説明

飲料ディスペンサ

【課題】適宜円滑に過冷却飲料を供給することを可能とする飲料ディスペンサを提供する。
【解決手段】本発明は、凝固点以下の過冷却状態とされた飲料を供給し、外部で過冷却状態を解除させる飲料ディスペンサ1であって、飲料を氷点付近まで冷却する一次冷却装置13と、該一次冷却装置13にて冷却された飲料を外部に供給する飲料供給回路7と、飲料の凝固点以下に冷却された不凍液が循環されるブライン回路31と、飲料供給回路7を流れる飲料とブライン回路31内を流れる不凍液と熱交換させる飲料過冷却用熱交換器16とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度が凝固点以下の過冷却状態とされた飲料を供給し、外部で過冷却状態を解除させることにより、シャーベット状の飲料を製造する飲料ディスペンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カップ等に飲料を供給する飲料ディスペンサでは、飲料原料としてのシロップが充填されたタンクからシロップ供給ラインが引き出されると共に、当該シロップを所定の割合にて希釈する希釈水供給ラインも設けられている。これらシロップ供給ライン及び希釈水供給ラインは、それぞれシロップ冷却コイル及び希釈水冷却コイルが介設されており、これらは、冷却水を貯留する水槽に浸漬されることにより、当該コイル内を流入するシロップや希釈水を所定の温度に冷却するものである。これにより、所定の冷却温度に冷却されたシロップ及び希釈水は、それぞれノズルにて混合されて目的飲料としてカップに排出される。
【0003】
上記構成により供給される飲料は、全て液体の状態でカップ内に貯留されるものであるため、別途氷片をカップ内に投入することによって、ある程度の時間、一定の冷却温度を維持することができる状態で、顧客に飲料が提供されていた。
【0004】
しかしながら、カップに供給された氷片では、当該浮遊する氷片付近の飲料のみが融解熱によって冷却されることとなるため、カップ内全体の飲料を均一に冷却することは困難であると共に、氷片が融解するに従って、飲料の濃度が薄まってしまうため、適切な冷却状態で飲料を提供することは困難であった。
【0005】
そこで、従来では、水槽内の冷却水を冷却する水槽冷却熱交換器と共にヒートポンプ回路(冷媒回路)を構成する飲料過冷却熱交換器を備え、水槽内にて冷却された後の飲料を飲料過冷却熱交換器にて当該飲料の凝固点以下の温度まで冷却し、過冷却状態のままカップに飲料を吐出することにより、シャーベット状の飲料を提供する装置が開発されている(特許文献1参照。)。
【0006】
この装置では、飲料の流量を制御することにより、飲料を氷点以下の温度でも液相の状態を維持したまま飲料過冷却熱交換器から流出させる。そして、カップ等に吐出された衝撃によって当該飲料を一瞬に氷へと相変化させ、これによって、カップ内には、流動性のあるシャーベット状の飲料が供給される。
【特許文献1】特開2001−325656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した如き従来技術では、ヒートポンプ回路によって、常時、飲料過冷却熱交換器の温度を飲料の氷点以下に維持することは困難であり、ヒートポンプ回路を構成する圧縮機を一旦停止させてしまうと、運転開始から数分〜十数分は当該飲料過冷却熱交換器による冷却性能が不十分となり、適宜円滑な過冷却飲料の供給が困難となる問題がある。
【0008】
また、係る装置において、飲料過冷却熱交換器内において何らかの影響、例えば、飲料の種類や凝固点温度と過冷却温度の差、飲料の冷却配管等の飲料が直に接触する部材の材質や形状、更には、面粗さなどの影響により、飲料の過冷却状態が解除され、飲料過冷却熱交換器内にて飲料が凍結してしまう問題がある。
【0009】
係る場合には、飲料配管が凍結された飲料によって閉塞された状態となり、当該飲料が自然に解凍されるまでは、次回からの飲料の供給が行えなくなるという問題がある。また、凍結により飲料配管自体が破損するおそれがあり、安全面を確保した飲料の提供が煩雑となる問題がある。
【0010】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、適宜円滑に過冷却飲料を供給することを可能とする飲料ディスペンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の飲料ディスペンサは、温度が凝固点以下の過冷却状態とされた飲料を供給し、外部で過冷却状態を解除させるものであって、飲料を氷点付近まで冷却する一次冷却装置と、該一次冷却装置にて冷却された飲料を外部に供給する飲料供給回路と、飲料の凝固点以下に冷却された不凍液が循環されるブライン回路と、飲料供給回路を流れる飲料とブライン回路内を流れる不凍液とを熱交換させる過冷却用熱交換器とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明の飲料ディスペンサは、上記発明において、飲料を提供する際、ブライン回路に不凍液を循環させることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明の飲料ディスペンサは、上記各発明において、過冷却用熱交換器における飲料とブライン間の熱移動量を0より大きく100J/sec以下としたことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明の飲料ディスペンサは、上記発明において、過冷却用熱交換器における飲料と飲料供給回路壁面との接触面積を0より大きく4.0cm2/cc以下としたことを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明の飲料ディスペンサは、上記各発明において、過冷却用熱交換器を内管と外管とから成る二重配管にて構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明の飲料ディスペンサは、上記発明において、過冷却用熱交換器の内管内に飲料を流し、内管と外管との間にブラインを流すと共に、内管の内径を10.7mm以上としたことを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明の飲料ディスペンサは、上記各発明において、過冷却用熱交換器において、飲料と不凍液とが対向して流れるよう構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明の飲料ディスペンサは、上記各発明において、過冷却用熱交換器を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明の飲料ディスペンサは、温度が凝固点以下の過冷却状態とされた飲料を供給し、外部で過冷却状態を解除させるものであって、飲料を氷点付近まで冷却する一次冷却装置と、該一次冷却装置にて冷却された飲料を外部に供給する飲料供給回路と、該飲料供給回路を流れる飲料を、凝固点以下の過冷却状態に冷却する過冷却用熱交換器を備えた二次冷却装置と、過冷却用熱交換器を加熱する加熱手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、温度が凝固点以下の過冷却状態とされた飲料を供給し、外部で過冷却状態を解除させる飲料ディスペンサにおいて、飲料を氷点付近まで冷却する一次冷却装置と、該一次冷却装置にて冷却された飲料を外部に供給する飲料供給回路と、飲料の凝固点以下に冷却された不凍液が循環されるブライン回路と、飲料供給回路を流れる飲料とブライン回路内を流れる不凍液とを熱交換させる過冷却用熱交換器とを備えたので、一次冷却装置にて冷却され飲料供給回路に流入された飲料を、過冷却用熱交換器において当該飲料の凝固点以下に冷却された不凍液と熱交換させることにより、飲料を凝固点以下の過冷却の状態にまで冷却することが可能となる。
