説明

食品包装用フィルム

【課題】作業性、加工性、生産性、ガスバリア性、低温ヒートシール性、安全性および機械的強度に優れ、従来使用されているセロファン/ワックスフィルムの代替フィルムとなり、溶融チーズ等の包装用フィルムとして好適に使用できる食品包装用フィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも熱融着層/接着層/ガスバリア性層/接着層/熱融着層の5層から成る食品包装用フィルムであって、上記の熱融着層がオレフィン系樹脂から成り且つ60℃以上90℃未満で融解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用フィルムに関し、詳しくは、作業性、加工性、生産性、ガスバリア性、低温ヒートシール性、安全性および機械的強度に優れ、従来使用されているセロファン/ワックスフィルム等の代替フィルムとなり、溶融チーズなどの包装用フィルムとして好適に使用できる食品包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスチーズを製造する際、通常、セロファンの表面にワックスを塗布したシートフィルムであるセロファン/ワックスフィルム(例えばニッカン工業社製「パラシール」(登録商標))を使用し、先ず、セロファン/ワックスフィルムで包装されたプロセスチーズのブロック(1〜10kg程度)の製造を行う。具体的には、ステンレス製のチーズ成形用型にセロファン/ワックスフィルムを箱状に折り畳んで装填し、その中に80〜90℃の溶融したチーズを一定量流し込み、気泡が抜ける様にセロファン/ワックスフィルムを折り込んで包装し、ステンレス製の蓋をして裏返す。チーズの熱と重量で溶けたワックスによってフィルムの内外面を溶着し、チーズは密閉包装される(例えば、特許文献1〜2参照)。冷蔵保管されて固まったプロセスチーズのブロック(ブロックチーズ)は、ステンレス製型から取り出され、更に所望の形状に加工され、最終的に上記のセロファン/ワックスフィルム包装は取り剥がされる。
【0003】
上記のセロファン/ワックスフィルムは、チーズの熱と重量でシールを行うことが出来るという利点を有するが、(1)セロファン/ワックスフィルムは強度が弱いために破損しやすく、そこから異物が混入しやすいこと、(2)セロファン/ワックスフィルムから溶け出したワックスが成形型に付着すると、ブロックチーズを成形型から取り出しにくく、作業性が悪いこと、(3)融解したワックスは無害なものの、チーズ表面に残存する可能性があり、好ましくないこと、(4)使用するセロファンとワックスとの関係より、青色印刷が出来ず、傷などを発見しにくいこと(通常、食品の包装では、異物混入防止に青色包装材が使用される)などの問題点を有する。
【0004】
セロファン/ワックスフィルムの代替品としては、セロファンの代りにプラスチックフィルムを使用して強度を高めたものも提案されているが(例えば、特許文献2参照)、密閉用にワックスを使用しているため、以前上記の(2)及び(3)の問題は解消されていない。
【0005】
また、ヒートシール性のフィルムを使用し、ヒートシールにより密閉を行う方法も提案されており(例えば、特許文献3参照)、スライスチーズ等の個別包装用に使用されている。しかしながら、この方法においては、ヒートシールを行うシールしろが必要となり、脱気を行いながらヒートシールを行わないと、チーズとフィルムとの間に空気が入り、カビの発生原因となる。そして、この様な脱気しながらの操作は、作業性において大きな障害となる。また、上記のシールしろの様な余分なフィルムを必要とするため、チーズが冷却固化した際に、チーズの表面に余分なフィルムの跡や皺が形成されるおそれがあり、内容物のロスや商品価値の低下を招く。したがって、この方法をブロックチーズの包装に応用することは困難である。
【0006】
更に、封筒貼り形態の融着方法による密封包装することが出来るブロックチーズ用の包装フィルムは知られていない。
【0007】
【特許文献1】実開平5−35786号公報
【特許文献2】特開平6−40485号公報
