説明

飲料水供給装置

【課題】整水器からの排水量が少なく、かつ、整水器が故障しにくい飲料水供給装置を提供する。
【解決手段】カセットタンク3の飲料原水を整水器4に送る吸上ポンプ5および整水器4で生成したアルカリ性水を吐出させる吐出ポンプ5の動作を制御する制御手段13は、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を開始させるときに、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内の圧力が所定の値よりも低い否かを判定し、配管内の圧力が所定の値よりも低いと判定した場合は、吸上ポンプ5の動作のみを開始させた後、所定の時間が経過してから吐出ポンプ6の動作を開始させ、配管内の圧力が前記所定の値以上と判定した場合は、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を同時に開始させる飲料水供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給茶機やカップ式飲料自動販売機において飲料の調理に使用する飲料水を供給する飲料水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給茶機などの飲料製造システムには、水道水などの飲料原水を電気分解してアルカリ性水および酸性水を生成する整水器を備えたものがある(たとえば、特許文献1を参照。)。整水器を備えた給茶機は、たとえば、生成したアルカリ性水を用いることで、風味がよく口当たりのよいお茶を抽出することができる。また、近年の給茶機には、アルカリ性水と酸性水とのどちらでお茶を抽出するかを選ぶことができるものもある(たとえば、特許文献2を参照。)。
【0003】
整水器を供えた飲料製造システムは、調理に使用する飲料水などを生成する飲料水供給装置と、飲料水供給装置から供給される飲料水を使用してお茶などの飲料を製造して提供する飲料製造装置と、からなる。飲料水供給装置は、たとえば、整水器と、飲料原水を保管しておくタンクと、タンクの飲料原水を吸上げて整水器に送る吸上ポンプと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−198555号公報
【特許文献2】特開2006−081666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の飲料水供給装置を用いて飲料製造装置にアルカリ性水を供給する方法の1つとして、整水器内の圧力を高くして飲料製造装置に送り出す方法がある。この方法では、整水器内に送り込む飲料原水の量を、飲料製造装置に供給するアルカリ性水を生成するために必要な量よりも多くして、整水器内の圧力を高くするのが一般的である。しかし、この方法では、所定量のアルカリ性水を飲料製造装置に供給して吸上ポンプを停止させた後、整水器内の圧力が高い状態になっている。整水器内の圧力が高い状態が続くと、たとえば、当該圧力による負荷で整水器が壊れることがある。そのため、従来の飲料水供給装置では、吸上ポンプを停止させた後、たとえば、整水器内に残っている水の一部を排水して、整水器内の圧力を下げるようになっている。
【0006】
特に、従来の一般的な飲料製造システムは、整水器のアルカリ性水を飲料製造装置に供給する配管の配管抵抗が大きいので、所定量のアルカリ性水を短時間で飲料製造装置に供給するには整水器内の圧力を十分に高くする必要がある。すなわち、整水器のアルカリ性水を供給する配管の配管抵抗が大きい場合、所定量のアルカリ性水を飲料製造装置に供給するために必要な飲料原水の量が非常に多くなる。所定量のアルカリ性水を飲料製造装置に供給するために必要な飲料原水の量が多くなると、その分、吸上ポンプを停止させた後で整水器から排水される水の量が多くなる。そのため、整水器内の圧力を高くしてアルカリ性水を飲料製造装置に送り出す従来の飲料水供給装置には、整水器からの排水量が多くなるという問題、言い換えると飲料原水の利用効率(飲料原水のうちの飲料に利用される量の割合)が低くなるという問題があった。
【0007】
上記の排水量が多いという問題を解決する方法の1つとして、整水器と飲料製造装置との間に吐出ポンプを設け、当該吐出ポンプにより整水器からアルカリ性水を吐出させて飲料製造装置に供給する方法がある。
【0008】
吐出ポンプを備えた飲料水供給装置では、アルカリ性水を飲料製造装置に供給するために吸上ポンプおよび吐出ポンプの動作を同時に開始すると、飲料原水を吸上げるよりも先にアルカリ性水を吐出する。このとき、整水器と吐出ポンプとを連通する配管内は負圧になる。整水器と吐出ポンプとを連通する配管内が負圧になると、たとえば、整水器が故障するという問題がある。
【0009】
