説明

食欲を抑制するためのグアニリルシクラーゼCアゴニストの使用

個体に経口投与した時に食欲を抑制するのに有効な量の持続性特異的放出のために処方されたグアニリルシクラーゼCアゴニストを含む組成物が開示される。個体に静脈内投与した時に食欲を抑制するのに有効な量での静脈内デリバリーのために処方されたグアニリルシクラーゼCアゴニストを含む組成物が開示される。個体において食欲を抑制する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
生物化学的シグナルが飢えや満腹に関与することは知られているが、関連するホルモンや他のメッセンジャーについての多くは不明である。胃腸管、脳および体の他の器官へのメッセージ、および胃腸管、脳および体の他の器官からのメッセージの調節は、完全には理解されていない。関与する1つのメッセンジャーは、コレシストキニン(CCK)であるが、それにより、CCKの受容体に対するアゴニストは満腹に関与しうる。CCKまたは飢えおよび満腹に関与する他のホルモンもしくはメッセンジャーに影響を及ぼす活性剤を同定するための研究に、大量の資源が捧げられている。かかる剤は、個体において飢えを抑制し、および/または満腹感を与えて、かかる個体がカロリー摂取量または総合的な食物摂取量を減らすために有用でありうる。
【0002】
カロリー摂取量の減少は、特に、以前に体重を減らし、体重の再増加の危険性のある個体において、体重減少および体重増加の予防の両方に重要である。体重超過、肥満および病的肥満は、過剰な体重、特に過剰な体脂肪を含む状態をいい、それは、多くの健康上の問題を導き、または悪化させる。ある種のカロリー不足、すなわち、カロリー使用がカロリー摂取量を超えることは、体重減少の基礎であり、食欲抑制は、カロリー摂取におけるいずれかの制限に応じて、有用なツールとなることができる。体重再増加は、減量に成功した個体のなかで一般的に起こることである。体重減少という目標を達成すると、個体は以前の摂食および運動パターンに戻り、体重が戻る。食欲抑制は、カロリー摂取量を制限する摂食パターンの採用において個体を援助することによって、体重再増加の予防における有用なツールとなることができる。低い体脂肪率を有するアスリートおよびフィットネス熱狂者は、しばしば、さらに体脂肪率を減らすことを要求される。かかる個体は、筋肉量および性能に負の影響を与えることなく体脂肪を落とすよう試みるとき、摂取する栄養を注意深く調節し、バランスをとらなければならない。食欲抑制は、栄養摂取の調節における有用なツールとなることができる。
【0003】
グアニリルシクラーゼC(GCC)は、ヒトにおける腸の刷子縁細胞に存在することが報告される細胞受容体である。ヒト遺伝子のコーディング配列は、ジーンバンクアクセッション番号NM 004963において開示される(出典明示により本明細書の一部とされる)。
【0004】
グアニリンおよびウログアニリンは、GCCの天然リガンドである。該リガンドは、GCCに結合する小型ペプチドであり、アゴニスト活性を有する。
【0005】
イー・コリ(E. coli)によって産生されるSTと称する熱安定性エンテロトキシンは、GCCによく結合する。GCCに結合しているSTは、非常に高いアフィニティーであり、その結果、下痢をもたらす。STを産生するイー・コリは、旅行者下痢として知られるものの原因となる。幼児、高齢者および他の脆弱な個体のなかでは、STによって引き起こされる下痢は、死に至る可能性がある。
【0006】
結腸直腸癌細胞によるGCCの発現は、転移性結腸直腸癌を検出し、標的とするための有用な市場となる。さらに、GCCアゴニストが原発性結腸直腸癌、および炎症性大腸疾患などの自己免疫疾患の治療において使用するために開示されている。かかるGCCアゴニストは、抗GCC抗体、STペプチドおよび関連する毒素、グアニリン、ウログアニリンおよびかかるペプチドの修飾形態を包含する。GCCアゴニストの腸へのデリバリーは、ポリプの形成の予防、結腸直腸癌におけるポリプの発現の予防、原発性結腸直腸癌の治療、炎症性大腸疾患などの大腸を含む自己免疫疾患の治療において有用である。
【0007】
GCCアゴニストが胃腸運動性を増加し、それ故、食物をより迅速に腸中を移動させ、それによりカロリー吸収を減少させることによって、肥満を治療するのに有用である可能性があると推測されるが、GCCアゴニストは、食欲および満腹シグナリングとは関連付けられていない。
【0008】
食欲を抑制し、カロリーおよび食物摂取量を減少させるためのより有用な組成物に対する要望が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、また、個体に経口投与した時に食欲を抑制するのに有効な量のグアニリルシクラーゼCアゴニストを含む組成物に関する。
【0010】
本発明は、有効な量のグアニリルシクラーゼCアゴニストを必要とする個体に経口投与することを含む、食欲を抑制する方法に関する。
【0011】
本発明は、食欲を抑制し、カロリーまたは食物摂取を減らすのに有効な量のグアニリルシクラーゼCアゴニストを必要とする個体に経口投与することを含む、体重を減少する方法に関する。
【0012】
本発明は、食欲を抑制し、カロリーまたは食物摂取を減らすのに有効な量のグアニリルシクラーゼCアゴニストを必要とする個体に経口投与することを含む、体重超過を治療する方法に関する。
【0013】
本発明は、食欲を抑制し、カロリーまたは食物摂取を減らすのに有効な量のグアニリルシクラーゼCアゴニストを必要とする個体に経口投与することを含む、以前に減らした体重を再増加する危険性のある個体において体重再増加を予防する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
グアニリルシクラーゼCアゴニストよび「GCCアゴニスト」なる語は、本明細書中で使用される場合、交換可能に使用され、グアニリルシクラーゼCに結合し、それによりその活性を誘導する分子をいう。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「体重超過」なる語は、体重超過、肥満または病的肥満と考えられる体重をいう。
【0016】
GCCアゴニストの投与は、GCCに結合し、活性化する1以上の化合物の投与をいう。
【0017】
食欲の抑制は、個体の飢え感および食物消費への欲望を減少させることをいう。食欲の抑制は、活性化時に、飢えや食物消費への欲望を減少させるほどの満腹感を個体に経験させる、神経化学的経路の活性化からもたらされうる。
【0018】
グアニリルシクラーゼC(GCC)は、大腸および小腸の内側を覆っている細胞によって発現される細胞性受容体である。胃腸管におけるGCCアゴニストのGCCへの結合は、GCCを活性化することが知られており、その結果、細胞内cGMPの増加を導き、下流のシグナリング事象の活性化をもたらす。
【0019】
胃腸管におけるGCCアゴニストのGCCへの結合は、飢えおよび満腹の神経化学的経路に影響を及ぼしうる。満腹シグナルは、個体におけるGCC活性化の不在において減少または排除されうる。GCCアゴニストは、個体が食欲は抑制されるように、飢えおよび満腹シグナルに影響を及ぼす量で個体に投与することができる。
【0020】
いずれの理論にも限定されることを意図しないが、グアニリン発現と高脂肪摂取量との間に相関があり、肥満を予防し、それにより、癌および肥満に関連する他の疾患のリスク増加を防ぐための食欲の抑制のためのメカニズムを提供する。高脂肪食事は、腸内に存在するグアニリンの減少ならびに血中プログアニリンおよび/またはプロウログアニリンの減少を導く。肥満個体に起きる腸内グアニリンレベルの不足は、満腹の減少をもたらす。かくして、高脂肪食物の消費は、自己強化型ループの一部となり、それにより、減少したグアニリンレベルが個体の満腹/食欲抑制メカニズムを妨げ、その結果、より多くの摂食を導き、グアニリンの減少が起きる。該サイクルにおいてこれを経験する個体は、頻繁に肥満になる。肥満は、結腸直腸癌および他の疾患のリスクを増加する。グアニリンの抑制は、変換プロセスにおける事象としてのグアニリルシクラーゼCシグナリングの喪失、およびグアニリン発現のダウンモジュレーションおよび肥満をもたらすメカニズムを含むサイクルの両方に関連しうる。