【0021】
これにより、過冷却状態とされた飲料が外部にてカップ等の容器に注入される衝撃によって、当該飲料を瞬間的に氷へと相変化させることができ、最終提供状態をシャーベット状態として飲料を提供することが可能となる。
【0022】
特に、本発明では、不凍液はブライン回路を流れることによって、飲料供給回路を流れる飲料を冷却する構成とされているため、不凍液の水槽を用いる場合に比して装置の小型化を図ることが可能となる。また、ブライン回路内という限られた回路内に不凍液を循環させることから温度制御を容易に行うことが可能となり、ブライン回路と熱交換を行う飲料供給回路内の飲料が過冷却解除され凍結してしまった場合にも、当該凍結した飲料を容易に融解させることが可能となり、飲料供給回路の閉塞を解消することができ、適宜円滑な過冷却飲料の供給が可能となる。
【0023】
請求項2の発明によれば、上記発明に加えて、飲料を提供する際、ブライン回路に不凍液を循環させることにより、長時間飲料を過冷却状態のまま維持しておく必要がなくなり、氷核の発生確率を低減することができる。従って、飲料の提供待機中において過冷却用熱交換器内において飲料が凍結してしまう不都合を回避することが可能となる。これにより、適宜円滑な過冷却飲料の供給が可能となる。
【0024】
請求項3の発明によれば、上記各発明に加えて、過冷却用熱交換器における飲料とブライン間の熱移動量を0より大きく100J/sec以下としたことにより、過冷却用熱交換器内における飲料を比較的遅い冷却速度にて冷却することが可能となり、氷核の発生確率をより一層低減することができる。従って、飲料の提供待機中において過冷却用熱交換器内にて飲料が凍結してしまう不都合を高確率にて回避することが可能となる。円滑な過冷却飲料の供給を実現することができる。
【0025】
請求項4の発明によれば、上記発明において、過冷却用熱交換器における飲料と飲料供給回路壁面との接触面積を0より大きく4.0cm2/cc以下としたので、冷却熱が伝達される飲料供給回路壁面に接触する飲料を少なくすることで、氷核の発生を抑制することができ、飲料の提供待機中において過冷却用熱交換器内にて飲料が凍結してしまう不都合をより一層、高確率にて回避することが可能となる。
【0026】
請求項5の発明によれば、上記各発明に加えて、過冷却用熱交換器を内管と外管とから成る二重配管にて構成したので、装置の小型化を実現しつつ、飲料供給回路とブライン回路との熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0027】
請求項6の発明によれば、上記発明において、過冷却用熱交換器の内管内に飲料を流し、内管と外管との間にブラインを流すと共に、内管の内径を10.7mm以上としたので、万が一、過冷却用熱交換器において飲料供給回路を流れる飲料の過冷却状態が解除され、凍結した場合であっても、凍結した飲料によって完全に飲料供給回路が閉塞してしまう不都合を抑制することができる。
【0028】
従って、内管内に残留した氷も、順次当該過冷却用熱交換器内に流入する氷点付近の温度の飲料によって溶解することができ、連続した飲料の供給を実現することが可能となる。
【0029】
請求項7の発明によれば、上記各発明に加えて、過冷却用熱交換器において、飲料と不凍液とが対向して流れるよう構成したことにより、飲料供給回路を流れる飲料とブライン回路を流れる不凍液との熱交換効率の向上を図ることが可能となり、冷却性能の向上を実現することができる。
【0030】
請求項8の発明によれば、上記各発明に加えて、過冷却用熱交換器を加熱する加熱手段を備えたことにより、万が一、過冷却用熱交換器において飲料供給回路を流れる飲料の過冷却状態が解除され、凍結した場合であっても、加熱手段により過冷却用熱交換器を加熱することによって、円滑に当該飲料の凍結を融解することが可能となり、飲料供給回路の閉塞を解消することが可能となる。これにより、適宜円滑な過冷却飲料の供給が可能となる。
【0031】
請求項9の発明によれば、温度が凝固点以下の過冷却状態とされた飲料を供給し、外部で過冷却状態を解除させる飲料ディスペンサにおいて、飲料を氷点付近まで冷却する一次冷却装置と、該一次冷却装置にて冷却された飲料を外部に供給する飲料供給回路と、該飲料供給回路を流れる飲料を、凝固点以下の過冷却状態に冷却する過冷却用熱交換器を備えた二次冷却装置と、過冷却用熱交換器を加熱する加熱手段とを備えたことにより、過冷却用熱交換器において飲料供給回路を流れる飲料の過冷却状態が解除され、凍結した場合であっても、加熱手段により過冷却用熱交換器を加熱することによって、円滑に当該飲料の凍結を融解することが可能となり、飲料供給回路の閉塞を解消することが可能となる。これにより、適宜円滑な過冷却飲料の供給が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、図面に基づき本発明の実施形態としての実施例1乃至実施例3について詳述する。いずれの実施例における飲料ディスペンサ1は、レストランや喫茶店などで使用されるディスペンサであって、ウーロン茶、オレンジジュースなどの中性飲料又は強弱無炭酸系の目的飲料を過冷却状態にて供給し、カップ等の受容器内にてシャーベット状の飲料として提供する装置である。
【実施例1】
【0033】
まずはじめに、実施例1としての飲料ディスペンサについて図1乃至図3を参照して詳述する。図1は本発明を利用した飲料ディスペンサ1の本体2の正面図、図2は飲料ディスペンサ1の本体2の側面図、図3は飲料ディスペンサ1の概略構成図を示している。
【0034】
実施例の飲料ディスペンサ1は、本体2の近傍に飲料供給ユニット3が配置されている。本体2の開閉扉28の前面には、前記飲料供給ユニット3からの飲料供給を操作する操作部27が設けられており、飲料供給ユニット3から供給される飲料毎に飲料供給量又は飲料供給方法を選択する操作ボタン、例えばボタンS、ボタンM、ボタンL、ボタンC/P等が設けられている。ボタンS、M、Lは、予め決められた量の飲料の供給を操作するボタンであり、ボタンC/Pは、当該ボタンを操作している間だけ飲料の供給を行うボタンである。当該操作部27は、詳細は後述する制御装置4に接続されているものとする。
