説明

飲料抽出装置

【課題】給水ノズルから供給された水を、抽出用およびリンス用に共用することができる飲料抽出装置を提供する。
【解決手段】筒状のシリンダ23と、開放位置とリンス位置とに移動可能なシリンダヘッド111と、飲料の抽出時にシリンダ23の下面をシールするとともに、飲料をフィルタによってろ過するフィルタブロック32と、フィルタ上に残留した原料を掻き取り、抽出滓として排出するためのスクレーパ33と、シリンダ23の上方に配置された給湯ノズル105を有し、この給湯ノズル105から湯を下方に供給する給湯装置4と、シリンダヘッド111に設けられ、給湯ノズル105から供給された湯を、シリンダヘッド111が開放位置に位置するときにシリンダ23の内部に案内するとともに、シリンダヘッド111がリンス位置に位置するときにシリンダ23の外部に案内する湯案内受け部204と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ式自動販売機や飲料ディスペンサなどに内蔵され、コーヒー豆や茶葉などの原料を用いてコーヒーや茶系飲料などを抽出する飲料抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の飲料抽出装置として、例えば特許文献1に開示されたコーヒー抽出装置が知られている。このコーヒー抽出装置は、コーヒーの挽き豆(以下「原料」という)および湯が供給され、コーヒーの抽出を行う円筒状のシリンダを備えている。このシリンダは、上面および下面が開放されており、シリンダの上方に原料シュートおよびピストンが設けられ、シリンダの下方にフィルタブロックが設けられている。原料シュートおよびピストンは、水平面内において互いに90度ずれた位置に配置されており、両者が鉛直軸線を中心として回動駆動されることにより、一方がシリンダの真上に位置するようになっている。また、ピストンは、昇降自在に構成され、シリンダに上方から嵌入することによって、シリンダの上部をシールするとともに、湯タンクにホースを介して接続され、シリンダ内に湯を供給する。一方、フィルタブロックは、シリンダの下方において昇降自在に構成されており、シリンダとの間に紙フィルタを挟み、シリンダの下面をシールした状態で、シリンダ内で抽出されたコーヒーを紙フィルタでろ過しながら、外部に搬送する。紙フィルタは、ロールに巻かれていて、ロールが回転駆動されることにより、所定長さずつ送り出されるようになっている。また、シリンダの側面には、エアポンプに接続された上下2つのエアノズルが設けられており、これらのエアノズルを介して、シリンダ内にエアが圧送される。
【0003】
このコーヒー抽出装置では、コーヒーの抽出時に、まず、フィルタブロックが上昇し、シリンダとの間に紙フィルタを挟んだ状態で、シリンダの下面をシールする。次いで、シリンダの真上に位置する原料シュートを介して、シリンダ内に原料を供給した後、原料シュートに代わり、ピストンがシリンダの真上に移動し、シリンダ内に湯を供給する。次いで、下側のエアノズルからシリンダ内にエアを供給することによって、シリンダ内の原料および湯を攪拌する。その後、ピストンが下降し、シリンダの上部に嵌入することによって、シリンダの上部をシールする。そして、上側のエアノズルからシリンダ内にエアを供給することによって、シリンダ内を加圧し、それにより、シリンダ内で抽出されたコーヒーは、紙フィルタでろ過され、フィルタブロックを介して外部に搬送される。その後、フィルタブロックが下降し、シリンダから離れるとともに、紙フィルタが所定長さ送り出されることにより、紙フィルタ上に残留した抽出滓が、紙フィルタの使用済み部分とともに外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−120434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコーヒー抽出装置では、使い捨ての紙フィルタを用いて、コーヒーのろ過および抽出滓の排出を行うため、ランニングコストが高くなってしまう。また、コーヒーの抽出の際に、ピストンや原料シュートをシリンダ上に移動させるための駆動源と、抽出滓を排出する際に、紙フィルタを送り出すための駆動源とが、互いに異なっている。そのため、このコーヒー抽出装置では、製造コストが高くなってしまう。
【0006】
本発明は、給水ノズルから供給された水を、抽出用およびリンス用に共用することができる飲料抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、原料および水を用いて飲料を抽出するための飲料抽出装置であって、上面および下面が開放した筒状に形成されるとともに、原料および水が供給され、内部において飲料の抽出を行うための抽出容器と、この抽出容器の上側に移動自在に設けられ、抽出容器の上面を開放した状態に維持する開放位置と、抽出容器の外部をリンスするためのリンス位置とに移動可能な可動部と、この可動部を駆動する可動部駆動手段と、上面にフィルタを有するとともに抽出容器の下側に設けられ、飲料の抽出時に抽出容器の下面をシールするとともに、抽出容器から搬出される飲料が通過する際に、飲料をフィルタによってろ過する飲料ろ過部と、この飲料ろ過部の上側に移動自在に設けられ、フィルタ上に残留した原料を掻き取り、抽出滓として排出するためのスクレーパと、このスクレーパを駆動するスクレーパ駆動手段と、抽出容器の上方に配置された給水ノズルを有し、この給水ノズルから水を下方に供給する給水手段と、可動部に設けられ、給水ノズルから供給された水を、可動部が開放位置に位置するときに抽出容器の内部に案内するとともに、可動部がリンス位置に位置するときに抽出容器の外部に案内する第1水案内部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、抽出容器の上側に移動自在の可動部が設けられるとともに、抽出容器の下側に飲料ろ過部が設けられ、この飲料ろ過部の上側に移動自在のスクレーパが設けられている。可動部は、可動部駆動手段によって駆動されることにより、抽出容器の上面を開放した状態に維持する開放位置と、抽出容器の外部をリンスするためのリンス位置とに移動する。また、スクレーパは、スクレーパ駆動手段によって駆動されることにより、フィルタ上に残留した原料を掻き取り、抽出滓として排出する。また、可動部には、給水ノズルから供給された水を案内する第1水案内部が設けられており、この第1水案内部により、給水ノズルから供給された水を、可動部が開放位置に位置するときに抽出容器の内部に案内することで、飲料の抽出用に使用し、一方、可動部がリンス位置に位置するときに抽出容器の外部に案内することで、抽出容器の外部のリンス用に使用する。したがって、給水ノズルから供給された水を、抽出用およびリンス用に共用することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の飲料抽出装置において、可動部がリンス位置に位置するときの第1水案内部の下方に配置され、スクレーパをリンスするために、第1水案内部によって案内された水をスクレーパに案内する第2水案内部を、さらに備えていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、可動部がリンス位置に位置するときの第1水案内部の下方に、第2水案内部が配置されており、この第2水案内部によって、第1水案内部で案内された水がスクレーパに案内される。前述したように、スクレーパは、フィルタ上に残留した抽出滓を掻き取るように排出するため、スクレーパ自体に抽出滓が付着、堆積することがある。したがって、抽出容器の外部のリンス時に、スクレーパに水を案内し、これを洗浄することにより、スクレーパに付着、堆積している抽出滓を洗い落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による飲料抽出装置をコーヒー抽出装置に適用し、これを備えたカップ式自動販売機の内部構造を模式的に示す図である。
【図2】コーヒー抽出装置を示す斜視図である。
【図3】ドリップユニットが駆動ユニットから取り外された状態のコーヒー抽出装置を示す斜視図である。
【図4】シリンダがシリンダホルダから取り外された状態のドリップユニットを示す斜視図である。
【図5】シリンダを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】シリンダホルダを示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図7】シリンダホルダの左右の外側カバーを省略したドリップユニットを示す斜視図であり、(a)は正面側から見たときの斜視図、(b)は背面側から見たときの斜視図である。
【図8】シリンダホルダの左側壁の内部構造を示す側面図であり、(a)は外側カバーを省略した状態、(b)は(a)のカム円板のカム溝を表示した状態を示す。
【図9】カム溝を表示したカム円板を拡大して示す図である。
【図10】図6に示すシリンダホルダをA−A線で切断した状態を示す図である。
【図11】シリンダホルダの左側壁の内部構造を示す側面図であり、(a)は取外しレバーを押し下げた状態、(b)はカム円板のロックが解除された状態を示す。
【図12】図6に示すシリンダホルダをB−B線で切断した状態を示す図であり、(a)は把持アームが解放位置に位置した状態、(b)は把持アームが保持位置に位置した状態を示す。
【図13】シリンダホルダの前面カバーの動作を説明するための説明図であり、(a)は前面カバーを閉鎖した状態、(b)は前面カバーを若干開放した状態を示す。
【図14】駆動ユニットを示す正面図であり、(a)は外観図、(b)は内部構造図である。
【図15】駆動ユニットを示す左側面図であり、(a)は外観図、(b)は内部構造図である。
【図16】駆動ユニットを示す右側面図であり、(a)は外観図、(b)は内部構造図である。
【図17】駆動ユニットの内部構造を示す背面図である。
【図18】シリンダヘッドを示す図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図である。
【図19】スクレーパ・シリンダヘッド駆動機構を示す図であり、(a)は、斜め上から見たときの状態、(b)は、斜め下から見たときの状態を示す。
【図20】スクレーパ・シリンダヘッド駆動機構によるシリンダヘッドの動作を説明するための図であり、(a)は、シリンダヘッドが待機位置に位置した状態、(b)は、シリンダヘッドがシリンダ閉鎖位置に位置した状態を示す。
【図21】スクレーパ・シリンダヘッド駆動機構によるスクレーパの動作を説明するための図であり、(a)は、スクレーパが待機位置に位置した状態、(b)は、スクレーパが抽出滓排出位置に位置した状態を示す。
【図22】コーヒー抽出装置の動作を順に説明するための説明図であり、(a)は待機状態、(b)はフィルタブロックでシリンダの下面をシールした状態、(c)はシリンダへの原料および湯の供給状態を示す。
【図23】図22に続く説明図であり、(a)はシリンダヘッドがシリンダの真上に接近した状態、(b)はシリンダヘッドがシリンダの上面をシールした状態、(c)は抽出終了後にヘッドガイドシャフトを介してシリンダヘッドをカム円板で持ち上げた状態を示す。
