説明

食材味付け装置

【課題】 食材の内部に調味液を浸透させて味付けするにあたり、極めて短時間で浸透させることができ、しかも簡素な装置構成で且つ安価で安全に取り扱うことができるようにする。
【解決手段】 軟質袋5の中に食材6と調味液7を収容して開口部に袋キャップ8を装着し、圧力容器2内の金網4内にセットし、袋キャップ8に接続する排気管10の他端側を圧力容器2の排気バルブ11に接続する。軟質袋5内の気体を排出した後、排気バルブ11を閉じ、給水孔13から30kg/cm程度に加圧された水を圧力容器2内に導入し、軟質袋5を加圧する。すると、軟質袋5内の調味液7も外部の水圧と同圧となり、急速に食材6内部に浸透する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば魚肉や野菜や果物等の食材に調味汁を短時間で浸透させることのできる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば野菜等の食材を漬け込む際、漬物樽の中などに食材や調味剤などを入れて重しで荷重をかけ、数日間放置しておくことで漬け込む方法がよく知られているが、このような方法では、食材の形が崩れたり、漬け込みに長時間を要することから、食材の形を保持し且つ短時間で味付けを行う技術として、例えば容器内の目皿上に食材を収容し、この食材が浸るようにだし汁を入れて蓋をした後、だし汁液面と蓋の間の容器内の空間に圧力気体を導入してだし汁を加圧し、その後、容器の下方の空間部から真空引きすることにより、食材にだし汁を浸透させるような技術(例えば、特許文献1参照。)や、食材を減圧処理した後または減圧状態で調味液と接触させ、次いで昇圧することにより食材に調味液を含浸させるような技術(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【特許文献1】実開平4−12874号公報
【特許文献2】特開2003−174850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1の技術の場合、食材をだし汁に浸した後、だし汁を気体圧で加圧するようにしているため、食材にだし汁が浸透するときの浸透圧は、特に液面から離れる食材ほど低下し、全体を効率良く味付けすることが出来なかった。また、だし汁を加圧するのに空気を利用しているため、空気が圧縮されて場合によっては容器の蓋が飛び散る等の事態が起り得た。また、特許文献2のように、食材を減圧処理して調味液に接触させ、次いで昇圧する方法は、減圧装置や加圧装置が必要なため装置が複雑になりがちで、しかも処理に手間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、食材に調味液を浸透させて味付けするにあたり、極めて短時間で浸透させることができ、しかも簡素な装置構成で且つ安価で安全に取り扱うことのできる食材味付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明は、食材の内部に調味液を浸透させて味付けするようにした食材味付け装置において、食材と調味液が内部に収容される軟質袋と、この軟質袋の開口部に液密状に装着され且つ軟質袋内の気体を排出するための排気管の一端側が接続される金属製または硬質樹脂製の袋キャップと、該袋キャップが装着される軟質袋と袋キャップに接続される排気管とが一体に収容され且つ前記排気管の他端側に接続可能な排気口を備えた圧力容器と、この圧力容器内に導入される液体を加圧するための液体加圧源を設け、この液体加圧源によって加圧した液体を前記圧力容器内に導入することにより、前記軟質袋の外側周囲から袋内部の調味液に液体圧力を加えて食材の内部に調味液を浸透させるようにした。
【0006】
そして、軟質袋の内部に食材と調味液を収容し、排気管が接続される袋キャップを軟質袋の開口部に装着して圧力容器内にセットし、排気管の他端側を圧力容器の排気口に接続する。そして、軟質袋内に残留する空気を排気管を通して外部に排出した後、排気管と外部空間とを遮断して圧力容器を密封し、この圧力容器内に加圧された液体を導入する。すると、液体は軟質袋の周囲に充填され、軟質袋の内部の調味液は、外部の液体の圧力と同圧に高まり、食材の内部に急速に浸透する。このため、短時間で食材に調味液を浸透させることができる。
この際、食材の内部から押し出された気体は、調味液の中を気泡となって上昇し袋キャップ部分に溜まるが、袋キャップは金属製または硬質樹脂製であるため、溜まった気泡によって同部が破損するような不具合はない。
【0007】
また本発明では、前記圧力容器内に、前記軟質袋を所定の位置に保持するためのメッシュ材からなる袋保持部材を設けるようにした。
