説明

風車ロータを輸送するための装置および方法

【課題】種々異なる海況においてロータの安全な輸送が可能となるようにする。
【解決手段】海上において風車のロータを輸送するための装置が、甲板15を備えた船舶16と、少なくとも1つのロータ11,11’とを有しており、該少なくとも1つのロータ11,11’が、ハブと、該ハブに固定された少なくとも1つの羽根12A,12A’とを有しており、ハブは、少なくとも1つの羽根12A,12A’が少なくとも部分的に海面の上方に位置していて、ハブの中心軸線が甲板15に対して傾けられているように、該甲板15に位置決めされており、これによって、少なくとも1つの羽根12A,12A’と海面との間の距離が増加させられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上において風車のロータを輸送するための装置に関する。
【0002】
さらに、本発明は、海上において、甲板を備えた船舶で風車のロータを輸送するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
風車を洋上(オフショア)に設置するためには、風車構成要素を陸上の位置から洋上の設置サイトに輸送することが必要となる。オフショア風力発電プロジェクトの増加に伴い、輸送、設置機器および方法に対する要求がより高まっている。
【0004】
洋上で行われなければならない作業の量を減らすことが所望されている。したがって、風車構成要素を輸送する装置および方法に対して、しばしば一度に船舶に積み上げられて輸送される構成要素の個数を最大にすることに焦点が向けられている。
【0005】
さらに、タワー、ナセルまたはロータのような予め組み立てられたユニットを輸送することによって、洋上の風車に対して必要となる輸送・設置時間を最小限に抑えることに焦点が向けられた輸送法および輸送装置が公知である。
【0006】
通常、ロータは、羽根が甲板を越えて突出しているような甲板貨物として輸送される。これによって、ロータが荒海において輸送される場合に問題が生じる。
【0007】
最近の風車ロータの長くて弾性的な羽根と、船舶の移動とによって、羽根の先端が撓んで、水に接触し、これによって、さらに、ロータに損傷が生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、海上において、少なくとも部分的に組み立てられたロータを輸送するための装置および方法を改良して、種々異なる海況においてロータの安全な輸送が可能となるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために本発明に係る装置によれば、該装置が、甲板を備えた船舶と、少なくとも1つのロータとを有しており、該少なくとも1つのロータが、ハブと、該ハブに固定された少なくとも1つの羽根とを有しており、ハブは、少なくとも1つの羽根が少なくとも部分的に海面の上方に位置していて、ハブの中心軸線が甲板に対して傾けられているように、該甲板に位置決めされており、これによって、少なくとも1つの羽根と海面との間の距離が増加させられている。
【0010】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、ハブは、該ハブの中心軸線がほぼ船舶の長手方向に沿って傾けられているように、甲板に位置決めされている。
【0011】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、ハブは、該ハブの中心軸線がほぼ甲板の中央に向かって傾けられているように、該甲板に位置決めされている。
【0012】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、ハブの中心軸線と甲板との間の傾角が、3〜15゜の範囲内に設定されている。
【0013】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、少なくとも1つの羽根が、羽根先端と、ほぼ凹状の面と、ほぼ凸状の面とを有しており、該ほぼ凸状の面が、甲板に対して下方に向けられており、ほぼ凹状の面が、甲板に対して上方に向けられており、これによって、羽根が、海面から離れる方向に曲げられていて、羽根先端と海面との間の距離が、さらに増加させられている。
【0014】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、甲板に第1のロータと第2のロータとが配置されており、第1のロータが、第1のハブを有しており、第2のロータが、第2のハブを有しており、各ハブに少なくとも1つの羽根が固定されており、第1のハブと第2のハブとは、各ハブに固定された羽根が少なくとも部分的に海面の上方に位置しているように、甲板に位置決めされており、第1のハブと第2のハブとは、第1のハブの中心軸線と第2のハブの中心軸線とが甲板に対して傾けられているように、該甲板に位置決めされており、これによって、各ハブに固定された羽根と海面との間の距離が増加させられている。
