説明

顔料分散液、インクジェット用インク、インクカートリッジ及び画像形成装置

【課題】インクジェット用として好適なカーボンブラック顔料分散液、該顔料分散液を用
いた、高い画像濃度が得られ、吐出安定性及び保存安定性の優れたインクジェット用イン
ク、並びに該インクを用いたインクカートリッジ及び画像形成装置の提供。
【解決手段】(1)少なくともカーボンブラックと分散剤と水を含有し、該分散剤が、部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及び/又はその誘導体と、体積平均粒径が0.1μm以下のアニオン型自己水分散性樹脂微粒子を含む顔料分散液。
(2)前記顔料分散液を含有するインクジェット用インク。
(3)前記インクジェット用インクを容器中に収容したインクカートリッジ。
(4)前記インクジェット用インクを吐出させて画像を形成する吐出手段を有する画像形
成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用として好適な顔料分散液、該顔料分散液を用いたインクジ
ェット用インク、該インクを用いたインクカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット用顔料インクは、一般に、水、アルコール類等の水性溶媒中に顔料及び分散剤を予備分散させた分散物を調製した後、該分散物をサンドミル等のメディア型分散機を用いて所定の程度まで分散させる分散工程を行い、次いで、所定の濃度に希釈することにより調製されている。
顔料系の水系インクでは疎水性の顔料を分散させるため、界面活性剤、水溶性樹脂等の
分散剤を用いるのが一般的であるが、得られる画像の信頼性が極めて悪いという問題がある。そこで、画質向上を目的として、造膜性の樹脂微粒子をインクに添加する技術が知ら
れている。しかし、複数の成分を微細かつ安定に長期間分散させておくのは困難であり、これらの微粒子を安定に分散させるために界面活性剤等の分散剤を多く用いると、インクタンクやヘッド内での気泡の発生、画質の劣化などの問題が生じる。また、分散性を向上させる目的で、顔料の表面を親水基に変える方法、親水基を含有した樹脂を用いる方法などが検討されているが、これらの方法は、それぞれ単独では安定であっても、異なる種類を混ぜた場合には分散が不安定になり、保存安定性が悪化するという問題がある。この他にも、分散性を向上させるための種々の手段が提案されているが、カラー顔料インクに関しては高い画像濃度が得られるものの、黒色顔料インクについては未だ十分満足できる手段はなく、更なる改良、開発が望まれているのが現状である。
【0003】
例えば特許文献1では、黒色顔料としてカーボンブラック、分散剤としてナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物を用いた顔料分散液、及び該顔料分散液を用いたインクが提案されているが、普通紙に記録したときの画像濃度は十分でなく、インクの保存性も満足できるものではない。
また、特許文献2、3では、カーボンブラック分散液の分散剤としてナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物を用い、インク調合時にアニオン性自己乳化型エーテル系ポリウレタン樹脂エマルジョンを含有させたインクが提案されているが、インクの保存性は改善されるものの、普通紙に記録したときの画像濃度は不十分である。
一方、特許文献4には、分散染料の分散剤としてリグニンスルホン酸塩を用いた例が記載されているが、カーボンブラックを用いた黒色顔料インクの分散剤として利用することについては記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題を解決したインクジェット用として好適なカーボンブラック
顔料分散液、該顔料分散液を用いた、普通紙に記録した場合にも高い画像濃度が得られ、吐出安定性及び保存安定性の優れたインクジェット用インク、並びに該インクを用いたインクカートリッジ及び画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、次の<1>〜<4>の発明によって解決される。
<1> 少なくともカーボンブラックと分散剤と水を含有し、該分散剤が、部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及び/又はその誘導体と、体積平均粒径が0.1μm以下のアニオン型自己水分散性樹脂微粒子を含むことを特徴とする顔料分散液。
<2> <1>に記載の顔料分散液を含有することを特徴とするインクジェット用インク。
<3> <2>に記載のインクジェット用インクを容器中に収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
<4> <2>に記載のインクジェット用インクを吐出させて画像を形成する吐出手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来の問題を解決したインクジェット用として好適なカーボンブラッ
ク顔料分散液、該顔料分散液を用いた、普通紙に記録した場合にも高い画像濃度が得られ、インクジェットヘッドの目詰まりが改良され、吐出安定性及び保存安定性の優れたインクジェット用インク、並びに該インクを用いたインクカートリッジ及び画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
<顔料分散液>
本発明の顔料分散液は、少なくともカーボンブラックと分散剤と水を含有し、更に必要
に応じてその他の成分を含有する。
−カーボンブラック−
前記カーボンブラックとしては、公知の種々のものを用いることができるが、チャンネルブラック、ガスブラック、ファーネスブラックのいずれかが好ましい。
カーボンブラックの平均一次粒径は10.0〜30.0nm、BET比表面積は100〜400m/gであることが好ましい。より好ましくは、平均一次粒径が15.0〜20.0nm、BET比表面積が150〜300m/gである。
ここで、平均一次粒径は、例えば電子顕微鏡を用いて粒子を撮影し、撮影画像の粒径と数から算出することができる。また、BET比表面積は、窒素吸着によるBET法によって測定することができる。
【0009】
−分散剤−
前記分散剤としては、部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及び/又はその誘導体(以下、分散剤Xということもある)と、体積平均粒径が0.1μm以下のアニオン型自己水分散性樹脂微粒子(以下、分散剤Yということもある)を併用する。
本発明に於いて好ましく用いることができる分散剤Xとしては、亜硫酸パルプ排液あるいはそれから分別して得られるリグニンスルホン酸塩及び/又はその誘導体を、公知のようにして高温で酸化し、スルホン化度がフェニルプロパン単位当り0.35モル以下になるまで部分脱スルホン化したもの、あるいは、それを更に二次的に化学処理したものが挙げられる。これらは、未処理のものに比べて部分脱スルホン化後の時点でカルボキシル基やフェノール性水酸基が多く、スルホン酸基やアルコール性水酸基が少ない。
部分脱スルホン化の方法としては、最も一般的には、最初pH9以上で150〜200℃で処理する方法が挙げられるが、この方法に限定されるものではなく、より低いpHで熱処理することによって部分脱スルホン化を行ったものでも差支えない。
