説明

食品容器用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子

【課題】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の帯電を抑えることが出来、且つ予備発泡時のブロッキングを防ぐことができる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】平均粒子径300〜600μmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において帯電防止剤0.01〜1.0wt%の存在下において0.1〜1.0wt%のステアリン酸亜鉛で粒子表面を被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品容器用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、コーヒーカップやインスタント食品容器として好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性合成樹脂発泡粒子(例えば、発泡ポリスチレン粒子)はインスタント食品の包装容器などの食品容器として用いられてきた(特許文献1)。食品容器用途の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関しては成形品の印刷性の改善や内容物の漏れ防止性に関するもののみで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の帯電に関するものは見当たらない。
食品容器の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は発泡剤としてプロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素を含んでいる。またポリスチレン系樹脂粒子は摩擦により帯電しやすく、静電気により炭化水素に着火、爆発する危険性を含んでいる。
一方、発泡ポリスチレン粒子は発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡する際に予備発泡時の熱により樹脂が軟化し、互いに合着してしまういわゆるブロッキングするといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−114355
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、帯電を防止し安全を確保するとともに、ブロッキング防止性能を発揮する食品容器用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及びそれを予備発泡した食品容器用予備発泡粒子を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、上記の課題に鑑み、食品容器特有の用途として小粒子径の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において帯電防止性能を損ねることなく、十分なブロッキング防止性能を発揮する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の生産を鋭意研究した結果、平均粒子径300〜600μmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において帯電防止剤0.01〜1.0wt%の存在下において0.1〜1.0wt%のステアリン酸亜鉛が上記粒子表面に含まれ、帯電量の絶対値が5kV以下である食品容器用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とすることで、帯電を引き起こすことなく、また予備発泡時のブロッキングを防ぐことが出来ることを見出した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の帯電を引き起こすことなく、また予備発泡時のブロッキングを防ぐことが出来るため、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の取り扱いにおいての安全性が確保でき、また生産性を悪化させない発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(1)水性媒体、スチレン系単量体及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を懸濁重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造する懸濁重合法、(2)水性媒体及びポリスチレン系樹脂種粒子をオートクレーブ内に供給し、ポリスチレン系樹脂種粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を連続的に或いは断続的に供給して、ポリスチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体を吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造するシード重合法などが挙げられる。なお、ポリスチレン系樹脂種粒子は、上記(1)の懸濁重合法により製造し分級すればよい。
【0008】
本発明の製造方法において、ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどのスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体などが挙げられ、スチレンを50重量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0009】
又、上記ポリスチレン系樹脂としては、上記スチレン系単量体を主成分とする、上記スチレン系単量体と、このスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性単量体などが挙げられる。
【0010】
更に、ポリスチレン系樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂のスチレン換算重量平均分子量は、小さいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがある一方、大きいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、高発泡倍率のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができない虞があるので、20万〜50万が好ましく、24万〜40万がより好ましい。
【0011】
本発明で用いられるポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は300μm〜600μmのものが用いられる。平均粒子径が300μmよりも小さいと発泡剤の保持性が悪く、所望の発泡倍数まで発泡できないことがある。平均粒子径が600μmよりも大きいと発泡粒子の粒子径が大きくなるため、食品容器の金型への充填性が悪化し、また食品容器の印刷性を悪化させるため好ましくない。
【0012】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の帯電量は絶対値として5kV以下が好ましく、より好ましくは0.5kV以下である。帯電量の絶対値が5kVを超えると、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、フレキシブルコンテナからバンカーに投入する際や、バンカーから発泡機へ配管内を輸送するといった場合に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が激しく動くために帯電し、静電気のスパークが発生し、着火、爆発の危険性があるため好ましくない。
