顕微鏡装置
【課題】装置を大型化させることなく、長さが異なる対物レンズを簡易に切り替える。
【解決手段】少なくとも1つの通常型対物レンズ1を回転軸回りに回転させて、標本Sに照射する照明光の光軸P上の光路に通常型対物レンズ1を選択的に配置可能に支持するレボルバ15を備え、レボルバ15の周方向のいずれかの位置に、光軸Pに一致する位置に配置された状態で、通常型対物レンズ1より長さが長いスティック型対物レンズ2を標本Sとは反対側から貫通状態に取り付け可能な貫通孔が設けられている顕微鏡装置100を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの通常型対物レンズ1を回転軸回りに回転させて、標本Sに照射する照明光の光軸P上の光路に通常型対物レンズ1を選択的に配置可能に支持するレボルバ15を備え、レボルバ15の周方向のいずれかの位置に、光軸Pに一致する位置に配置された状態で、通常型対物レンズ1より長さが長いスティック型対物レンズ2を標本Sとは反対側から貫通状態に取り付け可能な貫通孔が設けられている顕微鏡装置100を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズを使用する顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マウスのような実験動物等の生体の体内に細長い形状の小型対物レンズの先端を挿入し、体内を生きたまま(in vivo)観察する光学機器装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の光学機器装置は、顕微鏡本体に対して小型対物レンズの先端を光軸方向に進退させる対物レンズ進退機構と、顕微鏡本体に対して小型対物レンズを着脱させる着脱機構とを備え、対物レンズ進退機構により小型対物レンズの先端を光軸方向に後退させて生体の体内から外した状態で、着脱機構により小型対物レンズを倍率が異なる他の小型対物レンズに交換することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−301015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した小型対物レンズと比較して長さが短い通常の対物レンズを用いる一般的な顕微鏡装置において、生体等の標本を載置するステージとレボルバに取り付けられる通常の対物レンズの取付面との間の距離は、対物レンズの同焦点距離に標本の厚さと若干のゆとりとを加えた程度の大きさに設定される。対物レンズの同焦点距離とは、焦点を合わせたときの物体面から対物レンズの取付面までの距離をいう。
【0005】
このような一般的な顕微鏡装置の構成において、特許文献1に記載の対物レンズ進退機構を適用して通常の対物レンズと小型対物レンズとを切り替え可能にするためには、ステージから対物レンズの取付面までの距離を、小型対物レンズの同焦点距離と、小型対物レンズの光軸方向の移動ストロークとを足した寸法に合わせて大きく取る必要があり、装置が大型化するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、装置を大型化させることなく、長さが異なる対物レンズを簡易に切り替えることができる顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、少なくとも1つの第1の対物レンズを回転軸回りに回転させて、標本に照射する照明光の光路上に前記第1の対物レンズを選択的に配置可能に支持するレボルバを備え、該レボルバの周方向のいずれかの位置に、前記光路に一致する位置に配置された状態で、前記第1の対物レンズより長さが長い第2の対物レンズを前記標本とは反対側から貫通状態に取り付け可能な貫通孔が設けられている顕微鏡装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、レボルバに第2の対物レンズを取り付けていない状態でレボルバを回転軸回りに回転させれば、第2の対物レンズによるレボルバの回転の妨げを回避することができ、レボルバにより支持された第1の対物レンズが照明光の光路上に選択的に配置される。また、第2の対物レンズの後述する取り付け方法により、レボルバと標本との間のスペースを、長さが長い第2の対物レンズに合わせて大きく設定する必要がない。
【0009】
一方、第2の対物レンズは、照明光の光路に一致する位置に配置したレボルバの貫通孔に標本とは反対側から挿入して貫通状態に取り付けるだけで照明光の光路上に配置することができ、なおかつ第1の対物レンズの物体側焦点面に、第2の対物レンズの物体側焦点面を一致させることが出来る。すなわち、第1の対物レンズと第2の対物レンズの同焦点が確保される。また、貫通孔から標本とは反対側へ引き抜くだけで照明光の光路上から外すことができる。したがって、レボルバへの第2の対物レンズの着脱が容易である。
【0010】
これにより、レボルバと標本との間のスペースを長さが短い第1の対物レンズに合わせれば済み、また、第1の対物レンズと第2の対物レンズとを切り替える際にレボルバと標本とを光路に沿う方向に相対移動させる必要もない。したがって、装置を大型化させることなく第1の対物レンズと第2の対物レンズとを簡易に切り替えることができる。
【0011】
上記発明においては、前記貫通孔に挿入された前記第2の対物レンズをその光軸方向に位置決めする位置決め部とを備えることとしてもよい。
このように構成することで、位置決め部により、レボルバの貫通孔に第2の対物レンズを光軸方向に位置決め状態に取り付けることができる。この場合において、第1の対物レンズから第2の対物レンズに切り替える際にレボルバと標本との光路に沿う方向の相対位置を変動させる必要がないので同焦点を確保することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記貫通孔に挿入される前記第2の対物レンズを前記光軸方向に移動可能に支持するガイド部材を備えることとしてもよい。
このように構成することで、ガイド部材により、レボルバの貫通孔に第2の対物レンズを精度よく挿通させることができる。これにより、第2の対物レンズの先端が顕微鏡装置に接触して破損したり標本の意図しない位置に挿入されて標本が無用に傷付けられたりするのを回避することができる。
【0013】
また、上記発明においては、顕微鏡本体と、光軸方向に移動可能に支持された1以上の小レンズを備える前記第2の対物レンズと、前記レボルバを前記回転軸回りに回転可能に支持し前記光路に沿う方向に移動可能な可動アームと、前記貫通孔に取り付けられた前記第2の対物レンズを前記顕微鏡本体に固定する対物固定部と、少なくとも1つの前記小レンズと前記可動アームとをその光軸方向に固定するレンズ固定部とを備えることとしてもよい。
【0014】
このように構成することで、可動アームを光路に沿う方向に移動させると、可動アームにより支持されたレボルバとともに、レンズ固定部により可動アームに対して光軸方向に固定された第2の対物レンズの少なくとも1つの小レンズが光路に沿う方向に移動させられる。この場合において、対物固定部により顕微鏡本体に対して第2の対物レンズが固定されているので、標本と第2の対物レンズとの光路に沿う方向の相対位置を変えずに第2の対物レンズの焦点位置を調節することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置を大型化させることなく、長さが異なる対物レンズを簡易に切り替えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る顕微鏡装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスティック型対物レンズの縦断面図である。
【図3】図1の顕微鏡装置に図2のスティック型対物レンズを挿入する様子を示す図である。
【図4】図1の顕微鏡装置に図2のスティック型対物レンズを取り付けた状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の第1の変形例に係る顕微鏡装置のガイド部材を示す縦断面図である。
【図6】図5のガイド部材により顕微鏡装置にスティック型対物レンズを取り付けた状態を示す図である。
【図7】(a)本発明の一実施形態の第2の変形例に係るスティック型対物レンズの伸ばした状態を示す図であり、(b)は(a)のスティック型対物レンズの縮めた状態を示す図である。
【図8】レボルバの貫通孔から図7のスティック型対物レンズを退避させた状態を示している。
【図9】レボルバの貫通孔に図7のスティック型対物レンズを取り付けて若干縮めた状態を示している。
【図10】本発明の一実施形態の第3の変形例に係るスティック型対物レンズを示す図である。
