説明

風車の修理時期決定支援装置及び修理時期決定支援方法

【課題】風力発電装置の健全性を保証しつつ、コスト的に有利な工事時期を選択することを可能とする。
【解決手段】風車の部品に異常が発生した時点からの修理のためのコストの時系列的な予測値である修理コスト予測値を、風車が所定の第1出力で稼働する場合と、所定の第1出力よりも小さい第2出力で稼働する場合について予め算出する。風車の売電収入の時系列的な予測値を、第1出力の場合と第2出力の場合とについて予め算出する。修理コスト記憶部と売電収入記憶部とを参照して、異常が発生した時点からの部品の修理に掛かる収支を、第1出力で稼働する場合と第2出力で稼働する場合とについて時系列的に計算し出力する。収支が最適となる出力と修理時期とを知ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車の修理時期を適切に決定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置で用いられているベアリング、増速器、及び発電機等の風力発電装置にとって主要な部品が故障すると、故障した部品の交換又は修理を行う工事(メンテナンス作業)の完了まで、風力発電装置の運転を停止しなければならず、この結果、売電収入が低下する。
さらに、部品が故障した後に、部品の交換又は修理の手続き等が行われると、故障から復旧に至るまでに要する風力発電装置の停止期間がより長くなり、より売電収入が低下するという問題があった。
【0003】
この問題を解決することを目的として、特許文献1には、風力発電設備の監視装置として、運転状態監視手段が取得した風力発電設備の稼働実績と、予め設定した風力発電設備のメンテナンス条件に基づいて、実際の稼働状況がメンテナンスの必要となる稼働量に達しているか否かを判定することで、部品の故障を事前に予測し、予測結果に応じて風力発電装置をメンテナンスすることで、風力発電装置の停止期間をより短くする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−342766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
風況には季節変動があり、冬季により強い風が吹く傾向がある。そのため風力発電には、冬季に発電量が多く、夏季に発電量が少ない傾向がある。従って、冬季にメンテナンスのために風力発電装置を停止すると、売電収入の低下が大きい。風力発電装置の健全性を保証しつつ、冬季に風力発電装置の停止が必要なメンテナンスを少なくすることが望まれる。
【0006】
また、風力発電装置にとって主要な部品は、主に、基礎上に立設される支柱の上端に設置されるナセル内及びナセルに設けられるロータヘッド内等、すなわち高所に備えられている。そのため、風力発電装置の部品に対する修理又は交換を行う工事を実施する場合は、クレーン設備等を用いた高所作業の必要性がある。
【0007】
しかしながら、風力発電装置は、風力を電力に変換する装置であることから風が吹きやすい立地に設置されている。さらに、上述のように、風力発電装置にとって主要な部品は、高所、すなわち風に晒される位置に備えられている。
そのため、風の影響により、例えばクレーン設備等を用いることができない場合があり、季節によっては、工事を実施できない日時が生じ、工事期間が長くなり、これに伴い風力発電装置の停止期間がより長くなる場合があった。
【0008】
また、風力発電装置に対する工事期間が長くなると、例えば、クレーン設備等を使用するためのコスト(クレーン設備のレンタル料金)等が増加し、これに伴い工事費用も増加する場合がある。
【0009】
特に、前述したように冬季により強い風が吹く傾向があるため、冬季にメンテナンスのための工事を行うと、工事期間が延び、工事費用が増加する傾向がある。工事費用の観点からも、冬季のメンテナンスを少なくすることが望まれる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、風力発電装置に対する工事を行う適切な時期を特定することができる、工事時期選択装置及び工事時期選択方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面において、風車の修理時期決定支援装置は、風車の部品について所定の挙動が発生した時点からの修理のためのコストの時系列的な予測値である修理コスト予測値を、風車が所定の第1出力で稼働する場合と、所定の第1出力よりも小さい第2出力で稼働する場合について予め記憶した修理コスト記憶部と、風車が生成する電力による売電収入の時系列的な予測値である売電収入予測値を、所定の第1出力の場合と所定の第2出力の場合とについて予め記憶した売電収入記憶部と、修理コスト記憶部と売電収入記憶部とを参照して、所定の挙動が発生した時点からの部品の修理に掛かる収支を、第1出力で稼働する場合と第2出力で稼働する場合とについて時系列的に計算し出力する収支計算部とを備える。