【0021】
GCCアゴニストは既知である。2つの天然GCCアゴニスト、グアニリンおよびウログアニリンが同定されている(米国特許第5,969,097号および第5,489,670号を参照、各々、出典明示により本明細書の一部とされる)。さらに、腸内病原菌によって産生されるいくつかの小型ペプチドは、下痢を引き起こす毒素産生剤である(米国特許第5,518,888号参照、出典明示により本明細書の一部とされる)。最も一般的な病原菌由来のGCCアゴニストは、病原性イー・コリ株によって産生される熱安定性エンテロトキシンである。病原性イー・コリ株によって産生される天然の熱安定性エンテロトキシンは、STともいう。エルシニア属(Yersinia)およびエンテロバクター(Enterobacter)を包含する種々の他の病原性生物もまた、グアニリルシクラーゼCに作動性に結合することができるエンテロトキシンを生産する。実際は、該毒素は、一般に、異なる種間を「ジャンプ」することができるプラスミド上にコード化される。いくつかの異なる毒素が異なる種において起こることが報告されている。これらの毒素は全て、有意な配列ホモロジーを有し、それらは全て、ST受容体に結合し、それらは全て、グアニレートシクラーゼを活性化し、下痢を生じる。
【0022】
STは、クローン化され、また、化学的技術によって合成されている。クローン化または合成分子は、天然STに類似する結合特徴を示す。イー・コリから単離された天然STは、18または19アミノ酸長である。活性を保持するSTの最小「フラグメント」は、カルボキシ末端へ向かって、(19アミノ酸形態の)システイン6からシステイン18に及ぶ13アミノ酸コアペプチドである。STのアナログは、クローニングによって、および化学的技術によって作成された。結合活性を与える構造決定基を含む天然ST構造の小型ペプチドフラグメントが構築されうる。いったん、ST受容体に結合する構造が同定されれば、スペースを介して該構造を模倣する非ペプチドアナログが設計される。
【0023】
米国特許第5,140,102号および第7,041,786号、および米国公開出願第US 2004/0258687 A1号および第US 2005/0287067 A1号もまた、グアニリルシクラーゼCに結合し、活性化しうる化合物に言及する。
【0024】
配列番号1は、SoおよびMcCarthy (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4011(出典明示により本明細書の一部とする)によって報告されたST Iaと称される、19アミノ酸STをコードするヌクレオチド配列を開示する。
【0025】
ST Iaのアミノ酸配列は、配列番号2に開示される。
【0026】
配列番号3は、ChanおよびGiannella (1981) J. Biol. Chem. 256:7744(出典明示により本明細書の一部とする)によって報告されたST I*と称される、ST活性を示す18アミノ酸ペプチドのアミノ酸配列を開示する。
【0027】
配列番号4は、Moselyら、(1983) Infect. Immun. 39:1167(出典明示により本明細書の一部とする)によって報告されたST Ibと称される、19アミノ酸STをコードするヌクレオチド配列を開示する。
【0028】
ST Ibのアミノ酸配列は、配列番号5に開示される。
【0029】
STに対して約50%の配列ホモロジーを有するグアニリンと称する15アミノ酸ペプチドは、哺乳動物の腸において同定された(Currie, M. G.ら、(1992) Proc. Natl. Acad Sci. USA 89:947−951(出典明示により本明細書の一部とする))。グアニリンは、ST受容体に結合し、天然STよりも約10〜100倍低いレベルでグアニレートシクラーゼを活性化する。グアニリンは、腸において15アミノ酸ペプチドとして存在しないかもしれないが、むしろ該器官においてより大きなタンパク質の一部として存在しうる。げっ歯類由来のグアニリンのアミノ酸配列は、配列番号6として開示される。
【0030】
配列番号7は、配列番号2の18アミノ酸フラグメントである。配列番号8は、配列番号2の17アミノ酸フラグメントである。配列番号9は、配列番号2の16アミノ酸フラグメントである。配列番号10は、配列番号2の15アミノ酸フラグメントである。配列番号11は、配列番号2の14アミノ酸フラグメントである。配列番号12は、配列番号2の13アミノ酸フラグメントである。配列番号13は、配列番号2の18アミノ酸フラグメントである。配列番号14は、配列番号2の17アミノ酸フラグメントである。配列番号15は、配列番号2の16アミノ酸フラグメントである。配列番号16は、配列番号2の15アミノ酸フラグメントである。配列番号17は、配列番号2の14アミノ酸フラグメントである。
【0031】
配列番号18は、配列番号3の17アミノ酸フラグメントである。配列番号19は、配列番号3の16アミノ酸フラグメントである。配列番号20は、配列番号3の15アミノ酸フラグメントである。配列番号21は、配列番号3の14アミノ酸フラグメントである。配列番号22は、配列番号3の13アミノ酸フラグメントである。配列番号23は、配列番号3の17アミノ酸フラグメントである。配列番号24は、配列番号3の16アミノ酸フラグメントである。配列番号25は、配列番号3の15アミノ酸フラグメントである。配列番号26は、配列番号3の14アミノ酸フラグメントである。
【0032】
配列番号27は、配列番号5の18アミノ酸フラグメントである。配列番号28は、配列番号5の17アミノ酸フラグメントである。配列番号29は、配列番号5の16アミノ酸フラグメントである。配列番号30は、配列番号5の15アミノ酸フラグメントである。配列番号31は、配列番号5の14アミノ酸フラグメントである。配列番号32は、配列番号5の13アミノ酸フラグメントである。配列番号33は、配列番号5の18アミノ酸フラグメントである。配列番号34は、配列番号5の17アミノ酸フラグメントである。配列番号35は、配列番号5の16アミノ酸フラグメントである。配列番号36は、配列番号5の15アミノ酸フラグメントである。配列番号37は、配列番号5の14アミノ酸フラグメントである。
【0033】
配列番号27、配列番号31、配列番号36および配列番号37は、Yoshimura, S.ら、(1985) FEBS Lett. 181:138(出典明示により本明細書の一部とする)に開示される。
【0034】
配列番号3の誘導体である配列番号38、配列番号39および配列番号40は、Waldman, S. A. およびO’Hanley, P. (1989) Infect. Immun. 57:2420(出典明示により本明細書の一部とする)に開示される。
【0035】
配列番号3の誘導体である配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44および配列番号45は、Yoshimura, S.ら、(1985) FEBS Lett. 181:138(出典明示により本明細書の一部とする)に開示される。
【0036】
配列番号46は、ST受容体に結合するY. enterocolitica由来の25アミノ酸ペプチドである。
【0037】
配列番号47は、ST受容体に結合するV. cholerae由来の16アミノ酸ペプチドである。配列番号47は、Shimonishi, Y.ら、FEBS Lett. 215:165(出典明示により本明細書の一部とする)において報告される。