【0035】
そして、この開閉扉28の下部後方には、飲料供給ユニット3からの飲料を吐出するためのノズル12(図3に図示する。)が設けられており、当該ノズル12の下方には、テーブル14が設けられ、当該テーブル14上にカップ5を配置することができる。
【0036】
本実施例における飲料供給ユニット3は、飲料原料である有糖液体原料又は無糖液体原料であるシロップを、予め希釈水や炭酸水などの希釈液によって目的飲料の提供に適した濃度に調整されて生成された飲料を貯留する飲料タンク6と、当該飲料タンク6から飲料を供給する飲料供給回路7と、飲料冷却コイル9と、飲料過冷却用熱交換器16と、飲料電磁弁10とを配設して構成している。飲料供給回路7の端部には、上記ノズル12が接続されている。
【0037】
飲料送出手段を構成する減圧弁としてのガスレギュレータ8は、常に開放されていることから飲料供給回路7に設けられる飲料電磁弁10が開放されることで、炭酸ガスボンベ15から所定の圧力の炭酸ガスが供給され、飲料タンク6内から飲料冷却コイル9が介設される飲料供給回路7に飲料を送出する。
【0038】
上記飲料冷却コイル9は、一次冷却装置13により飲料を氷点付近の温度にまで冷却するものである。本実施例において、一次冷却装置13は、冷却水を貯留する水槽17と、該水槽17内の冷却水を冷却し、一定割合の冷却水を冷却器22に着氷させる冷媒回路18により構成される。冷媒回路18は、本体2内に配設される圧縮機19と、凝縮器20と、減圧手段としての膨張弁21と、水槽17内の冷却水と交熱的に配設される冷却器22とを冷媒配管23によって環状に接続することに構成される。
【0039】
また、水槽17内には、撹拌モータ24の駆動により水槽内の冷却水を撹拌する撹拌プロペラ25が設けられていると共に、冷却器22の内側に位置する一対の導線から構成された第1の氷センサ26Aと、冷却器22の外側に位置する一対の導線から構成された第2の氷センサ26Bとを備えている。これら氷センサ26A、26Bは、前記導線間に氷が介在して抵抗値が所定値以上になると氷検出信号を出力するものである。
【0040】
他方、飲料冷却コイル9の下流側に接続される飲料供給回路7には、飲料過冷却用熱交換器16が設けられている。この飲料過冷却用熱交換器16は、二次冷却装置30により飲料を凝固点以下の過冷却温度にまで冷却するものであり、本実施例では、図8に示す如き二重配管16Dにより構成されており、当該二重配管16Dは、断熱材34などにより囲繞され、容易には冷熱が外部に漏出されない構成とされている。
【0041】
そして、この二重配管16Dの内側の配管(内管16I)内に飲料冷却コイル9から流出された飲料が流入される構成とされている。なお、本実施例において、この二重配管16Dの内側の配管16I内部は、カップ5の約一杯分、例えば約175ml程度の飲料によって満たされる容量とされている。また、当該二重管16Dの詳細な構成については後述する。
【0042】
本実施例において、二次冷却装置30は、不凍液が循環されるブライン回路31と、当該ブライン回路31内の不凍液を凝固点以下の過冷却温度、例えば−10℃乃至−5℃にまで冷却する冷媒回路35により構成される。
【0043】
ブライン回路31は、不凍液循環ポンプ32と、飲料過冷却用熱交換器16と、不凍液タンク33とを環状に接続して、内部に所定量の不凍液を充填して成る。本実施例では、ブライン回路31を流れる不凍液が、飲料過冷却用熱交換器16を構成する二重配管16Dの外側の配管(外管16O)と内側の配管16Iとの間に流入する構成とされる。また、本実施例では、飲料の流通方向に対し、不凍液の流通方向が対向して流れるように配管接続されている。これにより、不凍液は、飲料過冷却用熱交換器16の飲料供給回路7下流側から流入し、当該熱交換器16の飲料供給回路7上流側から流出する構成とされる。
【0044】
冷媒回路35は、本体2内に配設される圧縮機36と、凝縮器37と、減圧手段としての膨張弁38と、不凍液タンク33内の不凍液と交熱的に配設される冷却器39とを冷媒配管40によって環状に接続することに構成される。なお、本実施例では、冷却器39内に高温の冷媒を流入可能とさせるため、当該冷媒回路35内の冷媒の流路を変更可能とする四方弁41(図4のみ図示する)が設けられている。
【0045】
また、不凍液タンク33内には、当該タンク33内に貯留される不凍液の温度を検出するための温度センサ42が設けられている。
【0046】
なお、図3では、飲料タンク6と、飲料冷却コイル9と、飲料過冷却用熱交換器16、飲料電磁弁10とから構成される飲料供給回路7は、一ラインのみ図示しているが、これに限定されるものではなく、操作部27に設けられる飲料の種類ごとに飲料タンク6、飲料冷却コイル9、飲料過冷却用熱交換器16、飲料電磁弁10とから構成される飲料供給回路7が設けられているものとする。なお、この場合において、一次冷却装置13を構成する水槽17は、それぞれの飲料冷却コイル9を冷却するものとして使用し、また、二次冷却装置30を構成する不凍液タンク33も同様に、それぞれの飲料供給回路7を冷却するものとして使用しても良いものとする。ただし、ブライン回路31は、それぞれの飲料供給回路7の飲料過冷却用熱交換器16ごとに設けることが望ましい。
【0047】
次に、図4の電気ブロック図を参照して制御装置4について説明する。当該制御装置4は、汎用のマイクロコンピュータにより構成されており、入力側には、操作部27と、第1、第2の氷センサ26A、26Bと、温度センサ42が接続されている。また、出力側には、各飲料電磁弁10と、一次冷却装置13を構成する圧縮機19と、膨張弁21と、撹拌モータ24と、二次冷却装置30を構成する各不凍液循環ポンプ32と、圧縮機36と、膨張弁38と、四方弁41とが接続されている。
【0048】
以上の構成により、当該飲料ディスペンサ1の動作について説明する。まず、制御装置4は、飲料の供給待機状態とし、一次冷却装置13の水槽17内の冷却水の冷却及び、二次冷却装置30の不凍液タンク33内の不凍液の冷却を行い、各飲料電磁弁10を開放して、各飲料供給回路7に飲料を流入させる。
【0049】
水槽17内の冷却水の冷却は、まず、制御装置4により一次冷却装置13の圧縮機19等を運転し、冷却器22によって冷却作用を発揮させる。これにより、当該冷却器22を構成する冷媒配管により水槽17内の冷却水を冷却し、更に冷却器22の表面に氷Iを形成する。そして、氷センサ26A、26Bによる氷検出信号に基づき水槽17内の冷却水が十分に着氷しているか否かを判断し、これに基づき一次冷却装置13の圧縮機19等の運転を制御する。従って、当該水槽17内の冷却水に浸漬される各飲料冷却コイル9は、氷点付近の温度に冷却され、当該飲料冷却コイル9内を流通する飲料も氷点付近の温度に冷却される。
