説明

食品用および飲料用容器ならびにコーティング方法

食品および飲料容器ならびにコーティング方法を提供する。該食品用および飲料用容器は、水分散性の樹脂系および水性キャリアーを含むコーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングされている金属支持体を含む。樹脂系は、エポキシ成分、および、アクリル酸成分を含む。その他の好ましい実施態様において、本コーティング組成物は、硬化されると、少なくとも最低限レトルト処理可能なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年9月19日付けで出願された、Gibanel等の、「Food and Beverage Containers and Methods of Coating」という表題の米国仮出願第60/826,103号の利益を主張する(奔出が全体のため参照として明細書に含める)。
【0002】
本発明は、一般的に、物品を包装することに関する。より具体的には、本発明は、食品および飲料容器、ならびに、それらに使用するためのコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
包装用物品の内面および/または外面の両方をコーティングするのに、多種多様のコーティングが用いられている。このようなコーティングは様々な機能を果たし、この機能は、例えば包装用物品の性質、包装用物品内に包装される品物の性質、および、このようなコーティングが塗布される支持体の性質などの要因に応じて様々である。このようなコーティングは、金属製の食品用または飲料用容器の内部に塗布されることが多く、それにより、食品または飲料製品と容器の金属支持体との相互作用を防いだり、または、遅延させたりすることができる。
【0004】
このようなコーティングを支持体に塗布するために、様々な製造プロセスが用いられている。例えば、金属缶の一部は、「コイルコーティング」または「シートコーティング」という作業を用いてコーティングすることがあり、この場合、適切な支持体の平面コイルまたはシートが適切な組成物でコーティングされ、続いて硬化される。続いて、このようにしてコーティングされた支持体は、缶の蓋または本体に形成される。あるいは、形成された物品に液体のコーティング組成物を(例えば、噴霧、浸漬、ロール塗布などによって)塗布し、続いて硬化してもよい。
【0005】
包装用途のためのコーティングは、好ましくは支持体への高速の塗布が可能なものであり、さらに、硬化されると、この要求の多い最終用途において機能を発揮するのに必要な特性を提供するものであるべきである。例えば、いくつかの用途において、このようなコーティングは、たとえ厳しい環境に晒された場合でも、支持体への接着性が優れており、長期間にわたり劣化に耐性を有し、さらに食品との接触に関して(このような接触を必要とする用途について)安全であるものであるべきである。
【0006】
食品および飲料の包装業界において、有機溶媒ベースのコーティング系の代わりに、水ベースのコーティング系の使用が増えつつある。しかしながら、食品または飲料製品の保存または滅菌(例えば、高温高圧条件によって)を必要とする食品または飲料用途で従来の水ベースのコーティング系を利用する際に、深刻な問題に直面している。このような問題としては、例えば、コーティングの腐食、コーティングへの水の吸収、コーティングの汚染もしくは変色、および/または、コーティングと下層に存在する支持体との接着力の低下が挙げられる。さらに、包装された食品または飲料製品は、特に保存または滅菌条件の高温と組み合わされた場合に、従来の水ベースのコーティング系に損傷を与える可能性がある攻撃的な化学特性を示すことが多い。
【0007】
従って、このような劣化に耐性を有する改善された水ベースのコーティング系が引き続き必要である。
【発明の概要】
【0008】
一実施態様において、本発明は、食品用もしくは飲料用容器またはそれらの一部を含むコーティングされた物品を提供する。本コーティングされた物品は、金属支持体、および、少なくとも該金属支持体の一部に塗布されるコーティング組成物を含む。本コーティングは、水性キャリアーと水分散性の樹脂系とを含み、ここで該樹脂系は、(i)エポキシ成分と、(ii)好ましくは少なくとも約40℃のTgを有するアクリル酸成分とを含む。好ましくは、本コーティング組成物を硬化し、硬化されたコーティングが形成される場合、硬化されたコーティングは少なくとも最低限レトルト処理可能である。
【0009】
その他の実施態様において、本発明は、本明細書において説明されるコーティング組成物を提供する。
さらにその他の実施態様において、本発明は、本明細書において説明される食品用または飲料用容器、または、それらの一部を形成する方法を提供する。本方法は、本明細書において説明されるコーティング組成物を製造すること、金属支持体に本コーティング組成物を塗布すること、および、本コーティング組成物を硬化して、少なくとも最低限レトルト処理可能な硬化されたコーティングを形成することを含む。
【0010】
上記の本発明の概要は、開示された実施態様または全ての本発明の実施それぞれを説明していることは目的としない。以下の説明で、記載された実施態様をより具体的に例示する。本願中のあらゆる箇所において、例の列挙によって指針が示されており、このような例は様々な組み合わせで用いることができる。いずれの場合においても、記載された一覧は、単に代表的な群を示すのに役立つだけであって、排他的な一覧として解釈されないこととする。
【0011】
以下の説明で、1またはそれより多くの本発明の実施態様の詳細を記載する。本発明のその他の特徴、目的および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲から明白であると予想される。
【0012】
定義
特に他の規定がない限り、本明細書で用いられる以下の用語は以下に示される意味を有する。
【0013】
用語「アクリル酸成分」は、アクリル酸化合物またはメタクリル酸化合物(例えば、アクリル酸またはメタクリル酸、およびそれらのエステル)から形成された、または、それらを含むあらゆる化合物、ポリマーまたは有機性の基を含む。以下でさらに詳細に考察されるように、アクリル酸成分はまた、それに加えて1種またはそれより多くのその他のビニル単量体から形成されたものでもよいし、または、それらを含むものでもよい。
【0014】
用語「エポキシ成分」は、エポキシ基を含む、または、エポキシ基を含む化合物から形成されるあらゆる化合物、ポリマーまたは有機性の基を含む。
用語「架橋剤」は、2つのポリマー間に、または、同じポリマーの2つの異なる領域間に共有結合を形成することができる分子を意味する。
【0015】
用語「接着性試験」、「白化耐性試験(Blush Resistance Test)」、「耐汚染試験(Stain Resistance Test)」および「有孔度試験」はそれぞれ、接着性、白化耐性、耐汚染性および有孔度の試験手順を意味し、これらは以下の試験方法の項で説明する。接着性試験、白化耐性試験、耐汚染性試験および有孔度試験は、集合的に「コーティング特性試験」と称する。これらの試験はそれぞれ、当然ながら、本発明のコーティング組成物を適切に硬化して、以下の試験方法の項に記載したレトルト法(以下、「レトルト法」)に従ってレトルト処理した後に行われる。
【0016】
用語「非官能性単量体」は、架橋剤、特にアミノプラストおよび/またはフェノプラストの架橋剤と反応性を有する官能基を含まないエチレン性不飽和単量体を意味する。このような反応性の官能基の例は、ペンダントカルボン酸、ヒドロキシルおよびアミン基である。
【0017】
用語「有機基」は、炭化水素基(任意に、炭素および水素以外の元素、例えば酸素、窒素、硫黄およびケイ素を含んでいてもよい)を意味し、これらは、脂肪族基、環式基、または、脂肪族基と環式基との組み合わせ(例えば、アルカリルおよびアラルキル基)に分類される。用語「脂肪族基」は、飽和または不飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味する。この用語は、例えばアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を包含するものとして用いられる。用語「アルキル基」は、飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ヘプチル、ドデシル、オクタデシル、アミル、2−エチルヘキシルなどが挙げられる。用語「アルケニル基」は、1個またはそれより多くの炭素−炭素二重結合を有する不飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味し、例えばビニル基である。用語「アルキニル基」は、1個またはそれより多くの炭素−炭素三重結合を有する不飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味する。
【0018】
同一でもよいし、または異なっていてもよい基は、「独立して」何々であると記載される。置換は、本発明の化合物の有機基に対してなされる。従って、化学置換基を説明するために用語「基」が用いられる場合、そこで説明される化学物質は、置換されていない基、および、例えば鎖中に(例えばアルコキシ基中に)O、N、SiまたはS原子を含むそのような基、加えてカルボニル基、または、その他の従来の置換基を含む。例えば、成句「アルキル基」は、純粋な開鎖の飽和炭化水素であるアルキル置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、t−ブチルなどだけでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシルなどのような当業界既知のさらなる置換基が結合しているアルキル置換基も含むこととする。従って、例えば「アルキル基」は、エーテル基、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、スルホアルキルなどを含む。
【0019】
用語「水分散性」は、水分散性ポリマーに関して、そのようなポリマーが水(または水性キャリアー)に混合されて、安定な混合物を形成することが可能なことを意味する。例えば、不混和性の層に分離しやすい混合物は、安定な混合物ではない。用語「水分散性」は、用語「水溶性」を含むこととする。言い換えれば、当然ながら、水溶性ポリマーはまた水分散性ポリマーであるともみなされる。
【0020】
用語「分散液」は、分散性ポリマーに関して、分散性ポリマーとキャリアーとの混合物を意味する。用語「分散液」は、用語「溶液」を含むこととする。
用語「食品と接触する表面」は、食品または飲料製品と接触しているか、または、それらとの接触が意図されている物品(例えば、食品用または飲料用容器)の表面を意味する。
【0021】
用語「レトルト」は、一般的に、100℃またはそれより高い温度を含む、食品または飲料の保存または滅菌に関する条件を意味する。100℃よりも高い温度を達成するために、レトルトに関する条件は、大気圧より高い圧力を含む場合も多い。用語「レトルト処理可能な」は、一般的に、コーティングが、このような条件の1つまたはそれより多くに晒されることに耐え、それでもなお1種またはそれより多くの適切なフィルムまたはコーティング特性を示す能力を意味する。
【0022】
用語「イージーオープンエンド」は、缶蓋(典型的には食品用または飲料用容器の蓋)を意味し、このような缶の蓋は、(i)簡単に折ることができる開口部分(ある種の飲料用缶の蓋にとって、飲み口として機能する)および(ii)簡単に折ることができる開口部分を開けて、缶、または、容器内に収容されている製品を利用可能にするためのプルタブを取り付けるためのリベット部分を含む。
【0023】
用語「好ましい」および「好ましくは」は、所定の環境下で所定の利点を提供することができる本発明の実施態様を意味する。しかしながら、同じ環境またはその他の環境下でその他の実施態様が好ましい場合もある。さらに、1またはそれより多くの好ましい実施態様の説明がその他の実施態様が有用ではないことを示すものではなく、本発明の範囲からその他の実施態様を排除することは目的としない。
【0024】
本明細書で用いられるように、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」および「1またはそれより多くの」は、同じ意味で用いられる。従って、例えば「1つの(an)」アミンを含むコーティング組成物は、コーティング組成物が「1またはそれより多くの」アミンを含むことを意味するものと解釈することができる。