【0038】
配列番号48は、ST受容体に結合するY. enterocolitica由来の18アミノ酸ペプチドである。配列番号48は、Okamoto, K.ら、Infec. Immun. 55:2121(出典明示により本明細書の一部とする)において報告される。
【0039】
配列番号49は、配列番号5の誘導体である。
配列番号50、配列番号51、配列番号52および配列番号53は、誘導体である。配列番号54は、ヒト由来のグアニリンのアミノ酸配列である。
【0040】
ウログアニリンと称する15アミノ酸ペプチドは、フクロネズミ由来の哺乳動物の腸において同定された(Hamra, S. K.ら、(1993) Proc. Natl. Acad Sci. USA 90:10464−10468(出典明示により本明細書の一部とする)、また、Forte L.およびM. Curry 1995 FASEB 9:643−650(出典明示により本明細書の一部とする)参照)。配列番号55は、フクロネズミ由来のウログアニリンのアミノ酸配列である。
【0041】
ウログアニリンと称する16アミノ酸ペプチドは、ヒト由来の哺乳動物の腸において同定された(Kita, T.ら、(1994) Amer. J. Physiol. 266:F342−348(出典明示により本明細書の一部とする)、また、Forte L.およびM. Curry 1995 FASEEB 9:643−650(出典明示により本明細書の一部とする)参照)。配列番号56は、ヒト由来のウログアニリンのアミノ酸配列である。
【0042】
配列番号57は、活性なグアニリンにプロセッシングされるグアニリン前駆体であるプログアニリンのアミノ酸配列である。
【0043】
配列番号58は、活性なウログアニリンにプロセッシングされるウログアニリン前駆体であるプロウログアニリンのアミノ酸配列である。
【0044】
プログアニリンおよびプロウログアニリンは各々、成熟グアニリンおよび成熟ウログアニリンの前駆体であるが、それらは、成熟ペプチドにプロセッシングされることができるようにデリバリーされる場合、本明細書中で記載されるGCCアゴニストとして使用されうる。
【0045】
米国特許第5,140,102号、第7,041,786号および第7,304,036号、および米国公開出願第US 2004/0258687号、第US 2005/0287067号、第20070010450号、第20040266989号、第20060281682号、第20060258593号、第20060094658号、第20080025966号、第20030073628号、第20040121961号および第20040152868号(出典明示により本明細書の一部とする)もまた、グアニリルシクラーゼCに結合し、活性化しうる化合物に言及する。
【0046】
ヒトグアニリンおよびヒトウログアニリンのほかに、グアニリンまたはウログアニリンは、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、バイソンなどの他の種から単離してもよく、または得てもよい。かかるグアニリンまたはウログアニリンは、ヒトを包含する個体に投与されうる。
【0047】
GCC結合性抗体フラグメントを包含する抗体もまた、GCCアゴニストであることができる。抗体は、例えば、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を包含し、キメラ、霊長類化またはヒト化モノクローナル抗体ならびにアゴニスト活性を有するGGCに結合する抗体フラグメント、例えば、CDR、FAb、F(Ab)、単鎖Fvを包含するFvなどを包含しうる。抗体は、例えば、IgE、IgAまたはIgMであってもよい。
【0048】
有効量
GCCアゴニストを使用して食欲を抑制するために、有効量をデリバリーしなければならない。本明細書中で使用される場合、「有効量」は、投与後少なくとも2時間、個体の食欲を抑制する量である。食欲の抑制は、飢えの感覚の減少および/またはかかる感覚の酷さの減少および/または摂食への欲望の減少および/または摂食への欲望の酷さの減少および/または満腹感および/または満腹感の増加によって特徴付けられる。結果として、食欲が抑制された個体は、一般的に、食物摂取量またはカロリー摂取量を減少する。
【0049】
いくつかの具体例において、最初の負荷投与量および/または複数の投与が最初の効果を観察するために必要とされる。その後、ある期間にわたって抑制状態を維持するために、規則的な投与が必要とされる。個体に投与されたGCCアゴニストは、個体に天然に存在する満腹シグナルと相乗効果を有しうる。同様に、個体に投与されたGCCアゴニストによって誘導される効果は、個体に天然に存在する飢えのシグナルによって中和されうる。GCCアゴニストが有するGCCに対するアフィニティーはまた、かかるGCCアゴニストの満腹および飢えに対する効果をもたらしうる。
【0050】
いくつかの具体例において、個体は、長期間、例えば、3日、7日、14日、21日、28日以上にわたって食欲抑制効果を維持するのに十分なGCCアゴニストのクール(course)を投与される。このような延長された効果を達成するために、GCCに対して遊離状態または結合状態で存在するGCCアゴニストの量が食欲を抑制するのに効果的であるために必要とされる閾値を超えて残存するようなレベルおよび間隔で、複数の投与量を投与してもよい。
【0051】
一般的に、GCCアゴニストは、4〜48時間毎に100μg〜1gの範囲の量で投与される。いくつかの具体例において、GCCアゴニストは、4〜48時間毎に1mg〜750mgの範囲の量で投与される。いくつかの具体例において、GCCアゴニストは、4〜48時間毎に10mg〜500mgの範囲の量で投与される。いくつかの具体例において、GCCアゴニストは、4〜48時間毎に50mg〜250mgの範囲の量で投与される。いくつかの具体例において、GCCアゴニストは、4〜48時間毎に75mg〜150mgの範囲の量で投与される。いくつかの具体例において、GCCアゴニストは、摂食前に、例えば食事時間の前に、カロリー消費を減らすために食事前または食事の間にGCCアゴニストが満腹および食欲に対するその効果を有するような時間に投与される。いくつかの具体例において、GCCアゴニストは、摂食の30分〜4時間前、摂食の30分〜3時間前、摂食の30分〜2時間前、摂食の30分〜1時間前、摂食の1〜4時間前、摂食の1〜3時間前、摂食の1〜2時間前、摂食の2〜4時間前、または摂食の3〜4時間前に投与される。いくつかの具体例において、GCCアゴニストは、摂食前、例えば、食事時間の前に、カロリー消費を減らすために食事前または食事の間にGCCアゴニストが満腹および食欲に対するその効果を有するような時間に投与される。いくつかの具体例において、個体は、GCCアゴニストを2.5mg〜250mgの範囲で静脈内投与される。いくつかの具体例において、個体は、GCCアゴニストを5mg〜200mgの範囲で静脈内投与される。いくつかの具体例において、個体は、GCCアゴニストを10mg〜150mgの範囲で静脈内投与される。いくつかの具体例において、個体は、GCCアゴニストを15mg〜100mgの範囲で静脈内投与される。いくつかの具体例において、個体は、GCCアゴニストを5mg〜250mgの範囲で静脈内投与される。いくつかの具体例において、個体は、GCCアゴニストを10mg〜250mgの範囲で静脈内投与される。いくつかの具体例において、個体は、GCCアゴニストを15mg〜250mgの範囲で静脈内投与される。いくつかの具体例において、個体は、GCCアゴニストを20mg〜250mgの範囲で静脈内投与される。
【0052】