【図24】図23に続く説明図であり、(a)は抽出終了後にフィルタブロックおよびシリンダヘッドが待機位置に戻った状態、(b)はスクレーパによって抽出滓を排出した状態、(c)はスクレーパが待機位置に戻った状態を示す。
【図25】コーヒー抽出装置の動作状態における各ピンチおよびカム円板の回転角度の関係を示す一覧表である。
【図26】本発明を適用した第2実施形態のコーヒー抽出装置を示す斜視図である。
【図27】第2実施形態の駆動ユニットを示す斜視図であり、駆動ユニットからシリンダヘッドカバーのカバー本体を取り外した状態を示す。
【図28】原料・湯案内部材をシリンダヘッドから取り外した状態を示す斜視図である。
【図29】原料・湯案内部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図である。
【図30】シリンダヘッドおよびその周囲を斜め下から見たときの状態を示す図である。
【図31】コーヒー抽出装置の平面図であり、(a)はカバー本体を取り付けた状態、(b)はカバー本体を省略した状態を示す。
【図32】シリンダを示す斜視図である。
【図33】シリンダを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
【図34】販売時におけるシリンダ内の湯の流れを説明するための説明図であり、(a)はコーヒー抽出装置の平面図、(b)はシリンダおよびその周囲を示す側面図である。
【図35】シリンダの平面図であり、シリンダに供給された湯の流れを示す。
【図36】前面カバーを背面側から見たときの斜視図である。
【図37】ドリップユニット内のリンス時における湯の流れを説明するための説明図であり、(a)はコーヒー抽出装置の平面図、(b)はシリンダおよびその周囲を示す側面図である。
【図38】販売時におけるシリンダヘッドのシール解除動作を説明するための説明図であり、(a)はシリンダヘッドでシリンダをシールした状態、(b)はそのシールを解除した直後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態による飲料抽出装置をコーヒー抽出装置に適用し、これを備えたカップ式自動販売機の内部構造を模式的に示している。同図に示すように、このカップ式自動販売機1は、コーヒー抽出装置2により、コーヒー豆および湯を用いてコーヒーを抽出し、購入者にカップ入りのレギュラーコーヒーを提供するものである。なお、以下の説明ではまず、カップ式自動販売機1の内部構造について説明し、その後、コーヒー抽出装置2について詳述する。
【0013】
図1に示すように、カップ式自動販売機1は、コーヒー抽出装置2と、このコーヒー抽出装置2に、所定量のコーヒー粉および湯をそれぞれ供給する原料供給装置3および給湯装置4と、コーヒー抽出装置2によって抽出されたコーヒーをクリームや砂糖とともに混合するミキシングボウル5と、このミキシングボウル5にクリームや砂糖を供給するクリーム・砂糖供給装置6と、これらを制御するマイクロコンピュータを有する制御装置(図示せず)とを備えている。
【0014】
原料供給装置3は、コーヒー豆を収納する複数(図1では2つのみ図示)のキャニスタ11と、コーヒー豆を挽くミル12とを備えている。販売時に、キャニスタ11からシュート11aを介してミル12に供給されたコーヒー豆は、ミル12によって粉末状に挽かれ、そのコーヒー粉(以下「原料」という)が、シュート12aを介してコーヒー抽出装置2に供給される。給湯装置4は、湯を貯留する温水タンク13を備えており、販売時に、温水タンク13から所定量の湯が給湯チューブ13aを介してコーヒー抽出装置2に供給される。ミキシングボウル5は、コーヒー抽出装置2から供給されたコーヒーを、クリーム・砂糖供給装置6からシュート6aを介して供給された所定量のクリームや砂糖とともに攪拌する。その後、ミキシングボウル5内のコーヒーは、ミキシングボウル5に接続された飲料チューブ5aを介してカップCに供給される。
【0015】
次に、コーヒー抽出装置2について詳述する。図2および図3は、コーヒー抽出装置2を示している。両図に示すように、このコーヒー抽出装置2は、コーヒーを抽出するためのドリップユニット21と、このドリップユニット21を駆動する駆動ユニット22で構成されている。駆動ユニット22は、自動販売機1内にねじ止めなどで固定されており、この駆動ユニット22に、ドリップユニット21が着脱自在に取り付けられている。
【0016】
ドリップユニット21は、原料および湯が供給され、内部においてコーヒーの抽出を行うためのシリンダ23(抽出容器)と、このシリンダ23を着脱自在に収容するシリンダホルダ24とで構成されている。図4は、シリンダ23がシリンダホルダ24から取り外された状態を示している。このシリンダ23は、透明のプラスチックから成り、同図および図5に示すように、上下方向に延びるとともに、上面および下面が開放した円筒状に形成されている。また、シリンダ23の外周面には、シリンダ23をシリンダホルダ24に着脱する際に利用される取っ手25およびガイド部26が設けられている。ガイド部26は、互いに上下方向に所定間隔を隔てて設けられ、上下対称に形成された上ガイド部26および下ガイド部26で構成されている。各ガイド部26は、シリンダ23の中心よりも若干、取っ手25寄りの位置から、シリンダ23の取っ手25と反対側の外周面付近まで水平に延びるとともに、平面形状が凹字状に形成されている。また、上下のガイド部26、26の基端部(取っ手25側の端部)26aは、前者が上方に、後者が下方に延びるように形成されている。以上のように、シリンダ23は、上下対称に形成されているので、シリンダ23を、その上下の向きに関わらず、シリンダホルダ24に取り付けることができる。
【0017】
図6に示すように、シリンダホルダ24は、内側にシリンダ収容部24aを有するフレーム31と、このフレーム31内の下部に昇降自在に設けられ、シリンダ23内のコーヒーをろ過しながら外部に搬送するためのフィルタブロック32(飲料ろ過部)と、フレーム31内の下部に前後方向にスライド自在に設けられ、フィルタブロック32上に残留した抽出滓を除去するためのスクレーパ33と、フレーム31内に設けられ、シリンダ収容部24aに収容されたシリンダ23を左右から挟んだ状態で保持するシリンダキャッチャ34などを備えている。
【0018】
フレーム31は、互いに所定間隔を隔てて対向する左右の側壁41、41と、両側壁41、41の後端部間および下端部間にわたるようにそれぞれ設けられた背壁42および底壁43とを有している。なお、図示しないが、底壁43は、左右方向に延びかつ前後方向に適宜間隔を隔てた棒状の複数の支持部材によって、両側壁41、41間を連結するように構成されている。
【0019】
各側壁41は、側面形状がほぼ矩形状に形成されるとともに、外側の側面が開放したケース状の側壁本体44と、その開放した側面を覆うように、側壁本体44にねじ止めされた外カバー45とを備えている。そして、図7に示すように、各側壁41内には、フィルタブロック32および後述するシリンダヘッド111を駆動することによって、シリンダ23の下面および上面をそれぞれ開閉するシリンダ開閉機構51が設けられている。また、左右の側壁本体44、44の前上隅部間には、中空のシャフト収容部46が左右方向に延びるように設けられている。このシャフト収容部46には、図7(a)に示す左側のシリンダ開閉機構51から、同図(b)に示す右側のシリンダ開閉機構51に動力を伝達するための動力伝達シャフト52が回転自在に収容されている。なお、左右のシリンダ開閉機構51、51は、左右の側壁41、41内に左右対称に設けられているので、以下の説明では、左側壁41に内蔵されたものを中心に説明する。
【0020】
図7および図8に示すように、シリンダ開閉機構51は、側壁本体44内の中央付近の所定位置に突設された支軸44aに回転自在に支持され、所定形状の第1および第2カム溝53、54を有するカム円板55と、側壁本体44内の下部に上下方向にスライド自在に設けられ、カム円板55の第1カム溝53に係合するとともにシリンダブロック32に連結されたスライダ56と、側壁本体44内の上部の所定位置に突設された支軸44bに回動自在に支持され、カム円板55の第2カム溝54に係合するとともに後述するシリンダヘッド111をシリンダ23の上面に押圧した状態でロックするためのシリンダヘッドロック部材57とを備えている。
【0021】
カム円板55は、所定の直径および厚さを有する円板状に形成されており、周面全体にギヤ部55aが形成されている。また、カム円板55の外カバー45側の周縁部には、ほぼ1/4円弧分、径方向に若干突出した凸部55bが設けられている。さらに、カム円板55の側壁本体44側の側面に、上記第1および第2カム溝53、54が設けられている。
【0022】
図9に示すように、第1カム溝53は、カム円板55の側面の周縁部に設けられ、カム円板55の支軸44aを中心とする円弧状にかつ時計方向にほぼ一周するように延びる外側カム部61と、この外側カム部61に連なり、支軸44aに向かって円弧状に延びる駆動カム部62と、この駆動カム部62に連なり、支軸44aを中心とする円弧状にかつ支軸44aの付近でほぼ一周するように延びる内側カム部63とで構成されている。なお、この第1カム溝53の外側カム部61の先端部には、支軸44a側に凹むように形成された凹部61aが設けられている。一方、第2カム溝54は、第1カム溝53の外側カム部61よりも内側に設けられ、支軸44aを中心とする円弧状にかつ外側カム部61の先端部付近から時計方向にほぼ3/4円弧状に延びる外側カム部64と、この外側カム部64に連なり、支軸44aに向かって延びる駆動カム部65と、この駆動カム部65に連なり、支軸44aを中心とする円弧状に延びる内側カム部66とで構成されている。
【0023】
スライダ56は、図8(b)に示すように、上下方向に延びるとともに下部が下方に向かって拡幅していて、ほぼ凸字状に形成されている。このスライダ56の上端部には、カム円板55側に突出した係合凸部56aが設けられており、この係合凸部56aが、カム円板55の第1カム溝53に摺動自在に係合している。また、スライダ56の下端部には、スライダ56と前記フィルタブロック32とを連結する2本の連結シャフト71、71が固定されている。両連結シャフト71、71は、互いに前後方向(図8では左右方向)に間隔を隔てかつ左右方向(図8では図の表裏方向)に平行に延びている。各連結シャフト71は、側壁本体44の上下方向に延びる長孔44cを貫通し、一端部が上記スライダ56に固定される一方、他端部が右側のシリンダ開閉機構51のスライダ56に固定されている。したがって、フィルタブロック32は、両連結シャフト71、71を介して、左右のスライダ56、56に支持されている。また、スライダ56の中央部には、上下方向に延びる長孔56bが形成されており、この長孔56bに、側壁本体44内の下部の所定位置に突設された支軸44dが摺動自在に貫通している。
【0024】