【図11】顕微鏡装置に図10のスティック型対物レンズを取り付けた状態を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態の第4の変形例に係る挿脱機構を示す図である。
【図13】図12の挿脱機構のガイド孔を照明光の光軸上に配置し、レボルバの貫通孔にスティック型対物レンズを挿入した状態を示す図である。
【図14】図12の変形例に係る挿脱機構の貫通孔を照明光の光軸上に配置した状態を示す図である。
【図15】図12の変形例に係る挿脱機構のガイド孔を照明光の光軸上に配置し、レボルバの貫通孔にティック型対物レンズを挿入した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る顕微鏡装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置100は、図1に示すように、顕微鏡本体10と、顕微鏡本体10に取り付けられる共焦点レーザ顕微鏡ユニット(以下、「LSMユニット」という。)50とを備えている。
【0018】
顕微鏡本体10は、マウスのような実験小動物の標本Sを載置するステージ11と、ステージ11の上方に間隔を空けて配置されるアーム13と、アーム13により所定の回転軸回りに回転可能に支持されるレボルバ15と、ステージ11を鉛直方向に昇降可能な昇降機構17とを備えている。
【0019】
標本Sは、例えば、切開により形成された切開部分にトラカール3が固定され、トラカール3により切開部分が開口状態に保持されている。
アーム13には、標本Sに照射する照明光の光軸P上に、その光軸Pに沿う方向に貫通する貫通孔(図示略)が形成されている。
【0020】
レボルバ15は、通常型対物レンズ(第1の対物レンズ)1を着脱可能に保持している。このレボルバ15は、前記所定の回転軸回りに回転することにより、照明光の光軸P上の光路に通常型対物レンズ1を選択的に配置することができるようになっている。図1において、通常型対物レンズ1の作動距離を符合WD、通常型対物レンズ1の同焦点距離(焦点を合わせたときの物体面からレボルバ15における通常型対物レンズ1の取り付け面までの距離)を符合B、物体側焦点面45からアーム13におけるレボルバ15の取り付け面までの距離を符合Cとする。
【0021】
通常型対物レンズ1は、標本Sに取り付けられたトラカール3の上方にその先端が近接して配置させられることで、LSMユニット50からの照明光をトラカール3を介して標本Sの臓器Nに照射したり、標本Sの臓器Nからの光をトラカール3を介して集光したりするようになっている。この通常型対物レンズ1は、レボルバ15から取り外して倍率が異なる他の通常型対物レンズ1に交換することができるようになっている。
【0022】
また、レボルバ15には、周方向のいずれかの位置に貫通孔19が形成されている。貫通孔19は、レボルバ15が前記回転軸回りに回転することにより、照明光の光軸Pに一致する位置に選択的に配置することができるようになっている。また、貫通孔19は、照明光の光軸Pに一致する位置に配置された状態でアーム13の貫通孔と連通するようになっている。
【0023】
レボルバ15の貫通孔19には、通常型対物レンズ1よりも軸方向の長さが長いスティック型対物レンズ(第2の対物レンズ)2を保持させることができるようになっている。具体的には、スティック型対物レンズ2は、レボルバ15の貫通孔19に対してステージ11とは反対側からアーム13の貫通孔を介して挿入することで、貫通状態に保持される。
【0024】
このスティック型対物レンズ2は、図2に示すように、基端側から先端に向かって太さが段階的に細くなる段付き形状を有しており、径寸法が大きい基端部21と、基端部21よりも径寸法が小さく、通常型対物レンズ1の径寸法とほぼ同じ径寸法を有する円筒中央部31と、円筒中央部31よりも径寸法が小さく、標本Sの切開部分に小さい侵襲で挿入可能な細径先端部41とにより構成されている。
【0025】
基端部21は、軸方向に突出するつまみ23と、半径方向外方に拡がる鍔部25とを備えており、側壁に側壁開口27が形成されている。また、基端部21には、スティック型対物レンズ2の光軸Qに対して45°の傾きを有し、側壁開口27から入射される光を光軸Q方向に反射させる平面鏡29が備えられている。
【0026】
円筒中央部31には、射出瞳をなす開口絞り33と、リレーレンズを構成する複数のレンズからなるリレーレンズ群35とが備えられている。
細径先端部41には、小型対物レンズを構成する複数のレンズからなる小型対物レンズ群43が備えられている。
【0027】
図2において、符合45は物体側焦点面を示し、符合47は小型対物レンズ群43による一次像面を示し、符合49は物体側焦点面45から発せられた入射光線を示し、符合37は一次像光線を示し、符合39は射出光線を示している。物体側焦点面45からリレーレンズ群35の最も像側に配置されている端面までの距離をスティック型対物レンズ2の実質的な長さとみなし、これを符合Lとする。
【0028】
図1に戻り、LSMユニット50は、レーザ光を発する光源(図示略)と、光源から発せられたレーザ光を導光する光ファイバ51と、光ファイバ51により導光されてきたレーザ光を標本S上で走査する走査ユニット53と、走査ユニット53により走査されたレーザ光をリレーするリレーレンズ55と、リレーレンズ55によりリレーされてくるレーザ光を照明光の光軸P上の光路に入射させるミラーユニット57とを備えている。
【0029】
走査ユニット53は、光ファイバ51により導光されてきたレーザ光を略平行光にするコリメートレンズ61と、コリメートレンズ61からのレーザ光を反射する一方、標本Sにおいて発生した蛍光を透過するダイクロイックミラー63と、ダイクロイックミラー63により反射されたレーザ光を走査するガルバノミラー65とを備えている。
【0030】
また、走査ユニット53には、標本Sにおいて発生されダイクロイックミラー63を介してレーザ光の光路を逆方向に戻る蛍光を結像させる結像レンズ67と、結像レンズ67を透過した蛍光を部分的に通過させる共焦点ピンホール69と、共焦点ピンホールを通過した蛍光を検出する光電子増倍管71とを備えている。
【0031】
瞳リレーレンズ55は、ガルバノミラー65により走査されたレーザ光を通常型対物レンズ1の瞳位置にリレーすることができるようになっている。瞳リレーレンズ55によりリレーされる照明光の光束系は、スティック型対物レンズ2の側壁開口27から射出される射出光線39の光束径、すなわち、スティック型対物レンズ2の射出瞳径φPoutと略一致するようになっている。
【0032】
ミラーユニット57は45°平面鏡58を有している。45°平面鏡58は、瞳リレーレンズ55によりリレーされてきたレーザ光を反射し、照明光の光軸P上に配置された通常型対物レンズ1に入射させることができるようになっている。このミラーユニット57は、照明光の光軸P上に挿脱可能に設けられている。
【0033】
これらの瞳リレーレンズ55およびミラーユニット57は、アーム13の上端面にその長手方向に沿って配置される細長い形状を有する投光管73の内部に収容されている。投光管73は、照明光の光軸P上に、光軸Pに沿う方向に貫通する貫通孔(図示略)を有している。投光管73の貫通孔は、アーム13の前記貫通孔に連通する下部開口(図示略)と、アーム13とは反対側に開口する上部開口(位置決め部)75とを有している。
【0034】
投光管73の貫通孔には、スティック型対物レンズ2を上部開口75から挿入することができるようになっている。これにより、投光管73の貫通孔およびアーム13の貫通孔を介して、照明光の光軸P上に配置されたレボルバ15の貫通孔19へスティック型対物レンズ2を挿入させることができるようになっている。また、投光管73の貫通孔にスティック型対物レンズ2が挿入されると、その基端部21に設けられた鍔部25が上部開口75に突き当たり、スティック型対物レンズ2がその光軸Q方向に位置決めされるようになっている。
【0035】
次に、このように構成された顕微鏡装置100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置100により、通常型対物レンズ1を用いて標本Sである実験小動物の臓器Nを生きたままの状態で観察するには、レボルバ15からスティック型対物レンズ2を外した状態で行う。
【0036】
まず、図1に示すように、トラカール3が固定された標本Sをステージ11上に載置し、観察する臓器Nが照明光の光軸Pに一致するように標本Sを配置する。そして、レボルバ15により保持された通常型対物レンズ1をトラカール3の上方に位置するように配置する。通常型対物レンズ1の作動距離WDは、通常型対物レンズ1がトラカール3に接触することなく標本Sの臓器Nを観察するのに十分な大きさであるものとする。
