説明

食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤及び飲食品

【課題】中性脂肪吸収抑制効果に優れた食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤及び中性脂肪吸収抑制効果を有する飲食品の提供。
【解決手段】エピテアフラガリン3−O−ガレートを有効成分として含有する、食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤。この食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤を含有する飲食品。エピテアフラガリン3−O−ガレートは、エピガロカテキンガレートを含有する茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤及びこの食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤を含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本人の生活様式は変化し、平均寿命は急速に増加しているものの、食生活においては高カロリー、高脂肪化が進むとともに、運動不足なども加わり、肥満、高脂血症、高血圧や糖尿病など生活習慣病が増加している。平成17年国民健康・栄養調査結果の概要によれば、エネルギー摂取量の平均値は男女ともに漸減しているにもかかわらず、その脂質エネルギー比は適正比率である25%未満の者の比率が男女共に漸減し、30%以上の者の比率が男女共に漸増している。また運動習慣のある者の割合が最も低いのは、男性においては40代で15.6%、女性においては30代で14.0%と働き盛りの世代で最も低い。以上の生活習慣により、40〜74歳でみると、男性の2人に1人、女性の5人に1人が、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が強く疑われる者又は予備群と考えられる。これらの生活習慣病を改善あるいは予防するには、食事制限により摂取カロリーを減らすことが有効な手段ではあるが、しっかりとした栄養指導を受けなければならず、日常生活においての実行は困難である場合が多い。また、定期的な運動も有効ではあるものの、今まで運動習慣のなかった者においては継続的な実施は困難な場合が多い。
【0003】
一方、世界の各地からヒトの疾病の改善あるいは健康増進に有用な生物を探索することにも注力されているが、乱獲は資源保護、生物多様性条約の観点から好ましいものではない。また、産地や栽培履歴等が不明といったトレーサビリティーが不十分、あるいは安定供給が確保できない原料を用いたいわゆる健康食品が市場に出回ることにより、深刻な副作用や社会的混乱を引き起こしている。
【0004】
茶(Camellia sinensis)はツバキ科(Theaceae)に属する多年生の木本性常緑樹で、最も長い歴史を持つ飲料であり、2005年には日本では100,000トン、世界では3,201,000トン生産されていることから、茶を原料とすることは安心・信頼できるものがある。
【0005】
緑茶には既に種々の機能性が明らかにされている。その生理活性の中心は茶カテキンの一種であるエピガロカテキン3-O-ガレートである場合が多く(Liao A.ら Vitamins and Hormons 62, 1-94, 2001)、近年、特定保健用食品素材として使用されている。しかし、こうした食品や飲料ではエピガロカテキン3-O-ガレートの作用が不十分なために高濃度のカテキンを使用する必要があり、その結果苦みが強く、お茶本来の風味を損なう場合が多い。こうした理由から、高濃度のカテキンを使用する場合は、苦みをマスクする特殊な方法が必要となる。また茶の発酵を利用して出来た重合ポリフェノールが脂肪吸収を阻害する食品や飲料(特開2006−1909号公報など)も発売されていが、こうした食品では、エピガロカテキン3-O-ガレートなどの茶カテキンは著しく減少し、お茶本来の風味を失っている。
【非特許文献1】Liao A.ら Vitamins and Hormons 62, 1-94, 2001
【特許文献1】特開2006−1909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、生活習慣病を改善するには、風味がよく、また茶カテキンと発酵によってできたポリフェノールの適度なバランスを維持することが課題であった。そのために、エピガロカテキン 3-O-ガレートよりも低濃度で有効な茶由来重合カテキンが望まれていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、エピガロカテキン 3-O-ガレートに代わる新たな物質であって、生活習慣病を改善するに適した、特に、中性脂肪吸収抑制効果に優れた物質を見いだし、食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤を提供することにある。
【0008】