【0050】
不凍液タンク33内の不凍液の冷却は、まず、制御装置4により二次冷却装置30の圧縮機36等を運転し、冷却器39によって冷却作用を発揮させる。これにより、不凍液タンク33内の不凍液が冷却される。そして、温度センサ42の検出温度に基づき不凍液タンク33内の不凍液が所定の冷却温度(飲料の凝固点以下の過冷却温度)、本実施例では、−8℃〜−5℃となるように、二次冷却装置30の圧縮機36等の運転を制御する。従って、不凍液タンク33内の不凍液は、常時−8℃〜−5℃の冷却温度に冷却される。
【0051】
制御装置4は、水槽17内の冷却水が氷点付近の温度に冷却され、不凍液タンク33内の不凍液が−8℃〜−5℃の飲料の過冷却に適した温度にまで冷却されたことを検出した後、飲料の販売が可能な状態、即ち、操作部27に設けられる各飲料の供給を行う操作ボタンによる操作が可能な状態とする。
【0052】
係る状態において、操作部27に設けられる何れかの操作ボタンが操作されると、対応する飲料供給回路7を冷却するブライン回路31の不凍液循環ポンプ32が駆動される。当該不凍液循環ポンプ32が駆動されてから所定時間(熱交換器冷却待機時間)、例えば5秒程度遅延させて、対応する飲料電磁弁10を開放する。
【0053】
これにより、飲料過冷却用熱交換器16を構成する二重配管16Dの内管16I内を流通する飲料は、通過する過程において、ブライン回路31内を循環する−8℃〜−5℃の過冷却温度に冷却された不凍液と熱交換することにより、該飲料の過冷却温度にまで冷却される。
【0054】
なお、本実施例の如く飲料供給の指示が行われた後、熱交換器冷却待機時間が経過するまで、不凍液循環ポンプ32を先に駆動し、遅延させて飲料電磁弁10を開放することで、飲料過冷却用熱交換器16における飲料供給回路7内に充填される飲料を適切に−8℃〜−5℃の飲料の過冷却温度にまで冷却することが可能となる。
【0055】
飲料過冷却用熱交換器16において当該飲料の過冷却温度にまで冷却された飲料は、過冷却状態とされているため、ノズル12から外部に排出され、カップ5に注入される衝撃によって、当該飲料は瞬間的に氷へと相変化され、最終提供状態をシャーベット状態として飲料が提供される。なお、本実施例では、ノズル12から外部に排出される飲料は、容器としてのカップ5にて受容しているが、これに限定されるものではなく、グラスや皿、ジョッキ、バケツ等、飲料を受容可能とするものであればよいものとする。
【0056】
このとき、飲料電磁弁10が開放されることで、減圧弁としてのガスレギュレータ8が、常に開放されていることから炭酸ガスボンベ15より所定の圧力の炭酸ガスが供給され、飲料タンク6内の飲料を、飲料冷却コイル9が介設される飲料供給回路7に送出する。
【0057】
そのため、飲料タンク6内に貯留されていた飲料は、飲料冷却コイル9へと流入し、当該飲料冷却コイル9において、水槽17の冷却水と熱交換することにより、氷点付近まで冷却される。このとき、飲料冷却コイル9内に充填されていた飲料は、飲料タンク6から飲料冷却コイル9への飲料の流入によって、飲料過冷却用熱交換器16に押し出され、次回の飲料の供給に備え待機状態とされる。
【0058】
係る構成とすることにより、一次冷却装置13の水槽17にて氷点付近の温度にまで冷却された飲料を、過冷却用熱交換器16において当該飲料の凝固点以下に冷却された不凍液と熱交換させることにより、飲料を短時間で効率的に凝固点以下の過冷却の状態にまで冷却することが可能となる。そのため、ノズル12から吐出される飲料は、カップ5に注入される衝撃によって、過冷却状態が解除され、瞬間的に氷へと相変化し、最終提供状態をシャーベット状態として飲料を提供することが可能となる。
【0059】
ここで、前記図8及び図9、図10を参照して、二重管16Dの詳細について説明する。本実施例において用いられる二重管16Dは、少なくとも内管16Iが熱良導性の材料、ここでは、SUS304にて構成されるものであり、上述したように、一回に提供される飲料の量(一杯分:当該実施例では175cc)を滞留可能とする容量を有する。なお、一回に提供される飲料の量は、これに限定されるものではなく、例えば100cc乃至1000ccであってもよい。その場合、当該一回に供給される飲料の量に応じて、二重管16Dの長さを変更するものとする。
【0060】
次に、二重管16Dの構成条件及びブライン回路31による冷却条件に対する過冷却用熱交換器16内における氷核発生回避確率(過冷却生成の成功確率)についての実験結果について説明する。係る実験では、3種類の二重管を用いて、ブライン温度を−8.5、−9.0、−9.5、−10.0℃の四種類として、氷点付近(本実験では、凍結防止のため、+1℃)の水(ここでは、飲料の代わりに水を使用する)を当該水の凝固点温度よりも低い過冷却温度、例えば、−5℃とする。用いる二重管は、入手が容易な所定の規格により作製される二重管A(内管16Iの内径:4.75mm、長さ8.0m。この場合のみ飲料の容量は140ccとする)と、二重管B(内管16Iの内径:7.53mm、長さ4.0m)と、二重管C(内管16Iの内径:10.70mm、長さ2.0m)とする。なお、二重管Cについては、内径が他のものよりも大きいことから、計測する温度計の外形寸法の影響により当該実験では、+1℃から−4℃までとする。
【0061】
これによると、二重管Aを用いた場合には、ブライン温度−8.5℃では、過冷却用熱交換器16内における氷核発生回避確率は、97%、−9.0℃では、90%、−9.5℃では、83%であった。二重管Bを用いた場合には、ブライン温度−8.5℃、−9.0℃、−9.5℃、−10.0℃のいずれの温度においても93%であった。二重管Cを用いた場合には、ブライン温度−8.5℃、−9.0℃、−9.5℃、−10.0℃のいずれの温度においても100%であった。
【0062】
ここで、二重管における飲料の冷却速度について考察する。二重管Aを用いた場合に、ブライン回路31の流速を同一(この場合1.12m/sec)とし、当該ブライン温度を変化させた場合、−8.5℃では、飲料(水)が+1℃から−5℃に到達する時間が24.5秒、この際の冷却速度は、119J/secであった。ブライン温度が−9.0℃では、22.0秒、133J/sec、ブライン温度が−9.5℃では、19.0秒、154J/secであった。上記実験結果をあわせると、単位時間当たりの飲料とブライン間の熱移動量が小さいほど、氷核発生回避確率が高くなることがわかる。
【0063】
同様に、二重管Bを用いた場合に、ブライン回路31の流速を同一(この場合1.04m/sec)とし、当該ブライン温度を変化させた場合、−8.5℃では、飲料(水)が+1℃から−5℃に到達する時間が41.0秒、この際の冷却速度は、89J/secであった。ブライン温度が−9.0℃では、35.0秒、105J/sec、ブライン温度が−9.5℃では、29.1秒、126J/sec、ブライン温度が−10.0℃では、23.7秒、154J/secであった。