【0037】
続いて、昇降機構17を調節し、ステージ11を上下動させて通常型対物レンズ1の物体側焦点面45に標本Sの臓器Nの上面を一致させる。また、投光管73内のミラーユニット57を照明光の光軸P上に配置し、45°平面鏡58により顕微鏡本体10の照明光の光軸P上の光路とLSMユニット50のレーザ光の光軸R上の光路とを繋げる。
【0038】
次に、光源からレーザ光を発生させ、光ファイバ51により走査ユニット53にレーザ光を導光する。走査ユニット53に導光されたレーザ光は、コリメートレンズ61により略平行光にされダイクロイックミラー63により反射された後、ガルバノミラー65を介して瞳リレーレンズ55により通常型対物レンズ1の瞳位置へリレーされる。
【0039】
瞳リレーレンズ55によりリレーされるレーザ光は、ミラーユニット57の45°平面鏡58により反射され、通常型対物レンズ1によりトラカール3を介して標本Sの臓器Nに照射される。これにより、ガルバノミラー65の揺動に同期して、標本Sの臓器Nにおいてレーザ光が走査される。
【0040】
レーザ光が照射されることにより標本Sの臓器Nにおいて蛍光が発生すると、その蛍光は通常型対物レンズ1によりトラカール3を介して集光され、ミラーユニット57、瞳リレーレンズ55、ガルバノミラー65を介してレーザ光の光路を逆方向に戻る。レーザ光の光路を逆方向に戻る蛍光は、ダイクロイックミラー63を透過し、共焦点ピンホール69を通過して光電子増倍管71により検出される。これにより、通常型対物レンズ1を用いて標本Sの臓器Nを共焦点観察することができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る顕微鏡装置100により、通常型対物レンズ1をスティック型対物レンズ2に切り替えて、標本Sの臓器Nを生きたままの状態で観察するには、図3に示すように、レボルバ15を回転軸回りに回転させて通常型対物レンズ1を照明光の光軸P上から外し、貫通孔19をその光軸Pに一致する位置に配置する。この場合において、スティック型対物レンズ2を取り付けていない状態でレボルバ15を回転させることにより、スティック型対物レンズ2によりレボルバ15の回転が妨げられることはない。
【0042】
次に、ミラーユニット57を照明光の光軸P上から外し、投光管73の貫通孔を開放する。これにより、投光管73の貫通孔、アーム13の貫通孔およびレボルバ15の貫通孔19が連通し、投光管73の貫通孔から標本Sの臓器Nに至る照明光の光軸P上の光路が障害物のない空間となる。この状態で、レボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を取り付け、その細径先端部41を標本Sのトラカール3に挿入する。
【0043】
この場合において、スティック型対物レンズ2は、投光管73の貫通孔からアーム13の貫通孔を介してレボルバ15の貫通孔19に挿入するだけで、レボルバ15の貫通孔19に貫通状態に取り付けることができる。また、スティック型対物レンズ2は、その鍔部25が投光管73の上部開口75に突き当たることで、光軸P方向に位置決めされる。
【0044】
これにより、図4に示すように、スティック型対物レンズ2の物体側焦点面45を通常型対物レンズ1の物体側焦点面45に一致させ、これらのレンズ1,2を同焦点を確保して切り替えることができる。したがって、レボルバ15と標本Sとを光軸Pに沿う方向に相対移動させる必要がない。また、スティック型対物レンズ2の側壁開口27から射出される射出光線39の光軸をLSMユニット50のレーザ光の光軸Rに一致させることができる。
【0045】
続いて、通常型対物レンズ1による観察時と同様に、光源からレーザ光を射出させる。走査ユニット53を介して瞳リレーレンズ55によりリレーされるレーザ光は、側壁開口27からスティック型対物レンズ2に入射され、平面鏡29により照明光の光軸Pに沿って反射される。そして、レーザ光は、開口絞り33、リレーレンズレンズ群35を介して小型対物レンズ群43により標本Sの臓器Nに照射される。これにより、ガルバノミラー65の揺動に同期して、標本Sの臓器Nにおいてレーザ光が走査される。
【0046】
レーザ光が走査されることにより臓器Nにおいて蛍光が発生すると、その蛍光は小型対物レンズ群43により集光され、一次像光線37として一次像面47上に一次像を形成する。その後、蛍光は、リレーレンズ群35により略平行光とされ、開口絞り33、平面鏡29を介して射出光線39として側壁開口27から射出される。
【0047】
側壁開口17から射出された蛍光は、投光管73のリレーレンズ55に入射され、通常型対物レンズ1を用いた場合と同様に、走査ユニット53において光電子増倍管71により検出される。これにより、スティック型対物レンズ2を用いて標本Sの臓器Nを共焦点観察することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る顕微鏡装置100によれば、スティック型対物レンズ2の長さLは、通常型対物レンズ1の同焦点距離Bおよび物体側焦点面45からレボルバ15の取り付け面までの距離Cよりも長いが、レボルバ15からスティック型対物レンズ2を外した状態でレボルバ15を回転させることにより、スティック型対物レンズ2がレボルバ15の回転を妨げることを回避することができ、レボルバ15に支持された通常型対物レンズ1を照明光の光軸P上に配置することができる。
【0049】
また、スティック型対物レンズ2は、レボルバ15の貫通孔19に対して照明光の光軸Pに沿う方向に挿脱され、挿入時には、その鍔部25が投光管73の上部開口75に突き当たることにより、光軸P方向に位置決めされ、通常型対物レンズ1に対する同焦点が確保される。これにより、レボルバ15と標本Sとの間のスペースは通常型対物レンズ1の同焦点距離Bに合わせて設定すれば済み、スティック型対物レンズ2の長さLに合わせる必要がない。すなわち、通常型対物レンズ1とスティック型対物レンズ2とを切り替える際にレボルバ15と標本Sとを光軸Pに沿う方向に相対移動させる必要もない。したがって、装置全体を大型化させることなく、通常型対物レンズ1とスティック型対物レンズ2とを簡易に切り替えることができる。
【0050】
本実施形態においては、レボルバ15が通常型対物レンズ1を1つ保持することとしたが、例えば、レボルバ15が倍率の異なる複数の通常型対物レンズ1を周方向に間隔を空けて保持することとしてもよい。レボルバ15からスティック型対物レンズ2を外した状態でレボルバ15を回転軸回りに回転させることにより、複数の通常型対物レンズ1のうちのいずれか1つを択一的に照明光の光軸P上に配置することができ、通常型対物レンズ1どうしの交換を容易に行うことができる。
【0051】
本実施形態は、以下のように変形することができる。
第1の変形例としては、例えば、図5および図6に示すように、顕微鏡装置100が、レボルバ15の貫通孔19に挿入させるスティック型対物レンズ2をその光軸Q方向に移動可能に支持する略筒状のガイド部材180を備えることとしてもよい。この場合において、ガイド部材180は、スティック型対物レンズ2を収容し、投光管73の上部開口75上に照明光の光軸Pに沿うように配置することとすればよい。図5は、レボルバ15の貫通孔19からスティック型対物レンズ2を退避させた状態を示し、図6は、レボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を挿入させた状態を示している。
【0052】
また、ガイド部材180が、例えば、スティック型対物レンズ2をレボルバ15の貫通孔19から退避させた状態で固定する第1固定ネジ(対物固定部)181と、スティック型対物レンズ2を貫通孔19に挿入させた状態で固定する第2固定ネジ(対物固定部)183とを備え、これらの固定ネジ181、183によりスティック型対物レンズ2を光軸Q方向に位置決めすることとしてもよい。
【0053】
また、スティック型対物レンズ2の基端部21が、ガイド部材180の内壁に接触しながら移動可能な摺動部185を備えることとしてもよい。また、スティック型対物レンズ2のつまみ23を摺動部185の側面に配置するとともに、ガイド部材180の側壁に光軸Pに沿って延びる長穴187を形成し、長穴187からスティック型対物レンズ2のつまみ23を外部に突出させることとしてもよい。
【0054】
