説明

食品組成物

【課題】 血栓溶解作用に優れた新規な食品組成物を提供すること。
【解決手段】 乾漆の黒焼粉末を必須成分とし、水蛭(HIRUDO)、しゃ虫(EUPOLYPHAGA)およびセイソウ(MELOLONTHA)の各黒焼粉末をさらに含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血栓溶解作用を有する食品組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水蛭(HIRUDO)の血栓溶解作用に着目して、水蛭およびその他の生薬を含有させた血栓溶解促進組成物や血液粘度低下食品等が提案されている。例えば、特許文献1には、水蛭に、田七人参、ウコン、鶏血藤および丹参葉を配合した血栓溶解促進組成物が開示されており、特許文献2には、柴胡、桃仁、牡丹皮、紅花、三稜、莪求、虻虫、水蛭およびしゃ虫等の1種又は2種以上を含む薬効組成物が開示されており、特許文献3には、水蛭、虻虫、しゃ虫の少なくとも1種の黒焼粉砕物を必須成分とする血液粘度低下食品が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−176408号公報
【特許文献2】特開平9−48734号公報
【特許文献3】特開昭61−286328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1〜3に記載された組成物は、水蛭に、従来から血栓溶解作用を有するとされている動植物の生薬を配合したものであり、上記以外の生薬で、血栓溶解作用に優れた新規な生薬を用いた組成物は開示されていない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、血栓溶解作用に優れた新規な食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、乾漆の黒焼粉末に着目し、該粉末を含有する組成物の効能を鋭意検討したところ、優れた血栓溶解作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕 乾漆の黒焼粉末を含有することを特徴とする、血栓溶解作用を有する食品組成物、
〔2〕 水蛭(HIRUDO)、しゃ虫(EUPOLYPHAGA)およびセイソウ(MELOLONTHA)の各黒焼粉末をさらに含有する、前記〔1〕記載の食品組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、血栓溶解作用に優れた食品組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の食品組成物は、乾漆の黒焼粉末を必須成分とするものであり、以下では、水蛭、しゃ虫およびセイソウの各黒焼粉末をさらに含有させてなる組成物を好ましい実施形態の一例として説明する。
【0010】
乾漆は、ウルシ(Rhus verniciflua STOKES)の分泌物を乾燥したものである。乾漆は、採取したウルシを原料として常法にしたがって薬用に供することができるものを製造してもよいが、市販品を購入することもできる。
【0011】
水蛭は学名をHIRUDOといい、例えば、ウマビル(WHITMANIA PIGRA WHITMAN)、チャイロビル(W.ACRANULATA)、チスイビル(HIRUDO NIPPONIA WHITMAN)その他の種類があり、本発明では、これらのいずれもが好適に使用できる。水蛭は、捕獲したものを原料として常法にしたがって薬用に供することができるものを製造してもよいが、市販品を購入することもできる。
【0012】
しゃ虫は学名をEUPOLYPHAGAといい、例えば、シナゴキブリ(EUPOLYPHAGA SINENSIS WALKER)、サツマゴキブリ(OPISTHOPLATIA ORIENTALIS BURMEISTER)その他の種類があり、本発明では、これらのいずれもが好適に使用できる。しゃ虫は、捕獲したものを原料として常法にしたがって薬用に供することができるものを製造してもよいが、市販品を購入することもできる。
【0013】
セイソウは学名をMELOLONTHAという。セイソウは、捕獲したものを原料として常法にしたがって薬用に供することができるものを製造してもよいが、市販品を購入することもできる。
【0014】
本実施形態に係る食品組成物は、上述した乾漆、水蛭、しゃ虫およびセイソウを原料として、それぞれの黒焼粉末を得、次いで得られた各黒色粉末を配合することにより製造することができる。各黒色粉末の配合割合は特に限定されないが、例えば、乾漆の黒色粉末を一番多く配合し(30重量%以上)、水蛭、しゃ虫およびセイソウの各黒色粉末を略等量ずつ配合したものを例示することができる。
【0015】