整水器と吐出ポンプとを連通する配管内が負圧になることを原因とする整水器の故障を防ぐ方法の1つとして、まず吸上ポンプのみを動作させ、それから所定の時間が経過した後で吐出ポンプの動作を開始させる方法がある。この方法では、吐出ポンプの動作を開始させる前に設けた、吸上ポンプのみが動作している期間に、整水器内の圧力が上昇する。そのため、この方法を適用した飲料水供給装置では、吐出ポンプを動作させたときに整水器と吐出ポンプとを連通する配管内が負圧になることを防げる。したがって、この方法を適用した飲料水供給装置では、整水器と吐出ポンプとを連通する配管内が負圧になることを原因とする整水器の故障を防ぐことができる。
【0010】
しかし、吐出ポンプの動作の開始を遅らせる場合、所定量のアルカリ性水を飲料製造装置に供給して吸上ポンプおよび吐出ポンプを停止させた後の整水器内は、圧力が高い状態である。そのため、吸上ポンプおよび吐出ポンプを停止させた後、吸上ポンプのみが動作している時間の長さに応じた量の水が整水器から排水される。このときの排水量は、吐出ポンプを用いない場合、すなわち前述の、整水器内の圧力を高くしてアルカリ性水を飲料製造装置に送り出す方法を適用した場合の排水量に比べれば少ないと考えられる。しかしながら、アルカリ性水を飲料製造装置に送るたびに、飲料の製造に利用可能なアルカリ性水が排水されるという点では、飲料原水の利用効率が低いといえる。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、整水器からの排水量が少なく、かつ、整水器が故障しにくい飲料水供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る飲料水供給装置は、飲料原水を保管するタンクと、前記飲料原水を電気分解してアルカリ性水および酸性水を生成する整水器と、前記タンクの飲料原水を吸上げて前記整水器に送る吸上ポンプと、前記整水器からアルカリ性水または酸性水を吐出させる吐出ポンプと、前記吸上ポンプおよび前記吐出ポンプの動作を制御する制御手段と、を備えた飲料水供給装置であって、前記制御手段は、前記吸上ポンプおよび前記吐出ポンプの動作を開始させるときに、前記吸上ポンプから前記吐出ポンプまでの区間における配管内の圧力が所定の値よりも低いか否かを判定し、前記配管内の圧力が前記所定の値よりも低いと判定した場合は、前記吸上ポンプの動作のみを開始させた後、所定の時間が経過してから前記吐出ポンプの動作を開始させ、前記配管内の圧力が前記所定の値以上と判定した場合は、前記吸上ポンプおよび前記吐出ポンプの動作を同時に開始させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る飲料水供給装置は、請求項1に係る飲料水供給装置において、前記制御手段は、前記吸上ポンプおよび前記吐出ポンプの動作を停止させてから再び前記吸上ポンプおよび前記吐出ポンプの動作を開始させるまでの経過時間が所定の時間よりも長い場合は、前記配管内の圧力が前記所定の値よりも低いと判定し、前記経過時間が前記所定の時間以下の場合は、前記配管内の圧力が前記所定の値以上と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の飲料水供給装置では、アルカリ性水または酸性水を飲料製造装置などに供給するときに、吸上ポンプから吐出ポンプまでの区間における配管内の圧力が所定の値よりも低いと、吐出ポンプの動作を開始させる前に吸上ポンプのみを動作させる。こうすることで、吐出ポンプの動作開始時における前記配管内の圧力は吸上ポンプの動作を開始する前よりも高くなり、吐出ポンプの動作を開始したときに整水器と吐出ポンプとを連通する配管内が負圧になることを防げる。一方、吸上ポンプから吐出ポンプまでの区間における配管内の圧力が所定の値以上の場合は、吸上ポンプおよび吐出ポンプの動作を同時に開始しても整水器と吐出ポンプとを連通する配管内が負圧になることはない。そのため、本発明の飲料水供給装置は、吐出ポンプを動作させたときに整水器と吐出ポンプとを連通する配管内が負圧になることを原因とする整水器の故障を防げる。
【0015】
しかも、本発明の飲料水供給装置は、アルカリ性水または酸性水を飲料製造装置などに供給するときに、吸上ポンプから吐出ポンプまでの区間における配管内の圧力が所定の値以上であると、吸上ポンプおよび吐出ポンプの動作を同時に開始する。そのため、本発明の飲料水供給装置は、飲料製造装置にアルカリ性水または酸性水を供給するときに吸上ポンプのみが動作することで生じる整水器からの排水の量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である飲料水供給装置を適用した給茶機の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態の給茶機を動作制御の観点で模式的に示す制御ブロック図である。
【図3】図3は、図1の茶飲料製造装置2にアルカリ性水を供給するときに飲料水供給装置の制御手段で行われる処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】図4は、ステップS107の判定で用いる所定の時間ΔT2の長さを説明するために示すタイムチャートである。
