説明

食品焼成装置

【課題】焼成板の軽量化に貢献し得て、メンテナンスの容易性を確保することができる食品焼成装置を提供する。
【解決手段】上方に開口部が形成され且つ内部に加熱ユニットが設置された機枠と、前記加熱ユニットにより背面側が加熱され且つ表面に一つ以上の食品焼成凹部が形成された一対の焼成板と、前記一対の焼成板を回動可能且つ前記食品焼成凹部が略一致した状態で重合可能に連結支持するように前記機枠に設けられた支持部と、を備え、前記焼成板は、軽量で耐熱性の高い金属からなり且つ前記食品焼成凹部を形成した調理板と、該調理板の背面側に位置して蓄熱性の高い金属からなる加熱板と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品としてのたい焼を焼成するたい焼き機等のように、表面に一つ以上の食品焼成凹部が形成されると共に背面から加熱される一対の焼成板を備えた食品焼成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品としてのたい焼を焼成するたい焼き機等のように、表面に一つ以上の食品焼成凹部が形成されると共に背面から加熱される一対の焼成板を備えており、各食品焼成凹部内に液体状の原料を充填し、背面加熱によってある程度の加熱調理を行った状態で一対の焼成板の各食品焼成凹部が合わさるように一対の焼成板を重合させることで一つの食品(たい焼き)が焼きあがる食品焼成装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
この際、焼成板の表面には、テフロン(登録商標)加工等の表面処理加工が施されており、加熱加工中の食品の焦げ付き等が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−102624号公報
【特許文献2】特開2006−102009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の如く構成された食品焼成装置にあっては、各焼成板の表面処理加工等をメンテナンスする際に焼成板を機枠から取り外すと重量物であることから、メンテナンス作業に手間を要するという問題が生じていた。
【0006】
特に、被加工物(食品)がたい焼き等の比較的大きいものの場合、焼成板も大きくなる。また、被加工物が小さい場合であっても、複数列に食品焼成凹部が形成されるため、結果的に焼成板は比較的大型となる。
【0007】
したがって、両面を均等に焼くために、鉄板や真鍮等の比重の重い材質をそのまま使用すると、かなりの重量物となり、メンテナンス作業の手間は相当のものとなってしまう。
また、従来、作業性の向上を図ることを目的として、軽量のアルミ鋳物板で焼成板を製作することも行われているが、熱が冷め易いと共に食品焼成凹部を密閉状態に保つことが難しいため、たい焼き等の被加工物の表面がパリパリになるが、芯まで火が通らず、内部が柔らか過ぎるといった品質上の問題も生じていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、焼成板の軽量化に貢献し得て、メンテナンスの容易性を確保することができる食品焼成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するため、本発明の食品焼成装置は、上方に開口部が形成され且つ内部に加熱ユニットが設置された機枠と、前記加熱ユニットにより背面側が加熱され且つ表面に一つ以上の食品焼成凹部が形成された一対の焼成板と、前記一対の焼成板を回動可能且つ前記食品焼成凹部が略一致した状態で重合可能に連結支持するように前記機枠に設けられた支持部と、を備えた食品焼成装置において、前記焼成板は、軽量で耐熱性の高い金属からなり且つ前記食品焼成凹部を形成した調理板と、該調理板の背面側に位置して蓄熱性の高い金属からなる加熱板と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この際、前記調理板の背面側に前記加熱板が埋設されていてもよく、或いは、前記調理板の背面側に前記加熱板が畳重されていてもよく、或いは、前記加熱板の表面側に前記調理板が埋設されていてもよく、或いは、前記調理板の内部に前記加熱板が埋め込まれていてもよい。
また、前記調理板と前記加熱板との間には、少なくとも前記食品焼成凹部の背面側に熱伝導率の高い金属からなる伝熱板が設けられているのが望ましい。
【0011】
さらに、前記加熱板の背面には、少なくとも前記食品焼成凹部の背面側に対応して膨出した蓄熱部が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の食品焼成装置は、焼成板の軽量化に貢献し得て、メンテナンスの容易性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る食品焼成装置の外観斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る食品焼成装置における要部の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る食品焼成装置における要部の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る食品焼成装置を示し、(A)は例1における要部の拡大断面図、(B)は例2における要部の拡大断面図、(C)は例3における要部の拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る食品焼成装置における食品含水率の一例の図表である。
