
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
は、単結合または低級アルキレン;そして、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ基]。
【請求項4】
該プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-プロスタグランジン化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-プロスタグランジン化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
該プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステルである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
該プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-17-フェニル-18,19,20-トリノール-PGF2α イソプロピルエステルである請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15,15-トリメチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステルである請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
該プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15,15-ジメトキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステルである請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
該プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α エチルエステルである請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
組成物の総量に基づいて、プロスタグランジン化合物を0.0001-10 wt% (乾燥重量) の量にて含み、メントール誘導体を0.001-5.0 wt% (乾燥重量)の量にて含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。

【公表番号】特表2008−525315(P2008−525315A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531495(P2007−531495)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/JP2005/024276
【国際公開番号】WO2006/070942
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(592060271)株式会社アールテック・ウエノ (22)
【Fターム(参考)】