このようにすることで、ガイド部材180により、つまみ23を把持してスティック型対物レンズ2を上下動させるだけで、レボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を精度よく挿通させることができる。これにより、スティック型対物レンズ2をレボルバ15の貫通孔19に挿入する際に、その細径先端部41が投光管73や顕微鏡装置100に接触して破損したり標本Sの意図しない位置に挿入されて標本Sが無用に傷付けられたりするのを回避することができる。図5および図6において、符合189はミラーユニット57を光軸P上に挿脱する際に把持するつまみを示している。
【0055】
また、第2の変形例としては、例えば、図7(a),(b)に示すように、スティック型対物レンズ2の基端部21と円筒中央部31とを光軸Q方向に伸縮可能に連結することとしてもよい。このようにすることで、スティック型対物レンズ2を光軸Q方向に位置決めした状態で、基端部21と円筒中央部31とを伸縮させることにより、リレーレンズ群35および小型対物レンズ群43の光軸Q方向の位置を変更することができる。
【0056】
この場合において、基端部21と円筒中央部31との間にスプリング281を配置し、スプリング281の弾発力によってこれらの間隔を伸縮させることとしてもよい。図7(a)は、スティック型対物レンズ2を光軸Q方向に伸ばした状態を示し、図7(b)は、円筒中央部31に外力Fを加え、スティック型対物レンズ2を光軸Q方向に縮めた状態を示している。
【0057】
本変形例においては、例えば、図8および図9に示すように、第1の変形例に係るガイド部材180を採用するとともに、アーム13に代えて、照明光の光軸Pに沿う方向、すなわち、上下方向に移動可能な可動アーム283によりレボルバ1を所定の回転軸回りに回転可能に支持することとしてもよい。また、レボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2の円筒中央部31を固定するストッパ285を設けることとしてもよい。
【0058】
このようにすることで、第2固定ネジ183により顕微鏡本体10に対してスティック型対物レンズ2を固定した状態で、可動アーム283を上下動させると、スティック型対物レンズ2の基端部21と円筒中央部31との間隔が伸縮する。これにより、リレーレンズ群35および小型対物レンズ群43の光軸Q方向の位置を変更し、スティック型対物レンズ2の焦点位置を調節することができる。図8は、レボルバ15の貫通孔19からスティック型対物レンズ2を退避させた状態を示し、図9は、スティック型対物レンズ2をレボルバ15の貫通孔19に取り付けて若干縮めた状態を示している。
【0059】
また、第3の変形例としては、例えば、図10に示すように、スティック型対物レンズ2が、リレーレンズ群35を構成する少なくとも1つのリレーレンズ(小レンズ)381(以下、「可動リレーレンズ381」とする。)を収容して光軸Q方向に移動可能に支持するコリメートレンズ可動枠383を備えることとしてもよい。この場合、コリメートレンズ可動枠383がその側面に駆動ピン385を備えるとともに、円筒中央部31の側壁に光軸Qに沿って延びる長穴387を形成し、長穴387からコリメートレンズ可動枠383の駆動ピン385を外部に突出さることとしてもよい。符合389は、コリメートレンズ可動枠383を光軸Q方向に付勢するスプリングを示している。
【0060】
また、図11に示すように、第2の変形例に係る可動アーム283とストッパ(レンズ固定部)285を採用することとしてもよい。この場合において、コリメートレンズ可動枠383の駆動ピン385をストッパ285に突き当てることにより、可動リレーレンズ381と可動アーム283とを光軸P方向に固定することとしてもよい。
【0061】
このようにすることで、可動アーム283を上下動させると、可動アーム283により支持されたレボルバ15とともに、ストッパ285により可動アーム283に固定された可動リレーレンズ381が光軸Pに沿う方向に移動させられる。したがって、第2固定ネジ183により顕微鏡本体10に対してスティック型対物レンズ2を固定した状態で、可動アーム283を上下動させることにより、標本Sとスティック型対物レンズ2との光軸Pに沿う方向の相対位置を変えずにスティック型対物レンズ2の焦点位置を調節することができる。図11において、可動リレーレンズ381の上記動作によってなし得る物体側焦点面の調節範囲として、符合45nはスティック型対物レンズ2に近い側の物体側焦点面の位置を示し、符合45fは遠い側の物体側焦点面の位置を示している。
【0062】
第4の変形例としては、例えば、図12および図13に示すように、アーム13と投光管73とをスティック型対物レンズ2の長さに相当する距離だけ光軸Pに沿う方向に間隔を空けて配置し、アーム13と投光管73との間にスティック型対物レンズ2を照明光の光軸P上に挿脱可能に保持する挿脱機構481を配置することとしてもよい。
【0063】
挿脱機構481は、例えば、スティック型対物レンズ2を収容して光軸Q方向に移動可能に支持するガイド孔(ガイド部材)483と、ガイド孔483に対して隣接して配置された貫通孔485とを備え、アーム13の上端面に沿って光軸Pに直交する方向にスライド可能とすればよい。符合487は、挿脱機構48をスライドさせる際に把持するつまみを示している。また、挿脱機構481の側壁に光軸Qに沿って延びる長穴489を形成し、長穴489からスティック型対物レンズ2のつまみ23を外部に突出さることとしてもよい。また、符合491は鏡筒を示し、符合493は接眼レンズを示している。
【0064】
このようにすることで、挿脱機構481を光軸Pに直交する方向にスライドさせることにより、ガイド孔483と貫通孔485とを照明光の光軸P上に択一的に配置することができる。これにより、ガイド孔483が照明光の光軸P上の光路に一致するように挿脱機構481をスライドさせることで、レボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を容易に挿入させることができる。図12は挿脱機構481の貫通孔19を光軸P上に配置した状態を示し、図13は挿脱機構481のガイド孔483を光軸P上に配置してレボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を挿入した状態を示している。
【0065】
本変形例においては、例えば、図14および図15に示すように、第3の変形例と同様に、スティック型対物レンズ2が、可動リレーレンズ381を光軸Q方向に移動可能に支持するコリメートレンズ可動枠383を備えることとしてもよい。この場合において、挿脱機構481は、例えば、コリメートレンズ可動枠383を光軸Pの方向に駆動する、ラック495Aおよびピニオン歯車495Bと、ピニオン歯車495Bを回転させるピニオンシャフト497と、ピニオンシャフト497を回転させるつまみ499とを備えることとしてもよい。図14は、挿脱機構481の貫通孔485を光軸P上に配置した状態を示し、図15は、ガイド孔483を光軸P上に配置してレボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を挿入した状態を示している。
【0066】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の一実施形態およびその変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 通常型対物レンズ
15 レボルバ
19 貫通孔
75 上部開口(位置決め部)
100 顕微鏡装置
180 ガイド部材
181 第1固定ネジ(対物固定部)
183 第2固定ネジ(対物固定部)
283 可動アーム
285 ストッパ(レンズ固定部)
381 可動リレーレンズ(小レンズ)
S 標本
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズを使用する顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マウスのような実験動物等の生体の体内に細長い形状の小型対物レンズの先端を挿入し、体内を生きたまま(in vivo)観察する光学機器装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の光学機器装置は、顕微鏡本体に対して小型対物レンズの先端を光軸方向に進退させる対物レンズ進退機構と、顕微鏡本体に対して小型対物レンズを着脱させる着脱機構とを備え、対物レンズ進退機構により小型対物レンズの先端を光軸方向に後退させて生体の体内から外した状態で、着脱機構により小型対物レンズを倍率が異なる他の小型対物レンズに交換することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−301015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した小型対物レンズと比較して長さが短い通常の対物レンズを用いる一般的な顕微鏡装置において、生体等の標本を載置するステージとレボルバに取り付けられる通常の対物レンズの取付面との間の距離は、対物レンズの同焦点距離に標本の厚さと若干のゆとりとを加えた程度の大きさに設定される。対物レンズの同焦点距離とは、焦点を合わせたときの物体面から対物レンズの取付面までの距離をいう。