【0015】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、第2のハブは、該第2のハブの中心軸線が第1のハブの中心軸線と同様に甲板に対して傾けられているように、第1のハブの上方に位置している。
【0016】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、第2のハブは、該第2のハブの中心軸線が第1のハブの中心軸線と同様に甲板に対して傾けられているように、第1のハブに隣り合って船舶の甲板に位置している。
【0017】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、第1のロータが、第1の羽根と第2の羽根とを有しており、第1の羽根が、少なくとも部分的に海面の上方に位置しており、第2の羽根が、完全に甲板の上方に位置している。
【0018】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係る方法によれば、ハブと羽根とを備えたロータを、ハブの中心軸線が甲板に対して傾けられるように、該甲板に位置決めし、これによって、羽根と海面との間の距離を増加させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、海上において風車のロータを輸送するための装置に関する。この装置は、甲板を備えた船舶と、少なくとも1つのロータとを有している。さらに、この少なくとも1つのロータは、ハブと、このハブに固定された少なくとも1つの羽根とを有している。
【0020】
さらに、ハブは、少なくとも1つの羽根が少なくとも部分的に海面の上方に位置しているように、甲板に位置決めされている。ハブの中心軸線は甲板に対して傾けられており、これによって、少なくとも1つの羽根と海面との間の距離が増加させられている。
【0021】
さらに、本発明は、海上において、甲板を備えた船舶によって風車ロータを輸送するための方法に関する。この方法は、ハブと羽根とを備えたロータを、ハブの中心軸線が甲板に対して傾けられているように、この甲板に位置決めし、これによって、羽根と海面との間の距離を増加させるステップを有している。
【0022】
本発明によれば、少なくとも1つの羽根が上方に傾けられる傾向にあり、船舶を越えて突出した部分の下方により大きなクリアランスを獲得する。したがって、本発明に係る装置および方法によって、より荒れた海でも、風車ロータを輸送することが可能となる。
【0023】
したがって、海上において風車構成要素を輸送するために開かれた、いわゆる「窓」、つまり、機会が拡大されていて、さらに、洋上の風車の全設置時間を最小限に抑えている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】組み立てられたロータの概略図である。
【図2】本発明の1つの実施の形態に係る装置の概略的な側面図である。
【図3】本発明の別の実施の形態に係る装置の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0026】
図1には、一例としてのロータアッセンブリが示してある。このロータアッセンブリは、1つのハブ3と2つのロータ羽根2とを有している。ハブ3は、このハブ3の回転軸線に対応する中心軸線Cを有している。図1に示したように、羽根2は、組み付けられている場合に風車のタワーに衝突すること回避するために、湾曲させられていてよい。湾曲させられた羽根2は、ほぼ凹状の面4Aとほぼ凸状の面4Bとを有するように曲げられている。
【0027】
図2には、本発明の1つの実施の形態が示してある。本発明に係る装置は、嵩高な機器を積載するために適した貨物甲板15を備えた水上船舶16を有している。本実施の形態において、水上船舶16という用語は、あらゆる種類のウォータクラフト、水上車両または、艀(はしけ)、貨物運搬船、機帆船および輸送船を含む船に対して使用される。
【0028】
さらに、本発明に係る装置は、少なくとも1つのロータ11を有している。このロータ11は、1つのハブと3つのロータ羽根12A,12Bとを有している。これらの羽根12A,12Bはハブに組み付けられているかまたは固定されている。少なくとも1つのロータ11は、ただ1つまたは2つの羽根12A,12Bを備えて部分的に組み立てられていてもよいし、3つよりも多くの羽根を有していてもよい。
【0029】
少なくとも1つのロータ11は、少なくとも1つの羽根12Aが甲板15を越えて突出しているように、船舶16の甲板15に配置されている。これは、羽根12Aが少なくとも部分的に海面の上方に位置していることを意味している。さらに、ハブは、その中心軸線が甲板15に対して傾けられているように、甲板15に位置決めされている。
【0030】
