説明

食品保温容器

【課題】保温性を有する外容器と、該外容器の内側に出し入れ可能に収納される内容器と、該内容器の上端の開口部に取付け可能な蓋体とを有し、携帯用弁当箱における米飯を入れる容器として使用するのに好適な食品保温容器において、内容器なしでも使用できるようにすること。
【解決手段】内容器31の開口部32の高さが、内容器31を外容器21に収納したときに外容器21の開口部22の高さよりも低くなるように設定され、蓋体41には、内容器31の開口部32に取付ける下側取付け部43と、この下側取付け部43よりも上方に形成されて外容器21の開口部22に取付けられる上側取付け部44が形成された食品保温容器11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば携帯用弁当箱に用いるのに好適な食品保温容器に関する。
【背景技術】
【0002】
弁当箱に用いられる食品保温容器としては、下記特許文献1に開示されているように、有底円筒状をなすステンレス製の真空断熱保温容器(以下、この項において「保温容器」という。)と、保温容器の上端の開口部に取付けられる蓋体とからなるものがある。
【0003】
この食品容器は、米飯と惣菜とを別個の容器に分けて入れる弁当箱における米飯用の食品容器として使用されるものであって、米飯を冷めきらないうちに食せるようにすることができる。
【0004】
しかし、保温容器は、内部に収容された米飯の温度を保つ働きがあるものの、保温容器自体は、加熱でもして暖めておかない限り、一般に常温であって、収容する米飯よりも冷たいものである。
【0005】
このため、保温容器に米飯を入れると米飯の温度は一旦低下し、この状態から保温がなされることになるので、保温効果が持続しにくいという難点がある。
【0006】
そこで、保温効果をより長く持続させるために、電子レンジで加熱できる合成樹脂製の内容器を保温容器の内側に収納できるように備え、米飯を収容した内容器を電子レンジで加熱して、通常食する場合の温度よりも全体を高温にしてから保温容器に収容することが考えられる。
【0007】
このようなことを可能とする食品保温容器として、下記特許文献2に開示されたものがある。
【0008】
ところが、この食品保温容器は、保温容器の内側に収容される内容器のみに蓋体が取付けられるものであって、内容器なしでは使用できない。つまり、高い保温持続力を得るよりも米飯の量が少しでも多いほうがよいというような場合に、内容器を外して使用することが有効であるが、内容器を外してしまうと蓋体を取付けられないので、携帯用の食品保温容器として機能しない。
【0009】
【特許文献1】特開2002−360327号公報
【特許文献2】意匠登録第1211314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、内容器の有無に関わらず使用できるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのための手段は、保温性を有する外容器と、該外容器の内側に出し入れ可能に収納される内容器と、該内容器の上端の開口部に取付け可能な蓋体とを有した食品保温容器であって、上記外容器の上端に開口部が形成されるとともに、上記内容器の開口部の高さが、内容器を外容器に収納したときに外容器の開口部の高さよりも低くなるように設定され、上記蓋体における内容器の開口部に取付ける取付け部よりも上方に、外容器の開口部に取付けられる上側取付け部が形成された食品保温容器である。
【0012】
このような構成の食品保温容器では、蓋体の取付け部は、内容器の開口部に取付けられ、また蓋体の上側取付け部は外容器の開口部に取付けられる。つまり、1個の蓋体で外容器と内容器の2つの開口部を閉塞できる。
【発明の効果】
【0013】
上述の結果、内容器を収納しない外容器のみの場合でも蓋体を取付けることができ、食品保温容器として使用することが可能である。このため、使用者の意思に応じて柔軟な使用方法を採ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、食品保温容器11の断面図であり、この食品保温容器11は、図2に示したような携帯用弁当箱51の一部として使用されるものである。この携帯用弁当箱51は、米飯と惣菜とを別々の容器に分けて収納するものであって、食品保温容器11は、米飯を入れる容器として使用され、その形状は短円柱状である。携帯用弁当箱51を構成する他の食品容器は、平面視略半円形をなす2個の合成樹脂製の食品容器52で、容器本体52aと、この容器本体52aに気密性を得るようにして取付けられる蓋体52bとからなる。これらの食品容器52は重ねられ、食品保温容器11の隣に並べられて、適宜のケース53に箸箱54とともに収納される。
【0015】
このように使用される食品保温容器11は、金属製真空二重容器からなり断熱・保温機能を有する外容器21と、外容器21の内側に収納される合成樹脂製の内容器31と、これら外容器21と内容器31の上端の開口部22,32を閉塞する蓋体41とからなる。
【0016】
外容器21は、有底円筒状をなし、上述の如く上端に開口部22が形成され、この開口部22から内容器31を出し入れできる形状である(図3(a)参照)。
【0017】
内容器31も、有底円筒状をなし、上端に開口部32が形成されている。そして、内容器31の高さ、すなわち開口部32の高さは、内容器31を外容器21に収納したときに外容器21の開口部22の高さよりも低くなる高さに設定されている。また、開口部32の内周面の一部には、ねじ33が形成されている。
【0018】
蓋体41は、合成樹脂製で、断熱材(図示せず)が内蔵されている。蓋体41の上端部分は、外容器21よりも大径の円板状をなし、内容器31が収納された外容器21、内容器31が収納されない外容器21、あるいは内容器31に対して取付けられるように、円板状をなす天板部42の下面に、外容器21と内容器31の開口部22,32を塞ぐための部分が形成されている。
【0019】
開口部22,23を塞ぐための部分として、下側に位置する下側取付け部43と、それより上方に位置して下側取付け部43よりも大径の上側取付け部44とを有する。
【0020】