【図5】図5は、本実施形態の飲料水供給装置でアルカリ性水を供給するときの動作制御の具体例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る飲料水供給装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である飲料水供給装置を適用した給茶機の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【0018】
本実施形態では、本発明の飲料水供給装置を適用した飲料製造システムの一例として、飲料水供給装置から供給されるアルカリ性水を用いて茶飲料を製造する給茶機を挙げる。
【0019】
本実施形態の給茶機は、図1に示すように、飲料水供給装置1と、茶飲料製造装置2と、を備える。
【0020】
飲料水供給装置1は、カセットタンク3と、整水器4と、吸上ポンプ5と、吐出ポンプ6と、複数の配管7a,7b,7c,7d,7eと、排水バケツ8と、を備える。
【0021】
カセットタンク3は、水道水などの飲料原水を入れて保管しておく容器である。整水器4は、飲料原水を電気分解してアルカリ性水と酸性水とを生成するものである。
【0022】
吸上ポンプ5は、カセットタンク3に入っている飲料原水を吸上げて整水器4に送るためのものであり、配管7aによりカセットタンク3と連通し、配管7bにより整水器4の送水口と連通している。また、吐出ポンプ6は、整水器4で生成したアルカリ性水を吐出させて茶飲料製造装置2の茶飲料製造手段9に送るためのポンプであり、配管7cにより整水器4のアルカリ性水側の出水口と連通し、配管7dにより茶飲料製造手段9と連通している。
【0023】
排水バケツ8は、整水器4から出る排水(たとえば、酸性水)を貯めておく容器である。整水器4から出た排水は、当該出水口に接続された配管7eを通して排水バケツ8に送られる。
【0024】
一方、茶飲料製造装置2は、茶飲料製造手段9と、給水バルブ10と、給茶バルブ11とを備える。
【0025】
茶飲料製造手段9は、整水器4で生成したアルカリ性水を利用してお茶などの飲料を調理するものである。給水バルブ10は、整水器4で生成したアルカリ性水を茶飲料製造手段9に給水するときに開く開閉弁である。給茶バルブ11は、茶飲料製造手段9で製造(調理)されたお茶を紙コップなどの容器12に注ぐときに開く開閉弁である。
【0026】
図2は、本実施形態の飲料水供給装置を動作制御の観点で模式的に示す制御ブロック図である。
【0027】
本実施形態の給茶機における飲料水供給装置1は、図2に示すように、整水器4、吸上ポンプ5、および吐出ポンプ6などのほかに、これらの動作を制御する制御手段13を備える。制御手段13は、主処理部13aと、計時部13bと、メモリ13cと、を備える。なお、制御手段13は、整水器4、吸上ポンプ5、および吐出ポンプ6の動作を制御するほかに、たとえば、カセットタンク3の飲料原水の残量や排水バケツ8に貯まった排水の量の監視なども行っている。
【0028】
主処理部13aは、整水器4、吸上ポンプ5、および吐出ポンプ6の動作に関する処理、たとえば、これらの動作を開始させる命令や停止させる命令を生成する処理を行う部分である。
【0029】
計時部13bは、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させてから、再び吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を開始させるまでの経過時間を計測する部分である。
【0030】
メモリ13cは、整水器4、吸上ポンプ5、および吐出ポンプ6の動作の制御に必要な情報を記憶しておく部分である。
【0031】
また、図示は省略しているが、本実施形態の給茶機における茶飲料製造装置2も、茶飲料製造手段9、給水バルブ10、および給茶バルブ11のほかに、たとえば、操作ボタンや、茶飲料製造手段9などの動作を制御する制御手段を備える。
【0032】
図3は、図1の茶飲料製造装置2にアルカリ性水を供給するときに飲料水供給装置の制御手段で行われる処理の内容を示すフローチャートである。
なお、図3には、飲料水供給装置1の制御手段13で行われる処理のうちの、アルカリ性水を茶飲料製造装置2に供給するときに行われる吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作に関する処理の内容のみを示している。
【0033】
飲料水供給装置1の制御手段13では、たとえば、整水器4、吸上ポンプ5、および吐出ポンプ6に異常が発生していないか、カセットタンク3の飲料原水の量の監視などを定期的に行っている。そして、外部からの信号を受信すると、主処理部13aは、まず、図3に示すように、受信した信号が茶飲料製造装置2からのアルカリ性水の供給開始を要求する信号(以下、給水開始要求という)であるかの判定を行う(ステップS101)。給水開始要求は、たとえば、茶飲料製造装置2に設けられた操作ボタンが押されたときに、飲料水供給装置1に送信される。
