説明

食品ゲル成形体の型開閉装置及び食品ゲル成形体の製造装置

【課題】筒状の型の下端側に設けられたゲル成形体を取り出す取出口を、ゾル溶液を充填する際には、ゾル溶液が洩れないように密閉でき、且つゲル成形体を取り出す際には、ゲル成形体の形状を損ねることなく取り出すことのできるように開放できる食品ゲル成形体の型開閉装置を提供する。
【解決手段】食品用のゾル溶液を貯留し冷却して得られた所定形状の食品ゲル成形体を取り出す取出口が下端側に設けられている筒状の型42と、型42の取出口の下方に設けられ、前記取出口を開閉するシャッター44と、シャッター44を型42の取出口に対して往復動方向にスライドする往復動手段とが設けられ、前記所定形状の食品ゲル成形体が型42の取出口から取り出されるように、型42の取出口を開放しているシャッター44が、前記往復動手段によって型42の取出口を閉塞する方向にスライドしたとき、シャッター44を押し上げて前記取出口を密閉する押上手段が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品ゲル成形体の型開閉装置及び食品ゲル成形体の製造装置に関し、更に詳細には筒状の型の下端部に形成された取出口を開閉する食品ゲル成形体の型開閉装置、及び前記型開閉装置を用いた食品ゲル成形体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品ゲルとして代表的な寒天ゲルは、近年の健康志向の高まりに伴って種々の食品に用いられるようになり、その消費量が増大している。かかる寒天ゲルの消費量の増大に伴って、寒天ゲルの効率的な製造装置が求められている。
寒天ゲルの製造装置として、下記特許文献1には、図5に示す装置が提案されている。図5に示す装置では、仕込み釜100にて寒天を加熱・溶融して得た寒天溶液をプレートクーラ102で冷却した後、一対のローラ104a,104bに掛け渡された無端状のスチールベルト104上に寒天溶液を流す。このスチールベルト104の両側には、型枠108が添設されており、スチールベルト104と型枠108とから成る型内に寒天溶液が広がる。型内に広がった寒天溶液は、スチールベルト104と共に移動し、冷却装置110上を通過する。この冷却装置110を通過する間に、寒天溶液は固まって寒天ゲルとなる。この寒天ゲルは、切断テーブル112上に移動し、カッター114によって所望の形状、大きさに切断される。
【0003】
また、下記特許文献1には、図6に示す寒天ゲルの製造装置が提案されている。図6に示す寒天ゲルの製造装置では、矢印A方向に回転する回転テーブル200上に複数の皿状の型202,202・・が形成されており、型202,202・・の各々は、回転テーブル200と共に一回転する間に、冷却領域204中を通過する。このため、回転テーブル200上の型202に、図5に示すプレートクーラ102で冷却された寒天溶液を充填した後、この型202が冷却領域204を通過する間に、型202に充填された寒天溶液は冷却・固化されて寒天ゲルとなる。
次いで、型202が冷却領域204を通過したとき、型202から寒天ゲルを図5に示す切断テーブル112上に取り出し、カッター114によって所望の形状、大きさに切断する。
【特許文献1】特許第2758084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5及び図6に示す装置によれば、所望の形状、大きさに切断された寒天ゲルを自動的に製造できる。
かかる図5及び図6に示す寒天ゲルの自動製造装置は、大型であって、単一の形状・大きさの寒天ゲルを大量に製造するには適している。
しかし、大量に生産された単一の形状・大きさの寒天ゲルは、みつ豆やところてん等の食品に加工して消費者に食されるまでに長時間保存される。この保存中に、寒天ゲルは離水現象等によって味や歯触り等が低下するため、長期間保存した寒天ゲルから作ったみつ豆やところてん等の食品はおいしく食することができない。
