説明

頭皮頭髪用組成物

【課題】 抜け毛防止、並びに、フケ防止効果に優れた頭皮頭髪用組成物を提供する。
【解決手段】 (A)抗炎症剤と、(B)殺菌剤と、(C)ポリエチレングリコールとを含有する抜け毛防止、並びに、フケ防止用の頭皮頭髪用組成物。
殺菌剤はイソプロピルメチルフェノール及び/又はピロクトン オラミンであることが好ましく、また、抗炎症剤は、グリチルレチン酸及び/又はその誘導体、グリチルリチン酸及び/又はその塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮頭髪用組成物に関し、更に詳しくは、抜け毛防止、並びに、フケ防止効果に優れた頭皮頭髪用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フケは、頭皮の表皮細胞が分裂増殖し角化した結果、最後に角質片として剥がれ落ちたもので、正常な頭皮にも発生するものである。
【0003】
しかしながら、皮脂の分解物のほか、カラーリング剤などの外来物やその分解物が頭皮中に吸収され、その刺激による炎症によって表皮細胞の増殖・角化が亢進し、病的なフケ症となる場合がある。その原因としては、皮脂の過剰分泌、頭皮微生物による皮脂等の分解、紫外線などが挙げられる。
このようなことから、フケを抑制する目的で、従来の育毛剤組成物には、殺菌剤や抗炎症剤が配合されてきている。
【0004】
一方、脱毛には、さまざまなタイプがあり、最も多く見られる男性型脱毛は、男性ホルモンが原因と言われているが、男性型脱毛の初期症状である抜け毛の増加は、男性ホルモン作用による過剰皮脂の分解物による毛根部への刺激も一つの原因と考えられており、この脱毛の緩和にも殺菌剤や抗炎症剤が有効成分として用いられている。
【0005】
しかしながら、殺菌剤や抗菌剤の中には、皮膚刺激性の点で人体に対する安全性等に問題があるものがあり、効果を高める目的で多量に用いることはできず、少量の使用で皮膚上に長く貯留させることが望まれている。その一方で、抗炎症剤の作用点は、皮下の表皮基底細胞、並びに毛根部毛母細胞であることから、効果向上のためには、効果的に抗炎症剤を皮膚に浸透させることが望まれている。
【0006】
抗炎症剤等の有効成分の経皮吸収促進剤としては、一般に、界面活性剤、エステル油、多価アルコールなどが知られている。多価アルコールを用いた例としては、例えば、美白成分の経皮吸収促進を目的とし、ポリエチレングリコールを配合した皮膚外用剤(例えば、特許文献1参照)や、育毛成分ミノキシジルの経皮吸収改善を目的とし、ポリエチレングリコールを含む多価アルコールと高級アルコールを用いるミノキシジル配合軟膏剤(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0007】
しかしながら、これらの各文献には、いずれも美白成分又は育毛成分の単一有効成分の吸収性向上に着目したもので、本発明のような、フケや抜け毛の予防を目的とした頭皮頭髪用組成物において、抗炎症剤の経皮吸収性は高めると同時に殺菌剤の皮膚上への貯留を高めるという組成技術は記載も示唆もないものである。
【0008】
また、グリチルレチン酸とピロクトン オラミンの配合例(例えば、特許文献3参照)や、グリチルリチン酸ジカリウムとピロクトン オラミンの配合例及びイソプロピルメチルフェノールとポリエチレングリコールの配合例(例えば、特許文献4参照)などが知られているが、これらは、いずれも、抗炎症作用と殺菌作用の効果を同時に高めるという点において未だ充分でない点に課題があるものである。
【特許文献1】特開2001−106621号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開昭63−301811号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2001−89329号公報(特許請求の範囲、実施例9等)
【特許文献4】特開平9−77643号公報(特許請求の範囲、実施例3,4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、殺菌剤は皮膚に浸透させずに皮膚上に貯留させる一方、抗炎症剤は効果的に皮膚に浸透させることにより、頭皮に対し安全で、かつ、有効なフケ抑制、抜け毛防止作用を持った頭皮頭髪用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、抗炎症剤と、殺菌剤とを含有せしめると共に、殺菌剤は皮膚に浸透させずに皮膚上に貯留させる一方、抗炎症剤は効果的に皮膚に浸透させる特定の成分を含有せしめることにより、上記目的の頭皮頭髪用組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)に存する。