以上のように構成されたスライダ56は、カム円板55の回転に伴い、側壁本体44内の上下方向に延びる一対のガイドレール44e、44e間に案内されながら、上下方向にスライドする。これに伴い、フィルタブロック32が昇降し、シリンダ23の下面を開閉する。具体的には、図8(b)および図9に示すカム円板55が、両図の反時計方向に回転し、スライダ56の係合凸部56aが、第1カム溝53の外側カム部61から内側カム部63に向かって、駆動カム部62を摺動することにより、スライダ56が上昇する。そして、スライダ56の係合凸部56aが、内側カム部63に到達することにより、フィルタブロック32がシリンダ23の下面に密着した状態で、これを閉鎖する(図22(b)参照)。一方、その状態から、カム円板55が、時計方向に回転し、スライダ56が下降することにより、フィルタブロック32も下降し、それにより、シリンダ23の下面が開放される(図24(a)参照)。
【0025】
図6、7および10に示すように、フィルタブロック32は、コーヒーをろ過するための多数の細孔72aを有するとともにシリンダ23の内径よりも一回り小さく形成された円形のフィルタ72と、このフィルタ72の周囲を囲むように設けられ、上面が平らに形成されるとともに、シリンダ23の下面よりも大きな外径を有する幅広リング状のパッキン73と、これらを上面において支持するとともに、上下に連通した通路を有するブロック状の支持部材74などで構成されている。このフィルタブロック32は、前述したように、スライダ56の上下方向のスライドに伴って昇降し、シリンダ23の下面の閉鎖時には、パッキン73の上面がシリンダ23の下面周縁部に当接した状態で、これをシールする。また、フィルタブロック32の支持部材74と、右側壁41の背面下端部に設けられたジョイントホース40(図7(b)参照)との間には、フィルタブロックチューブ32aが接続されている。なお、ジョイントホース40は、駆動ユニット22の後述するジョイントホース120に接続される。
【0026】
図8(b)に示すように、シリンダヘッドロック部材57は、上下方向に延びる所定形状に形成され、その中心部が、側壁本体44内の支軸44bに回動自在に支持されている。シリンダヘッドロック部材57の下端部には、カム円板55側に突出した係合凸部57aが設けられており、この係合凸部57aが、カム円板55の前記第2カム溝54に摺動自在に係合している。また、シリンダヘッドロック部材57の上端部には、後方に突出するように延びる鉤状のロック部57bが設けられている。
【0027】
このように構成されたシリンダヘッドロック部材57は、カム円板55の回転に伴って回動し、上端部のロック部57bによって、後述するシリンダヘッド111をシリンダ23の上面に押圧しかつロックすることにより、シリンダ23の上面を閉鎖する。具体的には、図8(b)および図9に示すカム円板55が、両図の反時計方向に回転し、シリンダヘッドロック部材57の係合凸部57aが、第2カム溝54の外側カム部64から内側カム部66に向かって、駆動カム部65を摺動することにより、シリンダヘッドロック部材57が、図8(b)の反時計方向に回動する。そして、シリンダヘッドロック部材57のロック部57bが、シリンダヘッド111の上部のヘッドガイドシャフト114に係合するとともに、これを下方に押し下げるようにロックする。それにより、シリンダヘッド111がシリンダ23の上面に密着した状態で、これを閉鎖する(図23(b)参照)。
【0028】
以上のように構成されたシリンダ開閉機構51は、前述したように、左右の側壁41、41にそれぞれ内蔵されており、両シリンダ開閉機構51、51のカム円板55のギヤ部55aが、対応する側壁本体44内の前上隅部に回転自在に設けられた連結ギヤ75に噛み合っている。そして、これらの連結ギヤ75、75が、前記動力伝達シャフト52の端部にそれぞれ固定されている。また、図8に示すように、左側壁41の後端部には、その側壁本体44内の所定位置に突設された支軸44fに回転自在に支持されるとともに、左側のカム円板55のギヤ部55aに噛み合う従動ジョイントギヤ76が設けられている。この従動ジョイントギヤ76は、後方に若干露出しており、ドリップユニット21が駆動ユニット22に取り付けられた状態において、駆動ユニット22側の後述する駆動ジョイントギヤ134に噛み合う。したがって、従動ジョイントギヤ76が回転すると、これに噛み合う左側のカム円板55が回転し、両連結ギヤ75、75および動力伝達シャフト52を介して、右側のカム円板55が左側のそれに同期して回転する。
【0029】
次に、スクレーパ33について説明する。図4、6および10に示すように、スクレーパ33は、平面形状がフィルタブロック32のそれよりも大きい矩形枠状に形成されたサポート77と、ゴムなどから成り、サポート77の底面前端部に沿って左右方向に延びるとともに垂下したスクレーパ本体78とで構成されている。図10に示すように、サポート77の後端部(同図では上端部)には、左右方向に延びるとともに上方に開放した溝部77aが設けられている。また、この溝部77aの左右方向のほぼ中央部には、後方に開放した開放部77bが設けられている。
【0030】
このように構成されたスクレーパ33は、左右の側壁本体44、44間にガイドされながら、前後方向にスライド可能になっている。そして、このスクレーパ33が、後述するスクレーパ・シリンダヘッド駆動機構123によって後方へ駆動されることにより、前端部のスクレーパ本体78がフィルタブロック32上を後方に向かって摺動する。それにより、コーヒー抽出後にフィルタブロック32上に残留した抽出滓は、スクレーパ本体78で掻き取られ、駆動ユニット22の後述する滓シュート161を介して外部に排出される。
【0031】
なお、ドリップユニット21が駆動ユニット22から取り外された状態において、スクレーパ33がドリップユニット21の背面側から脱落するのを防止するためのスクレーパロック部79が、フレーム31の背壁42に設けられている。図7(b)に示すように、このスクレーパロック部79は、左右方向に延びる支軸79aに回動自在に支持され、支軸79aの上下に延びるロック片79bと、このロック片79bの下端部を、スクレーパ33の溝部77a内に臨むように付勢するねじりばね79cとで構成されている。上記ロック片79bの下端部がスクレーパ33の溝部77aに臨むことによって、スクレーパ33がロックされ、これにより、駆動ユニット22からドリップユニット21が取り外され、その背壁42が下側に向けられた場合でも、スクレーパ33がドリップユニット21から脱落するのを防止することができる。なお、ドリップユニット21が駆動ユニット22に取り付けられた状態では、駆動ユニット22側に設けられた後述するスクレーパロック解除凸部108bで、ロック片79bの上端部が押されることにより、ロック片79bによるスクレーパ33のロックが解除される。
【0032】
また、左右の側壁41、41には、ドリップユニット21を駆動ユニット22に着脱するためのドリップユニット着脱機構81、81が設けられている。これらのドリップユニット着脱機構81、81も、上述したシリンダ開閉機構51と同様、左右対称に設けられているので、以下の説明では、左側壁41に内蔵されたものを中心に説明する。
【0033】
図7および図8に示すように、ドリップユニット着脱機構81は、側壁本体44内の後端部に上下方向にスライド自在に設けられたユニットロック部材82と、このユニットロック部材82を下方に付勢するばね83と、ドリップユニット21を駆動ユニット22から取り外す際に操作される取外しレバー84とを備えている。
【0034】
ユニットロック部材82は、上下方向に延びており、上下端部にそれぞれ、後方に突出した鉤状のロック部82a、82aが設けられている。また、ユニットロック部材82の上下端部にはそれぞれ、上下方向に延びるガイド孔82b、82bが設けられており、各ガイド孔82bに、側壁本体44内の所定位置に突設されたガイド凸部44gが摺動自在に係合している。さらに、ユニットロック部材82の上下方向のほぼ中央部には、カム円板55側に突出した係合凸部82cが設けられており、この係合凸部82cが、カム円板55の第1カム溝53に摺動自在に係合している。また、ユニットロック部材82の下部には、取外しレバー84の後端部84bの直ぐ上に位置しかつ外カバー45側に突出した凸部82dが設けられている。
【0035】
取外しレバー84は、前後方向に延び、その中央部において、前記支軸44dに回動自在に支持されている。取外しレバー84の前端部84aは、外部に臨むとともに、側壁41の前部に設けられかつ前方に開放した凹部41aの内側に位置している。また、取外しレバー84の後端部84bは、側面形状がL字状に形成され、ユニットロック部材82の前記凸部82dに下方から当接している。
【0036】
以上のように構成されたドリップユニット着脱機構81により、ドリップユニット21が駆動ユニット22に取り付けられた状態では、ユニットロック部材82の上下のロック部82a、82aが、それらにそれぞれ対応する駆動ユニット22側の後述する係合孔108d(図3および図14(a)参照)に係止される。それにより、ドリップユニット21は、駆動ユニット22にロックされた状態で、しっかりと取り付けられる。また、ドリップユニット21を駆動ユニット22から取り外す場合には、両取外しレバー84、84の前端部84a、84aを同時に押し下げる。それにより、図11(a)に示すように、ユニットロック部材82は、取外しレバー84によって、ばね83に抗して押し上げられ、それにより、駆動ユニット22側の係合孔108dに対するロック部82aの係止が解除される。そして、その状態のまま、ドリップユニット21を前方に引き出すことにより、ドリップユニット21が駆動ユニット22から取り外される。
【0037】
なお、左右の側壁本体44、44の背面にはそれぞれ、後方に突出する上下2つのガイド凸部44H、44Hが設けられている。ドリップユニット21を駆動ユニット22に取り付ける際には、これらのガイド凸部44Hを、駆動ユニット22側の後述するガイド孔108eに挿入するとともに、上記ユニットロック部材82のロック部82aを係合孔108dに挿入することにより、ドリップユニット21の駆動ユニット22への取付けを容易に行うことができる。
【0038】
また、図8(b)に示すように、カム円板55が待機位置に位置する場合、ユニットロック部材82の係合凸部82cは、第1カム溝53の外側カム部61の先端部に位置している。そのため、上記のように、取外しレバー84が操作された際には、係合凸部82cが外側カム部61の先端部の凹部61aにより、上方への移動が許容され、それにより、取外しレバー84の操作が可能となる。これに対し、カム円板55が待機位置に位置していない場合、例えばカム円板55が回転中である場合などには、ユニットロック部材82の係合凸部82cは、第1カム溝53によって、上方への移動が規制される(例えば図22(b)参照)。それにより、ユニットロック部材82の上方への移動が不能になるとともに、取外しレバー84の操作も不能となる。したがって、駆動ユニット22からのドリップユニット21の取り外しは、カム円板55が待機位置に位置する場合にのみ可能であり、カム円板55が回転中である場合などに、ドリップユニット21が取り外されるのを防止することができる。
