説明

顔料分散剤および印刷インキ組成物

【課題】 低粘度、高光沢、鮮明な色調、貯蔵安定性を与え、ウレタン樹脂バインダーとの相溶性が良い顔料分散剤を提供する。
【解決手段】 主鎖(A)と側鎖(B)からなるグラフト重合物(C)であって、該主鎖(A)がアミノ基、イミノ基及び1価もしくは2価の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる1種以上を有するポリウレタン樹脂(a1)及び/又はポリウレア樹脂(a2)からなり、かつ側鎖(B)がポリエーテル骨格(b1)及び/又はポリエステル骨格(b2)からなるグラフト重合物からなることを特徴とする印刷インキ用顔料分散剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキ用顔料分散剤および印刷インキ組成物に関する。さらに詳しくは、印刷インキ組成物に含まれる顔料の分散性を向上させるために使用する顔料分散剤、およびこれを含む印刷インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、印刷インキ組成物には、流動性、塗膜の光沢、鮮明な色調、貯蔵安定性を向上させる目的で、種々の顔料分散剤が使用されている。これらの分散剤においては、溶媒に親和性のあるポリマー鎖と共に、顔料粒子表面に対して吸着する部位を持つものが比較的優れた分散性を得ることが一般的に知られている。
この顔料粒子表面に対して吸着させる方法としては、(1)分散剤の分子中に極性基を持たせることによる、いわゆる酸塩基相互作用を利用するものと、(2)アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系等の有機色素残基を導入して顔料粒子表面との化学構造の類似性を持たせるものとに分けられる。
【0003】
酸塩基相互作用を利用したものについて、例えば、ポリエステル化合物とポリアルキレンイミンを反応させたもの(例えば、特許文献1)やポリアリルアミンを反応させたもの(例えば、特許文献2)が開示されているが、フタロシアニンの様な表面に極性基が少ない顔料に対しては十分な分散効果が得られないため、汎用の分散剤として使用することは難しい。
また、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系等の有機色素残基を用いるものは、色素の骨格を有しているので色調を損なうという欠点がある。
これらの点を改善するために、芳香族基で変性されたポリアミン化合物成分とラクトン類を含む成分とを反応させてなる顔料分散剤が掲載されている(特許文献3)。しかし、塗膜の光沢値や貯蔵安定性等、満足のいく値は得られておらず、分散性は不十分である。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−174939号公報
【特許文献2】特開平8−38875号公報
【特許文献3】特開平9−157374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低粘度、高光沢、鮮明な色調、貯蔵安定性を与え、ウレタン樹脂バインダーとの相溶性が良い顔料分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、主鎖(A)と側鎖(B)からなるグラフト重合物(C)であって、該主鎖(A)がアミノ基、イミノ基及び1価もしくは2価の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる1種以上を有するポリウレタン樹脂(a1)及び/又はポリウレア樹脂(a2)からなり、かつ側鎖(B)がポリエーテル骨格(b1)及び/又はポリエステル骨格(b2)からなるグラフト重合物からなることを特徴とする印刷インキ用顔料分散剤である。
また、下記一般式(1)で示されるn個のイミノ基とポリエーテル骨格(b1)又はポリエステル骨格(b2)からなるジアミノ化合物(D)と、分子内に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート化合物(E)とを反応させてなる重合体(F)からなることを特徴とする印刷インキ用顔料分散剤である。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1とR2はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基を表し、X1はポリエーテル骨格(b1)又はポリエステル骨格(b2)のいずれかを表す。nは1〜4の整数を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の顔料分散剤は、下記の効果を有する。
この顔料分散剤を含有する印刷インキは、低粘度、高光沢、鮮明な色調、貯蔵安定性を有する。さらに、ウレタン樹脂との相溶性が良く、ウレタン系樹脂バインダーを用いる印刷インキに使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の印刷インキ用顔料分散剤は、主鎖(A)と側鎖(B)からなるグラフト重合物(C)であり、この主鎖(A)は、ポリウレタン樹脂(a1)及び/又はポリウレア樹脂(a2)からなるが、その分子鎖中にアミノ基、イミノ基、1価もしくは2価の芳香族炭化水素基、あるいはこれらの2種以上の組み合わせを有することを特徴としている。さらに、その側鎖(B)は分子鎖中にポリエーテル骨格(b1)及び/又はポリエステル骨格(b2)を有している。
【0011】
本発明のグラフト重合物(C)のうちの主鎖(A)は、ポリウレタン樹脂(a1)、ポリウレア樹脂(a2)、およびこれらの併用からなる。
そして、その分子鎖中にアミノ基、イミノ基、1価もしくは2価の芳香族炭化水素基、あるいはこれらの2種以上の組み合わせを有する。
【0012】
ポリウレタン樹脂(a1)は有機ジイソシアネート化合物(d)とジオール化合物(e)との反応で製造され、また、ポリウレア樹脂(a2)は有機ジイソシアネート化合物(d)とポリアミン化合物(f)との反応で製造される。
また、ジオール化合物(e)とポリアミン化合物(f)を併用して有機ジイソシアネート化合物(d)との反応で、ウレタン/ウレア樹脂が製造される。
【0013】
本発明のポリウレタン樹脂(a1)の製造に用いられる有機ジイソシアネート化合物(d)としては、低分子量ジイソシアネート化合物(d1)、これらの低分子量ジイソシアネート化合物の変性物(d2)、これらの低分子量ジイソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応物であって両末端がイソシアネート基であるプレポリマー(d3);並びにこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0014】