本発明の別の実施の形態では、ハブは、その中心軸線がほぼ船舶16の長手方向に沿って傾けられているように、甲板15に位置決めされている。
【0031】
本発明のさらに別の実施の形態では、ハブは、その中心軸線がほぼ甲板15の中央に向かって傾けられているように、甲板15に位置決めされている。
【0032】
本発明のさらに別の実施の形態では、ハブの中心軸線と甲板15との間の傾角が3〜15゜の範囲内に設定されている。
【0033】
前述したように、ハブを甲板15に対して傾けて配置することによって、海面と、この海面の上方に少なくとも部分的に位置する羽根12Aとの間に最大のクリアランスが達成される。
【0034】
本発明の別の実施の形態では、少なくとも1つの羽根12Aが羽根先端を有していて、ほぼ凹状の面4Aとほぼ凸状の面4Bとを有するように曲げられている。羽根の形状は図1にも示してある。羽根が組み付けられている場合には、羽根12Aの湾曲させられた形状によって、強風の間の風圧によるタワーへの羽根の衝突の危険が減少させられる。
【0035】
羽根12Aのほぼ凸状の面4Bは海面に向かい合っており、かつ/または甲板15と羽根12Aのほぼ凹状の面4Aとは上方に向けられている。したがって、羽根は水面から離れる方向に曲げられており、羽根21の先端と海面との間の距離がさらに増加させられている。
【0036】
別の実施の形態では、図2に示したように、別のロータ11’がロータ11上に位置していてよい。
【0037】
この実施の形態では、甲板15に位置決めされたロータ11(以下、第1のロータ11と呼ぶ)と、別のロータ11’(以下、第2のロータ11’と呼ぶ)とが、重なり合って配置されている。
【0038】
第1のロータ11と第2のロータ11’とは、それらのハブの中心軸線が共に同じ傾角を成して甲板15または甲板平面15に対して傾けられているように積み上げられている。
【0039】
この実施の形態でも、第1のロータ11は、少なくとも1つの羽根12Aが少なくとも部分的に海面の上方に位置していて、ハブの中心軸線が甲板15に対して傾けられているように、甲板15に位置決めされている。第2のロータ11’は、第1のロータ11にまさに載置されていてもよいし、第1のロータ11上に適切な支持装置内で組み付けられていてもよい。
【0040】
さらに、1つまたはそれ以上の別のロータ11’’が、第1のロータ11および第2のロータ11’の上方に位置していてよい。別のロータ11’’のハブも同様に傾けられている。
【0041】
図3には、本発明の1つの実施の形態が示してある。この実施の形態は、上述した実施の形態と異なり、第2のロータ21’のハブ23’が、第1のロータ21のハブ23に隣り合って船舶26の甲板25に位置している。
【0042】
第2のロータ21’のハブ23’は、その中心軸線が、第1のロータ21のハブ23と同様に甲板25に対して傾けられているように、甲板25に位置決めされている。第2のロータ21’の少なくとも1つの羽根22A’は、少なくとも部分的に海面の上方に位置している。
【0043】
本発明の別の実施の形態では、図3にも示したように、第1のロータ21が第1の羽根22Aと第2の羽根22Bとを有している。第1の羽根22Aは少なくとも部分的に海面の上方に位置しており、第2の羽根22Bは完全に甲板25の上方に位置している。
【0044】
さらに、本発明の解決手段は、海上において、甲板15,25を備えた船舶16,26で風車のロータ11,11’,21,21’を輸送するための方法を含んでいる。この方法は、船舶16,26の甲板15,25へのロータ11,11’,21,21’の位置決めのステップを有している。
【0045】
ハブと羽根とを有するロータ11,11’,21,21’は、ハブの中心軸線が甲板15,25に対して傾けられているように、甲板15,25に位置決めされる。
【0046】
ロータ11,11’,21,21’を船舶16,26の甲板15,25に位置決めした後、ロータ11,11’,21,21’が海上において、たとえば陸上の位置から洋上の設置サイトに輸送される。
【0047】
輸送の間、ロータ11,11’,21,21’のハブは甲板15,25に対して傾けられたままである。したがって、甲板15,25を越えて突出している羽根の部分の下方のクリアランスが増加させられており、ロータ11,11’,21,21’をより荒れた海況の場合でも輸送することができる。
【符号の説明】
【0048】
2 羽根
3 ハブ
4A 凹状の面
4B 凸状の面
11,11’,11’’ ロータ
12A,12B 羽根
15 甲板
16 船舶
21,21’ 羽根
22A,22A’,22B 羽根
23,23’ ハブ
25 甲板
26 船舶