いくつかの具体例において、投与量は、4時間以上毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、6時間以上毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、8時間以上毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、12時間以上毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、24時間以上毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、48時間以上毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、4時間以下毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、6時間以下毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、8時間以下毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、12時間以下毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、24時間以下毎に投与される。いくつかの具体例において、投与量は、48時間以下毎に投与される。
【0053】
いくつかの具体例において、投与される処方および/または用量および/または投与頻度は、GCC活性化に関連した負の副作用、すなわち、痙攣および下痢を最小限にするように選択される。いくつかの具体例において、GCCを活性化するのに利用可能なGCCアゴニストの量は、個体が、下痢または痙攣/腸収縮を増加した運動性を導く最小限の影響を経験するように、あるいは何も経験しないように調節される。いくつかの具体例において、下痢または痙攣/腸収縮を増加した運動性を最小限にするために、添加剤または共薬剤(co-agent)がGCCアゴニストと共に投与される。例えば、個体は、投与前、投与と同時または投与後に、下痢を軽減する化合物を投与してもよい。かかる抗下痢成分は、該処方に組み込まれていてもよい。抗下痢化合物および製剤、例えば、ロペラミド(loperamide)、次サリチル酸ビスマス、およびラクトバチルス(Lactobaccilus)などのプロバイオティック治療がよく知られており、幅広く利用可能である。
【0054】
経路
GCCアゴニストを結腸直腸管にデリバリーするための現行の方法は、かかるGCCアゴニストの経口デリバリーを含んだ。例えば、STペプチドおよび他のGCCアゴニストペプチドは、安定であり、胃酸に耐えることができ、小腸を通って結腸直腸管へ行くことができる。それらは無傷で結腸直腸管に達することができ、GCCを発現する細胞と積極的に相互作用することができるが、小腸におけるそれらの存在は、深刻な副作用を生じることがある。さらに、結腸直腸管においてGCCアゴニストの有効レベルを維持するためには、規則的な投与が必要とされ、かかる投与は、さらに、GCCアゴニストが小腸を通過することによって引き起こされる副作用を悪化する。
【0055】
ST受容体リガンドは、ST受容体を発現する細胞への該リガンドのデリバリーを可能にするいずれかの経路によって、個体に投与される。例えば、いくつかの具体例において、ST受容体リガンドは、経口投与される。いくつかの具体例において、ST受容体リガンドは、非経口投与される。いくつかの具体例において、ST受容体リガンドは、個体の循環系に投与される。いくつかの具体例において、ST受容体リガンドは、静脈内投与される。いくつかの具体例において、ST受容体リガンドは、皮下投与される。
【0056】
GCCアゴニスト、例えば、ST、グアニリンおよびウログアニリンは、胃環境を耐えることができる。かくして、それらは、胃酸に対する被覆または保護を用いないで投与されうる。しかしながら、経口投与されるGCCアゴニストの放出をより正確に調節するために、GCCアゴニストは、ある程度または全てのGCCアゴニストが胃を通過した後に放出されるように、腸溶性被覆されていてもよい。かかる腸溶性被覆は、また、被覆されたGCCアゴニストが腸を通過する期間にわたって、GCCアゴニストの維持された、または延長された放出を提供するように設計されていてもよい。
【0057】
ほとんどの腸溶性被覆は、胃酸から内容物を保護することを目的とする。したがって、それらは、胃の通過時に活性剤を放出するように設計される。本明細書中で使用される被覆およびカプセル化は、小腸においてGCCアゴニストを放出し始め、好ましくは、GCCアゴニスト濃度を長期間有効レベルで維持できるように、長期にわたって放出するように提供される。
【0058】
いくつかの具体例によると、GCCアゴニストは、被覆材料が溶解し、GCCアゴニストを放出するのに必要な時間が、被覆またはカプセル化組成物が口から腸へ移動するのに必要な時間に相当するのに十分な量の被覆材料で被覆またはカプセル化される。
【0059】
いくつかの具体例によると、GCCアゴニストは、小腸に存在する条件に接触するまで、十分に溶解せず、GCCアゴニストを放出しない被覆材料で被覆またはカプセル化される。かかる条件は、直腸結腸管における酵素の存在、pH、等張性、または胃に相対的に変化する他の条件を包含する。
【0060】
いくつかの具体例によると、GCCアゴニストは、胃から小腸ないし大腸へと移動する段階において溶解するように設計された被覆材料で被覆またはカプセル化される。
【0061】
いくつかの具体例によると、GCCアゴニストは、GCCアゴニストが別の分子的存在(molecular entity)との複合体化を停止し、活性形態で存在するまで不活性であるように、該別の分子的存在と複合体化する。かかる具体例において、GCCアゴニストは、結腸直腸管中でプロセッシングされて活性なGCCアゴニストになる「プロドラッグ」として投与される。
【0062】
経口投与時の徐放性のためのGCCアゴニストを処方するために使用されうる技術の例は、限定するものではないが、米国特許第5,007,790号、第4,451,260号、第4,132,753号、第5,407,686号、第5,213,811号、第4,777,033号、第5,512,293号、第5,047,248号および第5,885,616号を包含する。
【0063】
投与時の大腸特異的放出のためのGCCアゴニストまたはインデューサーを処方するために使用されうる技術の例は、限定するものではないが、遅延放出処方を開示する米国特許第5,108,758号(Allwoodら、1992年4月28日発行)、大腸における放出能を有する被覆された固形薬剤形態を開示する米国特許第5,217,720号(Sekigawaら、1993年6月8日発行)、経口投与可能な医薬組成物を開示する米国特許第5,541,171号(Rhodesら、1996年7月30日発行)、架橋多糖類、その製法および使用を開示する米国特許第5,688,776号(Bauerら、1997年11月18日発行)、経口投与用保護バイオポリマーおよびその使用方法を開示する米国特許第5,846,525号(Maniarら、1998年12月8日発行)、胃腸管の慢性炎症障害の治療を開示する米国特許第5,863,910号(Bolonickら、1999年1月26日発行)、マイクロカプセルマトリックスマイクロスフェア、吸収増加医薬組成物および方法を開示する米国特許第6,849,271号(Vaghefiら、2005年2月1日発行)、下部消化管における放出系を開示する米国特許第6,972,132号(Kudoら、2005年12月6日発行)、下部消化管中で溶解性の被覆製剤を開示する米国特許第7,138,143号(Mukaiら、2006年11月21日発行)、米国特許第6,309,666号、米国特許第6,569,463号、米国特許第6,214,378号、米国特許第6,248,363号、米国特許第6,458,383号、米国特許第6,531,152号、米国特許第5,576,020号、米国特許第5,654,004号、米国特許第5,294,448号、米国特許第6,309,663号、米国特許第5,525,634号、米国特許第6,248,362号、米国特許第5,843,479号、および米国特許第5,614,220(各々、出典明示により本明細書の一部とする)を包含する。