【0034】
受信した信号が給水開始要求である場合(ステップS101:Yes)、主処理部13aは、次に、給水開始要求を受信するのが初めてであるかの判定を行う(ステップS102)。なお、この判定における初めてというのは、たとえば、給茶機の主電源をオンにして運転を開始させてから続く1つの運転期間において初めてということを意味している。すなわち、給茶機の主電源をオフにした後、再び主電源をオンにして運転を再開させた場合、ステップS102では、その再び主電源をオンにした後の運転期間において初めてかを判定する。
【0035】
給水開始要求を受信するのが初めてである場合(ステップS102:Yes)、主処理部13aは、まず吸上ポンプ5の動作を開始させ、それから時間ΔT1が経過してから吐出ポンプ6の動作を開始させる(ステップS103)。ステップS103の処理は、たとえば、ある時刻に吸上ポンプ5に対して動作を開始させる命令を送信し、それから時間ΔT1後に吐出ポンプ6に対して動作を開始させる命令を送信して行う。そして、ステップS103の処理が行われると、カセットタンク3の飲料原水が整水器4に送られ、整水器4で生成したアルカリ性水が茶飲料製造装置2に供給される。このとき、制御手段13は、ステップS103の処理にあわせて整水器4の動作を開始させる。
【0036】
ステップS103の処理の後、主処理部13aでは、所定量のアルカリ性水が茶飲料製造装置2に供給されたか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104の判定は、たとえば、吐出ポンプ6の動作を開始させてから所定の時間が経過したか否かで行う。吐出ポンプ6の動作を開始させてからの経過時間でステップS104の判定を行う場合は、たとえば、吐出ポンプ6の動作開始とともに計時部13bで時間の計測を開始し、当該計測した時間が所定の時間に達したか否かで判定する。また、ステップS104の判定は、たとえば、茶飲料製造装置2からの給水停止を要求する信号(以下、給水停止要求という)を受信したか否かで行ってもよい。
【0037】
ステップS104で所定量のアルカリ性水が茶飲料製造装置2に供給されたと判定すると(ステップS104:Yes)、主処理部13aは、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させるとともに、計時部13bに時間の計測を開始させる(ステップS105)。このとき、制御手段13は、ステップS105の処理にあわせて整水器4の動作を停止させる。
【0038】
ステップS105の後、制御手段13は他の処理、たとえば、整水器4、吸上ポンプ5、および吐出ポンプ6に異常が発生していないか、カセットタンク3の飲料原水の量の監視などを定期的に行う。そして、外部から信号が入力したときには、再びステップS101からの処理を行う。
【0039】
一方、ステップS102において給水開始要求を受信するのが初めてではない場合(ステップS102:No)、主処理部13aは、最後に吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させてからの経過時間を計時部13bから取得した後、時間の計測を終了する(ステップS106)。続けて、主処理部13aは、ステップS106で取得した経過時間が所定の時間ΔT2よりも長いかを判定する(ステップS107)。ステップS107の判定で用いる所定の時間ΔT2の長さについては、後述する。
【0040】
ステップS106で取得した経過時間が所定の時間ΔT2よりも長い場合(ステップS107:Yes)、主処理部13aはステップS103の処理を行う。すなわち、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させてから、再び吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を開始させるまでの経過時間が、時間ΔT2よりも長い場合は、まず吸上ポンプ5の動作を開始させ、それから時間ΔT1が経過した後で吐出ポンプ6の動作を開始させる。一方、ステップS106で取得した経過時間が時間ΔT2以下である場合(ステップS107:No)、主処理部13aは、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を同時に開始させる(ステップS108)。そして、ステップS103またはステップS108の処理により吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を開始させた後、主処理部13aは、ステップS104およびステップS105の処理を行う。
【0041】
図4は、ステップS107の判定で用いる所定の時間ΔT2の長さを説明するためのタイムチャートである。
図4には、吸上ポンプ5の動作を開始させた後、所定の時間ΔT1が経過してから吐出ポンプ6の動作を開始させる場合の、吸上ポンプ5の動作の時間変化P1および吐出ポンプ6の動作の時間変化P2、ならびに吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内の圧力状態の時間変化P3を模式的に示している。