【0025】
本明細書においてまた、数値範囲を上下限値によって説明する場合は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。さらに、範囲の開示は、より広い範囲において含まれる全ての部分的な範囲の開示を含む(例えば、1〜5は、1〜4、1.5〜4.5、1〜2などを開示している)。
【0026】
詳細な記述
本発明は、金属支持体を含む食品用もしくは飲料用容器またはそれらの一部を提供し、ここで少なくとも金属支持体の一部が、樹脂系、水性キャリアー、任意の架橋剤、および、任意の触媒を含む組成物から製造されたコーティングでコーティングされる。好ましい本発明の樹脂系は、エポキシ成分、および、アクリル酸成分を含み、典型的には、水性キャリアーに分散することができる。
【0027】
本発明はまた、食品用もしくは飲料用容器またはそれらの一部のコーティング方法を提供する。本方法は、本明細書において説明される組成物を形成すること、および、金属支持体を食品用もしくは飲料用容器またはそれらの一部を形成する前に、または、その後に、本組成物を金属支持体に塗布することを含む。金属支持体は、一般的に食品および飲料の包装業界で用いられる金属である。好ましくは、金属支持体は、鋼、アルミニウム、または、それらの組み合わせを含む。
【0028】
本発明のコーティング組成物は、食品用および飲料用容器の内表面および/または外表面上にコーティングを形成するのに適したものであり得る。好ましい本発明のコーティング組成物は、特に、ビールおよび飲料缶の蓋(または、イージーオープンエンドとも称される)などの食品と接触する表面への使用に適している。本コーティング組成物は、食品または飲料製品と、下層に存在する支持体材料(例えば金属)との相互作用を防ぐ、または、それを遅延させるコーティングを形成することにおいて有用であり得る。また本コーティング組成物は、保護コーティング、美観コーティング、ウォッシュコーティング、サイズコーティング、ワニス、シートコーティング、サイドシームコーティング、ならびにそれらの組み合わせおよび変種を形成することおいても有用であり得る。
【0029】
本発明の硬化されたコーティングは、食品用および飲料用容器用途で用いられる場合、好ましくはレトルト処理可能である。好ましい本発明の硬化されたコーティングは、好ましくは、レトルトプロセスまたはその他の食品または飲料の保存または滅菌プロセスに付随することが多い高温条件に耐える。特に好ましい硬化されたコーティングは、このような条件下で、1またはそれより多くの攻撃的な(または腐蝕性の)化学特性を示す食品または飲料製品と接触させる間、このような条件に対して強化された耐性を示す。このような食品または飲料製品の例としては、乳ベースの製品、果実ベースの製品、エネルギードリンク、および、酸性の、または、酸性化した製品が挙げられる。
【0030】
いくつかの実施態様において、本発明の硬化されたコーティングは、適切な期間(例えば、少なくとも約10秒間〜約90分間)、少なくとも約80℃、より好ましくは少なくとも約100℃、さらにより好ましくは少なくとも約120℃の温度への曝露に耐えることができる一方で、それでもなお、適切なフィルムまたはコーティング特性(例えば、1またはそれより多くの適切な化学または機械特性試験、例えば本明細書に記載されるコーティング特性試験のうち1またはそれより多くを満たす能力によって定義されるような特性)を示す。加えて、これらの好ましい硬化されたコーティングのうちいくつかはさらに、大気圧よりも少なくとも約0.5気圧高い、より好ましくは大気圧よりも少なくとも約1.0気圧高い圧力と組み合わせた上記のいずれか1の温度条件への曝露に耐えることができる一方で、それでもなお適切なフィルムまたはコーティング特性(例えば、1またはそれより多くの適切な化学または機械特性試験、例えばコーティング特性試験のうち1種またはそれより多くを満たす能力によって定義されるような特性)を示す。
【0031】
上記で考察したように、適切に本発明の硬化されたコーティング組成物は、好ましくは、1またはそれより多くの攻撃的な化学特性を有する食品または飲料製品と接触した状態のままレトルトプロセスで処理されることに耐えることができる。例えば、本発明の硬化されたコーティング組成物は、好ましくは、レトルト法に従って、1種またはそれより多くの以下の物質A〜E中でレトルト処理されることに耐えることができる:
A.0.4重量%のクエン酸水溶液;
B.1重量%のクエン酸水溶液;
C.2重量%のクエン酸水溶液;
D.酸性コーヒー;および、/または
E.ゲータレード(GATORADE)飲料製品。
【0032】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、物質A〜Eの1種中で適切に硬化されて(レトルト法に従って)レトルト処理された後には、コーティング特性試験のうち1またはそれより多くを満たすことができる。本発明のコーティング組成物のいくつかの実施態様は、物質A〜Eの1種またはそれより多くに関して全てのコーティング特性試験に合格することができる。
【0033】
好ましい本発明のコーティング組成物は、適切に硬化された場合、少なくとも最低限レトルト処理可能なコーティングを形成することができる。本明細書で用いられる用語「最低限にレトルト処理可能な」は、(レトルト法に従って物質A〜Eの1種中でレトルト処理された後に)物質A〜Eのうち少なくとも1種に関して接着性試験および有孔度試験の一方または両方を満たすコーティングを意味する。
【0034】
より好ましい本発明のコーティング組成物は、適切に硬化された場合、実質的にレトルト処理可能なコーティングを形成することができる。本明細書で用いられる用語「実質的(substantially)にレトルト処理可能な」は、(レトルト法に従って各物質A〜E中でレトルト処理された後に)少なくとも(i)物質Bに関して、または、(ii)物質A、および、物質DまたはEのうち1種またはそれより多くに関して接着性試験を満たすコーティングを意味する。
【0035】
さらにより好ましい本発明のコーティング組成物は、適切に硬化された場合、全体的にレトルト処理可能なコーティングを形成することができる。本明細書で用いられる用語「全体的(generally)にレトルト処理可能な」は、(レトルト法に従ってそれぞれの物質中でレトルト処理された後に)少なくとも(i)物質C、または、(ii)物質B、および、物質DまたはEのうち1種またはそれより多くに関して接着試験を満たすコーティングを意味する。
【0036】
本発明の最適なコーティング組成物は、適切に硬化された場合、広範囲にわたりレトルト処理可能なコーティングを形成することができる。本明細書で用いられる用語「広範囲にわたり(broadly)レトルト処理可能な」は、(レトルト法に従ってそれぞれの物質A〜E中でレトルト処理された後に)少なくとも物質Cに関して接着試験を満足させ、および、少なくとも物質Bに関して有孔度試験を満足さるコーティングを意味する。
【0037】
本発明の特に最適なコーティング組成物は、適切に硬化された場合、全面的にレトルト処理可能なコーティングを形成することができる。本明細書で用いられる用語「全面的(fully)にレトルト処理可能な」は、(レトルト法に従ってそれぞれの物質A〜E中でレトルト処理された後に)(i)少なくとも物質C、DおよびEに関して接着試験を満足させ、および、(ii)少なくとも物質Bに関して有孔度試験を満たすコーティングを意味する。
【0038】
本発明のエポキシおよびアクリル酸成分は、望ましいフィルムまたはコーティング特性を達成するのに適したあらゆる形態で樹脂系に含ませることができる。例えば、いくつかの実施態様において、エポキシおよびアクリル酸成分は、それぞれ(i)樹脂系のポリマーの1またはそれより多くの部分、および/または、(ii)別個の樹脂系のポリマーの1またはそれより多くの部分として存在していてもよい。いくつかの実施態様において、樹脂系は、主鎖に結合した1個またはそれより多くのペンダント基を有するグラフトポリマーを含む。好ましい一実施態様において、グラフトポリマーの主鎖は、主鎖に結合した1個またはそれより多くのペンダントエポキシ成分と共に、1個またはそれより多くのアクリル酸成分を含む。任意に結合基が含まれていてもよく、このような場合、エポキシ成分とアクリル酸成分とが結合基を介して共有結合で連結される。
【0039】
理論に拘束されることは意図しないが、いくつかの実施態様において、アクリル酸成分とエポキシ成分とを共有結合で結合させるための結合基の使用は、本発明の硬化されたコーティング組成物の柔軟性を高めることができ、一方で、アクリル酸成分とエポキシ成分との直接のグラフト化(例えば、ラジカル開始剤の使用によって)は、本発明の硬化されたコーティング組成物のレトルト処理可能性を高めることができる。いくつかの実施態様において、フィルムまたはコーティング特性の望ましい調和を示す硬化されたコーティングを生産するために、上記の両方のタイプの連結を適切に組み合わせることが望ましい場合がある。
【0040】
本発明の樹脂系は、好ましくは少なくとも約3,000、より好ましくは少なくとも約4,500、さらにより好ましくは少なくとも約5,500の数平均分子量(Mn)を有する。好ましい実施態様において、樹脂系は、約50,000未満、より好ましくは約45,000未満、さらにより好ましくは約40,000未満のMnを有する。現状で好ましい実施態様において、樹脂系のMnは、約10,000〜約16,000であり、さらにより好ましくは約14,000である。
【0041】
本発明の樹脂系のポリマーは、適切であればどのような酸価を示すものでもよい。酸価は、典型的には、特定の終点までサンプルを滴定するのに必要なKOHのミリグラム数として示される。酸価の決定方法は当業界公知である。例えば、「Standard Test Method for Acid and Base Number by Color−Indicator Titration」という表題のASTM D974−04を参照、これは、ペンシルベニア州ウエストコンショホッケンにある米国材料試験協会インターナショナル(American Society for Testing and Materials International)から入手可能である。いくつかの実施態様において、樹脂系は、好ましくは約20〜約150の酸価を有し、より好ましくは約40〜約120、さらにより好ましくは約60〜約90の酸価を有する。特に好ましい実施態様において、本発明の樹脂系は、約70の酸価を有する。
【0042】
樹脂系のエポキシ成分は、好ましくは、少なくとも1つのエポキシ基を含む、より好ましくは、エポキシ化合物の1分子あたり平均約1.5〜約2.5個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(または、エポキシ化合物の混合物)から形成される。その他の好ましい実施態様において、エポキシ成分は、エポキシ化合物の1分子あたり約2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物から形成される。
【0043】
適切なエポキシ化合物は、好ましくは少なくとも約180、より好ましくは少なくとも約1,500、最も好ましくは少なくとも約2,500のエポキシ当量を有する。さらに適切なエポキシ化合物は、好ましくは約25,000未満、より好ましくは約22,500未満、最も好ましくは約20,000未満のEEWを有する。現状で好ましい実施態様において、約5,000〜約8,000のEEWを有するエポキシ化合物が用いられ、7,000のEEWを有するエポキシ化合物が特に好ましい.。
【0044】