寒天ゲルを最もおいしく食するには、得られた直後の新鮮な寒天ゲルを食することであるが、レストラン等では、みつ豆やところてん等の注文を受けてから寒天ゲルを作っていては、注文品を注文客に提供するまでの時間がかかり過ぎる。
このため、レストラン等でも、その厨房に寒天ゲルの製造装置を設置できれば、注文に応じて新鮮な寒天ゲルを用いた食品を短時間で注文客に提供可能である。
【0005】
しかしながら、図5及び図6に示す寒天ゲルの製造装置は大型であって、レストラン等の厨房のように狭い場所に設置できない。
特に、図5及び図6に示す寒天ゲルの製造装置では、寒天溶液を冷却して所定形状に成形する型として、スチールベルト104と型枠108とから成る型(図5)或いは皿状の型202(図6)を用いている。このため、図5及び図6に示す寒天ゲルの製造装置では、複数の型を載置する載置プレート等が大型となって、寒天ゲルの製造装置は全体として横長となり、その設置場所を取ってしまう。
この点、型として、筒状の縦型(以下、単に縦型と称することがある)を採用すると、複数の型から成る型群の設置面積を小さくでき、寒天ゲルの製造装置の設置面積も小さくできる。
しかし、縦型の下端側には、型内で冷却されて所定形状に成形されたゲル成形体を取り出す取出口が設けられている。この取出口は、ゲル成形体の形状を崩すことなくゲル成形体を取り出すことのできる大きさ及び形状に形成される。
かかる縦型内に液状のゾル溶液を充填する際には、ゾル溶液が縦型の取出口から洩れないように密閉することが必要であり、縦型内からゲル成形体を取り出す際には、ゲル成形体の形状を損ねることなく取り出すことができるように、その取出口を開放することが必要である。
そこで、本発明の課題は、筒状の型の下端側に設けられたゲル成形体を取り出す取出口を、ゾル溶液を充填する際には、ゾル溶液が洩れないように密閉でき、且つゲル成形体を取り出す際には、ゲル成形体の形状を損ねることなく取り出すことのできるように開放できる食品ゲル成形体の型開閉装置、及び前記型開閉装置を用いた食品ゲル成形体の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を達成すべく検討を重ねた結果、所定形状の食品ゲル成形体が縦型の取出口から取り出されるように、縦型の取出口の下方に設けられ、その取出口を開放しているシャッターを、取出口を閉塞する方向に移動したとき、シャッターを取出口方向に押し上げて、取出口を密閉することによって、ゾル溶液を縦型に充填したとき、ゾル溶液の洩れを防止できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、食品用のゾル溶液を貯留し冷却して得られた所定形状の食品ゲル成形体を取り出す取出口が下端側に設けられている筒状の型と、前記型の取出口の下方に設けられ、前記取出口を開閉するシャッターと、前記シャッターを型の取出口に対して往復動方向にスライドする往復動手段とが設けられ、前記所定形状の食品ゲル成形体が前記型の取出口から取り出されるように、前記型の取出口を開放しているシャッターが、前記往復動手段によって型の取出口を閉塞する方向にスライドしたとき、前記シャッターを押し上げて前記取出口を密閉する押上手段が設けられていることを特徴とする食品ゲル成形体の型開閉装置にある。
【0007】
また、本発明は、所定量の食品用のゾル溶液が貯留された溶解タンクから前記ゾル溶液が供給される供給口と前記ゾル溶液が冷却されて得られた食品用のゲル成形体を取り出す取出口とが上下方向に形成された、複数個の筒状の型から構成される型群と、前記取出口が開閉手段によって閉塞された型内に、前記供給口から供給されて充填されたゾル溶液を冷却して所定形状のゲル成形体とする冷却手段とを具備する食品ゲル成形体の製造装置であって、前記開閉手段には、前記型の取出口の下方に設けられ、前記取出口を開閉するシャッターを、前記型の取出口に対して往復動方向にスライドする往復動手段と、前記所定形状の食品ゲル成形体が前記型の取出口から取り出されるように、前記型の取出口を開放しているシャッターが、前記往復動手段によって型の取出口を閉塞する方向にスライドしたとき、前記シャッターを押し上げて前記取出口を密閉する押上手段とが設けられていることを特徴とする食品ゲル成形体の製造装置でもある。