【0013】
なお、上記懸濁重合法及びシード重合法において用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、イソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3、3、5トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレートなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられ、これらは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0014】
そして、水性媒体中にポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性懸濁液は、上記懸濁重合法又はシード重合法による重合後の反応液を水性懸濁液として用いても、或いは、上記懸濁重合法又はシード重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を反応液から分離し、このポリスチレン系樹脂粒子を別途用意した水性媒体に懸濁させて水性懸濁液を形成してもよい。なお、水性媒体としては、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられ、水が好ましい。
【0015】
又、上記懸濁重合法又はシード重合法において、スチレン系単量体を重合させる際に、スチレン系単量体の液滴又はポリスチレン系樹脂種粒子の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよく、このような懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩などが挙げられ、難水溶性無機塩を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
【0016】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩などが挙げられ、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
【0017】
又、懸濁重合法又はシード重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を別途用意した水性媒体に懸濁させて水性懸濁液を形成する場合にも、ポリスチレン系樹脂粒子の分散性を安定させるために、上述の懸濁安定剤やアニオン界面活性剤を水性媒体中に添加してもよい。
【0018】
この際、難水溶性無機塩の水性媒体中への添加量は、少ないと、水性媒体中におけるポリスチレン系樹脂粒子の分散性が低下し、ポリスチレン系樹脂粒子が塊状になってしまうことがある一方、多いと、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性媒体の粘性が上昇して、ポリスチレン系樹脂粒子を水性媒体中に均一に分散させることができないことがあるので、水性媒体100重量部に対して0.5〜2重量部が好ましい。
【0019】
そして、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法では、上記水性懸濁液中に分散させたポリスチレン系樹脂粒子中に発泡剤を公知の要領で含浸させる。このような発泡剤としては、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であって、常圧でガス状もしくは液状の有機化合物が適しており、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテルなどの低沸点のエーテル化合物、炭酸ガス、窒素、アンモニアなどの無機ガスなどが挙げられ、沸点が−45〜40℃の炭化水素が好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタンがより好ましい。なお、発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0020】
なお、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、気泡調整剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、溶剤などの添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0021】
そして、得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に帯電防止剤とブロッキング防止剤を粒子表面に塗布する。塗布する方法としては攪拌機中で帯電防止剤とブロッキング防止剤とともに発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を攪拌するのが好ましく、攪拌機としてはタンブラーミキサー、レディゲミキサー等の攪拌機が用いられる。
【0022】
上記帯電防止剤としては、例えば、ヒドロキシアルキルアミン、ヒドロキシアルキルモノエーテルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系界面活性剤、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤等がある。ヒドロキシアルキルアミン、ヒドロキシアルキルモノエーテルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0023】
このような帯電防止剤の具体例としては,例えばN,N−ビス(ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、N−ヒドロキシエチル−N−(2−ヒドロキシテトラデシル)アミン、N−ヒドロキシエチル−N−(2−ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N−ヒドロキシエチル−N−(2−ヒドロキシオクタデシル)アミン、N−ヒドロキシプロピル−N−(2−ヒドロキシテトラデシル)アミン、N−ヒドロキシブチル−N−(2−ヒドロキシテトラデシル)アミン、N−ヒドロキシペンチル−N−(2−ヒドロキシテトラデシル)アミン、N−ヒドロキシペンチル−N−(2−ヒドロキシヘキサデシル)アミン、N−ヒドロキシペンチル−N−(2−ヒドロキシオクタデシル)アミン、N,N−ビス(2―ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N−ビス(2―ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N−ビス(2―ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N−ビス(2―ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等がある。また、これらの帯電防止剤は、単独または混合して使用することもできる。
【0024】