このように、メッシュ材からなる袋保持部材によって圧力容器内の略中央部分に軟質袋を保持すれば、軟質袋の外側周囲のほぼ全域に加圧液体を充填することができ、調味液を外側のほぼ全域から加圧することができる。
なお、メッシュ材としては、ある程度の剛性を有する金網等が好適である。
【発明の効果】
【0008】
軟質袋の中に食材と調味液を収容し、この軟質袋の開口部に金属製または硬質樹脂製の袋キャップを液密状に装着するとともに、この袋キャップに排気管の一端側を接続して圧力容器内に収容し、排気管を圧力容器の排気口に接続して軟質袋内の気体を排出した後、圧力容器内に加圧された液体を導入することにより、軟質袋の周囲全域から袋内部の調味液に圧力を加えて食材の内部に調味液を浸透させるようにすることで、短時間で食材の中に調味液を浸透させることができるようになり、しかも装置構成が簡素でだれでも手軽に取り扱うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は本発明に係る食材味付け装置の全体概要図、図2は袋キャップと排気管部分の拡大図、図3は液体圧で加圧する場合の効果と気体圧で加圧する場合の効果の差を説明するための説明図である。
【0010】
本発明に係る食材味付け装置は、例えば魚肉や野菜や果物等の食材に調味液を浸透させて味付けするにあたり、極めて短時間で浸透させ、しかも簡素な装置構成で且つ安価で安全に取り扱うことのできるような装置として構成され、食材と調味液とが収容される軟質袋を液体圧で加圧することを特徴としている。
【0011】
すなわち、図1に示すように、本食材味付け装置1は、開閉自在な蓋2aを有する圧力容器2と、この圧力容器2の内壁に取り付けられる支持金具3に支持される金網4と、この金網4内に挿入セットされる軟質袋5を備えており、この軟質袋5の内部に食材6と調味液7が収容されるとともに、軟質袋5の開口部には、例えば筒状の袋キャップ8が液密状に装着され、この袋キャップ8には排気管10が接続されている。そして、この排気管10の他端側は、圧力容器2の側壁に設けられる排気バルブ11にカプラ12を介して接続自在にされている。
【0012】
また、前記圧力容器2には、内部に加圧された水を供給するための給水孔13が設けられ、この給水孔13に接続される給水管14の上流には、バルブを介して加圧ポンプ15が配設されている。因みに、この加圧ポンプ15は、例えば少なくとも水圧50kg/cm程度の水圧が得られるような手動式ポンプが簡易で好適である。
また、圧力容器2の下方部には、圧力容器2内の水を排水するためのバルブ付き排水口17が設けられている。
【0013】
前記軟質袋5は、例えば厚み2〜4mm程度の柔軟性のある樹脂製袋から構成されている。そして、この軟質袋5に食材6と調味液を収容した後、開口部に袋キャップ8を挿し込み、その外側を図2に示すようなクリップバンド16で締付け固定することにより、袋5の開口部を液密状に封止する。
【0014】
袋キャップ8は、例えば厚み1〜1.5mm程度のステンレス材のようなある程度の強さと剛性のある材料から構成されており、クリップバンド16で締付け固定した場合でも変形することなく、しかも同部に気泡が溜まっても同部が破損するような不具合が生じないようにされている。なお、袋キャップ8の材質として、硬質樹脂製にしてもよい。
【0015】
前記排気管10は、本実施例の場合、ある程度の強度を有する可撓性のホースから構成され、図2に示すように、一端側が袋キャップ8の開口部に接続されて一体化されるとともに、他端側に、排気バルブ11に接続するためのカプラ12を備えている。
【0016】
以上のような食材味付け装置1における食材の味付け方法について説明する。
まず、軟質袋5に調味液7と食材6を収容し、軟質袋5の開口部に袋キャップ8を挿入してクリップバンド16で締付け固定した後、軟質袋5を金網4内にセットし、軟質袋5内の空気を押し出して排出し、排気管10のカプラ12を排気バルブ11に接続する。そして必要に応じて更に内部の空気を排出する。すなわち、軟質袋5の外側から、排気バルブ11から調味液7が排出されるようになるまで圧力を加える。そして、これらの排気が終えるとバルブ11を閉め外気と遮断する。
【0017】
次いで、加圧ポンプ15を駆動して給水孔13から圧力容器2内に加圧水18を供給する。このときの水の圧力は、概ね最大圧30kg/cm程度が好適である。すると、軟質袋5は金網4内にセットされているため、加圧水18は軟質袋5の周囲全域から軟質袋5を加圧するようになり、軟質袋5の調味液7の圧力は、外部の加圧水18の液圧と同圧となって食材6の内部に急速に浸透する。そして、食材6の鮮度や形状や食感や衛生の面で従来にない加工食品となる。