【0012】
本発明の他の側面において、風車の修理時期決定支援方法は、風車の部品について所定の挙動が発生した時点からの修理のためのコストの時系列的な予測値である修理コスト予測値を、風車が所定の第1出力で稼働する場合と、所定の第1出力よりも小さい第2出力で稼働する場合について予め算出する工程と、風車が生成する電力による売電収入の時系列的な予測値である売電収入予測値を、所定の第1出力の場合と所定の第2出力の場合とについて予め算出する工程と、修理コスト記憶部と売電収入記憶部とを参照して、所定の挙動が発生した時点からの部品の修理に掛かる収支を、第1出力で稼働する場合と第2出力で稼働する場合とについて時系列的に計算し出力する工程とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、風力発電装置の健全性を保証しつつ、コスト的に有利な工事時期を選択することを可能とする修理時期決定支援装置及び修理時期決定支援方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、風車、遠隔監視装置、及び修理時期決定支援装置を示す。
【図2】図2は、修理時期決定支援装置の機能ブロック図である。
【図3】図3は、修理コストデータを示す。
【図4】図4は、修理コストデータを示す。
【図5】図5は、売電収入データを示す。
【図6】図6は、工事コストデータを示す。
【図7】図7は、修理時期決定支援方法のフローチャートである。
【図8】図8は、収支コスト曲線の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、風車1を示す。本実施形態における風車1はアップウインド型の風車であるが、ダウンウインド型等の他の形式の風車でもよい。タワー上に鉛直軸を中心とした回転角を制御できるようにナセルが搭載される。ナセルに対して概ね水平方向の回転軸を中心に回転できるように主軸が取り付けられ、その主軸にロータヘッドが取り付けられる。その回転軸を中心としてロータヘッドの周方向に所定のピッチで複数のブレードが取り付けられる。ブレードが風を受けることにより主軸が回転する。その主軸の回転がナセル内の増速機によって増速され、発電機の主軸を回転することにより、風力発電が行われる。生成された電力は、電力変換されて系統に連係され、売電される。
【0016】
風車1に、監視装置2が取り付けられる。監視装置2として例えば、増速機の軸受の振動を検出する振動センサ、各種軸受に油を供給する油潤滑装置のメタルスキャン(摩耗粒子検出装置)60が設けられる。振動センサは軸受に生じる振動を検出し、メタルスキャンは、油潤滑装置内の摩耗粒子量を検出する。
【0017】
振動センサ及びメタルスキャンは、各風車1に設けられたデータ収集装置62によって、動作が制御される。
具体的には、データ収集装置は、所定間隔(例えば、1日に1回、5分程度)で振動センサ及びメタルスキャンを動作させ、振動センサ及びメタルスキャンからの検出信号の入力を受け付ける。データ収集装置は、検出信号が入力されると、該検出信号に基づいて解析を行い、部品状態データとして、通信装置及び通信回線(例えば、インターネット)を介して遠隔監視装置3−1へ送信する。なお、データ収集装置及び通信装置は、例えば、ナセル内又は支柱内に設けられている。
【0018】
遠隔監視装置3−1は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置を備え、記憶装置に、データ収集装置から送信された部品状態データを時系列、かつ風力発電装置毎及び主要部品毎に表形式で示した遠隔監視データベースを記憶させる。
【0019】
遠隔監視装置3−1に状態監視装置が接続される。状態監視装置は、遠隔監視装置3−1の記憶装置に記憶されている遠隔監視データベースの内容に基づいて、風力発電装置に備えられている主要部品の状態を診断し、記憶装置に、各主要部品毎の診断結果を示す状態監視データベースを記憶させる。主要部品の状態の診断とは、風力発電装置に備えられている主要部品の状態を検出する状態検出装置(例えば、振動センサ及びメタルスキャン)から出力された検出信号の時間変化に基づいて、主要部品に故障が生じる時期を予測したり、検出された所定の挙動が示す異常のレベルを出力することである。
【0020】
状態監視装置は更に、主要部品の状態を次のように診断する。ある部品について監視装置2によって検出された状態と、必要とされるメンテナンスのレベルの関係が決まっているとする。例えばレベル0のときは正常、レベルIのときは軽微な調整、レベルIIのときは中程度の修理、レベルIIIのときは部品交換と予め決まっているとする。状態監視装置は、監視装置2の検出信号に基づいて、所定の基準に従って、各々の部品についてメンテナンスのレベルを決定する。メンテナンスのレベルによって各部品の修理コストが決まる。
