説明

飛翔体の誘導システム

【課題】光信号を用いる飛翔体を誘導するシステムであって、より秘匿性の高いシステムを提供する。
【解決手段】飛翔体の誘導システム100は、ロケットモータ11の噴射ノズル12から噴射物質を噴射することで推進力を得て、飛翔する飛翔体1と、飛翔体1を目標位置に誘導する地上誘導装置2とを備え、地上誘導装置2は、飛翔体1を誘導する誘導信号を光信号に変換して送信する光送信器4を有し、飛翔体1は、地上誘導装置2からの光信号を受信して誘導信号に復調する光受信器6と、光受信器6が復調した誘導信号に基づいて飛翔体1の飛翔方向を変化させる操舵装置8と、を有している。そして、飛翔体の誘導システム100は、地上誘導装置2を可動する可動装置25をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体及びこの飛翔体を誘導する地上誘導装置からなる飛翔体の誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飛翔体を誘導するシステムとしては、無線によって飛翔体を操作する方式、有線によって飛翔体を操作する方式、レーザポインタで目標を示し、飛翔体自体をその目標に向かって飛翔させる方式などがある。このうち、信号が外部に漏れることがない有線による方式は、秘匿性の面から見て有用であり、現在ではこの方式が飛翔体を操作する方式として主流となっている。ただし、有線による方式は、取り扱いが不便であるという問題もある。
【0003】
これに対して、特許文献1では、レーザビームを用いて飛翔体に操縦指令信号を送信し、飛翔体を操縦する方式が提案されている。かかる方式は、無線などとは異なり妨害電波の影響を受けにくく、取り扱いも容易という特性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−74694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のレーザビームによる方式であっても、飛翔体の飛翔範囲をカバーできるようにレーザビームの指向角度をある程度大きく設定する必要があった。そして、その指向角度が大きくなればなるほど、秘匿性はうすれてしまう。
【0006】
そこで本発明は、光信号を用いる飛翔体を誘導するシステムであって、より秘匿性の高いシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、本発明に係る飛翔体の誘導システムは、ロケットモータの噴射ノズルから噴射物質を噴射することで推進力を得て、飛翔する飛翔体と、前記飛翔体を目標位置に誘導する地上誘導装置と、を備え、前記地上誘導装置は、飛翔体を誘導する誘導信号を光信号として送信する光送信器を有し、前記飛翔体は、前記地上誘導装置からの光信号を受信して誘導信号に復調する光受信器と、前記光受信器が復調した誘導信号に基づいて前記飛翔体の飛翔方向を変化させる操舵装置と、を有する飛翔体の誘導システムであって、前記地上誘導装置を可動する可動装置をさらに備える。かかる構成によれば、飛翔する飛翔体を狙って光信号を送信することができる。
【0008】
また、上記の飛翔体の誘導システムにおいて、前記可動装置は、前記地上誘導装置の角度調整をすることが可能であるように構成してもよく、さらに、前記可動装置は、前記地上誘導装置を地上移動させることが可能であるように構成してもよい。
【0009】
また、上記の飛翔体の誘導システムにおいて、前記飛翔体は安定翼を有し、前記光受信器は、光信号を構成する光を受光する受光部と、光信号を誘導信号に復調する復調部と、を有し、前記受光部は前記飛翔体の安定翼先端に配置されるようにしてもよい。かかる構成によれば、噴射ノズルから噴射される噴射物質によって光信号が遮られるのを防ぐことができる。
【0010】
また、上記の飛翔体の誘導システムにおいて、前記光信号に用いられる光は可視波長の光としてもよい。かかる構成によれば、場合により、地上誘導装置側から飛翔体の視認が容易になる。
【0011】