また、亜硫酸パルプ排液をそのまま部分脱スルホン化処理した場合は、その反応性生物をそのまま用いてもよいし、反応性生物から高分子量区分のみを分別して用いてもよい。
分散剤Xの添加量は、カーボンブラックの絶乾質量1質量部に対し、0.005〜0.3質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。添加量が0.005質量部以上であれば、本発明の目的を達成しやすく、顔料分散液及びインクの保存安定性も確保しやすい。
【0010】
本発明で用いる分散剤Yは、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基及び硫酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸基を有する酸基含有重合性モノマー類及び/又は該酸基含有重合性オリゴマー類を必須成分として反応させて得られる共重合体(樹脂)からなる。前記酸基は樹脂をアルカリ水溶液に可溶とするためのアニオン性親水基であり、この酸基が有機塩基又は無機塩基で中和されることにより水媒体中でアニオンとなり、親水性を呈する。
前記酸基の中でも好適なのはカルボキシル基である。分散剤Yにおける必要カルボキシル基量は、樹脂1gを中和するのに必要なKOHmg数量である酸価で表すことができ、分散剤Yの酸価は10〜300が好ましい。
本発明では分散剤Yは、通常、水分散体として用いる。
【0011】
分散剤Yを構成する樹脂微粒子の体積平均粒径は、0.1μm以下とする。好ましくは20〜80nmである。
樹脂微粒子の体積平均粒径が0.1μmを超えると、顔料分散液の経時での分散安定性やインク化した場合の保存安定性が低下し、インクジェット記録時の吐出安定性も低下する。顔料分散液やインクを高度に安定化させるには、樹脂微粒子の体積平均粒径が顔料粒子の体積平均粒径よりも小さいことが好ましい。
樹脂微粒子の体積平均粒径は、動的光散乱法による粒度分布測定によって測定することができる。測定に用いられる粒度分布測定器としては、例えばDLS−6500(大塚電子社製)が挙げられる。
【0012】
体積平均粒径が0.1μm以下の樹脂微粒子を製造する方法としては、転相乳化法が好ましい。
転相乳化法は、特開平3−221137号や特開平5−66600号に記述されているように、水不溶性の液体及び/又は固体物質から成る樹脂微粒子を製造する際に、水媒体の作用下で、平均粒径が数μm以下の水準に自己分散する分散能を有する、いわゆる自己水分散性樹脂類を用いて樹脂微粒子を形成させる方法であって、実質的に乳化と転相を同時に行う方法である。
この転相乳化法は、特別の分散安定剤を必要とせず、特別の機器を必要とすることなく樹脂微粒子を得ることができ、懸濁重合法や乳化重合法では製造の難しいポリエステル樹脂を主成分とする樹脂微粒子を製造できるという特徴を有している。
前記酸基を有する樹脂を有機溶剤に溶解した有機連続相(O相)に、塩基を加えて中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの樹脂の相変換(いわゆる転相乳化)が行われて不連続相化し、樹脂が水媒体中に微小の粒子となって分散安定化される。
【0013】
樹脂としては、酸基含有重合性モノマー類とその他の重合性モノマー類とを重合開始剤の存在下に共重合させて得られるものが挙げられる。
前記酸基含有重合性モノマー類の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0014】
前記その他の重合性モノマー類としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー(芳香族ビニルモノマー)類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル等の各種アクリル酸エステル類:メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−n−アミル、メタアクリル酸イソアミル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル等の各種メタアクリル酸エステル類:アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ヒドロキシプロピル等の各種ヒドロキシル基含有モノマー類:N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド等の各種N−置換(メタ)アクリル系モノマー類を挙げることができる。
【0015】
上記モノマーの組み合わせにより導かれる共重合体は、場合によっては、重合性モノマー類と重合性不飽和基含有オリゴマーとの共重合体であってもよい。更に重合性不飽和基含有オリゴマー中に酸基を有するものを使用してもよい。
このような重合性不飽和基含有オリゴマーとしては、例えばビニル変性ポリエステル、ビニル変性ポリウレタン、ビニル変性エポキシ化合物等を挙げることができる。
その具体例としては、無水マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水マレイン酸、α−テルピネン無水マレイン酸付加物、トリオールのモノアリルエーテル、ペンタエリスリットジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の各種化合物の重縮合ないしは付加により重合性不飽和結合(ビニル基)が導入されたものが挙げられる。
【0016】
更に、ポリエステル中に酸基を導入させるには、例えば、フタル酸のような二塩基酸を過剰に用いれば、末端にカルボキシル基を有するものが得られるし、無水トリメリット酸を用いれば、主鎖中に酸基を有するものが得られる。
また、前記ビニル変性ポリウレタンは、例えば、グリセリンモノアリルエーテルや1,2−結合を含むブタジエンポリオールのような各種のポリオールとジイソシアネートとの付加重合などにより得られる。あるいは、末端にイソシアネート基を有するポリウレタンと水酸基含有重合性モノマー類との付加反応等によってもビニル結合が導入される。また、ジメチロールプロピオン酸等をポリオール成分として加えることによっても、ポリウレタン中に酸成分を導入することができる。
【0017】
また、ビニル変性エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂の末端エポキシ基とアクリル酸又はメタクリル酸のカルボキシル基とを反応させたもの等が挙げられる。
更に、カルボキシル基含有ビニル共重合体に、グリシジル基含有重合性モノマーを付加させた重合性ビニル基を有する重合性モノマー類のオリゴマーが挙げられる。該重合性モノマー類としては、前記したその他の重合性モノマー類を用いることができる。
上記の他に、マクロモノマーとして市販されている、例えば東亜合成化学工業社製の、末端ビニル変性のオリゴマーも使用することができる。
言うまでもないが、重合性ビニル基を有するオリゴマーであれば、上述したものに限定されない。
【0018】
これらの共重合体を得るための重合は、通常、嫌気下で重合開始剤を用いて行われる。
