説明

食品凍結方法および食品凍結装置

【課題】食品をアルコールに直に浸漬して冷凍することができ、しかも食品にアルコールを残存させることがなく、高品位の食品を得ることができ、また、急速凍結が可能であり、冷凍作業時間を大幅に短縮でき、エネルギ効率を向上させ、装置設置用の使用面積の削減することができる食品凍結方法および食品凍結装置を提供すること。
【解決手段】食品が直に浸漬される0℃以下の液状のアルコールAを貯留する凍結槽2と、そのアルコールA中より取出した食品に残存しているアルコールAを除去するアルコール除去手段7、10、11とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品凍結方法および食品凍結装置に係り、特にアルコールをブラインとして利用して食品を凍結させるのに好適な食品凍結方法および食品凍結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品の鮮度保持、長期保存化、出荷調整等のために食品を冷凍保存することが多用されている。
【0003】
この食品の冷凍には、エアーブラスト凍結方式、液化ガス凍結方式、ブライン凍結方式等の各種の方式が凍結目的に応じて選択して利用されている。
【0004】
また、ブライン凍結方式は、液状冷媒に食品を浸漬させて凍結させるものであり、気体状冷媒に食品を浸漬させて凍結させるエアーブラスト凍結方式に比較して冷凍効率が20倍にもなるために、近年多用されている。
【0005】
このブライン凍結方式においては、食品を真空パック若しくは脱気パックして、当該パックごとを液状冷媒中に浸漬させて凍結させる方式若しくは食品を直に液状冷媒中に浸漬させて凍結させる方式が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平07−107899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来においては、パン生地、うどん、餃子、コロッケ、豚カツ、ハンバーグ、すり身等の食品をブラスト凍結方式によって凍結しているが、これらの食品を前記公報のブライン凍結方法に従って凍結する場合には、各食品とアルコールとの接触を避けるために食品に真空パック若しくは脱気パックを施す必要があった。
【0008】
ところがこの場合には、パックを行なうための別作業が必要となり、パックの資源が無駄となり、パックのための作業時間が必要となったり、パックのためのコストが商品価格に反映されてコスト高となる等の不都合があった。
【0009】
また、パックを施すための不都合を解消するために前記公報に記載されているように食品を直にアルコール中に浸漬させることも考えられるが、アルコールから取出した後に食品にアルコールが付着しており、残存しているアルコールによって食品の品質劣化が発生し、商品価値が低下し、資源の無駄となる等の不都合を誘発することが考えられるものであった。
【0010】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、食品をアルコールに直に浸漬して凍結させることができ、しかも食品にアルコールを残存させることがなく、高品位の食品を得ることができ、また、急速凍結が可能であり、凍結作業時間を大幅に短縮でき、エネルギ効率を向上させ、装置設置用の使用面積を削減することができる食品凍結方法および食品凍結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は鋭意研究し、アルコール中に直に浸漬させて凍結させた食品を取出した後に、食品に付着しているアルコールを気化させたり水に溶出させることによりアルコールを強制的に除去することができることを発見して本発明を完成させたものである。
【0012】
このようにしてなされた本発明の食品凍結方法は、0℃以下の液状のアルコール中に食品を直に浸漬させて凍結させ、その後アルコール中より取出した食品に残存しているアルコールをアルコール除去手段により除去することをことを特徴とする。
【0013】
また、前記アルコール除去手段においては、食品に風を吹付けて少なくともアルコールを除去する除去方法と、食品をアルコール除去溶液中に直に浸漬させてアルコールをアルコール除去溶液中に溶出させて強制的に除去し、その後アルコール除去溶液中から取出す除去方法とを、単独または組み合わせて行うことを特徴とする。
【0014】
また、前記アルコール除去溶液は、水または食塩水とするとよい。
【0015】
また、前記食品を連続的に搬送させて、液体中(具体的にはアルコール中およびアルコール除去溶液中)への浸漬および取出しを行なうようにしてもよい。
【0016】
また、本発明の食品凍結装置においては、食品が直に浸漬される0℃以下の液状のアルコールを貯留する凍結槽と、そのアルコール中より取出した食品に残存しているアルコールを除去するアルコール除去手段とを有することを特徴とする。