上記乾漆等の黒焼粉末は常法にしたがって製造すればよく特に限定されない。例えば、乾漆等を素焼きの土器の中に投入し、該土器を密閉するとともに、該土器の外側から加熱して乾漆等の黒焼を製造し、次いで得られた乾漆等の黒焼を取り出して粉砕することにより製造される。
【0016】
本発明の食品組成物の用法および用量は特に限定されず、例えば、毎日、朝・夕の食後に約1.5g服用する方法を挙げることができる。そして、前記食品組成物を血栓症患者が服用した場合、4週間経過後には、該患者の大部分について血中の血栓(thrombus)が30%以上減少することが認められる。このように、本発明の食品組成物は血栓溶解作用に優れるので、例えば、血栓症その他の疾患の改善用または予防用の健康食品として好適に使用することができる。
【実施例】
【0017】
以下、試験例などにより本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
【0018】
1.組成物の製造例1(本発明品の製造)
乾漆、水蛭、しゃ虫およびセイソウ(いずれも薬用として販売されているものを購入)を、焙煎機を使用して、15分間、鉄板温度を70℃から110℃まで徐々に上昇させて炒ることにより、前記各原料の黒焼を得た。次いで、得られた前記各黒焼を粉砕機にて粉砕することにより、前記各原料の黒焼粉末を得た。最後に前記各黒焼粉末をそれぞれ消菌した後、乾漆、水蛭、しゃ虫およびセイソウの各黒焼粉末をそれぞれ40重量%、20重量%、20重量%および20重量%混合することで、本発明に係る組成物(以下、「本発明品」という)を得た。
【0019】
2.組成物の製造例2(比較品の製造)
前記「1.組成物の製造例1」で得られた各黒焼粉末のうち、水蛭、しゃ虫およびセイソウの黒焼粉末をそれぞれ同量ずつ混合することで、比較品を得た。
【0020】
3.血栓溶解作用の確認試験
41〜64才の男性血栓症患者15名および40〜65才の女性血栓症患者15名を被検者として、朝・夕食後30分間、本発明品を1.5gずつ毎日服用してもらい、4週間経過時点および4ヶ月経過時点における血中のD−ダイマー値を測定した。なお、D−ダイマー値の測定は、前記被検者から採取した血液を被検サンプルとして、SIMPLIFY D-DIMER TEST(製造元:Axis-Shield PoC AS,Oslo,Norway)を用いて行なった。本発明品の服用前に比べてD−ダイマー値が30%以上低下した場合を効果有りと評価し、Dダイマー値の低下値が30%に達しない場合を無効と評価した(本発明品摂取群)。一方、比較試験として、上記と同様の被検者に対して、前記「2.組成物の製造例2」で製造した比較品を上記と同様の条件で服用してもらい、上記と同様の方法でD−ダイマー値を測定した(比較品摂取群)。結果を表1と表2に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
表1は、男性の血栓症患者について、本発明品摂取群と比較品摂取群の結果をまとめたものである。表1より、4週間経過時点において有効(表1中「+」と表記)と評価されたのは、本発明品摂取群が15名中11名、比較品摂取群が15名中8名となり、4ヶ月経過時点において有効と評価されたのは、本発明品摂取群が15名中13名、比較品摂取群が15名中8名となった。これらの結果から、本発明品摂取群の方が比較品摂取群よりも血栓溶解作用に優れていることがいえる。これは、本発明品に含有されている乾漆の黒焼粉末の影響によるものといえる。
【0024】
表2は、女性の血栓症患者について、本発明品摂取群と比較品摂取群の結果をまとめたものである。表2より、4週間経過時点において有効(表2中「+」と表記)と評価されたのは、本発明品摂取群が15名中10名、比較品摂取群が15名中9名となり、4ヶ月経過時点において有効と評価されたのは、本発明品摂取群が15名中12名、比較品摂取群が15名中10名となった。これらの結果から、表1の結果と同様に、本発明品摂取群の方が比較品摂取群よりも血栓溶解作用に優れていることがいえる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、例えば、血栓症その他の疾患の改善用または予防用の健康食品として広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾漆の黒焼粉末を含有することを特徴とする、血栓溶解作用を有する食品組成物。
【請求項2】
水蛭(HIRUDO)、しゃ虫(EUPOLYPHAGA)およびセイソウ(MELOLONTHA)の各黒焼粉末をさらに含有する、請求項1記載の食品組成物。






【公開番号】特開2008−92807(P2008−92807A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274619(P2006−274619)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(506338423)
【Fターム(参考)】