(1) (A)抗炎症剤と、(B)殺菌剤と、(C)ポリエチレングリコールとを含有する抜け毛防止、並びに、フケ防止用の頭皮頭髪用組成物。
(2) 殺菌剤がイソプロピルメチルフェノール及び/又はピロクトン オラミンである上記(1)記載の頭皮頭髪用組成物。
(3) 抗炎症剤が、グリチルレチン酸及び/又はその誘導体、グリチルリチン酸及び/又はその塩から選ばれる少なくとも1種である上記(1)又は(2)記載の頭皮頭髪用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、殺菌剤は皮膚に浸透させずに皮膚上に貯留させる一方、抗炎症剤は効果的に皮膚に浸透させることにより、頭皮に対し安全で、かつ、有効なフケ抑制、抜け毛防止作用を持った頭皮頭髪用組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の抜け毛防止、並びに、フケ防止用の頭皮頭髪用組成物は、(A)抗炎症剤と、(B)殺菌剤と、(C)ポリエチレングリコールとを含有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明に用いる(A)成分の抗炎症剤としては、頭皮に用いられる抗炎症剤であれば、特に限定されないが、頭皮に対する安全性及び抗炎症効果の点から、グリチルリチン酸及び/又はその塩、グリチルレチン酸及び/又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種(各単独又はこれらの2種以上の組み合わせ、以下同様)が挙げられる。
具体的には、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸メチル、β−グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリルなどの少なくとも1種が好適であり、これらの中でも、更なる安全性及び更なる抗炎症効果の点から、好ましくは、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウムが望ましい。
【0015】
これらの(A)成分の抗炎症剤の含有量は、頭皮頭髪用組成物全量に対して、通常0.001〜2.0質量%(以下、単に「%」という)であるが、好ましくは、0.01〜1.0%、特に好ましくは、0.05〜0.5%とすることが望ましい。
この(A)成分の含有量が0.001%未満であると、十分な抗炎症効果が得られない場合があり、一方、2.0%を超えて多すぎると、不経済となり、(C)成分のポリエチレングリコールと組合せるという本発明の目的に適合しないものとなる。
【0016】
本発明に用いる(B)成分の殺菌剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−2−ピロリドン系化合物またはその塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、トリクロロカルバニリド、ジンクピリチオンなどの少なくとも1種が挙げられ、これらを適宜選択して含有することができる。
これらの中でも、更なる安全性及び更なる殺菌効果の点から、イソプロピルメチルフェノール、並びに1−ヒドロキシ−2−ピロリドン系化合物が好ましく、特に好ましくは、イソプロピルメチルフェノールとピロクトンオラミンが望ましい。
【0017】
これらの(B)成分の殺菌剤の含有量は、頭皮頭髪用組成物全量に対して、通常0.001〜2.0%、好ましくは、0.005〜1.0%、特に好ましくは、0.01〜0.5%とすることが望ましい。
この(B)成分の含有量が、0.001%未満であると、十分な殺菌効果が得られない場合があり、一方、2.0%を超えて多すぎると、皮膚刺激が生じる可能性が高まり、本発明の目的に適合しないものとなる。
本発明において、有効なフケ抑制、抜け毛防止作用を更に効果的に付与する点から、上記(A)成分の抗炎症剤と、上記(B)成分の殺菌剤との含有比率〔(A)/(B)〕を好ましくは、1/2000〜2000/1、更に好ましくは1/100〜200/1、特に好ましくは、1/10〜50/1とすることが望ましい。
【0018】
本発明に用いる(C)成分のポリエチレングリコールは、その重合度によって規定される平均分子量については特に制限はないが、皮膚刺激、製造上の点から、好ましくは、平均分子量(化粧品原料基準収載のポリエチレングリコール200の平均分子量試験法を準用)が200〜2000、より好ましくは、200〜600であるものが望ましい。
具体的に用いることができるポリエチレングルコールとしては、ポリエチレングリコール200、300、400、600、1000、1500(以上、化粧品原料基準準拠)、1540、2000(以上、化粧品種別配合成分規格準拠)の少なくとも1種が望ましく、更にポリエチレングリコール200、300、400、600が望ましい。