【0017】
また、前記アルコール除去手段は、食品に風を吹付けて少なくともアルコールを強制的に除去する送風手段と、食品を直にアルコール除去溶液中に浸漬させてアルコールをアルコール除去溶液中に溶出させて強制的に除去するアルコール除去溶液を貯留するアルコール除去溶液貯留槽とを単独または組み合わせて有することを特徴とする。
【0018】
また、前記アルコール除去溶液は、水または食塩水とするとよい。
【0019】
また、前記食品を連続的に搬送させて、液体中への浸漬および取出しを行なう搬送手段を有するように形成するとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の食品凍結装置を本発明の食品凍結方法に応じて動作させることにより、アルコール中に直に浸漬させて凍結させた食品を取出した後に、食品に付着しているアルコールを風を吹き付けて除去したりアルコール除去溶液中に溶出させることによりアルコールを強制的に除去することができる。これにより食品をアルコールに直に浸漬して凍結させることができ、しかも食品にアルコールを残存させることがなく、高品位の食品を得ることができる。また、急速凍結が可能であり、凍結作業時間を大幅に短縮でき、エネルギ効率を向上させ、装置設置用の使用面積の削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の食品凍結方法および食品凍結装置の実施形態について説明する。
【0022】
本発明の食品凍結装置をその1実施形態を示している図1により説明する。
【0023】
本発明の食品凍結装置1は、ブラインとなる0℃以下の液状のアルコールAを貯留する凍結槽2を備えている。このアルコールAとしては、食品に用いるので、安全なものであればよく、例えばエタノールとするとよい。この凍結槽2内のアルコールAは凍結槽2、クリーニング槽3、熱交換槽4、凍結槽2の順に連通路5を介して図示しないポンプ等の搬送力によって循環供給されるように形成されている。アルコールAは、凍結槽2内において図示しない冷却手段によって食品を冷凍させるのに適した温度、例えば−5〜−35℃の低温に保持され、クリーニング槽3内において食品の浸漬により混入した食品の屑等の汚染物を除去するクリーニング作用を受け、熱交換槽4において凍結槽2内で食品との熱交換により昇温した温度を所定温度まで低下させるように熱交換される。凍結槽2の上流側(図1の左側)から下流側に亘って食品を搬送する無端コンベア状の搬送手段6が設置されている。具体的には、搬送手段6は、凍結槽2の上流側の大気中で載置された食品を凍結槽2内のアルコールA中に浸漬させ、その後に大気中に取出すように形成されており、更にその後流側においては、熱交換槽4の後流側に配置されているアルコール除去溶液貯留槽としての水槽7内のアルコール除去溶液としての水W中に食品を浸漬させた後に大気中に取出すように形成されている。この水槽7は食品が水W中に浸漬された際に付着しているアルコールAを水W中に溶出させて除去するアルコール除去手段として作用するものである。凍結槽2内の搬送手段6の上方には食品をアルコールA内に浸漬させるように上から押さえつつ搬送を補助する無端コンベア状の上部押え手段8が配置されており、その上部押え手段8の外側を蓋体9によって覆っている。搬送手段6の凍結槽2からの出口部分の近傍と、水槽7の後流側には、食品に風を吹付けて食品の表面に付着しているアルコールAを吹き飛ばしたり気化させて除去する他のアルコール除去手段としてのブロア10、11(送風手段)が配置されている。ブロア10は凍結槽2の後流側であるのでアルコールAを除去し、ブロア11は水槽7の後流側であるのでアルコールAと水Wとを除去する。
【0024】
次に、本実施形態の作用を本発明の食品凍結方法に基づいて説明する。
【0025】
準備作業として、凍結槽2内のアルコールAを図示しないポンプ等の搬送力によって凍結槽2、クリーニング槽3、熱交換槽4、凍結槽2の順に連通路5を介して循環供給させる。同時に、搬送手段6および上部押え手段8を駆動させる。
【0026】
続いて、ラップ等を施さない裸のままの食品を凍結槽2の上流側の搬送手段6上に載置する。この場合、食品の品温を予め0℃の近傍まで低下させておいてもよい。これにより食品は搬送手段6上を凍結槽2に向けて搬送され、当該凍結槽2内のアルコールA中に直に浸漬させられる。食品は搬送手段6と上部押え手段8とによってアルコールA中を搬送される間に直に接触しているブラインのアルコールAによって熱交換効率よく急速に冷却されて凍結させられる。その後、食品は搬送手段6によって凍結槽2の出口から大気中に取出される。この際に、ブロア10から搬送中の食品に風が吹付けられて、食品に付着しているアルコールAが強制的に吹き飛ばされたり気化させられて除去される。