【0039】
また、図8に示すように、左側壁41には、ドリップユニット21を駆動ユニット22から取り外したときに、カム円板55が回転しないように、これをロックするためのカムロック部材85が設けられている。このカムロック部材85は、側壁本体44内の後端寄りの所定位置に上下方向にスライド自在に設けられたスライド部85aと、このスライド部85aの下端部に突設された縦長のロック部85bと、スライド部85aの後端部に設けられた前下がりの傾斜部85cとで構成されている。また、このカムロック部材85は、ばね86によって下方に付勢されている。
【0040】
ドリップユニット21が駆動ユニット22から取り外された状態では、図8に示すように、カムロック部材85のロック部85bが、前記従動ジョイントギヤ76のギヤ歯間に挿入される。これにより、従動ジョイントギヤ76は、回転不能にロックされ、したがって、従動ジョイントギヤ76に噛み合うカム円板55も回転不能にロックされる。また、ドリップユニット21が駆動ユニット22に取り付けられた状態では、駆動ユニット22の後述するギヤロック解除凸部108cが、カムロック部材85の傾斜部85cに係合することによって、従動ジョイントギヤ76およびカム円板55のロックが解除される。すなわち、図11(b)に示すように、ギヤロック解除凸部108cが、カムロック部材85の傾斜部85cに後方から当接することにより、カムロック部材85は、ばね86に抗して、上方にスライドし、ロック部85bが従動ジョイントギヤ76から離脱する。これにより、従動ジョイントギヤ76およびカム円板55は、ロックが解除され、回転可能な状態となる。
【0041】
上記のように、ドリップユニット21が駆動ユニット22から取り外された状態において、カム円板55を回転不能にロックするのは、次の理由による。すなわち、カム円板55の回転角度の制御は、後述するように、駆動ユニット22側に設けられ、カム円板55と同期して回転するスイッチギヤ136aを有するモードスイッチ136を利用して行われる。そのため、スイッチギヤ136とカム円板55の回転角度の整合性を保つ必要があるからである。
【0042】
次に、シリンダホルダ24内に収容されたシリンダ23を把持するシリンダキャッチャ34について説明する。図6および同図(b)のA−A線で切断した図12(a)に示すように、シリンダキャッチャ34は、左右一対の把持アーム91、91と、両把持アーム91、91を回動自在に支持するアームサポート92と、両把持アーム91、91を後述するシリンダ解放位置に係止するためのアーム係止部材93と、このアーム係止部材93を把持アーム91、91側に付勢する左右一対のばね94、94などで構成されている。
【0043】
アームサポート92は、正面形状が矩形状の壁部92aと、この壁部92aの左右端部からそれぞれ前方に延びる左右の支持部92b、92bとで、平面形状が前方に開放したコ字状に形成されている。そして、両支持部92b、92bの外側にそれぞれ、把持アーム91が配置されている。両把持アーム91、91は、互いに左右方向に所定間隔を隔てて対向するように配置されている。図12(a)に示すように、各把持アーム91は、前後方向(同図では上下方向)に延びており、前端部が内側に突出した凸状に形成され、後端部が幅狭に形成されている。また、この把持アーム91は、前後方向の中央部よりも後端寄りの位置において、上下方向に延びる回動軸95を中心として、アームサポート92の支持部92bに回動自在に支持されている。具体的には、両把持アーム91、91は、互いに前後方向にほぼ平行に延び、シリンダ23を解放する解放位置(図12(a)に示す位置)と、前端部同士が互いに接近し、シリンダ23を左右から挟んだ状態で保持する保持位置(同図(b)に示す位置)との間で、回動自在になっている。また、各把持アーム91の回動軸95には、ねじりばね95aが設けられており、このねじりばね95aによって、各把持アーム91が保持位置側に付勢されている。
【0044】
また、アームサポート92の壁部92aは、その後方に配置された所定形状の固定プレート96にねじ止めされており、図6(b)に示すように、左右方向に延びかつ上下方向に間隔を隔てた2つの長孔92c、92cを有している。そして、両長孔92c、92cには、アーム係止部材93の後述する2つの被当接片97a、97aが後方から貫通している。
【0045】
図12(a)に示すように、アーム係止部材93は、アームサポート92の背面側に、前後方向にスライド自在に設けられている。このアーム係止部材93は、アームサポート92の壁部92aの左右方向の横幅よりも長い横材部97と、この横材部97の左右端部から前方に突出し、左右の把持アーム91、91にそれぞれ係合する係合部98とで、平面形状が前方に開放したコ字状に形成されている。横材部97の左右方向の中央部には、アームサポート92の前記長孔92c、92cに対応し、両把持アーム91、91の間に臨むように前方に突出した上下2つの被当接片97a、97aが設けられている。また、左右の係合部98は、アームサポート92の対応する支持部92bとの間に所定間隔を存するように配置されるとともに、前端部にその支持部92b側に向いた所定の傾斜面98aを有している。
【0046】
以上のように構成されたシリンダキャッチャ34によれば、図12(b)に示すように、シリンダ23がシリンダホルダ24に収容されているときには、ねじりばね95aで保持位置側に付勢された両把持アーム91、91によって、シリンダ23が左右から挟持される。より具体的には、両把持アーム91、91は、それらの前端部がシリンダ23の真横よりも前側の取っ手25寄りの位置に当接し、シリンダ23をシリンダ収容部24aの奥側に引き込むように、左右から挟む。この場合、シリンダ23は、各ガイド部26の基端部26aが、アームサポート92の左右の支持部92b、92bの前端に当接し、それにより、フィルタブロック32のフィルタ72およびパッキン73の真上に位置決めされる。
【0047】
また、この状態から、シリンダ23をシリンダホルダ24から取り外す場合は、取っ手25を掴んで、前方に引き出すことによって、容易に取り外すことができる。この場合、両把持アーム91、91は、引き出されるシリンダ23により、解放位置側に押圧される。そして、両把持アーム91、91の後端が、当接していたアーム係止部材93の傾斜面98aから外れると、ばね94、94で付勢されているアーム係止部材93は、前方にスライドし、左右の係合部98、98とアームサポート92の対応する左右の支持部92b、92bとの間で、把持アーム91の後端部を挟持する。それにより、両把持アーム91、91は、図12(a)に示すように、解放位置に保持される。
【0048】
さらに、この状態から、シリンダ23をシリンダホルダ24に挿入する場合は、取っ手25を掴んで、シリンダ23をシリンダ収容部24aに前方から押し込む。この場合、両把持アーム91、91が、シリンダ23の上下のガイド部26、26間に位置するようにして、シリンダ23を押し込むことにより、両把持アーム91、91によって案内されながら、シリンダ23をシリンダ収容部24aに容易に押し込むことができる。また、シリンダ23をシリンダ収容部24aに押し込むことにより、シリンダ23の取っ手25と反対側の部分が、アーム係止部材93の2つの被当接片97a、97aに当接する。そして、シリンダ23をさらに押し込むと、アーム係止部材93が、ばね94、94に抗して、後方にスライドし、アーム係止部材93およびアームサポート92による両把持アーム91、91の解放位置における係止が解除される。それにより、両把持アーム91、91は、図12(b)に示すように、保持位置に回動し、ねじりばね95aの付勢力により、シリンダ23を挟んだ状態でしっかりと保持する。
【0049】
また、図2〜4および13に示すように、シリンダホルダ24の前面には、開閉自在の前面カバー35が設けられている。この前面カバー35は、透明なプラスチックなどで構成され、正面形状が縦長矩形状に形成されている。図13に示すように、前面カバー35の上端部には、左右2つのフック35a、35aが設けられており、これらのフック35a、35aが、シリンダホルダ24の前側上端部のシャフト収容部46に、回動自在に掛け止めされている。また、前面カバー35の左右端部には、左右の側壁41、41の凹部41aとほぼ同様の形状に形成され、その凹部の内側に位置する取外しレバー84の前端部84aを覆うレバーカバー部35b、35bが設けられている。これにより、同図(a)に示すように、前面カバー35が閉鎖した状態では、取外しレバー84は、外部からの操作が不能となる。
【0050】
また、コーヒー抽出装置2には、上記前面カバー35が開放されたときに、コーヒー抽出装置2の作動を禁止する作動禁止部36が設けられている。図13に示すように、作動禁止部36は、シリンダホルダ24の左下隅部に前後方向にスライド自在に設けられたスライドロッド37と、このスライドロッド37によってON/OFFされるように、駆動ユニット22の所定位置に設けられるとともに、駆動ユニット22の後述する第1および第2モータ131、151と電源との間の電気回路に接続されたマイクロスイッチ38などで構成されている。スライドロッド37は、シリンダホルダ24を前後方向に貫通するように延びており、後部に設けられた比較的付勢力の小さいばね39によって、前方に付勢されている。具体的には、図13(b)に示すように、前面カバー35が開放された状態では、スライドロッド37の前端部が閉鎖した状態の前面カバー35の背面よりも前方に若干突出するとともに、後端部がマイクロスイッチ38から離れることによって、マイクロスイッチ38がOFF状態になる。一方、同図(a)に示すように、前面カバー35が閉鎖された状態では、スライドロッド37が、前面カバー35の重量によって、ばね39に抗して後方に押圧され、それにより、マイクロスイッチ38がON状態になる。また、マイクロスイッチ38は、同図(b)に示すOFF状態のときに、前記記電気回路を遮断する。
【0051】
なお、図示しないが、前面カバー35をその上端部において回動自在に支持するシャフト収容部46にねじりばねを設け、そのばねによって、前面カバー35を閉鎖方向に付勢するようにしてもよい。この場合には、ばねの付勢力によって、前面カバー35が確実に閉鎖され、この前面カバー35によって、スライドロッド37を前方から押圧し、マイクロスイッチ38を確実にON状態にすることができる。
【0052】
以上のように構成された作動禁止部36によれば、コーヒー抽出装置2の作動中に、前面カバー35が誤って開放された場合には、コーヒー抽出装置2を確実に停止させることができ、コーヒー抽出装置2の安全性を確保することができる。また、前面カバー35を開放しなければ、シリンダホルダ24に対するシリンダ23の出し入れを行えないので、シリンダ23の出し入れの際に、コーヒー抽出装置2が誤って作動することがなく、したがって、シリンダ23の出し入れを安全に行うことができる。さらに、前面カバー35が閉鎖された状態では、仮に、シリンダ23から湯やコーヒーが噴出したとしても、それらをコーヒー抽出装置2の前方に飛び出すのを防止することができる。