このポリエチレングルコールの平均分子量が200未満であると、皮膚刺激が生じる可能性が高まり、一方、2000を超えてより大きいと、製造上の不具合(ハンドリングが悪くなる)が生じる可能性 があり、好ましくない。
【0019】
これらの(C)成分のポリエチレングルコールの含有量は、頭皮頭髪用組成物全量に対して、通常0.01〜10%、好ましくは、0.05〜5%、特に好ましくは、0.1〜3%とすることが望ましい。
この(C)成分の含有量が0.01%未満であると、本発明の十分な効果が得られない場合があり、一方、10%を越えて多すぎると、不経済となると共に、べたつき等の使用感上の不具合が生じる可能性があり、好ましくない。
【0020】
本発明の頭皮頭髪用組成物組成物には、上記(A)成分の抗炎症剤と、(B)成分の殺菌剤と、(C)成分のポリエチレングリコールとを含有するものであるが、更に抜け毛防止・フケ防止効果を増強させるために、本発明の効果を損なわない範囲で、既知の薬効成分、例えば、血行促進剤、細胞賦活剤、抗男性ホルモン剤、保湿剤、ビタミン剤、アミノ酸類等を含有することができる。また、上記薬効成分以外の任意の成分、例えば、精製水、エタノール、セルロース類、界面活性剤、油脂類、エステル油、高分子樹脂、色材、香料、紫外線吸収剤等を本発明の効果を損なわない範囲で、適宜量含有することができる。
【0021】
本発明の頭皮頭髪用組成物に香料を含有せしめる場合、使用される香料は、例えば、特開2003−95895号公報に記載した香料、香料組成物に準じ、香料組成物を含有せしめる場合、組成物全量に対して香料組成物が0.00001〜50%となるように含有すると好適であり、より好ましくは、0.0001〜30%含有することが望ましい。
本発明の頭皮頭髪用組成物は、常法に従って、均一溶液、ローション、ジェル、クリーム、エアゾール等の形態で使用することができる。
【0022】
このように構成される本発明の頭皮頭髪用組成物では、(A)成分の抗炎症剤と、(B)成分の殺菌剤と、(C)成分のポリエチレングリコールとを含有せしめることにより、(B)成分の殺菌剤は頭皮に浸透させずに頭皮上に貯留させる一方、(A)成分の抗炎症剤は効果的に頭皮に浸透させることにより、頭皮に対し安全で、かつ、有効なフケ抑制作用、抜け毛防止作用を効果的に付与することができるものとなる。
これらの作用効果機構は、未だ明らかでないが、(A)成分の抗炎症剤と、(B)成分の殺菌剤と、(C)成分のポリエチレングリコールとの三種を含有せしめると、頭皮角質層が柔軟になり、これにより、殺菌剤は皮膚(頭皮)に浸透させずに皮膚上に貯留させる一方、抗炎症剤は効果的に皮膚に浸透させることにより、頭皮に対し安全で、かつ、有効なフケ抑制作用、抜け毛防止作用を効果的に付与できるものと推察される。
【実施例】
【0023】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、下記実施例等に限定されるものではない。なお、以下の例において「%」は、質量基準であり、全量100質量%である。
【0024】
〔実施例1〜4及び比較例1〜6〕
下記表1に示す各組成の頭皮頭髪用組成物となる育毛トニック剤を常法により調製した。
得られた各育毛トニック剤について、そのフケ防止効果および抜け毛防止効果を下記試験方法に基づいて評価した。これらの結果を下記表1に示す。また、実施例等(後述する実施例5〜15含む)に使用した原料名の詳細を下記表13に示す。
【0025】
(フケ防止効果の試験方法)
フケの発生が多いと自覚している成人男性100名(年齢26〜54才、以下同様)を10名ずつ10群に分け、各群に対して調製した各育毛トニック剤を1日1回2mLとし、1ヶ月間頭皮に塗布した。
フケ防止効果につき、5段階(著効果:5点、有効:4点、やや有効:3点、無効:2点、悪化:1点)で皮膚科医が目視により評価し、各群について下記式によりフケ防止効果有効率(%)を算出した。この数値が高い程、フケ防止効果に優れていることを示す。
フケ防止効果有効率(%)=やや有効(:3点)以上の人数/(10人×100)
【0026】
(抜け毛予防効果の試験方法)
洗髪時に抜け毛数が多く、更に頭髪がやや薄くなったと自覚している成人男性100名を10名ずつ10群に分け、各群に対して調製した育毛トニック剤を1日1回2mLとし、1ヶ月間頭皮に塗布した。
各人につき、塗布開始前日までの連続3日間の洗髪時の抜け毛本数の総数(Y)と使用1ヵ月後の連続3日間の洗髪時の抜け毛本数の総数(Z)を求め、下記式により抜け毛予防率(%)を算出した。更に、各群について抜け毛予防率の一人当たりの平均値Xを算出した。
抜け毛予防率(%)=(Z/Y×100)
上記平均値Xと抜け毛予防効果との関係は、XがX>100の場合、試験後の方が試験前よりも抜け毛が多く、XがX<100の場合は、試験後の方が試験前よりも抜け毛が少ないことを意味し、Xが小さい方が、抜毛防止効果が大きいことを表す。
【0027】
【表1】