【0064】
いくつかの具体例において、個体は、GCCアゴニストを静脈内投与される。いくつかの具体例において、個体は、ペプチドGCCアゴニストを静脈内投与される。いくつかの具体例において、個体は、配列番号1〜56、プロウログアニリン(配列番号57)またはウログアニリン(配列番号58)を静脈内投与される。
【0065】
いくつかの具体例において、個体は、埋め込まれたデポーまたはインスリンポンプに類似するポンプを用いて、GCCアゴニストを投与される。GCCアゴニストは、放出され、血液に取り込まれる。いくつかの具体例において、個体は、ペプチドGCCアゴニストを静脈内投与される。いくつかの具体例において、個体は、配列番号1〜56、プロウログアニリン(配列番号57)またはウログアニリン(配列番号58)を静脈内投与される。
【0066】
腸内細菌における発現
本発明のいくつかの態様によると、通常結腸に生息する種の無毒な細菌は、グアニリルシクラーゼCアゴニストを結腸で産生するのに必要とされる遺伝的情報が提供され、その結果、かかるグアニリルシクラーゼCアゴニストを、結腸細胞上でグアニリルシクラーゼCを活性化する、または結腸ポリプの形成を阻害する、または結腸ポリプを治療する、または結腸直腸腫瘍の形成を阻害する、または結腸直腸癌を治療する効果を生じるために利用可能にする。グアニリルシクラーゼCアゴニストを産生することができる細菌集団の存在は、必要な部位にグアニリルシクラーゼCアゴニストの連続的投与を提供する。いくつかの具体例において、グアニリルシクラーゼCアゴニストをコードする核酸配列は、誘導性プロモーターの調節下にある。したがって、個体は、インデューサーを摂取したかどうかに依存して、発現をオンまたはオフにしうる。いくつかの具体例において、インデューサーは、結腸において特異的に放出されるように処方され、それにより、小腸などの他の部位に生息している可能性のある細菌による発現の誘導を防止する。いくつかの具体例において、細菌は、特定の薬剤に対して感受性であるか、または該薬剤の投与もしくは必須栄養素補充の抑制によって排除されることができるような栄養要求性である。
【0067】
遺伝子の発現可能な形態を細菌中に導入するための技術は、よく知られており、必要な材料は幅広く入手可能である。
【0068】
いくつかの具体例において、GCCアゴニストのコーディング配列を含む細菌は、個体の腸管に一般的に生息する種のものでありうる。一般的な腸内菌叢は、バクテロイデス(Bacteroides)属、クロストリディウム(Clostridium)属、フソバクテリウム(Fusobacterium)属、ユーバクテリウム(Eubacterium)属、ルミノコッカス(Ruminococcus)属、ペプトコッカス(Peptococcus)属、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteriu)属、エシェリキア(Escherichia)属およびラクトバチルス(Lactobacillus)属由来の種を包含する。いくつかの具体例において、細菌は、プロバイオティックとして有用であることが知られた系統から選択される。ヒトへの投与のための組成物として使用される細菌の種の例は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)、およびラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)を包含する。他の種は、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)およびラクトバチルス・ビフィダス(Lactobacillus bifidus)を包含する。ヒトへの投与のための組成物として使用される細菌の系統の例は、ビー・インファンティス(B.infantis)35624、(Align)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)299V、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)DN−173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)DN 173 010 (Activia Danone)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)亜種ラクティス(subsp. lactis)BB−12 (Chr.Hansen)、ビフィドバクテリウム・ブリーブ(Bifidobacterium breve) Yakult Bifiene Yakult、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)35624 ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)HN019 (DR10) HowaruTM(商標) Bifido Danisco、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)BB536、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)Nissle 1917、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)LA−5 Chr. Hanse;n、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)NCFM Rhodia Inc.、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)DN114−001、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)CRL431 Chr. Hansen、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)F19 Cultura Arla Foods、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)Shirota Yakult Yakult、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei) immunitass Actimel Danone、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonnii) La1 (=ラクトバチルスLC1) Nestle、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)299V ProViva Probi IBS、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)ATTC 55730 BioGaia Biologics、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)SD2112、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)ATCC 53013 Vifitおよび他のValio、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)LB21 Verum Norrmejerier、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)UCC118、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)L1A Verum Norrmejerier、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(boulardii) lyo、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)亜種サーモフィルス(ssp thermophilus)、ラクトバチルス。ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)GR−1、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)RC−14、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)CUL60、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)CUL 20、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)R0052、およびラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)R0011を包含する。
【0069】
下記の米国特許(各々、出典明示により本明細書の一部とする)は、個体に投与できる非病原性細菌を開示する。米国特許第6,200,609号、米国特許第6,524,574号、米国特許第6,841,149号、米国特許第6,878,373号、米国特許第7,018,629号、米国特許第7,101,565号、米国特許第7,122,370号、米国特許第7,172,777号、米国特許第7,186,545号、米国特許第7,192,581号、米国特許第7,195,906号、米国特許第7,229,818号、および米国特許第7,244,424号。
【0070】
したがって、本発明の態様、細菌は、まず、構造的に、または誘導性プロモーターをオンにするであろうインデューサーの存在による誘導において、該細菌内でGCCアゴニストペプチドの発現を可能にする形態で該アゴニストをコードしている遺伝材料を提供されるであろう。
【0071】
いくつかの具体例は、誘導調節エレメント、例えば、誘導性プロモーターを含む。典型的に、誘導性プロモーターは、存在する場合に、剤が該プロモーターと相互作用して、該プロモーターに作動可能に連結されたコーディング配列の発現が進むようなものである。別法では、誘導性プロモーターは、該プロモーターと相互作用し、該プロモーターに作動可能に連結されたコーディング配列の発現を防ぐ剤であるレプレッサーを包含することができる。レプレッサーの除去は、プロモーターに作動可能に連結されたコーディング配列の発現をもたらす。
【0072】
誘導性プロモーターを誘導する剤は、好ましくは、移入遺伝子の発現が探求される生物において天然に存在しない。したがって、移入遺伝子は、生物が誘導剤に積極的に曝露される場合にだけ発現する。かくして、誘導性プロモーターに作動可能に連結された移入遺伝子を含む細菌において、該細菌が個体の腸内に生息する場合、個体が誘導剤を摂取したときに該プロモーターがオンになって、移入遺伝子が発現しうる。
【0073】
誘導性プロモーターを誘導する剤は、好ましくは、非毒性である。かくして、誘導性プロモーターに作動可能に連結された移入遺伝子を含む細菌において、誘導剤は、好ましくは、その腸内に該細菌が生息している個体にとって非毒性であり、その結果、個体が誘導剤を摂取して移入遺伝子の発現がオンになったときに、該誘導剤は、個体に対して、いかなる重篤な毒性副作用ももたらさない。
【0074】
誘導性プロモーターを誘導する剤は、好ましくは、目的遺伝子の発現にだけ影響を及ぼす。かくして、誘導性プロモーターに作動可能に連結された移入遺伝子を含む細菌において、誘導剤は、個体におけるいずれか他の遺伝子の発現に対して、いかなる有意な影響も及ぼさない。
【0075】
誘導性プロモーターを誘導する剤は、好ましくは、添加または除去が容易である。かくして、個体の腸内に生息している誘導性プロモーターに作動可能に連結された移入遺伝子を含む細菌において、誘導剤は、好ましくは、例えば、積極的な中和によって、または代謝/通過によって、容易に腸にデリバリーでき、また、除去でき、その結果、遺伝子発現が調節できる剤である。
【0076】
誘導性プロモーターを誘導する剤は、好ましくは、高い遺伝子発現または非常に低い遺伝子発現のいずれかの明確に検出可能な発現パターンを誘導する。
【0077】
いくつかの好ましい具体例において、化学的に調節したプロモーターは、その作用が必要とされる生物に対して、進化において遠い生物由来である。誘導または化学的に調節したプロモーターの例は、テトラサイクリン調節プロモーターを包含する。テトラサイクリン応答性プロモーターシステムは、テトラサイクリンの存在下で遺伝子発現系を活性化または抑制するように機能することができる。該系のエレメントのいくつかは、テトラサイクリンレプレッサータンパク質(TetR)、テトラサイクリンオペレーター配列(tetO)、およびテトラサイクリントランス活性化機能タンパク質(tTA)(TeRと単純ヘルペスウイルスタンパク質16(VP16)活性化配列との融合物)を包含する。テトラサイクリン耐性オペロンは、エシェリキア・コリトランスポゾン(Tn)10によって運搬される。該オペロンは、負の様式の作動(operation)を有する。該オペロンによってコードされるレプレッサータンパク質、TetR、およびそれが結合するDNA配列、tetオペレーター(tetO)の間の相互作用は、該オペレーターの近くに位置するプロモーターの活性を抑制する。インデューサーの不在下では、TetRがtetOに結合し、転写を防止する。転写は、インデューサー、例えば、テトラサイクリンがTetRに結合し、TetRが該オペレーターに結合したままでないようにするコンフォメーション変化を引き起こすとき、転写がオンになることができる。該オペレーター部位が結合されないとき、プロモーターの活性は回復する。テトラサイクリン、抗生物質は、誘導性プロモーターに対する2つの有益な強化を創出するために使用されてきた。1つの強化は、誘導オンまたはオフプロモーターである。研究者は、プロモーターが、Tetが加えられるまで常に活性化されるように、またはTetが加えられるまで常に不活性化されるように選択できる。これは、Tetオン/オフプロモーターである。第2の強化は、プロモーターの強度を調節する能力である。多くのTetが加えられるほど、ラジオのボリュームを上げたり下げたりするように、発現ベクターを上方調節(turn up)したり、下方調節(turn down)したりできる効果が強くなる。
【0078】
誘導性プロモーターまたは化学的に調節したプロモーターの例は、ステロイド調節プロモーターを包含する。ステロイド反応性プロモーターは、遺伝子発現の変調のために提供され、ラットグルココルチコイド受容体(GR)、ヒトエストロゲン受容体(ER)、異なる蛾の種に由来するエクジソン受容体に基づくプロモーター、およびステロイド/レチノイド/甲状腺受容体スーパーファミリー由来のプロモーターを包含する。GRおよび他のステロイド受容体のホルモン結合ドメイン(HBD)は、異種タンパク質をシスで調節するために使用することができ、すなわち、作用時にタンパク質コーディング配列に作動可能に連結されることができる。かくして、GR、エストロゲン受容体(ER)および昆虫エクジソン受容体のHBDは、比較的きっちりした調節および高い誘導性を示している。