低分子量ジイソシアネート化合物(d1)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く。以下同様)2〜12の脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよび2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート等];炭素数4〜15の脂環式ジイソシアート[イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネートおよびメチルシクロヘキシレンジイソシアネート等];炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネート[キシリレンジイソシアネート(XDI)およびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等];芳香族ジイソシアネート[トリレンジイソシアネート(TDI)、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびナフチレンジイソシアネート等]が挙げられる。
【0015】
低分子量ジイソシアネート化合物の変性物(d2)としては、前述の低分子量ジイソシアネート化合物(d1)の変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレタン基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基などを含有する変性物)が挙げられる。
【0016】
さらに本発明で使用できる両末端がイソシアネート基であるプレポリマー(d3)としては、前述の低分子量ジイソシアネート化合物(d1)と分子内に2個の活性水素含有化合物(g)との反応物であって、分子内に2個のイソシアネート基を有するプレポリマーである。
【0017】
ここで用いる分子内に2個の活性水素含有化合物(g)としては、特に限定されないが、後で詳述する低分子ジオール(e1)、高分子ジオール(e2)、ポリエーテルジオール(e21)、ポリエステルジオール(e22)、ポリジエンジオール(e23)など;およびこれらの2種以上の混合物が使用できる。
【0018】
両末端がイソシアネート基であるプレポリマー(d3)は、低分子量ジイソシアネート化合物(d1)と分子内に2個の活性水素含有化合物(g)とを、(d1)/(g)の当量比が通常1.2〜10/1、好ましくは1.2〜5/1で反応させて得られる。
例えば、(d1)としてMDI、(g)としてポリ(ネオペンチルアルコール/アジペート)ジオールを使用し、(d1)/(g)の当量比が1.5/1で、80℃で6時間反応させたものなどが例示できる。
【0019】
(d3)の製造に際しては、反応を促進するために、必要により、ポリウレタンの製造に通常用いられる触媒を使用することができる。このような触媒としては、有機金属化合物( 例えばジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、オクタン酸鉛、オクタン酸ビスマス);3級アミン[例えばトリエチレンジアミン、アルキル基の炭素数1〜8のトリアルキルアミン(例えばトリエチルアミン)、ジアザビシクロアルケン類(例えば1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7)];およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。触媒の使用量は(d3)の重量に基づいて通常2重量%以下、好ましくは0.001〜1重量%である。
【0020】
有機ジイソシアネート化合物(d)のうち好ましいものは、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートおよびプレポリマー(d3)であり、特に、主鎖(A)中に1価もしくは2価の芳香族炭化水素基を導入できる点では、芳香族ジイソシアネートおよび芳香族ジイソシアネートを用いたプレポリマーが好ましく、さらに、TDI、MDIおよびこれらを用いたプレポリマーが好ましい。
【0021】
本発明のポリウレタン樹脂(a1)の製造に用いられるジオール化合物(e)としては、低分子ジオール(e1)および高分子ジオール(e2)、並びにこれらの併用が挙げられる。
【0022】
上記低分子ジオール(e1)には、水酸基当量(水酸基価測定による、水酸基1個当たりの分子量。以下同様)が250未満の2価のジオールが含まれる。
低分子ジオール(e1)としては、例えば以下の(1)〜(3)が挙げられる。
(1)炭素数2〜12の脂肪族ジオール類;
直鎖ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールなど)並びに分岐鎖を有するジオール(1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−および2,3−ブタンジオールおよび1,2−デカンジオールなど)など。
(2)炭素数6〜25の環状基を有するジオール類;
例えば特公昭45−1474号公報記載のもの;1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンおよび水添ビスフェノールAなど脂環基含有ジオール[1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンおよび水添ビスフェノールAなど];並びに芳香環含有ジオール〔m−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール、2価フェノール[単環2価フェノール(ハイドロキノンなど)、ビスフェノール類(フェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなど)およびジヒドロキシナフタレンなど]のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する。)付加物(水酸基当量250未満)、芳香族ジカルボン酸のビスヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)エステル[ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど]など〕。
(3)3級アミノ基含有ジオール;
例えば、ヒドロカルビルジアルカノールアミン類〔1級モノアミン[たとえば炭素数1〜12の脂肪族もしくは脂環式1級モノアミン類(メチルアミン、エチルアミン、シクロプロピルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、ヘキシルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、3,3−ジメチルブチルアミン、2−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、3−アミノヘプタン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミンおよびドデシルアミン等)並びに炭素数6〜12の芳香族1級モノアミン類(アニリンおよびベンジルアミン等)]のビスヒドロキシアルキル化物(炭素数2〜4のAO2モル付加物など)〕。