上記エポキシ化合物は、望ましいコーティングまたは膜特性をもたらすものであればどのようなエポキシ化合物でも適切であり得る。上記エポキシ化合物は、好ましくは、1個またはそれより多くの蓋エポキシ基を有する直鎖状のエポキシ樹脂である。上記エポキシ化合物は、脂肪族でもよいし、または、芳香族でもよい。適切なエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「BADGE」)をベースとするエポキシ樹脂のような芳香族化合物が挙げられる。このようなエポキシ化合物は、市販の形態で用いてもよいし、または、低分子量のエポキシ化合物を標準的な方法によって発展させることによって製造してもよい。例えば、約180〜約500のEEWを有するエポキシ化合物は、適切なの量の二価フェノール(例えば、ビスフェノールA(「BPA」))を用いて発展させ、約1,000〜約12,000のEEWを有するエポキシ化合物を生産することができる。あるいは、オキシラン基と反応することができるあらゆる適切な二官能価の化合物(または、化合物の混合物)を用いてもよい。このような化合物の例としては、例えばセバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸のような二酸、および、二量体の脂肪酸(例えば、飽和および/または不飽和の二量体脂肪酸、より好ましくは、飽和二量体脂肪酸);例えば、ブチルアミン、エチレンジアミン、および、ヘキサメチレンジアミンのようなアミンまたはジアミン;例えば、アラニン、リシンおよびアミノドデカン酸のようなアミノ酸;ジオール;ならびに、それらの混合物および変種が挙げられる。一実施態様において、エポキシ成分は、エポキシ化合物、二価フェノール、および、二量体脂肪酸の反応生成物である。いくつかの実施態様において、エポキシ化合物は、BPAを含まない二価フェノール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールのビス−4−ヒドロキシ安息香酸塩)、例えば、米国出願番号第11/550,451号(現在、US200700871465として公開されている)(これらは、この参照により開示に含まれる)で説明されているものを用いて性能を高めることができる。このような実施態様のうちいくつかにおいて、得られたエポキシ化合物は、結合した、および/または、抽出可能なBPAを含まない。
【0045】
適切なエポキシ化合物の例としては、DER331、DER664、DER667、DER668、および、DER669(いずれもダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.,ミシガン州ミッドランド)から市販されている);および、EPON828、EPON1004、EPON1007、および、EPON1009(いずれもシェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.,テキサス州ヒューストン)から市販されている)が挙げられる。好ましい低分子量のエポキシ化合物は、EPON828およびDER331であり、これらは、市販の形態で用いてもよいし、または、二価フェノール(例えば、BPA)を用いて発展させてもよい。
【0046】
本発明の樹脂系は、樹脂系の乾燥(すなわち不揮発性物質の)重量に基づき、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約25重量%、さらにより好ましくは少なくとも約60重量%のエポキシ化合物を含む。さらに本発明の樹脂系は、樹脂系の乾燥重量に基づき、好ましくは約95重量%未満、より好ましくは約90重量%未満、最も好ましくは約85重量%未満のエポキシ化合物を含む。
【0047】
その他の好ましい実施態様において、中和剤(例えば第三アミン)と、エポキシ成分のエポキシ基(すなわちオキシラン基)との反応によって、1またはそれより多くの第四アンモニウム塩の基が樹脂系に含まれる。第四アンモニウム塩の基のさらなる考察に関して、例えば米国特許第4,302,373号を参照。理論に拘束されることは意図しないが、このような第四アンモニウム塩の基は、水性キャリアーへの樹脂系の分散性、および/または、樹脂系のエポキシおよびアクリル酸成分の相溶化を促進すると考えられる。
【0048】
本発明のコーティング組成物は、望ましいフィルムまたはコーティング特性を生じさせることができるのであればどのような量のアクリル酸成分を含んでいてもよい。好ましい実施態様において、本コーティング組成物は、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約10重量%、さらにより好ましくは少なくとも約15重量%の量のアクリル酸成分を含み、ここで、この量は、アクリル酸成分を製造するのに用いられる単量体混合物の量によって決定されたものであり、さらに、樹脂系の総乾燥重量に基づく。好ましい実施態様において、本コーティング組成物は、好ましくは、約95重量%未満、より好ましくは約75重量%未満、さらにより好ましくは約40重量%未満の量のアクリル酸成分を含み、ここで、この量は、アクリル酸成分を製造するのに用いられる単量体混合物の量によって決定されたものであり、さらに、樹脂系の乾燥重量に基づく。本明細書で用いられる用語「アクリル酸単量体混合物」は、アクリル酸成分を製造するのに用いられる単量体混合物を意味する。
【0049】
アクリル酸成分は、好ましくは、1種またはそれより多くの非官能性単量体、および、1種またはそれより多くの官能性単量体(より好ましくは、酸性の官能性単量体、さらにより好ましくは酸の官能性を有するアクリル酸単量体)を含む。現状で好ましい実施態様において、アクリル酸成分は、1個またはそれより多くのビニル単量体を含む。アクリル酸成分は、好ましくは、1個またはそれより多くのエチレン性不飽和単量体を用いた連鎖重合によって製造される。適切なエチレン性不飽和単量体の例としては、非官能性単量体、例えばスチレン、ハロスチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸のアルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなど)、メタクリル酸および/またはクロトン酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルのメタクリル酸塩およびクロトン酸塩)、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロオクタン、ビニルシクロヘキセン、ヘキサンジオールジアクリラート、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジブチルおよび類似のジエステル、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルシクロオクタン、メタクリル酸アリル、2−エチルヘキシルアクリラート、および、無水マレイン酸のジエステル;および、官能性単量体、例えば酸性の官能性単量体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸およびそれらのエステル、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸およびソルビン酸)、アミド官能性単量体(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなど)、ヒドロキシ官能性単量体(例えば、アクリル酸またはメタクリル酸ヒドロキシアルキル単量体、例えばアクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸ヒドロキシプロピル(HPA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)など);ならびに、それらの変種およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい非官能性単量体としては、スチレン、アクリル酸エチル、ブチルメタクリラート、および、それらの組み合わせが挙げられる。好ましい官能性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、および、それらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
上記の単量体の組み合わせおよび/または比率は、望ましいコーティングまたは膜特性が提供されるように調節してもよい。好ましくは、上記の単量体の少なくとも一部は、樹脂系を水性キャリアーに対して分散性にすることができる。樹脂系を水性キャリアーに分散性を示すようにすることができる単量体の例としては、塩基と中和されると塩の基を形成する酸性の官能性単量体が挙げられる。
【0051】
理論に拘束されることは意図しないが、本発明の所定の実施態様に関して、コーティング組成物が、所定の食品および飲料製品に関連するレトルトプロセスに対して適切な耐性を示すことに寄与する要因は、アクリル酸成分のガラス転移温度(Tg)であると考えられる。好ましい実施態様において、アクリル酸成分は、少なくとも約40℃、好ましくは少なくとも約60℃、より好ましくは少なくとも約80℃、さらにより好ましくは少なくとも約90℃のTgを有する。
【0052】
一般的に、フォックスの方程式(Fox equation)を用いて、アクリル酸単量体混合物の反応によって生成したアクリル酸成分の理論上のTgを計算することができる。本明細書で用いられるように、特に他の規定がない限り、Tgは、例えばフォックスの方程式のような方程式を用いて計算された理論上のTgを意味する。上述のようなTgを達成するのに有用であり得る単量体の例としては、アクリロニトリル(97℃)、アクリル酸(106℃)、メタクリル酸(228℃)、メタクリル酸メチル(105℃)、メタクリル酸エチル(65℃)、メタクリル酸イソブチル(53℃)、メタクリル酸アリル(45℃)、2ヒドロキシエチルメタクリラート(55℃)、2ヒドロキシプロピルメタクリラート(55℃)、アクリルアミド(165℃)、スチレン(100℃)、および、それらの混合物が挙げられ;ここで、括弧内に、H.Coyard等のResins for Surface Coatings:Acrylics&Epoxies 40−41(PKT Oldring編集),第1巻(第2版,2001年)で列挙されているような各単量体のホモポリマーに関するTgを報告している。具体的な実施態様において、適切なTgを達成するには、スチレン、メタクリル酸および/またはアクリル酸の使用が好ましい。
【0053】
望ましいコーティングまたは膜特性を達成することができるアクリル酸成分中の非官能性単量体および/または酸性の官能性単量体の量は、様々であってよい。
好ましい実施態様において、アクリル酸成分は、アクリル酸単量体混合物の総重量に基づき、少なくとも約5重量%、好ましくは少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約35重量%の非官能性単量体を含む。好ましい実施態様において、アクリル酸成分は、アクリル酸単量体混合物の総重量に基づき、約95重量%未満、好ましくは約80重量%未満、さらにより好ましくは約65重量%未満の非官能性単量体を含む。特に好ましい実施態様において、アクリル酸成分は、アクリル酸単量体混合物の総重量に基づき、約45重量%の非官能性単量体を含む。
【0054】
好ましい実施態様において、アクリル酸成分は、アクリル酸単量体混合物の総重量に基づき、好ましくは少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約15重量%、さらにより好ましくは少なくとも約20重量%の量の酸の官能基を有する単量体を含む。いくつかの実施態様において、アクリル酸成分は、アクリル酸単量体混合物の総重量に基づき、好ましくは約90重量%未満、より好ましくは約85重量%未満、さらにより好ましくは約80重量%未満の量の酸性の官能性単量体を含む。
【0055】
アクリル酸成分は、好ましくは、アクリル酸単量体混合物の総重量に基づき、少なくとも約1重量%、より好ましくは少なくとも約10重量%、さらにより好ましくは少なくとも約20重量%の量のスチレンを含む。好ましい実施態様において、アクリル酸成分は、アクリル酸単量体混合物の総重量に基づき、好ましくは約95重量%未満、より好ましくは約70重量%未満、さらにより好ましくは約60重量%未満の量のスチレンを含む。
【0056】
アクリル酸成分は、好ましくは、アクリル酸単量体混合物の総重量に基づき、少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約20重量%、さらにより好ましくは少なくとも約40重量%の量のメタクリル酸を含む。好ましい実施態様において、アクリル酸成分は、アクリル酸単量体混合物の不揮発性物質の総重量に基づき、好ましくは約95重量%未満、より好ましくは約80重量%未満、さらにより好ましくは約65重量%未満の量のメタクリル酸を含む。
【0057】
特に好ましい実施態様において、アクリル酸単量体混合物は、(i)スチレン、および、(ii)メタクリル酸および/またはアクリル酸を含む。