【0008】
かかる本発明において、型の取出口の下方に設けられ、往復動手段によって前記取出口に対して往復動方向にスライドする往復動部材と、前記往復動部材と型の取出口との間に設けられ、前記往復動部材と共にスライドするシャッターと、前記往復動部材によってシャッターを前記型の取出口方向にスライドしたとき、前記シャッターを前記取出口方向に押し上げる押上手段とを設けることによって、型の取出口の開閉を迅速に行うことができる。
また、押上手段を、往復動部材上に設けられた凸状部材と、シャッターに一端部が固定され、他端部が前記凸状部材の頂部に乗り上げたとき、前記シャッターを型の取出口方向に付勢する付勢部材とから構成することによって、押上部材の構成を簡単化できる。
更に、凸状部材に、前記付勢部材の他端部が接触して頂部方向に移動できる傾斜面を形成することによって、シャッターに対する付勢力を調整しつつ、取出口にシャッターを押し付けることができる。
この凸状部材の頂部に、付勢部材の他端部を収納可能な凹部を形成することによって、付勢部材の他端部が凹部に収納されたとき、縦型に充填されたゾル溶液に重量等の荷重がシャッターに加えられても、依然としてシャッターを縦型の取出口に密着している状態を保持できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に用いる開閉手段では、筒状の型の下端側に設けられている取出口の下方に設けられ、冷却して得られた所定形状の食品ゲル成形体を筒状の型の下端側に設けられた取出口から取り出すことができる位置に移動していたシャッターを、往復動手段によって取出口を閉塞する方向にスライドしたとき、シャッターを押上手段によって押し上げて取出口に密着させる。
このため、型内にゾル溶液が充填されても、型の取出口からゾル溶液が洩れ出ることがない。
また、冷却して得られた所定形状の食品ゲル成形体を型の取出口から取り出す際には、押上部材の押し上げを解除することにより、往復動手段によってシャッターを食品ゲル成形体の取り出しに邪魔にならない位置に容易に且つ迅速にスライドできる。
かかる開閉手段を用いた食品ゲル成形体の製造装置では、型群を構成する型として、筒状の縦型を採用できる。このため、複数の縦型から成る型群の設置面積を、従来の複数の横型から成る型群よりも小面積にでき、製造装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明に係る食品ゲル成形体の製造装置に用いられる冷却槽40の概略を説明する概略図である。かかる冷却槽40には、複数の型42,42・・が一列に配列されて成る型群が設けられており、型42,42・・の中途部が冷却槽40を循環する冷媒に浸されている。
型42,42・・の各々は、横断面形状が矩形の筒状の型(以下、単に縦型42と称することがある)である。この冷却槽40の上端から露出する縦型42の先端側には、ゾル溶液が供給される供給口としての開口部が形成されており、縦型42の下端側には、縦型42内に形成された所定形状のゲル成形体を取り出す取出口が形成されている。この取出口は、開閉手段としてのシャッター44によって開閉される。
【0011】
図1に示すシャッター44は、図2(a)に示す様に、シリンダ装置62を駆動したとき、縦型42の取出口に対して往復動方向にスライドする往復動部材としてのスライド板64上に設けられている。
このシャッター44によって縦型42の取出口を閉塞する際には、シリンダ装置62を駆動してスライド板64を縦型42の取出口方向にスライドしつつ、シャッター44をバネ等の付勢部材66により縦型42の取出口方向に付勢して縦型42の取出口を密閉している。
一方、シャッター44によって密閉されている縦型42の取出口を開放する際には、図2(b)に示す様に、シリンダ装置62を駆動してスライド板64を縦型42の取出口から遠ざかる方向にスライドしつつ、付勢部材66の付勢力を弱めることによって、縦型42の取出口を開放する。