【0064】
また、二重管Cを用いた場合に、ブライン回路31の流速を同一(この場合0.98m/sec)とし、当該ブライン温度を変化させた場合、−8.5℃では、飲料(水)が+1℃から−4℃に到達する時間が70.3秒、この際の冷却速度は、52J/secであった。ブライン温度が−9.0℃では、58.1秒、63J/sec、ブライン温度が−9.5℃では、45.5秒、80J/sec、ブライン温度が−10.0℃では、37.3秒、98J/secであった。
【0065】
係る実験結果より得られる単位時間当たりの飲料とブライン間の移動熱量に対する氷核発生回避確率についてのグラフを図9に示す。これにより、飲料とブライン間の移動熱量が0より大きく100J/sec以下である場合には、氷核発生回避確率が100%となる割合が高くなっていることがわかる。また、当該実験結果から、飲料とブライン間の移動熱量を80J/secとするとその確率がより高くなり、当該実験結果から得られる最小自乗法により算出される曲線より当該移動熱量を50J/secとすると、氷核発生回避確率が限りなく100%に近づくことがわかる。
【0066】
これは、冷却速度が速くなる(この場合100J/secより速くなる)と、過冷却熱交換器16内の飲料に氷核が生じやすくなり、当該氷核が発生することで、過冷却熱交換器16内の飲料が過冷却解除されてしまうと考えられる。これに対し、冷却速度が遅くなるほど、過冷却熱交換器16内の飲料に氷核が生じ難くなり、当該氷核発生が回避されるため過冷却熱交換器16内の飲料の過冷却状態を維持することができると考えられる。
【0067】
従って、当該冷却速度、即ち、単位時間当たりの飲料とブライン間の移動熱量が0より大きく100J/sec以下とすることで、比較的遅い冷却速度にて飲料を凝固点以下の温度に冷却することができ、氷核の発生確率をより一層低減することができる。これにより、飲料の提供待機中において過冷却用熱交換器16内にて飲料が凍結してしまう不都合を高確率にて回避することができ、当該過冷却熱交換器16内にて飲料の過冷却状態を維持することが可能となる。
【0068】
そのため、飲料がノズル12を介して外部に排出された際に、カップ5に注入された衝撃によって、当該飲料は、過冷却状態が解除され、瞬間的に氷へと相変化し、最終提供状態をシャーベット状態として飲料を提供することが可能となる。但し、飲料の提供時間を考慮すると、一杯当たりの飲料提供に要する時間は、短いほど望ましい。
【0069】
また、係る実験結果より得られる単位液量当たりの飲料への伝熱面積に対する氷核発生回避確率についてのグラフを図10に示す。これによると、上記二重管Aでの当該単位液量あたりの伝熱面積は、8.527cm2/ccであり、この場合の氷核発生回避確率は、上述したように、83%〜97%とばらつきがあった。また、上記二重管Bでの当該単位液量あたりの伝熱面積は、5.407cm2/ccであり、この場合の氷核発生回避確率は、上述したように、93%であった。これに対し、上記二重管Cでの当該単位液量あたりの伝熱面積は、3.842cm2/ccであり、この場合の氷核発生回避確率は、上述したように、100%であり、確実に氷核発生を回避でき、過冷却状態を維持したまま、外部に排出することができた。
【0070】
これにより、単位液量あたりの飲料への伝熱面積が0より大きく4.0cm2/cc以下である場合には、氷核発生回避確率が100%となる割合が高くなっていることがわかる。
【0071】
これは、二重管16の外管16Oと内管16I間を流れるブラインからの冷却熱は、当該内管16Iの壁面を介して当該内管16I内を流れる飲料に伝達される。なお、本実施例では、当該二重管16の内管161Iは、熱良導性の材料(ここでは、SUS304)にて肉厚0.8mm〜1.0mmとして構成しているため、当該内管16Iの材料や厚さによる熱伝導効率の影響は殆ど無視できる。
【0072】
そのため、壁面近傍が最も低温となり、当該壁面と飲料との接触面積が大きくなるほど、急激に冷却される単位液量が大きくなる。従って、急激に冷却される単位液量が小さくなるほど氷核の発生回避確率を高めることができる。
【0073】
また、上述したように、単位時間当たりの飲料とブライン間の移動熱量が80〜100J/secでは、氷核の発生回避確率にばらつきが生じるが、当該条件であっても、壁面と飲料との接触面積を4.0cm2/cc以下とすることで、著しく抑制、本実験結果によれば、氷核の発生回避確率を100%とすることができる。従って、飲料の提供待機中において過冷却用熱交換器16内にて飲料が凍結してしまう不都合をより一層、高確率にて回避することが可能となる。
【0074】
更に、本実施例では、上述したように飲料過冷却用熱交換器16を内管16Iと外管16Oとから成る二重配管16Dにて構成したので、装置の小型化を実現しつつ、飲料供給回路7を流れる飲料とブライン回路31を流れる不凍液との熱交換性の向上を図ることが可能となる。
【0075】
特に、本実施例では、過冷却状態とする飲料が流れる内管16Iの内径を上記二重管Cのように10.7mm(外径12.70mm、肉厚1.0mm)以上とすることで、万が一、過冷却用熱交換器16内において飲料供給回路7を流れる飲料の過冷却状態が解除され、凍結した場合であっても、凍結した飲料によって完全に飲料供給回路7が閉塞してしまう不都合を抑制することができる。
【0076】
従って、内管16I内に残留した氷も、順次当該過冷却用熱交換器16の内管16I内に流入する氷点付近の温度の飲料によって溶解することができ、連続した飲料の供給を実現することが可能となる。
【0077】
なお、当該二重管16の内管16Iの内径は、入手が容易な所定の規格により作成される二重管であって、当該飲料の過冷却に適したものを考慮すると、10.7mm以上14.0mm以下であることが望ましい。
【0078】
また、本実施例では、不凍液はブライン回路31を流れることによって、飲料供給回路7を流れる飲料を冷却する構成とされているため、不凍液の水槽を用いる場合に比して装置の小型化を図ることが可能となる。
【0079】
なお、本実施例では、飲料過冷却用熱交換器16は、二重配管にて構成しているが、これ以外にも、プレート式熱交換器により構成しても良い。
【0080】
更にまた、飲料過冷却用熱交換器16において、飲料と不凍液とが対向して流れるよう構成したことにより、飲料供給回路7を流れる飲料とブライン回路31を流れる不凍液との熱交換効率をより一層向上させることができ、冷却性能の向上を実現することができる。
【0081】
そして、制御装置4は、飲料電磁弁10を開放してから所定量、即ちカップ5一杯分の飲料を排出するのに要する時間が経過した後、飲料電磁弁10を閉鎖すると共に、駆動していたブライン回路31の不凍液循環ポンプ32を停止する。
【0082】