【0079】
誘導性プロモーターまたは化学的に調節したプロモーターの例は、金属調節プロモーターを包含する。酵母、マウスおよびヒトのメタロチオネイン(金属イオンに結合し、封鎖するタンパク質)遺伝子由来のプロモーターは、金属の存在が遺伝子発現を誘導するプロモーターの例である。
【0080】
IPTGは、プロモーターを活性化するために細胞に加えられる化合物の古典的な例である。IPTGは、下流遺伝子を活性化するために細胞に加えることができ、または遺伝子を不活性化するために除去することができる。
【0081】
米国特許第6,180,391号(出典明示により本明細書の一部とする)は、銅誘導性プロモーターに言及する。
【0082】
米国特許第6,943,028号(出典明示により本明細書の一部とする)は、イー・コリにおける外来性遺伝子の非常に効率良く調節された発現に言及する。
【0083】
米国特許第6,180,367号(出典明示により本明細書の一部とする)は、ポリペプチドの細菌産生のプロセスに言及する。
【0084】
細菌宿主と共に使用するのに適当な誘導性プロモーターの他の例は、ベータ−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系(Changら、Nature, 275: 615 (1978(出典明示により本明細書の一部とする)、Goeddelら、Nature, 281: 544 (1979)(出典明示により本明細書の一部とする))、araBADプロモーターを包含するアラビノースプロモーター系(Guzmanら、J. Bacteriol., 174: 7716−7728 (1992)(出典明示により本明細書の一部とする)、Guzmanら、J. Bacteriol., 177: 4121−4130 (1995)(出典明示により本明細書の一部とする)、SiegeleおよびHu, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94: 8168−8172 (1997)(出典明示により本明細書の一部とする))、ラムノースプロモーター(Haldimannら、J. Bacteriol., 180: 1277−1286 (1998)(出典明示により本明細書の一部とする))、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel, Nucleic Acids Res., 8: 4057 (1980)(出典明示により本明細書の一部とする))、P.sub.LtetO−1およびP.sub.lac/are−1プロモーター(LutzおよびBujard, Nucleic Acids Res., 25: 1203−1210 (1997)(出典明示により本明細書の一部とする))、およびハイブリッドプロモーター、例えば、tacプロモーター(deBoerら、Proc. Nati. Acad. Sci. USA, 80: 21−25 (1983)(出典明示により本明細書の一部とする))を包含する。しかしながら、他の既知の細菌性誘導性プロモーターおよび低−基底−発現プロモーターは、適当である。
【0085】
米国特許第6,083,715号(出典明示により本明細書の一部とする)は、細菌細胞において異種ジスルフィド結合含有ポリペプチドを生産する方法に言及する。
【0086】
米国特許第5,830,720号(出典明示により本明細書の一部とする)は、外来遺伝子の抑制および誘導発現のための組み換えDNAおよび発現ベクターに言及する。
【0087】
米国特許第5,789,199号(出典明示により本明細書の一部とする)は、ポリペプチドの細菌性産生のためのプロセスに言及する。
【0088】
米国特許第5,085,588号(出典明示により本明細書の一部とする)は、植物抽出物によって誘導可能な細菌性プロモーターに言及する。
【0089】
米国特許第6,242,194号(出典明示により本明細書の一部とする)は、対象に経口投与することができる発明のプロモーターと作動可能に結合した目的のDNAを含有するプロバイオティック細菌宿主細胞に言及する。
【0090】
米国特許第5,364,780号(出典明示により本明細書の一部とする)は、誘導性プロモーターによる遺伝子発現の外部調節に言及する。
【0091】
米国特許第5,639,635号(出典明示により本明細書の一部とする)は、ポリペプチドの細菌性産生のためのプロセスに言及する。
【0092】
米国特許第5,789,199号(出典明示により本明細書の一部とする)は、ポリペプチドの細菌性産生のためのプロセスに言及する。
【0093】
米国特許第5,689,044号(出典明示により本明細書の一部とする)は、植物PR−1遺伝子の化学誘導性プロモーターに言及する。
【0094】
米国特許第5,063,154号(出典明示により本明細書の一部とする)は、フェロモン誘導性酵母プロモーターに言及する。
【0095】
米国特許第5,658,565号(出典明示により本明細書の一部とする)は、誘導性酸化窒素シンンターゼ遺伝子に言及する。
【0096】
米国特許第5,589,392号、第6,002,069号、第5,693,531号、第5,480,794号、第6,171,816号、第6,541,224号、第6,495,318号、第5,498,538号、第5,747,281号、第6,635,482号および第5,364,780号(各々、出典明示により本明細書の一部とする)は、各々、IPTG−誘導プロモーターに言及する。
【0097】
米国特許第6,420,170号、第5,654,168号、第5,912,411号、第5,891,718号、第6,133,027号、第5,739,018号、第6,136,954号、第6,258,595号、第6,002,069号および第6,025,543号(各々、出典明示により本明細書の一部とする)は、各々、テトラサイクリン−誘導性プロモーターに言及する。
【0098】
患者集団
食欲抑制量のグアニリルシクラーゼCアゴニストを含む組成物は、食欲の抑制を希望すると同定された個体において食欲を抑制するために使用されうる。かかる個体は、体重超過の個体、摂食障害、例えば、強迫性過食または神経性過食に罹患している個体、食物を維持したがっている個体、食べることができない個体、および体脂肪および/または体重の減少を望んでいる個体を包含する。食欲抑制量のグアニリルシクラーゼCアゴニストを含む組成物は、体重増加を防止するために、体重超過ではない個体において食欲を抑制するために使用してもよい。グアニリルシクラーゼCアゴニストを用いる食欲抑制は、心理学的/精神医学的カウンセリングおよび療法と組み合わせた、または他の体重減少もしくは食欲抑制組成物、例えば、シブトラミン(sibutramine)、オルスタット(orlastat)、Hoodia gordoniiならびにその抽出物および成分と組み合わせた、補助療法として用いてもよい。
【0099】