【特許文献3】特開平10−750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、溶融チーズの様な60度以上90℃未満の溶融食品を流し込み、別途のヒートシール操作を必要とせずに溶融食品の熱によりヒートシールされ、従来使用されているセロファン/ワックスフィルムの代替フィルムとなり、作業性、加工性、生産性、ガスバリア性、低温ヒートシール性、安全性および機械的強度に優れた食品包装用フィルムを提供することにある。特に、前述した従来のブロックチーズを包装するプラスチックフィルムの問題点である強度不足(フィルムを剥ぎ取るときに破片の一部が表面に残る問題)や接着層のデラミ(内容物の熱または油分による)、フィルム片の混入を防ぐための印刷の変わりに着色された樹脂を熱融着層に使用した場合には内容物の熱によって内容物に着色用顔料が移行付着する問題を解決し、また、コーティング工程や印刷工程によるコストアップを大幅に低減できる食品包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、少なくとも熱融着層/接着層/ガスバリア性層/接着層/熱融着層の5層から成り、熱融着層に特定の樹脂を使用したフィルムにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の要旨は、少なくとも熱融着層/接着層/ガスバリア性層/接着層/熱融着層の5層から成る食品包装用フィルムであって、上記の熱融着層がオレフィン系樹脂から成り且つ60℃以上90℃未満で融解することを特徴とする食品包装用フィルムに存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の食品包装用フィルムは、作業性、加工性、生産性、ガスバリア性、低温ヒートシール性、安全性および機械的強度に優れるため、従来使用されているセロファン/ワックスフィルムの代替フィルムとなり、溶融チーズ等の食品包装用フィルムとして好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の食品包装用フィルムは、少なくとも熱融着層/接着層/ガスバリア性層/接着層/熱融着層の5層から成る。上記の5層構造を有する場合は、フィルムの両面に熱融着層があるため、フィルムの表裏にかかわらず、種々の折畳みや密封形態が可能である。上記各層の間には、それぞれ任意に他の層を1層以上積層してもよい。
【0013】
上記ガスバリア性層としては、ガスバリア性を有する層であれば特に制限は無い。ガスバリア性層を構成する樹脂としては、ポリアミド(PA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。これらの中では、ポリアミド(PA)又はエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)が好ましく、特にポリアミド(PA、ナイロン)が好ましい。ポリアミドとしては、ナイロン4、6、7、8、11、12、6・6、6・10、6・11、6・12、6T、6/6・6、6/12、6/6T、6I/6T、MXD6等が挙げられる。
【0014】
溶融チーズを充填する際に、溶融チーズから発生する湯気(例えば50℃)によりフィルムが軟化して腰が弱くなり、フィルムが折れ込んでチーズの充填に支障が出る場合がある。そのため、充填する食品の湯気に影響を受けない剛性を有する材料が好ましい。更に、溶融チーズが充填され、フィルムが60℃以上に加熱された際に、十分にフィルムが軟化しないとフィルムの折目がつぶれにくくトンネル状となってしまう。すなわち、溶融チーズ充填前では、フィルムが倒れない腰が必要であり、溶融チーズ充填中では、チーズの湯気などの熱によって倒れない腰が必要であり、折込包装中では、完全に融着できる様にフィルムに柔軟性が必要となる。このような観点から、上記のポリアミドの中でも、耐熱剛性温度が適当であるMXD6が特に好ましい。
【0015】
ガスバリア性層の厚さとしては、通常2〜50μm、好ましくは4〜30μmである。ガスバリア性層の厚さが2μm未満では、フィルムの腰が弱く、チーズ包装用に使用した場合には、溶融したチーズを充填する際にフィルムが折れ込み、溶融したチーズを充填できなくなることがある。ガスバリア性層の厚さが50μmを超えると、フィルムの腰は強くなるが、溶融したチーズの上部のフィルムを折畳んで熱融着する際、熱が伝わりにくくなり、熱融着できない場合がある。なお、ガスバリア性層は、その70重量%以上が密度0.9150g/cm以上の樹脂から構成されることが好ましい。これにより、ガスバリア性層を着色した際に含有される顔料および/または染料などの低分子がフィルム表面に表出することを防ぐことが出来る。
【0016】
上記のガスバリア性層と熱融着層とを接着するために、本発明の食品包装用フィルムでは、接着層を必要とする。接着層は、好ましくは変性ポリオレフィン樹脂から成る接着性樹脂層である。変性ポリオレフィン樹脂は、エチレン成分および/またはプロピレン成分を主たる構成成分としたポリオレフィン樹脂にα,β不飽和カルボン酸またはその誘導体を共重合および/またはグラフト重合させて製造される。