【0005】
このような一般的な顕微鏡装置の構成において、特許文献1に記載の対物レンズ進退機構を適用して通常の対物レンズと小型対物レンズとを切り替え可能にするためには、ステージから対物レンズの取付面までの距離を、小型対物レンズの同焦点距離と、小型対物レンズの光軸方向の移動ストロークとを足した寸法に合わせて大きく取る必要があり、装置が大型化するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、装置を大型化させることなく、長さが異なる対物レンズを簡易に切り替えることができる顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、少なくとも1つの第1の対物レンズを回転軸回りに回転させて、標本に照射する照明光の光路上に前記第1の対物レンズを選択的に配置可能に支持するレボルバを備え、該レボルバの周方向のいずれかの位置に、前記光路に一致する位置に配置された状態で、前記第1の対物レンズより長さが長い第2の対物レンズを前記標本とは反対側から貫通状態に取り付け可能な貫通孔が設けられている顕微鏡装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、レボルバに第2の対物レンズを取り付けていない状態でレボルバを回転軸回りに回転させれば、第2の対物レンズによるレボルバの回転の妨げを回避することができ、レボルバにより支持された第1の対物レンズが照明光の光路上に選択的に配置される。また、第2の対物レンズの後述する取り付け方法により、レボルバと標本との間のスペースを、長さが長い第2の対物レンズに合わせて大きく設定する必要がない。
【0009】
一方、第2の対物レンズは、照明光の光路に一致する位置に配置したレボルバの貫通孔に標本とは反対側から挿入して貫通状態に取り付けるだけで照明光の光路上に配置することができ、なおかつ第1の対物レンズの物体側焦点面に、第2の対物レンズの物体側焦点面を一致させることが出来る。すなわち、第1の対物レンズと第2の対物レンズの同焦点が確保される。また、貫通孔から標本とは反対側へ引き抜くだけで照明光の光路上から外すことができる。したがって、レボルバへの第2の対物レンズの着脱が容易である。
【0010】
これにより、レボルバと標本との間のスペースを長さが短い第1の対物レンズに合わせれば済み、また、第1の対物レンズと第2の対物レンズとを切り替える際にレボルバと標本とを光路に沿う方向に相対移動させる必要もない。したがって、装置を大型化させることなく第1の対物レンズと第2の対物レンズとを簡易に切り替えることができる。
【0011】
上記発明においては、前記貫通孔に挿入された前記第2の対物レンズをその光軸方向に位置決めする位置決め部とを備えることとしてもよい。
このように構成することで、位置決め部により、レボルバの貫通孔に第2の対物レンズを光軸方向に位置決め状態に取り付けることができる。この場合において、第1の対物レンズから第2の対物レンズに切り替える際にレボルバと標本との光路に沿う方向の相対位置を変動させる必要がないので同焦点を確保することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記貫通孔に挿入される前記第2の対物レンズを前記光軸方向に移動可能に支持するガイド部材を備えることとしてもよい。
このように構成することで、ガイド部材により、レボルバの貫通孔に第2の対物レンズを精度よく挿通させることができる。これにより、第2の対物レンズの先端が顕微鏡装置に接触して破損したり標本の意図しない位置に挿入されて標本が無用に傷付けられたりするのを回避することができる。
【0013】
また、上記発明においては、顕微鏡本体と、光軸方向に移動可能に支持された1以上の小レンズを備える前記第2の対物レンズと、前記レボルバを前記回転軸回りに回転可能に支持し前記光路に沿う方向に移動可能な可動アームと、前記貫通孔に取り付けられた前記第2の対物レンズを前記顕微鏡本体に固定する対物固定部と、少なくとも1つの前記小レンズと前記可動アームとをその光軸方向に固定するレンズ固定部とを備えることとしてもよい。
【0014】
このように構成することで、可動アームを光路に沿う方向に移動させると、可動アームにより支持されたレボルバとともに、レンズ固定部により可動アームに対して光軸方向に固定された第2の対物レンズの少なくとも1つの小レンズが光路に沿う方向に移動させられる。この場合において、対物固定部により顕微鏡本体に対して第2の対物レンズが固定されているので、標本と第2の対物レンズとの光路に沿う方向の相対位置を変えずに第2の対物レンズの焦点位置を調節することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置を大型化させることなく、長さが異なる対物レンズを簡易に切り替えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る顕微鏡装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスティック型対物レンズの縦断面図である。
【図3】図1の顕微鏡装置に図2のスティック型対物レンズを挿入する様子を示す図である。
【図4】図1の顕微鏡装置に図2のスティック型対物レンズを取り付けた状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の第1の変形例に係る顕微鏡装置のガイド部材を示す縦断面図である。
【図6】図5のガイド部材により顕微鏡装置にスティック型対物レンズを取り付けた状態を示す図である。
【図7】(a)本発明の一実施形態の第2の変形例に係るスティック型対物レンズの伸ばした状態を示す図であり、(b)は(a)のスティック型対物レンズの縮めた状態を示す図である。
【図8】レボルバの貫通孔から図7のスティック型対物レンズを退避させた状態を示している。
【図9】レボルバの貫通孔に図7のスティック型対物レンズを取り付けて若干縮めた状態を示している。
【図10】本発明の一実施形態の第3の変形例に係るスティック型対物レンズを示す図である。
【図11】顕微鏡装置に図10のスティック型対物レンズを取り付けた状態を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態の第4の変形例に係る挿脱機構を示す図である。
【図13】図12の挿脱機構のガイド孔を照明光の光軸上に配置し、レボルバの貫通孔にスティック型対物レンズを挿入した状態を示す図である。
【図14】図12の変形例に係る挿脱機構の貫通孔を照明光の光軸上に配置した状態を示す図である。
【図15】図12の変形例に係る挿脱機構のガイド孔を照明光の光軸上に配置し、レボルバの貫通孔にティック型対物レンズを挿入した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る顕微鏡装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置100は、図1に示すように、顕微鏡本体10と、顕微鏡本体10に取り付けられる共焦点レーザ顕微鏡ユニット(以下、「LSMユニット」という。)50とを備えている。
【0018】
顕微鏡本体10は、マウスのような実験小動物の標本Sを載置するステージ11と、ステージ11の上方に間隔を空けて配置されるアーム13と、アーム13により所定の回転軸回りに回転可能に支持されるレボルバ15と、ステージ11を鉛直方向に昇降可能な昇降機構17とを備えている。
【0019】
標本Sは、例えば、切開により形成された切開部分にトラカール3が固定され、トラカール3により切開部分が開口状態に保持されている。
アーム13には、標本Sに照射する照明光の光軸P上に、その光軸Pに沿う方向に貫通する貫通孔(図示略)が形成されている。
【0020】
レボルバ15は、通常型対物レンズ(第1の対物レンズ)1を着脱可能に保持している。このレボルバ15は、前記所定の回転軸回りに回転することにより、照明光の光軸P上の光路に通常型対物レンズ1を選択的に配置することができるようになっている。図1において、通常型対物レンズ1の作動距離を符合WD、通常型対物レンズ1の同焦点距離(焦点を合わせたときの物体面からレボルバ15における通常型対物レンズ1の取り付け面までの距離)を符合B、物体側焦点面45からアーム13におけるレボルバ15の取り付け面までの距離を符合Cとする。