【0021】
遠隔監視装置3−1に、修理時期決定支援装置3が接続される。風車1の部品に異常が発生した場合、即時に修理をする必要が無く、ある程度の期間は運転を続けてもよいと考えられる場合がある。仮に冬季に異常が検出された場合、冬季は売電収入が大きいため、部品の修理のために運転を停止することは望ましくない。そのような場合、風車1の出力を下げて運転することによって部品に掛かる負担を減らして運転し、売電収入の比較的少ない時期になってから風車1を停止して部品を修理することで、修理に掛かるコストを低減できる可能性がある。修理時期決定支援装置3は、このようなコストの低い修理時期を決定するための計算を行う。
【0022】
図2は、修理時期決定支援装置3の機能ブロック図である。修理時期決定支援装置3は、データベース4、収支計算部9、及び修理時期計算部10を備える。この修理時期決定支援装置3は、遠隔監視装置3−1及び状態監視装置と同様に、PCやサーバ等のコンピュータを用いて実現することができる。収支計算部9と修理時期計算部10は、ディスク装置などの非一時的な記憶媒体に予め格納されたプログラムをCPUが読み出して実行することによって実現することができる。
【0023】
データベース4には、部品ID5と、修理コスト記憶部6と、工事コスト記憶部7と、売電収入記憶部8とが格納される。部品ID5は、監視装置2によって状態を監視される各部品を特定する識別子を格納する。修理コスト記憶部6は、部品ID5に示される各部品について、修理コストを時系列的に示す。工事コスト記憶部7は、部品ID5に示される各部品について、工事コストを時系列的に示す。売電収入記憶部8は、季節に依存する売電収入の予測値を格納する。
【0024】
次に、修理コスト記憶部6に格納されるデータについてより詳細に説明する。図3は、修理コスト記憶部6に格納される修理コストデータの一例を示す。横軸は季節を示す。縦軸は修理コストを示す。図3は、特定の種類の部品について、状態監視装置が、一月にレベルIに相当するトラブルを検出した場合に使用される修理コストデータの例である。
【0025】
修理コスト曲線11は、風車1の定格運転を続けた場合に、レベルIの状態が検出されたときの一月以降に予想される修理コストを示す。右下の修理コスト曲線12は、風車1の出力を所定の割合で下げたセーフモード(例えば出力90%)で運転した場合の、レベルIのトラブルが検出された一月以降に予想される修理コストを示す。
【0026】
一月にレベルIの状態が検出された後で部品に対するメンテナンス作業を行わずに定格運転を続けた場合、図3では、部品の状態が3月にレベルIIとなり、5月にレベルIIIとなると予測される。それに伴って、修理コストは3月に上昇し、5月に更に上昇する。一方、出力を90%に落とした場合、軸受や歯車に掛かる負担が軽減するため、部品の劣化が緩やかになる。図3の修理コスト曲線12では、一月にレベルIの状態が検出された後で出力を90%に落とした場合、5月を過ぎた頃にレベルIIの状態になると予測される。従って5月過ぎの時期Tで修理を行えば、修理コストは(レベルIIIの修理コスト)−(レベルIの修理コスト)だけ低く抑えられる。これらの修理コスト曲線11、12は、過去の経験に基づいて、予め修理コスト記憶部6に登録される。
【0027】
図4は、図3と同一の部品について異なる季節にレベルIの状態が検出されたときの修理コストの予測値を示す。風力発電装置は冬季に出力が大きくなる傾向があるため、部品に掛かる負担にも季節変動があり、冬季の負担が大きい。従って、修理コスト曲線も季節によって異なる。図4の例では、七月にレベルIの状態が検出され、定格運転が続けられた場合、修理コスト曲線13に示されるように十月にレベルII、十二月にレベルIIIになると予測される。七月にレベルIの状態が検出され、出力90%に落として運転が続けられると、修理コスト曲線14に示されるように12月にレベルIIの状態になると予測される。図3と図4のように、トラブル発生時期の異なる2以上の修理コスト曲線が予め修理コスト記憶部6に登録されることが望ましい。修理コスト記憶部6は、監視装置2によって監視される対象の部品の各々について、図3と図4に示されるような修理コストの将来予測値を格納する。
【0028】
図5は、売電収入記憶部8が格納するデータの一例を示す。横軸は季節、縦軸は収入を示す。売電収入曲線15は、定格運転時の売電収入の予測値を示す。風車1の出力は冬季に大きくなる傾向があり、売電収入曲線15はその季節依存的な変動を反映している。下側の売電収入曲線16は、出力90%で風車1を運転したときの売電収入の予測値を示す。各風車1について、このような過去の実績などに基づいて決められた売電収入の予測値が、売電収入記憶部8に予め格納される。