【0017】
上記のポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸ナトリウム共重合体などが挙げられる。
【0018】
上記の共重合されるα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸亜鉛、酢酸ビニル、グリシジルメタクリレート等が挙げられ、分子鎖中に40モル%以内の範囲内で含まれる。共重合変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸ナトリウム共重合体などが挙げられる。
【0019】
上記のグラフトされるα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸あるいはこれらの酸無水物、または、これらの酸のエステル等が挙げられる。これらの変性用化合物の中では、特に、無水マレイン酸が好適である。また、グラフト量は、ポリオレフィン樹脂に対し0.01〜25重量%、好ましくは0.05〜1.5重量%の範囲から選択される。
【0020】
グラフト反応は、常法に従い、通常、ポリオレフィン樹脂とα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体とを樹脂温度150〜300℃で溶融混合することにより行われる。グラフト反応に際しては、反応を効率よく行なわせるために、α,α′−ビス−t−ブチルパーオキシ−p−ジイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物を0.001〜0.05重量%配合するのがよい。
【0021】
接着層の厚さは、通常2μm以上、好ましくは3〜20μmである。接着層の厚さが2μm未満の場合、ガスバリア性層と熱融着層との接着性が劣り、溶融チーズの熱により熱融着層が溶融した際に、熱融着層がガスバリア性層から剥れるおそれがある。接着層の厚さが厚過ぎても接着性に関する機能は飽和するため、コスト高となる。また接着層を構成する樹脂は、その70重量%以上が、密度0.9150g/cm以上の樹脂から構成されることが好ましい。これにより、ガスバリア性層を着色した際の顔料および/または染料などの低分子が接着層を通過してフィルム表面に表出することを防ぐことが出来る。
【0022】
熱融着層は、オレフィン系樹脂から成り、60℃以上90℃未満、好ましくは60〜80℃、更に好ましくは60〜70℃で融解し、食品包装用として使用が出来るものであれば、その構成材料は特に制限されない。上記の材料としては、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと略記することがある)、ポリプロピレン(PP)、メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン(以下、M−LLDPEと略記することがある)等が挙げられる。また、単独では融点が上記範囲よりも高い材料であっても、他の樹脂をブレンドすることにより融点を降下させ、上記範囲内とすることも出来る。
【0023】
熱融着層は、食品の熱によって融着し、密閉包装を行う働きの他に、熱融着層以外の層が着色されている場合、食品の熱により着色剤が食品面に移行することを防ぐ働きもある。すなわち、ガスバリア性層に着色フィルムを使用できるため、フィルムの表面に印刷を施してフィルムの破損を視認できるようにする様な工程は必要無く、大幅な後工程の削減とコストダウンが可能となる。
【0024】
上記の材料の中でも、低分子量成分が少ないためべたつきが少なく、臭いが少ない等の理由からM−LLDPEが好ましく、熱融着層が40〜95重量%のM−LLDPEから成ることが好ましい。M−LLDPEは、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用した気相法、液相法または溶液法によって得られる線状低密度ポリエチレン樹脂、すなわち、エチレンと炭素数3〜13のα−オレフィンとの共重合体(エチレン含有量:86〜99.5モル%)である。α―オレフィンの具体例としては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4―メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。M−LLDPEのメルトインデックス(MI)は通常0.1〜20g/min(230℃)である。M−LLDPEは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常1.5〜4.0、好ましくは2〜3.5で、シャープな分子量分布及びシャープな組成分布を有する均質なポリマーであることが好ましい。