下側取付け部43は、内容器31の開口部32に取付けられる部分で、外周面には内容器31の内周面に内側から密着するように膨出部43aが形成されるとともに、外周面の一部には、上記内容器31に形成されたねじ33に嵌合するねじ溝43bが形成されている。このねじ溝43bとねじ33の嵌合により、蓋体41を引き上げたとき、内容器31を外容器から確実に取り出せるようになる。
【0021】
上側取付け部44は、上記のように下側取付け部43よりも大径であるが、外容器21の開口部22の内周面よりも小径の大きさに形成されている。そして、外周面に、弾性を有するシリコーンゴムなどからなるリング状のパッキン45が取付けられ、閉蓋時に気密状態が得られるように構成されている。パッキン45を有するので簡単に気密状態を得られるとともに、開蓋動作も閉蓋動作も容易である。そのうえ、内容器31を収納した場合に、内容器31の収納状態を安定させることもできる。
【0022】
また、下側取付け部43と上側取付け部44との間には、蓋体41を取付けたときに内容器31の上端に当接する水平な下側当接部46が形成され、気密性の高い取付け状態が得られるようにしている。下側当接部46の存在により位置規制がなされるので、安定した一定の取付け状態が容易に得られる。
【0023】
さらに、上記天板部42は、上側取付け部44よりも外側に張り出す鍔部47を有し、この鍔部47の下面は、外容器21の上端に当接する上側当接部47aを有する。上側当接部47aの存在により位置規制がなされるので、安定した一定の取付け状態が容易に得られ、上記のように下側当接部46も存在するので、当接する部分が上下内外で二重に得られるため、内容器31と外容器21との間の空間の気密状態を保持することに貢献し、保温性を高めることができる。
【0024】
また、天板部42の全周において上側当接部47aよりも外側に張り出す部分は、外容器21よりも外側に張り出す突出部47bである。突出部47bは、開蓋するときに指先が引っかかる部分となって、開蓋動作を容易にする部分でもあるので、全周ではなく一部分に形成されるもよいが、全周に形成されたものであると、どの部位でも開蓋のための端緒にできるのでよい。また、方向性がないので、ケース53内に収納したときに安定した収納状態が得るのに資する。
【0025】
以上のように構成された食品保温容器11では、蓋体41には、内容器31の開口部32に取付ける下側取付け部43と、外容器21の開口部22に取付ける上側取付け部44とが形成されているので、図3(a)に示したように、米飯Xを入れた内容器31を外容器21に収納し、内容器31と外容器21とに蓋体41を取付ける方法と、図3(b)に示したように、米飯Xを入れた外容器21に蓋体41を取付ける方法、さらには、図示しないが米飯Xを入れた内容器31に蓋体41を取付ける方法の3通りの方法で使用することができる。
【0026】
この結果、内容器31を収納しない外容器21のみの場合でも蓋体41を取付けることができ、食品保温容器として使用することが可能であって、使用者の意思に応じて自由に使用できる。
【0027】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の取付け部は、上記の下側取付け部43に対応するも、
この発明は、上記一形態の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
【0028】
たとえば、食品保温容器は、米飯を入れる容器としてではなく汁物を入れる容器として使用されるものであるもよい。
【0029】
また、蓋体の上側取付け部には、別体のパッキンを取付けるのではなく、外容器の上端縁に着脱可能に密着するシール構造を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】食品保温容器の断面図。
【図2】食品保温容器を備えた携帯用弁当箱の斜視図。
【図3】作用状態の説明図。
【符号の説明】
【0031】
11…食品保温容器
21…外容器
22…開口部
31…内容器
32…開口部
41…蓋体
43…下側取付け部
44…上側取付け部
45…パッキン
46…下側当接部
47…鍔部
47a…上側当接部
47b…突出部
51…携帯用弁当箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保温性を有する外容器と、該外容器の内側に出し入れ可能に収納される内容器と、該内容器の上端の開口部に取付け可能な蓋体とを有した食品保温容器であって、
上記外容器の上端に開口部が形成されるとともに、
上記内容器の開口部の高さが、内容器を外容器に収納したときに外容器の開口部の高さよりも低くなるように設定され、
上記蓋体における内容器の開口部に取付ける取付け部よりも上方に、外容器の開口部に取付けられる上側取付け部が形成された
食品保温容器。
【請求項2】
前記上側取付け部に、外容器の内周面に密着するパッキンが取付けられた
請求項1に記載の食品保温容器。
【請求項3】
前記上側取付け部の上方に、外側に張り出す鍔部が形成され、
該鍔部の下面に、蓋体を取付けたときに外容器の上端に当接する上側当接部が形成された
請求項1または請求項2に記載の食品保温容器。
【請求項4】
前記鍔部に、外容器よりも外側に突出する突出部が形成された
請求項3に記載の食品保温容器。
【請求項5】
前記取付け部と上側取付け部との間に、蓋体を取付けたときに内容器の上端に当接する下側当接部が形成された
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の食品保温容器。
【請求項6】
前記請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の食品保温容器を備えた
携帯用弁当箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−330574(P2007−330574A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166836(P2006−166836)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000112233)ピーコック魔法瓶工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】