上記で考察したように、樹脂系のいくつかの実施態様は、1種またはそれより多くの結合化合物から形成された1種またはそれより多くの結合基を含んでいてもよい。このような結合基は、好ましくは、樹脂系のエポキシ成分を樹脂系のアクリル酸成分に連結させる。このような結合基は、単一の化合物から形成されてもよいし、または、複数の化合物から形成されてもよい。好ましい実施態様において、結合基を形成するのに用いられる結合化合物は、好ましくは、2個またはそれより多くの官能基を有する。その他の好ましい実施態様において、結合化合物は、エポキシ基と反応することができる第一の官能基(例えば、カルボン酸基、アミン基、アミド基など)と、アクリル酸成分と反応することができる第二の官能基(例えば、炭素−炭素二重または三重結合)とを有する多官能価の単量体である。
【0058】
結合化合物は、アクリル酸成分と反応して共有結合を形成することができるあらゆる適切な官能基を含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、結合化合物は、活性化された不飽和炭素−炭素結合を有する官能基を有する。本明細書で用いられる用語「活性化された不飽和炭素−炭素結合」は、炭素−炭素三重結合、または、共役した炭素−炭素二重結合を意味する。いくつかの実施態様において、結合化合物は、抽出することができる1個またはそれより多くの水素を含み、例えば、アリルの水素(すなわち、二重結合に隣接する炭素原子に結合した水素)、または、二重のアリルの水素(すなわち、2つの二重結合に隣接する炭素原子に結合した水素)を含む。アクリル酸成分は、あらゆる適切な反応を用いて結合化合物と反応する可能性があり、このような反応としては、例えば、(i)共有結合を形成するための水素抽出、および/または、(ii)結合化合物の炭素−炭素二重または三重結合への直接の付加が挙げられる。
【0059】
樹脂系の製造中に、エポキシ化合物によって提供されるエポキシ基のうち少なくとも数個が、結合化合物との反応で消費される。いくつかの実施態様において、樹脂系のポリマーに少なくとも1個のエポキシ基が含まれるように十分な量のエポキシ基が残るように、エポキシ化合物と結合化合物との反応で、全てのエポキシ基が消費されない。
【0060】
結合化合物が樹脂系に含まれる場合、結合化合物は、樹脂系の乾燥重量に基づき、好ましくは少なくとも約0.003重量%、より好ましくは少なくとも約0.05重量%、さらにより好ましくは少なくとも約0.1重量%の量で存在する。好ましい特定の実施態様において、結合化合物は、樹脂系の乾燥重量に基づき、好ましくは約4重量%未満、より好ましくは約2.5重量%未満、さらにより好ましくは約1.5重量%未満の量で存在する。
【0061】
結合化合物が樹脂系に含まれる場合、結合化合物は、好ましくは少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%、さらにより好ましくは少なくとも約10重量%のエポキシ成分のエポキシ化合物によって提供されるエポキシ基と反応するのに十分な量で存在する。好ましい実施態様において、結合化合物は、好ましくは約50重量%未満、より好ましくは約40重量%未満、さらにより好ましくは約25重量%未満のエポキシ成分のエポキシ化合物によって提供されるエポキシ基と反応するのに十分な量で存在する。
【0062】
いくつかの適切な結合化合物の例としては、以下の一般構造のいずれか1つを有する結合化合物が挙げられる:
−CH=CR−(CH=CH)−(CH−Y、または、
−C≡C−(C≡C)−(CH−Y、
式中RおよびRは、独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のアルケニル基、または、置換または非置換の芳香族基であり;rは、0〜6の数値であり、好ましくは少なくとも1であり;sは、0〜6の数値であり、好ましくは少なくとも1であり;pは、0〜18の数値であり、好ましくは少なくとも1であり;および、Yは、エポキシ基と反応することができる有機性の基である。好ましくは、結合化合物は、最大で12個の炭素原子を有する。好ましい実施態様において、Rは、水素またはメチル基である。
【0063】
具体的には、Rは、芳香族ヒドロカルビル基(例えば、フェニル基)、または、置換された芳香族ヒドロカルビル基(例えば、C〜C10のアルコキシで置換されたフェニル、ハロで置換されたフェニル、または、C〜C18のアルキルで置換されたフェニル)であり得る。用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、および、ヨードを含む。またR基は、脂肪族ヒドロカルビル基、または、脂肪族シクロヒドロカルビル基であってもよく、これらは置換されていてもよいし非置換でもよい。Rの非限定的な例としては、水素;C〜C18の置換または非置換アルキル基、好ましくはC〜C10アルキル基;C〜Cシクロアルキル基;フェニルで置換されたC〜C18アルキルまたはC〜Cシクロアルキル基;および、ハロゲンで置換されたアルキルまたはシクロアルキル基が挙げられる。またR基は、不飽和C〜C18脂肪族ヒドロカルビル基、または、不飽和C〜C脂環式ヒドロカルビル基(すなわち、これらの基は、1個またはそれより多くの炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を含む)であってもよい。このような不飽和脂肪族ヒドロカルビルおよびシクロヒドロカルビル基は、置換されていてもよいし、または非置換であってもよい。好ましくは、Rのいずれかの置換基が、置換基が樹脂系の製造に干渉しない程度の非反応性を有するものである。特に好ましい実施態様において、Rは、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cシクロアルキル基、または、フェニル基である。
【0064】
Y基は、エポキシ基と反応することができるのであればどのような基でも適切であり得る。このような基の例としては、カルボキシル、アミド(−CON(R)、アミノ(−N(R)、ヒドロキシルまたはメルカプト(−SR)が挙げられ;ここでR基は、独立して、水素、または、C〜Cアルキルもしくはフェニル基であり;および、Rは、水素、または、C〜Cアルキルもしくはフェニル基である。
【0065】
適切な結合化合物の具体的な例としては、ソルビン酸、ソルビンアルコール、無水マレイン酸およびそれらのエステル、ジシクロペンタジエン酸、共役飽和脂肪酸(例えば、エレオステアリン酸)、3−ペンチン−1−オール、2−ペンチン−1−オール、4−ペンチン酸、4−ペンチン−1−オール、4−ペンチン−2−オール、1−ペンチン−3−オール、ヘプタコサ−10,12−ジイン酸、ヘプタデカ−2,4−ジイン酸、ヘンエイコサ−2,4−ジイン酸、2−ヘプチン酸、2−ヘキシン酸、ノナコサ−10,12−ジイン酸、ノナデカ−1,4−ジイン酸、2−ノニン酸、ペンタデカ−2,4−ジイン酸、ペンタコサ−10,12−ジイン酸、フェニルプロピオル酸、プロピオル酸、テトロール酸、トリコサ−10,12−ジイン酸、10−ウンデシン酸、1−ブチン−3−オール、2−ブチン−1−オール、3−ブチン−1−オール、2−デシン−1−オール、3−デシン−1−オール、3,6−ジメチル−1−ヘプチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3,4−ジメチル−1−ペンチン−3−オール、3−エチル−1−ヘプチン−3−オール、4−エチル−1−ヘキシン−3−オール、3−エチル−5−メチル−1−ヘプチン−3−オール、4−エチル−1−オクチン−3−オール、3−エチル−1−ペンチン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1−ヘプチン−3−オール、2−ヘプチン−1−オール、3−ヘプチン−1−オール、4−ヘプチン−2−オール、5−ヘプチン−3−オール、1−ヘキシン−3−オール、2−ヘキシン−1−オール、3−ヘキシン−1−オール、4−ヘキシン−2−オール、5−ヘキシン−1−オール、5−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、5−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3−ノニン−1−オール、1−オクチン−3−オール、3−オクチン−1−オール、1−フェニル−2−プロピン−1−オール、2−プロピン−1−オール、10−ウンデシン−1−オール、3−アミノ−フェニルアセチレン、プロパルギルアミン、および、それらの混合物が挙げられる。特に好ましい結合化合物は、ソルビン酸(また、2,4−ヘキサジエン酸としても知られている)である。いくつかの実施態様において、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、および、それらの組み合わせのような結合化合物を用いてもよく、これらは単独で用いてもよいし、または、上記の結合化合物のいずれかと組み合わせて用いてもよい。
【0066】
本発明のコーティング組成物の製造において、好ましくはラジカル開始剤が用いられる。適切なラジカル開始剤としては、例えば、過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、t−ブチル過酸化物、t−ブチルヒドロ過酸化物、t−アミル過酸化物、t−アミルヒドロ過酸化物、t−ブチルペルオキシベンゾアート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、および、1,1−ジ(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン;アゾ基ベースの開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル、および、アゾビスメチルブチロニトリル;過硫酸塩、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、および、その他のアルカリ金属の過硫酸塩;亜硫酸塩;亜硫酸水素塩;アゾアルカン;UVまたは可視光線開始剤;および、それらの組み合わせが挙げられる。その他のラジカル開始剤を追加で用いてもよいし、または、代わりに用いてもよい。アルカリ金属の過硫酸塩は、適切な還元剤と組み合わせてもよく、このような還元剤としては、例えばヒドラジン、アンモニウムまたはアルカリ金属の亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩、または、ヒドロ亜硫酸塩が挙げられる。好ましくは、ラジカル開始剤は、有機物に溶解することができる。
【0067】
過酸化ベンゾイル(BPO)は、好ましいラジカル開始剤である。理論に拘束されることは意図しないが、BPOのような1種またはそれより多くのラジカル開始剤を包含させることは、プロトン抽出によってアクリル酸成分およびエポキシ成分をグラフト化することに寄与すると考えられ、それにより、樹脂系のレトルト耐性および相溶化が強化される可能性がある。
【0068】
ラジカル開始剤が用いられる場合、ラジカル開始剤は、好ましくは、樹脂系の1種またはそれより多くのポリマーを重合させるのに十分な量で存在する。用いられる開始剤の量は、好ましくは、アクリル酸単量体混合物の総乾燥重量に基づいて、少なくとも約0.5重量%、より好ましくは少なくとも約1重量%である。用いられる開始剤の量は、好ましくは、アクリル酸単量体混合物の総乾燥重量に基づいて、約10重量%未満、より好ましくは約7.5重量%未満、最も好ましくは約5重量%未満である。
【0069】
上記で考察したように、いくつかの実施態様において、本発明のコーティング組成物は、1種またはそれより多くの硬化剤を用いて配合してもよく、このような硬化剤としては、例えば、1種またはそれより多くの架橋剤が挙げられる。具体的な架橋剤の選択は、典型的には、配合しようとする製品に依存する。例えば、いくつかのコーティング組成物は、相当な着色が施される(例えば、金色のコーティング)。これらのコーティングは、典型的には、それ自身が黄色がかった色を示す傾向がある架橋剤を用いて配合してもよい。それに対して、白色のコーティングは、一般的には、黄色くならない架橋剤を用いるか、または、黄色くなる架橋剤をほんのわずかな量で用いて配合される。
【0070】
あらゆる適切な架橋剤(または、架橋剤の組み合わせ)を用いることができる。例えば、フェノール系架橋剤(例えば、フェノプラスト)、アミノ架橋剤(例えば、アミノプラスト)、および、それらの組み合わせを用いてもよい。架橋剤は、水溶性、水分散性、有機質に対して分散性、および/または、有機物に対して溶解性(すなわち、有機溶媒に容易に溶解する)を示すものでもよい。