【0012】
図2に示す型開閉装置を図3によって更に詳細に説明する。シリンダ装置62によって縦型42に対して往復動方向にスライドする往復動部材としてのスライド板64の上方には、シャッター44が設けられている。このシャッター44の一端部に固設されたL字部材68とスライド板64の一端部近傍に固設されたL字部材70との間には、付勢部材としてのスプリング72によって弾発された状態で棒状部材74が掛け渡されている。このL字部材68,70に挿通された棒状部材74の両端部に形成されたフランジ部74a,74bは、スプリング72の付勢力によって長穴状の挿通孔が形成されたL字部材68,70に当接している。このフランジ部74a,74bは、L字部材68,70の長穴状の挿通孔から棒状部材74が抜け落ちない大きさに形成されている。
更に、スライド板64には、凸状部材76,76が固設されている。この凸状部材76には、縦型42の取出口方向に傾斜面76aが形成されており、その頂部には凹部76bが形成されている。
【0013】
また、シャッター44に一端部が固定された付勢部材としての板バネ66,66は、その各他端部が対応する凸状部材76,76の傾斜面76a,76aに接触し、シャッター44の縦型42側の面が水平面となるように付勢している。
更に、冷却槽40には、シャッター44の他端部が当接する第1ストッパ78が設けられており、スライド板64がスライドする基板80の第1ストッパ78側の端部には、スライド板64の他端部が当接する第2ストッパ82が形成されている。
尚、基板80の縦型42の取出口に対応する部分には、ゲル成形体が通過できる透孔84が形成されている。
【0014】
縦型42の取出口からゲル成形体を取り出す際には、図3(a)に示す様に、シャッター44を、縦型42の取出口よりも下方で且つ離れた位置とする。
かかる位置にあるシャッター44によって縦型42の取出口を閉塞する際には、シリンダ装置62(図2)を駆動し、スライド板64を縦型42の取出口方向にスライドする。
スライド板64が縦型42の取出口方向にスライドすると、シャッター44のL字部材68とスライド板64のL字部材70との間に、スプリング72によって弾発されて掛け渡されている棒状部材74によって、シャッター44も縦型42の取出口方向にスライドする。
【0015】
縦型42の取出口方向にスライドするシャッター44の他端部は、冷却槽40に設けられた第1ストッパ78に当接し、縦型42の取出口方向へのスライドは停止する。
一方、スライド板64は、駆動しているシリンダ装置62によって、図3(b)に示す様に、スライド板64の他端部が基板64に設けられた第2ストッパ82に当接するまでスライドする。
この様に、シャッター44のスライドが停止している間に、スライド板64はスライドするため、シャッター44に一端部が固定された板バネ66,66の他端部は、スライド板64に設けられた凸状部材76,76の傾斜面76a,76aに沿って頂部方向に移動しつつ、シャッター44を縦型42の取出口方向に押し上げる。
スライド板64の他端部が第2ストッパ82に当接してスライド板64のスライドが停止したとき、図3(b)に示す様に、板バネ66,66の他端部は、凸状部材76,76の頂部に形成された凹部76b,76bに収納され、シャッター44を縦型42の取出口に密着する。
【0016】
この状態でシリンダ装置62の駆動を停止しても、凸状部材76,76の頂部に形成された凹部76b,76bに収納された板バネ66,66の他端部は、凹部76b,76bから容易に抜け出ることを防止できる。このため、縦型42に充填されたゾル溶液に重量等の荷重がシャッター44に加えられても、依然としてシャッター44を縦型42の取出口に密着している状態を保持できる。