【0053】
次に、駆動ユニット22について説明する。図2、3および14〜17に示すように、駆動ユニット22は、その外殻を構成するケース101と、このケース101の前面上部に前方に突出するように設けられたシリンダヘッドカバー102とを備えている。ケース101は、所定形状の複数の金属板をねじ止めすることなどにより、ボックス状に形成されている。
【0054】
ケース101の前面を構成する前壁108には、その下半部に、大きく開放した開口部108aが形成されており、前述したスクレーパ33が、後方に駆動された際に、この開口部108aを介して、駆動ユニット22内に収容される。また、前壁108の開口部108aの上縁部の中央部および左端部にはそれぞれ、スクレーパロック解除凸部108bおよびギヤロック解除凸部108cが設けられている。前述したように、ドリップユニット21が駆動ユニット22に取り付けられた状態では、スクレーパロック解除凸部108bがドリップユニット21側のスクレーパロック部79のロック片79bに当接することによって、スクレーパ33のロックが解除され、また、ギヤロック解除凸部108cがカムロック部材85の傾斜部85cに当接することによって、カム円板55のロックが解除される。
【0055】
また、前壁108の左右端部の所定位置には、上下2つずつの係合孔108dおよびガイド孔108eが左右対称に設けられている。前述したように、係合孔108dにはドリップユニット21側のロック部82aが係止され、ガイド孔108eにはドリップユニット21側のガイド突部44Hが挿入される。
【0056】
また、ケース101の前側上部の左右端部には、前方に突出し、正面形状が逆U字状の一対のシリンダヘッドサポート103、103がねじ止めされている。そして、両シリンダヘッドサポート103、103間に、上記シリンダヘッドカバー102がねじ止めされている。
【0057】
シリンダヘッドカバー102は、下面が開放したケース状に形成されており、上面の所定位置には、いずれも上下方向に貫通しかつ上方に突出した原料シュート104、給湯口105および湯気抜きダクト106が設けられている。また、シリンダヘッドカバー102内には、シリンダ23の上面を開閉するシリンダヘッド111が前後方向にスライド自在に設けられている。
【0058】
図18に示すように、シリンダヘッド111(可動部)は、平面形状がシリンダ23の上面よりも大きい円形状に形成されている。シリンダヘッド111の下面周縁部には、下面が平らに形成されるとともに、内径がシリンダ23の内径よりも小さくかつ外径がシリンダ23の外径よりも大きい幅広リング状パッキン112が設けられている。また、シリンダヘッド111の上部は、円錐台状に形成されており、その上端部には、外部からシリンダヘッド111内を通り、その下方にエアを供給するためのエア供給管113が接続されている。また、シリンダヘッド111の上端部には、シリンダヘッド111の外径よりも長く、左右方向(図18(a)では上下方向)に延びるヘッドガイドシャフト114が設けられている。
【0059】
また、シリンダヘッド111には、連結部材115を介して、前後方向にスライド自在のスライダ116が連結されている。連結部材115は、平面形状が前方に開放したほぼコ字状に形成され、左右の前端部がそれぞれ連結軸115aを介して、ヘッドガイドシャフト114の真下において、シリンダヘッド111に回動自在に連結されている。スライダ116は、前後方向に延び、前端部が連結部材115の後端部に連結軸116aを介して、回動自在に連結されている。また、スライダ116の後端部には、左右方向に延びる長孔116bが形成され、この長孔116bに、後述するスクレーパ・シリンダヘッド駆動機構123が係合している。そして、このスライダ116は、所定形状のヘッドガイド部材117によって案内されながら、前後方向にスライドする。
【0060】
図18に示すように、ヘッドガイド部材117は、上記スライダ116をスライド自在に支持するスライダ支持部117aと、このスライダ支持部117aからシリンダヘッド111の左右の側方を通って前方に延び、前記ヘッドガイドシャフト114を載置した状態で支持する左右2つのシャフト支持部117b、117bとを有している。
【0061】
次に、駆動ユニット22のケース101内の構造について説明する。図14〜17に示すように、ケース101には、上述したドリップユニット21のカム円板55を駆動するカム駆動機構121と、後述する複数のピンチ8を駆動するピンチ駆動機構122と、スクレーパ33およびシリンダヘッド111を駆動するスクレーパ・シリンダヘッド駆動機構123と、シリンダ23にエアを供給するエアポンプ124などが内蔵されている。
【0062】
カム駆動機構121は、DCモータから成る第1モータ131と、この第1モータ131に接続されるとともに、左右方向に延びかつ両端部が外部に突出した出力軸132aを有するギヤボックス132と、出力軸132aの左端部に固定された出力ギヤ133と、この出力ギヤ133に噛み合うとともに、ドリップユニット21側の従動ジョイントギヤ76に噛み合う駆動ジョイントギヤ134とを備えている。なお、上記のギヤボックス132や駆動ジョイントギヤ134などは、所定形状の支持プレート135に適宜、取り付けられている。
【0063】
また、出力ギヤ133の付近には、カム円板55の回転角度を制御するためのモードスイッチ136が設けられている。このモードスイッチ136は、中間ギヤ137を介して出力ギヤ133に噛み合うとともに、カム円板55と同期して、等角度で回転するスイッチギヤ136aを有している。モードスイッチ136は、スイッチギヤ136aが複数の所定の回転角度においてON状態になる複数のモードを有しており、図示しない制御装置が、それらのモードに応じて、カム円板55の回転角度を識別する。
【0064】
ピンチ駆動機構122は、コーヒー抽出時に、コーヒーやエアを搬送するための搬送チューブ7の複数の所定個所を開閉するためのピンチ8を駆動するものである。ここでまず、図1を参照して、搬送チューブ7およびピンチ8の配置関係および構成について簡単に説明する。同図に示すように、搬送チューブ7は、エアポンプ124とシリンダヘッド111の間に接続された第1エア搬送チューブ7Aと、エアポンプ124と駆動ユニット22側のジョイントホース120の間に接続された第2エア搬送チューブ7Bと、ジョイントホース120にそれぞれ接続された飲料搬送チューブ7Cおよび廃液搬送チューブ7Dとで構成されている。これらの搬送チューブ7A〜7Dはいずれも、ゴムなどの弾性材で構成されている。上記ジョイントホース120は、駆動ユニット22の前側の右下端部に設けられており、ドリップユニット21が駆動ユニット22に取り付けられた状態において、ドリップユニット21側のジョイントホース40に接続される。
【0065】
また、ピンチ8は、上記搬送チューブ7A〜7Dの途中にそれぞれ取り付けられた4つのピンチ8、具体的には、第1エアピンチ8A、第2エアピンチ8B、飲料ピンチ8Cおよび廃液ピンチ8Dで構成されている。これらのピンチ8A〜8Dは、同じものであり、例えば、図15に示す廃液ピンチ8Dを参照して説明すると、各ピンチ8は、自身が取り付けられた搬送チューブ7の部分を保持するチューブホルダ141と、チューブホルダ141に回動自在に取り付けられ、これと協働して搬送チューブ7を挟持するピンチ本体142と、このピンチ本体142の搬送チューブ7と反対側に回転自在に設けられ、ピンチ本体142を搬送チューブ7側に押圧するための所定形状のカム143とで構成されている。このように構成されたピンチ8A〜8Dは、第1および第2エアピンチ8A、8Bが、図14(b)に示すように、左右に隣接して配置され、飲料ピンチ8Cが、図16(b)に示すように、第2エアピンチ8Bの後方にこれに対向するように配置され、廃液ピンチ8Dが、第2エアピンチ8Bの下方に配置されている。これらのピンチ8A〜8Dのうち、第1および第2エアピンチ8A、8Bならびに飲料ピンチ8Cでは、カム143が共通化されている。また、このカム143(以下「共通カム143A」という)と、廃液ピンチ8Dのカム143は、それぞれの所定位置において上下方向に延びるリンクバー144に回動自在に連結されていて、互いに同期して回転する。そして、上記共通カム143Aが、ピンチ駆動機構122に連結されている。
【0066】
図14および図17に示すように、ピンチ駆動機構122は、前述したカム駆動機構121と共通の第1モータ131およびギヤボックス132と、その出力軸132aの右端部に固定された出力ギヤ145と、共通カム143Aの回転シャフト146に固定された駆動ギヤ147と、上記出力ギヤ145および駆動ギヤ147にそれぞれ噛み合う2つの中間ギヤ148a、148bおよびこれらを連結するシャフト148cで構成され、出力ギヤ145の動力を駆動ギヤ147に伝える動力伝達部148とを備えている。
【0067】
上述したように、カム駆動機構121およびピンチ駆動機構122は、第1モータ131を共通の駆動源とし、前者121によるカム円板55、フィルタブロック32およびシリンダヘッドロック部材57と、後者122による4つのピンチ8A〜8Dとを、相互に連係するように駆動する。これにより、コーヒーの抽出時において、シリンダ23の上面および下面の開閉、ならびにピンチ8A〜8Dによる搬送チューブ7A〜7Dの開閉を、効率良くかつ適切に行うことができる。
【0068】
図19は、スクレーパ・シリンダヘッド駆動機構123を示している。同図に示すように、スクレーパ・シリンダヘッド駆動機構123は、DCモータから成る第2モータ151と、この第2モータ151に接続されるとともに、上下方向に延びかつ両端部が外部に突出した出力軸152aを有するギヤボックス152と、出力軸152aの上下端部にそれぞれ設けられたシリンダヘッド駆動部153およびスクレーパ駆動部154などで構成されている。
【0069】
図19および図20に示すように、シリンダヘッド駆動部153は、平面形状が円形に形成され、出力軸152aの回転に伴って、所定の一方向にのみ、出力軸152aの回転力を伝達するワンウェイクラッチを内蔵している。シリンダヘッド駆動部153の上面周縁部には、上方に突出した係合凸部153aが設けられており、この係合凸部153aが、シリンダヘッド111に連結されたスライダ116の長孔116bに摺動自在に係合している。したがって、シリンダヘッド駆動部153が、図20(a)に示す待機位置から180度回転することにより、同図(b)に示すように、スライダ116が前方(同図の下方)にスライドし、それにより、シリンダヘッド111が前方のシリンダ閉鎖位置に移動する。
【0070】
また、上記シリンダヘッド駆動部153の左右には、シリンダヘッド駆動部153の回転位置を検出することによってシリンダヘッド111の位置を検出するための2つのマイクロスイッチ155、155が配置されている。各マイクロスイッチ155は、常時、スイッチレバー155aの先端部がシリンダヘッド駆動部153の側面に当接しており、その側面の所定位置に設けられた凹部153bにスイッチレバー155aの先端部が入り込んだ状態に係合することによって、マイクロスイッチ155のON/OFF状態が切り換わる。