【0071】
架橋剤の濃度は、望ましいコーティングまたは膜特性、および/または、用いられる具体的な架橋剤(または架橋剤)に応じて様々であってよい。いくつかの実施態様において、本コーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の不揮発性物質の重量に基づき、約0.01重量%〜約30重量%、より好ましくは0.25重量%〜約10重量%、さらにより好ましくは約0.5重量%〜約5重量%の架橋剤を含む。所定の飲料缶の蓋用途に関して適切な量の柔軟性を有する硬化されたコーティングを達成するために、このような用途を目的とした本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物の不揮発性物質の重量に基づき、好ましくは約5重量%未満の架橋剤を含む。
【0072】
適切なフェノール系架橋剤(例えば、フェノプラスト)の例としては、アルデヒドとフェノールとの反応生成物が挙げられる。好ましいアルデヒドは、ホルムアルデヒド、および、アセトアルデヒドである。用いることができる適切なフェノールの例としては、フェノール、クレゾール、p−フェニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、シクロペンチルフェノール、クレゾール酸、BPA、および、それらの組み合わせが挙げられる。適切な市販のフェノール化合物の例としては、ベークライト(BAKELITE)6535LB、6581LB、および、6812LB(いずれも、ヘキシオン・スペシャリティー・ケミカルズ社(Hexion Specialty Chemicals GmbH)より入手可能)、DUREZ33162(デュレズ社(Durez Corporation),アディソン,テキサス州)、PHENODUR PR28555/IB/B、および、PR897(いずれも、サイテック・サーフェス・スペシャリティーズ(CYTEC Surface Specialties),スマーナ,ジョージア州より入手可能)、および、SANTOLINK EPが挙げられる。いくつかの実施態様において、フェノール系架橋剤は、約500〜約8,000の重量平均分子量(Mw)を有する。いくつかの実施態様において、フェノール系架橋剤は、約1,200〜約5,000のMwを有する。
【0073】
アミノ架橋剤の樹脂(例えば、アミノプラスト)は、典型的には、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、および、ベンズアルデヒド)と、アミノまたはアミド基を含む物質(例えば、尿素、メラミン、および、ベンゾグアナミン)との縮合生成物である。適切なアミノ架橋を形成する樹脂としては、例えば、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒドベースの樹脂、メラミン−ホルムアルデヒドベースの樹脂(例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン)、エーテル化したメラミン−ホルムアルデヒド、および、尿素−ホルムアルデヒドベースの樹脂が挙げられる。その他の好ましい実施態様において、アミノ架橋剤は、ベンゾグアナミンベースの樹脂である。
【0074】
また、その他のアミンおよびアミドの縮合生成物も用いることができ、例えば、トリアジン、ジアジン、トリアゾール、グアナジン、グアナミンのアルデヒド縮合体、および、アルキルおよびアリールで置換されたメラミンを用いることができる。このような化合物のいくつかの例は、N,N’−ジメチル尿素、ベンゾウレア、ジシアンジアミド(dicyandimide)、ホルムアグアナミン(formaguanamine)、アセトグアナミン、グリコールウリル、アメリン(ammelin)−クロロ−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、6−メチル−2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、3,5−ジアミノトリアゾール、トリアミノピリミジン、2−メルカプト−4,6−ジアミノピリミジン、3,4,6−トリス(エチルアミノ)−1,3,5−トリアジンなどである。用いられるアルデヒドは、典型的にはホルムアルデヒドであるが、その他の類似の縮合生成物を、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフラール、グリオキサールなどのその他のアルデヒドから作製してもよい。
【0075】
適切な市販のアミノ架橋を形成する樹脂としては、例えば、CYMEL301、CYMEL303、CYMEL370、CYMEL373、CYMEL1131、CYMEL1125、および、CYMEL5010(いずれも、サイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries Inc.),ウェストパターソン,ニュージャージー州から市販されている)が挙げられる。
【0076】
いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの触媒(好ましくは、有機金属触媒)が本発明に含まれる。拘束されることは意図しないが、適切な量の1種またはそれより多くの適切な触媒の存在は、例えば、本コーティング組成物の架橋形成および/または支持体への接着を強化する可能性があり、このような強化は、所定の用途にとって望ましい可能性がある。本コーティング組成物で使用可能な適切な触媒の非限定的な例としては、アルミニウムを含む触媒(例えば、アルミニウムアセチルアセトナートのようなアルミニウムキレート)、チタンを含む触媒(例えば、チタンキレート)、または、それらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
いくつかの実施態様において、本コーティング組成物に、1種またはそれより多くの触媒は、コーティング組成物中の1種またはそれより多くの触媒の活性物質の重量に基づき、約0重量%より多い量で、より好ましくは少なくとも約0.01重量%、さらにより好ましくは少なくとも約0.05重量%の量で含まれる。好ましい実施態様において、1種またはそれより多くの触媒は、コーティング組成物中の1種またはそれより多くの触媒の活性物質の重量に基づき、約15重量%未満の量で、より好ましくは約10重量%未満、さらにより好ましくは約5重量%未満の量で含まれる。
【0078】
いくつかの実施態様において、チタンを含む触媒は、チタンアセチルアセトナート、チタン酸テトラアルキル、オルトチタン酸イソプロピル、水溶性のチタンキレート化塩、チタンのトリエタノールアミンキレート、チタンのテトラトリエタノールアミンキレート、乳酸チタンキレート、および、それらの組み合わせからなる群より選択される。適切な市販のチタンを含む触媒としては、例えば、Tyzor131、LA、TE、および、TPT(いずれも、デュポン・ドゥ・ヌムール(Du Pont de Nemours),ウィルミントン,デラウェア州から市販されている)、および、VERTEC IA10、PI2、TAA、TET、および、XL900(いずれも、ジョンソン・マッセイ(Johnson Matthey),シカゴ,イリノイ州から市販されている)が挙げられる。
【0079】
いくつかの実施態様において、コーティング組成物に、1種またはそれより多くのジルコニウムを含む触媒が含まれていてもよい。1種またはそれより多くのジルコニウムを含む触媒は、単独で用いてもよいし、または、1種またはそれより多くのジルコニウムを含まない触媒と組み合わせて用いてもよい。ジルコニウムを含む触媒の例としては、プロピオン酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、ジルコン酸(2)−ビス[カルボナト(2)−O]ジヒドロキシ−二アンモニウム、ジルコニウムキレート化塩、乳酸ジルコニウムナトリウム、グリコール酸ジルコニウムナトリウム、テトラキス[[2,2’,2”−ニトリロトリス(エタノラト)](1−)−N,O]ジルコニウム、および、それらの組み合わせが挙げられる。市販のジルコニウムを含む触媒の例としては、例えば、BACOTE20(MELケミカルズ(MEL Chemicals),マンチェスター,英国)、および、Tyzor217、218、および、TEAZ(いずれも、デュポン・ドゥ・ヌムール,ウィルミントン,デラウェア州から市販されている)が挙げられる。
【0080】
いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの望ましいコーティング特性を有するコーティング組成物(例えば、それから形成された硬化されたコーティングは、1重量%のクエン酸中でのレトルト処理に耐えることができる)は、いかなる架橋剤も用いることなく、適切な量の1種またはそれより多くの触媒(例えば、チタンを含む触媒)の取り込みによって達成できる。
【0081】
また、本発明のコーティング組成物は、本コーティング組成物、または、それから生成した硬化されたコーティングに悪影響を与えないその他の任意のポリマーを含んでいてもよい。このような任意のポリマーは、典型的には、充填材としてコーティング組成物に含まれるが、それらは、架橋を形成する材料として含まれているか、または、望ましい特性を提供するために含まれている可能性がある。1種またはそれより多くの任意のポリマー(例えば、充填ポリマー)は、意図する目的に役立つのに十分な量で、ただしコーティング組成物またはそれから生成した硬化されたコーティングに悪影響を与えないような量で含まれていてもよい。
【0082】
また、本発明のコーティング組成物は、本コーティング組成物、または、それから生成した硬化されたコーティングに悪影響を与えないその他の任意の成分を含んでいてもよい。このような任意の成分は、典型的には、組成物の美観を強化するため、本組成物の製造、加工、取り扱いおよび適用を容易するため、さらに本コーティング組成物またはそれから生成した硬化されたコーティングの具体的な機能特性を改善するためにコーティング組成物に含まれる。このような任意の成分としては、例えば、色素、顔料、トナー、増量剤、充填剤、潤滑剤、防食剤、流れ調整剤、チキソトロープ剤、分散剤、抗酸化剤、接着促進剤、光安定剤、有機溶媒、界面活性剤、および、それらの混合物が挙げられる。それぞれの任意の成分は、その意図する目的に役立つのに十分な量で、ただしコーティング組成物またはそれから生成した硬化されたコーティング組成物に悪影響を与えないような量で含まれる。
【0083】
1つの有用な任意の成分は、潤滑剤(例えば、ワックス)である、これは、例えば、コーティングされた金属支持体に滑性を付与することによって、金属物品の製造を容易にすることが可能である。好ましい潤滑剤の例は、カルナウバ蝋である。潤滑剤が用いられる場合、潤滑剤は、本コーティング組成物の不揮発性物質の重量に基づき、好ましくは少なくとも約0.1重量%、好ましくは約2重量%未満、より好ましくは約1重量%未満の量で本コーティング組成物中に存在する。
【0084】
その他の有用な任意の成分は、顔料であり、例えば二酸化チタンである。
界面活性剤を任意に本コーティング組成物に添加して、流れや支持体の湿潤を補助できる。界面活性剤の例としては、これらに限定されないが、ノニルフェノールポリエーテル、および、塩、ならびに類似の界面活性剤が挙げられる。
【0085】
本発明の樹脂系は、好ましくは、水性キャリアー(例えば、水)に分散された状態であってもよい。本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物の重量に基づいて、好ましくは約10重量%〜約80重量%、より好ましくは約15重量%〜約65重量%、さらにより好ましくは約20重量%〜約50重量%の水性キャリアーを含む。
【0086】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の重量に基づいて、約5重量%〜約55重量%、より好ましくは約15重量%〜約55重量%、さらにより好ましくは約30重量%〜約50重量%の不揮発性成分を含む。また、例えば、組成物の美観または性能を強化するための顔料、充填剤または添加剤のようなその他の任意の成分が本組成物に含まれていてもよく、従って、本組成物中の全不揮発性物質の重量パーセントが、コーティング組成物の約60重量%よりも高く増加する可能性がある。
【0087】