【0021】
通常型対物レンズ1は、標本Sに取り付けられたトラカール3の上方にその先端が近接して配置させられることで、LSMユニット50からの照明光をトラカール3を介して標本Sの臓器Nに照射したり、標本Sの臓器Nからの光をトラカール3を介して集光したりするようになっている。この通常型対物レンズ1は、レボルバ15から取り外して倍率が異なる他の通常型対物レンズ1に交換することができるようになっている。
【0022】
また、レボルバ15には、周方向のいずれかの位置に貫通孔19が形成されている。貫通孔19は、レボルバ15が前記回転軸回りに回転することにより、照明光の光軸Pに一致する位置に選択的に配置することができるようになっている。また、貫通孔19は、照明光の光軸Pに一致する位置に配置された状態でアーム13の貫通孔と連通するようになっている。
【0023】
レボルバ15の貫通孔19には、通常型対物レンズ1よりも軸方向の長さが長いスティック型対物レンズ(第2の対物レンズ)2を保持させることができるようになっている。具体的には、スティック型対物レンズ2は、レボルバ15の貫通孔19に対してステージ11とは反対側からアーム13の貫通孔を介して挿入することで、貫通状態に保持される。
【0024】
このスティック型対物レンズ2は、図2に示すように、基端側から先端に向かって太さが段階的に細くなる段付き形状を有しており、径寸法が大きい基端部21と、基端部21よりも径寸法が小さく、通常型対物レンズ1の径寸法とほぼ同じ径寸法を有する円筒中央部31と、円筒中央部31よりも径寸法が小さく、標本Sの切開部分に小さい侵襲で挿入可能な細径先端部41とにより構成されている。
【0025】
基端部21は、軸方向に突出するつまみ23と、半径方向外方に拡がる鍔部25とを備えており、側壁に側壁開口27が形成されている。また、基端部21には、スティック型対物レンズ2の光軸Qに対して45°の傾きを有し、側壁開口27から入射される光を光軸Q方向に反射させる平面鏡29が備えられている。
【0026】
円筒中央部31には、射出瞳をなす開口絞り33と、リレーレンズを構成する複数のレンズからなるリレーレンズ群35とが備えられている。
細径先端部41には、小型対物レンズを構成する複数のレンズからなる小型対物レンズ群43が備えられている。
【0027】
図2において、符合45は物体側焦点面を示し、符合47は小型対物レンズ群43による一次像面を示し、符合49は物体側焦点面45から発せられた入射光線を示し、符合37は一次像光線を示し、符合39は射出光線を示している。物体側焦点面45からリレーレンズ群35の最も像側に配置されている端面までの距離をスティック型対物レンズ2の実質的な長さとみなし、これを符合Lとする。
【0028】
図1に戻り、LSMユニット50は、レーザ光を発する光源(図示略)と、光源から発せられたレーザ光を導光する光ファイバ51と、光ファイバ51により導光されてきたレーザ光を標本S上で走査する走査ユニット53と、走査ユニット53により走査されたレーザ光をリレーするリレーレンズ55と、リレーレンズ55によりリレーされてくるレーザ光を照明光の光軸P上の光路に入射させるミラーユニット57とを備えている。
【0029】
走査ユニット53は、光ファイバ51により導光されてきたレーザ光を略平行光にするコリメートレンズ61と、コリメートレンズ61からのレーザ光を反射する一方、標本Sにおいて発生した蛍光を透過するダイクロイックミラー63と、ダイクロイックミラー63により反射されたレーザ光を走査するガルバノミラー65とを備えている。
【0030】
また、走査ユニット53には、標本Sにおいて発生されダイクロイックミラー63を介してレーザ光の光路を逆方向に戻る蛍光を結像させる結像レンズ67と、結像レンズ67を透過した蛍光を部分的に通過させる共焦点ピンホール69と、共焦点ピンホールを通過した蛍光を検出する光電子増倍管71とを備えている。
【0031】
瞳リレーレンズ55は、ガルバノミラー65により走査されたレーザ光を通常型対物レンズ1の瞳位置にリレーすることができるようになっている。瞳リレーレンズ55によりリレーされる照明光の光束系は、スティック型対物レンズ2の側壁開口27から射出される射出光線39の光束径、すなわち、スティック型対物レンズ2の射出瞳径φPoutと略一致するようになっている。
【0032】
ミラーユニット57は45°平面鏡58を有している。45°平面鏡58は、瞳リレーレンズ55によりリレーされてきたレーザ光を反射し、照明光の光軸P上に配置された通常型対物レンズ1に入射させることができるようになっている。このミラーユニット57は、照明光の光軸P上に挿脱可能に設けられている。
【0033】
これらの瞳リレーレンズ55およびミラーユニット57は、アーム13の上端面にその長手方向に沿って配置される細長い形状を有する投光管73の内部に収容されている。投光管73は、照明光の光軸P上に、光軸Pに沿う方向に貫通する貫通孔(図示略)を有している。投光管73の貫通孔は、アーム13の前記貫通孔に連通する下部開口(図示略)と、アーム13とは反対側に開口する上部開口(位置決め部)75とを有している。
【0034】
投光管73の貫通孔には、スティック型対物レンズ2を上部開口75から挿入することができるようになっている。これにより、投光管73の貫通孔およびアーム13の貫通孔を介して、照明光の光軸P上に配置されたレボルバ15の貫通孔19へスティック型対物レンズ2を挿入させることができるようになっている。また、投光管73の貫通孔にスティック型対物レンズ2が挿入されると、その基端部21に設けられた鍔部25が上部開口75に突き当たり、スティック型対物レンズ2がその光軸Q方向に位置決めされるようになっている。
【0035】
次に、このように構成された顕微鏡装置100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置100により、通常型対物レンズ1を用いて標本Sである実験小動物の臓器Nを生きたままの状態で観察するには、レボルバ15からスティック型対物レンズ2を外した状態で行う。
【0036】
まず、図1に示すように、トラカール3が固定された標本Sをステージ11上に載置し、観察する臓器Nが照明光の光軸Pに一致するように標本Sを配置する。そして、レボルバ15により保持された通常型対物レンズ1をトラカール3の上方に位置するように配置する。通常型対物レンズ1の作動距離WDは、通常型対物レンズ1がトラカール3に接触することなく標本Sの臓器Nを観察するのに十分な大きさであるものとする。
【0037】
続いて、昇降機構17を調節し、ステージ11を上下動させて通常型対物レンズ1の物体側焦点面45に標本Sの臓器Nの上面を一致させる。また、投光管73内のミラーユニット57を照明光の光軸P上に配置し、45°平面鏡58により顕微鏡本体10の照明光の光軸P上の光路とLSMユニット50のレーザ光の光軸R上の光路とを繋げる。
【0038】
次に、光源からレーザ光を発生させ、光ファイバ51により走査ユニット53にレーザ光を導光する。走査ユニット53に導光されたレーザ光は、コリメートレンズ61により略平行光にされダイクロイックミラー63により反射された後、ガルバノミラー65を介して瞳リレーレンズ55により通常型対物レンズ1の瞳位置へリレーされる。
【0039】
瞳リレーレンズ55によりリレーされるレーザ光は、ミラーユニット57の45°平面鏡58により反射され、通常型対物レンズ1によりトラカール3を介して標本Sの臓器Nに照射される。これにより、ガルバノミラー65の揺動に同期して、標本Sの臓器Nにおいてレーザ光が走査される。
【0040】
レーザ光が照射されることにより標本Sの臓器Nにおいて蛍光が発生すると、その蛍光は通常型対物レンズ1によりトラカール3を介して集光され、ミラーユニット57、瞳リレーレンズ55、ガルバノミラー65を介してレーザ光の光路を逆方向に戻る。レーザ光の光路を逆方向に戻る蛍光は、ダイクロイックミラー63を透過し、共焦点ピンホール69を通過して光電子増倍管71により検出される。これにより、通常型対物レンズ1を用いて標本Sの臓器Nを共焦点観察することができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る顕微鏡装置100により、通常型対物レンズ1をスティック型対物レンズ2に切り替えて、標本Sの臓器Nを生きたままの状態で観察するには、図3に示すように、レボルバ15を回転軸回りに回転させて通常型対物レンズ1を照明光の光軸P上から外し、貫通孔19をその光軸Pに一致する位置に配置する。この場合において、スティック型対物レンズ2を取り付けていない状態でレボルバ15を回転させることにより、スティック型対物レンズ2によりレボルバ15の回転が妨げられることはない。
【0042】