【0071】
一方、スクレーパ駆動部154は、上記シリンダヘッド駆動部153と逆方向にのみ、出力軸152aの回転力を伝達するワンウェイクラッチを内蔵している。このスクレーパ駆動部154の下部には、水平に所定長さ延びるアーム部154aが設けられており、その先端部には、下方に延びる係合凸部154bが設けられている。この係合凸部154bは、スクレーパ33のサポート77の溝部77aに摺動自在に係合している。なお、ドリップユニット21を駆動ユニット22に取り付ける際には、上記係合凸部154bが、スクレーパ33の開放部77bを介して、溝部77aに挿入され、逆に、ドリップユニット21を駆動ユニット22から取り外す際には、溝部77aに係合する係合凸部154bが、開放部77bを介して、溝部77aから離脱する。
【0072】
また、スクレーパ駆動部154の前後には、上述したシリンダヘッド駆動部153と同様に、スクレーパ駆動部154の回転位置を検出することによってスクレーパ33の位置を検出するための2つのマイクロスイッチ156、156が配置されている。図21に示すように、各マイクロスイッチ156は、常時、スイッチレバー156aの先端部がスクレーパ駆動部154の側面に当接しており、その側面の所定位置に設けられた凹部154cにスイッチレバー156aの先端部が入り込んだ状態に係合することによって、マイクロスイッチ156のON/OFF状態が切り換わる。
【0073】
上記のスクレーパ駆動部154が、図21(a)に示す待機位置から180度回転することにより、同図(b)に示すように、スクレーパ33が後方(同図の上方)の抽出滓排出位置にスライドする。それにより、フィルタブロック32上の抽出滓は、スクレーパ本体78によって後方に掻き取られ、駆動ユニット22の下部に設けられた滓シュート161を介して、下方の滓バケツB(図1参照)に排出される。
【0074】
滓シュート161は、図3に示すように、ケース101内から前壁108の開口部108aを介して前方に若干突出し、平面形状が後方に開放したコ字状の枠部162と、ケース101内にかつ枠部162の内側に設けられ、駆動ユニット22の下部に配置されたエアポンプ124などの機器の前方および上方を覆うカバー163とで構成されている。枠部162のケース101内の左右上端部にはそれぞれ、スクレーパ33を前後方向にスライドさせる際に、これを案内するガイドレール162aが設けられている。また、カバー163は、上下方向に延びる前カバー部163aと、この前カバー163aの上端部に連なり、後ろ上がりに傾斜して後方に延びる上カバー部163bとで構成されている。このように構成された枠部162およびカバー163により、コーヒー抽出装置2のほぼ中央部に、滓シュート161が構成される。
【0075】
また、ドリップユニット21の下方には、ヒータ171(図1参照)が設けられている。ドリップユニット21のシリンダホルダ24は、左右の側壁41、41、背壁42、前カバー35およびシリンダヘッドカバー102により、底面以外は、閉鎖された状態であるので、ヒータ171により、内部のシリンダ収容部24aが下方から加熱され、所定温度(例えば50〜60℃)に適切に保たれる。それにより、コーヒーの抽出時におけるコーヒーの温度低下を抑制することができる。また、ヒータ171は、防水構造になっている。それにより、例えば、シリンダホルダ24から取り外されたシリンダ23や、駆動ユニット22から取り外されたドリップユニット21が洗浄され、シリンダ23やドリップユニット21を元に戻した際に、洗浄時の水滴がヒータ171に付着しても、ヒータ171の機能を損なうことはない。
【0076】
次に、以上のように構成されたコーヒー抽出装置2の動作について、その一連の動作を順に示す図22〜図24を参照しながら説明する。なお、これらの図では、上段にカム円板55の回転動作を中心に示すものとし、下段にフィルタブロック32、シリンダヘッド111およびスクレーパ33の動作を中心に示すものとする。
【0077】
図22(a)は、待機状態を示している。この待機状態では、カム円板55、フィルタブロック32、スクレーパ33およびシリンダヘッド111が、それぞれの待機位置に位置するとともに、シリンダ23の上面および下面がいずれも開放されている。また、待機状態では、図25の(1)に示すように、第1エアピンチ8A、第2エアピンチ8B、飲料ピンチ8Cおよび廃液ピンチ8Dはいずれも開放状態であり、したがって、ピンチ8A〜8Dにそれぞれ対応する搬送チューブ7A〜7Dがいずれも開放されている。
【0078】
この待機状態から、カム駆動機構121の第1モータ131が所定方向に回転することにより、カム円板55が、図22において反時計方向に回転する。それにより、カム円板55の第1カム溝53に係合するスライダ56が上昇し、スライダ56に支持されたフィルタブロック32が、スクレーパ33の内側を通って上昇する。そして、同図(b)に示すように、カム円板55が待機位置から約120度回転することにより、フィルタブロック32がシリンダ23の下面に当接した状態でこれをシールする。次いで、この状態において、原料供給装置3から所定量の原料が、シリンダヘッドカバー102の原料シュート104を介して、シリンダ23内に供給される。この原料投入時には、図25の(2)に示すように、上記待機状態と同様、ピンチ8A〜8Dはいずれも、開放状態である。
【0079】
原料供給後、カム円板55は、図22(c)に示すように、待機位置から約180度回転したときに、第1モータ131の停止に伴って停止する。この状態では、図25の(3)に示すように、第2エアピンチ8Bのみが開放状態となり、他のピンチ8A、8Cおよび8Dがいずれも閉鎖状態となる。そして、温水タンク13から所定量の湯が、シリンダヘッドカバー102の給湯口105を介して、シリンダ23内に供給され、その後、エアポンプ124が所定時間(例えば数秒)、作動することにより、エアが、第2エア搬送チューブ7Bおよびフィルタブロックチューブ32aを介してフィルタブロック32に送られる。このエアは、フィルタブロック32のフィルタ72を通過し、シリンダ23内の原料および湯を攪拌する。なお、シリンダ23内で発生した湯気は、シリンダヘッドカバー102の湯気抜きダクト106を介して、外部に適宜、排出される。
【0080】
上記攪拌の終了後、スクレーパ・シリンダヘッド駆動機構123の第2モータ151が所定方向に回転し、シリンダヘッド駆動部153が、図20(a)に示す待機位置から、同図(b)に示すように、180度回転したときに、第2モータ151が停止する。これにより、シリンダヘッド111は、両図に示すように、待機位置から前方に移動し、シリンダ23の真上に到達する。この場合、シリンダヘッド111は、その上部のヘッドガイドシャフト114が、ヘッドガイド部材117のシャフト支持部117bの前端よりも前側に移動することにより、図23(a)に示すように、若干下降し、シリンダ23上に載る。この状態から、カム駆動機構121の第1モータ131が再度回転し、それにより、カム円板55がさらに回転する。そして、同図(b)に示すように、カム円板55が待機位置から約240度回転することにより、カム円板55の第2カム溝54に係合するシリンダヘッドロック部材57が、同図において時計方向に若干回動し、そのロック部57bによって、ヘッドガイドシャフト114を下方に押し下げる。これにより、シリンダヘッド111は、シリンダ23の上面に当接した状態でこれをシールする。また、この状態では、図25(4)に示すように、第1エアピンチ8Aおよび飲料ピンチ8Cが開放状態となる一方、第2エアピンチ8Bおよび廃液ピンチ8Dが閉鎖状態となる。
【0081】
次いで、エアポンプ124が所定時間(例えば数秒)、作動し、エアが、第1エア搬送チューブ7Aを介してシリンダヘッド111に圧送され、さらに、シリンダ23内に供給される。それにより、シリンダ23内が加圧され、抽出されたコーヒーが、フィルタブロックチューブ32a、飲料搬送チューブ7C、ミキシングボウル5および飲料チューブ5aを通って、カップCに供給される。
【0082】
以上のようにして、コーヒーがカップCに供給された後、カム駆動機構121の第1モータ131が上記と逆方向に回転することにより、カム円板55も逆方向に回転し、元の待機位置に戻る。この場合、図23(c)に示すように、その途中において、シリンダヘッドロック部材57によるヘッドガイドシャフト114のロックが解除されるとともに、ヘッドガイドシャフト114が、カム円板55の凸部55bで押し上げられる。そして、スクレーパ・シリンダヘッド駆動機構123の第2モータ151が、上記と同じ方向に回転し、シリンダヘッド駆動部153がさらに180度回転する。以上により、図24(a)に示すように、シリンダヘッド111およびブロックフィルタ32が待機位置に戻る。
【0083】
次いで、スクレーパ・シリンダヘッド駆動機構123の第2モータ151が、上記と逆方向に回転することにより、スクレーパ駆動部154が、図21(a)に示す待機位置から、同図(b)に示すように、180度回転したときに、第2モータ151が停止する。これにより、スクレーパ33は、両図に示すように、待機位置から後方に移動する。これにより、図24(b)に示すように、フィルタブロック32のフィルタ72上に残留した抽出滓Gは、スクレーパ本体78によって、フィルタブロック32の後方に掻き取られ、滓シュート161を介して、外部に排出される。その後、第2モータ151が、上記と同じ方向に回転し、スクレーパ駆動部154がさらに180度回転することにより、図24(c)に示すように、スクレーパ33が前方に移動し、元の待機位置に戻る。なお、スクレーパ33による上述した抽出滓Gの排出動作は、スクレーパ駆動部154を複数回(例えば2、3回)回転させることによって、複数回実行するようにしてもよい。この場合には、フィルタ72上の抽出滓Gが、複数回掻き取られることにより、フィルタ72上をよりきれいにすることができる。加えて、スクレーパ駆動部154の係合凸部154bがスクレーパ33の溝部77aに適切に係合していなかった場合でも、1回転後に確実に係合でき、スクレーパ33による抽出滓Gの排出動作を確実に実行することができる。
【0084】
以上により、コーヒー抽出装置2によるコーヒー抽出の一連の動作が終了する。
【0085】
なお、図示は省略するが、自動販売機1では、コーヒー抽出装置2による抽出過程が外部から見えるようになっている。具体的には、駆動ユニット22のシリンダヘッドカバー102の内側に、シリンダ収容部24aを照明するLEDが設けられるとともに、自動販売機1のコーヒー抽出装置2の前方に覗き窓が設けられている。これにより、覗き窓およびドリップユニット21の透明な前面カバー35を通して、自動販売機1の利用者に、ドリップユニット21内におけるコーヒーの抽出過程を見せることができるとともに、抽出時の演出効果を図ることができる。その結果、利用者の興味を喚起し、自動販売機1の利用の促進を図ることができる。なお、上記の覗き窓に代えて、ドリップユニット21を前方から撮影するビデオカメラを自動販売機1内に設置するとともに、撮影した映像を表示するディスプレイを自動販売機の前面のメインドアに設置するようにしてもよい。