また本コーティング組成物は、例えば組成物の成分の分散または乳化を促進したり、または、本コーティング組成物の支持体への塗布を改善したりするために、揮発性の有機溶媒を含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、本コーティング組成物は、コーティング組成物の重量に基づいて、好ましくは約5重量%〜約50重量%、より好ましくは約12重量%〜約50重量%、さらにより好ましくは約20重量%〜約40重量%の揮発性の有機溶媒を含む。
【0088】
適切な揮発性の有機溶媒は、好ましくは、貯蔵中に蒸発しない程度に低い蒸気圧を有し、且つ、硬化中にコーティング組成物から蒸発できる程度に高い蒸気圧を有する。適切な揮発性の有機溶媒の非限定的な例としては、エチレングリコールのメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルまたはフェニルエーテル;モノエチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;プロピレングリコール、または、ジプロピレングリコール;エチレングリコールメチルエーテルアセタート;エチレングリコールエチルエーテルアセタート;エチレングリコールブチルエーテルアセタート;ジエチレングリコールモノエチルエーテル;ジエチレングリコールエチルエーテルアセタート;ジエチレングリコールブチルエーテルアセタート;プロピレングリコールメチルエーテルアセタート;ジプロピレングリコールメチルエーテルアセタート;n−ブタノール;ヘキシルアルコール;酢酸ヘキシル;メチルn−アミルケトン;ブチレングリコール;ジイソブチルケトン;メチルプロピルケトン;メチルエチルケトン;メチルイソブチルケトン;2−エトキシエチル酢酸塩;t−ブチルアルコール;アミルアルコール;2−エチルヘキシルアルコール;シクロヘキサノール;イソプロピルアルコール;および、類似の有機溶媒、ならびにそれらの混合物が挙げられる。特に好ましい揮発性の有機溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、および、それらの混合物が挙げられる。
【0089】
特に好ましい本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づき、約30〜約50重量%の量の不揮発性成分、約20〜約40重量%の量の揮発性の有機溶媒、および、約20〜約50重量%の量の水性キャリアーを含む。
【0090】
本発明のコーティング組成物は、具体的な用途にとって望ましい具体的なコーティングまたは膜特性に応じて様々であってもよい。例えば、飲料缶の蓋のための内部コーティングのようないくつかの用途において、硬化されたコーティングは、好ましくは、コーティングされた支持体を変形させること(例えば、スタンピングまたは鋳造すること)によって飲料用缶の蓋を形成することに伴う機械的応力に耐えるのに適切な量の柔軟性を有すると予想される。硬化されたコーティングに比較的低い機械的応力しかかからない用途では、柔軟性は、例えば飲料用缶の蓋用途の場合ほど重要ではない場合がある。同様に、本発明のコーティング組成物はまた、コーティングと接触する可能性がある食品または飲料製品の性質に応じて様々であってもよい。
【0091】
本発明のコーティング組成物は、あらゆる適切な技術および器具を用いて形成することができる。
例えば、適切なコーティング組成物は、以下の本発明の方法の非限定的な例を用いて製造することができる。樹脂系は、(a)結合化合物と発展させたエポキシ化合物とを反応させることによって製造されるか、または、(b)低分子量のエポキシ化合物を望ましいEEWに発展させ、同時に発展させたエポキシ樹脂と結合化合物とを反応させることによって製造される。これらの反応は、典型的には、有機溶媒中で行われる。続いて、結合化合物に結合したエポキシ化合物の存在下でアクリル酸成分を形成するためのアクリル酸単量体混合物を重合させ、アクリル酸成分を形成する。好ましくは、アクリル酸単量体混合物を本明細書において説明されるラジカル開始剤の存在下で重合して、長期にわたり(例えば90分間)反応混合物に供給してもよい。得られた樹脂系を水分散性にするために、反応混合物に適切な量の中和剤を添加して、樹脂系に塩の基を形成してもよい。続いて反応混合物に任意の架橋剤を添加してもよく、続いて樹脂系を水性キャリアー中に分散させるのに十分な量の水性キャリアーを添加する。続いて得られたコーティング組成物に、任意の触媒を添加してもよい。1回またはそれより多くの添加工程で、触媒、ワックスおよびその他の任意の成分を本コーティング組成物に添加してもよい。望ましいコーティングまたは膜特性(例えば、粘度、固体含量など)を有するコーティング組成物を達成するために、追加の水性キャリアーおよび/または有機溶媒を添加してもよい。
【0092】
任意に、上記の分散工程の前に、その後に、または、その前と後の両方に架橋剤を添加してもよい。いくつかの実施態様において、架橋剤は、2回またはそれより多くの追加の工程で添加してもよく、このような工程は撹拌を含んでいてもよく、さらに任意の遅延時間で分離してもよい。その他の好ましい実施態様において、有機溶媒中の架橋剤は、中和剤を添加した後に、および、樹脂系を水性キャリアー中に分散させる前に添加される。理論に拘束されることは意図しないが、この時点で架橋剤を添加することによって、エポキシ成分とアクリル酸成分との間で所定量の架橋が形成されると考えられ、それにより、それから生成した硬化コーティングのレトルト耐性が強化できる。
【0093】
樹脂系を水分散性にするのに適した中和剤の例としては、中和塩基、例えば第一、第二または第三アミン;第一、第二または第三アルカノールアミン;アンモニウム;水酸化アルキルアンモニウム;水酸化アリールアンモニウム;、または、それらの混合物が挙げられる。適切な中和塩基の例としては、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム(ここでアルキル基は、好ましくは1〜約4個の炭素原子を有し、例えば水酸化テトラメチルアンモニウムであえる)、モノエタノールアミン、ジメチルアミン、メチルジエタノールアミン、ベンジルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルエタノールアミン、ブチルアミン、ピペラジン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、2−ジメチルアミン−2−メチル−1−プロパノール、ジイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、N−メチルピペリジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ピペリジン、ピリジン、ジメチルアニリン、ならびに、類似のアミンおよびアルカノールアミン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0094】
本発明はまた、支持体のコーティング方法を提供する。いくつかの実施態様において、金属支持体は、一般的に食品および飲料の包装業界で用いられる金属であり、例えば鋼、アルミニウム、または、それらの組み合わせである。一実施態様において、本方法は、本明細書において説明される組成物を形成すること、および、金属支持体を食品用もしくは飲料用容器またはそれらの一部(例えば、飲料缶の蓋)に形成する前に、または、その後に、本組成物を金属支持体に塗布することを含む。
【0095】
本コーティング組成物を支持体に塗布するためにあらゆる適切な方法および器具が使用できる。適切な塗布方法の例としては、ロールコーティング、スプレーコーティング、浸漬、および、ウォッシュコーティングが挙げられる。
【0096】
本コーティング組成物を支持体に塗布した後、このようなコーティングは、好ましくは、コーティングされた支持体を適切な量の熱に適切な期間晒すことによって硬化される(または、硬化される)。いくつかの好ましい実施態様において、本コーティング組成物は、塗装鋼版の焼き付け時の最高温度(peak metal tempreture)の、約175〜280℃で約5秒間〜約15分間硬化される。続いて得られたコーティングされた支持体から、本明細書において開示された物品を形成することができる。
【0097】
上述したように、好ましい本発明のコーティング組成物は、食品用および飲料用缶(例えば、ツーピース缶、スリーピース缶など)への使用に特によく適している。好ましいコーティングは、食品または飲料が接触している状況での使用に適しており、これらコーティングはこのような缶の内部(またはの外部)に用いてもよい。具体的な実施態様は、特に、スプレー用途、および/または、コイルコーティング用途に適している。また本発明は、その他の用途においてにおいて有用性も提供する。これらの追加の用途としては、これらに限定されないが、ウォッシュコーティング、シートコーティング、および、サイドシームコーティングが挙げられる(例えば、食品用缶のサイドシームコーティング)。
【0098】
スプレーコーティングは、予め形成された包装容器の内部にコーティングされた組成物を導入することを含んでいてもよい。スプレーコーティングに適した典型的な予め形成された包装容器としては、食品用缶、ビールおよび飲料用容器などが挙げられる。好ましくは、このようなスプレーは、予め形成された包装容器の内部を均一にコーティングすることができるスプレーノズルを利用する。続いて、このようにしてスプレーされた予め形成された容器は、好ましくは残留溶媒を除去するために熱処理され、コーティングを硬化させる。
【0099】
コイルコーティングは、金属(例えば、鋼またはアルミニウム)で構成される連続コイルのコーティングとして説明されている。コイルがコーティングされたら、コーティングコイルは、典型的には、コーティングを硬化させる(例えば、乾燥させ、硬化させる)ための短時間の熱、紫外線および/または電磁硬化サイクルで処理される。コイルコーティングは、コーティングされた金属(例えば、鋼および/またはアルミニウム)支持体を提供し、これは、例えば2ピースの食品用絞り缶、3ピースの食品用缶、食品用缶の蓋、絞りしごき缶、飲料用缶の蓋などの、形成された物品に加工することができる。
【0100】
ウォッシュコーティングは、商業的には、保護コーティングの薄層を有する2ピースの絞りしごき加工(「D&I」)缶の外部のコーティングと説明されている。これらのD&I缶の外部は、コーティング組成物のカーテン下で予め形成された2ピースのD&I缶を通過させることによって「ウォッシュコーティング」される。この缶をひっくり返して、すなわちカーテンを通過させる際に缶の開口端が「下向き」になるようにする。このコーティング組成物のカーテンは、「滝のような」外観を呈する。これらの缶がこのコーティング組成物のカーテンの下を通過すると、液状のコーティング材料がそれぞれの缶の外部を効果的にコーティングする。典型的には、過量のコーティングは、「エアナイフ」の使用によって除去される。それぞれの缶の外部に望ましい量のコーティングがに塗布されたら、それぞれの缶を、好ましくは熱、紫外線および/または電磁硬化炉を通過させて、コーティングを硬化する(例えば、乾燥させて硬化する)。
【0101】
正方形または長方形の「シート」に予めカットされた様々な材料(例えば、鋼またはアルミニウム)の別個のピースをコーティングする方法として、シートコーティングを説明する。これらのシートの典型的な寸法は、約1平方メートルである。各シートをコーティングしたら、それらを硬化する。硬化したら(例えば、乾燥させて硬化する)、コーティングされた支持体のシートを回収して、その後の製造に応じて調製する。シートコーティングは、コーティングされた金属(例えば、鋼またはアルミニウム)支持体を提供し、これは、例えば2ピースの食品用絞り缶、3ピースの食品用缶、食品用缶の蓋、絞りしごき缶、飲料用缶の蓋などの、形成された物品にうまく加工することができる。
【0102】
一実施態様において、サイドシームコーティングは、形成された3ピースの食品用缶の溶接部位を覆うように液体コーティングをスプレー塗布すること、と説明されることがある。3ピースの食品用缶を製造しようとする場合、コーティングされた支持体の長方形のピースを円柱に成形する。このような円柱は、熱溶接によって長方形の両辺を永続的に溶接することによって成形される。溶接したら、それぞれの缶は通常、露出した「溶接部」が後で腐食または含まれる食材へのその他の作用を起こさないように保護するための液体コーティングの層を必要とする。このような役割において機能する液体コーティングは、「サイドシームストライプ(side seam stripe)」と名付けられている。典型的なサイドシームストライプをスプレー塗布して、小型の熱、紫外線および/または電磁オーブン、それに加えて溶接操作からの余熱によって迅速に硬化する。