ここで、シャッター44のスライドが停止した後のスライド板64のスライドによって、シャッター44のL字部材68とスライド板64のL字部材70との間は、スプリング72を圧縮しつつ近接する。このため、L字部材68,70の間に掛け渡されている棒状部材74のフランジ部74a,74bは、図3(b)に示す様に、対応するL字部材68,70から離れる。
更に、シャッター44は、板バネ66,66による付勢力によって、縦型42の取出口方向の押し上げによって棒状部材74は、L字部材68,70に形成された長穴状の挿通孔に沿って傾斜する。
【0017】
図3(b)に示す様に、シャッター44によって閉塞されている縦型42の取出口を開放するには、シリンダ装置62(図2)を駆動し、スライド板64を縦型42の取出口から離れる方向にスライドする。
スライド板64がスライド開始した後、スライド板64のL字部材70が棒状部材74のフランジ部74aに当接するまでの間は、シャッター44は縦型42の取出口の直下に位置する。この間では、シャッター44に一端部が固定された板バネ66,66の各他端部は、スライド板64の凸状部材76,76の凹部76b,76bから引き出されて傾斜面76a,76aに沿って移動しつつ、シャッター44を縦型42の取出口から下方に引き離す。
次いで、スライド板64のL字部材70が棒状部材74のフランジ部74aに当接した後は、シャッター44はスライド板64のスライドに伴って移動し、図3(a)に示す様に、縦型42の取出口からのゲル成形体の取り出しに邪魔とならないように、シャッター44を縦型42の取出口よりも下方で且つ離れた位置にスライドさせてシリンダ装置62の駆動を停止する。
【0018】
図2及び図3に示す型開閉装置を備えた複数の縦型42,42・・から成る、図1に示す型群を用いた食品ゲル成形体の製造装置の一例を図4に示す。図1に示す寒天ゲルの自動製造装置では、攪拌機12が設けられた溶解タンク10に、所定量の寒天粉を供給する寒天粉供給手段としての寒天粉供給装置14と、所定量の熱湯を供給する熱湯供給手段としての熱湯供給装置16とが設けられている。
寒天粉供給装置14には、寒天粉が充填された箱体14aの底部近傍に、ギアモータ14bがスクリュ14cの一端部に設けられている。ギアモータ14bを駆動してスクリュ14cを回転し、箱体14a内の寒天粉を溶解タンク10に供給する。寒天粉の供給量は、ギアモータ14bの駆動時間によって調整する。
また、熱湯供給装置16には、ヒータ20やフロートスイッチ22が設けられ、80〜95℃の熱湯が一定量貯留される熱湯貯留槽18には、自動弁24を経由した水が浄化器26を通過して供給される。熱湯貯留槽18の熱湯は、自動弁28が途中に設けられた供給配管30を経由して溶解タンク10に供給される。
【0019】
溶解タンク10の底部からは、下方に向けて供給ノズル配管32が延出されており、供給ノズル配管32の途中には、自動弁34が設けられている。この供給ノズル配管32は、途中にゾル溶液としての寒天溶液の液溜ができないように、溶解タンク10の底部から略直線状に延出されている。
かかる溶解タンク10は、水平方向に設けられたスライダシリンダ装置38に垂直に設けられたシリンダ装置36の本体部に固着されている。このため、シリンダ装置36が、スライダシリンダ装置38によって左右方向に移動し、その際に、溶解タンク10及び供給ノズル配管32も左右方向に移動する。
このシリンダ装置36は、後述する型42内で冷却された寒天ゲルの押出手段を構成しており、その下端側には、シリンダ装置36内に挿入された一端部にピストンが設けられたロッドの先端側に鍔状部材33が設けられている。この鍔状部材33は、丸形状でも角形状であってもよく、シリンダ装置36によって昇降し、型42内に挿入されたとき、ゲル成形体としての寒天ゲルを取出口方向に押し出す。
尚、シリンダ装置36(溶解タンク10及び供給ノズル配管32)のホームポジションは、スライダシリンダ装置38の一端側に設定されている。
【0020】
かかる供給ノズル配管32の先端方向には、図1に示す冷却槽40が設けられており、冷却機45で冷却された冷媒が循環使用されている。