なお、ジオール(e)成分の一部に必要により、3価のポリオールを併用してもよい。
3価のポリオールとしては、たとえばグリセリン、トリメチロールプロパンおよびこれらのAO付加物(水酸基当量250未満);並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0023】
上記低分子ジール(e1)および後述の高分子ジール(e2)において、AOには炭素数2〜10またはそれ以上のアルキレンオキサイド、およびそのフェニルもしくはハロ置換体が含まれ、エチレンオキサイド(以下、EOと略記する。)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略記する。)、1,2−、1,3−、1,4−および2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、炭素数5〜10またはそれ以上のα−オレフィンオキサイド、エピハロヒドリン(エピクロロヒドリン等)およびこれらの2種以上の併用(ブロックおよび/またはランダム付加)が挙げられる。
好ましいのはEO、POおよびこれらの併用(ブロックおよび/またはランダム付加)である。
【0024】
高分子ジオール(e2)には、ポリエーテルジオール(e21)、ポリエステルジオール(e22)、ポリジエンジオール(e23)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
該(e2)の水酸基当量は通常250〜2,000、好ましくは300〜1,500であり、官能基数は通常2〜4、好ましくは2〜3であり、とくに2が好ましい。
【0025】
ポリエーテルジオール(e21)としては、前記の低分子ジオール(e1)にAOが付加した構造の化合物が挙げられる。
ポリエーテルジオール(e21)の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(ブロックおよび/またはランダム)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシブチレン−ポリオキシエチレン(ブロックおよび/またはランダム)グリコール、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレン(ブロックおよび/またはランダム)グリコール、ビスフェノールAのEOおよび/またはPO付加物、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0026】
ポリエステルジオール(e22)としては、(1)前記低分子ジオール(e1)および/またはポリエーテルジオール(e21)とジカルボン酸との縮合重合によるもの;(2)前記低分子ジール(e1)および/またはポリエーテルジオール(e21)にラクトンモノマーを開環付加したもの;(3)前記低分子ジオール(e1)および/またはポリエーテルジオール(e21)と炭酸ジエステル(炭酸ジメチル、炭酸エチレンなど)との縮合重合によるもの;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。該ポリエーテルジオール(e21)としては水酸基当量が500以下のものが好ましい。
【0027】
上記(1)のジカルボン酸の具体例としては、炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸およびフマル酸など)、炭素数8〜15の芳香族ジカルボン酸[テレフタル酸およびイソフタル酸など]、これらのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステルおよび酸ハライド(酸クロライド等)など]並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0028】
上記(2)のラクトンモノマーとしては、炭素数4〜12のラクトンたとえばγ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンおよびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0029】
ポリエステルジオール(e22)の具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(ジエチレングリコール)イソフタレートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0030】
ポリジエンジオール(e23)としては、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、これらの部分もしくは完全水素化物(水素化率がたとえば20〜100モル%)およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0031】
これらの高分子ジオール(e2)のうちで好ましいものは、ポリエーテルジオール(e21)およびポリエステルジオール(e22)であり、ポリエステルジオール(e22)がより好ましい。
【0032】
特に、主鎖(A)中に、アミノ基、イミノ基、1価もしくは2価の芳香族炭化水素基を導入するために、低分子ジオール(e1)においては芳香環含有ジオール、3級アミノ基含有ジオールが好ましく、高分子ジオール(e2)においては芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体が好ましい。
【0033】
本発明のポリウレア樹脂(a2)の製造に用いられる有機ジイソシアネート化合物(d)としては、上述のポリウレタン樹脂(a1)の製造に用いられる有機ジイソシアネート化合物(d)と同様のものが使用できる。
特に、主鎖(A)中に1価もしくは2価の芳香族炭化水素基を導入するために、芳香脂肪族有機ジイソシアネート、芳香族有機ジイソシアネートが好ましい。
【0034】
本発明のポリウレア樹脂(a2)の製造に用いられるポリアミン化合物(f)としては、炭素数2〜20のジアミン類が挙げられる。
たとえば脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンおよびデカメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン);脂環式ジアミン(ジシクロヘキシルメタンジアミンおよびイソホロンジアミンなど);芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンおよびジフェニルエーテルジアミンなど);芳香脂肪族ジアミン(キシリレンジアミンなど)等が挙げられる。
特に、主鎖(A)中にアミノ基、イミノ基、1価もしくは2価の芳香族炭化水素基を導入するために、芳香族ジアミンが好ましい。
【0035】