重合開始剤としては、公知のものが使用できるが、代表的な具体例を挙げれば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、2−エチルヘキサノエート等の各種過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等の各種アゾ化合物が挙げられる。
反応溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素化合物類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の各種アルコール類;セロソルブ、カルビトール等の各種エーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の各種ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の各種エステル類;ブチルセロソルブアセテート等の各種エーテルエステル類等々の有機溶媒が挙げられる。
好ましくは、後述する第二工程に於いて相転移が容易に起こり、第三工程において容易に脱溶媒されるアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の、いわゆる低沸点有機溶媒が好ましい。
重合条件は、通常、50〜150℃の温度範囲内で窒素雰囲気下で行われるが、これに限定されるものではない。
【0019】
得られる共重合体の酸基の量としては、酸価10〜300、好ましくは15〜200、更に好ましくは20〜150程度が好ましい。
また、酸基を含む共重合体は、ある程度以上の分子量を有するものが好ましく、通常、数平均分子量3,000〜100,000、好ましくは5,000〜50,000のものが好ましい。分子量が3,000より小さい場合には、分散安定化の効果が得られなくなることがあり、100,000より大きい場合には、転相乳化時に於ける増粘の度合いが大きくなり、その結果、粒径のコントロールが難しく、粒径の分布が広くなる等の影響があるので好ましくない。
以上の樹脂以外にも、本発明で使用可能な樹脂としては、ウレタン樹脂(例えば、特公平1−287183号公報に示されたウレタン樹脂ディスパージョン)であるとか、エポキシ樹脂(例えば、特開昭53−1228号、特開昭55−3481号、特開昭55−9433号に記載されているような各種のエポキシ化合物)が挙げられる。
【0020】
分散剤Yの調製方法としては、まず、第一工程で、上記樹脂を有機溶剤に溶解又は分散させる。その方法としては、通常の攪拌機器を使用することができ、必要に応じて加熱、加温して溶解又は分散を加速させることも可能である。
第二工程では、有機溶剤に溶解又は分散させた樹脂を、塩基で中和した後、水媒体中で転相乳化させる。塩基で中和した後に水媒体を加えると、W/OからO/Wへの樹脂相の変換が瞬時に行われ、水媒体中に樹脂微粒子が生成する。
第二工程で使用する塩基としては、無機の塩基性化合物として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属塩類、又はそれらの炭酸塩、酢酸塩、及びアンモニア等が挙げられる。また、有機の塩基性化合物として、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。
これらの塩基性化合物はそのまま用いてもよいが、通常は水溶液として用いる。
【0021】
第二工程の転相乳化には、公知慣用の攪拌機が使用できる。特に、粒径をサブミクロン以下に制御する場合には、乳化分散機等が好ましい。
例えば、一般的に高速剪断タービン型分散機といわれるもので、ホモミクサー(特殊機化工業社製)、ディスパー(特殊機化工業社製)、ウルトラ・タラックス(ドイツ)、ケディミル(アメリカ)、シャーフロー(アメリカ)、シルバーソンミキサー(イギリス)、ハレルホモジナイザー(ドイツ)等が挙げられる。
また、スラッシャー(三井鉱山社製)やキャビトロン(ユーロテック社製)のような高速回転するローターとそれに噛み合うステータによる連続乳化分散機、マイクロフルイダイザー(みづほ工業社製)、マイクロホモジナイザー(みづほ工業社製)、マントン・ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社製)やナノマイザー(ナノマイザー社製)のような特殊形状のチャンバーとポンプの供給エナルギーとの相互作用による乳化分散機、スタテイックミキサー(ノリタケカンパニー社製)のような駆動部のない静止型管内連続混合器が挙げられる。
【0022】
本発明では分散剤Xと分散剤Yを併用するので、それぞれの分散能力が有効に活用され、分散剤の総使用量を減ずることができる。これにより、顔料分散液の初期分散性、経時での分散安定性及びインク化した場合の保存安定性が確保され、しかも普通紙に印字した場合の画像濃度が高くなる。普通紙に印字した場合に画像濃度が向上する理由については、分散剤の総使用量が減量されたためにインクが普通紙上に付着後に、インク中の液体成分が紙層へ移行することにより顔料濃度が高くなったときのインクの分散安定状態がくずれやすくなり、インクが増粘・凝集するために顔料が紙の表面近傍に多く留まるためであると推察される。
分散剤Yによって顔料分散液やインクの保存安定性が向上する理由は必ずしも定かではないが、顔料分散液やインク中において顔料粒子の周りに分散剤Yが存在する状態となるため、これによって顔料粒子が互いに近付くことが防止され、その粒子同士が合着することが阻止されることから、水性媒体中に顔料粒子が安定に保持されることになるものと推察される。
【0023】
分散剤Xのみを用いた場合には、顔料分散液の製造時又は製造直後の分散安定性(以下、初期分散性と云う)は優れているものの、経時での分散安定性やインク化した場合の保存安定性は不十分である。普通紙に印字した場合の画像濃度は、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物を用いた場合よりも高いが不十分である。
一方、分散剤Yのみを用いた場合には、初期分散性が不十分である。また、インク化した場合の保存安定性は優れているが、普通紙に印字した場合の画像濃度が低い。また、分散剤Yを顔料分散液に配合せず、インク調製時に配合した場合には、インクの保存安定性は優れているものの、普通紙に印字した場合の画像濃度が低い。
【0024】
本発明の顔料分散液は、分散剤Xと分散剤Yの合計量が質量基準でカーボンブラック1に対し0.01〜0.5の割合で含まれるのが好ましく、0.02〜0.3で含まれるのがより好ましい。分散剤の含有量が0.01以上であれば、本発明の目的を達成しやすく、顔料分散液及びインクの保存安定性も確保でき、その結果、ノズルの目詰まりが発生しにくくなる傾向があり、0.5以下であれば、顔料分散液及びインクの粘度が高くなりすぎてインクジェット方式での印字が困難になるようなこともない。
本発明の顔料分散液では、上記分散剤を用いることにより、顔料分散液のカーボンブラックの体積平均粒径(D50)を70〜180nm、該カーボンブラックの粒度分布における粒径標準偏差を前記D50の1/2以下とすることができ、これにより、インクジェット用インクに用いたときに、画像濃度が高く、吐出安定性及び保存安定性が良好な顔料分散液を提供できる。なお、上記カーボンブラックの体積平均粒径は、粒度分布計(日機装社製、UPA)を用い、23℃、55%RHの環境下で測定したものである。