この冷却槽40に設けられた縦型42,42・・の各下端側には、縦型42内に形成された所定形状の寒天ゲルを取り出す取出口が形成されている。この取出口は、開閉手段としてのシャッター44によって開閉される。このシャッター44は、図2及び図3に示す機構によって駆動される。
冷却槽40の下方には、シャッター44が開放され、重力及びシリンダ装置36の鍔状部材33による押し出しによって縦型42の取出口から押し出された所定形状の寒天ゲル46を受けるすり鉢状のシュータ48が設けられている。このシュータ48の横断面形状は丸型であっても角型であってもよい。
かかるシュータ48には、シュータ48の内壁面を濡らして所定形状の寒天ゲル46の滑りを向上すべく、シュータ48の内壁面に向けて水を噴射する噴射ノズル50,50・・が設けられている。かかる噴射ノズル50,50・・には、自動弁55を経由して水が供給される。
シュータ48で受けた所定形状の寒天ゲル46は、シュータ48の中央部の出口から切断装置52に供給される。切断装置52では、シリンダ装置54によってサイコロ状カッタ56に寒天ゲル46を押し付けることによってサイコロ状に切断できる。また、シリンダ装置58によってところてんカッター60に寒天ゲル46を押し付けることによってところてん状に切断できる。
【0021】
図4に示す寒天ゲルの製造装置によって寒天ゲルを製造する際には、自動弁28を開き、ホームポジションに位置する溶解タンク10に熱湯を注入し、溶解タンク10を暖めた後、自動弁34を開いて溶解タンク10内の熱湯を供給ノズル配管32から排出し、供給ノズル配管32も暖める。供給ノズル配管32から排出された熱湯は、配管31を経由して系外に排出される。
次いで、自動弁28を開いて所定量の熱湯を溶解タンク10に供給すると共に、溶解タンク10内の攪拌機12を駆動しつつ、寒天粉供給装置14のギアモータ14bを駆動し、スクリュ14cによって箱体14a内の所定量の寒天粉を溶解タンク10に供給する。寒天粉の供給量はギアモータ14bの駆動時間で調整し、熱湯の供給量は自動弁28の開放時間で調整する。
尚、溶解タンク10内で寒天粉と熱湯とを所定時間攪拌して、寒天粉を熱湯に充分溶解した後、制御部からの信号によって攪拌機12を停止する。
【0022】
所定量の熱湯と寒天粉とを溶解タンク10に供給した後、攪拌機12による攪拌をしつつ、スライダシリンダ装置38内のシリンダ装置(図示せず)を駆動し、供給ノズル配管32の先端が寒天溶液を充填する縦型42の供給口に至るように、シリンダ装置36を移動する。
寒天溶液を充填する縦型42の上端の供給口に供給ノズル配管32の先端が到達したとき、スライダシリンダ装置38内のシリンダ装置の駆動を停止し、攪拌機12の攪拌が終了した後、自動弁34を開いて溶解タンク10内の寒天溶液を縦型42内に充填する。
縦型42への寒天溶液の充填が完了したとき、自動弁34を閉じる。このとき、溶解タンク10内の寒天溶液量の全量が縦型42に充填されるように、自動弁34を所定時間開くと、溶解タンク10及び供給ノズル配管32を空にでき、溶解タンク10や供給ノズル配管32に残留した寒天溶液のゲル化による閉塞を防止できる。
縦型42への寒天溶液の充填が完了し、自動弁34が閉じられたとき、スライダシリンダ装置38内のシリンダ装置を駆動して、シリンダ装置36はホームポジションに戻す。
【0023】
また、型群を構成する縦型42,42・・のうち、所定の縦型42から寒天ゲルを取り出す際には、シリンダ装置36の鍔状部材33が所定の縦型42の上方に位置するように、スライダシリンダ装置38内のシリンダ装置を駆動する。
更に、寒天ゲルを取り出す縦型42の取出口を閉塞しているシャッター44を、シリンダ装置62(図2)を駆動して移動し、縦型42の取出口を開放する。
次いで、シリンダ装置36を駆動し、寒天ゲルを取り出す縦型42の上方に到達した鍔状部材33を縦型42内に挿入して寒天ゲルを縦型42の取出口からシュータ48に押し出す。
この様に、縦型42の取出口から寒天ゲルを押し出した後、縦型42内の鍔状部材33を抜き出しているシリンダ装置36は、スライダシリンダ装置38によってホームポジションに戻る。