本発明のポリウレタン樹脂(a1)は、有機ジイソシアネート(d)と高分子ジオール(e)の反応による通常の方法で製造することができる。(d)と(e)を反応させてポリウレタン樹脂を得るが、未反応で残っている末端のイソシナネート基を反応停止剤と反応させ、末端を封止してもよい。
【0036】
ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂の製造において、必要により、反応停止剤を用いることができる。停止剤としては1価アルコールおよびモノアミンが挙げられる。
1価アルコールの具体例としては、炭素数1〜10の脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、エチルセロソルブおよびエチルカービトールなど);炭素数6〜10の脂環式1価アルコール(シクロヘキサノールなど);炭素数7〜20の芳香環含有1価アルコール[ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルベンゼン;1価フェノール類(フェノール、クレゾールなど)の(ポリ)オキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度1〜5)エーテルなど];およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
モノアミンの具体例としては、アルキル基の炭素数1〜10のモノおよびジアルキルアミン(メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミンおよびジ−n−ブチルアミンなど);炭素数6〜10の脂環式モノアミン(シクロヘキシルアミンなど);炭素数6〜15の芳香環含有モノアミン(ベンジルアミンおよびアニリンなど);炭素数4〜10の複素環式モノアミン(モルホリンなど)、ヒドロキシアルキル基の炭素数2〜4のモノ−およびジアルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびジイソプロパノールアミンなど);およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、脂肪族1価アルコールおよびモノ−およびジアルキルアミンである。
【0037】
また、反応を促進するため、必要によりポリウレタンに通常用いられる触媒を使用することができる。この触媒は、両末端がイソシアネート基であるプレポリマー(d3)の製造方法において既述したものと同様のものを使用することができる。
【0038】
本発明のポリウレア樹脂(a2)は、低分子量ジイソシアネート化合物(d1)および/または低分子量ジイソシアネート化合物の変性物(d2)と、ポリアミン化合物(f)の反応による通常の方法で製造することができる。ポリウレタン樹脂(a1)と同様に、必要に応じて、先に述べたのと同様の反応停止剤で末端のイソシナネート基と反応させてもよい。
また、両末端がイソシアネート基であるプレポリマー(d3)とポリアミン化合物(f)の反応により、ウレタン/ウレア樹脂が製造でき、必要に応じて停止剤を反応させてもよい。
【0039】
ポリウレタン樹脂(a1)およびポリウレア樹脂(a2)の製造に当たって、有機ジイソシアネート(d)のNCO基と高分子ジオール(e)およびポリアミン化合物(f)の活性水素含有基の当量比は、通常0.7:1〜1.2:1、好ましくは0.8:1〜1.1:1である。
【0040】
また、上記の(a1)および(a2)の製造方法は、有機溶剤の存在下でも非存在下でも実施できる。
有機溶剤存在下での反応に使用できる有機溶剤としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンメチルイソブチルケトンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなど)、エーテル類(テトラハイドロフランなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、多価アルコール誘導体(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)スルホキサイド類(ジメチルスルホキサイドなど)およびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらのうち好ましいものはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、テトラハイドロフラン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルおよびこれらの2種以上の混合溶剤である。
溶剤の使用量はポリウレタン樹脂(A)と溶剤の重量比が通常100/0〜10/90、好ましくは80/20〜20/80の範囲になる量である。
【0041】
(a1)および(a2)の製造に際し、反応温度はポリウレタンおよびポリウレア化反応に通常採用される温度と同じで良く、溶剤を使用する場合は通常20〜100℃、無溶媒の場合は通常20〜220℃である。
【0042】
本発明のグラフト重合物(C)のうちの主鎖(A)の数平均分子量は、通常、500〜500,000、好ましくは1000〜200,000、さらに好ましくは2000〜10,000である。数平均分子量がこの範囲であると、顔料分散性が良好となる。
【0043】
本発明のグラフト重合物(C)のうちの主鎖(A)中の芳香族環の含有量は、通常、10〜90重量%、好ましくは20〜60重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。芳香族環の含有量がこの範囲であると、顔料分散性が良好となる。
【0044】
本発明のグラフト重合物(C)のうちの主鎖(A)中のアミン価は、通常、1〜1000、好ましくは10〜500、さらに好ましくは50〜300である。アミン価がこの範囲であると、顔料分散性が良好となる。
【0045】
本発明のグラフト重合物(C)のうちの側鎖(B)は、ポリエーテル骨格(b1)単独、ポリエステル骨格(b2)単独、またはポリエーテル骨格(b1)とポリエステル骨格(b2)の両方からなる。
【0046】
本発明のグラフト重合物(C)のうちの側鎖(B)中のポリエーテル骨格(b1)は、前記のAOを付加してなるポリエーテル鎖を分子中に含むものが挙げられる。AOの付加の具体例としては、低分子ジオール(e1)の説明で前述したAOと同様のものが挙げられる。
【0047】
本発明のグラフト重合物(C)のうちの側鎖(B)中のポリエステル骨格(b2)は、下記(1)〜(3)からなるポリエステル鎖のいずれかを分子中に含むものが挙げられる。
(1)前記低分子ジオール(e1)および/またはポリエーテルジオール(e21)とジカルボン酸との縮合重合によるもの
(2)ラクトンモノマーを開環付加したもの
(3)前記低分子ジオール(e1)および/またはポリエーテルジオール(e21)と炭酸ジエステル(炭酸ジメチル、炭酸エチレンなど)との縮合重合によるもの
上記(1)のジカルボン酸及び、上記(2)のラクトンモノマーの具体例としては、ポリエステルジオール(e22)の説明で前述したものと同様のものが挙げられる。