帯電防止剤の使用量としては0.01wt%〜1.0wt%が好ましく、その中でも0.03wt%〜0.1wt%が好ましい。すなわち帯電防止剤は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.01〜1.0重量部が好ましい範囲である。使用量が0.01wt%を下回ると、十分な帯電防止効果が得られないため、好ましくない。使用量が1.0wt%を超えると発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の輸送中に剥離し、配管の閉塞に要因となることがある。
【0025】
上記ブロッキング防止剤としてはステアリン酸亜鉛が用いられる。ステアリン酸亜鉛の使用量は0.1wt%〜1.0wt%が好ましく、その中でも0.4wt%〜0.8wt%がより好ましい。すなわちブロッキング防止剤は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.1〜1.0重量部が好ましい範囲である。使用量が0.1wt%よりも少ないとブロッキング防止効果が十分でなく、1.0wt%よりも多いと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子表面から脱落し、輸送配管内に付着し配管の閉塞の要因となる場合や、成形時の融着を阻害することがあるため好ましくない。
【0026】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる、食品容器用発泡ポリスチレン粒子は0.05g/cm〜0.2g/cmの範囲の嵩密度を持つことが好ましい。嵩密度が0.2g/cmを上回ると生産性が悪化する。嵩密度が0.05g/cmを下回ると、成形品強度が低下するため好ましくない。
【0027】
また、予備発泡粒子の平均粒子径は0.5〜1.5mmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2mmの範囲にあることである。発泡粒子の平均粒子径が0.5mmを下回ると上記の嵩密度を満たすような発泡粒子を安定的に生産することが困難となり、1.5mmを上回るような発泡粒子は成形機への充填性の点で好ましくない。
【0028】
またこの予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体であって平均弦長が20μm〜200μmである食品容器とすれば、成型品の強度、外観ともに良好である。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
内容積6350リットルの攪拌機付オートクレーブ内に、第三リン酸カルシウム(大平化学社製)12.7kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.254kg、ベンゾイルパーオキサイド(純度75重量%)8.89kg、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート1.91kg、イオン交換水2540kg及びスチレン単量体2540kgを供給した後、攪拌羽を42rpmの回転速度にて回転させて攪拌して水性懸濁液を形成した。
次に、攪拌羽を42rpmで撹拌しながらオートクレーブ内の温度を90℃まで昇温して90℃にて6時間に亘って保持し、さらにオートクレーブ内の温度を120℃まで昇温し、120℃で2時間に亘って保持することによって、スチレン単量体を懸濁重合した。

しかる後、オートクレーブ内の温度を25℃まで冷却してオートクレーブ内からポリスチレン粒子を取り出して洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し行い、乾燥工程を経た後、ポリスチレン粒子を分級して、平均粒子径が400μmで且つ重量平均分子量が30万のポリスチレン粒子を得た。
【0030】
別の内容積6350リットルの攪拌機付オートクレーブ内に、ピロリン酸マグネシウム6.35kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.30kg、イオン交換水3080kg及びスチレン単量体2000kgを供給した後、攪拌羽を36rpmの回転速度にて回転させて、水中にポリスチレン粒子を均一に分散させた。
【0031】
次いでオートクレーブを密閉し、90℃まで昇温した。しかる後、発泡剤としてプロパン54.0kgとペンタン(イソペンタン/ノルマルペンタン(重量比)=20/80)
170kgとを窒素加圧してオートクレーブ内に30分間かけて圧入し、その状態で3時間に亘って保持した。
続いて、オートクレーブ内の温度を25℃まで冷却し、オートクレーブ内から発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を取り出して洗浄、脱水を複数回に亘って繰り返し行い、乾燥行程を経た後、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を分級して平均粒子径が400μmで且つ重量平均分子量が30万の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0032】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子500kg、並びに、帯電防止剤としてポリエチレングリコール250g、ブロッキング防止剤としてステアリン酸亜鉛2.5kgをタンブラーミキサーに供給し、30分間に亘って撹拌して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に前記表面処理剤を被覆した。
【0033】
次いで、表面処理の完了した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子500kgをポリエチレン製の内袋を備えた、ポリ酢酸ビニル製のフレキシブルコンテナに充填し、密閉した後、15℃の保冷庫にて48時間に亘って保管後、特許庁公報
57(1982)−133〔3347〕周知・慣用技術集(発泡成形)第39頁に記載の発泡層上面検出器までの容積量が350リットルである円筒型バッチ式加圧予備発泡機に1ショット当たり発泡性ポリスチレン系樹脂粒子8.3kgを供給して水蒸気により4分間加熱し嵩密度0.100g/cmのポリスチレン系予備発泡粒子を得た。予備発泡粒子の平均粒子径は0.8mmであった。
【0034】
実施例2
ステアリン酸亜鉛の使用量を4.0kgとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0035】
実施例3
ステアリン酸亜鉛の使用量を1.0kgとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0036】
実施例4
ポリエチレングリコールの使用量を100gとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0037】
比較例1
ステアリン酸亜鉛の使用量を0.4kgとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。予備発泡の段階において発泡粒子が結合してしまうブロッキングが生じた。
【0038】
比較例2
ステアリン酸亜鉛の使用量を6.0kgとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。予備発泡機への送粒ライン内にステアリン酸亜鉛の堆積が確認された。
【0039】
比較例3
ポリエチレングリコールの使用量を20gとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。帯電量が−5.8kVとなり、帯電量の抑制効果が見られなかった。
【0040】
比較例4