【0103】
また、例えば電気コーティング、押出しコーティング、ラミネート、パウダーコーティングなどのその他の市販のコーティング塗布および硬化方法も想定される。
試験方法
以下に記載した実施例では、特に他の指定がない限り、以下の試験方法を利用した。
【0104】
A.接着性
コーティングがコーティングされた支持体にに接着するかどうかを評価するために、接着性試験が行われた。接着性試験は、ASTM D3359−試験方法Bに従って、ミネソタ州セントポールの3M社(3M Company)より入手可能なスコッチ(SCOTCH)610テープを用いて行われた。一般的に、接着性は0〜10段階で評価をつけられ、ここで「10」の評価は、接着していないところがないことを示し、「9」の評価は、コーティングの90%が接着した状態であることを示し、「8」の評価は、コーティングの80%が接着した状態であることを示す。
【0105】
商業的に実現可能なコーティングの場合は、一般的には10の評価の接着性が望ましい。好ましい本発明のコーティングは、レトルト法に従ってレトルト処理した後に、上述のようにして試験したところ、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも9、最も好ましくは10の評価の接着性を示す。ここでは、コーティングが少なくとも8の評価の接着性を示す場合、接着性試験を満たすとみなされる。
【0106】
表2に、本発明に従って製造されたコーティングに関する上記試験の結果(レトルト法に従ってレトルト処理した後)を示す。
B.白化耐性
白化耐性は、様々な溶液による攻撃に耐性を示すコーティングの能力を測定する。白化は、一般的に、コーティングされたフィルムに吸収された水の量によって測定される。フィルムが水を吸収する場合、フィルムは一般的に曇ったようになるか、または、白く見える。白化は、一般的に、見た目で0〜10段階を用いて測定され、ここで「10」の評価は、白化がないことを示し、「0」の評価は、フィルムが完全に白化したことを示す。コーティングされた支持体のサンプルを、白化に関して以下のように評価した:
・10:コーティングの白化は観察されなかった;
・8〜9:コーティング表面に極めてわずかな曇りが観察された;
・7:コーティングにわずかに曇った外観が観察された;
・5〜6:コーティングに中程度の曇った外観が観察された;
・3〜4:コーティングに曇った外観が観察された;
・1〜2:コーティングにほぼ完全な白化が観察された;
・0:コーティングに完全な白化が観察された。
【0107】
商業的に実現可能なコーティングの場合は、一般的には少なくとも7の評価の白化が望ましく、9またはそれより高い評価が最適である。
ここでは、コーティングが上述のようにして試験したところ少なくとも7の評価の白化を示す場合、そのコーティングは白化耐性試験を満たすとみなされる。好ましい本発明のコーティングは、レトルト法に従ってレトルト処理した後に、上述のようにして試験したところ、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、さらにより好ましくは少なくとも9、最も好ましくは10の評価の白化を示す。
【0108】
表2に、本発明に従って製造されたコーティングに関する上記試験の結果(レトルト法に従ってレトルト処理した後)を示す。
C.耐汚染性(Stain Resistance)
耐汚染性は、一般的に、見た目で0〜10段階を用いて測定され、ここで「10」の評価は、汚染がないことを示し、「0」の評価は、フィルムが完全に変色したことを示す。コーティングされた支持体のサンプルを、以下のように耐汚染性に関して評価した:
・10:コーティングに変色は観察されなかった;
・8〜9:コーティングに極めてわずかな変色が観察された;
・7:コーティングにある程度の変色が観察された;
・6:コーティングに明らかな変色が観察された;
・2〜5:コーティングに強い変色が観察された;
・0〜1:コーティングに極めて強い変色が観察された。
【0109】
商業的に実現可能なコーティングの場合は、一般的には、少なくとも6の評価の耐汚染性が望ましく、8またはそれより高い評価が最適である。ここでは、コーティングが上述のようにして試験したところ少なくとも6の評価の汚染性を示す場合、そのコーティングは耐汚染性試験を満たすとみなされる。
【0110】
好ましい本発明のコーティングは、レトルト法に従ってレトルト処理した後に、上述のようにして試験したところ、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、さらにより好ましくは少なくとも9、最も好ましくは10の評価の耐汚染性を示す。
【0111】
表2に、本発明に従って製造されたコーティングに関する上記試験の結果(レトルト法に従ってレトルト処理した後)を示す。
D.有孔度試験
この試験は、コーティングの柔軟性レベルの指標を提供する。その上、この試験は、飲料用缶の蓋を生産するのに必要な形成プロセスを受ける際のコーティングの完全性を保持するコーティングの能力を測定する。これは、形成された蓋にひび割れまたは破断があるかないかの尺度である。蓋は、典型的には、電解質溶液で充填されたカップに入れられる。カップをひっくり返して、蓋表面を電解質溶液に晒す。続いて蓋を通る電流の量を測定する。製造後にコーティングが無傷(ひび割れまたは破断がない)のままであれば、蓋を通過するのは最小の電流であると予想される。
【0112】
この評価のために、十分に変換された206個の標準的な開口部を有する飲料缶の蓋を、脱イオン(DI)水中1重量%のNaClで構成される電解質溶液に4秒間晒した。金属の露出を、ウィルケンス−アンダーソン社(Wilkens−Anderson Company,シカゴ,イリノイ州)より入手可能な6.3 ボルトの出力電圧を有するWACOエナメルレーターII(WACO Enamel Rater II)を用いて測定した。測定された電流はミリアンペアで報告した。蓋の導通性は、まず最初に試験して、続いて蓋を低温殺菌処理またはレトルト処理した後に試験することが一般的である。
【0113】
ここでは、コーティングが上述のようにして試験したところ、(蓋形成後に)約10ミリアンペア(mA)未満の電流を通す場合、そのコーティングは有孔度試験を満たすとみなされる。
【0114】
本発明のコーティングは、上述のようにして試験したところ、レトルトまたは低温殺菌処理の前に、好ましくは約10mA未満、より好ましくは約5mA未満、さらにより好ましくは約2mA未満、最適には約1mA未満を通す。低温殺菌処理またはレトルト後は、好ましいコーティングは、約20mA未満、より好ましくは約10mA未満、さらにより好ましくは約5mA未満、さらにより好ましくは約2mA未満の導通性を示す。
【0115】
表2に、本発明に従って製造されたコーティングに関する上記試験の結果(レトルト法に従ってレトルト処理した後)を示す。
E.レトルト法
コーティングした支持体サンプルを容器中に入れ、部分的に試験物質中に浸した。部分的に試験物質中に浸したままで、コーティングした支持体サンプルをオートクレーブに入れ、121℃および大気圧よりも1気圧高い圧力で、具体的な試験物質に応じて30分間(0.4、1.0および2.0重量%のクエン酸溶液;および、ゲータレード飲料製品の場合)、60分間(酸性コーヒーの場合)、または、90分間(脱イオン水の場合)のいずれかの期間熱処理した。続いて、コーティングされた支持体サンプルを、上述のコーティング特性の試験方法に従って、接着性、白化耐性、耐汚染性および有孔度に関して試験した。
【0116】
F.レトルト試験物質の製造
特に他の指定がない限り、コーティング特性試験で用いられた試験物質は、以下の物質であった:
0.4、1.0および2.0重量%のクエン酸溶液を、適切な量のクエン酸と適切な量の脱イオン水とを混合して指定された濃度のクエン酸を含む溶液を生産することによって製造した。
【0117】
酸性コーヒー溶液を、コーヒー1リットルあたり4グラムのクエン酸を溶解させることによって製造した。
ゲータレード飲料製品の溶液を、十分な量の脱イオン水に60グラムの粉末状のゲータレード飲料製品を溶解させ、1リットルの溶液を生産することによって製造した。
【実施例】
【0118】
以下の実施例によって、本発明を説明する。当然のことながら、具体的な実施例、材料、量および手法は、一般的に本明細書に記載の本発明の範囲および本質に従って解釈されることとする。特に他の指定がない限り、全ての部およびパーセンテージは重量に基づき、全ての分子量は、重量平均分子量である。特に他の規定がない限り、用いられた全ての化学物質は、例えば、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich,セントルイス,ミズーリ州)から市販されている。
【0119】
【表1】

【0120】
実施例1〜6:エポキシアクリラート樹脂系の製造
表1Aおよび1Bに、実施例1〜6それぞれのエポキシアクリラート樹脂の構造的な構成を示す。
【0121】
実施例1〜6それぞれに関して、撹拌器、還流冷却器、熱電対、加熱マントルおよび窒素雰囲気を備えた容器に成分1〜5の反応混合物を添加した。この反応混合物を120℃に加熱し、発熱させた。発熱後、この反応混合物を、エポキシ当量(EEW)が3,300〜3,500g/モルになるまで、必要に応じて冷却しながら178〜185℃の温度に維持した。
【0122】
実施例6に関して、続いてこの混合物に成分18を添加し、温度を150℃に調節し、成分20および19を添加し、酸性度が1未満になるまで温度を150℃に維持した。
この反応混合物に、成分17を添加し、続いて成分16(不揮発物質の含量(「NVC」)=57.3%)を添加し、温度を121℃に調節した。
【0123】
別の容器で、成分6〜11からなる第一の予備混合物を製造し、均一な混合物になるように撹拌した。続いて90分かけてこの予備混合物を一定して反応混合物に添加し、同時にこの反応混合物を119〜123℃の温度で維持した。続いてこの反応混合物を119〜123℃の温度で1時間保持した。
【0124】
続いてこの反応混合物に成分12を添加し、得られた反応混合物を追加の時間、119〜123℃の温度で撹拌した。
続いて、成分13の半分(表1Aおよび1Bで指定された量の重量に基づき)をこの反応混合物に慎重に添加し、同時に反応温度を90〜91℃に下げた。
【0125】
この反応混合物に、成分14および成分13の残りの半分(表1Aおよび1Bで指定された量の重量に基づき)からなる第二の予備混合物を一定して15分にわたり添加し、同時に、反応温度を87〜91℃に維持した。同じ温度範囲でさらに1時間保持した。
【0126】
続いて、反転(inversion)させるために、この反応混合物に成分15(80〜85℃に予熱した)を60分にわたり一定して添加した。加熱を中止し、この反応混合物を冷却した。続いてこの反応混合物を5ミクロンのフィルターに通過させてろ過した。
【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
実施例7〜10:コーティング組成物の製造
実施例7のコーティング組成物を、100部の実施例2の樹脂、2.4部の27.5重量%のブチルフェノール系架橋剤の不揮発性物質(NVM)溶液、1.2部の38.2重量%のn−ブチルベンゾグアナミン架橋剤のNVM溶液、0.85部のMICHEM LUBE 160PF−E、および、2.2部の5重量%の適切な触媒のNVM溶液を用いて製造した。
【0130】
実施例8のコーティング組成物を、100部の実施例3の樹脂、2部の27.5重量%のブチルフェノール系架橋剤のNVM溶液、1.62部の33重量%のn−ブチルベンゾグアナミン架橋剤のNVM溶液、1.05部のMICHEM LUBE 160PF−E、および、1.68部の5重量%の適切な触媒のNVM溶液を用いて製造した。
【0131】
実施例9のコーティング組成物を、100部の実施例5の樹脂、2.5部の27.5重量%のブチルフェノール系架橋剤のNVM溶液、1部の33重量%のn−ブチルベンゾグアナミン架橋剤の溶液、1部のMICHEM LUBE 160PF−E、および、2.05部の5重量%の適切な触媒のNVM溶液を用いて製造した。
【0132】