これにより、飲料を提供する際に、ブライン回路31に不凍液を循環させることにより、長時間飲料を過冷却状態のまま維持しておく必要がなくなり、氷核の発生確率を低減することができる。従って、飲料の提供待機中において飲料過冷却用熱交換器16内において飲料が凍結してしまう不都合を回避することが可能となる。これにより、適宜円滑な過冷却飲料の供給が可能となる。
【0083】
なお、当該ブライン回路31の不凍液循環ポンプ32は、飲料提供時以外は原則として運転を停止しているが、飲料過冷却用熱交換器16全体の保冷のために、わずかな流量を循環させたり、間欠運転を行っても良いものとする。
【0084】
なお、飲料過冷却熱交換器16内において飲料の過冷却状態が何らかの影響、例えば、飲料の種類や凝固点温度と過冷却温度の差、飲料の冷却配管等の飲料が直に接触する部材の材質や形状、更には、面粗さなどの影響により、万が一、過冷却状態が解除され、飲料過冷却熱交換器16内にて飲料が凍結してしまった場合には、制御装置4は、解凍制御を実行する。
【0085】
当該解凍制御では、制御装置4は、四方弁41を制御し、二次冷却装置30の冷媒回路35の圧縮機36から吐出される高温のガス冷媒を凝縮器37、膨張弁38を介することなく冷却器39に流入させる。これにより、冷却器39に高温のガス冷媒が流入することで、不凍液タンク33内の不凍液が加熱され、不凍液循環ポンプ32を駆動することにより、ブライン回路31には、加熱された不凍液が循環される。従って、当該ブライン回路31内の不凍液と飲料過冷却用熱交換器16において熱交換を行う飲料供給回路7内の凍結された飲料も加熱され、これによって、係る飲料供給回路7内の飲料が解凍される。
【0086】
このように、ブライン回路31内という限られた回路内に不凍液を循環させる構成を採用していることからかかる不凍液の温度制御を容易に行うことが可能となり、ブライン回路31内の不凍液と熱交換を行う飲料供給回路7内の飲料が過冷却解除され凍結してしまった場合にも、容易に凍結した飲料を融解させることが可能となり、飲料供給回路7の閉塞を解消することができる。これにより、適宜円滑な過冷却飲料の供給が可能となる。
【0087】
なお、本実施例では、飲料過冷却用熱交換器16の飲料供給回路7内の凍結された飲料の加熱手段として冷媒回路40のホットガスを使用しているが、これに限定されるものではなく、飲料過冷却用熱交換器16に電気ヒータなどを設け、これにより、凍結された飲料の解凍を行っても良い。
【0088】
また、係る実施例では、飲料過冷却用熱交換器16において別途冷媒回路40の冷却器39にて冷却された不凍液をブライン回路31に循環させ、当該ブライン回路31と飲料供給回路7とを熱交換させることにより、飲料の過冷却温度への冷却を行っているが、当該間接冷却の方法に限定されるものではなく、冷媒回路40の冷却器39を飲料過冷却用熱交換器16に設け、当該飲料過冷却用熱交換器16の飲料供給回路7を直接冷却器39を流通する冷媒によって冷却しても良い。
【0089】
係る場合において、飲料過冷却用熱交換器16の飲料供給回路7において飲料が凍結してしまった場合には、当該冷却器39に高温冷媒を流入させることにより、解凍を行うこととする。
【実施例2】
【0090】
次に、図5の飲料ディスペンサ51の概略構成図を参照して、実施例2としての飲料ディスペンサ51について説明する。なお、図5において、図3と同様の符号が付されているものは、同一の効果及び作用を奏するものであるため、説明を省略する。
【0091】
係る実施例における飲料ディスペンサ51は、上記実施例における飲料供給ユニット3が、飲料原料である有糖液体原料又は無糖液体原料であるシロップを貯留するシロップタンク52と、当該シロップタンク52からシロップを供給するシロップ回路53と、該シロップ回路53にシロップタンク52内のシロップを送出するガスレギュレータ55と、当該シロップを目的飲料の提供に適した濃度に希釈するための飲料原料としての原水を濾過するフィルタ58と、原水を供給する原水供給回路59と、原水供給回路59を流れる原水を処理する原水処理装置63と、原水冷却コイル60と、原水過冷却用熱交換器61とを配設して構成している。また、シロップ回路53はシロップ電磁弁54が介設されており、当該端部はノズル56に接続されている。他方、原水供給回路59は、原水電磁弁62が介設されており、当該端部はノズル12に接続されている。
【0092】
なお、減圧弁としてのガスレギュレータ55は、常に開放されていることからシロップ回路53に設けられるシロップ電磁弁54が開放されることで、炭酸ガスボンベ15から所定の圧力の炭酸ガスが供給され、シロップタンク52内のシロップを、シロップ回路53を介してノズル56に送出する。
【0093】
原水処理装置63は、供給される原水を脱気、及び/又は逆浸透膜濾過処理する手段であって、原水として供給される水道水に含まれる不純物を除去する装置である。
【0094】
原水冷却コイル60は、原水処理装置63にて処理された後の原水を一次冷却装置13により氷点付近の温度にまで冷却するものである。なお、一次冷却装置13の構成は、上記実施例と同様であるため、説明は省略する。また、この一次冷却装置13を構成する水槽17の冷却水には、当該原水冷却コイル60の他にも、上記シロップ回路53が交熱的に配設されている。
【0095】
そして、原水冷却コイル60の下流側に接続される原水供給回路59には、原水過冷却用熱交換器61が設けられている。この原水過冷却用熱交換器61は、上記実施例における飲料過冷却用熱交換器16の構成と同様であるため、説明は省略する。
【0096】
なお、図5では、シロップタンク52と、シロップ電磁弁54とから構成されるシロップ回路53は、一ラインのみ図示しているが、これに限定されるものではなく、操作部27に設けられる飲料の種類ごとにシロップタンク52、シロップ電磁弁54とから構成されるシロップ回路53が設けられているものとする。なお、この場合に、各シロップを目的飲料とするために希釈液として用いられる原水は、共通であることから、原水供給回路59は、一ラインでよい。
【0097】
以上の構成により、当該飲料ディスペンサ51の動作について説明する。まず、制御装置は、飲料の供給待機状態とし、一次冷却装置13の水槽17内の冷却水の冷却及び、二次冷却装置30の不凍液タンク33内の不凍液の冷却を行い、各シロップ電磁弁54を開放してシロップ回路53にシロップを流入させると共に、原水電磁弁62を開放して、原水供給回路59に原水を流入させる。
【0098】
制御装置は、水槽17内の冷却水が氷点付近の温度に冷却され、不凍液タンク33内の不凍液が−8℃〜−5℃の飲料の過冷却に適した温度にまで冷却されたことを検出した後、飲料の販売が可能な状態、即ち、操作部27に設けられる各飲料の供給を行う操作ボタンによる操作が可能な状態とする。
【0099】
係る状態において、操作部27に設けられる何れかの操作ボタンが操作されると、原水供給回路59を冷却するブライン回路31の不凍液循環ポンプ32が駆動される。当該不凍液循環ポンプ32が駆動されてから所定時間(熱交換器冷却待機時間)、例えば5秒程度遅延させて、原水電磁弁62と、対応する飲料電磁弁54を開放する。