さらに本発明の目的は、上記新規食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤を含有する、中性脂肪吸収抑制効果を有する飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ラッカーゼ処理した緑茶エキス及び紅茶中に含まれるエピテアフラガリン3-O-ガレートが低濃度で優れた食後血中中性脂肪濃度上昇抑制効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は以下のとおりである。
[1]エピテアフラガリン3-O-ガレートを有効成分として含有する、食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤。
[2]肥満予防および/または肥満治療に用いられる[1]に記載の食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤。
[3]エピテアフラガリン3-O-ガレートが、エピガロカテキンガレートを含有する茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて得られる、エピテアフラガリン-3-O-ガレートを含有する混合物に含まれるエピテアフラガリン3-O-ガレートである[1]または[2]に記載の食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤を含有する飲食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた食後血中中性脂肪濃度上昇抑制効果を有する食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤及びこの食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤を含有する飲食品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
エピテアフラガリン3-O-ガレート
【化1】

【0013】
エピテアフラガリン-3-O-ガレートは、上記化学式で表され、紅茶由来の物質であるが、緑茶や紅茶に含有される量は微量であり、最も含有量の高い通常の紅茶の抽出物においても、その量は、一般に0.1%以下である(Itoh N.ら、Teterahedron, 63, 9488-9492, 2007)。従って、通常の茶の抽出物からエピテアフラガリン-3-O-ガレートを摂取することは事実上できなかった。それに対して、本発明者らは、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの新たな製造方法を確立すべく研究し、エピテアフラガリン-3-O-ガレートが、エピガロカテキンガレートに、没食子酸の存在下、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、エピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することで製造できることを見いだし、既に特許出願し(特願2006-156488)、この出願は特許されている。
【0014】
本発明に用いるエピテアフラガリン-3-O-ガレートは、上記方法により、初めて大量に食品素材として製造することができるようになり、その結果、その効能についても、本発明者らが初めて明らかにして、本発明を完成することができた。
【0015】
上記方法の原料となるエピガロカテキンガレートは、茶抽出物に含まれることから、エピガロカテキンガレートに代わって、エピガロカテキンガレートを含有する茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、前記茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキンガレートを、エピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することで、エピテアフラガリン-3-O-ガレートを含有する混合物を製造することもできる。茶抽出物としては、例えば、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物、または紅茶抽出物を挙げることができる。
【0016】
緑茶抽出物
緑茶は、ツバキ属(Camellia)植物の葉の抽出物であり、主にCamellia sinensis、Camellia assamicaの新芽を原料として、それを乾燥させたものである。緑茶抽出物としては、例えば、SD緑茶エキスパウダーNo.16714(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、サンフェノンBG(太陽化学株式会社)などを挙げることができる。また、抽出法としては、原料を熱水、含水アルコール、グリセリン水溶液、酢酸エチル等にて抽出し、精製・濃縮し、噴霧乾燥または凍結乾燥する方法がある。
【0017】
ウーロン茶抽出物
ウーロン茶は、緑茶抽出物と同様の茶葉を一定時間発酵させ、その後加熱して発酵を停止したものである(半発酵茶)。ウーロン茶抽出物としては、例えば、FDウーロン茶エキスパウダーNo.16297(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)などを挙げることができる。また、抽出法としては、原料を熱水、含水アルコール、グリセリン水溶液、酢酸エチル等にて抽出し、精製・濃縮し、噴霧乾燥または凍結乾燥する方法がある。
【0018】