C 中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上において風車のロータを輸送するための装置において、該装置が、甲板(15,25)を備えた船舶(16,26)と、少なくとも1つのロータ(11,11’,21,21’)とを有しており、該少なくとも1つのロータ(11,11’,21,21’)が、ハブ(23)と、該ハブ(23)に固定された少なくとも1つの羽根(12A,22A)とを有しており、ハブ(23)は、少なくとも1つの羽根(12A,22A)が少なくとも部分的に海面の上方に位置していて、ハブ(23)の中心軸線(C)が甲板(15,25)に対して傾けられているように、該甲板(15,25)に位置決めされており、これによって、少なくとも1つの羽根(12A,22A)と海面との間の距離が増加させられていることを特徴とする、海上において風車のロータを輸送するための装置。
【請求項2】
ハブ(23)は、該ハブ(23)の中心軸線がほぼ船舶(16,26)の長手方向に沿って傾けられているように、甲板(15,25)に位置決めされている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
ハブ(23)は、該ハブ(23)の中心軸線がほぼ甲板(15,25)の中央に向かって傾けられているように、該甲板(15,25)に位置決めされている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
ハブ(23)の中心軸線と甲板(15,25)との間の傾角が、3〜15゜の範囲内に設定されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの羽根(12A,22A)が、羽根先端と、ほぼ凹状の面(4A)と、ほぼ凸状の面(4B)とを有しており、該ほぼ凸状の面(4B)が、甲板(15,25)に対して下方に向けられており、ほぼ凹状の面(4A)が、甲板(15,25)に対して上方に向けられており、これによって、羽根(12A,22A)が、海面から離れる方向に曲げられていて、羽根先端と海面との間の距離が、さらに増加させられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
甲板(15,25)に第1のロータ(11,21)と第2のロータ(11’,21’)とが配置されており、第1のロータ(11,21)が、第1のハブ(23)を有しており、第2のロータ(11’,21’)が、第2のハブ(23’)を有しており、各ハブ(23,23’)に少なくとも1つの羽根(12A,12B)が固定されており、第1のハブ(23)と第2のハブ(23’)とは、各ハブ(23,23’)に固定された羽根(12A,22A,12A’,22A’)が少なくとも部分的に海面の上方に位置しているように、甲板(15,25)に位置決めされており、第1のハブ(23)と第2のハブ(23’)とは、第1のハブ(23)の中心軸線と第2のハブ(23’)の中心軸線とが甲板(15,25)に対して傾けられているように、該甲板(15,25)に位置決めされており、これによって、各ハブ(23,23’)に固定された羽根(12A,22A,12A’,22A’)と海面との間の距離が増加させられている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
第2のハブは、該第2のハブの中心軸線が第1のハブの中心軸線と同様に甲板(15)に対して傾けられているように、第1のハブの上方に位置している、請求項6記載の装置。
【請求項8】
第2のハブ(23’)は、該第2のハブ(23’)の中心軸線が第1のハブ(23)の中心軸線と同様に甲板(25)に対して傾けられているように、第1のハブ(23)に隣り合って船舶(26)の甲板(25)に位置している、請求項6記載の装置。
【請求項9】
第1のロータ(11,21)が、第1の羽根(12A,22A)と第2の羽根(12B,22B)とを有しており、第1の羽根(12A,22A)が、少なくとも部分的に海面の上方に位置しており、第2の羽根(12B,22B)が、完全に甲板(25)の上方に位置している、請求項6から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
海上において、甲板(15,25)を備えた船舶(16,26)で風車のロータ(11,11’,21,21’)を輸送するための方法において、ハブと羽根とを備えたロータ(11,11’,21,21’)を、ハブ(3,23)の中心軸線が甲板(15,25)に対して傾けられるように、該甲板(15,25)に位置決めし、これによって、羽根(12A,22A)と海面との間の距離を増加させることを特徴とする、海上において、甲板を備えた船舶で風車のロータを輸送するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122481(P2012−122481A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−267164(P2011−267164)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】