【0048】
本発明のグラフト重合物(C)のうちの側鎖(B)の数平均分子量は、通常、500〜100,000、好ましくは700〜10,000、さらに好ましくは1000〜50,000である。数平均分子量がこの範囲であると、顔料分散性、及び分散安定性が良好となる。
【0049】
また、本発明の印刷インキ用顔料分散剤は、下記一般式(1)で示されるn個のイミノ基とポリエーテル骨格(b1)又はポリエステル骨格(b2)からなるジアミノ化合物(D)と、分子内に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート化合物(E)とを反応させてなる重合体(F)からなることを特徴とする。
【0050】
【化2】

【0051】
(式中、R1とR2はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基を表し、X1はポリエーテル骨格(b1)又はポリエステル骨格(b2)のいずれかを表す。nは1〜4の整数を表す。)
【0052】
上記一般式(1)で示されるn個のイミノ基とポリエーテル骨格(b1)又はポリエステル骨格(b2)からなるジアミノ化合物(D)としては、分子内にポリエーテル骨格(b1)を有するジアミノ化合物(D1)、分子内にポリエステル骨格(b2)を有するジアミノ化合物(D2)が挙げられる。
【0053】
ポリエーテル骨格(b1)を分子内に有するジアミノ化合物(D1)は、イミノ基に前記のAOを付加して製造することができる。
AOの付加の具体例としては、低分子ジオール(e1)の説明で前述したAOと同様のものが挙げられる。
【0054】
ポリエステル骨格(b2)を分子内に有するジアミノ化合物(D2)はイミノ基に前記のラクトンモノマーを開環付加して製造することができる。上記のラクトンモノマーとしては、炭素数4〜12のラクトンたとえばγ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンおよびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0055】
ジアミノ化合物(D)中のポリエーテル骨格(b1)又はポリエステル骨格(b2)のいずれかからなるX1の数平均分子量は500〜100,000であり、好ましくは700〜10,000、さらに好ましくは1,000〜5,000である。
【0056】
ジアミノ化合物(D)中のR1とR2は、それぞれ独立に、通常、炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜3の直鎖または分岐のアルキル基を表す。具体例としては、メチレン、エチレン、n−プロピレン、i−プロピレン、n−ブチレン、sec−ブチレン、t−ブチレン、n−ペンタメチレン、ネオペンタメチレン、3−メチル−ペンタメチレン、n−ヘキサメチレン、2−エチルヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン等が挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレンである。
【0057】
ジアミノ化合物(D)中の繰り返し単位nは通常1〜4、好ましくは1〜2の整数である。
【0058】
(D1)におけるAO付加する前の原料となるアミン化合物(D1’)、(D2)におけるラクトンモノマーを開環付加する前の原料となるアミン化合物(D2’)としては、両末端に1級のアミノ基を有し、分子鎖中に2級のイミノ基をn個有するアルキレンアミンが挙げられる。
例えば、nが1であるアルキレントリアミン類[ジエチレントリアミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等];nが2であるアルキレンテトラミン類(トリエチレンテトラミン等);nが3であるアルキレンペンタミン(テトラエチレンペンタミン等);nが4であるアルキレンヘキサミン(ペンタエチレンヘキサミン等)が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンである。
【0059】
ジアミノ化合物(D)と反応させる、分子内に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート化合物(E)については、前記の有機ジイソシアネート化合物(d)と同様のものを使用することができ、1価もしくは2価の芳香族炭化水素基を導入できる点で、芳香族ジイソシアネートおよび芳香族ジイソシアネートを用いたプレポリマーが好ましく、さらに、TDI、MDIおよびこれらを用いたプレポリマーが好ましい。
【0060】
本発明で用いることのできる顔料としては、通常印刷インキに用いられるすべての顔料が使用できるが、例えば有機顔料および無機顔料が挙げられる。有機顔料の具体例としては、フタロシアニン類、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合多環系顔料(スレン系、インジゴ系、ペリレン系、ペリノン系、フタロン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジケトピロロピロール系顔料)などが挙げられ、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、炭酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛、ベンガラ、黄鉛、黄酸化鉄などの各種顔料が挙げられる。
【0061】
顔料の配合量は、顔料分散剤1重量部に対して顔料が0.01〜1000重量部であることが好ましい。0.01重量部未満の場合、顔料濃度が低すぎ、着色機能が低下する。一方、1000重量部を超えると顔料が充分に分散されないため、安定な顔料分散体が得られない。
【0062】
本発明の印刷インキ組成物に使用するバインダー樹脂としては、一般的なインキや塗料用樹脂を使用することができる。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を単独あるいは複数の樹脂を混合して添加しても良い。
【0063】
本発明の印刷インキ組成物に使用する溶剤としては、前記の(a1)および(a2)の製造方法で前述した有機溶剤を、単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。好ましくは酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロピルアルコール、トルエン、メチルエチルケトンから選ばれる、単独あるいは2種以上の混合溶剤である。
【0064】
本発明の印刷インキ組成物には、必要に応じて、耐摩耗性向上剤、可塑剤、架橋剤等の 添加剤を使用することができる。
【0065】
本発明の印刷インキ組成物は、ボールミル、アトライター、サンドミルなどの通常の印刷インキ製造装置を用いて上記の成分を混練することにより製造することができる。
【実施例】
【0066】