次に、ミラーユニット57を照明光の光軸P上から外し、投光管73の貫通孔を開放する。これにより、投光管73の貫通孔、アーム13の貫通孔およびレボルバ15の貫通孔19が連通し、投光管73の貫通孔から標本Sの臓器Nに至る照明光の光軸P上の光路が障害物のない空間となる。この状態で、レボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を取り付け、その細径先端部41を標本Sのトラカール3に挿入する。
【0043】
この場合において、スティック型対物レンズ2は、投光管73の貫通孔からアーム13の貫通孔を介してレボルバ15の貫通孔19に挿入するだけで、レボルバ15の貫通孔19に貫通状態に取り付けることができる。また、スティック型対物レンズ2は、その鍔部25が投光管73の上部開口75に突き当たることで、光軸P方向に位置決めされる。
【0044】
これにより、図4に示すように、スティック型対物レンズ2の物体側焦点面45を通常型対物レンズ1の物体側焦点面45に一致させ、これらのレンズ1,2を同焦点を確保して切り替えることができる。したがって、レボルバ15と標本Sとを光軸Pに沿う方向に相対移動させる必要がない。また、スティック型対物レンズ2の側壁開口27から射出される射出光線39の光軸をLSMユニット50のレーザ光の光軸Rに一致させることができる。
【0045】
続いて、通常型対物レンズ1による観察時と同様に、光源からレーザ光を射出させる。走査ユニット53を介して瞳リレーレンズ55によりリレーされるレーザ光は、側壁開口27からスティック型対物レンズ2に入射され、平面鏡29により照明光の光軸Pに沿って反射される。そして、レーザ光は、開口絞り33、リレーレンズレンズ群35を介して小型対物レンズ群43により標本Sの臓器Nに照射される。これにより、ガルバノミラー65の揺動に同期して、標本Sの臓器Nにおいてレーザ光が走査される。
【0046】
レーザ光が走査されることにより臓器Nにおいて蛍光が発生すると、その蛍光は小型対物レンズ群43により集光され、一次像光線37として一次像面47上に一次像を形成する。その後、蛍光は、リレーレンズ群35により略平行光とされ、開口絞り33、平面鏡29を介して射出光線39として側壁開口27から射出される。
【0047】
側壁開口17から射出された蛍光は、投光管73のリレーレンズ55に入射され、通常型対物レンズ1を用いた場合と同様に、走査ユニット53において光電子増倍管71により検出される。これにより、スティック型対物レンズ2を用いて標本Sの臓器Nを共焦点観察することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る顕微鏡装置100によれば、スティック型対物レンズ2の長さLは、通常型対物レンズ1の同焦点距離Bおよび物体側焦点面45からレボルバ15の取り付け面までの距離Cよりも長いが、レボルバ15からスティック型対物レンズ2を外した状態でレボルバ15を回転させることにより、スティック型対物レンズ2がレボルバ15の回転を妨げることを回避することができ、レボルバ15に支持された通常型対物レンズ1を照明光の光軸P上に配置することができる。
【0049】
また、スティック型対物レンズ2は、レボルバ15の貫通孔19に対して照明光の光軸Pに沿う方向に挿脱され、挿入時には、その鍔部25が投光管73の上部開口75に突き当たることにより、光軸P方向に位置決めされ、通常型対物レンズ1に対する同焦点が確保される。これにより、レボルバ15と標本Sとの間のスペースは通常型対物レンズ1の同焦点距離Bに合わせて設定すれば済み、スティック型対物レンズ2の長さLに合わせる必要がない。すなわち、通常型対物レンズ1とスティック型対物レンズ2とを切り替える際にレボルバ15と標本Sとを光軸Pに沿う方向に相対移動させる必要もない。したがって、装置全体を大型化させることなく、通常型対物レンズ1とスティック型対物レンズ2とを簡易に切り替えることができる。
【0050】
本実施形態においては、レボルバ15が通常型対物レンズ1を1つ保持することとしたが、例えば、レボルバ15が倍率の異なる複数の通常型対物レンズ1を周方向に間隔を空けて保持することとしてもよい。レボルバ15からスティック型対物レンズ2を外した状態でレボルバ15を回転軸回りに回転させることにより、複数の通常型対物レンズ1のうちのいずれか1つを択一的に照明光の光軸P上に配置することができ、通常型対物レンズ1どうしの交換を容易に行うことができる。
【0051】
本実施形態は、以下のように変形することができる。
第1の変形例としては、例えば、図5および図6に示すように、顕微鏡装置100が、レボルバ15の貫通孔19に挿入させるスティック型対物レンズ2をその光軸Q方向に移動可能に支持する略筒状のガイド部材180を備えることとしてもよい。この場合において、ガイド部材180は、スティック型対物レンズ2を収容し、投光管73の上部開口75上に照明光の光軸Pに沿うように配置することとすればよい。図5は、レボルバ15の貫通孔19からスティック型対物レンズ2を退避させた状態を示し、図6は、レボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を挿入させた状態を示している。
【0052】
また、ガイド部材180が、例えば、スティック型対物レンズ2をレボルバ15の貫通孔19から退避させた状態で固定する第1固定ネジ(対物固定部)181と、スティック型対物レンズ2を貫通孔19に挿入させた状態で固定する第2固定ネジ(対物固定部)183とを備え、これらの固定ネジ181、183によりスティック型対物レンズ2を光軸Q方向に位置決めすることとしてもよい。
【0053】
また、スティック型対物レンズ2の基端部21が、ガイド部材180の内壁に接触しながら移動可能な摺動部185を備えることとしてもよい。また、スティック型対物レンズ2のつまみ23を摺動部185の側面に配置するとともに、ガイド部材180の側壁に光軸Pに沿って延びる長穴187を形成し、長穴187からスティック型対物レンズ2のつまみ23を外部に突出させることとしてもよい。
【0054】
このようにすることで、ガイド部材180により、つまみ23を把持してスティック型対物レンズ2を上下動させるだけで、レボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を精度よく挿通させることができる。これにより、スティック型対物レンズ2をレボルバ15の貫通孔19に挿入する際に、その細径先端部41が投光管73や顕微鏡装置100に接触して破損したり標本Sの意図しない位置に挿入されて標本Sが無用に傷付けられたりするのを回避することができる。図5および図6において、符合189はミラーユニット57を光軸P上に挿脱する際に把持するつまみを示している。
【0055】
また、第2の変形例としては、例えば、図7(a),(b)に示すように、スティック型対物レンズ2の基端部21と円筒中央部31とを光軸Q方向に伸縮可能に連結することとしてもよい。このようにすることで、スティック型対物レンズ2を光軸Q方向に位置決めした状態で、基端部21と円筒中央部31とを伸縮させることにより、リレーレンズ群35および小型対物レンズ群43の光軸Q方向の位置を変更することができる。
【0056】
この場合において、基端部21と円筒中央部31との間にスプリング281を配置し、スプリング281の弾発力によってこれらの間隔を伸縮させることとしてもよい。図7(a)は、スティック型対物レンズ2を光軸Q方向に伸ばした状態を示し、図7(b)は、円筒中央部31に外力Fを加え、スティック型対物レンズ2を光軸Q方向に縮めた状態を示している。
【0057】
本変形例においては、例えば、図8および図9に示すように、第1の変形例に係るガイド部材180を採用するとともに、アーム13に代えて、照明光の光軸Pに沿う方向、すなわち、上下方向に移動可能な可動アーム283によりレボルバ1を所定の回転軸回りに回転可能に支持することとしてもよい。また、レボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2の円筒中央部31を固定するストッパ285を設けることとしてもよい。
【0058】
このようにすることで、第2固定ネジ183により顕微鏡本体10に対してスティック型対物レンズ2を固定した状態で、可動アーム283を上下動させると、スティック型対物レンズ2の基端部21と円筒中央部31との間隔が伸縮する。これにより、リレーレンズ群35および小型対物レンズ群43の光軸Q方向の位置を変更し、スティック型対物レンズ2の焦点位置を調節することができる。図8は、レボルバ15の貫通孔19からスティック型対物レンズ2を退避させた状態を示し、図9は、スティック型対物レンズ2をレボルバ15の貫通孔19に取り付けて若干縮めた状態を示している。