顔料分散液におけるカーボンブラック濃度は、顔料分散液全体に対して5〜25質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。カーボンブラック濃度が5質量%以上であれば生産性が劣ることもなく、25質量%以下であれば、顔料分散液の粘度が高くなりすぎて分散が困難になることもない。
【0025】
−その他の成分−
本発明の顔料分散液には、カーボンブラック、分散剤、水以外に、必要に応じて水溶性
有機溶剤、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活
性剤、防腐剤等の各種添加剤を添加することができる。
前記水溶性有機溶剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、
例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリ
コール、グリセリン等の多価アルコール;N−メチルピロリドン、2−ピロリドン等のピ
ロリドン誘導体;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;モノエタノールアミン、ジ
エタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられる。
本発明の顔料分散液は、カーボンブラック、分散剤、水、及び必要に応じて各種添加剤
をサンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、ナノマイザー、ホモジナイザー等
の公知の分散機で湿式分散処理することによって得ることができる。
ここで、湿式分散処理とは、前記顔料分散液の材料の混合物を、分散機により、いわゆる湿式分散方式で微粉砕し分散する処理のことを意味する。
本発明の顔料分散液は、特に顔料系インクジェット用インクとして好適に使用すること
ができる。
【0026】
<インクジェット用インク>
本発明のインクジェット用インクは、本発明の顔料分散液を含有し、水、水溶性有機溶
剤、界面活性剤、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
インク中のカーボンブラックの含有量は、インク全体の処方にもよるが、1〜20質量
%が好ましく、3〜15質量%がより好ましい。カーボンブラックの含有量が低すぎなけ
れば、画像濃度が低すぎて印字の鮮明さに欠けるようなことはなく、カーボンブラックの
含有量が高すぎなければ、インクの粘度が高くなりすぎたりノズルの目詰まりが発生しや
すくなることもない。
【0027】
前記水溶性有機溶剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、
例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリー
ルエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレン
カーボネート、炭酸エチレン、その他の水溶性溶剤などが挙げられる。これらは、1種を
単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。具体的には、上記顔料分散液の場合と同様のものを用いることができる。
水溶性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して0〜50質量%が好ましく、5〜40
質量%がより好ましく、10〜35質量%が更に好ましい。
前記界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン
界面活性剤、両性界面活性剤、などが用いられる。
前記その他の成分としては、例えば消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤、比抵抗
調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、粘度調整剤などが挙げら
れる。
【0028】
本発明のインクジェット用インクには、画像の耐擦過性等を更に向上させるために水分散性樹脂粒子を配合してもよい。水分散性樹脂粒子とは、連続相が水であり、分散相が樹脂成分である樹脂エマルジョンを意味する。分散相の樹脂成分としてはアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
本発明のインクジェット用インクは、公知の方法により製造することができ、例えば本発明の顔料分散液、水、水溶性有機溶剤、及び界面活性剤等を攪拌混合し、フィルター、遠心分離装置等で粗大粒子をろ過し、必要に応じて脱気することによって得られる。
本発明のインクジェット用インクは、後述するように該インクを収容するインクカート
リッジに好適に用いることができる。また、後述するように、本発明のインクジェット用
インクを用いて、紙等の画像支持体に吐出させる画像形成装置としてのインクジェット記
録装置により、画像形成することができる。
【0029】
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクジェット用インクを容器中に収容した
ものである。容器には特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を
適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で
形成されたインク袋などを有するもの、プラスチックケースなどが好適に挙げられる。
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、本発明のインクジェット用インクを吐出させて画像を形成す
る吐出手段を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
印字(吐出)する方法としては、連続噴射型、又はオンデマンド型が挙げられる。オンデマンド型としては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【0030】
ここで、本発明のインクカートリッジ及び画像形成装置(インクジェット記録装置)に
ついて、図1を参照して説明する。
図1において、本発明のインクジェット用インクが収容されるインクカートリッジ20
は、キャリッジ18内に収納される。図1では、インクカートリッジ20は複数設けられているが、複数である必要はない。このような状態でインクジェット用インクが、インクカートリッジ20からキャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aに供給される。なお、図1において、吐出ノズル面は下方向を向いた状態であるため見えないが、この吐出ノズルからインクジェット用インクが吐出される。
キャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aは、主走査モータ26で駆動される
タイミングベルト23によって、ガイドシャフト21、22にガイドされて移動する。
一方、特定のコート紙(画像支持体)はプラテン19によって液滴吐出ヘッド18aと
対面する位置に置かれる。なお、図1中、1はインクジェット記録装置、2は本体筐体、