【0100】
これにより、原水過冷却用熱交換器61を構成する二重配管の内側の配管内を流通する原水は、通過する過程において、ブライン回路31内を循環する−8℃〜−5℃の過冷却温度に冷却された不凍液と熱交換することにより、原水は過冷却温度にまで冷却される。
【0101】
原水過冷却用熱交換器61において過冷却温度にまで冷却された原水は、過冷却状態とされているため、ノズル12からカップ5に注入される衝撃によって、瞬間的に氷へと相変化される。当該原水の供給と同時にノズル12からカップ5にシロップが供給され、これにより、最終提供状態をシャーベット状態として飲料が提供される。
【0102】
このとき、原水電磁弁62が開放されることで、原水は原水冷却コイル60が介設される原水供給回路59に送出される。原水は、原水冷却コイル60へと流入し、当該原水冷却コイル60において、水槽17の冷却水と熱交換することにより、氷点付近まで冷却される。このとき、原水冷却コイル60内に充填されていた原水は、原水冷却コイル60への飲料の流入によって、原水過冷却用熱交換器61に押し出され、次回の飲料の供給に備え待機状態とされる。
【0103】
係る構成とすることにより、一次冷却装置13の水槽17にて氷点付近の温度にまで冷却された原水を、過冷却用熱交換器61において凝固点以下に冷却された不凍液と熱交換させることにより、原水を短時間で効率的に凝固点以下の過冷却の状態にまで冷却することが可能となる。そのため、ノズル12から吐出される原水は、カップ5に注入される衝撃によって、過冷却状態が解除され、瞬間的に氷へと相変化し、最終提供状態をシャーベット状態として飲料を提供することが可能となる。
【0104】
ここで、図6は、原水の種類に応じた過冷却現象の発生の有無についての実験結果を示している。実験対象となる原水は、某町の水道水、カートリッジ濾過水、該カートリッジ濾過水を脱気処理した水、前記水道水を脱気処理した水、蒸留水、アルカリイオン水、逆浸透膜濾過水である。これら原水について、係る実施例における飲料ディスペンサ51により過冷却現象の発生の有無の実験を行った。
【0105】
これによると、水道水やカートリッジ濾過水をそのまま原水として用いた場合には、原水過冷却用熱交換器61において過冷却温度にまで移行できる確率が90%以下であった。また、蒸留水やアルカリイオン水を原水とし過冷却温度にまで移行できる確率は95%以下であった。
【0106】
これに対し、上記水道水やカートリッジ濾過水を脱気処理した後の原水及び逆浸透膜濾過処理を行った原水については、過冷却温度にまで移行できる確率は100%であった。
【0107】
以上の実験結果をふまえると、過冷却現象そのものが不安定な現象であるが、係る実施例では、原水は、原水処理装置63において脱気及び/又は濾過処理されているため、用いられる原水の種類に影響されることなく、原水の過冷却状態を良好に形成することが可能となる。
【0108】
従って、過冷却状態とされた原水が外部に吐出される衝撃によって、当該原水を瞬間的に氷へと相変化させることができ、当該氷へと相変化された原水にシロップ回路53によりシロップを供給することによって、確実に最終提供状態をシャーベット状態の飲料として提供することが可能となる。これにより、配管内で凍ってしまうことにより、飲料が吐出されなくなる不都合を回避することができ、装置としての信頼性が向上される。
【実施例3】
【0109】
次に、図7の飲料ディスペンサ71の概略構成図を参照して、実施例3としての飲料ディスペンサ71について説明する。なお、図7において、図3又は図5と同様の符号が付されているものは、同一の効果及び作用を奏するものであるため、説明を省略する。
【0110】
係る実施例における飲料ディスペンサ71において、飲料タンク76に供給される希釈液としての原水は、上記実施例2と同様に、原水処理装置63により脱気及び/又は逆浸透膜処理されたものである。
【0111】
即ち、係る実施例における飲料供給ユニット3は、飲料原料である有糖液体原料又は無糖液体原料であるシロップを貯留するシロップタンク72と、当該シロップタンク72からシロップを飲料タンク76に供給するシロップ供給ライン73と、該シロップ供給ライン73にシロップタンク72内のシロップを送出するガスレギュレータ75と、当該シロップを目的飲料の提供に適した濃度に希釈するための飲料原料としての原水を濾過処理するフィルタ85と、原水を供給する原水供給ライン80と、原水供給ライン80を流れる原水を処理する原水処理装置63と、原水処理装置63を介して供給される原水とシロップタンク72から供給されるシロップによって目的飲料の提供に適した濃度に調整されて生成された飲料を貯留する飲料タンク76と、当該飲料タンク76から飲料を供給する飲料供給回路7と、該飲料供給回路7に飲料タンク76内の飲料を送出するガスレギュレータ75と、飲料冷却コイル9と、飲料過冷却用熱交換器16と、飲料電磁弁10とを配設して構成している。
【0112】
なお、シロップ供給ライン73には、制御装置により開閉制御されるシロップ電磁弁74が介設されていると共に、原水供給ライン80には、同じく制御装置により開閉制御される原水電磁弁81が介設されている。また、ガスレギュレータ75には、ガス電磁弁78が介設されたガス供給ライン77が接続されており、当該ガス電磁弁78及びシロップ電磁弁74を開閉制御することにより飲料タンク76内の飲料を飲料供給回路7に送出可能とされている。
【0113】
また、飲料タンク76内には、撹拌モータ82の駆動により内部に貯留される原水及びシロップを撹拌する撹拌プロペラ83が設けられていると共に、内部の供給されたガスを排気するための排気弁84が設けられている。
【0114】
なお、図7では、飲料タンク76と、飲料冷却コイル9と、飲料過冷却用熱交換器16、飲料電磁弁10とから構成される飲料供給回路7は、一ラインのみ図示しているが、これに限定されるものではなく、操作部27に設けられる飲料の種類ごとに飲料タンク76、飲料冷却コイル9、飲料過冷却用熱交換器16、飲料電磁弁10とから構成される飲料供給回路7が設けられているものとする。そのため、各飲料タンク76にシロップを供給するシロップ供給ライン73及びシロップタンク72も同様に飲料の種類ごとに設けられているものとする。
【0115】
以上の構成により、当該飲料ディスペンサ71の動作について説明する。まず、制御装置は、飲料の供給待機状態とし、一次冷却装置13の水槽17内の冷却水の冷却及び、二次冷却装置30の不凍液タンク33内の不凍液の冷却を行う。また、シロップ電磁弁74、原水電磁弁81を開放し、飲料タンク76内にシロップ及び脱気及び/又は逆浸透膜処理された後の原水を供給し、目的飲料を生成した後、飲料電磁弁10を開放して、各飲料供給回路7に飲料を流入させる。
【0116】