ステアリン酸亜鉛をステアリン酸マグネシウムとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。帯電量が−6.8kVとなり、帯電量の抑制効果が見られなかった。
【0041】
比較例5
ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径を200μmとしたこと以外は実施例1と同様にした。予備発泡に段階で発泡性が低く、所望の密度の発泡粒子を得ることが出来なかった。
【0042】
比較例6
ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径を800μmとしたこと以外は実施例1と同様にした。嵩密度0.100g/cmのポリスチレン系予備発泡粒子を得たが、予備発泡粒子の平均粒子径は1.8mmであった。この予備発泡粒子の平均粒子径では食品容器特有の粒子径の範囲を超えて成形された。
【0043】
表1に本実施例及び比較例の評価を示している。本実施例は比較例3、比較例4に比して帯電量が充分に抑えられ、また本実施例は比較例1に比して発泡時のブロッキングを防ぐことができる。また本実施例は比較例2に比して配管内での堆積が防止されると共に、本実施例は比較例5に比して好ましい発泡性を示している。また本実施例は比較例6に比して平均粒子径も数値範囲内に入っている。
【0044】
【表1】

【0045】
[測定方法]
〔帯電量測定〕
保冷庫にて48時間に亘って保管後、内袋を開封し、静電気測定器(シムコジャパン株式会社製 FMX−003)にて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の帯電量を測定した。帯電量の絶対値が0.5kV以下の場合を◎、5kVの以下である場合を○、5kVを超える場合を×と評価した。
【0046】
〔予備発泡粒子の結合〕
上述の要領で得られたポリスチレン系予備発泡粒子をW1g用意し、このポリスチレン予備発泡粒子を目開きが0.5cmの篩でふるい、篩上に残ったポリスチレン予備発泡粒子の重量W2を測定して、下記式に基づいて予備発泡粒子の結合度を算出し、その結果を示した。なお、1重量%以下を「○」、1重量%を超えるものを「×」と評価した。この評価をブロッキング量として示す。
予備発泡粒子の結合度(重量%)=100×W2/W1
【0047】
〔予備発泡粒子の嵩密度〕
先ず、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積VcmをJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいてポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の嵩密度を測定する。
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0048】
〔発泡性の評価〕
次に、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性の評価は、以下の方法で行うことができる。すなわち、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡槽中でゲージ圧0.7kgf/cmの蒸気にて加熱発泡させる。このとき、加熱時間を1、3、4、5分と変化させ、発泡粒子に収縮が発生する直前の嵩密度を測定し、最高嵩密度とした。最高嵩密度が0.1g/cmを超えたものを○、超えなかったものを×とした。これは0.1g/cmまで発泡しない粒子では、予備発泡時の密度を0.2g/cmとしても、成形時に2次発泡力が足らず、成形が出来ないためである。
【0049】
〔ポリスチレン系樹脂粒子及び予備発泡粒子の平均粒子径の測定方法〕
本実施例において平均粒子径とはD50で表現される値である。具体的には、ふるい目開き4.00mm、目開き3.35mm、目開き2.80mm、目開き2.36mm、目開き2.00mm、目開き1.70mm、目開き1.40mm、目開き1.18mm、目開き1.00mm、目開き0.85mm、目開き0.71mm、目開き0.60mm、目開き0.50mm、目開き0.425mm、目開き0.355mm、目開き0.300mm、目開き0.250mm、目開き0.212mm、目開き0.180mmのJIS標準ふるいで分級し、その結果から得られた累積重量分布曲線を元にして累積重量が50%となる粒子径(メディアン径)を本実施例における平均粒子径と称する。
発泡粒子の場合、平均粒子径が0.5mm〜1.5mmの範囲内にある場合は「○」、同範囲外にある場合は「×」と評価した。
【0050】
〔配管内での堆積〕
前記円筒型バッチ式加圧予備発泡機への送粒ライン内に堆積が確認されなかったものを○、同堆積が確認されたものを×と評価した。
【0051】
〔平均弦長〕
発泡成形体の平均弦長は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定されたものをいう。具体的には、発泡成形体を略二等分となるように切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製 商品名「S−3000N」)を用いて100倍に拡大して撮影する。撮影した画像をA4用紙に印刷し、任意の箇所に長さ60mmの直線を一本描く、この直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出する。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が気泡を貫通することもなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。更に、撮影した画像の任意の5箇所において上述と同様の要領で平均弦長を算出し、これらの平均弦長の相加平均値を発泡成形体の平均弦長とする。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は食品容器用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、同発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子、その予備発泡粒子を成形してなる食品容器に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径300〜600μmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において帯電防止剤0.01〜1.0wt%の存在下において0.1〜1.0wt%のステアリン酸亜鉛が上記粒子表面に含まれ、帯電量の絶対値が5kV以下であることを特徴とする食品容器用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
帯電防止剤がノニオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の食品容器用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、
その予備発泡粒子が0.05g/cm〜0.2g/cmの範囲の嵩密度を持ち、
平均粒子径0.5〜1.5μmの食品容器用予備発泡粒子。
【請求項4】
請求項3記載の予備発泡粒子を型内に充填して発泡させて得られた発泡成形体であって平均弦長が20〜200μmであることを特徴とする食品容器。

【公開番号】特開2011−74238(P2011−74238A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227583(P2009−227583)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】