【0027】
続いて、食品は搬送手段6により搬送されることにより水槽7内の水W中に浸漬させられる。この水W中において食品に付着しているアルコールAが存在する場合には、アルコールAが水W中に溶出して除去される。特に、アルコールAが水溶性である場合(例えば、エタノール)には、アルコールAの水W中への溶出が円滑に行なわれて、確実に除去される。その後、食品は搬送手段6によって水槽7から大気中に取出される。この際に、ブロア11から搬送中の食品に風が吹付けられて、食品に付着しているアルコールA若しくは水Wとが強制的に吹き飛ばされたり気化させられて除去される。
【0028】
このように本実施形態の食品凍結装置1を本発明の食品凍結方法に応じて動作させることにより、アルコールA中に直に浸漬させて凍結させた食品を取出した後に、食品に付着しているアルコールAを吹き飛ばしたり気化させたり水に溶出させることによりアルコールAを強制的に確実に除去することができる。これにより食品をアルコールAに直に浸漬して冷凍することができ、しかも食品にアルコールAを残存させることがなく、高品位の食品を得ることができる。また、急速凍結が可能であり、凍結作業時間を大幅に短縮でき、エネルギ効率を向上させ、装置設置用の使用面積の削減することができる。
【0029】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、アルコール除去溶液としては水に極少量の塩を混合させた薄い食塩水としたり、他の溶液を用いることができる。また、風若しくはアルコール除去溶液の単独で食品からアルコールを除去できる場合には、水槽7とブロア10、11とを単独で設置するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の食品凍結装置の1実施形態を示す断面図
【符号の説明】
【0031】
1 食品凍結装置
2 凍結槽
6 搬送手段
7 水槽(アルコール除去手段)
10、11 ブロア(アルコール除去手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0℃以下の液状のアルコール中に食品を直に浸漬させて凍結させ、その後アルコール中より取出した食品に残存しているアルコールをアルコール除去手段により除去することを特徴とする食品凍結方法。
【請求項2】
前記アルコール除去手段においては、食品に風を吹付けて少なくともアルコールを除去する除去方法と、食品をアルコール除去溶液中に直に浸漬させてアルコールをアルコール除去溶液中に溶出させて強制的に除去し、その後アルコール除去溶液中から取出す除去方法とを、単独または組み合わせて行うことを特徴とする請求項1に記載の食品凍結方法。
【請求項3】
前記アルコール除去溶液は、水または食塩水であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の食品凍結方法。
【請求項4】
前記食品を連続的に搬送させて、液体中への浸漬および取出しを行なうことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の食品凍結方法。
【請求項5】
食品が直に浸漬される0℃以下の液状のアルコールを貯留する凍結槽と、そのアルコール中より取出した食品に残存しているアルコールを除去するアルコール除去手段とを有することを特徴とする食品凍結装置。
【請求項6】
前記アルコール除去手段は、食品に風を吹付けて少なくともアルコールを強制的に除去する送風手段と、食品を直にアルコール除去溶液中に浸漬させてアルコールをアルコール除去溶液中に溶出させて強制的に除去するアルコール除去溶液を貯留するアルコール除去溶液貯留槽とを単独または組み合わせて有することを特徴とする請求項5に記載の食品凍結装置。
【請求項7】
前記アルコール除去溶液は、水または食塩水であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の食品凍結装置。
【請求項8】
前記食品を連続的に搬送させて、液体中への浸漬および取出しを行なう搬送手段を有することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の食品凍結装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−267688(P2007−267688A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98345(P2006−98345)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【出願人】(390026424)奥井電機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】