【図6】本発明の一実施形態に係る食品焼成装置を示し、(A)は例4における要部の拡大断面図、(B)は例5における要部の拡大断面図、(C)は例6における要部の拡大断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る食品焼成装置を示し、(A)は例7における要部の拡大断面図、(B)は例8における要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態に係る食品焼成装置をたい焼き機に適用し、図面を参照して説明する。尚、本発明の一実施形態に係る食品焼成装置は、たい焼き機に限定されるものではなく、他の焼成食品形状(例えば、大判焼き等)に適合した食品焼成凹部を形成することによって、その食品に応じた食品焼成装置とすることができる。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る食品焼成装置の外観斜視図、図2は本発明の一実施形態に係る食品焼成装置における要部の平面図、図3は本発明の一実施形態に係る食品焼成装置における要部の斜視図、図4は本発明の一実施形態に係る食品焼成装置を示し、図4(A)は例1における要部の拡大断面図、図4(B)は例2における要部の拡大断面図、図4(C)は例3における要部の拡大断面図、図5は本発明の一実施形態に係る食品焼成装置における食品含水率の一例の図表、図6は本発明の一実施形態に係る食品焼成装置を示し、図6(A)は例4における要部の拡大断面図、図6(B)は例5における要部の拡大断面図、図6(C)は例6における要部の拡大断面図、図7は本発明の一実施形態に係る食品焼成装置を示し、図7(A)は例7における要部の拡大断面図、図7(B)は例8における要部の拡大断面図である。
【0016】
図1乃至図3に示すように、本発明の食品焼成装置11は、上方に開口部12aが形成された機枠12と、機枠12の内部に配置された加熱ユニットとしてのガスバーナ13と、表面に一つ以上の食品焼成凹部14が形成された一対二組の焼成板15,16及び焼成板17,18と、各焼成板15〜18を回動可能且つ食品焼成凹部14が略一致した状態で一対単位の焼成板15,16及び焼成板17,18で重合可能に連結支持するように機枠12に設けられた支持部19と、を備えている。
【0017】
機枠12は、調理者が立つ側を正面とした場合の左右壁面及び背壁面を構成するメインパネル20と、正面側に位置して各組の焼成板15,16及び焼成板17,18の加熱温度調節を行うガス調節コック23,24,25,26とを設けたフロントパネル27と、フロントパネル27に設けられて調理材料がガス調節コック23〜26に滴下するのを防止する庇28と、メインパネル20の上端に固定された矩形枠形状のフレーム29と、を備えている。
【0018】
ガスバーナ13は、各焼成板15〜18の下方に配置され、各焼成板15〜18の裏面側を加熱する。また、ガス調節コック23,24,25,26のレベルに応じて火力調節される。尚、加熱ユニットとしてのガスバーナ13は、電熱式のプレートや加熱コイル等でも良い。
【0019】
各焼成板15〜18は、食品焼成用凹部14を形成した軽量で耐熱性の高い金属(例えば、アルミやステンレス)からなる調理板30と、調理板30の背面側に位置して蓄熱性の高い金属(例えば、鉄・銅・真鍮)からなる加熱板31と、を備えている。この際、調理板30は、食品焼成用凹部14を一体に形成するため、鋳型による形成が可能であることが好ましい。また、加熱板31は調理板30に対してボルト等の締結具(図示せず)によって着脱可能に取り付けられているのが好ましい。
【0020】
この際、調理板30と加熱板31とは、例えば、図4(A)に示すように、調理板30の背面側に加熱板31を埋設したもの(例1)、図4(B)に示すように、調理板30と加熱板31とを畳重したもの(例2)、図4(C)に示すように、加熱板31に調理板30を埋設したもの(例3)、或いは、特に図示しないが、調理板30の内部に加熱板31を埋め込んだものなど、その構造は特に限定されるものではない。
【0021】
尚、調理板30と加熱板31とは、加熱ユニットがガスバーナ13の場合には、アルミと鉄、電熱式の場合にはアルミと真鍮、といったように加熱方式によって選択することも可能である。また、調理板30と加熱板31との大きさや厚さ等は、異なる種類の加工食品(例えば、たい焼き、チーズドック、たこ焼き(両面焼)等)によって適宜変更可能である。また、同じ種類の加工食品であっても、含水率(例えば、小麦粉と水との配合)に応じて適宜変更可能である。この際、図5に示すように、例えば、含水率の高い厚皮のたい焼きと含水率の低い薄皮のたい焼きとで調理板30を共通とし且つ加熱板31の厚さを変更することも可能である。
【0022】
ところで、図4においては、調理板30と加熱板31との2枚を用いたものを開示したが、加工食品種類等に応じて、例えば、図6(A)に示すように、調理板30の背面側に加熱板31を埋設すると共に調理板30と加熱板31との間に、少なくとも食品焼成凹部14の背面側に熱伝導率の高い金属(例えば、銅)からなる伝熱板32を配置しても良い(例4)。この際、図4(B),(C)と同様の構成においても、図6(B),(C)に示すように、調理板30と加熱板31との間に、少なくとも食品焼成凹部14の背面側に熱伝導率の高い金属(例えば、銅)からなる伝熱板32を配置しても良い(例5,6)。
【0023】