紅茶抽出物
紅茶は、緑茶抽出物と同様の茶葉を強発酵させ、その後加熱して発酵を停止したものである(強発酵茶)。紅茶抽出物としては、例えば、SD紅茶エキスパウダーNo.16691(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)などを挙げることができる。また、抽出法としては、原料を熱水、含水アルコール、グリセリン水溶液、酢酸エチル等にて抽出し、精製・濃縮し、噴霧乾燥または凍結乾燥する方法がある。
【0019】
茶抽出物の例を以下の表1に示す。但し、これらの茶抽出物は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0020】
【表1】

EGCg(エピテアフラガリン-3-O-ガレート)含有量は、各メーカーのカタログ値
【0021】
上記の方法では、茶抽出物に含まれるエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で1〜10の没食子酸を添加することが適当である。好ましくはエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で2〜5の没食子酸を添加する。
【0022】
ポリフェノールオキシダーゼは、エピガロカテキンガレートをエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することができる酵素であれば、特に制限はない。そのようなポリフェノールオキシダーゼとしては、例えば、ラッカーゼ(EC1.10.3.2)、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)、ビリルビンオキシダーゼ (EC1.3.3.5)、フェノールおよびポリフェノールオキシダーゼ(EC1.10.3.1)から成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素を挙げることができる。なお、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)は、一部、1.10.3.1にも分類されるが、1.10.3.1に分類される酵素も、本発明ではチロシナーゼ(EC 1.14.18.1)の一部である。
【0023】
ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素または固定化酵素であることができる。ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素である場合、ポリフェノールオキシダーゼは没食子酸を添加した茶抽出物に所定量添加し、所定時間、所定温度で変換反応を行う。ポリフェノールオキシダーゼの所定量とは、例えば、茶抽出物を0.5(w/v)% 〜15(w/v)%を含む溶液1mlに対して10〜200Uの範囲である。
【0024】
尚、茶抽出物にどの程度のエピガロカテキンガレートが含有されているかは、茶抽出物により異なる。例えば、SD緑茶エキスパウダーでは、エピガロカテキンガレートが約13(w/w)%ほど含まれている。従って、例えば茶抽出物を1%含む溶液は、エピガロカテキンガレートが約1.3mg/mlになる。
【0025】
変換反応についての所定時間とは、例えば、10分〜15時間、所定温度とは20〜60℃の範囲である。ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応後に、茶抽出物を加熱して酵素を失活させることをさらに含む。加熱条件は、70〜90℃で2〜10分とすることが適当である。
【0026】
ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であることもできる。固定化酵素を用いる場合、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を、没食子酸を添加した茶抽出物に添加して行うことができる。変換反応の時間及び温度は、例えば、10〜240分、所定温度とは20〜60℃の範囲である。変換反応後に茶抽出物から固定化酵素を除去する。除去は、例えば、固定化酵素を濾過することで行うことができる。
【0027】
ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素である場合、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を充填した容器に没食子酸を添加した茶抽出物を通すことで行うこともできる。茶抽出物の流通の条件は、温度を20〜60℃の範囲とし、固定化酵素との接触時間を例えば、10〜240分の範囲とすることで行うことができる。
【0028】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に酸素または空気を通気しながら行うことができる。酸素または空気を通気することで、変換反応を促進することができる。酸素または空気の通気条件は例えば、0.2〜10 L/L/minとすることができる。さらに、通気の効果を高めるために、反応液を攪拌しながら通気を行うこともできる。