【0024】
ここで、型群を構成する縦型42,42・・を同一容量とし、溶解タンク10に貯留された寒天溶液の全量を、縦型42内に充填されるように、寒天粉供給装置14と熱湯供給装置16とから供給される寒天粉量と熱湯量とを制御し、且つ溶解タンク10から縦型42に寒天溶液を充填する際に、自動弁34を所定時間開いて溶解タンク10内を空とするように自動弁34を制御することが好ましい。寒天粉供給装置14、熱湯供給装置16及び自動弁34を制御することによって、溶解タンク10及び供給ノズル配管32内の寒天溶液を確実に残留することなく縦型42に充填できるからである。
この様に、溶解タンク10及び供給ノズル配管32内の寒天溶液を残留させることなく縦型42に充填することによって、縦型42,42・・の全てに寒天ゲルが充填され、溶解タンク10での寒天溶液の調製が休止されても、溶解タンク10及び供給ノズル配管32内に寒天溶液が残留してゲル化し、供給ノズル配管32等が閉塞する事態を防止できる。
したがって、図4に示す寒天ゲルの製造装置では、寒天溶液の調製が必要に応じて休止されていても、寒天溶液の調製が必要となったとき、直ちに寒天溶液の調製ができる。
尚、図4に示す寒天ゲルの製造装置では、先に寒天溶液を充填して寒天ゲルとした縦型42から取り出すため、先に寒天ゲルを取り出した縦型42から順次寒天溶液を充填する。
【0025】
図4に示す寒天ゲルの製造装置では、装置上方に設けられた溶解タンク10で調製された寒天溶液を、溶解タンク10の下方に設けられた縦型の型42に充填してゲル化する。このため、寒天溶液の送液ポンプ等を用いることを要せず、装置の小型化を図ることができる。
更に、供給ノズル配管32は、途中に寒天溶液の液溜ができないように、溶解タンク10の底部から略直線状に延出されている。このため、寒天溶液の調製が不要で休止していても、供給ノズル配管32中に残留した寒天溶液がゲル化して、供給ノズル配管32を閉塞することを防止できる結果、寒天溶液の調製が必要となったとき、直ちに寒天溶液を調製できる。
したがって、図4に示す寒天ゲルの製造装置は、レストラン等の厨房の片隅に載置できる程度に小型化でき、且つ寒天ゲルを用いた料理の注文がない場合には、休止状態を維持しても、寒天ゲルを用いた料理の注文があったとき、直ちに駆動状態とすることができ、新鮮な寒天ゲルを確実に調理に提供できる。
以上、図4では、寒天ゲルの製造装置ついて説明してきたが、ゼラチン等の他の食品ゲル成形体の製造装置にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る食品ゲル成形体の型開閉装置を用いた冷却槽を説明する概略図である。
【図2】図1に示すシャッター44の開閉状態を説明する概略図である。
【図3】図2に示すシャッター44の開閉機構を説明する部分断面図である。
【図4】本発明に係る食品ゲル成形体の製造装置の一例を説明する概略図である。
【図5】従来の食品ゲル成形体の製造装置の一例を説明する概略図である。
【図6】従来の食品ゲル成形体の製造装置の他の例を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0027】
10 溶解タンク
14 寒天粉供給装置
16 熱湯供給装置
28,34 自動弁
30 供給配管
32 供給ノズル配管
33 鍔状部材
36,54,58,62 シリンダ装置
38 スライダシリンダ装置
40 冷却槽
42 型
44 シャッター
46 寒天ゲル
48 シュータ
52 切断装置
64 スライド板
66 板バネ
68,70 L字部材
72 スプリング
74a,74b フランジ部
74 棒状部材
76 凸状部材
76a 傾斜面
76b 凹部
78 第1ストッパ
80 基板
82 第2ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品用のゾル溶液を貯留し冷却して得られた所定形状の食品ゲル成形体を取り出す取出口が下端側に設けられている筒状の型と、前記型の取出口の下方に設けられ、前記取出口を開閉するシャッターと、前記シャッターを型の取出口に対して往復動方向にスライドする往復動手段とが設けられ、