また、上記の飛翔体の誘導システムにおいて、前記噴射ノズルが光受信器の前方において複数設けられており、噴射物質が光受信器の前方から斜め後方に向かって噴射されるように構成してもよい。かかる構成によれば、ロケットモータから噴射される噴射物質によって、光信号が遮られるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る飛翔体の誘導システムによれば、飛翔する飛翔体を狙って光信号を送信することができる。よって、本発明に係る飛翔体の誘導システムによれば、地上誘導装置から発光される光の直径や指向角度を小さくすることができ、ひてはより秘匿性の高いシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る飛翔体誘導システムの概念図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る飛翔体誘導システムの概念図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る飛翔体誘導システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る飛翔体の誘導システムの実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る飛翔体の誘導システム100の構成について説明する。第1実施形態に係る飛翔体の誘導システム100は、飛翔体1と、地上誘導装置2と、可動装置25と、を備えている。さらに、地上誘導装置2は、演算制御部3と、光送信器4と、を有している。また、飛翔体1は、飛翔体本体5と、光受信器6と、演算制御部7と、操舵装置8と、を有している。以下、これらの各構成要素について順に説明する。
【0016】
地上誘導装置2の演算制御部3は、目標位置に飛翔体1を誘導するための誘導信号を生成する部分である。この誘導信号は、操縦者の操作に基づいて生成される場合もあれば、コンピュータの演算結果から自動的に生成される場合もある。自動的に生成される場合とは、例えば、カメラにより目標位置と飛翔体1を撮影し、目標位置、飛翔体1の位置、及び飛翔体1の進行方向・速度の関係を割り出し、これによっていかに飛行すれば飛翔体1が目標位置にたどり着くかを算出し、これに基づいて誘導信号を生成するといった場合である。なお、演算制御部3は、生成した誘導信号を光送信器4に送信する。
【0017】
光送信器4は、所定の電気信号を光信号に変換して送信する装置である。本実施形態に係る光送信器4は、信号の変調を行う変調部9と、光を発光する発光部10とを有している。変調部9では演算制御部3から送信された誘導信号を受信して変調する。そして、発光部10では変調部9で変調した電気信号を光信号に変換して送信する。なお、光信号を構成する光には、ハイパワーの光として生成可能なレーザ光やLED光を用いるのが望ましい。また、光信号は、デジタルパルス信号であることが望ましいが、コンティニアスウエーブ信号(CW信号)であってもよい。
【0018】
飛翔体本体5は、飛翔体1が飛翔するための基本構成部分である。飛翔体本体5は、先端が丸く(又は円錐状で)全体としては円柱状の形状を有している。飛翔体本体5の後方にはロケットモータ11が設けられている。ロケットモータ11は噴射ノズル12を有しており、その噴射ノズル12から噴射物質を噴射することにより飛翔体1は推進力を得て飛翔する。また、飛翔体本体5には、飛翔体本体5の中心軸に対して垂直に複数の安定翼13が設けられている。この安定翼13によって、飛翔体1は安定して飛行することができる。本図では安定翼13は一例として飛翔体後方に配置しているが、位置は特定する必要はない。なお、本実施形態では、飛翔体1の飛翔距離は数キロメートル程度の近距離飛行を想定している。
【0019】
光受信器6は、光信号を受信してもとの信号に復調する装置である。本実施形態に係る光受信器6は、光を受光する受光部14と、信号の復調を行う復調部15とを有している。受光部14では、地上誘導装置2の光送信器4から送信された光信号を受信する。上記のように、光信号は例えばデジタルパルス信号の形式で送信される。そして、復調部15では、受信した光信号(例えばデジタルパルス信号)を予め決められた方法により誘導信号に復調する。なお、本実施形態では、光信号を受信しやすいように光受信器6は飛翔体本体5の後方に配置されている。
【0020】
飛翔体1の演算制御部7は、飛翔体1の全体の制御を行う部分である。本実施形態に係る演算制御部7は、光受信器6によって復調された誘導信号を受信し、この誘導信号に従って適切な操舵信号を生成する。例えば、誘導信号が右に飛行方向を変えるような指示である場合は、いかなる操舵信号を操舵装置8に送信すれば飛翔体1がそのような動きをするかを算出し、その結果に基づいて操舵信号を生成する。この演算制御部7で生成した操舵信号は、操舵装置8に送信される。
【0021】