以下に本発明に係る実施例等について説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。 なお、「部」は重量部を示す。
【0067】
以下の方法で、本発明の分子内にポリエーテル骨格、ポリエステル骨格を有するジアミノ化合物、および分散剤、比較のための分散剤を製造した。
【0068】
製造例1−1
攪拌装置、圧力計、耐圧滴下ロート、真空ポンプ、温度調節機能を備えたステンレス製オートクレーブに、予め製造したジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンを反応させて得られたケチミン化合物(G−1)272部、水酸化カリウム0.50部を投入し、混合系内を窒素で置換した。
次いで100〜120℃にて、エチレンオキサイド895部をゲージ圧が−0.1〜0.5MPaとなるように導入し、ケチミン化合物(G−1)のエチレンオキサイド付加物(H−1)を得た。エチレンオキサイド吹き込み開始から反応終了後までの反応時間は8時間であった。
さらに、水を300部添加し、100℃で1時間攪拌し、(H−1)を加水分解した後、生成したメチルイソブチルケトンと水を同温度で、−0.1〜0MPaの下、4時間で除去して、本発明のジアミノ化合物である、ジエチレントリアミンのエチレンオキサイド付加物(D−1)を得た。
【0069】
製造例1−2
攪拌装置を備えた反応容器に、TDI67.3部および酢酸エチル490部を仕込み、次に、製造例1−1で得られたジエチレントリアミンのエチレンオキサイド付加物(D−1)198.5部とイソプロパノール210部からなる混合物を滴下投入し、室温で30分反応させた後、ジ−n−ブチルアミン34.2部を投入し、室温で30分反応させ、樹脂濃度30%の本発明の顔料分散剤(C−1)溶液1000部を得た。
この顔料分散剤(C−1)の主鎖(A)の数平均分子量は約700、側鎖(B)の数平均分子量は約680、主鎖(A)における芳香族環濃度は32重量%、アミン価は153であった。
【0070】
製造例2−1
攪拌装置、圧力計、耐圧滴下ロート、真空ポンプ、温度調節機能を備えたステンレス製オートクレーブに、予め製造したペンタエチレンヘキサミンとメチルイソブチルケトンを反応させて得られたケチミン化合物(G−2)46.4部、水酸化カリウム0.40部を投入し、混合系内を窒素で置換した。
次いで100〜120℃にて、エチレンオキサイド581部とプロピレンオキサイド766部の混合物をゲージ圧が−0.1〜0.5MPaとなるように導入し、ケチミン化合物(G−2)のエチレン/プロピレンオキサイド付加物(H−2)を得た。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの吹き込み開始から反応終了後までの反応時間は16時間であった。
さらに、水を300部添加し、100℃で1時間攪拌し、(H−2)を加水分解した後、生成したメチルイソブチルケトンと水を同温度で、−0.1〜0MPaの下、4時間で除去して、本発明のジアミノ化合物である、ペンタエチレンヘキサミンのエチレン/プロピレンオキサイド付加物(D−2)を得た。
【0071】
製造例2−2
攪拌装置を備えた反応容器に、MDI6.0部および酢酸エチル490部を仕込み、次に、製造例2−1で得られたペンタエチレンヘキサミンのエチレン/プロピレンオキサイド付加物(D−2)294部とイソプロパノール210部からなる混合物を投入し、室温で30分反応させた後、ジ−n−ブチルアミン0.07部を投入し、室温で30分反応させ、樹脂濃度30%の本発明の顔料分散剤(C−2)溶液1000部を得た。
この顔料分散剤(C−2)の主鎖(A)の数平均分子量は約450,000、側鎖(B)の数平均分子量は約3,000、主鎖(A)における芳香族環濃度は32重量%、アミン価は467であった。
【0072】
製造例3−1
攪拌装置、圧力計、耐圧滴下ロート、真空ポンプ、温度調節機能を備えたステンレス製オートクレーブに、製造例1−1で使用したケチミン化合物(G−1)136部、水酸化カリウム 0.25部を投入し、混合系内を窒素で置換した。
次いで100〜120℃にて、テトラヒドロフラン1008部の混合物をゲージ圧が−0.1〜0.5MPaとなるように導入し、ケチミン化合物(G−1)のテトラメチレンオキサイド付加物(H−3)を得た。テトラヒドロフラン吹き込み開始から反応終了後までの反応時間は12時間であった。
さらに、水を300部添加し、100℃で1時間攪拌し、(H−3)を加水分解した後、生成したメチルイソブチルケトンと水を同温度で、−0.1〜0MPaの下、4時間で除去して、本発明のジアミノ化合物である、ジエチレントリアミンのテトラメチレンオキサイド付加物(D−3)を得た。
【0073】
製造例3−2
攪拌装置を備えた反応容器に、MDI10.7部、イソホロンジイソシアネート18.9部および酢酸エチル490部を仕込み、次に、製造例3−1で得られたジエチレントリアミンのテトラメチレンオキサイド付加物(D−3)270部とイソプロパノール210部からなる混合物を投入し、室温で30分反応させた後、ジ−n−ブチルアミン0.1部を投入し、室温で30分反応させ、樹脂濃度30%の本発明の顔料分散剤(C−3)溶液1000部を得た。
この顔料分散剤(C−3)の主鎖(A)の数平均分子量は200,000、側鎖(B)の数平均分子量は2,000、主鎖(A)における芳香族環濃度は15重量%、アミン価は168であった。
【0074】
製造例4−1
攪拌装置、圧力計、耐圧滴下ロート、真空ポンプ、温度調節機能を備えたステンレス製オートクレーブに、製造例1−1で使用したケチミン化合物(G−1)68部、ε−カプロラクトンモノマー1254部、モノブチルヒドロキシスズオキシド0.13部を仕込み、混合系内を窒素で置換し、160℃にてカプロラクトンモノマーが1%以下になるまで反応させ、ケチミン化合物(G−1)のポリカプロラクトン付加物(H−4)を得た。反応時間は6時間であった。
さらに、水を300部添加し、100℃で1時間攪拌し、(H−4)を加水分解した後、生成したメチルイソブチルケトンと水を同温度で、−0.1〜0MPaの下、4時間で除去して、本発明のジアミノ化合物である、ジエチレントリアミンのポリカプロラクトン付加物(D−4)を得た。
【0075】
製造例4−2
攪拌装置および温度計を備えた反応容器に、ポリネオペンチルアジペートジオール(水酸基価234.2)50.2部、MDI37.7部を仕込み、80℃で6時間反応させ、NCO含量が4.80%のウレタンプレポリマーを87.8部得た。
次に酢酸エチル490部を加えてこのプレポリマーを均一に溶解した後、製造例4−1で得られたジエチレントリアミンのポリカプロラクトン付加物(D−4)209.8部とイソプロパノール210部からなる混合物を投入し、室温で30分反応させた後、ジ−n−ブチルアミン2.4部を投入し、室温で30分反応させ、樹脂濃度30%の本発明の顔料分散剤(C−4)溶液1000部を得た。
この顔料分散剤(C−4)の主鎖(A)の数平均分子量は10,000、側鎖(B)の数平均分子量は5,000、主鎖(A)における芳香族環濃度は25重量%、アミン価は25であった。