16はギア機構、17は副走査モータ、25、27はギア機構をそれぞれ示す。
【0031】
本発明のインクジェット用インク又はインクカートリッジを収容したインクジェット記
録装置を用いて画像支持体上に画像を形成すると、オンデマンドで画像支持体上に印刷さ
れた画像形成体が得られる。また、インクジェット用インクの補充はインクカートリッジ
単位で取り替えることにより行うことができる。
前記画像支持体としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例え
ば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシートなどが挙げられる。これらの
中でも、紙が特に好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの
実施例により何ら限定されるものではない。
なお、カーボンブラックの平均一次粒径は、電子顕微鏡写真を用いて粒子を撮影し、撮影画像の粒子の径と数から算出することで測定し、カーボンブラックのBET比表面積は、窒素吸着によるBET法によって測定した。また、例中の「%」及び「部」はいずれも質量基準である。
【0033】
<部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及びその誘導体1の作製>
商品名:サンエキス252(日本製紙ケミカル社製、主成分リグニンスルホン酸ナトリウム)の固形分に対し45%のNaOHを加えた液を170〜180℃で60分間、アルカリ空気酸化処理した後、HSOを加えてpH3とし、部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及びその誘導体を分別沈殿させた。
この沈殿をNaOHでpH8に中和し、乾燥させて、スルホン化度が0.15モルの部分脱スルホンリグニンスルホン酸ナトリウム及びその誘導体を得た。
【0034】
<部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及びその誘導体2>
商品名:パールレックスDP(日本製紙ケミカル社製、部分脱スルホン化反応を行ったリグニンスルホン酸ナトリウム塩及びその誘導体、メトキシル基含有量9.8%)
【0035】
<アニオン型自己水分散性樹脂微粒子1の作製>
(ポリウレタン微粒子の合成)
攪拌装置、還流装置、乾燥窒素導入管及び温度計を備えた1Lの四つ口フラスコに「バーノックDN−980(大日本インキ化学工業社製のポリイソシアネート)」533g、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸33.5g、ジブチル錫ジラウレート0.05g及び酢酸エチル300gを加え、80℃で3時間撹拌して乾燥固形分比が50.0%、NCO含有率6.80%のポリウレタンプレポリマーの溶液を得た。
NCO(イソシアネート基)含有率は、所定量の試料溶液を秤量し、測定するイソシアネート基より過剰の、濃度既知のジ−n−ブチルアミンの酢酸エチル溶液を一定量加えて反応させ、過剰のジ−n−ブチルアミンを濃度既知の塩酸水溶液で逆滴定することによって求めた。
上記ポリウレタンプレポリマーの溶液100gにメチルエチルケトンの30gを加え、トリエチルアミンの3.50gで中和し、攪拌しながら水を滴下した。
プレポリマー溶液は徐々に増粘し、約150gの水を滴下した辺りから著しく粘度が低下して転相が完了した。
更に150gの水を加えた後、ジエチレントリアミンの2.51gを50gの水に溶解した水溶液を攪拌しながらゆっくりと加えた。
次いで、得られた分散液を30℃に加熱して、有機溶剤及び余剰の水を減圧除去することにより、乾燥固形分比33.5%、平均粒径78nmのポリウレタン微粒子の水分散体が得られた。
ポリウレタン微粒子の粒径は、レーザードップラー式粒度分布計マイクロトラックUPA−150で測定した。
所定量の試料溶液を秤量し、濃度既知の水酸化カリウムのメタノール溶液で滴定して求めたポリウレタン微粒子の酸価は、31.2であった。
【0036】
<アニオン型自己水分散性樹脂微粒子2>
ポリウレタン微粒子(商品名:ユーコートUWS−145、三洋化成工業社製、乾燥固形分比34%、平均粒径20nm、酸価49)
【0037】
<アニオン型自己水分散性樹脂微粒子3の作製>
(アクリルポリマー微粒子の合成)
攪拌装置、還流装置、温度計付き乾燥窒素導入管及び滴下装置を備えた1Lの四つ口フラスコにメチルエチルケトン400gを仕込み、80℃に昇温した。
次いで、スチレン80g、メタクリル酸メチル238.9g、メタクリル酸24.5g、アクリル酸ブチル56.6g、パーブチルO(日本油脂社製の重合開始剤)8gをよく混合した溶液を2時間かけて滴下した。
8時間攪拌後、パーブチルOを0.5g加え、更に、8時間撹拌して、乾燥固形分比が49.5%、酸価39.1、数平均分子量が20000のアクリルポリマーを得た。
乾燥固形分比は、試料溶液約1部を秤量するとともに、120℃で1時間乾燥後の試料を秤量し、その質量比により求めた。
数平均分子量は、GPCにより測定し、ポリスチレン換算の分子量として求めた。
酸価は、所定量の試料溶液を秤量し、濃度既知の水酸化カリウムのメタノール溶液で滴定して求めた。
次に、上記アクリルポリマーの溶液100gをトリエチルアミン2.71gで中和し、攪拌しながら水を滴下した。
プレポリマー溶液は徐々に増粘し、約150gの水を滴下した辺りから著しく粘度が低下して転相が完了した。
更に150gの水を加えた後、得られた分散液を30℃に加熱し、有機溶剤及び余剰の水を減圧除去して、乾燥固形分比33.7%、平均粒径120nmのアクリルポリマー微粒子の水分散体を得た。
アクリルポリマーの粒径は、レーザードップラー式粒度分布計マイクロトラックUPA−150で測定した。
【0038】
定着剤(合成例1)
−反応性シリル基を含まないシリコーン変性アクリル樹脂微粒子の合成−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えたフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、アクアロンRN−20(第一工業製薬社製)10g、過硫酸カリウム1g、及び純水286gを仕込み、65℃に昇温した。
次に、メタクリル酸メチル150g、アクリル酸−2−エチルヘキシル100g、アクリル酸20g、ビニルトリエトキシシラン20g、アクアロンRN−20(第一工業製薬社製)10g、過硫酸カリウム4g、及び純水398.3gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
次いで、80℃で更に3時間加熱熟成した後、冷却し、水酸化カリウムでpHを7〜8となるよう調整して、固形分濃度30%のシリコーン変性アクリル樹脂微粒子を得た。
【0039】
〔実施例1〕
<顔料分散液(A)>
・カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製、ガスブラック、
BET比表面積150m/g) …150部
・部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及びその誘導体1 …3.75部
・アニオン型自己水分散性樹脂微粒子1(固形分濃度33.5%) …11.19部
・純水 …835.06部