また、図4において、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作に関する符号ONおよび符号OFFは、それぞれ、動作している状態および動作していない状態を意味する。また、図4において、配管内の圧力状態に関する符号Lおよび符号Hは、それぞれ、配管内の圧力が所定の値よりも低い通常状態であることおよび当該所定の値以上の加圧状態であることを意味する。配管内の圧力に関する前記所定の値は、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を同時に開始させたときに、整水器4と吐出ポンプ6とを連通する配管7c内が負圧にならない値であり、かつ、できるだけ低い値であることが望ましい。
【0042】
本実施形態の飲料水供給装置1では、電源をオンにして運転を始めた直後や、茶飲料製造装置2へのアルカリ性水の供給が長時間(時間ΔT2より長い時間)行われていない場合、図4に示した時刻t0から時刻t1までのように、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内の圧力状態は通常状態である。
【0043】
そして時刻t1に、制御手段13において給水開始要求を受信すると、制御手段13は、図3に示したフローに沿って吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を開始させる。時刻t1に受信した給水開始要求が運転を開始してから初めての受信であると判定された場合や、茶飲料製造装置2へのアルカリ性水の供給が時間ΔT2以上の長い時間行われていない場合、制御手段13は、時刻t2に吸上ポンプ5の動作のみを開始させた後、所定の時間ΔT1が経過してから吐出ポンプ6の動作を開始させる。吐出ポンプ6の動作を開始させる前に吸上ポンプ5のみを動作させると、配管内の圧力状態は通常状態から加圧状態になる。そのため、吐出ポンプ6を動作させたときに整水器4と吐出ポンプ6とを連通する配管7cの内部が負圧になるのを防ぐことができる。
【0044】
その後の時刻t3に、たとえば、制御手段13において給水停止要求を受信すると、制御手段13は、時刻t4に吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させるとともに、計時部13bにおいて時間の計測を開始する。
【0045】
吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させた時刻t4では、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内は高圧状態である。しかしながら、当該区間における配管内の圧力が高い状態が続くと、たとえば、当該圧力による負荷で整水器4が壊れることがある。そのため、従来の飲料水供給装置では、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6を停止させた後、たとえば、整水器4に残っている水の一部を排水して、整水器4内の圧力を下げるようになっている。
【0046】
すなわち、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止した後、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内の圧力状態は、所定の時間が経過すると高圧状態から通常状態に戻る。吸上ポンプ5から吐出ポンプ6の動作を停止させた後、再び動作を開始させるときに、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内が高圧状態であれば、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6を同時に開始しても、整水器4と吐出ポンプ6とを連通する配管7c内は負圧にならない。一方、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6の動作を停止させた後、再び動作を開始させるときに、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内が通常状態であると、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6を同時に開始した場合、整水器4と吐出ポンプ6とを連通する配管7c内が負圧になる。したがって、ステップS107の判定で用いる時間ΔT2は、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させてから、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内の圧力状態が通常状態に戻るまでの時間ΔT2にする。
【0047】