また、食材6に調味液7が浸透する際、食材6に含まれる僅かな気体成分が押し出されるが、この気体は調味液7の中を上昇し、袋キャップ8部分や排気管10内に溜まるようになる。しかしながら、袋キャップ8や排気管10はある程度の強度がある部材であるため、同部が破損したりするような不具合は生じない。
なお、加圧水18を供給する際、必要に応じて排気バルブ11を開いて排気管10や袋キャップ8部分に溜まった気体を逃がすようにしてもよい。
【0018】
ところで、図3は本願発明の水圧による加圧と、空圧による加圧を比較したものである。すなわち、図3(a)は本願発明のように、圧力容器2内に軟質袋5を入れ、軟質袋5内の調味液7と食材6を、周囲の加圧水18によって加圧した状態を示すものであるが、この場合は、例えば加圧水18の圧力を30kg/cmとした場合に、調味液7の圧力も30kg/cmと同圧になり、食材6に対して30kg/cmの圧力で浸透するが、図3(b)のように、圧力容器2内に直接調味液7と食材6を収容し、空気層19の内部に加圧空気を供給した場合、例えば空気圧が40〜50kg/cmの場合であれば、計算上、調味液7上層の食材6には、32kg/cmの圧力がかかり、中層の食材6には15.3kg/cmの圧力がかかり、下層の食材6には、10.5kg/cmの圧力しかかからず、均一に浸透させることができない。しかも圧縮された空気は、危険を伴うこともあるが、本願発明にはかかる不具合はない。
また、空気で加圧することに較べて、水で加圧すれば、調味液7の浸透時間が1/10以下に短縮される。
【実施例】
【0019】
各種食材6を使用し、本願発明の味付け装置1により加工した。
結果は次表の通りである。
【0020】
【表1】

【0021】
この結果、従来の味付け加工法とは異なって、各種食材に対して、最も大切な衛生面をはじめとし、味付け時間の短縮、調味液の浸透性、味付けの均一化、作業労力の軽減化、鮮度の維持、形状の維持等、数々の特徴を持った味付けができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
食材の内部に調味液を浸透させて味付けする装置に関し、内部に食材や調味液を収容した軟質袋を圧力容器内にセットし、軟質袋の周囲に加圧液体を導入して軟質袋の外部から圧力をかけて食材内部に調味液を浸透させることで、衛生面を良好に保ちつつ、味付け時間の短縮や、味付けの均一化や、形状の保持や、鮮度の保持等が図られる。このため、家庭等において、特に熟練の少ない人でも簡単に味付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る食材味付け装置の全体概要図
【図2】袋キャップと排気管部分の拡大図
【図3】液体圧で加圧する場合の効果と気体圧で加圧する場合の効果の差を説明するための説明図で、(a)は、液体加圧で加圧する例、(b)は気体圧で加圧する例
【符号の説明】
【0024】
1…食材味付け装置、2…圧力容器、4…金網、5…軟質袋、6…食材、7…調味液、8…袋キャップ、10…排気管、11…排気バルブ、15…加圧ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材の内部に調味液を浸透させて味付けするようにした食材味付け装置であって、食材と調味液が内部に収容される軟質袋と、この軟質袋の開口部に液密状に装着され且つ軟質袋内の気体を排出するための排気管の一端側が接続される金属製または硬質樹脂製の袋キャップと、該袋キャップが装着される軟質袋と袋キャップに接続される排気管とが一体に収容され且つ前記排気管の他端側に接続可能な排気口を備えた圧力容器と、この圧力容器内に導入される液体を加圧するための液体加圧源を備え、この液体加圧源によって加圧した液体を前記圧力容器内に導入することにより、前記軟質袋の外側周囲から袋内部の調味液に液体圧力を加えて食材の内部に調味液を浸透させるようにしたことを特徴とする食材味付け装置。
【請求項2】
前記圧力容器内には、前記軟質袋を所定の位置に保持するためのメッシュ材からなる袋保持部材が設けられることを特徴とする請求項1に記載の食材味付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−99560(P2008−99560A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282108(P2006−282108)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(506349108)株式会社 真和エンジニアリング (1)
【Fターム(参考)】