【0086】
以上詳述したように、本実施形態によれば、コーヒーの抽出が繰り返し行われることによって内面が汚れやすいシリンダ23を、シリンダホルダ24に対して容易に着脱できるので、その着脱作業を含むシリンダ23の洗浄などのメンテナンスを容易に行うことができる。また、モータなどの電装部品を有する駆動ユニット22に対し、電装部品が無くかつ比較的汚れやすいフィルタブロック32およびスクレーパ33を有するドリップユニット21を容易に着脱できるので、その着脱作業を含むドリップユニット21の洗浄などのメンテナンスも容易に行うことができる。
【0087】
また、シリンダ23の上面および下面を開閉するために駆動するカム円板55、および搬送チューブ7A〜7Dを開閉するピンチ8A〜8Dを、共通の第1モータ131によって駆動するので、それらを別個のモータでそれぞれ駆動する場合に比べて、コーヒー抽出装置2の製造コストの上昇を抑制することができる。加えて、シリンダヘッド111およびスクレーパ33を、共通の第2モータ151によって駆動するので、上記と同様に、コーヒー抽出装置2の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0088】
次に、図26〜図38を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態のコーヒー抽出装置は、前述した第1実施形態と基本的な構造が同じであるので、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明するものとする。
【0089】
図26および図27に示すように、このコーヒー抽出装置2は、駆動ユニット22の前側上部にシリンダヘッドカバー100を備えており、このシリンダヘッドカバー100が、左右一対のシリンダヘッドサポート103、103と、それらの間に着脱自在に取り付けられたカバー本体102などで構成されている。カバー本体102は、平面形状がほぼ矩形状に形成され、原料シュート104、給湯ノズル105(給水ノズル)および湯気抜きダクト106が一体に設けられている。また、シリンダヘッド111の前半上部には、上記原料シュート104からの原料、および給湯ノズル105からの湯を、シリンダ23に案内する原料・湯案内部材201が着脱自在に取り付けられている。
【0090】
図28および図29に示すように、原料・湯案内部材201は、自身をシリンダヘッド111に取り付けるための取付部202を有しており、この取付部202の前端部には補助原料シュート203が、取付部202の左側部には湯案内受け部204(第1水案内部)が設けられ、これらが一体に構成されている。一方、シリンダヘッド111の前半上部には、原料・湯案内部材201を取り付けるための取付部111aを有し、その上面に係合突起111bが突設されている。上記取付部111aの左右の側壁には、左右対称の凸部が前後方向に間隔を隔てて設けられている。また、上記係合突起111bは、円形断面を有し、上端部の径がそれ以外の部分よりも若干大きく形成されている。
【0091】
原料・湯案内部材201の取付部202は、下方に開放する断面コ字状に形成されるとともに後方に開放しており、上壁の後端部に、平面形状がだるま状の係合孔202aが形成されている。したがって、原料・湯案内部材201をシリンダヘッド111に取り付ける場合には、シリンダヘッド111の係合突起111bを原料・湯案内部材201の係合孔202aの大径部に下方から通し、原料・湯案内部材201をシリンダヘッド111の前半上部に載置した後、後方へスライドさせる。これにより、原料・湯案内部材201は、その取付部202がシリンダヘッド111の取付部111aを左右から挟持するとともに、係合孔202aの小径部が係合突起111bに係合することにより、シリンダヘッド111にしっかりと取り付けられる。なお、原料・湯案内部材201の取り外しは、上記と逆の手順で簡単に行うことができ、それにより、メンテナンス時などに、原料・湯案内部材201自体を丸洗いすることが可能である。
【0092】
原料・湯案内部材201の補助原料シュート203は、シリンダヘッド111が待機位置に位置するときに、前記カバー本体102の原料シュート104とシリンダ23の間に位置し、原料シュート104で案内された原料を、さらにシリンダ23に案内するものである。この補助原料シュート203は、上下方向に貫通し、上面がカバー本体102の原料シュート104の底面よりも若干大きい筒状に形成されている。なお、補助原料シュート203の前面上端部には、前方に若干突出する突起203aが設けられている。この突起203aは、シリンダヘッド111が前方のシリンダ閉鎖位置に移動したときに、後述する板ばね212に当接し、この当接によって補助原料シュート203の前壁が傷つくのを防止するためのものである。
【0093】
また、湯案内受け部204は、給湯ノズル105からの湯を、さらにシリンダ23に案内するとともに、給湯ノズル105から後だれする湯を受けることによって、その湯でシリンダヘッド111が濡れるのを防止するためのものである。この湯案内受け部204は、上方に開放するケース状に形成され、その底壁204aが前下がりに若干傾斜している。また、底壁204aの前端部には、上下方向に貫通し、シリンダヘッド111よりも前方に位置するとともに、下方に若干突出する補助給湯ノズル205が設けられている。なお、底壁204aの後端部には、上方に突出する3つの突起206が設けられている。これらの突起206により、その上方から湯が供給された場合でも、その湯が、底壁204aで跳ね返るのを抑制でき、それにより、湯案内受け部204から飛び出るのを防止することができる。
【0094】
図30は、シリンダヘッド111およびその周囲を斜め下から見たときの状態を示している。同図に示すように、シリンダヘッド111のパッキン112の後部には、周縁部に沿って円弧状の垂下部112bが設けられている。この垂下部112bは、後述するように、シリンダヘッド111によるシリンダ23のシール解除の際に、内圧が比較的高いシリンダ23から噴出する蒸気や残留する微量のコーヒーなどを受け止めるためのものである。
【0095】
図31は、コーヒー抽出装置2の平面図であり、(a)はカバー本体102を取り付けた状態、(b)はカバー本体102を省略するとともにシリンダヘッド111が待機位置に位置する状態を示している。同図に示すように、シリンダヘッド111が待機位置に位置するときには、原料・湯案内部材201の補助原料シュート203は、カバー本体102の原料シュート104の真下に位置するとともに、シリンダ23の周壁の内側前部の真上に位置する。またこの場合、原料・湯案内部材201の補助給湯ノズル205は、カバー本体102の給湯ノズル105の真下に位置するとともに、シリンダ23の周壁の内側縁部の真上に位置する。したがって、販売時に、給湯ノズル105から供給されるコーヒー抽出用の湯は、補助給湯ノズル205の真上から供給され、さらに、これを介してシリンダ23に供給される。このように、給湯ノズル105からの湯を、シリンダ23との間に位置する補助給湯ノズル205を介して供給することにより、その供給をシリンダ23の比較的近い位置から行うことができる。これにより、給湯ノズル105からシリンダ23に湯を直接、供給する場合に比べて、湯の飛び散りを防止しながら、シリンダ23内の所望の位置にピンポイントで供給することができる。
【0096】
また、図31および図26に示すようにドリップユニット21の左右の側壁41、41間の前側上端部には、所定形状の前上カバー211が設けられている。この前上カバー211は、後方および下方に開放している。また、前上カバー211の左右方向の中央部の天井面には、板ばね212が取り付けられている。この板ばね212は、シリンダヘッド111によるシリンダ23のシール解除の際に、補助原料シュート203を介して、シリンダヘッド111の前部を上方から押圧するためのものであり、補助原料シュート203の上端よりも上方の位置と下方の位置の間において、前下がりに傾斜するように配置されている(図34、37および38参照)。
【0097】
図32および図33は、本実施形態で使用するシリンダ23を示している。このシリンダ23は、第1実施形態のそれとほぼ同様の外形を有しており、円筒状の外周面に取っ手25およびガイド部26、26が設けられている。また、シリンダ23の内面には、シリンダ23に供給された湯を内面の周方向に沿って案内する湯案内部23aが設けられている。この湯案内部23aは、シリンダ23の上端付近と上下方向の中央部との間において、シリンダ23の内面に沿って設けられるとともに内方に若干突出し、平面形状が取っ手25の反対側に開放するU字状に形成されている。なお、このシリンダ23は、第1実施形態のそれと異なり、湯案内部23aが上側に位置するように、ドリップユニット21内にセットされる必要があり、それを知らせるための矢印25aが取っ手25の前面に表記されている。
【0098】
図34は、シリンダヘッド111が待機位置(開放位置)に位置する状態を示している。同図(a)に示すように、シリンダヘッド111が待機位置に位置するときには、原料・湯案内部材201の補助給湯ノズル205が、シリンダ23の湯案内部23aに上方から臨んでいる。これにより、販売時に、給湯ノズル105から補助給湯ノズル205を介してシリンダ23に供給された湯のうち、湯案内部23aに上方から当たった湯は、図34(b)および図35の矢印で示すように、湯案内部23aによって、シリンダ23の内面の周方向に案内されながら、シリンダ23内に流れ落ちる。つまり、販売時にシリンダ23に供給された湯は、湯案内部23a上の補助給湯ノズル205の真下の位置を起点として、シリンダ23内の周方向に沿って左右に回るように流れ落ちる。また、このような販売時におけるコーヒー抽出用の湯の供給(例えば、全量として150cc)は、前述したように、原料の供給とともに行われるのに加えて(例えば、全量のうちの120cc)、シリンダヘッド111がシリンダ23を閉鎖する前に、シリンダ23内の原料および湯を攪拌した後にも実行される(例えば、全量のうちの30cc)。これにより、前者の湯の供給時には、供給された原料のうち、シリンダ23の内面に付着したものが洗い落とされ、後者の湯の供給時には、攪拌によってシリンダ23の内面に付着したコーヒーが洗い落とされる。
【0099】
図36は、ドリップユニット21の前面に設けられた前面カバー35を示している。この前面カバー35は、第1実施形態のそれに加えて、背面の所定位置に、後方に突出する凸板部35e(第2水案内部)を有している。この凸板部35eは、後述するように、上方から供給された湯が当たり、それが拡散しながら流れ落ちることによって、ドリップユニット21内をリンスするためのものである。凸板部35eは、平面形状が矩形状に形成されるとともに右方に若干傾斜していて、前面カバー35の上下方向の中央部よりも若干上方に、かつ、左右方向の中央部よりも若干左方に、前面カバー35と一体に設けられている。
【0100】