また、高圧状態と通常状態との境になる圧力の値は、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を開始させたときに、整水器4と吐出ポンプ6とを連通する配管7c内が負圧にならない値であり、かつ、できるだけ低い値であることが望ましい。高圧状態と通常状態との境になる圧力の値をできるだけ低くすることで、たとえば、吐出ポンプ6の動作を開始させる前に吸上ポンプ5を動作させる際の時間ΔT1を短くできる。そのため、整水器4からの排水量を減らしたり、アルカリ性水の供給に要する時間を短縮できたりできる。
【0048】
図5は、本実施形態の飲料水供給装置でアルカリ性水を供給するときの動作制御の具体例を示すタイムチャート図である。
図5には、飲料水供給装置1の動作のうちの、吸上ポンプ5の動作の時間変化P1、吐出ポンプ6の動作の時間変化P2、および吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間の配管内の圧力状態の時間変化P3を模式的に示している。
また、図5において、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作に関する符号ONおよび符号OFFは、それぞれ、動作している状態および動作していない状態を意味する。また、図5において、配管内の圧力状態に関する符号Lおよび符号Hは、それぞれ、配管内の圧力が所定の値よりも低い通常状態であることおよび当該所定の値以上の加圧状態であることを意味する。
【0049】
本実施形態の飲料水供給装置1では、茶飲料製造装置2へのアルカリ性水の供給が長時間(時間ΔT2より長い時間)行われていないと、図5に示した時刻t10から時刻t11までのように、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内の圧力状態が通常状態に戻っている。
【0050】
そして時刻t11に、制御手段13において給水開始要求を受信すると、制御手段13は、図3に示したフローに沿って吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を開始させる。すなわち、制御手段13は、時刻t12に、まず吸上ポンプ5の動作を開始させる。続けて制御手段13は、時刻t12から時間ΔT1が経過した時刻に、吐出ポンプ6の動作を開始させる。
【0051】
その後の時刻t13に、制御手段13において給水停止要求を受信すると、制御手段13は、時刻t14に吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させるとともに、計時部13bで時間の計測を開始する。
【0052】
その後、時刻t15に、制御手段13において再び給水開始要求を受信すると、制御手段13は、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させてからの経過時間ΔT3を取得し、計時部13bでの時間の計測を終了する。時刻t14から時刻t15までの経過時間ΔT3は、前述の時間ΔT2よりも短いので、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内は、まだ高圧状態である。そのため、制御手段13は、時刻t16に、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を同時に開始させる。このとき、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内は高圧状態なので、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を同時に開始しても、整水器4と吐出ポンプ6とを連通する配管7c内が負圧になることはない。
【0053】
その後の時刻t17に、制御手段13において給水停止要求を受信すると、制御手段13は、時刻t18に吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させるとともに、計時部13bで時間の計測を開始する。
【0054】
時刻t18から時間ΔT2が経過する時刻t19より前に、制御手段13において再び給水開始要求を受信した場合、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内は、まだ高圧状態である。そのため、制御手段13は、時刻t15に給水開始要求を受信したとき同じく、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を同時に開始する。一方、時間t8に吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させた後、最初に給水開始要求を受信した時刻が時刻t19以後であれば、吸上ポンプ5から吐出ポンプ6までの区間における配管内は、通常状態に戻っている。そのため、制御手段13は、時刻t11に給水開始要求を受信したときと同じく、まず吸上ポンプ5の動作を開始させ、それから所定の時間ΔT1が経過した後で吐出ポンプ6の動作を開始させる。