上記処方の材料混合物を直径3mmのジルコニアビーズを用いたボールミルでプレ分散し、次いで、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型バッチ式)で、直径0.3mmジルコニアビーズを用いて周速10m/s、液温10℃で5分間分散した後、遠心分離機(久保田商事社製、Model−3600)で粗大粒子を遠心分離し、表1及び表2に示す顔料分散液(A)を作製した。
【0040】
<インク液(a)>
上記顔料分散液(A)を含む下記処方の材料を混合し、30分攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気してインク液(a)を作製した。

・顔料分散液A(顔料濃度15%) 53.3%
・グリセリン 8.5%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 17.0%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
・2−ピロリドン 2.0%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂(固形分濃度30%) 10.0%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、デュポン社製、有効成分40%) 2.5%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) 0.05%
・トリエタノールアミン 0.6%
・純水 4.05%

【0041】
〔実施例2〕
<顔料分散液(B)>
・カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製、ガスブラック、
BET比表面積150m/g) …150部
・部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及びその誘導体1 …3.75部
・アニオン型自己水分散性樹脂微粒子2(固形分濃度34%) …11.03部
・純水 …835.22部

上記処方の材料混合物を用いた点以外は、顔料分散液(A)と同様にして表1及び表2に示す顔料分散液(B)を作製した。
【0042】
<インク液(b)>
上記顔料分散液(B)を含む下記処方の材料を混合し、30分攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気してインク液(b)を作製した。

・顔料分散液B(顔料濃度15%) 53.3%
・グリセリン 8.5%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 17.0%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
・2−ピロリドン 2.0%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂(固形分濃度30%) 10.0%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、デュポン社製、有効成分40%) 2.5%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) 0.05%
・トリエタノールアミン 0.6%
・純水 4.05%