【0076】
製造例5−1
攪拌装置、圧力計、耐圧滴下ロート、真空ポンプ、温度調節機能を備えた2リットルのステンレス製オートクレーブに、製造例1−1で使用したケチミン化合物(G−1)35.4部、ε−カプロラクトンモノマー682部、γ−バレロラクトンモノマー598部、モノブチルヒドロキシスズオキシド0.13部を仕込み、混合系内を窒素で置換し、160℃にてカプロラクトンモノマーが1%以下になるまで反応させ、ケチミン化合物(G−1)のポリカプロラクトン/バレロラクトン付加物(H−5)を得た。反応時間は6時間であった。
さらに、水を300部添加し、100℃で1時間攪拌し、(H−5)を加水分解した後、生成したメチルイソブチルケトンと水を同温度で、−0.1〜0MPaの下、4時間で除去して、本発明のジアミノ化合物である、ジエチレントリアミンのポリカプロラクトン/バレロラクトン付加物(D−5)を得た。
【0077】
製造例5−2
攪拌装置および温度計を備えた反応容器に、ビスフェノールAのEO付加物〔商品名;ニューポールBPE−20、三洋化成工業社製〕38.6部、イソホロンジイソシアネート32.5部を仕込み、130℃で5時間反応させ、NCO含量が2.88%のウレタンプレポリマーを71.2部得た。
次にトルエン490部を加えてこのプレポリマーを均一に溶解した後、製造例5−1で得られたジエチレントリアミンのポリカプロラクトン/バレロラクトン付加物(D−5)228.5部とイソプロパノール210部からなる混合物を投入し、室温で30分反応させた後、ジ−n−ブチルアミン0.38部を投入し、室温で30分反応させ、樹脂濃度30%の本発明の顔料分散剤(C−5)溶液1000部を得た。
この顔料分散剤(C−5)の主鎖(A)の数平均分子量は50,000、側鎖(B)の数平均分子量は9,800、主鎖(A)における芳香族環濃度は25重量%、アミン価は18であった。
【0078】
製造例6−1
攪拌装置、圧力計、耐圧滴下ロート、真空ポンプ、温度調節機能を備えた2リットルのステンレス製オートクレーブに、製造例1−1で使用したケチミン化合物(G−1)136部、水酸化カリウム0.25部を投入し、混合系内を窒素で置換した。次いで100〜120℃にて、プロピレンオキサイド1073部をゲージ圧が−0.1〜0.5MPaとなるように導入し、(G−1)のプロピレンオキサイド付加物(H−6)を得た。プロピレンオキサイド吹き込み開始から反応終了後までの反応時間は6時間であった。
さらに、水を300部添加し、100℃で1時間攪拌し、(H−6)を加水分解した後、生成したメチルイソブチルケトンと水を同温度で、−0.1〜0MPaの下、4時間で除去して、本発明のジアミノ化合物である、ジエチレントリアミンのプロピレンオキサイド付加物(D−6)を得た。
【0079】
製造例6−2
攪拌装置および温度計を備えた反応容器に、ビスフェノールAのEO付加物(ニューポールBPE−20)58.7部、MDI69.7部を仕込み、80℃で6時間反応させ、NCO含量が6.07%のウレタンプレポリマーを128.4部得た。
次にトルエン490部を加えてこのプレポリマーを均一に溶解した後、製造例6−1で得られたジエチレントリアミンのプロピレンオキサイド付加物(D−6)164.9部とイソプロパノール210部からなる混合物を投入し、室温で30分反応させた後、ジ−n−ブチルアミン6.66部を投入し、室温で30分反応させ、樹脂濃度30%の本発明の顔料分散剤(C−6)溶液1000部を得た。
この顔料分散剤(C−6)の主鎖(A)の数平均分子量は5,000、側鎖(B)の数平均分子量は2,200、主鎖(A)における芳香族環濃度は52重量%、アミン価は36であった。
【0080】
比較製造例1
攪拌装置を備えた反応容器に、MDI199.2部およびトルエン490部を仕込み、次に、N−(2−アミノエチル)−N−メチル−1,2−エタンジアミン86.8部とイソプロパノール210部からなる混合物を投入し、室温で30分反応させた後、ジ−n−ブチルアミン14.2部を投入し、室温で30分反応させ、樹脂濃度30%の顔料分散剤(I−1)溶液1000部を得た。この顔料分散剤(I−1)の主鎖(A)の数平均分子量は5,000、主鎖(A)における芳香族環濃度は44重量%、アミン価は151であった。
【0081】
比較製造例2−1
攪拌装置、圧力計、耐圧滴下ロート、真空ポンプ、温度調節機能を備えた2リットルのステンレス製オートクレーブに、1,3−ジアミノ−2−プロパノールとメチルイソブチルケトンを反応させて得られたケチミン化合物(G−3)54.0部、水酸化カリウム0.30部を投入し、混合系内を窒素で置換した。次いで100〜120℃にて、プロピレンオキサイド1288部をゲージ圧が−0.1〜0.5MPaとなるように導入し、(G−3)のプロピレンオキサイド付加物(H−7)を得た。プロピレンオキサイド吹き込み開始から反応終了後までの反応時間は6時間であった。さらに、水を300部添加し、100℃で1時間攪拌し、(H−7)を加水分解した後、生成したメチルイソブチルケトンと水を同温度で、−0.1〜0MPaの下、4時間で除去して、1,3−ジアミノ−2−プロパノールのプロピレンオキサイド付加物(J−1)を得た。
【0082】
比較製造例2−2
攪拌装置および温度計を備えた反応容器に、ポリネオペンチルアジペートジオール(水酸基価234.2)81.0部、イソホロンジイソシアネート53.9部を仕込み、130℃で6時間反応させ、NCO含量が5.04%のウレタンプレポリマーを134.9部得た。次に酢酸エチル490部を加えて均一に溶解した後、比較製造例2−1で得られた1,3−ジアミノ−2−プロパノールのプロピレンオキサイド付加物(J−1)161.5部とイソプロパノール210部からなる混合物を投入し、室温で30分反応させた後、ジ−n−ブチルアミン3.6部を投入し、室温で30分反応させ、樹脂濃度30%の顔料分散剤(I−2)溶液1000部を得た。この顔料分散剤(I−2)の主鎖(A)の数平均分子量は10,000、側鎖(B)の数平均分子量は2,300、主鎖(A)におけるアミン価は0であった。
【0083】
比較製造例3
攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管および温度調節機能を備えた反応容器にカプロラクトンモノマー565部、カプロン酸11.6部、4−メチルカプロラクトン423部、テトラブチルチタネートを0.1部仕込み、窒素気流下、170℃で反応させた。カプロラクトンモノマーが1%以下になった後、210℃で所定の酸化になるまで加熱した。得られたポリカプロラクトンの酸化は5.8であった。
次に、ポリアリルアミン[(商品名PAA−10C(分子量10,000)、日東紡績社製)]を110部仕込み、120℃で反応させ、比較評価のための顔料分散剤(I−3)を得た。
この顔料分散剤(I−3)の、主鎖は分子量10,000のポリアリルアミンであり、側鎖は分子量約1,200のポリカプロラクトンを主成分とするポリエステルである。
【0084】
比較製造例4
攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管および温度調節機能を備えた反応容器に、ポリエチレンイミン〔商品名SP−200(分子量10,000)、日本触媒社製〕100部と、β−ナフトエ酸15部を仕込み、窒素気流下、150℃で反応させた。水が1.6部留出した時点で60℃に冷却し、アクリル基含有ポリカプロラクトン〔商品名;PCLFA−12(分子量1,400)、ダイセル化学工業社製〕を885部仕込み、1H−NMRの測定により二重結合のシグナルが消失するまで反応を継続し、比較評価のための顔料分散剤(I−4)を得た。
この顔料分散剤(I−4)の、主鎖は分子量10,000のポリエチレンイミンであり、側鎖は分子量約1,400のポリカプロラクトンを主成分とするポリエステルである。0
【0085】
実施例1
銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigument Blue 15:3)20部、製造例1で得られた顔料分散剤(C−1)30%溶液20部、酢酸エチル42部、イソプロピルアルコール18部、スチールビーズ300部をそれぞれ秤量し、ペイントコンディショナーで3時間分散処理し、顔料分散体を得た。得られた顔料分散体を用いて、塗膜の60度光沢値と粘度を測定した。
【0086】
実施例2〜4および比較例2
実施例1の(C−1)を用いるかわりに、それぞれ(C−2)〜(C−4)、(I−2)をそれぞれ使用し、実施例1と同様に顔料分散体を作成した。
【0087】
実施例5、6、および比較例1
銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigument Blue 15:3)、製造例5、6で得られた顔料分散剤(C−5)、(C−6)または比較製造例1で得られた顔料分散剤(I−1)をそれぞれ30%溶液20部、トルエン42部、イソプロピルアルコール18部、スチールビーズ300部をそれぞれ秤量し、実施例1と同様に顔料分散体を作成した。
【0088】
比較例3
銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigument Blue 15:3)、製造比較例5で得られた顔料分散剤(I−3)6部、キシレン74部、スチールビーズ300部をそれぞれ秤量し、実施例1と同様に顔料分散体を作成した。
【0089】
比較例4
銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigument Blue 15:3)20部、製造比較例6で得られた顔料分散剤(I−4)6部、キシレン37部、ブチルセロソルブアセテート37部、スチールビーズ300部をそれぞれ秤量し、実施例1と同様に顔料分散体を作成した。
【0090】
実施例7〜12および比較例5〜8
実施例1〜6および比較例1〜4で使用した銅フタロシアニン顔料のかわりに、アゾレーキ顔料(C.I.Pigument Red 48:3)を使用し、同様に顔料分散体を作成した。
【0091】
実施例13〜18および比較例9〜12
実施例1〜6および比較例1〜4で使用した銅フタロシアニン顔料のかわりに、ジスアゾエロー顔料(C.I.Pigument Yellow 14)を使用し、同様に顔料分散体を作成した。
【0092】
実施例19〜24および比較例13〜16
実施例1〜6および比較例1〜4で使用した銅フタロシアニン顔料のかわりに、カーボン顔料(C.I.Pigument Black 7)を使用し、同様に顔料分散体を作成した。
【0093】
<60度光沢値>
各実施例で得られた顔料分散体をPETフィルム上に、バーコーター(No.6)を用いて塗布し、乾燥させた後、JIS K 5600−4−7「塗料一般試験方法」の第4部第7節「鏡面光沢度」に準拠して、鏡面光沢度計(日本電色工業社製)を用いて塗膜の60度光沢値を測定した。
<粘度>
粘度を20℃にてBL型回転粘度計(東機産業社製)で1号、2号または3号ローターを用いて測定した。
【0094】
表1に各実施例、比較例にて得られた性能評価試験結果を示す。
【0095】
【表1】

【0096】
評価結果は、光沢値が高く、粘度が低いほど顔料分散性良好であり、上記から明らかなように、本発明の顔料分散剤は、比較例のものに比べて顔料分散性に優れた印刷インキを提供できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の顔料分散剤は、印刷インキ、塗料、着色剤、インクジェットインキ、カラートナー、カラーフィルター用レジストなどの顔料を分散して使用するあらゆる用途に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖(A)と側鎖(B)からなるグラフト重合物(C)であって、該主鎖(A)がアミノ基、イミノ基及び1価もしくは2価の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる1種以上を有するポリウレタン樹脂(a1)及び/又はポリウレア樹脂(a2)からなり、かつ側鎖(B)がポリエーテル骨格(b1)及び/又はポリエステル骨格(b2)からなるグラフト重合物からなることを特徴とする印刷インキ用顔料分散剤。
【請求項2】
主鎖(A)の数平均分子量が、500〜500,000である請求項1記載の印刷インキ用顔料分散剤。
【請求項3】
1つの側鎖(B)の数平均分子量が500〜100,000である請求項1または2記載の印刷インキ用顔料分散剤。
【請求項4】
主鎖(A)中の芳香族環の含有量が10〜90重量%である請求項1〜3いずれか記載の印刷インキ用顔料分散剤。
【請求項5】
主鎖(A)中のアミン価が1〜1000である請求項1〜4いずれか記載の印刷インキ用顔料分散剤。
【請求項6】
主鎖(A)中のアミノ基が3級アミノ基である請求項1〜5いずれか記載の印刷インキ用顔料分散剤。
【請求項7】
下記一般式(1)で示されるn個のイミノ基とポリエーテル骨格(b1)又 はポリエステル骨格(b2)からなるジアミノ化合物(D)と、分子内に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート化合物(E)とを反応させてなる重合体(F)からなることを特徴とする印刷インキ用顔料分散剤。
【化1】

(式中、R1とR2はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基を表し、X1はポリエーテル骨格(b1)又はポリエステル骨格(b2)のいずれかを表す。nは1〜4の整数を表す。)
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の顔料分散剤を含有することを特徴とする印刷インキ組成物。

【公開番号】特開2008−13725(P2008−13725A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189070(P2006−189070)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】