【0055】
このように、本実施形態の飲料水供給装置1では、吐出ポンプ6の動作を開始させたときに、整水器4と吐出ポンプ6とを連通する配管7c内が負圧になることはない。そのため、整水器4と吐出ポンプ6とを連通する配管7c内が負圧になることを原因とする整水器の故障を防ぐことができる。
【0056】
ところで、吐出ポンプ6の動作を開始させる前に吸上ポンプ5のみを動作させた場合、整水器4からは、通常排水される酸性水のほかに、吸上ポンプ5のみが動作している時間に応じた量のアルカリ性水も排水される。そのため、従来のように、茶飲料製造装置2にアルカリ性水を供給するたびに、吐出ポンプ6の動作開始前に吸上ポンプ5のみを動作させると、整水器4からの排水量が多くなる。これに対し、本実施形態の飲料水供給装置1では、吐出ポンプ6の動作開始前に吸上ポンプ5のみを動作させるのは、吸上ポンプ5および吐出ポンプ6の動作を停止させてから再び開始させるまでの経過時間が所定の時間ΔT2よりも長い場合だけである。そのため、本実施形態の飲料水供給装置1は、整水器4からの排水量を少なくすることもできる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の飲料水供給装置1は、整水器4からの排水量を少なくでき、かつ、整水器4の故障を起こりにくくすることができる。
【0058】
なお、本発明に係る飲料水供給装置は、本実施形態で説明した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であることはもちろんである。
【0059】
すなわち、本発明に係る飲料水供給装置1は、たとえば、カセットタンク3から吸上げた飲料原水を浄化するフィルタなどを備える構成であってもよい。また、本発明に係る飲料水供給装置は、整水器4で生成したアルカリ性水のみを茶飲料製造装置2に供給する構成のものに限らず、たとえば、飲料の提供を受ける利用者の好みに応じてアルカリ性水または酸性水のどちらかを選べる構成になっていてもよい。また、茶飲料製造装置2は、たとえば、アルカリ性水または酸性水を用いてお茶などの飲料を製造して提供する機能に加え、生成したアルカリ性水または酸性水を直接提供する機能を備えたものであってもよい。
【0060】
また、茶飲料製造装置2は、たとえば、数杯から数十杯分の飲料を製造できるだけの量のアルカリ性水を貯めておく貯水タンクを備え、貯水タンク内のアルカリ性水が所定量よりも少なくなった時点で給水開始要求を送信するものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 飲料水供給装置
2 茶飲料製造装置
3 カセットタンク
4 整水器
5 吸上ポンプ
6 吐出ポンプ
7a,7b,7c,7d,7e 配管
8 排水バケツ
9 茶飲料製造手段
10 給水バルブ
11 給茶バルブ
12 容器
13 制御手段
13a 主処理部
13b 計時部
13c メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料原水を保管するタンクと、前記飲料原水を電気分解してアルカリ性水および酸性水を生成する整水器と、前記タンクの飲料原水を吸上げて前記整水器に送る吸上ポンプと、前記整水器からアルカリ性水または酸性水を吐出させる吐出ポンプと、前記吸上ポンプおよび前記吐出ポンプの動作を制御する制御手段と、を備えた飲料水供給装置であって、
前記制御手段は、前記吸上ポンプおよび前記吐出ポンプの動作を開始させるときに、前記吸上ポンプから前記吐出ポンプまでの区間における配管内の圧力が所定の値よりも低いか否かを判定し、
前記配管内の圧力が前記所定の値よりも低いと判定した場合は、前記吸上ポンプの動作のみを開始させた後、所定の時間が経過してから前記吐出ポンプの動作を開始させ、
前記配管内の圧力が前記所定の値以上と判定した場合は、前記吸上ポンプおよび前記吐出ポンプの動作を同時に開始させることを特徴とする飲料水供給装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記吸上ポンプおよび前記吐出ポンプの動作を停止させてから再び前記吸上ポンプおよび前記吐出ポンプの動作を開始させるまでの経過時間が所定の時間よりも長い場合は、前記配管内の圧力が前記所定の値よりも低いと判定し、
前記経過時間が前記所定の時間以下の場合は、前記配管内の圧力が前記所定の値よりも高いと判定することを特徴とする請求項1に記載の飲料水供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86816(P2013−86816A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227321(P2011−227321)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】