【0025】
M−LLDPEの融点は、通常60〜70℃、好ましくは60〜65℃である。融点が60℃未満では、夏場保管中にフィルムが融着する可能性がある。融点が70℃を超えると、70〜90℃で融着させることが困難と成る場合がある。M−LLDPEは、上記の様にシャープな分子量分布及びシャープな組成分布を有する均質なポリマーであり、低分子量成分が少ないため、本発明のフィルムの融着温度において急激に融着する性質を有する。
【0026】
M−LLDPEの密度は、通常0.805以上0.905未満、好ましくは0.805〜0.880である。密度が0.905以上では、70〜90℃で融着させることが困難となる場合がある。また、密度が0.805未満のM−LLDPEも可能であるが入手が困難な場合もある。
【0027】
M−LLDPEのメルトフローレート(MFR)は、通常0.5〜15.0g/分、好ましくは0.8〜5.0g/分である。MFRが0.5g/分未満では押出機に負荷がかかりやすく、樹脂も発熱し易いためにフィッシュアイやゲルの発生しやすくなる場合があり、MFRが15.0g/分を超えると樹脂が金型に均等に回り込まず、部分的に出ない等の不具合が発生する場合がある。M−LLDPEの市販品としては、例えば、日本ポリエチレン株式会社製の「カーネル」(商品名)等が挙げられる。
【0028】
上述の様にLDPEやPPを熱融着層に使用することも出来る。90℃以上の融点を有するLDPEやPPでも、他の樹脂をブレンドしたり、低融点の同じ樹脂(例えばM−LLDPE等)をブレンドして融点を降下させ、上記範囲内とすることも出来る。特に熱融着層が、密度が0.905未満のM−LLDPE40〜75重量%と、密度が0.905以上、好ましくは0.915以上のLDPE25〜60重量%とから成ることが好ましい。
【0029】
上記(1)の態様において、密度が0.905以上の低密度ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと略記することがある)及び/又は直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと略記することがある)が挙げられる。LLDPEとは、チーグラー系触媒、クロム系触媒、メタロセン触媒などの各種の触媒を使用し、中低圧下または高圧下において、気相法、溶液法、懸濁重合法などの各種の重合法により製造され、エチレンを主成分とする密度0.905〜0.945g/cmのα−オレフィンとの共重合体である。上記のα−オレフィンとしてはC3〜C13のα−オレフィン、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。
【0030】
上記のLDPE及びLLDPEのメルトフローレート(JIS K7210 190℃ 荷重2.16kgf)は、通常0.05〜50g/10min、好ましくは0.1〜20g/minである。
【0031】
因みに、上記のLLDPEの具体例を商品名で示せば、ユニポール(UCC社)、ダウレックス(ダウケミカル)、スクレアー(デュポンカナダ社)、マーレックス(フィリップス社)、ネオゼツクス及びウルトゼツクス(三井石油化学)、日石リニレツクス(日本石油化学社)、スタミレツクス(DSM社)等が挙げられる。
【0032】
また、M−LLDPE、LDPE、PP等の樹脂に耐ブロッキング剤や滑剤を添加することにより融点を上記範囲内としながらフィルムの生産性を向上させることが出来る。耐ブロッキング剤や滑剤の添加量は、通常5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である。耐ブロッキング剤や滑剤の使用量が40重量%を超えると、フィルムの強度が弱くなり、融着しにくくなり、また、耐ブロッキング剤や滑剤がフィルムからチーズ表面に欠落しやすくなるので好ましくない。耐ブロッキング剤や滑剤の使用量が5重量%未満の場合、フィルムのブロッキングが生じやすくなる。
【0033】