【0029】
図6は、工事コスト記憶部7に格納されるデータの一例を示す。横軸は季節、縦軸は部品の修理を行うための工事のコストを示す。工事コスト曲線17は工事コストの予測値を示す。工事コストは冬季に大きくなる傾向があり、工事コスト曲線17はその季節依存的な変動を反映している。このような過去の経験に基づいて決められた工事コストの予測値が、工事コスト記憶部7に予め格納される。
【0030】
次に、以上の構成を備えた修理時期決定支援装置3の動作について説明する。図7は、本実施形態における修理時期決定支援方法のフローチャートである。
ステップS1:監視装置2は、部品の異常を検出すると、その部品を特定する部品IDと、異常の程度及び種類とを示す異常検出信号を修理時期決定支援装置3に送信する。
ステップS2:修理時期決定支援装置3は、異常検出信号を受信すると、修理時期の初期設定を行う。内蔵するカレンダー機能により、又は作業者の入力装置に対する入力により、現在の年、月、日などの時間情報が入力される。
【0031】
ステップS4:発電出力の設定を行う。例えば初期設定として、定格運転(出力100%)が設定される。
【0032】
ステップS6:収支計算部9は、修理コストの計算を行う。この計算により、所定の時間間隔(例えば1カ月ごと)の将来の修理コストが計算される。収支計算部9はデータベース4を参照し、異常検出信号に示された部品ID5に対応する修理コストを修理コスト記憶部6から読み出す。この際、収支の予測値の算出の対象となる将来の時期(収支予測時期)が複数、設定される。例えばステップS2において設定された時期が1月であり、予め設定された計算期間が6カ月である場合、1月から7月までの各月の修理コストの予測値が読み出される。その結果、ステップS4で設定された発電出力に関して、図3に示すような修理コスト曲線が読み出される。
【0033】
ステップS8:収支計算部9は、売電収入の計算を行う。この計算により、所定の時間間隔(例えば1カ月ごと)の将来の売電収入が計算される。収支計算部9はデータベース4を参照し、売電収入の予測値を売電収入記憶部8から読み出す。この売電収入も、修理コストと同様に、例えば1月から7月までの各月の予測値が読み出される。その結果、ステップS4で設定された発電出力に関して、図5に示すような売電収入曲線が読み出される。収支計算部9は更に、現在から複数の将来予測時期の各々までの売電収入の予測値を積分する。この計算によって、例えば現在が1月である場合、2月から7月までの各月までの売電収入の合計の予測値が得られる。
【0034】
ステップS10:収支計算部9は、工事コストの計算を行う。この計算により、所定の時間間隔(例えば1カ月ごと)の将来の工事コストが計算される。収支計算部9はデータベース4を参照し、異常検出信号に示された部品ID5に対応する工事コストを工事コスト記憶部6から読み出す。この工事コストも修理コストと同様に、例えば1月から7月までの各月の予測値が読み出される。その結果、ステップS4で設定された発電出力に関して、図4に示すような修理コスト曲線が読み出される。
【0035】
ステップS14:収支計算部9は、ステップS6〜S10で計算した修理コストと、売電収入の積分値と、工事コストとのそれぞれの時系列の予測値を足すことによって、将来の収支の時系列的な予測値を計算し、収支曲線として出力する。作業者は、ステップS4で設定された発電出力に対応する収支の時系列的な予測値を参照して、部品の修理を行う時期を決定することができる。
【0036】
ステップS16:修理時期計算部10は、収支の時系列的な予測値の中で、最も収支が良い、すなわち収入が大きいか、又は支出が小さい予測値を選択して、その予測値に対応する時期を抽出する。その結果、修理コストと工事コストが比較的小さく、売電収入の積算値が比較的大きい時期を自動的に選択することができる。
【0037】
ステップS18:修理時期計算部10は、部品に異常が検出された後の風車1の発電出力値の候補を複数(例えば100%、95%、90%)、予め格納する。これらの候補としては、少なくとも所定の第1出力と、それよりも小さい第2出力とが設定されればよい。修理時期計算部10は、この出力値候補を順次に切り替えて(ステップS20)、ステップS6〜S16までの動作を繰り返す。
【0038】
ステップS22:以上の動作によって、複数の出力値候補の各々について、時系列的な収支の予測値が得られる。修理時期計算部10は、その中で最適な(最も収支の良い)発電出力と、修理時期とを計算し出力する。作業者は、各出力値候補の収支曲線と、最適な発電出力及び修理時期とを参考にして、修理時期を決定する。
【0039】