操舵装置8は、飛翔体1の飛翔方向を変化させる装置である。本実施形態に係る操舵装置8は、飛翔体1の中央より前に位置しており、操舵翼16と操舵翼16の角度(又は形状)を変える機構(図示せず)とを有している。操舵装置8は、演算制御部7から操舵信号を受信すると、その操舵信号に従って、操舵翼16の角度(又は形状)を変える。これにより、飛翔体1は、誘導信号によって指示するとおり、つまり地上誘導装置2の操作とおりに飛翔し、目標位置に達する。
【0022】
可動装置25は、地上誘導装置2を可動する装置である。本実施形態に係る可動装置25は、台座部26と、角度調整部27と、を有している。そして、台座部26の上には角度調整部27が取り付けられており、角度調整部27には地上誘導装置2が取り付けられている。また、角度調整部27は、そのときの飛翔体1の位置に応じて、地上誘導装置2の配置角度を上下左右自由に設定することができる。可動装置25は、上記のような構成を有していることから、飛翔する飛翔体1を狙って光送信器4からの光信号をピンポイントに飛翔体1に送信することができる。そうすると、光送信器4から発光する光(光信号)の直径や指向角度を小さくすることができ、より一層秘匿性を向上させることができ、かつ光の出力を必要最小限とすることができる。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、地上誘導装置2から飛翔体1へと送信される信号は、レーザ光などを用いた光信号であるため、電波信号のように妨害されることもなく、光送信器4が発光する光の直径を局限することにより、指向性が強く短時間で信号が送信できることから秘匿性に優れ、さらに飛翔体の製造コストを抑えることができる。また、飛翔体1を発射する前に、地上誘導装置2と飛翔体1の信号を同期させる等の作業が不要であるため、非常に取り扱いやすい。
【0024】
なお、以上では、光信号を構成する光の波長については特に言及していないが、連続的な光信号の送信が可能であれば、可視波長の光を光信号に用いるようにしてもよい。かかる構成によれば、光信号を送信する際に光の先に位置する飛翔体1を容易に確認することができるため、飛翔体1の視認性が向上し、誘導操作をより容易に行うことができる。
【0025】
また、以上では、誘導信号が飛翔体1の左右上下などの飛行方向の修正に関するものであって、操舵信号が操舵装置8の操作に関するものであるとして説明しているが、地上誘導装置2から送信される信号は必ずしも飛翔体の飛行方向の修正情報に関するものでなくてもよい。例えば、誘導信号が、操舵装置8の操作に関するものであってもよい。この場合、飛翔体1の光受信器6で復調された誘導信号は、演算制御部7を介してそのまま、又は演算制御部7を介さずに直接、操舵装置8に送信することができる。すなわち、この場合には、演算制御部7において飛翔体1の飛行方向の修正情報に関する信号から操舵信号に変換する回路を省略することができる。
【0026】
また、以上では、飛翔体1の安定翼13と操舵翼16とが分かれている場合について説明したが、飛翔体1は安定翼と操舵翼を一体とし、安定翼13が操舵翼16の役割を果たすような構造であってもよい。
【0027】
なお、前記のように、地上誘導装置から飛翔体へ誘導信号を一方的に送信するものに限らず、飛翔体および地上誘導装置の双方に送受信装置を設け、飛翔体側から地上誘導装置へGPS等の手段による自己位置の情報や飛翔体が撮像した対象物の画像情報を送信するような双方向送信システムであっても良い。
【0028】
(第2実施形態)
次に、図2を参照して、本発明の第2実施形態に係る飛翔体の誘導システム200の構成について説明する。第2実施形態に係る飛翔体の誘導システム200は、第1実施形態に係る飛翔体の誘導システム100と基本的に同じ構成要素を備えている。ただし、図2に示すように、第2実施形態に係る飛翔体の誘導システム200では、ロケットモータ211の構成が、第1実施形態に係るロケットモータ11の構成と異なる。以下、本実施形態に係るロケットモータ211の構成について説明する。
【0029】
本実施形態に係るロケットモータ211は、図2に示すように、噴射ノズル212が光受信器6の前方において飛翔体本体5の側面に等間隔で複数設けられている。そして、各噴射ノズル212は、飛翔体本体5の中心軸に対してわずかに傾くよう形成されており、その先端は飛翔体本体5の斜め後方に向いている。噴射ノズル212はこのように形成されているため、ロケットモータ211(噴射ノズル212)は光受信器6の前方から斜め後方に向かって噴射物質を噴射することになる。