耐ブロッキング剤や滑剤としては、食品包装用フィルムに使用するため、安全性の高いものであれば特に制限されず、公知の有機微粒子および/または無機微粒子を使用できる。有機微粒子から成る耐ブロッキング剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等の単独または共重合体などから成る架橋剤を含有していてもよい微粒子が挙げられる。一方、無機微粒子から成る耐ブロッキング剤としては、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス粉末などが挙げられる。上記の耐ブロッキング剤の平均粒径は通常1〜10μm程度である。また、無機微粒子は、予め樹脂に配合された組成物(マスターバッチ)を使用してもよい。
【0034】
熱融着層の厚さは、通常5〜50μm、好ましくは5〜30μmである。熱融着層の厚さが5μm未満の場合は熱融着部分の強度不足となる場合がある。熱融着層の厚さが50μmを超えても問題は無いが、必要以上に厚くすれば材料の無駄となり、コスト高となる。
【0035】
本発明の食品包装用フィルムの厚さは、通常40〜120μm、好ましくは60〜100μmである。フィルムの厚さが40μm未満では、フィルムの腰が弱く、チーズ包装用に使用した場合には、溶融したチーズを充填する際にフィルムが折れ込み、溶融したチーズを充填できなくなることがある。フィルムの厚さが120μmを超えると、フィルムの腰は強くなるが、溶融したチーズの上部のフィルムを折り畳んで熱融着する際、熱が伝わりにくくなり、熱融着できない場合がある。
【0036】
次に、本発明の食品包装用フィルムの製造方法について説明する。本発明の食品包装用フィルムは、共押出しインフレーション法にて円筒状の積層フイルムを得ることが好ましい。インフレーション法としては、環状ダイから押し出されたフイルムをダイの下方に導き、冷却空気を吹き付けて冷却した後、水によって更に急速冷却して巻き取る公知の方法(水冷法)を採用することが出来る。通常、環状ダイの下方に冷却空気を吹き付けるエアーリングを配置し、当該エアーリングの下方に安内板と巻取ロールとを順次に配置して成る設備を使用し、そして、環状ダイから複数種類の原料樹脂を実質的に延伸が起こらない様に共押し出しし、エアーリングの間を通過させて冷却した後、水によって急速冷却し、積層フイルムの円筒体を安内板を通して巻取ロールに供給して折り畳み、積層フイルムとして巻き取る。
【0037】
本発明の食品包装用フィルムは、溶融した食品の熱により融着密閉できる。すなわち、箱状に整えた本発明の食品包装用フィルムに、80〜90℃の溶融した食品を流し込み、フィルムを閉じると共に、その食品の熱によりフィルム表面が融着し、密閉される。本発明の食品包装用フィルムは、チーズの他、チョコレート、プリン、ジャム、マーマレード、ゼリー、寒天などの様な包装時に80〜90℃の温度で溶融状態(液状)であり、常温で固体である食品の包装に好適に使用できる。さらに、加工食品の密封包装にも好適に使用できる。例えば、箱状に整えた本発明の食品包装用フィルムに、80〜90℃に加熱された加工食品を流し込み、フィルムを閉じると共に、その食品の熱によりフィルム表面が融着し、密閉する。加工食品としてはシチュー、カレー、みそ汁等の固形物を含む液状食品の他、ステーキ、ハンバーグ、ソーセージ、ハム等の加工肉食品、中華惣菜、和食惣菜、洋食惣菜、米飯、粥、餅などが挙げられる。また、加熱殺菌、抽出などで80〜90℃の温度で処理されるものであれば、水、天然水、イオン水、スポーツドリンク、各種健康飲料、各種スープ、各種ジュース、ミルク、緑茶、紅茶、コーヒー、ココア、その他の各種清涼飲料水の様な飲料品の密封包装にも好適に使用でき、本発明の範囲とする。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下の諸例において、部および%は特に断らない限り重量基準である。以下の諸例において使用した材料は以下の通りである。
【0039】
ガスバリア性層用樹脂:
(A−1)6ナイロン(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバミッド 1010」)
【0040】
接着層用樹脂:
(B−1)接着性ポリエチレン(三菱化学社製「Modic−AP M552」)
【0041】
熱融着層用樹脂:
(C−1)ポリエチレン(M−LLDPE、密度:0.880g/cm、Mw/Mn=2.3、日本ポリエチレン社製「カーネル」)
【0042】
(C−2)オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(CBEC、密度:0.880g/cm、JSR社製「DYNARОN 6200P」)