図8を参照して、修理時期決定の一例を説明する。図8の例では、説明を簡単にするために工事コストは省略されている。横軸は季節を示す。縦軸の上半分は修理コストを示す。縦軸の下半分は売電収入の合計(積分値)を示し、より下側ほど売電収入の合計が大きいことを示す。出力100%で風車1を稼働するときの修理コスト曲線11と売電収入曲線18とを足した収支曲線19が、出力100%のときの時系列的な収支を示す。収支曲線が最も低い値を取る時期が、収支の最適な時期である。この時期が、修理時期21として示されている。出力90%で風車を稼働するときの修理コスト曲線12と売電収入曲線18−1とを足した収支曲線20が、出力90%のときの時系列的な収支を示す。収支曲線が最も低い値を取る時期が、収支の最適な時期である。この時期が、修理時期22として示されている。図8の例では、出力90%の場合の修理時期22が収支の最適な修理時期を示す。そのため図7のステップS22においては、出力90%が最適発電出力として出力され、修理時期22が最適な修理時期として出力される。
【0040】
監視装置2が部品の異常を検出してから比較的近い時期に風車1の定期検査が行われる場合、その定期検査のときに部品の修理を行うことが望ましい。従って、収支計算部9は定期検査の実施時期を予め記憶する。そのような場合、図7のステップS6〜S22の処理は、部品の異常が検出された時点から定期検査の時期までを対象として実行される。この処理により、定期検査前において収支が最適となる発電出力と修理時期とが算出される。作業者はその出力を参照して、算出された時期に修理を行うか、定期検査時に修理を行うかを決定する。
【0041】
以上に説明した本発明の幾つかの実施形態は、互いに矛盾しない範囲で任意に組み合わせが可能であることは当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0042】
1 風車
2 監視装置
3 修理時期決定支援装置
3−1 遠隔監視装置
4 データベース
11〜14 修理コスト曲線
15、16 売電収入曲線
17 工事コスト曲線
18 売電収入曲線
19 収支曲線
20 収支曲線
21、22 修理時期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車の部品について所定の挙動が発生した時点からの修理のためのコストの時系列的な予測値である修理コスト予測値を、前記風車が所定の第1出力で稼働する場合と、前記所定の第1出力よりも小さい第2出力で稼働する場合について予め記憶した修理コスト記憶部と、
前記風車が生成する電力による売電収入の時系列的な予測値である売電収入予測値を、前記所定の第1出力の場合と前記所定の第2出力の場合とについて予め記憶した売電収入記憶部と、
前記修理コスト記憶部と前記売電収入記憶部とを参照して、前記所定の挙動が発生した時点からの前記部品の修理に掛かる収支を、前記第1出力で稼働する場合と前記第2出力で稼働する場合とについて時系列的に計算し出力する収支計算部
とを具備する風車の修理時期決定支援装置。
【請求項2】
前記売電収入予測値は、季節による変動を反映している
請求項1に記載された風車の修理時期決定支援装置。
【請求項3】
更に、前記部品の修理を行うために掛かる工事コストの時系列的な予測値である工事コスト予測値を予め記憶した工事コスト記憶部を具備し、
前記収支計算部は更に、前記工事コスト記憶部を参照して前記工事コストも含めて前記収支を計算する
請求項1又は2に記載された風車の修理時期決定支援装置。
【請求項4】
前記工事コスト予測値は、季節による変動を反映している
請求項3に記載された風車の修理時期決定支援装置。
【請求項5】
更に、前記収支計算部が計算した前記収支が最適となる時期を前記部品の交換時期として計算し出力する修理時期計算部を具備する
請求項1から4のいずれかに記載された風車の修理時期決定支援装置。
【請求項6】
風車の部品について所定の挙動が発生した時点からの修理のためのコストの時系列的な予測値である修理コスト予測値を、前記風車が所定の第1出力で稼働する場合と、前記所定の第1出力よりも小さい第2出力で稼働する場合について予め算出する工程と、
前記風車が生成する電力による売電収入の時系列的な予測値である売電収入予測値を、前記所定の第1出力の場合と前記所定の第2出力の場合とについて予め算出する工程と、
前記修理コスト記憶部と前記売電収入記憶部とを参照して、前記所定の挙動が発生した時点からの前記部品の修理に掛かる収支を、前記第1出力で稼働する場合と前記第2出力で稼働する場合とについて時系列的に計算し出力する工程
とを具備する風車の修理時期決定支援方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−11232(P2013−11232A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144443(P2011−144443)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】