【0030】
ここで、図1に示すように、光受信器6の後方にロケットモータ11の噴射ノズル12が位置する場合は、地上誘導装置2から飛翔体1に送信される光信号が噴射ノズル12から噴射される噴射物質によって遮られ、飛翔体1が正確な誘導信号を取得できない可能性がある。一方、本実施形態に係るロケットモータ211によれば、図2に示すように、光受信器6の前方から斜め後方に向かって噴射物質が噴射されるため、地上誘導装置2から飛翔体1に送信される光信号が噴射物質によって遮られにくくなる。よって、飛翔体1は、地上誘導装置2から、より確実に誘導信号を取得することができる。
【0031】
(第3実施形態)
次に、図3を参照して、本発明の第3実施形態に係る飛翔体の誘導システム300の構成について説明する。第3実施形態に係る飛翔体の誘導システム300は、第1実施形態に係る飛翔体の誘導システム100と基本的に同じ構成要素を備えている。ただし、第3実施形態に係る飛翔体の誘導システム300では、飛翔体1が有する光受信器306の構成が、第1実施形態に係る光受信器6の構成と異なる。以下、本実施形態に係る光受信器306の構成について説明する。
【0032】
本実施形態に係る光受信器306は、光信号を受光する受光部314と、信号の復調をおこなう復調部315とを有している。ただし、復調部315が飛翔体本体5の内部に設けられているのに対し、受光部314は復調部315とは離れて安定翼13の先端に設けられている。かかる構成によれば、噴射ノズル12から離れて受光部314を設けることができるので、噴射ノズル12から噴射される噴射物質によって光信号が遮られるのを防止することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、光受信器306のうち受光部314のみを安定翼13の先端に設けているが、光受信器306の全体を安定翼13の先端に設けるようにしてもよい。
【0034】
以上、本発明に係る第1実施形態〜第3実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、光信号を用いる飛翔体を誘導するシステムであって、より秘匿性の高いシステムを提供することができる。よって、本発明は、飛翔体の誘導システムの技術分野において有益である。
【符号の説明】
【0036】
100、200、300 飛翔体の誘導システム
1 飛翔体
2 地上誘導装置
3 演算制御部
4 光送信器
5 飛翔体本体
6、306 光受信器
7 演算制御部
8 操舵装置
9 変調部
10 発光部
11、211 ロケットモータ
12、212 噴射ノズル
13 安定翼
14、314 受光部
15、315 復調部
16 操舵翼
25 可動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロケットモータの噴射ノズルから噴射物質を噴射することで推進力を得て、飛翔する飛翔体と、前記飛翔体を目標位置に誘導する地上誘導装置と、を備え、
前記地上誘導装置は、飛翔体を誘導する誘導信号を光信号として送信する光送信器を有し、前記飛翔体は、前記地上誘導装置からの光信号を受信して誘導信号に復調する光受信器と、前記光受信器が復調した誘導信号に基づいて前記飛翔体の飛翔方向を変化させる操舵装置と、を有する飛翔体の誘導システムであって、
前記地上誘導装置を可動する可動装置をさらに備える、飛翔体の誘導システム。
【請求項2】
前記可動装置は、前記地上誘導装置の角度調整をすることが可能である、請求項1に記載の飛翔体の誘導システム。
【請求項3】
前記可動装置は、前記地上誘導装置を地上移動させることが可能である、請求項2に記載の飛翔体の誘導システム。
【請求項4】
前記飛翔体は安定翼を有し、
前記光受信器は、光信号を構成する光を受光する受光部と、光信号から得られたデジタルパルス信号を誘導信号に復調する復調部と、を有し、
前記受光部は前記飛翔体の安定翼先端に配置されている、
請求項1に記載の飛翔体の誘導システム。
【請求項5】
前記光信号に用いられる光は可視波長の光である、請求項1に記載の飛翔体の誘導システム。
【請求項6】
前記噴射ノズルが光受信器の前方において複数設けられており、噴射物質が光受信器の前方から斜め後方に向かって噴射される、請求項1に記載の飛翔体の誘導システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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