血中のプログアニリンおよび/またはプロウログアニリンのレベルと、腸内のグアニリンおよび/またはウログアニリンのレベルとの間の相関を用いて、腸内のグアニリンおよび/またはウログアニリンレベルに関して情報を提供する単純な血液試験によって、プログアニリンおよび/またはプロウログアニリンレベルの決定を可能にしうる。いくつかの具体例において、血中を循環するプログアニリンおよび/またはプロウログアニリン(各々、グアニリンおよびウログアニリン前駆体)のレベルを決定し、プログアニリンおよび/またはプロウログアニリンのレベルの正常範囲、すなわち、健康な肥満でない集団において典型的に見られるプログアニリンおよび/またはプロウログアニリンのレベルの量の範囲と比較することができる。プログアニリンおよび/またはプロウログアニリンのレベルが平均または該範囲の低限よりも低いと決定された場合、個体には、グアニリンおよび/またはウログアニリンまたはプログアニリンおよび/またはプロウログアニリンを投与することができる。いくつかの具体例において、血液試料中のプログアニリンおよび/またはプロウログアニリンのレベルは、抗体アッセイ、例えば、提供された定量的結果に適応させたELISAアッセイを用いて決定してもよい。いくつかの具体例において、血液試料中のプログアニリンおよび/またはプロウログアニリンのレベルは、脂肪摂取の5分〜6時間後に個体から得られた血液試料を用いて決定してもよい。いくつかの具体例において、血液試料中のプログアニリンおよび/またはプロウログアニリンのレベルは、脂肪摂取の5分後、10分後、15分後、20分後、25分後、30分後、35分後、40分後、45分後、50分後、55分後、60分後、65分後、70分後、75分後、80分後、85分後、90分後、95分後、100分後、105分後、110分後、115分後、120分後、125分後、130分後、135分後、140分後、145分後、150分後、155分後、160分後、165分後、170分後、175分後、180分後、185分後、190分後、195分後、200分後、205分後、210分後、215分後、220分後、225分後、230分後、235分後、240分後、245分後、250分後、255分後、260分後、265分後、270分後、275分後、280分後、285分後、290分後、295分後、300分後、305分後、310分後、315分後、320分後、325分後、330分後、335分後、340分後、345分後、350分後、355分後、または360分後に得られた血液試料を用いて決定してもよい。いくつかの具体例において、血液試料中のプログアニリンおよび/またはプロウログアニリンのレベルは、上記で挙げた5分間隔のうちのいずれか2つを含むことができるあらゆる範囲の群から選択される範囲内の期間、すなわち、5−10分、5−15分などに得られた血液試料を用いて決定してもよい。いくつかの具体例において、血液試験は、試料収集前に、特定の食物を摂取することを含む。
【実施例】
【0100】
グアニリルシクラーゼC(GCC)は、その近接エフェクターとしてcGMPを合成する腸特異的膜貫通型受容体である。GCCは、食欲および体重を調節するシグナリングプログラムにおける重要な媒介手段として出現している。GCCシグナリングが排除されたC57/BL6マウスは、含脂肪細胞肥大、皮下および内臓脂肪量の増加および肝臓脂肪症、高インスリン血症および耐糖能障害を包含する肥満関連共存症と関連した過剰体重を示した。さらに、GCC欠損マウスは、摂食亢進を示し、その過剰な体重増加は、食物摂取量を野生型マウスによって消費されるレベルに制限することによって排除された。GCC欠損マウスは、空腸および回腸内で、各々、腸内分泌満腹ホルモンコレシストキニンおよびグルカゴン様ペプチドの〜50%減少を示すので、観察された摂食亢進は、食物摂取量を調節する腸経路における欠損と相関する。これらの観察は、腸内分泌細胞の機能を変調することによって、食欲および体重調節における、以前に認められていないGCCシグナリングの役割を明らかにする。このことは、GCCリガンドを伴う経口ホルモン補充が腸内分泌ホルモンレベルを増加させ、栄養満腹応答を増幅することができ、それにより、食欲を制限し、肥満を防ぐことができたという、新規な治療パラダイムを強調する。
【0101】
GCC欠損マウスは、摂食が亢進され、その加速した成長は、野生型レベルまで食餌を制限することによって排除することができるので、GCCは、食物消費を調節することによって体重を調節する。GCCは、栄養に対する満腹応答を調節する。GCCシグナリングは、陰窩−絨毛軸に沿って腸内分泌細胞の分化および/または機能を調節することによって、満腹を調節しうる。GCCシグナリングの喪失は、満腹ホルモン産生の欠失を生じ、その結果、不十分な養分刺激満腹応答を導き、摂食亢進および肥満をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体に経口投与した時に食欲を抑制するのに有効な量の持続性特異的放出のために処方されたグアニリルシクラーゼCアゴニストを含む組成物。
【請求項2】
さらに抗下痢化合物または組成物を含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
個体に静脈内投与した時に食欲を抑制するのに有効な量における静脈内デリバリーのために処方されたグアニリルシクラーゼCアゴニストを含む組成物。
【請求項4】
グアニリルシクラーゼCアゴニストがプログアニリンおよび/またはプロウログアニリンである請求項3記載の組成物。
【請求項5】
個体の食欲を抑制するのに有効な量のグアニリルシクラーゼCアゴニストを含む組成物を該個体に投与する工程を含む、食欲抑制を希望していると同定された個体において食欲を抑制する方法。
【請求項6】
組成物が、個体に経口投与した時に食欲を抑制するのに有効な量の持続性特異的放出のために処方されたグアニリルシクラーゼCアゴニストを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
抗下痢化合物または組成物が持続性特異的放出のために処方されたグアニリルシクラーゼCアゴニストと組み合わせて投与される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
組成物がさらに抗下痢化合物または組成物を含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
グアニリルシクラーゼCアゴニストが静脈内投与される、請求項5記載の方法。
【請求項10】
グアニリルシクラーゼCアゴニストがプログアニリンおよび/またはプロウログアニリンである請求項5記載の方法。
【請求項11】
個体がプログアニリンおよび/またはプロウログアニリンレベルを欠乏していると同定された、請求項5記載の方法。
【請求項12】
個体が体重超過であると同定された、請求項5記載の方法。
【請求項13】
細菌中で操作可能な調節配列に操作可能に連結されたグアニリルシクラーゼCアゴニストをコードする核酸分子を含む該細菌を含む細菌集団を該個体に投与する工程を含む、食欲抑制を希望していると同定された個体において食欲を抑制する方法であって、ここに、該細菌がヒトの腸管内菌叢の一部としてヒト結腸中で生存することができる種である、方法。
【請求項14】
細菌がグラム陰性細菌である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
細菌がヒト大腸中で栄養要求性である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
調節配列が誘導性プロモーターを含む請求項13記載の方法であって、該誘導性プロモーターを活性化する組成物を投与する工程を含む方法。

【公表番号】特表2012−518660(P2012−518660A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551317(P2011−551317)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025277
【国際公開番号】WO2010/099234
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(597177242)トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ (12)
【氏名又は名称原語表記】Thomas Jefferson University
【Fターム(参考)】