図37は、シリンダヘッド111がシリンダ閉鎖位置(リンス位置)に位置する状態を示している。同図(a)に示すように、シリンダヘッド111がシリンダ閉鎖位置に位置するときには、原料・湯案内部材201の補助給湯ノズル205が、前面カバー35の凸板部35eに上方から臨んでいる。またこの場合、カバー本体102の給湯ノズル105は、湯案内受け部204内の後端部の突起206に上方から臨んでいる。この状態において、給湯ノズル105から湯を供給した場合、その湯は、突起206の上方から湯案内受け部204内に入った後、前下がりの底壁204aに沿って前方に流れ、前端部の補助給湯ノズル205を介して、さらに下方に供給される。そして、補助給湯ノズル205からの湯は、同図(b)の矢印で示すように、前面カバー35の凸板部35eに上方から当たった後、それに沿って後方および右方に案内されながら、シリンダ23と前面カバー35の間に流れ落ちる。このような湯の供給は、定期的に(例えば12または24時間ごとに)、シリンダヘッド111をシリンダ閉鎖位置に移動させるとともに、所定量(例えば20cc)の湯を供給することによって行われる。これにより、ドリップユニット21内がリンスされる。
【0101】
また、このコーヒー抽出装置2では、その構造上、スクレーパ33の前端部に抽出滓やそれによる汚れが付着しやすい。これは、販売時に、フィルタブロック32上の抽出滓が、スクレーパ33のスクレーパ本体78によって掻き取るように排出されるため、スクレーパ本体78の背面に抽出滓が若干付着することがある。また、フィルタブロック32が、スクレーパ33の内側において昇降するため、スクレーパ本体78の背面に付着した抽出滓がフィルタブロック32で持ち上げられ、その結果、抽出滓がスクレーパ33の前端部に堆積しやすい。そのため、上述したようにして、ドリップユニット21内をリンスすることにより、スクレーパ本体78の背面に付着していたり、スクレーパ33の前端部に堆積している抽出滓を洗い落とすことができる。
【0102】
次に、図38を参照して、シリンダヘッド111によるシリンダ23のシール解除動作について説明する。同図(a)は、シリンダヘッド111によってシリンダ23をシールした状態を示している。同図に示すように、この状態では、シリンダヘッド111は、パッキン112を介してシリンダ23の上面に当接した状態で、これをシールするとともに、前上カバー211内の板ばね212によって、前部が原料・湯案内部材201を介して上方から押圧されている。なおこの場合、板ばね212に当接するのは、補助原料シュート203の前面上端部の突起203aであるため、補助原料シュート203の前壁が傷つくことはない。
【0103】
また、シリンダヘッド111は、前述したように、連結軸115aを介して連結部材115に回動自在に連結され、さらにこの連結部材115は、連結軸116aを介してスライダ116に回動自在に連結されている。このため、シリンダヘッド111は、その上部の連結軸115a、116aを支点として、前後方向に揺動自在になっている。したがって、図38(a)に示す状態から、前述したように、ヘッドガイドシャフト114が、カム円板55の回転に伴い、凸部55bで押し上げられると、シリンダヘッド111の前部が板ばね212で上方から押圧されているために、同図(b)に示すように、シリンダヘッド111は、その前部がシリンダ23に当接した状態のまま、後部がシリンダ23から浮き上がる。
【0104】
前述したように、シリンダ23からのコーヒーの搬出は、シリンダ23をシリンダヘッド111でシールした状態において、シリンダ23にエアを供給し、シリンダ23内を加圧することによって行われる。そのため、コーヒーの搬出後、シリンダヘッド111によるシリンダ23のシールを解除する場合には、シリンダ23の内圧が比較的高いために、シールの解除直後に、シリンダヘッド111とシリンダ23の隙間からシリンダ23内の蒸気や残留する微量のコーヒーなどが噴出することがある。
【0105】
したがって、上述したように、シリンダヘッド111によるシリンダ23のシール解除の際に、シリンダヘッド111の前部をシリンダ23に当接した状態のまま、シリンダヘッド111の後部のシールを解除することにより、シリンダ23内の蒸気やコーヒーなどは、後方に噴出する。その結果、シリンダ23内の蒸気やコーヒーなどが、前方の前面カバー35に飛散することがなく、それを汚すことを防止することができる。また、シリンダヘッド111とシリンダ23の隙間から後方に噴出する蒸気やコーヒーなどは、シリンダヘッド111の後部の垂下部112bによって受け止められる。それにより、シリンダ23の後方、すなわちドリップユニット21の背壁42や駆動ユニット22の前壁108などに、蒸気やコーヒーなどが飛散するのを防止することができる。
【0106】
以上のように、本実施形態によれば、シリンダヘッド111の前半上部に原料・湯案内部材201が取り付けられ、カバー本体102の給湯ノズル105の下方には、常時、湯案内受け部204が存在する。これにより、湯案内受け部204によって、給湯ノズル105から後だれする湯を受けることができ、その湯でシリンダヘッド111やその下面のパッキン112が濡れるのを防止することができる。その結果、シリンダ23への原料の供給時に、原料やその微粉がパッキン112に付着、堆積するのを防止でき、それにより、パッキン112を衛生的に保つことができる。なお、後だれした湯は、補助給湯ノズル205を介して、適宜、排出される。
【0107】
また、販売時におけるシリンダ23への湯の供給は、補助給湯ノズル205を介して、シリンダ23の湯案内部23aに上方から当たるように行われるので、湯がシリンダ23の内面の周方向に沿って回るように流れ落ちる。それにより、シリンダ23の内面に、原料の供給によって付着した原料や、攪拌によって付着したコーヒーが洗い落とされ、したがって、販売ごとに、シリンダ23の内面を清浄にすることができる。その結果、シリンダ23内でのコーヒーの抽出を衛生的に行うことができるとともに、味の良い高品質のコーヒーを提供することができる。
【0108】
さらに、定期的に、シリンダヘッド111をシリンダ閉鎖位置に移動させるとともに、給湯ノズル105から所定量の湯を供給することにより、その湯を、湯案内受け部204の補助給湯ノズル205を介して、シリンダ23と前面カバー35の間に流すので、ドリップユニット21内を定期的にリンスすることができる。特に、抽出滓が付着、堆積しやすいスクレーパ33の前端部に湯を流すことにより、それを洗浄することができる。これにより、例えば、コーヒー抽出装置2が前方から購入者などに見えるように設置されている場合でも、コーヒー抽出装置2を清浄に、かつ見栄えを良好に保つことができる。
【0109】
さらにまた、シリンダヘッド111によるシリンダ23のシール解除の際に、シリンダヘッド111の前部をシリンダ23に当接した状態のまま、シリンダヘッド111の後部のシールを解除し、その際に後方に噴出するシリンダ23内の蒸気やコーヒーなどを、シリンダヘッド111の垂下部112bで受け止めるので、ドリップユニット21内を清浄に保つことができ、その結果、コーヒー抽出装置2を、より一層、清浄にかつ見栄えを良好に保つことができる。
【0110】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明をコーヒー抽出装置に適用した場合について説明したが、原料として茶葉を用い、茶系飲料を抽出する飲料抽出装置に適用することもできる。また、実施形態では、抽出時に、エアポンプ124によるエアをシリンダ23に供給し、シリンダ23内を加圧することによって、飲料を外部に搬送するようにしたが、これに代えて、ギヤポンプやチューブポンプを採用し、シリンダ23内の飲料を吸引することによって外部に搬送してもよい。
【0111】
また、実施形態では、本発明の可動部として、シリンダヘッド111を採用したが、これに代えて、例えば、原料シュートや給湯ノズルなどを採用することも可能である。また、実施形態で示したコーヒー抽出装置2の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0112】
2 コーヒー抽出装置(飲料抽出装置)
4 給湯装置(給水手段)
23 シリンダ(抽出容器)
32 フィルタブロック(飲料ろ過部)
33 スクレーパ
35 前面カバー
35e 凸板部(第2水案内部)
72 フィルタ
78 スクレーパ本体
105 給湯ノズル(給水ノズル)
111 シリンダヘッド(可動部)
123 スクレーパ・シリンダヘッド駆動機構(可動部駆動手段、スクレーパ
駆動手段)
124 エアポンプ
151 第2モータ
152a 出力軸
153 シリンダヘッド駆動部
154 スクレーパ駆動部
201 原料・湯案内部材
204 湯案内受け部(第1水案内部)
G 抽出滓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料および水を用いて飲料を抽出するための飲料抽出装置であって、
上面および下面が開放した筒状に形成されるとともに、原料および水が供給され、内部において飲料の抽出を行うための抽出容器と、
この抽出容器の上側に移動自在に設けられ、当該抽出容器の上面を開放した状態に維持する開放位置と、前記抽出容器の外部をリンスするためのリンス位置とに移動可能な可動部と、
この可動部を駆動する可動部駆動手段と、
上面にフィルタを有するとともに前記抽出容器の下側に設けられ、飲料の抽出時に前記抽出容器の下面をシールするとともに、当該抽出容器から搬出される飲料が通過する際に、当該飲料を前記フィルタによってろ過する飲料ろ過部と、
この飲料ろ過部の上側に移動自在に設けられ、前記フィルタ上に残留した原料を掻き取り、抽出滓として排出するためのスクレーパと、
このスクレーパを駆動するスクレーパ駆動手段と、
前記抽出容器の上方に配置された給水ノズルを有し、この給水ノズルから水を下方に供給する給水手段と、
前記可動部に設けられ、前記給水ノズルから供給された水を、前記可動部が前記開放位置に位置するときに前記抽出容器の内部に案内するとともに、前記可動部が前記リンス位置に位置するときに前記抽出容器の外部に案内する第1水案内部と、
を備えていることを特徴とする飲料抽出装置。
【請求項2】
前記可動部が前記リンス位置に位置するときの前記第1水案内部の下方に配置され、前記スクレーパをリンスするために、当該第1水案内部によって案内された水を当該スクレーパに案内する第2水案内部を、さらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の飲料抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−142025(P2012−142025A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88986(P2012−88986)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【分割の表示】特願2007−107001(P2007−107001)の分割
【原出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】