【0043】
(C−3)エチレン−αオレフィン共重合体(密度:0.870g/cm、三井化学社製「TAFMER P0480」)
【0044】
(C−4)低密度ポリエチレン(LDPE密度:0.918g/cm、日本ポリエチレン社製「ノバテック LD LF240」)
【0045】
(C−5)ポリプロピレン(密度:0.900g/cm、日本ポリプロ社製「ノバテック PP FG3D」)
【0046】
(C−6)耐ブロッキング剤(平均粒径3μm、ゼオライト8%マスターバッチ、日本ポリエチレン社製「LX−ABI」)
【0047】
(C−7)耐ブロッキング剤(エルカ酸アミド2%マスターバッチ、日本ポリエチレン社製「ノバテック PE−AF」)
【0048】
また、食品包装用フィルムの評価は以下の方法で行った。
【0049】
(1)熱融着の評価:
各実施例および比較例で得られた5層積層フィルムに対し、温度55〜75℃、圧力1.45Kg/cmで30秒間のヒートシールを行った後、JIS Z 1707の測定方法に準じてシール強度を測定した。シール強度が3N/15mm巾以上の場合、融着しているとみなした。
【0050】
実施例1〜12:
ガスバリア性層樹脂として上記(A−1)、接着層用樹脂として上記(B−1)、熱融着層樹脂(耐ブロッキング剤)として表1及び2に示す樹脂を夫々使用し、5種5層インフレーション成形機(ダイ径;250mmφ、ダイリップ;2mm、ダイス温度;240℃)を使用して、熱融着層(外面)/接着層/ガスバリア性層/接着層/融着層(内面)から成る5層チューブ状積層フィルムを製造した。熱融着層の厚さは外面側が20μm、内面側が28μmで、接着層の厚さは夫々4μm、ガスバリア性層の厚さは24μmであり、フィルムの総厚みは80μmで、折り径は350mmであった。得られた食品包装用フィルムに対し、種々の温度で熱融着性を評価した。結果を表1および表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも熱融着層/接着層/ガスバリア性層/接着層/熱融着層の5層から成る食品包装用フィルムであって、上記の熱融着層がオレフィン系樹脂から成り且つ60℃以上90℃未満で融解することを特徴とする食品包装用フィルム。
【請求項2】
熱融着層の40〜100重量%がメタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレンから成る請求項1に記載の食品包装用フィルム。
【請求項3】
熱融着層が、密度が0.905未満のメタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン40〜75重量%と、密度が0.905以上の低密度ポリエチレン25〜60重量%とから成る請求項1に記載の食品包装用フィルム。
【請求項4】
熱融着層が、オレフィン系樹脂40〜95重量%と耐ブロッキング剤および/または滑剤5〜40重量%を含有する請求項1〜3の何れかに記載の食品包装用フィルム。
【請求項5】
メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレンの融点が60〜70℃である請求項1〜4の何れかに記載の食品包装用フィルム。
【請求項6】
ガスバリア性層が、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリカーボネートから成る群より選択される1種以上から成る請求項1〜5の何れかに記載の食品包装用フィルム。
【請求項7】
接着層が不飽和カルボン酸変性ポリオレフィンから成る請求項1〜6の何れかに記載の食品包装用フィルム。
【請求項8】
溶融チーズの包装用フィルムである請求項1〜7の何れかに記載の食品包装用フィルム。
【請求項9】
23℃で75%RHにおける酸素透過度が120cc/m・24h・atm以下である請求項1〜8の何れかに記載の食品包装用フィルム。
【請求項10】
着色フィルムである請求項1〜9の何れかに記載の食品包装用フィルム。

【公開番号】特開2008−100391(P2008−100391A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283226(P2006−283226)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(591200575)四国化工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】