説明

飲料供給装置

【課題】給湯タンクを小形にし、複数の電気的ヒータで比較的高出力で加熱し、短時間で湯を沸かすことができるとともに、消費電力を少なくし、複数の電気的ヒータを定格電流値を超えないように制御して安全性が確保することを目的とする。
【解決手段】本発明は、100ml〜1000mlの容量を有する給湯タンク20と、この給湯タンク20を加熱して所定温度の湯を生成するとともに、合計の電力が1000W〜1400Wからなる複数の電気的ヒータA、Bと、装置に流れる全電流値が定格電流値を超えないように前記複数の電気的ヒータA、Bのうち、所定数の電気的ヒータBの通電を停止して制御する通電制御手段5とを備えた飲料供給装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯タンクを備えるコーヒー抽出装置等の飲料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料供給装置として飲料をカップに入れて提供するものでは、例えば、原料としてコーヒー豆を使用するレギュラーコーヒーを抽出する場合、コーヒー豆を収納する原料供給部から所定量のコーヒー豆を供給し、このコーヒー豆をミルで挽き、挽いたコーヒー粉末と湯とを抽出部に供給し、この抽出部で所定の抽出工程を経てコーヒー液を抽出している。また、抽出されたコーヒー液に氷を加え、アイスコーヒーを提供する場合もある。このような飲料供給装置では、湯を抽出部等に供給するため給湯タンクが設けられており、この給湯タンクには、複数杯カップに連続して出湯を可能とするため、約7リットルの貯湯量を有する大形の給湯タンクが用いられている。
【0003】
しかしながら、大形の給湯タンクを用いると、その配置スペースを要し、また、大量の湯を貯湯するので電力消費量も多く、さらには、大形のためタンクの表面積が大きく、放熱によるロスも生じる。
【0004】
そこで、電磁式ヒータを取付けた湯沸しタンクと保温ヒータを配設した貯湯タンクとの2つのタンクを設け、カップ一杯分の湯を保温するようにし、消費電力を少なくする飲料製造販売機が提案されている(特許文献1参照)。また、複数の湯タンクを設け、この湯タンクにそれぞれ電気ヒータを設けて、いずれかの電気ヒータが通電されている場合、他の電気ヒータへの通電を禁止し、電流容量を制限して安全に装置を作動させるコーヒー飲料製造装置が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−251144号公報
【特許文献2】特開2007−151723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されたものは、湯沸しタンクと貯湯タンクとの各々にヒータを設けたものであり、1つのタンクを複数のヒータで加熱し、この複数のヒータを制御して定格電流値を超えないようにするものではない。つまり、特許文献1には、定格電流値を超えないようにする技術的手段が何ら開示されていない。一方、特許文献2には、電流容量を制限する点は示されてはいるものの、給湯タンクを小形にし、この1つの給湯タンクを複数のヒータを用いて高出力で加熱し、この複数のヒータを制御して定格電流値を超えないようにする点については何ら開示されていない。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みなされたもので、給湯タンクを小形にし、この給湯タンクを複数の電気的ヒータで高出力で加熱し、短時間で湯を沸かすことができるとともに、消費電力を少なくし、しかも、複数の電気的ヒータを定格電流値を超えないように制御して安全性を確保する飲料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の飲料供給装置は、100ml〜1000mlの容量を有する給湯タンクと、この給湯タンクを加熱して所定温度の湯を生成するとともに、合計の電力が1000W〜1400Wからなる複数の電気的ヒータと、装置に流れる全電流値が定格電流値を超えないように前記複数の電気的ヒータのうち、所定数の電気的ヒータの通電を停止して制御する通電制御手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の飲料供給装置は、請求項1に記載の飲料供給装置において、電流が流れる電気的手段として、製氷機及びミルを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の飲料供給装置は、請求項1又は請求項2に記載の飲料供給装置において、前記給湯タンクの容量は、約800mlであり、電気的ヒータは、2つからなり、その合計の電力が約1300Wであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の飲料供給装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の飲料供給装置において、前記複数の電気的ヒータは、給湯タンクの底部に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、短時間で所定の湯温を得ることができ、また、消費電力を少なくすることができる。さらに、小形であるため省スペース化を図ることができ、放熱ロスを抑制することができる。加えて、定格電流値を超えないように制御されるので安全性が確保できる飲料供給装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態に係る飲料供給装置ついて図1乃至図6を参照して説明する。図1は、飲料供給装置を示す正面図、図2は、外筐部材を取外して示す斜視図、図3は、給湯タンクを示す構成図、図4は、基本的動作を示す説明図、図5は、ブロック構成図、図6は、飲料抽出中の制御状態を示すタイムチャートである。