実施例10のコーティング組成物を、100部の実施例6の樹脂、0.5部のMICHEM LUBE 160PF−E、1部のメチルフェノール系架橋剤を用いて製造した。
実施例7〜10のコーティング組成物を生産するために、架橋剤および触媒(存在する場合)をまず適宜希釈して上記の溶液を生産した。架橋剤をそれぞれ適切な量のブタノールで希釈し、触媒を適切な量のDIWで希釈した。続いて架橋剤溶液を、力強く撹拌しながら実施例2、3および5の樹脂にゆっくり添加した。架橋剤溶液の導入が完了したら、撹拌を15分間維持した。その後、触媒溶液(存在する場合)およびワックスを撹拌しながらゆっくり添加した。撹拌を15分間維持して成分を分散させた。
【0133】
全ての支持体をコーティングするのに用いる前に、得られたワニスを12時間静置した。
実施例11〜14:実施例7〜10のコーティング組成物での支持体のコーティング
実施例11〜13のコーティングされた支持体サンプルを生産するために、実施例7〜9のコーティング組成物をアルミニウム支持体(レナル(Rhenalu)(アルカン)製の5182−0.224mm−H48 Cr処理済みスプレー)のサンプルにバーコーターを用いて塗布した。続いてコーティングされた支持体サンプルを、オーブンで232℃の金属の到達最高温度(PMT)で21秒間硬化した。得られた硬化されたコーティングの乾燥フィルム重量は、約12グラム/平方メートル(g/m)であった。
【0134】
実施例14のコーティングされた支持体サンプルを生産するために、実施例10のコーティング組成物をアルミニウム支持体5182H19(アルコア(Alcoa))のサンプルに塗布した。続いてコーティングされた支持体サンプルを オーブンで232℃のPMTで14秒間硬化した。得られた硬化されたコーティングの乾燥フィルム重量は、約12g/mであった。
【0135】
実施例11〜14のコーティングされた支持体サンプルへのレトルト処理の作用
続いて実施例11〜14のコーティングされた支持体サンプルを、上記のレトルト法に従ってレトルト処理した(試験物質は以下の表2に示した通り)。レトルト処理後、実施例11〜14のコーティングされた支持体サンプルを接着性試験、白化耐性試験、耐汚染性試験および有孔度試験で処理した。各コーティング特性試験ごとに異なるコーティングされた支持体サンプルを用いた(すなわち、1つのコーティングされたサンプルを、複数のコーティング特性試験で処理しなかった)。表2に、これらの試験の結果を示す。耐汚染性試験は、ゲータレード溶液または酸性コーヒーでレトルト処理されたコーティングされた支持体サンプルのみで行われ、一方で、有孔度試験は、1%クエン酸溶液でレトルト処理されたコーティングされた支持体サンプルのみで行われた。
【0136】
【表4】

【0137】
表2にまとめた結果によれば、実施例11〜13の硬化したコーティングはいずれも行った全ての試験を満たしていることが示される。そのようなものとして、表2の結果によれば、実施例11〜13はいずれも(a)2%クエン酸溶液、酸性コーヒーおよびゲータレード溶液に関する接着性試験;ならびに、(b)1%クエン酸溶液に関する有孔度試験を満たしていたために、実施例11〜13の硬化された組成物はいずれも全面的にレトルト処理可能であったことが示される。
【0138】
表2に記載されたデータから示されるように、実施例13の硬化された組成物は少なくとも全体的にレトルト処理可能であった。
本発明を様々な特定の好ましい実施態様および技術を参照しながら説明した。しかしながら、本発明の本質および範囲に当てはまるのであれば多くのそれらの変種および改変がなされ得ることは理解できるものと予想される。全ての特許、特許文書および出版物の完全な開示は、それぞれ個々に包含されているものとして、この参照により開示に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品用もしくは飲料用容器またはそれらの一部を含むコーティングされた物品であって:
該食品用もしくは飲料用容器またはそれらの一部は:
金属支持体;および、
少なくとも金属支持体の一部に塗布されるコーティング組成物、
を含み、
該コーティングは:
エポキシ成分と、少なくとも約40℃のTgを有するアクリル酸成分とを含む水分散性の樹脂系;および、
水性キャリアー、
を含み、ここで、該コーティング組成物が硬化されて、硬化されたコーティングが形成される場合、硬化されたコーティングは少なくとも最低限レトルト処理可能である、上記物品。
【請求項2】
前記コーティング組成物が、少なくとも最低限レトルト処理可能な硬化されたコーティングを含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項3】
前記硬化されたコーティングが、少なくとも実質的にレトルト処理可能である、請求項2に記載のコーティングされた物品。
【請求項4】
前記硬化されたコーティングが、少なくとも全体的にレトルト処理可能である、請求項2に記載のコーティングされた物品。
【請求項5】
前記硬化されたコーティングが、少なくとも広範囲にわたりレトルト処理可能である、請求項2に記載のコーティングされた物品。
【請求項6】
前記硬化されたコーティングが、少なくとも全面的にレトルト処理可能である、請求項2に記載のコーティングされた物品。
【請求項7】
前記アクリル酸成分が、約60℃より大きいTgを有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項8】
前記アクリル酸成分が、約80℃より大きいTgを有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項9】
前記アクリル酸成分が、約90℃より大きいTgを有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項10】
前記アクリル酸成分が、1種またはそれより多くの非官能性単量体、および、1種またはそれより多くの酸性の官能性単量体を含む単量体混合物から製造される、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項11】
前記1種またはそれより多くの非官能性単量体が、スチレン、ハロスチレン、イソプレン、共役ブタジエン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、ブチルメタクリラート、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、ペンチルアクリラート、イソアミルアクリラート、ヘキシルアクリラート、エチルヘキシルアクリラート、ラウリルアクリラート、C〜C12アクリル酸アルキル、C〜C12メタクリル酸アルキル、C〜C12アルキルクロトン酸塩、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジブチル、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、または、それらの組み合わせを含む、請求項10に記載のコーティングされた物品。
【請求項12】
前記非官能性単量体が、単量体混合物の総重量に基づき約25重量%より多い量で存在する、請求項10に記載のコーティングされた物品。
【請求項13】
前記単量体混合物が、単量体混合物の総重量に基づき約20〜約60重量%のスチレンを含む、請求項10に記載のコーティングされた物品。
【請求項14】
前記酸性の官能性単量体が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、ソルビン酸、無水マレイン酸、および、それらのエステル、または、それらの組み合わせを含む、請求項10に記載のコーティングされた物品。
【請求項15】
前記単量体混合物が、コーティング組成物の総重量に基づき約20〜約50重量%のアクリル酸、メタクリル酸またはそれらの混合物を含む、請求項100に記載のコーティングされた物品。
【請求項16】
前記エポキシ成分が、二価フェノールと1個またはそれより多くのエポキシ基を有する化合物との反応で製造されたポリエーテルジエポキシドを含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項17】
前記エポキシ成分が、二量体脂肪酸の反応生成物を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項18】
コーティング組成物の総重量に基づき約25重量%以下の1種またはそれより多くの架橋剤をさらに含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項19】
前記1種またはそれより多くの架橋剤が、フェノール系架橋剤、アミノ架橋剤、または、それらの組み合わせを含む、請求項18に記載のコーティングされた物品。
【請求項20】
前記コーティング組成物が、有機金属触媒をさらに含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項21】
前記有機金属触媒が、チタンを含む触媒、ジルコニウムを含む触媒、アルミニウムを含む触媒、または、それらの組み合わせを含む、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項22】
前記有機金属触媒が、チタンを含む触媒を含む、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項23】
前記樹脂系が、エポキシ成分とアクリル酸成分との両方を含むポリマーを含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項24】
前記ポリマーが、結合基を含み、該結合基を介してエポキシ成分とアクリル酸成分とが共有結合で連結されている、請求項23に記載のコーティングされた物品。
【請求項25】
前記結合基が、以下の式:
−CH=CH−(CH=CH)−(CH−Y、または、
−C≡C−(C≡C)−(CH−Y、
[式中:
はそれぞれ、独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のアルケニル基、または、置換または非置換の芳香族基のいずれか1つを意味し;
rは、0〜6であり;
sは、0〜6であり;
pは、0〜18であり;および
Yは、カルボン酸基、ヒドロキシル基、アミン基、アミド基、または、メルカプト基のいずれか1つを意味する]
のいずれか1つを含む結合化合物から形成される、請求項24に記載のコーティングされた物品。
【請求項26】
それらに接着した前記コーティングを有する前記金属支持体の一部が、食品と接触する表面を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項27】
前記コーティングされた物品が、飲料缶の蓋を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項28】
エポキシ成分と、
少なくとも約40℃のTgを有するアクリル酸成分と、
を含む水分散性の樹脂系;および、
水性キャリアー、
を含むコーティング組成物を製造すること;
食品または飲料容器の金属支持体に該コーティング組成物を塗布すること;および、
該コーティング組成物を硬化して、少なくとも最低限レトルト処理可能な硬化されたコーティングを形成すること、
を含む方法。
【請求項29】
コーティング組成物であって:
エポキシ成分と、
少なくとも約40℃のTgを有するアクリル酸成分と、
を含む水分散性の樹脂系;
水性キャリアー;および、
アルミニウムを含む有機金属触媒、チタンを含む有機金属触媒、亜鉛を含む有機金属触媒またはそれらの混合物を含む有機金属触媒;
を含み、ここで、該コーティング組成物を食品または飲料容器の表面に塗布し、その上にコーティングが形成されると、このようなコーティングは少なくとも最低限レトルト処理可能である、上記組成物。

【公表番号】特表2010−504257(P2010−504257A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529332(P2009−529332)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/078727
【国際公開番号】WO2008/036628
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(503026211)ヴァルスパー・ソーシング・インコーポレーテッド (15)
【Fターム(参考)】