【0043】
〔実施例3〕
<顔料分散液(C)>
・カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製、ガスブラック、
BET比表面積150m/g) …150部
・部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及びその誘導体1 …1.875部
・アニオン型自己水分散性樹脂微粒子2(固形分濃度34%) …11.03部
・純水 …837.10部

上記処方の材料混合物を用いた点以外は、顔料分散液(A)と同様にして表1及び表2に示す顔料分散液(C)を作製した。
【0044】
<インク液(c)>
上記顔料分散液(C)を含む下記処方の材料を混合し、30分攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気してインク液(c)を作製した。

・顔料分散液C(顔料濃度15%) 53.3%
・グリセリン 8.5%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 17.0%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
・2−ピロリドン 2.0%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂(固形分濃度30%) 10.0%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、デュポン社製、有効成分40%) 2.5%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) 0.05%
・トリエタノールアミン 0.6%
・純水 4.05%

【0045】
〔実施例4〕
<顔料分散液(D)>
・カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製、ガスブラック、
BET比表面積150m/g) …150部
・部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及びその誘導体2 …3.75部
・アニオン型自己水分散性樹脂微粒子2(固形分濃度34%) …11.03部
・純水 …835.2部

上記処方の材料混合物を用いた点以外は、顔料分散液(A)と同様にして表1及び表2に示す顔料分散液(D)を作製した。
【0046】
<インク液(d)>
上記顔料分散液(D)を含む下記処方の材料を混合し、30分攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気してインク液(d)を作製した。

・顔料分散液D(顔料濃度15%) 53.3%
・グリセリン 8.5%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 17.0%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
・2−ピロリドン 2.0%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂(固形分濃度30%) 10.0%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、デュポン社製、有効成分40%) 2.5%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) 0.05%
・トリエタノールアミン 0.6%
・純水 4.05%

【0047】
〔比較例1〕
<顔料分散液(E)>
・カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製、ガスブラック、
BET比表面積150m/g) …150部
・部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及びその誘導体1 …3.75部
・アニオン型自己水分散性樹脂微粒子3(固形分濃度33.7%) …11.13部
・純水 …835.12部

上記処方の材料混合物を用いた点以外は、顔料分散液(A)と同様にして表1及び表2に示す顔料分散液(E)を作製した。
【0048】
<インク液(e)>
上記顔料分散液(E)を含む下記処方の材料を混合し、30分攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気してインク液(e)を作製した。

・顔料分散液E(顔料濃度15%) 53.3%
・グリセリン 8.5%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 17.0%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
・2−ピロリドン 2.0%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂(固形分濃度30%) 10.0%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、デュポン社製、有効成分40%) 2.5%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) 0.05%
・トリエタノールアミン 0.6%
・純水 4.05%

【0049】
〔比較例2〕
<顔料分散液(F)>
・カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製、ガスブラック、
BET比表面積150m/g) …150部
・ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物 …9.375部
(竹本油脂社製、パイオニンA−45−PN)
・純水 …840.625部

上記処方の材料混合物を用いた点以外は、顔料分散液(A)と同様にして表1及び表2に示す顔料分散液(F)を作製した。
【0050】
<インク液(f)>
上記顔料分散液(F)を含む下記処方の材料を混合し、30分攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気してインク液(f)を作製した。

・顔料分散液F(顔料濃度15%) 53.3%
・グリセリン 8.5%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 17.0%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
・2−ピロリドン 2.0%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂(固形分濃度30%) 10.0%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、デュポン社製、有効成分40%) 2.5%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) 0.05%
・トリエタノールアミン 0.6%
・純水 4.05%

【0051】
〔比較例3〕
<顔料分散液(G)>
・カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製、ガスブラック、
BET比表面積150m/g) …150部
・部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及びその誘導体1 …9.375部
・純水 …840.625部

上記処方の材料混合物を用いた点以外は、顔料分散液(A)と同様にして表1及び表2に示す顔料分散液(G)を作製した。
【0052】
<インク液(g)>
上記顔料分散液(G)を含む下記処方の材料を混合し、30分攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気してインク液(g)を作製した。

・顔料分散液G(顔料濃度15%) 53.3%
・グリセリン 8.5%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 17.0%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
・2−ピロリドン 2.0%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂(固形分濃度30%) 10.0%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、デュポン社製、有効成分40%) 2.5%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) 0.05%
・トリエタノールアミン 0.6%
・純水 4.05%

【0053】
〔比較例4〕
<顔料分散液(H)>
・カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製、ガスブラック、
BET比表面積150m/g) …150部
・ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物 …9.375部
(竹本油脂社製、パイオニンA−45−PN)
・純水 …840.625部

上記処方の材料混合物を用いた点以外は、顔料分散液(A)と同様にして表1及び表2に示す顔料分散液(H)を作製した。
【0054】
<インク液(h)>
上記顔料分散液(H)を含む下記処方の材料を混合し、30分攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気してインク液(h)を作製した。

・顔料分散液H(顔料濃度15%) 53.3%
・グリセリン 8.5%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 17.0%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
・2−ピロリドン 2.0%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂(固形分濃度30%) 6.67%
・アニオン型自己水分散性樹脂微粒子1(固形分濃度33.5%) 2.99%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、デュポン社製、有効成分40%) 2.5%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) 0.05%
・トリエタノールアミン 0.6%
・純水 4.39%