【0029】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキンガレートを、エピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換するように実施する。目的によっては、エピガロカテキンガレートの全量がエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換するように、没食子酸の添加量や反応条件を選択することができる。
【0030】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に没食子酸を添加して行うが、茶抽出物には、ポリフェノールオキシダーゼ活性のpH依存性を考慮して、pH調整を目的として緩衝剤を添加することもできる。但し、変換反応生成物は、そのまま飲料として利用されることを考慮すると、緩衝剤としては、例えば、リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類などを用いることが好ましい。勿論、緩衝剤を添加せずに、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応を行うこともできる。
【0031】
上記製造方法により得られるエピテアフラガリン-3-O-ガレートまたはエピテアフラガリン-3-O-ガレート含有混合物は、そのまま飲食品に加えて、本発明の飲食品とすることができる。本発明の飲食品は、具体的には飲料であり、より具体的には茶飲料である。茶飲料としては、例えば、緑茶飲料、緑茶風飲料、ウーロン茶飲料、ウーロン茶風飲料、紅茶飲料、または紅茶風飲料を挙げることができる。本発明の飲料は、エピテアフラガリン-3-O-ガレートを、例えば、0.01〜0.5質量%含有するものであることができる。
【0032】
さらに、上記製造方法により得られるエピテアフラガリン-3-O-ガレートまたはエピテアフラガリン-3-O-ガレート含有混合物は、そのまま飲食品に添加して利用することもできるが、没食子酸存在下で茶抽出物をポリフェノールオキシダーゼで処理した液を、抽出・精製または濃縮を行い、噴霧乾燥または凍結乾燥し、整粒によりエキス粉末を調製することもできる。こうした濃縮溶液またはエキス粉末を各種形態の食品およびヘルスケア製品の原料として供することもできる。
【0033】
濃縮溶液またはエキス粉末を適用できる食品としては、例えば、ガム、菓子、キャンデー、サプリメント等を挙げることができる。濃縮溶液またはエキス粉末を適用できるヘルスケア製品としては、例えば、口腔洗浄液、歯磨きペースト等を挙げることができる。
【0034】
本発明において、所望の食後血中中性脂肪濃度上昇抑制効果を得るには、後述する実施例のデータに基づけば、エピテアフラガリン-3-O-ガレートとして、20mg/kg以下程度を目安として食後に摂取すればよい。但し、食事により摂取する脂肪の量や、脂肪吸収能の個人差に応じて、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの摂取量は適宜変更できる。例えば、上記本発明のエピテアフラガリン-3-O-ガレートを0.1〜0.5質量%含有する飲料を200ml(0.2〜1g相当)摂取すれば、食後血中中性脂肪濃度上昇抑制効果が得られる。
【0035】
<参考例1>ラッカーゼ処理緑茶エキスおよびのエピテアフラガリン3-O-ガレートの調製
・ラッカーゼ処理緑茶エキス
緑茶エキス(カメリアエキス40R(太陽化学))1g及び没食子酸一水和物(純正化学)0.48gを取り、水100mLに溶解した。ラッカーゼダイワ Y120(天野エンザイム、108,000U/g)0.0093g〜0.093gを添加し、反応温度45〜50℃で、1〜4hr反応した。反応後、反応液を加熱処理して放冷し凍結乾燥し、得られた乾燥粉末をラッカーゼ処理緑茶エキスとした(特願2006-156488)。当該エキス中には、エピテアフラガリン3-O-ガレートが0.2〜1.5%(w/w)含まれていた。
【0036】
・エピテアフラガリン 3-O-ガレート
エピガロカテキン3-O-ガレート4gを水300mLに加えて攪拌した(氷冷)。フェリシアン酸カリウム10g, 炭酸水素ナトリウム 6g/水60mL、ピロガロール2.8g/水60mLを滴加した。反応液を酢酸エチル抽出(100mL×3)し、減圧下、溶媒留去し、カラムクロマト精製[ポリアミド C-200 50g(カラム径3cm)、水/エタノール混液で溶出]、エピテアフラガリン 3-O-ガレート画分を集め、水/メタノ−ルで再結晶し橙色結晶840mgを得た。
【0037】
<実施例1>膵リパーゼに対する阻害効果
膵臓由来リパーゼは、食事中の油脂成分であるトリグリセリドを脂肪酸とグリセロールに分解・消化し小腸で吸収するために必須の酵素である。従って、膵臓由来リパーゼを阻害できれば,脂肪の蓄積を直接抑えることが可能であり、抗肥満が期待できる。そこで、茶由来重合カテキンによる膵リパーゼ阻害を測定した。
【0038】
リパーゼ活性はトリオレインからのオレイン酸遊離量を測定することによって算出した。トリオレイン80mg、レシチン10mg、胆汁酸5mgを9mLの0.1Mトリス緩衝液中で超音波処理を行うことで均一な懸濁液とし、これを基質液として用いた。実験操作として、基質液0.1mLに豚由来膵リパーゼ液0.05mL及び検体液0.1mLを加え、37℃、30分間反応させ、遊離した脂肪酸を銅試薬法で定量した。活性値は検体無添加の値を100%とし、各検体の活性値を算出した。ポジディブコントロールとして市販の膵リパーゼ阻害剤であるゼニカル(Orlistat)を用いた。