【0013】
図1に示すように、飲料供給装置1は、例えば、コーヒー豆を原料とするレギュラーコーヒーを抽出するもので、ホットコーヒーとアイスコーヒーとを選択して供給できるものである。飲料供給装置1は、縦長の略直方体形状をなし、前面には、扉体2が開閉可能に取付けられており、扉体2の前面パネルには飲料選択ボタンやコーヒーの濃さの調整ボタンが設けられており、また、カップCPの取出口3が形成されており、取出口3の前方にはカップ置台4が設けられている。
【0014】
図2に示すように、飲料供給装置1内には、飲料抽出装置10、給湯タンク20、水タンク30、製氷機40及び飲料供給動作の全体を制御するコントローラCが配設されている。飲料抽出装置10は、コーヒー豆を種類別に収納するキャニスタ11及びコーヒー豆を粉末状に挽いて加工するミル12を有する原料供給手段と、ブルワ部13、シリンダ部14等を有する飲料抽出手段を備えている。給湯タンク20は、所定の湯温に湯を沸かして貯留するもので、ブルワ部13に湯を供給するようになっている。水タンク30は、例えば、着脱式の水タンクであり、所定量を貯水できるもので、ポンプを介して製氷機40や給湯タンク20に水を供給するようになっている。なお、水タンク30を用いないで水道管に直結する方式としてもよい。製氷機40は、製氷を行うとともに製氷した氷を貯氷するもので、コンプレッサを備え、冷凍部及び貯氷部を有している。
【0015】
次に、図3を参照して給湯タンク20について説明する。給湯タンク20は、その容量を100ml〜1000mlの小形に設定されている。例えば、カップ1杯を100mlとすれば、1杯から10杯程度の容量を有する大きさである。本実施形態では、具体的には、800ml程度に設定されている。この給湯タンク20の底部には、2つの電気的ヒータ、すなわち、ヒータA及びヒータBが設けられている。これら、ヒータA及びヒータBの合計電力容量は、1000W〜1400Wに設定されており、本実施形態では、具体的には、それぞれ650Wの電力容量を有しており、合計電力容量は、1300Wとなっている。さらに、給湯タンク20の底部には、給水パイプ21、排水パイプ22が接続されている。また、給湯タンク20の周面には、上部湯温センサ23、下部湯温センサ24、給湯のための湯電磁弁25及びタンク内に余分に入った湯水を排水するオーバーフローパイプ26が配設されており、給湯タンク20の上部には、水位検知器27が設けられている。
【0016】
このように構成された給湯タンク20を中心とした基本的動作について図4を参照して説明する。まず、扉体2の前面パネルの飲料選択ボタン(ホットコーヒー等)が操作され、出湯要求がなされる(S1)。すると、ヒータA及びヒータBに通電される(S2)。この場合は、次の出湯要求のための加熱であり、後の段階の給水による湯音の温度低下を想定して、下部湯温センサ24の検知温度と関係なしに双方のヒータA、Bに通電される。次に、出湯が開始され(S3)、給水が開始される(S4)。続いて、1杯分の出湯がなされると出湯が完了する(S5)。また、給水は、水位検知器27の検知出力により、出湯した分だけ給水がなされて完了する(S6)。そして、下部湯温センサ24の沸かし上げの設定温度、例えば、90℃〜95℃に到達した時点で、ヒータA及びヒータBの通電を停止する(S7)。なお、上部湯温センサ23には、出湯温度が設定されており、設定温度に達していれば、出湯を可能とし、達していなければ、準備中とし出湯を行わないようになっている。
【0017】
以上のような構成によれば、800ml程度の小形の給湯タンク20において、基本的には、ヒータA及びヒータBの双方に通電し、1300Wの電力で湯を沸かすことができ、ヒータA及びヒータBが給湯タンク20の底部に設けられていることも相俟って短時間で所定の湯温を得ることができる。また、保温についても給湯タンク20が小容量であることから消費電力を少なくすることができる。
【0018】
さて、次に、図5及び図6を参照してヒータA及びヒータBの通電制御について説明する。図5に示すように、通電制御手段5には、ヒータA及びヒータB、コーヒーミル12、製氷機40、表示器や電磁弁等の電気的手段が接続されている。通電制御手段5は、前記のコントローラCの一部を構成しており、飲料供給装置1の電気的手段を流れる全電流値が定格容量(100V15A)を超えないように、ヒータA及びヒータBを制御するものである。
【0019】
図6において、ホットコーヒーを抽出する場合を例にとり説明する。図中、上段は、ホットコーヒーの抽出過程を示しており、中段は、製氷機40停止中の各電気的手段の通電状況を示し、下段は、製氷機40動作中の各電気的手段の通電状況を示している。なお、ヒータA及びヒータBの電流容量は6.5A、コーヒーミル12は2A、製氷機40は4A、その他表示器や電磁弁等は1Aとする。また、製氷機40は、コーヒーの抽出動作とは関係せずに、貯氷量が減少すると製氷動作を行うようになっている。
【0020】
まず、飲料選択ボタンが操作され、出湯要求されてから35秒で抽出が完了すると仮定する。抽出過程において、コーヒーミル12が10秒間動作し、その間に、出湯、給水が行われる。中段の製氷機40停止中において、出湯要求からコーヒーミル12の動作終了までの10秒間は、ヒータAは、通電され、ヒータBは、通電が停止される。その他表示器や電磁弁等は、常時通電されている。ここで、ヒータA及びヒータBともに通電してしまうと、合計電流値が16Aになり、定格の15Aを超えてしまう。このため、通電制御手段5は、この間はヒータBの通電を停止し、定格電流値以内の9.5Aに収めるよう制御を実行する。以後はコーヒーミル12が非動作となるので、ヒータA及びヒータBの双方に通電され、定格電流値以内の14Aの電流が流れる。