また、図7(A)に示すように、加熱板31の少なくとも食品焼成凹部14の背面側に対応した位置に膨出した蓄熱部33を一体に形成したものを適用することも可能である(例7)。さらに、図7(B)に示すように、調理板30を薄板(アルミ板等)のプレス加工により食品焼成凹部14を形成した場合においても、加熱板31の少なくとも食品焼成凹部14の背面側に対応した位置に膨出した蓄熱部33を一体に形成したものを適用することにより、蓄熱性を高めることができる(例8)。尚、これら調理板30、加熱板31、伝熱板32、蓄熱部33は、調理前に材質や板厚の異なるものに交換することにより、同じ店舗で異なった種類の加工食品(例えば、薄皮と厚皮のたい焼き、最中、ワッフル、チーズドック、たこ焼き(両面焼き)、イカ焼き)の焼成が可能となると共に、表面だけをパリパリにして内部を柔らかくする等、加工食品の食感を微妙に調整することも可能となる。
【0024】
さらに、加熱板31の表面に、防錆用の酸化防止膜を形成したり、伝熱板32と同様の効果を得るために銅メッキ処理等を施すことも可能である。
【0025】
このように、従来と同様の大きさや均一な焼き加工効果を維持しつつ、焼成板15〜18の軽量化に貢献することが可能となる。また、加熱板31を蓄熱性の高い金属から構成することにより、焼成板15,16及び焼成板17,18を重合させた際に、空いているガスバーナ13を消火したままとしても、折り返した焼成板15,16及び焼成板17,18の一方が途中で冷めてしまって再加熱する必要がなく、省エネ化に貢献することができ、調理場の高温化を抑制することもできる。
【0026】
調理板30の表面には、例えば、テフロン(登録商標)加工等の表面処理加工が施されており、加熱加工中の食品の焦げ付き等が抑制されている。また、各焼成板15〜18には、その正面側に把手34が設けられており、この把手34を操作して支持部19を回動
支点として互いに各組の対で重合するように回動可能とされ、各組の焼成板15,16及び焼成板17,18の各一方を他方へと上下重合することによって、各焼成板15〜18の背面に設けたガスバーナ13の加熱によって食品焼成凹部14内で片面加熱された食品が重ね合わさる構成を採用している。
【0027】
支持部19は、各組単位で互いに重合可能となるように焼成板15,16及び焼成板17,18を回動可能に支持する。各焼成板15〜18の正面側及び背面側で対向し且つ各焼成板15〜18の各組単位中央位置でフレーム29に固定された(又は一体の)支持脚部35と、支持脚部35に支持軸36を介して一端が回動可能連結されると共に他端を各焼成板15〜18の正面及び背面で固定支持する連結フレーム37,38と、を備えている。
【0028】
このような食品焼成装置11にあっては、表面に一つ以上の食品焼成凹部14が形成された各焼成板15〜18を、焼成板15,16及び焼成板17,18で左右対とし、図示左側に示す焼成板15,16のように、その一方を他方へ上下重合することによって、各焼成板15〜18の背面に設けた加熱ユニットの加熱によって片面加熱した食品が重ね合わされて所定形状等に加熱調理される。
【0029】
各焼成板15〜18の表面には、テフロン(登録商標)加工等の表面処理加工が施されているため、その表面処理の再加工等のメンテナンスを行う場合には、支持部19の組み付けを解除することで機枠12から各焼成板15〜18を取り外すことができる。
【0030】
この際、各焼成板15〜18は、軽量な調理板30を用いていることから、全体の軽量化が図られ、メンテナンスを容易に行うことができる。したがって、メンテナンスコストの低減化(例えば、従来の1/3以下)を図ることができる。
【符号の説明】
【0031】
11…食品焼成装置
12…機枠
12a…開口部
13…ガスバーナ(加熱ユニット)
14…食品焼成凹部
15…焼成板
16…焼成板
17…焼成板
18…焼成板
19…支持部
30…調理板
31…加熱板
32…伝熱板
33…蓄熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口部が形成され且つ内部に加熱ユニットが設置された機枠と、前記加熱ユニットにより背面側が加熱され且つ表面に一つ以上の食品焼成凹部が形成された一対の焼成板と、前記一対の焼成板を回動可能且つ前記食品焼成凹部が略一致した状態で重合可能に連結支持するように前記機枠に設けられた支持部と、を備えた食品焼成装置において、
前記焼成板は、軽量で耐熱性の高い金属からなり且つ前記食品焼成凹部を形成した調理板と、該調理板の背面側に位置して蓄熱性の高い金属からなる加熱板と、を備えていることを特徴とする食品焼成装置。
【請求項2】
前記調理板の背面側に前記加熱板が埋設されている請求項1に記載の食品焼成装置。
【請求項3】
前記調理板の背面側に前記加熱板が畳重されている請求項1に記載の食品焼成装置。
【請求項4】
前記加熱板の表面側に前記調理板が埋設されている請求項1に記載の食品焼成装置。
【請求項5】
前記調理板の内部に前記加熱板が埋め込まれている請求項1に記載の食品焼成装置。
【請求項6】
前記調理板と前記加熱板との間には、少なくとも前記食品焼成凹部の背面側に熱伝導率の高い金属からなる伝熱板が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1の請求項に記載の食品焼成装置。
【請求項7】
前記加熱板の背面には、少なくとも前記食品焼成凹部の背面側に対応して膨出した蓄熱部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1の請求項に記載の食品焼成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−24143(P2012−24143A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162837(P2010−162837)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(396007557)株式会社大和田製作所 (6)
【Fターム(参考)】