【0039】
図1に示した通り、参考例1で得た、ラッカーゼ処理緑茶エキス(エピテアフラガリン3-O-ガレートを3mg/gエキス含有)及びエピテアフラガリン3-O-ガレートは、膵リパーゼ活性を阻害した。これらは、図2に示した通り、用量依存的に膵リパーゼ活性を阻害し、50%の阻害を示す濃度(IC50)は、それぞれ1.4、1.2mg/mLであった。一方、コントロールとして使用したエピガロカテキン3-O-ガレート(サンフェノンEGCG、太陽化学社製)及びエピテアフラガリンの両成分は膵リパーゼの阻害作用を示さなかった。ゼニカルは終濃度0.04mg/mLで膵リパーゼ活性を約96%阻害した。
【0040】
また牛由来膵リパーゼを用いて、合成基質である4-メチルウンベリフェリルオレート(MUO)を用いて、蛍光強度を測定する方法でも測定した。即ち、150mMNaCl、1.3mMCaCl2を含む13mMTris-HCl緩衝液(pH8.0)にて溶解したリパーゼ(牛膵液由来、50U/ml)25μl、0.1mM 4-MUO溶液50μl及び被検液25μlを混和し、25℃、30分間反応させた。0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)100μl添加して反応停止後蛍光強度(Ex:360、Em:450)を測定した。その結果、参考例1で得た、ラッカーゼ処理緑茶エキス、エピテアフラガリン3-O-ガレートは、コントロールとして使用したエピガロカテキン3-O-ガレートより強いリパーゼ阻害を示し、トリオレインからのオレイン酸遊離量によるリパーゼ阻害と一致するデータが得られた(表2)。
【0041】
【表2】

*IC50(μg/ml)カッコ内は100μM作用時の抑制率
【0042】
ラッカーゼ処理緑茶エキス(エピテアフラガリン3-O-ガレート含有)、エピテアフラガリン3-O-ガレートが強い膵臓由来りパーゼの阻害を示すことが明らかとなった。
【0043】
<実施例2>ラットにおける食後中性脂肪上昇抑制効果
一晩絶食したラット(226g前後、各5匹、コントロールは9匹)に脂質エマルジョン及び各検体(ラッカーゼ処理緑茶エキス[エピテアフラガリン3-O-ガレートを3mg/gエキス含有]、エピテアフラガリン3-O-ガレート、被検液溶液の代わりに蒸留水を添加したものをコントロールとした)を含む脂質エマルジョンを3mlずつ強制的に経口投与した。投与前、投与後60、120、180、240、300分まで経時的に尾静脈より採血し、血中の中性脂肪量をトリグリセライド-E-テストキット(和光純薬工業製)にて測定した。脂質エマルジョンは、コーンオイル6ml、生理食塩水6ml、胆汁酸100mg、コレステロールオレエート2gを混合し、超音波処理にて調製したものを脂質エマルジョンとした。
【0044】
結果を図3に平均値±標準誤差(SE)で表している。群間の有意差検定にはSuper ANOVAソフトを用い、Fisher's Protected LSD testより検定を行い、p<0.05を有意とした。その点を*マークで示した。その結果、ラッカーゼ処理した緑茶エキスには有意な食後の中性脂肪の上昇抑制作用が認められた。一方、エピテアフラガリン3-O-ガレートの20mg/kg投与では、明瞭な有意な食後中性脂肪上昇抑制作用を示した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤を提供するものであり、例えば、健康食品等の飲食品分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】膵臓由来リパーゼに対する阻害作用
【図2】膵臓由来リパーゼに対する阻害作用(用量依存性)
【図3】食後中性脂肪上昇抑制作用

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピテアフラガリン3-O-ガレートを有効成分として含有する、食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤。
【請求項2】
肥満予防および/または肥満治療に用いられる請求項1に記載の食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤。
【請求項3】
エピテアフラガリン3-O-ガレートが、エピガロカテキンガレートを含有する茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて得られる、エピテアフラガリン-3-O-ガレートを含有する混合物に含まれるエピテアフラガリン3-O-ガレートである請求項1または2に記載の食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の食後血中中性脂肪濃度上昇抑制剤を含有する飲食品。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−114079(P2009−114079A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285650(P2007−285650)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【出願人】(306018343)クラシエ製薬株式会社 (32)
【Fターム(参考)】