【0021】
続いて、下段の製氷機40動作中においては、全期間にわたってヒータAは、通電されるが、ヒータBは、通電が停止される。出湯要求からコーヒーミル12の動作終了までの10秒間は、ヒータBに通電してしまうと合計電流値が20Aになり、また、以後もヒータBに通電してしまうと合計電流値が18Aになり、定格の15Aを超えてしまう。このため、通電制御手段5は、ヒータBの通電を停止し、定格電流値以内の電流値に収めるよう制御を実行する。
【0022】
以上のように本実施形態によれば、小形小容量の給湯タンク20において、ヒータA及びヒータBの2つのヒータを用い、比較的高出力で湯を沸かすため、短時間で所定の湯温を得ることができる。また、ヒータA及びヒータBの双方のON、OFF制御による保温状態の場合にも給湯タンク20が小容量であることから消費電力を少なくすることができる。さらに、小形であるため省スペース化を図ることができ、放熱面積も小さくできるので放熱ロスを抑制することができる。加えて、2つのヒータを用い高出力であるにもかかわらず、定格電流値を超えないように2つのヒータが通電制御手段5によって制御されるので安全性が確保できる飲料供給装置1を提供できる。
【0023】
次に、本発明の第2の実施形態に係る給湯タンクついて図7を参照して説明する。図7は、給湯タンクを示す構成図である。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。本実施形態では、給水パイプ21に水道管を直結する方式であり、その経路に、給水電磁弁6、水リザーバ7、ポンプ8及び逆止弁9が設けられている。給湯タンク20に直接水道圧をかけないようにするため水リザーバ7が設けられており、この場合、水リザーバ7より給湯タンク20が高い位置にあるときには、その間にポンプ8を設け、給湯タンク20の水位を水位検知器27で検知しながら給水が行われる。つまり、水位が下がったときに、ポンプ8をONし、水位が上がったときにポンプ8をOFFする。しかし、ポンプ8をOFFしたときに、水位の落差により給湯タンク20から水リザーバ7に湯水が逆流する虞があるため、その防止のために逆止弁9が設けられている。
【0024】
また、本実施形態では、出湯要求があり、1杯分の出湯が完了するまで、給水しない構成となっている。特に、小形の給湯タンク20の場合、出湯しながら給水を行うと、給水による冷たい水が出湯と混合する可能性があり、出湯がこの影響を受け温度低下をもたらす不具合が生じるからである。したがって、給湯タンク20の水位が下がり、水位検知器27が水位が下がったことを検知しても、すぐには給水は行われない。1杯分の出湯が完了し、湯電磁弁25がOFFした後に、ポンプ8がONし、給湯タンク20への給水が開始される。
【0025】
以上のように本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、出湯温度の低下を防止することができる。
【0026】
本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、電気的ヒータは、2つに限らず、3つ又は4つ等に分割して設けるようにしてもよい。また、複数の電気的ヒータの電力を異なるようにしてもよい。さらに、本発明は、カップ式飲料自動販売機や給茶装置等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る飲料供給装置を示す正面図である。
【図2】同外筐部材を取外して示す斜視図である。
【図3】同給湯タンクを示す構成図である。
【図4】同基本的動作を示す説明図である。
【図5】同ブロック構成図である。
【図6】同飲料抽出中の制御状態を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る給湯タンクを示す構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1・・・飲料供給装置、5・・・通電制御装置、12・・・ミル、
20・・・給湯タンク、40・・・製氷機、A・・・ヒータ、
B・・・ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100ml〜1000mlの容量を有する給湯タンクと、この給湯タンクを加熱して所定温度の湯を生成するとともに、合計の電力が1000W〜1400Wからなる複数の電気的ヒータと、装置に流れる全電流値が定格電流値を超えないように前記複数の電気的ヒータのうち、所定数の電気的ヒータの通電を停止して制御する通電制御手段とを具備することを特徴とする飲料供給装置。
【請求項2】
電流が流れる電気的手段として、製氷機及びミルを備えていることを特徴とする請求項1に記載の飲料供給装置。
【請求項3】
前記給湯タンクの容量は、約800mlであり、電気的ヒータは、2つからなり、その合計の電力が約1300Wであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の飲料供給装置。
【請求項4】
前記複数の電気的ヒータは、給湯タンクの底部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の飲料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−105676(P2010−105676A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277488(P2008−277488)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000221269)東芝機器株式会社 (125)
【Fターム(参考)】