【0059】
また、第3の変形例としては、例えば、図10に示すように、スティック型対物レンズ2が、リレーレンズ群35を構成する少なくとも1つのリレーレンズ(小レンズ)381(以下、「可動リレーレンズ381」とする。)を収容して光軸Q方向に移動可能に支持するコリメートレンズ可動枠383を備えることとしてもよい。この場合、コリメートレンズ可動枠383がその側面に駆動ピン385を備えるとともに、円筒中央部31の側壁に光軸Qに沿って延びる長穴387を形成し、長穴387からコリメートレンズ可動枠383の駆動ピン385を外部に突出さることとしてもよい。符合389は、コリメートレンズ可動枠383を光軸Q方向に付勢するスプリングを示している。
【0060】
また、図11に示すように、第2の変形例に係る可動アーム283とストッパ(レンズ固定部)285を採用することとしてもよい。この場合において、コリメートレンズ可動枠383の駆動ピン385をストッパ285に突き当てることにより、可動リレーレンズ381と可動アーム283とを光軸P方向に固定することとしてもよい。
【0061】
このようにすることで、可動アーム283を上下動させると、可動アーム283により支持されたレボルバ15とともに、ストッパ285により可動アーム283に固定された可動リレーレンズ381が光軸Pに沿う方向に移動させられる。したがって、第2固定ネジ183により顕微鏡本体10に対してスティック型対物レンズ2を固定した状態で、可動アーム283を上下動させることにより、標本Sとスティック型対物レンズ2との光軸Pに沿う方向の相対位置を変えずにスティック型対物レンズ2の焦点位置を調節することができる。図11において、可動リレーレンズ381の上記動作によってなし得る物体側焦点面の調節範囲として、符合45nはスティック型対物レンズ2に近い側の物体側焦点面の位置を示し、符合45fは遠い側の物体側焦点面の位置を示している。
【0062】
第4の変形例としては、例えば、図12および図13に示すように、アーム13と投光管73とをスティック型対物レンズ2の長さに相当する距離だけ光軸Pに沿う方向に間隔を空けて配置し、アーム13と投光管73との間にスティック型対物レンズ2を照明光の光軸P上に挿脱可能に保持する挿脱機構481を配置することとしてもよい。
【0063】
挿脱機構481は、例えば、スティック型対物レンズ2を収容して光軸Q方向に移動可能に支持するガイド孔(ガイド部材)483と、ガイド孔483に対して隣接して配置された貫通孔485とを備え、アーム13の上端面に沿って光軸Pに直交する方向にスライド可能とすればよい。符合487は、挿脱機構48をスライドさせる際に把持するつまみを示している。また、挿脱機構481の側壁に光軸Qに沿って延びる長穴489を形成し、長穴489からスティック型対物レンズ2のつまみ23を外部に突出さることとしてもよい。また、符合491は鏡筒を示し、符合493は接眼レンズを示している。
【0064】
このようにすることで、挿脱機構481を光軸Pに直交する方向にスライドさせることにより、ガイド孔483と貫通孔485とを照明光の光軸P上に択一的に配置することができる。これにより、ガイド孔483が照明光の光軸P上の光路に一致するように挿脱機構481をスライドさせることで、レボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を容易に挿入させることができる。図12は挿脱機構481の貫通孔19を光軸P上に配置した状態を示し、図13は挿脱機構481のガイド孔483を光軸P上に配置してレボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を挿入した状態を示している。
【0065】
本変形例においては、例えば、図14および図15に示すように、第3の変形例と同様に、スティック型対物レンズ2が、可動リレーレンズ381を光軸Q方向に移動可能に支持するコリメートレンズ可動枠383を備えることとしてもよい。この場合において、挿脱機構481は、例えば、コリメートレンズ可動枠383を光軸Pの方向に駆動する、ラック495Aおよびピニオン歯車495Bと、ピニオン歯車495Bを回転させるピニオンシャフト497と、ピニオンシャフト497を回転させるつまみ499とを備えることとしてもよい。図14は、挿脱機構481の貫通孔485を光軸P上に配置した状態を示し、図15は、ガイド孔483を光軸P上に配置してレボルバ15の貫通孔19にスティック型対物レンズ2を挿入した状態を示している。
【0066】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の一実施形態およびその変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 通常型対物レンズ
15 レボルバ
19 貫通孔
75 上部開口(位置決め部)
100 顕微鏡装置
180 ガイド部材
181 第1固定ネジ(対物固定部)
183 第2固定ネジ(対物固定部)
283 可動アーム
285 ストッパ(レンズ固定部)
381 可動リレーレンズ(小レンズ)
S 標本
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の対物レンズを回転軸回りに回転させて、標本に照射する照明光の光路上に前記第1の対物レンズを選択的に配置可能に支持するレボルバを備え、
該レボルバの周方向のいずれかの位置に、前記光路に一致する位置に配置された状態で、前記第1の対物レンズより長さが長い第2の対物レンズを前記標本とは反対側から貫通状態に取り付け可能な貫通孔が設けられている顕微鏡装置。
【請求項2】
前記貫通孔に挿入された前記第2の対物レンズをその光軸方向に位置決めする位置決め部とを備える請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記貫通孔に挿入される前記第2の対物レンズを前記光軸方向に移動可能に支持するガイド部材を備える請求項1または請求項2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
顕微鏡本体と、
光軸方向に移動可能に支持された1以上の小レンズを備える前記第2の対物レンズと、
前記レボルバを前記回転軸回りに回転可能に支持し前記光路に沿う方向に移動可能な可動アームと、
前記貫通孔に取り付けられた前記第2の対物レンズを前記顕微鏡本体に固定する対物固定部と、
少なくとも1つの前記小レンズと前記可動アームとをその光軸方向に固定するレンズ固定部とを備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の顕微鏡装置。
【請求項1】
少なくとも1つの第1の対物レンズを回転軸回りに回転させて、標本に照射する照明光の光路上に前記第1の対物レンズを選択的に配置可能に支持するレボルバを備え、
該レボルバの周方向のいずれかの位置に、前記光路に一致する位置に配置された状態で、前記第1の対物レンズより長さが長い第2の対物レンズを前記標本とは反対側から貫通状態に取り付け可能な貫通孔が設けられている顕微鏡装置。
【請求項2】
前記貫通孔に挿入された前記第2の対物レンズをその光軸方向に位置決めする位置決め部とを備える請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記貫通孔に挿入される前記第2の対物レンズを前記光軸方向に移動可能に支持するガイド部材を備える請求項1または請求項2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
顕微鏡本体と、
光軸方向に移動可能に支持された1以上の小レンズを備える前記第2の対物レンズと、
前記レボルバを前記回転軸回りに回転可能に支持し前記光路に沿う方向に移動可能な可動アームと、
前記貫通孔に取り付けられた前記第2の対物レンズを前記顕微鏡本体に固定する対物固定部と、
少なくとも1つの前記小レンズと前記可動アームとをその光軸方向に固定するレンズ固定部とを備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の顕微鏡装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−203046(P2012−203046A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64990(P2011−64990)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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