【0055】
〔比較例5〕
<顔料分散液(I)>
・カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製、ガスブラック、
BET比表面積150m/g) …150部
・部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及びその誘導体1 …9.375部
・純水 …840.625部

上記処方の材料混合物を用いた点以外は、顔料分散液(A)と同様にして表1及び表2に示す顔料分散液(I)を作製した。
【0056】
<インク液(i)>
上記顔料分散液(I)を含む下記処方の材料を混合し、30分攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気してインク液(i)を作製した。

・顔料分散液I(顔料濃度15%) 53.3%
・グリセリン 8.5%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 17.0%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
・2−ピロリドン 2.0%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂(固形分濃度30%) 6.67%
・アニオン型自己水分散性樹脂微粒子1(固形分濃度33.5%) 2.99%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、デュポン社製、有効成分40%) 2.5%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) 0.05%
・トリエタノールアミン 0.6%
・純水 4.39%

【0057】
〔比較例6〕
<顔料分散液(J)>
・カーボンブラック(NIPEX160−IQ、degussa社製、ガスブラック、
BET比表面積150m/g) …150部
・アニオン型自己水分散性樹脂微粒子1(固形分濃度33.5%) …55.97部
・純水 …794.03部

上記処方の材料混合物を用いた点以外は、顔料分散液(A)と同様にして表1及び表2に示す顔料分散液(J)を作製した。
【0058】
<インク液(j)>
上記顔料分散液(J)を含む下記処方の材料を混合し、30分攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気してインク液(j)を作製した。

・顔料分散液J(顔料濃度15%) 53.3%
・グリセリン 8.5%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 17.0%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0%
・2−ピロリドン 2.0%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂(固形分濃度30%) 10.0%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、デュポン社製、有効成分40%) 2.5%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製) 0.05%
・トリエタノールアミン 0.6%
・純水 4.05%

【0059】
上記インク(a)〜(j)に含まれる粒子の体積平均粒子径(D50)を、日機装社製の粒度分布計UPAを用いて23℃、55%RHの環境で測定した。結果を表2に示す。
また、リコー社製のインクジェットプリンタGX5000を用いて、普通紙−はやい(
カラーマッチング−しない)モードで画像を出力した。このモードにおける黒ベタ部のイ
ンク付着量が8.2g/mとなるように印加電圧波形を調整した。
記録用媒体として、ゼロックス社製、PPC用紙4200紙を用い、以下のようにして画像濃度、吐出安定性及び保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0060】
<画像濃度>
画像サンプルのベタ画像をX−Rite濃度計(X−Rite社製)で測定した。
【0061】
<吐出安定性>
各インクを用いて印刷物を印刷した後、プリンタヘッドにキャップをした状態でプリンタを40℃の環境下で1ヶ月間放置した。放置後のプリンタの吐出状態が初期の吐出状態に回復するか否かを、下記のクリーニング動作回数の基準によって評価した。
〔評価基準〕
○:1回の動作により回復した場合
△:2回〜3回の動作により回復した場合
×:3回以上の動作によっても回復がみられなかった場合
【0062】
<保存安定性>
各インクをポリエチレン容器に入れて密封し、70℃で3週間保存した後の粒径、表面張力、及び粘度を測定し、初期物性との変化率により下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:粒径、表面張力、粘度の全ての項目で変化率が5%未満の場合
○:粒径、表面張力、粘度の全ての項目で変化率が10%未満の場合
△:粒径、表面張力、粘度の全ての項目で変化率が30%未満の場合
×:粒径、表面張力、粘度の少なくとも1つの項目で変化率が30%以上の場合
【0063】
【表1】

なお、表中のα、β、γの量は、カーボンブラック1質量部に対する質量部である。
【0064】
【表2】

【0065】
表2の結果から、実施例1〜4の本発明の顔料分散液を用いたインクジェット用インクは、高い画像濃度であり、吐出安定性、及び保存安定性においても比較例1〜6より優れたものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の顔料分散液及び該顔料分散液を用いたインクジェット用インクは、インクジェ
ット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェットプリンタ、
ファクシミリ装置、複写装置、などに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 インクジェット記録装置
2 本体筐体
16 ギア機構
17 副走査モータ
18 キャリッジ
18a 液滴吐出ヘッド
19 プラテン
20 インクカートリッジ
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
25 ギア機構
26 主走査モータ
27 ギア機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2008−63573号公報
【特許文献2】特開2009−067907号公報
【特許文献3】特開2009−173805号公報
【特許文献4】特開2005−263880号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカーボンブラックと分散剤と水を含有し、該分散剤が、部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩及び/又はその誘導体と、体積平均粒径が0.1μm以下のアニオン型自己水分散性樹脂微粒子を含むことを特徴とする顔料分散液。
【請求項2】
請求項1に記載の顔料分散液を含有することを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェット用インクを容器中に収容したことを特徴とするインク
カートリッジ。
【請求項4】
請求項2に記載のインクジェット用インクを吐出させて画像を形成する吐出手段を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−246518(P2011−246518A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118193(P2010−118193)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】