そして、上記実施例1と同様に、飲料の販売が可能な状態において、操作部27に設けられる何れかの操作ボタンが操作されると、対応する飲料供給回路7を冷却するブライン回路31の不凍液循環ポンプ32が駆動される。当該不凍液循環ポンプ32が駆動されてから所定時間(熱交換器冷却待機時間)、例えば5秒程度遅延させて、対応する飲料電磁弁10を開放する。
【0117】
これにより、飲料過冷却用熱交換器16を構成する二重配管の内側の配管内を流通する飲料は、通過する過程において、ブライン回路31内を循環する−8℃〜−5℃の過冷却温度に冷却された不凍液と熱交換することにより、該飲料の過冷却温度にまで冷却される。
【0118】
飲料過冷却用熱交換器16において当該飲料の過冷却温度にまで冷却された飲料は、過冷却状態とされているため、ノズル12からカップ5に注入される衝撃によって、当該飲料は瞬間的に氷へと相変化され、最終提供状態をシャーベット状態として飲料が提供される。
【0119】
本実施例においても、上記実施例2の場合と同様に、飲料の希釈液として用いられる原水は、脱気及び/又は逆浸透膜処理された後の原水であるため、過冷却状態とされた飲料が外部に吐出される衝撃によって、当該飲料を瞬間的に氷へと相変化させることができ、確実に最終提供状態をシャーベット状態の飲料として提供することが可能となる。これにより、装置としての信頼性が向上される。
【0120】
なお、上記各実施例において、希釈液として冷却水又は脱気及び/又は逆浸透膜処理された後の原水を使用して無炭酸系の過冷却飲料を製造しているが、希釈液として冷却水又は脱気及び/又は逆浸透膜処理された後の原水を使用した炭酸水を用いることにより、強弱炭酸系の過冷却飲料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に係る飲料ディスペンサの本体の正面図である。
【図2】飲料ディスペンサの本体の側面図である。
【図3】飲料ディスペンサの概略構成図である。(実施例1)
【図4】制御装置の電気ブロック図である。
【図5】飲料ディスペンサの概略構成図である。(実施例2)
【図6】原水の種類に応じた過冷却現象の発生の有無についての実験結果を示す図である。
【図7】飲料ディスペンサの概略構成図である。(実施例3)
【図8】二重管の概略構成図である。
【図9】単位時間当たりの飲料とブライン間の移動熱量に対する氷核発生回避確率についてのグラフである。
【図10】単位液量当たりの飲料への伝熱面積に対する氷核発生回避確率についてのグラフである。
【符号の説明】
【0122】
1、51、71 飲料ディスペンサ
3 飲料供給ユニット
4 制御装置
5 カップ
6、76 飲料タンク
7 飲料供給回路
8、55、75 ガスレギュレータ(飲料送出手段)
9 飲料冷却コイル
10 飲料電磁弁
12 ノズル
13 一次冷却装置
16 飲料過冷却用熱交換器
16D 二重管
16I 内管
16O 外管
17 水槽
18、35 冷媒回路
19、36 圧縮機
20、37 凝縮器
21、38 膨張弁
22、39 冷却器
30 二次冷却装置
31 ブライン回路
32 不凍液循環ポンプ
33 不凍液タンク
34 断熱材
41 四方弁
42 温度センサ
52、72 シロップタンク
53 シロップ回路
54、74 シロップ電磁弁
58 フィルタ
59 原水供給回路
60 原水冷却コイル
61 原水過冷却用熱交換器
62 原水電磁弁
63 原水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度が凝固点以下の過冷却状態とされた飲料を供給し、外部で過冷却状態を解除させる飲料ディスペンサであって、
前記飲料を氷点付近まで冷却する一次冷却装置と、
該一次冷却装置にて冷却された飲料を外部に供給する飲料供給回路と、
前記飲料の凝固点以下に冷却された不凍液が循環されるブライン回路と、
前記飲料供給回路を流れる飲料と前記ブライン回路内を流れる不凍液とを熱交換させる過冷却用熱交換器とを備えたことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項2】
前記飲料を提供する際、前記ブライン回路に不凍液を循環させることを特徴とする請求項1に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項3】
前記過冷却用熱交換器における前記飲料と前記ブライン間の熱移動量を0より大きく100J/sec以下としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項4】
前記過冷却用熱交換器における前記飲料と前記飲料供給回路壁面との接触面積を0より大きく4.0cm2/cc以下としたことを特徴とする請求項3に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項5】
前記過冷却用熱交換器を内管と外管とから成る二重配管にて構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の飲料ディスペンサ。
【請求項6】
前記過冷却用熱交換器の前記内管内に前記飲料を流し、前記内管と前記外管との間に前記ブラインを流すと共に、前記内管の内径を10.7mm以上としたことを特徴とする請求項5に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項7】
前記過冷却用熱交換器において、前記飲料と不凍液とが対向して流れるよう構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の飲料ディスペンサ。
【請求項8】
前記過冷却用熱交換器を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の飲料ディスペンサ。
【請求項9】
温度が凝固点以下の過冷却状態とされた飲料を供給し、外部で過冷却状態を解除させる飲料ディスペンサであって、
前記飲料を氷点付近まで冷却する一次冷却装置と、
該一次冷却装置にて冷却された飲料を外部に供給する飲料供給回路と、
該飲料供給回路を流れる飲料を、凝固点以下の過冷却状態に冷却する過冷却用熱交換器を備えた二次冷却装置と、
前記過冷却用熱交換器を加熱する加熱手段とを備えたことを特徴とする飲料ディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−47403(P2009−47403A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123264(P2008−123264)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(391026058)ザ・コカ−コーラ・カンパニー (238)
【氏名又は名称原語表記】THE COCA−COLA COMPANY
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】