前記所定形状の食品ゲル成形体が前記型の取出口から取り出されるように、前記型の取出口を開放しているシャッターが、前記往復動手段によって型の取出口を閉塞する方向にスライドしたとき、前記シャッターを押し上げて前記取出口を密閉する押上手段が設けられていることを特徴とする食品ゲル成形体の型開閉装置。
【請求項2】
型の取出口の下方に設けられ、往復動手段によって前記取出口に対して往復動方向にスライドする往復動部材と、前記往復動部材と型の取出口との間に設けられ、前記往復動部材と共にスライドするシャッターと、前記往復動部材によってシャッターを前記型の取出口方向にスライドしたとき、前記シャッターを前記取出口方向に押し上げる押上手段とを具備する請求項1記載の食品ゲル成形体の型開閉装置。
【請求項3】
押上手段が、往復動部材上に設けられた凸状部材と、シャッターに一端部が固定され、他端部が前記凸状部材の頂部に乗り上げたとき、前記シャッターを型の取出口方向に付勢する付勢部材とから構成される請求項1又は請求項2記載の食品ゲル成形体の型開閉装置。
【請求項4】
凸状部材には、付勢部材の他端部が接触して頂部方向に移動できる傾斜面が形成されている請求項3記載の食品ゲル成形体の型開閉装置。
【請求項5】
凸状部材の頂部には、付勢部材の他端部を収納可能な凹部が形成されている請求項3又は請求項4記載の食品ゲル成形体の型開閉装置。
【請求項6】
所定量の食品用のゾル溶液が貯留された溶解タンクから前記ゾル溶液が供給される供給口と前記ゾル溶液が冷却されて得られた食品用のゲル成形体を取り出す取出口とが上下方向に形成された、複数個の筒状の型から構成される型群と、
前記取出口が開閉手段によって閉塞された型内に、前記供給口から供給されて充填されたゾル溶液を冷却して所定形状のゲル成形体とする冷却手段とを具備する食品ゲル成形体の製造装置であって、
前記開閉手段には、前記型の取出口の下方に設けられ、前記取出口を開閉するシャッターを、前記型の取出口に対して往復動方向にスライドする往復動手段と、
前記所定形状の食品ゲル成形体が前記型の取出口から取り出されるように、前記型の取出口を開放しているシャッターが、前記往復動手段によって型の取出口を閉塞する方向にスライドしたとき、前記シャッターを押し上げて前記取出口を密閉する押上手段とが設けられていることを特徴とする食品ゲル成形体の製造装置。
【請求項7】
型の取出口の下方に設けられ、往復動手段によって前記取出口に対して往復動方向にスライドする往復動部材と、前記往復動部材と型の取出口との間に設けられ、前記往復動部材と共にスライドするシャッターと、前記往復動部材によってシャッターを前記型の取出口方向にスライドしたとき、前記シャッターを前記取出口方向に押し上げる押上手段とを具備する請求項6記載の食品ゲル成形体の製造装置。
【請求項8】
押上手段が、往復動部材上に設けられた凸状部材と、シャッターに一端部が固定され、他端部が前記凸状部材の頂部に乗り上げたとき、前記シャッターを型の取出口方向に付勢する付勢部材とから構成される請求項6又は請求項7記載の食品ゲル成形体の製造装置。
【請求項9】
凸状部材には、付勢部材の他端部が接触して頂部方向に移動できる傾斜面が形成されている請求項8記載の食品ゲル成形体の製造装置。
【請求項10】
凸状部材の頂部には、付勢部材の他端部を収納可能な凹部が形成されている請求項8又は請求項9記載の食品ゲル成形体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−319112(P2007−319112A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154488(P2006−154488)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】