【0028】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜4は、本発明の範囲外となる比較例1〜6に較べて、有効なフケ防止効果、抜け毛防止効果を持った頭皮頭髪用組成物となることが判明した。
【0029】
〔実施例5〜15〕
本発明の(A)成分の抗炎症剤と、(B)成分の殺菌剤と、(C)成分のポリエチレングリコールとを含有するフケ防止効果、抜け毛防止効果を持った具体的組成(頭皮用エッセンス、育毛トニック、各種組成の養毛剤1〜5、育毛スプレー、養毛へアクリーム)を、下記表2〜表11に示す。これらの実施例5〜15においても、フケ防止効果有効率は全て80%以上であり、かつ、抜け毛予防率平均値Xも50%以下となることが判明した。
【0030】
(実施例5、頭皮用エッセンス)
下記表2に示す組成により頭皮用エッセンスを常法により調製した。
【表2】

【0031】
(実施例6、育毛トニック)
下記表3に示す組成により育毛トニックを常法により調製した。
【表3】

【0032】
(実施例7、養毛剤)
下記表4に示す組成により養毛剤1を常法により調製した。
【表4】

【0033】
(実施例8、養毛剤)
下記表5に示す組成により養毛剤2を常法により調製した。
【表5】

【0034】
(実施例9、養毛剤)
下記表6に示す組成により養毛剤3を常法により調製した。
【表6】

【0035】
(実施例10、養毛剤)
下記表7に示す組成により養毛剤4を常法により調製した。
【表7】

【0036】
(実施例11、養毛剤)
下記表8に示す組成により養毛剤5を常法により調製した。
【表8】

【0037】
(実施例12、育毛スプレー)
下記表9に示す組成により育毛スプレーを常法により調製した。
【表9】

【0038】
(実施例13、養毛へアクリーム)
下記表10に示す処方物A(油相部)、B(水相部)を70℃でそれぞれ溶解し、BにAを加えて均一に乳化した。更に冷却しながらC(香料)を加えて育毛へアクリームを調製した。
【表10】

【0039】
(実施例14、育毛トニック)
下記表11に示す組成により、常法により育毛トニックを調製した。
【表11】

【0040】
(実施例15、育毛トニック)
下記表12に示す組成により、常法により育毛トニックを調製した。
【表12】

【0041】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)抗炎症剤と、(B)殺菌剤と、(C)ポリエチレングリコールとを含有する抜け毛防止、並びに、フケ防止用の頭皮頭髪用組成物。
【請求項2】
殺菌剤がイソプロピルメチルフェノール及び/又はピロクトン オラミンである請求項1記載の頭皮頭髪用組成物。
【請求項3】
抗炎症剤が、グリチルレチン酸及び/又はその誘導体、グリチルリチン酸及び/又はその塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の頭皮頭髪用組成物。


【公開番号】特開2006−176446(P2006−176446A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371661(P2004−371661)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】